以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には、複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられても良い。さらに添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
<記録装置の概要(図1〜図3)>
図1は、本発明の代表的な実施形態である記録装置の概略構成を示す側断面図である。
図1に示されるように、記録装置40には、記録ヘッド30、格納部41、搬送ローラ42、プラテン43、排出口44を備える。格納部41にはシート状の複数枚の記録媒体10を格納可能であり、カバー(不図示)を開閉する事で記録媒体10を補充する事が可能である。印刷時には、記録媒体10は搬送ローラ42によって記録ヘッド30の下部へと搬送され、プラテン43と記録ヘッド30との間で画像が形成された後、排出口44から排出されて印刷を完了する。
図2は、図1に示した記録装置とこれに接続されるホスト装置とにより構成される記録システムの制御構成を示すブロック図である。図2に示されるように、この記録システムは、図1に示した記録装置40と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(ホストPC)50により構成される。
ホストPC50は、CPU501、RAM502、HDD503、データ転送インタフェース(I/F)504、キーボード・マウスインタフェース(I/F)505、ディスプレイインタフェース(I/F)506を含む。
CPU501は、HDD503やRAM502に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM502は、揮発性ストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、HDD503は、不揮発性ストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。データ転送I/F504は記録装置40との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信転送方式としては、USB、IEEE1394、LAN等の有線接続や、Bluetooth(登録商標)、WiFi等の無線接続を用いることができる。キーボード・マウス(登録商標)I/F505は、キーボードやマウス等のUI(ユーザインタフェース)を制御するインタフェースであり、ユーザはこれを介してホストPCに情報を入力できる。ディスプレイI/F506は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
一方、記録装置40は、CPU401、RAM402、ROM403、データ転送インタフェース(I/F)404、ヘッドコントローラ405、画像処理アクセラレータ406を含む。
CPU401は、ROM403やRAM402に保持されているプログラムに従い、後述する各実施形態の処理を実行する。RAM402は、揮発性ストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、ROM403は不揮発性ストレージであり、後述する各実施形態の処理で使用されるテーブルデータやプログラムを保持する。また、データ転送I/F404はPC50との間におけるデータ送受信を制御する。
ヘッドコントローラ405は、記録ヘッド30に対して記録データに基づいて加熱動作(後述)を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ405は、RAM402の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読込む構成になっている。つまり、CPU401が制御パラメータと記録データをRAM402の所定のアドレスに書込むと、ヘッドコントローラ405により処理が起動され、記録ヘッドの加熱動作が行われる。
画像処理アクセラレータ406は、ハードウェアによって構成され、CPU401よりも高速に画像処理を実行する。具体的には、画像処理アクセラレータ406は、RAM402の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータを読込む構成になっている。そして、CPU401が上記パラメータとデータをRAM402の所定のアドレスに書込むと、画像処理アクセラレータ406が起動され、所定の画像処理が行われる。
なお、画像処理アクセラレータ406は必ずしも必要な構成要素でなく、記録装置の仕様などに応じて、CPU401による処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよい。
<記録ヘッドの構成概要(図3)>
図3は記録ヘッドの構成と記録ヘッドと記録媒体との間の接触領域の様子を示す側断面図である。
記録ヘッド30は、基板31上にグレーズ32を備える。グレーズ32は「凸面グレーズ」33を更に備えていても良い。抵抗34は、凸面グレーズ33が存在する場合にはその表面に配置され、存在しない場合には平坦なグレーズ32の表面に配置される。なお、保護膜層が、抵抗34、グレーズ32、および凸面グレーズ33上に形成されることが好ましい。一般的に同一の材料からできているグレーズ32および凸面グレーズ33の組み合わせを、以下「記録ヘッドのグレーズ」という。
基板31はヒートシンク35と接しており、ファンなどを使用して冷却される。記録媒体10は、一般的に実際の加熱抵抗の長さより実質的に大きな長さの記録ヘッドのグレーズと接触する。抵抗34は、これに電流を供給することにより発熱する電気熱変換素子(ヒータ又は発熱素子)である。典型的な抵抗は、記録媒体10の搬送方向に約120μm程度の長さであるが、一般的な記録ヘッドのグレーズとの記録媒体の熱的接触領域は、200μmまたはそれ以上となる。
<記録原理の概要(図4〜図5)>
図4は、熱源として赤外線を用いた画像形成に用いるためのシート状の記録媒体の構造を示す断面図である。記録媒体10は以下に詳述するように抵抗34に電流を供給することで抵抗から放射される熱線(赤外線)により加熱されて発色する複数の色の発色層が重層され、これら発色層が発色することで、フルカラー画像が形成されるので、赤外線画像部材とも呼ばれる。従って、このような意味では記録媒体10を以下の説明では赤外線画像部材として言及する。
図4に示されるように、赤外線画像部材10には、光を反射する基材12の上に、画像形成層14、16、18、スペーサ層15、17、保護膜層13が形成されている。画像形成層14、16、18はそれぞれ、フルカラー印刷時には一般的には黄(Y)、マゼンタ(M)、およびシアン(C)であるが、他の色の組み合わせであっても良い。
各画像形成層は当初は無色であるが、各層は活性化温度と呼ばれる特定の温度まで加熱されると有色へ変化する。画像形成層の色の順番は任意に選択可能である。1つの好適な色順は、上述したとおりである。もう1つの好適な順は、3つの画像形成層14、16、18それぞれ、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)である順である。ここでは、上述の黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順番で構成されている例について説明する。
スペーサ層15は、スペーサ層17より薄いことが好ましいが、両方の層を備える材料が、実質的に同一の熱拡散率を有する場合にはその限りでは無い。スペーサ層の機能は、赤外線画像部材10内での熱拡散の制御である。好適には、スペーサ層17は、スペーサ層15と同じ部材で構成される場合には、少なくとも四倍厚い事が望ましい。基材12に配置されたすべての層は、画像形成の前は実質的に透明である。基材12が反射する色(例えば、白色)である場合、赤外線画像部材10に形成されたカラー画像は、基材12によって提供される反射背景に対して、保護膜層13を通して視認される。基材12に配置された層が透明であるので、各画像形成層に形成された色の組み合わせが見える。
なお、赤外線画像部材10の3つの画像形成層14、16、18は、基材12の同一の側に配置されているが、いくつかの画像形成層が、基材12の反対側に配置されていても良い。
画像形成層14、16、18は、2つの調節可能なパラメータ、つまり、温度と時間の変化によって、少なくとも部分的に独立して処理される。これらのパラメータは調節可能であり、赤外線画像部材が加熱される間の記録ヘッドの温度と時間の期間を選択することによって、所望の画像形成層に画像が形成される。
ここでは、画像形成層14、16、18それぞれは、記録ヘッド30が部材の最上層、即ち、赤外線画像部材10の保護膜層13に接触しながら、加熱されることによって処理される。画像形成層14(基材12から数えて第3の層であり、赤外線画像部材10の表面に最も近い画像形成層)の活性化温度(Ta3)は、画像形成層16の活性化温度(Ta2)より大きく、同様に、画像形成層18の活性化温度(Ta1)18より大きい。
記録ヘッド30からより遠い距離での画像形成層の加熱は、スペーサ層を通じてそれらの層に熱が拡散するための加熱に必要な時間分、遅延する。このような加熱遅れにより、これらの活性化温度がより低い画像形成層(記録ヘッドからさらに遠い層)に対し、実質的に活性化温度より高くても、記録ヘッドにより近い画像形成層が、それより下の画像形成層を活性化することはない。そして、それらの活性化温度より上まで加熱することが可能になる。従って、最上層の画像形成層14を処理する際、記録ヘッド30は短時間ではあるが、比較的高い温度まで加熱され、画像形成層16、18のいずれに対しても不十分な加熱となり、これらの層は活性化されない。
基材12に近い画像形成層(この場合、画像形成層16又は18)のみを活性化させるには、より基材12から遠い画像形成層の活性化温度より下の温度で十分長い期間加熱する。このようにして、より低い画像形成層が活性化されている場合、より高い画像形成層は活性化されない。
赤外線画像部材10の加熱は、記録ヘッド30を用いて行われるのが好ましいが、赤外線画像部材に対して制御された熱を付与する何らかの方法が用いられてもよい。例えば、変調された光源(例えば、レーザ光源)を用いる等、何らかの既知の手段が用いられてもよい。
図5は、図4に示した3つの画像形成層を処理するのに必要な記録ヘッドの加熱温度と時間を説明する図である。
図5において、縦軸は記録ヘッド30に接触する赤外線画像部材10の表面での加熱温度を示し、横軸は加熱時間を示す。領域21(記録ヘッドが比較的高い温度でかつ比較的短い加熱時間)は画像形成層14の画像化を提供し、領域22(記録ヘッドが中間的な温度でかつ中間的な加熱時間)は画像形成層16の画像化を提供する。また、領域23(記録ヘッドが比較的低い温度でかつ比較的長い加熱時間)は画像形成層18の画像化を提供する。画像形成層18の画像化に必要な時間は、実質的に画像形成層14を画像化するために必要な時間より長い。
画像形成層のために選択される活性化温度は、一般的に約90℃から約300℃の範囲内である。画像形成層18の活性化温度(Ta1)は、出荷および保管の間、赤外線画像部材の熱安定性にできるだけ一貫して低いことが好ましく、好適には約100℃またはそれ以上である。画像形成層14の活性化温度(Ta3)は、この実施例の加熱方法によって活性化することなく、この層を通じて加熱することによって、画像形成層16、18の活性化に対し一貫して低いことが好ましく、好適には約200℃またはそれ以上である。画像形成層16の活性化温度(Ta2)は、Ta1<Ta2<Ta3であって、好適には約140℃から約180℃の間である。
ここで使用される記録ヘッド30は、複数の抵抗が実質的には画像の全体幅(赤外線画像部材の搬送方向に直交する方向)にわたって伸長するように直線的に配置された抵抗体列を含む。
なお、記録ヘッドの記録幅は、画像の幅よりも短くても良いが、このような場合、記録ヘッドは、画像の全体幅を処理するために、赤外線画像部材10に対して移動されるように構成されるか、他の記録ヘッドと併用する。
これらの抵抗に電流を供給することによって、加熱パルスが提供される一方で、赤外線画像部材が記録ヘッドの抵抗の配列方向とは直交する方向に搬送されている間に画像化される。記録ヘッド30によって赤外線画像部材10が加熱される時間は、典型的には画像の1ラインごとに約0.001〜約100ミリ秒の範囲である。その上限は画像印刷時間との兼ね合いで合理的に設定されるが、その下限は電子回路の制約によって定義される。形成画像のドット間隔は一般的に、赤外線画像部材10の搬送方向および垂直方向の両方向に、それぞれ1インチごとに100〜600ラインの範囲であり、それぞれの方向に異なる間隔となっていても良い。
以上説明した記録装置はサーマルプリンタの一種であるが、その装置が採用する記録方式はZINK(Zero Ink)方式、Zero Ink technology(登録商標)とも呼ばれている。
ここでは、実施例1の効果を強調するために、まず比較例として従来の記録方法を説明し、その後、この実施例について説明する。
・比較例の説明(図6〜図7)
図6は上述した記録システムにおいて従来のプリントサービスを実行した時の記録装置40とホストPC50の処理を示すフローチャートである。図6において、ステップS601、S602、S604〜S606はホストPC50の処理を示し、ステップS611〜S614、S616〜S617は記録装置40の処理を示す。また、図6に示されるように、ユーザが印刷を望む場合、ホストPC50の処理がスタートし、これに応じて、記録装置40の処理がスタートする。従って、記録装置40ではステップS611で自らが印刷可能である事を確認して印刷サービスをスタートし、印刷準備完了状態(Ready)となっている。
この状態でホストPC50がステップS601で印刷サービスDiscoveryを実行すると、ステップS612で記録装置40はそのDiscoveryに対して応答し、自らが印刷サービスを提供可能な機器である事を通知する。続いて、ステップS602でホストPC50が印刷可能情報を取得する。基本的には記録装置40に対して印刷可能情報を要求して、それに対し、ステップS614では記録装置40が自らが提供出来る印刷サービスの情報を通知する。
さらにホストPC50はステップS604で通知された印刷可能情報に基づいて印刷ジョブ作成用のユーザインタフェースを構築する。具体的には、記録装置40の印刷可能情報に基づいて、印刷サイズ、印刷可能用紙サイズ等と適切な選択肢をディスプレイに表示してユーザへ提供する。続いてステップS605では、ホストPC50が印刷ジョブを発行する。
これに応じて記録装置40はステップS614で印刷ジョブを受信して、ステップS616で印刷ジョブを実行する。記録装置40での印刷ジョブに基づく印刷が完了すると、ステップS617で記録装置40は印刷完了をホストPC50に通知する。ホストPC50はステップS606で印刷完了通知を受信して、その旨をユーザに通知する。
印刷ジョブが完了したら、ホストPC50と記録装置40とはそれぞれ、一連の印刷サービス処理を完了する。
上記の説明では、種々の情報伝達はいずれもホストPC50から記録装置40に対して要求を行い、その要求に対して記録装置40が応答するという例で説明した。しかしながら、ホストPCと記録装置との間の通信は、いわゆるプル型に限定されるものではなく、記録装置40がネットワークに存在するホストPC50(及び他のホストPC)に対して自発的に発信する、いわゆるプッシュ型であっても良い。
図7は記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図ある。図7において、タイミングp0が時間的には最も早く時間軸を左側から右側にいくにつれて時間的には遅くなる。
図7の左側には各発色させたい色が記されており、その右側には対応する加熱パルスが記されている。例えば、黄(Y)を発色させる場合、図5の領域21の加熱温度と加熱時間とを実現させる為に、Δt1の時間加熱を合計2回、Δt0の間隔をおいて実行している。また、マゼンタ(M)を発色させる場合、図5の領域22の加熱温度と加熱時間を実現させる為に、Δt2の時間加熱を合計3回、Δt0の間隔をおいて実行している。同様に、シアン(C)を発色させる場合、図5の領域23の加熱温度と加熱時間を実現させる為に、Δt3の時間加熱を合計4回、それぞれΔt0の間隔をおいて実行している。
なお、図7において、理解を容易とする為に、Δt1×2=Δt2×3=Δt3×4の関係が成立するとしており、いずれの色を発色させる場合でも記録ヘッド30に印加される加熱パルスの総時間を同じとしている。
しかし、加熱時間は、
t2 > Δt1+Δt0 > t1、
t3 > Δt2+Δt0×2 > t2、
Δt3+Δt0×3 > t3、
となっており、各画像形成層への加熱時間の相対的な関係は、
Yの加熱時間 < Mの加熱時間 < Cの加熱時間
となっている。ここで、Y、M、Cは画像形成層14、16、18を指している。
ここで、記録ヘッド30によって印加される熱量は、パルス間隔Δt0の間に記録ヘッド30のグレーズ32、基板31、ヒートシンク35に熱伝導される為に赤外線画像部材10の温度は低下する。同様に、赤外線画像部材10に熱伝導された熱量は、プラテン43等にも熱伝達される為、その分、赤外線画像部材10の温度は低下する。その結果、投入エネルギーが同一である為、加熱による各画像形成層のピーク温度の相対的な関係は、
Yのピーク温度 > Mのピーク温度 > Cのピーク温度
となる。
ここで、
Yのピーク温度>Ta3
Ta3>Mのピーク温度>Ta2
Ta2>Cのピーク温度>Ta1
のように制御する事で、Y、M、Cそれぞれの色(一次色)を独立に発色させる事ができる。
次に、二次色であるR、G、Bおよび三次色であるKの発色を制御する加熱パルスについて説明する。ここで、二次色とは一次色(即ち、Y、M、C)のいずれか2つを用いて再現する色であり、三次色とはすべての一次色を用いて再現する色である。
図7における赤(R)は、黄(Y)→マゼンタ(M)の順に発色するように加熱パルスを制御している。また、図7における緑(G)は、黄(Y)→シアン(C)の順に発色するように加熱パルスを制御している。同様に、図7における青(B)は、マゼンタ(M)→シアン(C)の順に発色するように加熱パルスを制御している。最後に、図7における黒(K)は、黄(Y)→マゼンタ(M)→シアン(C)の順に発色するように加熱パルスを制御している。
この比較例では、黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)それぞれ単色での発色において、最後の加熱パルスのみが発色に寄与し、それより前のパルスは予熱の役割となっている。図7において、各パルスのうち、主に予熱に用いられるパルス(予熱パルス)には斜線を施し、主に発色に用いられるパルス(画像形成パルス:主パルス)は白抜きとなっている。各加熱パルス印加のタイミングは各色に関して、次のようになっている。即ち、
色 予熱パルスの 画像形成パルスの
印加タイミング 印加タイミング
Y p0 p1
M p2,p3 p4
C p5,p6,p7 p8
R p0 p1,p2,p3,p4
G p0 p1,p5,p6,p7,p8
B p2,p3 p4,p5,p6,p7,p8
K p0 p1,p2,p3,p4,p5,p6,p7,p8
である。
このように、実際の画像形成に使用可能な駆動パルスがそれぞれ短くなっている。特に、単色のM、C及びB色中のMの画像形成に用いるパルスが非常に短くなっている。これは、それ以外の色の発色の場合、最初のY発色のための加熱が他の色の予熱効果を持つためである。
従って、以上説明した比較例によれば、黄(Y)の発色を伴わない色、即ち、マゼンタ(M)、シアン(C)、青(B)におけるマゼンタ(M)に関しては、各色の発色に用いられる駆動パルスの大部分が予熱のために用いられ発色時間が短くなってしまう。その結果、赤外線画像部材10上での発色領域が狭い、発色が低い画像となってしまう。
このため、実施例1では以上説明した比較例に対して以下のような記録制御の処理を実行する。
・実施例の説明(図8〜図12)
図8は上述した記録システムにおいて実施例1に従うプリントサービスを実行した時の記録装置40とホストPC50の処理を示すフローチャートである。なお、図8において、既に図6を用いて説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
図8におけるステップS611では、記録装置40は自らが印刷可能であり、かつ高発色印刷にも対応していることを確認して印刷サービスをスタートする。また、ステップS601におけるホストPC50での印刷サービスDiscoveryに応答して、記録装置40はステップS612では、高発色印刷サービスを含む印刷サービスを提供可能である機器であることを通知する。このため、ステップS613でも、記録装置40は高発色印刷サービスの情報を含む印刷可能情報を通知する。
これに応じて、ホストPC50は通常の印刷サービスと高発色印刷サービスのいずれのサービスを利用するかを選択する情報、具体的には、「印刷サービス」と「高発色印刷サービス」の表示と選択肢をディスプレイなどに表示して、ユーザへ通知する。つまり、処理はステップS603において、ユーザからの指示が「印刷サービス」であるか、又は、「高発色印刷サービス」であるかを調べる。
ここで、ユーザによる選択結果が「印刷サービス」だった場合には、処理はステップS605に進み、図6で説明したのと同じ処理を実行するが、その選択結果が「高発色印刷サービス」だった場合には、処理はステップS603Aへと進む。そして、ステップS603AでホストPC50は印刷可能情報に基づいて高発色印刷ジョブ作成用のユーザインタフェースを構築する。具体的には、記録装置40からの印刷可能情報に基づいて、印刷サイズ、印刷可能用紙サイズ等を画面表示する。さらに、その表示に応じたユーザからの選択指示を行わせるこれに加えて、高発色化させたプレビュー画像を表示してユーザに高発色化方法を選択させるなどの方法で高発色印刷ジョブを作成する。高発色印刷ジョブ作成の詳細については、図10〜図11を用いて後述する。高発色印刷ジョブの作成後、処理はステップS605へと進む。
一方、記録装置40ではステップS615において受信した印刷ジョブが通常の印刷ジョブか高発色印刷ジョブであるかを調べる。ここで、受信した印刷ジョブが高発色印刷ジョブであった場合には、処理はステップS615Aに進み、高発色印刷モードで高発色印刷ジョブを実行し、その後、ステップS617に進む。これに対して、受信した印刷ジョブが通常印刷ジョブであった場合には、図6で説明したのと同様の処理を実行する。
図9は実施例1の処理に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図9において、図7で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例1に特有の構成についてのみ説明する。
図9に示されるように、ここでは、各色の発色用の駆動パルス群の最初の1パルスのパルス幅を長くして、予熱パルスとする。図9において、高発色用の予熱パルスには、太い斜線が施されており、以下の3パルスである。即ち、
M発色のためにタイミングp2で印加されるパルス幅Δt4のパルスと、
C発色のためにタイミングp5で印加されるパルス幅Δt4のパルスと、
B発色のためにタイミングp2で印加されるパルス幅Δt4のパルスと、
である。ここで、予熱用加熱時間Δt4は、
Δt4 < Yの加熱時間Δt1+Δt0、かつ、Δt4 ≒ Δt1
となっており、加熱時間の相対的な関係は、
Yの加熱時間 < Mの加熱時間 < Cの加熱時間
のままで、図7に示した比較例と変わらない。
このように、高発色用の予熱パルスのパルス幅Δt4は、
M発色のための予熱用の加熱パルスで、Y及びCが発色せず、
C発色のための予熱用の加熱パルスで、Y及びMが発色しない
ように設定されている。
ここで、記録ヘッド30によって印加される熱量は、インターバル時間Δt0中に記録ヘッド30のグレーズ32、基板31、ヒートシンク35に熱伝導される為に赤外線画像部材10の温度は低下する。同様に、赤外線画像部材10に熱伝導された熱量は、プラテン43等にも熱が伝搬する為、その分、赤外線画像部材10の温度は低下する。その結果、M色およびC色発色における投入エネルギーがそれぞれΔt4−Δt2、Δt4−Δt3分増加するが、加熱によるピーク温度は、
Yのピーク温度 > Mのピーク温度 > Cのピーク温度
のままで、図7に示した比較例と変わらない。
この点においても、高発色用の予熱パルスのパルス幅Δt4は、
M発色のための予熱用の加熱パルスで、Y及びCが発色せず、
C発色のための予熱用の加熱パルスで、Y及びMが発色しない
ように設定されている。
但し、予熱用の加熱パルスが存在することで、
M単色発色時のMの発色時間はR、K発色時に近づき、
C単色発色時のCの発色時間はG、B、K発色時に近づき、
B色中のMの発色時間はR、K発色時に近づく
ようになる。このように制御することで、発色時間が長くなり、赤外線画像部材10上での発色領域が広くなり、高発色な画像が形成される。具体的には各色の加熱パルスを構成する予熱パルスと画像形成パルスの印加タイミングの詳細は以下のようになる。即ち、
色 予熱パルスの 画像形成パルスの
印加タイミング 印加タイミング
Y p0 p1
M p2 p3,p4
C p5 p6,p7,p8
R p0 p1,p2,p3,p4
G p0 p1,p5,p6,p7,p8
B p2 p3,p4,p5,p6,p7,p8
K p0 p1,p2,p3,p4,p5,p6,p7,p8
である。上記のように、実際の画像形成に使用可能なパルスがそれぞれ長くなっている。
図10は実施例1に従う加熱パルスを生成して記録ヘッドを駆動する画像処理を示すフローチャートである。この図は図8のステップS615Aの高発色印刷ジョブ実行の詳細を示すフローチャートである。
図10によれば、ステップS1001ではステップS814において受信した高発色印刷ジョブ中の画像データを入力する。次に、ステップS1002で画像データが圧縮や符号化されていた場合に復号処理を実行し、さらに、ステップS1003で色補正処理を実行する。これは、ホストPC50側で実行することも可能であるが、記録装置40の特性に合わせた色補正を行う場合には記録装置40で行うことが好ましい。この時点でも、画像データは一般的なRGBデータ形式となっている。但し、この時点では一般的には、記録装置40の特性を反映したRGBデータ、いわゆるデバイスRGBになっている。
次に、ステップS1004では、輝度濃度変換を実行する。一般的なサーマルプリンタでは、各画素各色成分を8ビットで表現する場合、
C = 255 − R
M = 255 − G
Y = 255 − B
という変換を行う。ここでは、
この実施例での予熱パルス制御の場合には、例えば、マゼンタ単色(M)を発色する際の予熱パラメータと、赤(R)を発色する際の予熱パラメータとが異なる。従って、両者を個別に設定する為に、3次元ルックアップテーブル(3D_LUT)を用いた輝度濃度変換を実行することが望ましい。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
PM= 3D_LUT[R][G][B][3]
PC= 3D_LUT[R][G][B][4]
のような変換を行う。ここで、PM、PCはM色、C色をそれぞれ発色させる際の予熱パルスに対応する濃度値を示している。
ここで、上記の3D_LUTは256×256×256×5の83886080個のデータテーブルから構成される。各データは図7における各タイミングp0〜p8に印加するパルス幅のデータとなっている。しかし、データ量を削減する為に、グリッド数を256→17に減らして、17×17×17×5の24565個のデータテーブルを用い、補間演算を併用して結果を算出しても良い。当然であるが、17グリッド以外にも、16グリッドや9グリッドおよび8グリッド等、適宜好適なグリッド数を設定して構わない。補間方法についても既知の四面体補間等、いずれの方法を用いて構わない。
従って、
黄(Y)を構成する制御パルスと予熱パラメータ、
マゼンタ(M)を構成する制御パルスと予熱パラメータ、
シアン(C)を構成する制御パラメータと予熱パラメータ、
赤(R)を構成するマゼンタ及び黄制御パラメータと予熱パラメータ、
緑(G)を構成する黄及びシアン制御パラメータと予熱パラメータ、
青(B)を構成するマゼンタ及びシアン制御パラメータと予熱パラメータ、
黒(K)を構成する黄、マゼンタ及びシアン制御パラメータと予熱パラメータ
を独立に設定可能である。
さらに、ステップS1005では、出力補正を実行する。まず、各濃度成分C、M、Yの発色と、マゼンタとシアン発色のための予熱(pm、pc)を実現する為のパルス幅(c、m、y、pm、pc)を一次元ルックアップテーブル(1D_LUT)を用いて算出する。即ち、
c = 1D_LUT[C]
m = 1D_LUT[M]
y = 1D_LUT[Y]
pm= 1D_LUT[PM]
pc= 1D_LUT[PC]
を算出する。ここで、cの最大値はΔt3、mの最大値はΔt2、yの最大値はΔt1、pm及びpcの最大値はΔt4となる。記録装置40はパルス幅変調(PWM)によって、赤外線画像部材10で発色強度を変調できるので、上述のc、m、y、pm、pcが最大値よりも小さい場合には適宜パルス幅を短くして所望の諧調を実現できる。この処理は既知の手段を用いて良い。
図9に示したパルス制御の処理を実現するには、例えば、M単色(R=255、G=0、B=255)において、
C = 3D_LUT[255][0][255][0] = 0
M = 3D_LUT[255][0][255][1] = Δt2
Y = 3D_LUT[255][0][255][2] = 0
PM= 3D_LUT[255][0][255][3] = Δt4
PC= 3D_LUT[255][0][255][4] = 0
と設定されている必要がある。
同様に、C単色(R=0、G=255、B=255)において、
C = 3D_LUT[0][255][255][0] = Δt3
M = 3D_LUT[0][255][255][1] = 0
Y = 3D_LUT[0][255][255][2] = 0
PM= 3D_LUT[0][255][255][3] = Δt4
PC= 3D_LUT[0][255][255][4] = 0
と設定されている必要がある。
更に、ここでは、温度センサ(不図示)等によって取得した赤外線画像部材10の温度によって、記録ヘッド30による加熱パルスを変調する。具体的には、取得温度が高くなるにつれて、活性温度に到達させる為の必要パルス幅を短くするように制御する。この処理は既知の手段を用いて良い。また、赤外線画像部材10の温度は温度センサ(不図示)等による直接的な検出だけでなく、CPU501が赤外線画像部材10の温度推定を実行し、その推定温度に基づいて制御しても良い。温度推定の方法としては、既知のいかなる手法を用いても構わない。
さらに、ステップS1006では、高発色用の予熱パルスを生成し合成する。ここで、高発色用の予熱パルス強度をpreとする。
次に、画像を構成する為のパルス幅と予熱パルスを合成する。即ち、タイミングp0〜p8における各パルス幅を
p0=y、p1=y、p2=max(m,pm)、p3=m、p4=m、p5=max(c,pc)、p6=c、p7=c、p8=cとしてパルスを合成する。ここで、max(x,y)はxとyの大きい方の値を設定する関数である。電気回路で各々生成されたパルスを重畳する形で実現する場合には、
p2 = m or pm
p5 = c or pcのようにすれば良い。ここで、x or yは信号xと信号yの論理和を表す。
次に、ステップS1007ではヘッド制御を実行する。即ち、上記タイミングp0〜p8におけるパルス幅を制御することで、所望の発色と高発色処理を赤外線画像部材10に形成する。
次に、ステップS1008で当該ページの記録が完了したかを調べ、その結果がNoの場合、処理はステップS1003に戻って当該ページの続きを記録し、その結果がYesの場合には印刷処理を終了する。
従って以上説明した実施例に従えば、赤外線画像部材上で各画素単位に高発色記録を実現することができる。
<変形例1>
図11は、実施例1の変形例1に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図11において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例1の変形例1に特有の構成についてのみ説明する。
ここでは、濃い斜線を施して表現している予熱パルスを常時、タイミングp0で印加している。このように制御することで、発色用の加熱パルスと予熱パルスを別パルスとして回路上の制御を単純化できる。
また、図11から容易に理解できることであるが、各色を発色させるパルスの形状が互いに非常に類似しているので、
C色と、G色、B色のそれぞれにおけるC色の発色度合いの差異と、
M色と、R色、B色のそれぞれにおけるM色の発色度合いの差異と、
をそれぞれ小さくでき、カラーのグラデーションを滑らかに表現できる。
更に、予熱パルスを与えるタイミングが1か所(タイミングp0)となるので、1種類の予熱パルスを設定すれば良く、予熱制御パラメータ量を半分に低減できるという効果がある。
具体的な処理方法としては、3次元ルックアップテーブルを用いた輝度濃度変換を以下の通りに行う。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
P = 3D_LUT[R][G][B][3]
を演算する。ここで、Pは予熱パルスに対応する濃度値を示している。
次に、各C、M、Y濃度と予熱強度を実現する為のパルス幅を算出する。即ち、
c = 1D_LUT[C]
m = 1D_LUT[M]
y = 1D_LUT[Y]
p = 1D_LUT[P]
を演算し、タイミングp0〜p8における各パルス幅を、
p0=max(y,p)、p1=y、p2=m、p3=m、p4=m、p5=c、p6=c、p7=c、p8=cとしてパルスを合成する。
なお、電気回路で各々生成されたパルスを重畳する形で実現する場合には、タイミングp0におけるパルス幅を、p0=max(m,p)
のようにすれば良い。ここで、x or yは信号xと信号yの論理和を表す。
以上説明したようにする各タイミングにおけるパルス幅を制御することで、予熱パルスによる加熱位置を固定し、より簡易なシステムによってカラーのグラデーションを滑らかに表現できる高発色記録モードを実現できる。
<変形例2>
図12は実施例1の変形例2に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図12において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例1の変形例2に特有の構成についてのみ説明する。
ここでは、専用の予熱パルスを設定せず、他の色の発色パルスを用いて予熱パルスを実現する例について説明する。
図12に示されるパルスのうち、高発色用の予熱用の加熱パルス群(濃い斜線を施したもの)は、以下の3パルス群である。即ち、
M発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
C発色のためにタイミングp2,p3,p4で印加される加熱時間Δt6のパルスと、
B発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
である。
ここで、予熱用の加熱時間Δt5とΔt6はそれぞれ、
Δt5 < Yの加熱時間Δt1/2、
Δt6 < Mの加熱時間Δt2/2
となっている。このように、予熱用の加熱時間Δt5とΔt6がそれぞれ、Yの加熱時間Δt1、Mの加熱時間Δt2/2半分のパルス幅以下にしているのは、次の理由による。即ち、予熱用の加熱パルス単独では発色せず、また発色用パルスと併用して加熱しても、他の色が発色しない幅のパルスとして設定される為であり、その範囲内であれば任意に設定可能であるからである。
ここでは、予熱用の加熱パルスを、微弱で発色に至らない他の色発色用の加熱パルスを用いて行う事で、制御を更に簡単にしている。
具体的な処理方法としては、図12に記載の予熱用の加熱パルスを実現するために、3次元ルックアップテーブルを用いた輝度濃度変換は以下の通りに行う。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
を演算する。
図12に記載の処理を実現するには、例えば、M単色(R=255、G=0、B=255)において、
C = 3D_LUT[255][0][255][0] = 0
M = 3D_LUT[255][0][255][1] = Δt2
Y = 3D_LUT[255][0][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
同様に、C単色(R=0、G=255、B=255)において、
C = 3D_LUT[0][255][255][0] = Δt3
M = 3D_LUT[0][255][255][1] = Δt2/2
Y = 3D_LUT[0][255][255][2] = 0
と設定されている必要がある。
このように設定することで、以降の処理は比較例と同様に行い、専用の予熱用の加熱パルスを発色用のパルスとは別に設定することなく、簡単な構成で高発色記録モードを実現できる。
なお、ここではM単色やC単色、B色について説明したが、本発明に係る予熱制御は中間調の色についても適用可能である。例えば、白色〜M色のグラデーションや、白色〜C色、白色〜B色のグラデーションにおいても適切な予熱用加熱パルスを設定することで、高発色記録を実現できる。
<変形例3>
図13は実施例1の変形例3に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図13において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例1の変形例3に特有の構成についてのみ説明する。
この例は実施例1の変形例1で説明したカラーグラデーションを滑らかに表現できるという利点と、実施例1の変形例2で説明した専用の予熱用の加熱パルスを発色用のパルスとは別に設定することなく構成できるという利点の両方を同時に実現する構成である。
図13に示されるパルスのうち、中高発色用の予熱用の加熱パルス群は、以下の3パルス群である。即ち、
M発色のためにタイミングp0、p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
C発色のためにタイミングp0、p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
B発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
である。ここで、予熱用の加熱時間Δt5は、図12で説明したのと同様に、
Δt5 < Yの加熱時間Δt1/2
となっている。
具体的な処理方法としては、図13に記載の予熱用の加熱パルスを実現するために、3次元ルックアップテーブルを用いた輝度濃度変換は以下の通りに行う。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
を演算する。
図12に記載の処理を実現するには、例えば、M単色(R=255、G=0、B=255)において、
C = 3D_LUT[255][0][255][0] = 0
M = 3D_LUT[255][0][255][1] = Δt2
Y = 3D_LUT[255][0][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
同様に、C単色(R=0、G=255、B=255)において、
C = 3D_LUT[0][255][255][0] = Δt3
M = 3D_LUT[0][255][255][1] = 0
Y = 3D_LUT[0][255][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
このように設定することで、以降の処理は比較例と同様に行い、専用の予熱用の加熱パルスを発色用のパルスとは別に設定する事無く、簡易な構成で高発色記録モードを実現できる。
実施例1では、予熱パルスを発色時間の長時間化に寄与させ高発色を実現する例を説明したが、この実施例ではその発色時間の長時間化を印刷速度の向上に用いた例について説明する。
図14は上述した記録システムにおいて実施例2に従う高速プリントサービスを実行した時の記録装置40とホストPC50の処理を示すフローチャートである。なお、図14において、既に図6を用いて説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
図14におけるステップS611では、記録装置40は自らが印刷可能であり、かつ高速印刷にも対応していることを確認して印刷サービスをスタートする。また、ステップS601におけるホストPC50での印刷サービスDiscoveryに応答して、記録装置40はステップS612では、高速印刷サービスを含む印刷サービスを提供可能である機器であることを通知する。このため、ステップS613でも、記録装置40は高速印刷サービスの情報を含む印刷可能情報を通知する。
これに応じて、ホストPC50は通常の印刷サービスと高速印刷サービスのいずれのサービスを利用するかを選択する情報、具体的には、「印刷サービス」と「高速印刷サービス」の表示と選択肢をディスプレイなどに表示して、ユーザへ通知する。つまり、処理はステップS603’において、ユーザからの指示が「印刷サービス」であるか、又は、「高速印刷サービス」であるかを調べる。
ここで、ユーザによる選択結果が「印刷サービス」だった場合には、処理はステップS604に進み、図6で説明したのと同じ処理を実行するが、その選択結果が「高速印刷サービス」だった場合には、処理はステップS603”へと進む。そして、ステップS603”でホストPC50は印刷可能情報に基づいて高速印刷ジョブ作成用のユーザインタフェースを構築する。具体的には、記録装置40からの印刷可能情報に基づいて、印刷サイズ、印刷可能用紙サイズ等の画面表示し、それに応じたユーザからの選択指示を行わせる。これに加えて、プレビュー画像を高速でアニメーション表示するなどの方法で高速印刷をユーザに認識させつつ、高速印刷ジョブを作成する。高速印刷ジョブの作成後、処理はステップS605へと進む。
一方、記録装置40ではステップS615’において受信した印刷ジョブが通常の印刷ジョブか高速印刷ジョブであるかを調べる。ここで、受信した印刷ジョブが高速印刷ジョブであった場合には、処理はステップS615”に進み、高速印刷モードで高速印刷ジョブを実行し、その後、ステップS617に進む。これに対して、受信した印刷ジョブが通常印刷ジョブであった場合には、図6で説明したのと同様の処理を実行する。
図15は実施例2の処理に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図15において、図7や図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例2に特有の構成についてのみ説明する。
この実施例では予熱用の加熱パルスによって発色に寄与するパルス数が増加するという効果を用いて、濃度は比較例で示した制御構成を維持しつつ、印刷速度を向上させる。
図15に示されるように、黄(Y)を発色させる場合、図5に示した領域21(記録ヘッドの温度が比較的高く、かつ、加熱時間は比較的短い)を満たす制御を実現させるために、時間間隔Δt0で加熱時間Δt1が2回となるように加熱パルスを印加している。また、マゼンタ(M)を発色させる場合、時間間隔Δt0で加熱時間Δt2が2回となるように加熱パルスを印加している。同様に、シアン(C)を発色させる場合、時間間隔Δt0で加熱時間Δt3が3回となるように加熱パルスを印加している。
さて、図15と図7を比較すると、M加熱用パルスとC加熱用パルスの回数はそれぞれ、従来では1つずつパルス数が少ない為、M単色、C単色、B中のM色については加熱パルスが短すぎて、発色が弱くなってしまう。一方、他の色については、その発色の低下は、次の理由から少ない。即ち、
R色はY発色のための加熱がM発色に対して予熱の役割を果たしている、
G色はY発色のための加熱がC発色に対して予熱の役割を果たしている、
K色はY発色のための加熱がM及びC発色に対して予熱の役割を果たしている。
従って、図15に示すように、M単色、C単色、B中のM色の加熱パルス開始の直前にのみ、パルス幅を長くした予熱用加熱パルス(図中、濃い斜線を施したパルス)を1回印加する。
この様にして、パルス幅を長くした予熱用加熱パルスを利用することで、比較例や実施例1では1画素の画像形成に合計9つのタイミングp0〜p8を要していたのに対し、この実施例では、合計7つタイミングp0〜p6で実現できる。その結果、約2割程度、高速に記録できる。
なお、この実施例1に従う加熱パルスを生成して記録ヘッドを駆動する画像処理は、実施例1で図10を参照して説明した処理をほぼ同様であるので、同じ処理についてのその説明は省略する。
この実施例では、輝度濃度変換、出力補正の処理までは実施例1の図10を参照して説明したパルス制御と同様に実行する。続く、ステップS1006の予熱パルス生成&合成では、タイミングp0〜p6における各パルス幅を、p0=y、p1=max(y,pm)、p2=m、p3=max(m,pc)、p4=c、p5=c、p6=cとしてパルスを合成する。
なお、電気回路で各々生成されたパルスを重畳する形で実現する場合には、p1=y or pm、p3=m or pcのようにすれば良い。
以上説明した実施例に従えば、予熱用加熱パルスを発色時間の長時間化を利用することで印刷速度の向上を図ることができる。
<変形例1>
図16は、実施例2の変形例1に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図16において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例2の変形例1に特有の構成についてのみ説明する。
この変形例は、実施例2で説明した発色時間の長時間化を利用した印刷速度の向上と、実施例1の変形例1で説明したグラデーションの滑らかさの向上と制御構成の単純化を同時に実現する例である。
この変形例では図16に示すように、実施例1の変形例1で説明したように、タイミングp0で予熱用加熱パルスを印加する。また、実施例2と同様、マゼンタ(M)を発色させる場合、時間間隔Δt0で加熱時間Δt2の駆動パルスを合計2回、印加している。さらにシアン(C)を発色させる場合にも、実施例2と同様に、時間間隔Δt0で加熱時間Δt3の駆動パルスを合計3回、印加している。
なお、この変形例に従う画像処理は、図10のフローチャートを参照して説明した処理と同じなので、その説明を省略する。
この変形例では、輝度濃度変換、出力補正の処理までは実施例1の図10を参照して説明したパルス制御と同様に実行する。続く、ステップS1006の予熱パルス生成&合成では、タイミングp0〜p6における各パルス幅を、p0=max(y,p)、p1=y、p2=m、p3=m、p4=c、p5=c、p6=cとしてパルスを合成する。
なお、電気回路で各々生成されたパルスを重畳する形で実現する場合には、p0=y or pのようにすれば良い。
このように制御することで、予熱用加熱パルスをY発色の先頭タイミングで用いて発色時間の長時間化に利用して印刷速度の向上を図るとともに、グラデーションの滑らかさの向上及び構成の単純化を同時に実現する事ができる。
<変形例2>
図17は、実施例2の変形例2に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図17において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例2の変形例2に特有の構成についてのみ説明する。
この変形例は、実施例2で説明した発色時間の長時間化を利用した印刷速度の向上と、実施例1の変形例2で説明した、予熱用加熱パルスに他の色の発色パルスを用いて制御を単純化した構成の両方を同時に実現する例である。
この変形例では実施例1の変形例2で説明したように、予熱用加熱パルスに他の色の発色パルスを利用して印加する。
具体的には、図17に示した予熱用の加熱パルスを実現する為に、
3次元ルックアップテーブルを用いた輝度濃度変換を以下の通りに実行する。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
を演算する。図17に記載の処理を実現するには、例えば、M単色(R=255、G=0、B=255)において、
C = 3D_LUT[255][0][255][0] = 0
M = 3D_LUT[255][0][255][1] = Δt2
Y = 3D_LUT[255][0][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
同様に、C単色(R=0、G=255、B=255)において、
C = 3D_LUT[0][255][255][0] = Δt3
M = 3D_LUT[0][255][255][1] = Δt2/2
Y = 3D_LUT[0][255][255][2] = 0
と設定されている必要がある。
このように設定することで、以降の処理は比較例と同様に実行するので、専用の予熱用の加熱パルスと発色用のパルスとを別に設定することなく、単純な制御構成で高速記録モードを実現できる。また、この例では実施例1の変形例2と同様、例えば、白色〜M色のグラデーションや、白色〜C色、白色〜B色のグラデーションにおいても適切な予熱用加熱パルスを設定することで、高速記録を実現できる。
<変形例3>
図18は、実施例2の変形例3に従う、記録装置の記録ヘッドに印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図18において、図7と図9で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例2の変形例3に特有の構成についてのみ説明する。
この変形例は、実施例2の変形例1で説明した、カラーのグラデーションが滑らかに表現できる利点と、実施例1の変形例2で説明した、専用の予熱用の加熱パルスと発色用のパルスとを別に設定することがないという利点の両方を同時に実現する例である。
図18に示されるパルスのうち、中高発色用の予熱用の加熱パルス群は、以下の3パルス群である。即ち、
M発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
C発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
B発色のためにタイミングp0,p1で印加される加熱時間Δt5のパルスと、
である。ここで、予熱用の加熱時間Δt5は、図17に示したのと同様に、Δt5<Yの加熱時間Δt1/2となっている。
具体的には、図18に示す予熱用の加熱パルスを実現するために、3次元ルックアップテーブルを用いた輝度濃度変換は以下の通りに行う。即ち、
C = 3D_LUT[R][G][B][0]
M = 3D_LUT[R][G][B][1]
Y = 3D_LUT[R][G][B][2]
を演算する。図18に示す処理を実現するには、例えば、M単色(R=255、G=0、B=255)において、
C = 3D_LUT[255][0][255][0] = 0
M = 3D_LUT[255][0][255][1] = Δt2
Y = 3D_LUT[255][0][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
同様に、C単色(R=0、G=255、B=255)において、
C = 3D_LUT[0][255][255][0] = Δt3
M = 3D_LUT[0][255][255][1] = 0
Y = 3D_LUT[0][255][255][2] = Δt1/2
と設定されている必要がある。
このように設定することで、以降の処理は比較例と同様に実行し、専用の予熱用の加熱パルスと発色用のパルスとを別に設定することなく、簡単な構成で高速記録モードを実現できる。
また、図10のステップS1003〜S1006までの処理はそれぞれ個別に実行したが、必ずしも個別的に実行する必要はなく、以下のように、1つのステップにまとめて処理を実行しても良い。即ち、タイミングp0〜p6における各パルス幅を、3次元ルックアップテーブルを用いて以下のように演算しても良い。即ち、
p0 = 3D_LUT[R][G][B][0]
p1 = 3D_LUT[R][G][B][1]
p2 = 3D_LUT[R][G][B][2]
p3 = 3D_LUT[R][G][B][3]
p4 = 3D_LUT[R][G][B][4]
p5 = 3D_LUT[R][G][B][5]
p6 = 3D_LUT[R][G][B][6]
を演算する。
以上のタイミングp0〜p6の設定は実施例2の処理を1ステップにまとめた場合であり、実施例1の処理の場合には、これに
p7 = 3D_LUT[R][G][B][7]
p8 = 3D_LUT[R][G][B][8]
を加えれば良い。
このような演算を行うことで、記録ヘッド30のヒータを駆動する各タイミングのパルス幅が一意に確定するので、非常に簡単な構成で実現できるという利点がある。
また、上記のような構成をとることによって、YMC3色の組み合わせに応じた任意のパルスの制御が可能となり、制御の自由度が非常に大きくなるという利点もある。
実施例1では、予熱パルスを発色時間の長時間化に寄与させる高発色を実現する例を説明し、また実施例2では、その発色時間の長時間化を印刷速度の向上に用いる例を説明した。これらの実施例はいずれも、画像データの各画素値から記録装置(サーマルプリンタ)の各色成分について3D_LUTを用いた輝度濃度変換を実行して予熱パルスを決定する例である。この実施例では、図1の記録媒体(赤外線画像部材)10の搬送方向における画像始端の発色向上を実現するために、その搬送方向各画素に関し、その直前画素に対する予熱パルスを前記各画素の値から決定する例について説明する。
実施例1でも説明したように、ある色の発色の為の加熱はその色の後に発色する他の色の予熱効果を持つ。つまり、各画素において先行して実行された加熱は、後の加熱の予熱の効果となる。このような先行加熱による予熱効果は画素内だけでなく、画素間でも発生する。
図19は赤外線画像部材10に形成する画像Iと赤外線画像部材10の搬送方向Dとの関係を示す図である。
図19において、斜線で示す部分が画像Iであり、画像Iのうち、搬送方向Dに関し、最下流の画素が搬送方向Dと交差する方向に並んだ画素領域を画像始端IA、その他の領域を内部領域IBとして示す。また、搬送方向Dに関し、画像Iの直前の発色するデータのない画素が搬送方向Dと交差する方向に並んだ領域を直前画素領域IWとして示す。即ち、搬送方向Dに関し上流側には画像始端IAに含まれる画素が、その下流側には直前画素領域IWに含まれる画素が位置する。画像始端IAと内部領域IBは画像形成領域に含まれ、直前画素領域IWは画像非形成領域となる。図19において、例えば、比較例において図7で示した加熱パルスを用いて画像Iを記録した場合、直前画素領域IWの画像始端IAに対する予熱効果は画像の内部領域IBにおける画素間の予熱効果よりも小さい。なぜなら、画像始端IAの直前画素領域IWまで連続した白画素に対しては加熱パルスがない為、画像始端IAの画素は直前画素領域IWからの予熱の寄与が少ないからである。
また、図7におけるC単色発色では、p5〜p7が予熱パルス、p8が画像形成パルスと説明しているが、画像始端IAは内部領域Bよりも必要な予熱パルスの個数が増え、画像形成パルスが減る傾向となる。つまり、内部領域IBの発色と比較すると、画像始端IAの発色領域は搬送方向に狭く、発色が低い画像となる。
図20は、実施例3に従う、記録装置40の記録ヘッド30に印加される加熱パルスの例を示す図である。なお、図20において、図7で説明したのと同じ構成や記号などについての説明は省略し、ここでは実施例3に特有の構成についてのみ説明する。
図20において、p’0〜p’8は画像始端IAの直前画素領域IWにおける加熱タイミングを示し、p0〜p8は画像始端IAの加熱タイミングを示す。図20における画像始端IAの加熱パルスは図7の加熱パルスをベースとしており、後述の図21と図22も同様である。図20においても斜線は予熱パルスを示している。直前画素領域IWに印加した予熱パルスによる熱は直前画素領域IWを予熱することはもちろん、画像始端IAにも予熱効果を発揮する。記録ヘッド30により印加されたパルスによる熱量は、赤外線画像部材10の深さ方向だけでなく、一部は搬送方向にも伝播し赤外線画像部材10を加熱するため、直前画素領域IWの予熱パルスは画像始端IAにも予熱効果を持つ。従って、図20における画像始端IAと内部領域IBのそれぞれの予熱効果の差を低減することができる。具体的には各色の加熱パルスを構成する予熱パルスと画像形成パルスの印加タイミングの詳細は以下のようになる。即ち、
色 直前画素領域IWの 画像始端IAの 画像始端IAの
予熱パルスの 予熱パルスの 画像形成パルスの
印加タイミング 印加タイミング 印加タイミング
Y p’8 p0 p1
M p’7,p’8 p2,p3 p4
C p’6,p’7,p’8 p5,p6,p7 p8
R p’8 p0 p1〜p4
G p’6,p’7,p’8 p0 p1,p5〜p8
B p’7,p’8 p2,p3 p4〜p8
K p’8 p0 p1〜p6
である。直前画素領域IWに印加する加熱パルスは、画像始端IAとは異なり予熱パルスであるため、直前画素領域IWは発色しない。また、図20において、直前画素領域IWの予熱パルスは、各色の特徴を反映している。
まず、画像始端IAがY、M、Cの各単色発色の場合における直前画素領域IWの予熱の1つの特徴を説明する。
直前画素PにおけるY、M、Cの各予熱パルス幅の関係は、Y>M>C(Δt’1>Δt’2>Δt’3)である。ここでは、予熱パルス幅を使って説明をするが、所謂デューティ比またはデューティサイクルで説明することもできる。デューティ比またはデューティサイクルとは、ある期間においてパルス(信号)がゼロでない期間の割合である。図20の例では、Yの直前画素領域IWの予熱パルスに対して、ある期間とはΔt0であり、期間Δt0における信号がゼロでない期間はΔt’1である。よって、Yの直前画素領域IWの予熱パルスのデューティ比はΔt’1/Δt0である。同様に、Mの直前画素領域IWの予熱パルスデューティ比はΔt’2/Δt0であり、Cの直前画素領域IWの予熱パルスデューティ比はΔt’3/Δt0である。
図20では、Δt’1、Δt’2、Δt’3は幅が異なる1つのパルスとして描いているが、予熱パルスはこれに限定されるものではない。例えば、パルス幅ΔT’1、ΔT’2、ΔT’3の中がさらに細い幅のパルスに分割されていてもよい。この場合、Δt0において、分割された信号がゼロではない合計期間の比がデューティ比またはデューティサイクルとなる。直前画素PにおけるY、M、Cの各予熱パルスのデューティ比の関係は、Y>M>C(Δt’1/Δt0>Δt’2/Δt0>Δt’3/Δt0)である。
次に、画像始端IAがY、M、Cの各単色発色の場合における直前画素領域IWの予熱のもう1つの特徴を説明する。
Y、M、Cの直前画素領域IWの予熱パルスの各印加タイミングの回数はY<M<Cである。図20の例では、Y(1回)<M(2回)<C(3回)である。Δt0をパルス周期とすると、周期とは時間である為、周期×回数によって合計の印加時間を算出できる。Y、M、Cの直前画素領域IWの予熱パルスの各印加時間はY<M<Cである。
Yは図4の画像形成層14で形成され、活性化温度Ta3は、画像形成層16、18の活性化温度Ta2、Ta1より高い。そのため、予熱パルス幅を広くして高い温度を赤外線画像部材10に印加する。この時、MとCの画像形成層16と画像形成層18がそれぞれの活性化温度Ta2とTa1に到達しないように印加タイミングの回数は少なくする。一方、Cを発色する画像形成層18の活性化温度Ta1は一番低い。そのため、予熱パルス幅を小さくして低い温度を赤外線画像部材10に印加する。この時、印加された予熱パルスによって生じた低い温度での熱拡散が途中のスペーサ層15とスペーサ層17で抑えられるため、印加タイミングの回数を多くすることで、低い温度の熱をCの画像形成層18に拡散させる。Mを発色する画像形成層16は、Yの画像形成層14とCの画像形成層18の間に位置するため、予熱パルス幅と印加タイミングの回数ともにYとCとの間にある。
さらに、画像始端IAがR、K発色である場合の直前画素領域IWの予熱の特徴を説明する。
この場合、予熱パルス幅はΔt’1であり、印加タイミングはp’8である。R、Kの発色にはYの画像形成層14を用いるため予熱パルスの特徴もY単色発色と同様である。
次に、画像始端IAがG発色である場合の直前画素領域IWの予熱の特徴を説明する。
この場合、予熱パルス幅はΔt’3であり、印加タイミングはp’6,p’7,p’8である。G発色もYの画像形成層14を用いるが、Y単色発色の予熱パルスはYの画像形成層14に対しては特に有効な予熱効果を発揮するものの、Cの画像形成18への予熱効果は大きくない。G発色の場合は、画像始端IAのCを発色させるp5、p6、p7への予熱効果を優先して、C単色発色と同様の予熱パルスとすることがより好ましい。Yの画像形成層14はCの画像形成層18よりも浅い位置にある為、C発色を優先した予熱パルスを使っても画像形成18よりも予熱温度が高くできる。
最後に、画像始端IAがB発色である場合の直前画素領域IWの予熱の特徴を説明する。
この場合、予熱パルス幅はΔt’2であり、印加タイミングはp’7,p’8である。Bの発色にはMの画像形成層16を使う為、予熱パルスの特徴もM単色発色と同様である。この予熱パルスと画像始端IAの印加タイミングp2とp3の予熱パルスによって、Cの画像形成層18を予熱できる印加時間を生み出すことができる。
このように、画像先端Aにおいて発色する色に応じて、直前画素領域IWの予熱パルスを上記の特徴にすることが好適である。
以上、R、B、Kについて、活性化させる画像形成層のうちで、最も活性化温度が高い画像形成層の単色発色時と同様の予熱パルスを直前画素領域IWに印加することを説明した。これは画像先端Aにおいて活性化温度が高い画像形成層から活性化する為である。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。別の画像形成層の単色発色時の予熱パルスを使ったとしても、いずれの層に対しても予熱効果は少なくともあるからである。
図21は、図20とは異なる直前画素領域IWの予熱パルスの印加タイミングを説明する図である。即ち、
色 直前画素領域IWの 画像始端IAの 画像始端IAの
予熱パルスの 予熱パルスの 画像形成パルスの
印加タイミング 印加タイミング 印加タイミング
Y p’8 p0 p1
M p’6,p’7 p2,p3 p4
C p’3,p’4,p’5 p5,p6,p7 p8
R p’8 p0 p1〜p4
G p’3,p’4,p’5 p0 p1,p5〜p8
B p’6,p’7 p2,p3 p4〜p8
K p’8 p0 p1〜p6
である。
図21に示す例では、直前画素領域IWのY、M、Cの印加タイミングに重複する予熱パルスがない。Yの画像形成層14とMの画像形成層16の経過時間に対する温度変化を比較すると、より深い位置にある画像形成層16の方が小さい為、印加タイミングp’6,p’7における予熱パルスで温度上昇させた後、温度が低下するまでの時間は長くなる。Cの画像形成層18はさらに深い位置にある為、温度が低下するまでの時間はさらに長くなる。そのため、図21のように直前画素領域IWのMとCの予熱パルスを印加後に、印加しないタイミングを設けても予熱効果が生じる。ただし、予熱パルスを印加しないタイミングで温度低下は生じる為、図20に示した例の方が画像始端IAへの予熱効果は高い。
図22は、実施例3に従う加熱パルスを生成して記録ヘッドを駆動する画像処理を示すフローチャートである。この図は、図6、図8、及び図14それぞれにおけるステップS616の印刷ジョブ実行の詳細を示すフローチャートである。なお、図22において、既に図10において説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付して、その説明は省略する。ここでは、この実施例に特有の処理ステップについてのみ説明する。
図22によれば、まずステップS1000では、フラグの値(後述)を“0”に初期化する。その後、ステップS1001では画像データを入力し、ステップS1002では画像データが圧縮や符号化されていた場合に復号処理を実行する。ステップS1002−1では、搬送方向Dの直交方向に処理中のライン(nライン)が非発色域で次の(n+1)ラインが発色域がどうかを調べる。ここで、その結果がYesなら処理はステップS1002aに進み、その結果がNoなら処理はステップS1002−2に進む。
ステップS1002aでは、搬送方向Dに直交する方向に関し、画像データのnラインと(n+1)ラインの画素を入力する。ステップS1002bでは、ステップS1003と同じ色補正処理を実行する。さらにステップS1002cでは、nラインの画素が特定色データであるかを調べる。この例では、特定色を“白”、つまり、R=255、G=255、B=255であるかどうかを調べる。ここで、その画素が特定色である白(Yes)なら、処理はステップS1002dに進み、nラインの画素を直前画素領域IWとして処理する。これに対して、その画素が特定色ではない(No)なら、処理はステップS1004に進む。
さて、ステップS1002dでは、フラグの値を“1”にする。次に、ステップS1002eでは、予熱用の3次元ルックアップテーブル(3D_LUTpre)を用いて、予熱用輝度濃度変換を実行する。この処理では画像データの(n+1)ラインの画素値を3D_LUTpreに入力して、白データであるnラインの各画素の予熱パルスに対応する濃度値を生成する。即ち、
PY = 3D_LUTpre[R][G][B][0]
PM = 3D_LUTpre[R][G][B][1]
PC = 3D_LUTpre[R][G][B][2]
の変換を実行する。ここで、PY、PM、PCはそれぞれ、nラインのY、M、C発色の直前画素領域IWの予熱パルスに対応する濃度値を示している。nラインの画素が図19の直前画素領域IWに対応し、(n+1)ラインの画素が画素始端Aに対応する。
ここで、上記の3D_LUTpreは256×256×256×3の50331648個のデータテーブルから構成される。各データは図20と図21における各印加タイミングp’0〜p’8に印加するパルス幅に対応する濃度値データとなっている。なお、LUTのデータ量を削減するために、実施例1の3D_LUTのようにグリッド数を減らしてもよい。各色の印加タイミングp’0〜p’8のいずれで予熱パルスを印加するかどうかは、図20と図21に示した印加タイミングに予め定めておけばよい。予め定められた印加タイミングで3D_LUTpreにより決定した濃度値に対応する後述の予熱パルス幅を印加すればよい。さらに、3D_LUTpreに印加タイミングp’0〜p’8の予熱パルス幅に対応する濃度値を印加タイミング毎に設定することで、予熱パルス幅に対応する濃度値と印加タイミングの両方を3D_LUTpreで決定できる。即ち、
PY = 3D_LUTpre[R][G][B][0][1][2][3][4][5][6][7][8]
PM = 3D_LUTpre[R][G][B][9][10][11][12][13][14][15][16][17]
PC = 3D_LUTpre[R][G][B][18][19][20][21][22][23][24][25][26]
を演算する。
ここで、[0]〜[8]と[9]〜[17]と[18]〜[26]のそれぞれが、印加タイミングp’0〜p’8の予熱パルス幅のデータの格納に対応している。
従って、図20と図21に示したように各色独立に直前画素領域IWの予熱パラメータを設定可能である。
次に、ステップS1002fでは、予熱用出力補正を実行する。具体的には、予熱用の1次元ルックアップテーブル(1D_LUTpre)を用いて、予熱パルス幅に対応する濃度値PY、PM、PCから予熱パルス幅py、pm、pcを算出する。即ち、
py = 1D_LUTpre[PY]
pm = 1D_LUTpre[PM]
pc = 1D_LUTpre[PC]
を演算する。そして、ステップS1002gでは、予熱パルス生成及び合成を実行する。印加タイミングp’0〜p’8に対して予熱パルスを設定する。
図20において、予熱パルス幅pyとpmとpcのうち複数が同じ印加タイミングとなる場合がある。しかしながら、1つの印加タイミングには、いずれか1つの予熱パルス幅に決定する必要がある。その決定方法は複数ある。
例えば、直前画素領域IWでの発色を防止することを優先する場合は、各印加タイミングにおける0ではないpy、pm、pcの最小値を各印加タイミングに設定する。即ち、
p’0 = min(py0,pm0,pc0)
p’1 = min(py1,pm1,pc1)
p’2 = min(py2,pm2,pc2)
p’3 = min(py3,pm3,pc3)
p’4 = min(py4,pm4,pc4)
p’5 = min(py5,pm5,pc5)
p’6 = min(py6,pm6,pc6)
p’7 = min(py7,pm7,pc7)
p’8 = min(py8,pm8,pc8)
とする。ここで、前記py,pm,pcの後に付加した値(0〜8)は、各印加タイミングに対応する。なお、予熱パルス幅py、pm、pcの全てが0の場合は予熱パルス幅を0に設定する。
一方、予熱温度を上げることを優先する場合は、各印加タイミングにおけるpy,pm,pcの最大幅を各印加タイミングに設定する。即ち、
p’0 = max(py0,pm0,pc0)
p’1 = max(py1,pm1,pc1)
p’2 = max(py2,pm2,pc2)
p’3 = max(py3,pm3,pc3)
p’4 = max(py4,pm4,pc4)
p’5 = max(py5,pm5,pc5)
p’6 = max(py6,pm6,pc6)
p’7 = max(py7,pm7,pc7)
p’8 = max(py8,pm8,pc8)
とする。また、各印加タイミングにおけるpy,pm,pcの平均や重み平均でバランス調整してもよい。
さらにステップS1007では、ヘッド制御を実行する。即ち、印加タイミングp’0〜p’8における上記設定した予熱パルス幅に制御することで、直前画素領域IWに予熱パルスを印加し、画像先端Aへの予熱効果を発揮する。
そして、ステップS1008の処理を実行し、当該ページの続きを処理するか、処理を終了かを判断する。
さて、ステップS1002−1において、処理中のライン(n)が発色域のものである(No)であると判断した場合には、処理はステップS1002−2に進み、nラインの画素を入力する。以後、前述したステップS1003、ステップS1004を実行する。即ち、図20と図21と後述の図23に示す印加タイミングp0〜p8における画素の濃度値を算出する。
ステップS1004−1では、フラグの値が“1”であるかどうかを調べる。ここで、フラグの値が“1”(Yes)であるなら、処理はステップS1004−2に進み、フラグの値を“0”にセットする。そして、nラインの画素を画像始端IAとして処理する。そして、処理はステップS1005’に進む。これに対して、フラグの値が“0”(No)であるなら、処理はステップS1004−3に進み、nラインの画素を内部領域IBとして処理する。
ステップS1005’では、画像始端用出力補正を実行する。具体的には、画像始端用の1次元ルックアップテーブル(1D_LUTstart)を用いて、予熱パルス幅に対応する濃度値PY、PM、PCから予熱パルス幅py、pm、pcを算出する。算出する予熱パルス幅は、図20と図21と後述の図23の画像始端IAである印加タイミングp0〜p8における予熱幅である。即ち、
py = 1D_LUTstart[PY]
pm = 1D_LUTstart[PM]
pc = 1D_LUTstart[PC]
を演算する。
さて、図20と図21を図7と比較すると分かるように、印加タイミングp0におけるpyの予熱パルス幅であるΔt”1は、図7のΔt1よりも狭くしている。その理由は、直前画素領域IWの印加タイミングp’8において、Δt’1の予熱パルスが印加されるので、予熱が過剰になるのを抑制するためである。
図23は図20とは異なる直前画素領域IWの予熱パルスの印加タイミングを説明する図である。図23では、予熱パルス幅Δt”は、図7のΔt1と同じであり、Δt’1が図20と図21よりも狭い。Δt’1を狭くする制御はステップS1002fの1D_LUTpreで実現できる。
図22に戻って説明を続けると、ステップS1006’では、図10のステップS1006と同様な予熱パルス生成&合成を実行する。その後、処理はステップS1007に進む。
一方、ステップS1004−3では、nラインの画素を内部領域IBとして内部領域出力補正を実行する。これはステップS1005と同様の処理である。その後、処理はステップS1006’に進む。
従って以上説明した実施例によれば、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
なお、ステップS1002eで用いる3D_LUTpreは予熱パルスのみを生成するものとして説明したが、後述する実施例5の場合にはnライン画素の特定色を発色する為の加熱パルスを持つ構成の3D_LUTpreに変更する。その構成とは、ステップS1004で用いる3D_LUTの構成である。
<変形例1>
画像始端IAで用いる加熱パルスは以上の例に限定されるものではなく、他の加熱パルスを用いても良い。
図24は画像始端IAの印加タイミングp0〜p8に対し、図9に示した加熱パルスに基づいた加熱パルスを用いる例を示す図である。
図8のステップS615Aの高発色印刷ジョブ実行において、図22のフローチャートを適用することで、図24に示す直前画素領域IWの印加タイミングp’0〜p’8と画像始端IAの印加タイミングp0〜p8の加熱パルスを生成できる。また、内部領域IBの印加タイミングp0〜p8の加熱パルスも生成することができる。なお、直前画素領域IW用の3D_LUTpre、1D_LUTpreの内容は図24の予熱パルス幅となるように変更して用いる。
画像始端IAと内部領域IB用の3D_LUTの内容は図9に示した加熱パルスと同様である。また、画像始端IA用の1D_LUTpreの内容は図24に示した予熱パルス幅となるように変更して用いる。内部領域IB用の1D_LUTは図9に示した加熱パルスと同様である。図24に示したΔt’1とΔt”1の幅を見ると、Δt”1を狭くするように制御しているが、図23に示すようにΔt’1を狭くするように制御してもよい。
従って以上の構成により、高発色印刷ジョブにおいても、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
また、図11〜図13に示した構成の加熱パルスついても、上記説明した図9に対する図24への適用のようにすることで、画像始端IAの発色を改善できる。
<変形例2>
さらに画像始端IAで用いる加熱パルスは以上の例に限定されるものではなく、他の加熱パルスを用いても良い。
図25は画像始端IAの印加タイミングp0〜p8に対し、図15に示した加熱パルスに基づいた加熱パルスを用いる例を示す図である。
図14のステップS615”の高速印刷ジョブ実行において、図22のフローチャートを適用することで、図25に示す直前画素領域IWの印加タイミングp’0〜p’6と画像始端IAの印加タイミングp0〜p6の加熱パルスを生成できる。また、内部領域IBの印加タイミングp0〜p6の加熱パルスも生成することができる。なお、直前画素領域IW用の3D_LUTpre、1D_LUTpreの内容は図25の予熱パルス幅となるように変更して用いる。
画像始端IAと内部領域IB用の3D_LUTの内容は図15に示した加熱パルスと同様である。また、画像始端IA用の1D_LUTpreの内容は図25に示した予熱パルス幅となるように変更して用いる。内部領域IB用の1D_LUTは図15に示した加熱パルスと同様である。図25に示したΔt’1とΔt”1の幅を見ると、Δt”1を狭くするように制御しているが、図23に示すようにΔt’1を狭くするように制御してもよい。
従って以上の構成により、高速印刷ジョブにおいても、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
また、図16〜図18に示した構成の加熱パルスついても、上記説明した図15に対する図25への適用のようにすることで、画像始端IAの発色を改善できる。
実施例3では、図19に示した記録媒体(赤外線画像部材)10の搬送方向における画像始端IAの発色向上を直前画素領域IWの予熱パルスを画像始端IAの画素値を参照して生成することにより実現する例を説明した。この実施例では、画像始端IAの画素値に応じて直前画素領域IWの画素値を補正して予熱パルスを生成する例について説明する。
図26は、直前画素領域IWが白画素である場合に画像始端IAの画素値に応じて補正した後の直前画素領域IWの画素値を格納した補正テーブルを説明する図である。
この補正テーブルは画像始端IAのR、G、B各256階調の組み合わせに対する直前画素領域IWの補正後のR、G、Bの画素値が格納されている。直前画素領域IWが白画素である場合、画像始端IAの画素値と図26が示す補正テーブルとによって、直前画素領域IWの補正後の画素値を算出できる。例えば、Y、M、C、R、G、B、Kについて、
色 画像先端Aの画素値 直前画素領域IWの補正後値
R G B R G B
Y 255 255 0 255 255 240
M 255 0 255 255 196 255
C 0 255 255 128 255 255
R 255 0 0 255 240 240
G 0 255 0 128 255 128
B 0 0 255 196 196 255
K 0 0 0 240 240 240
と算出できる。直前画素領域IWについて補正後の値を用い、画像始端IAや内部領域IBと同じ方法で加熱パルスを生成する。なお、直前画素領域IWの補正後の値による加熱パルスでは直前画素領域IWは視認される発色ではなく、かつ、次の画像始端IAの色にとって予熱効果を発揮する色であることが望ましい。具体的には、画像始端IAの画素値の同様の色相であり、画像の先端では視認される発色にぎりぎり至らない画素値であることが好ましい。図26に示すように、画像始端IAよりも輝度が高い画素値を直前画素領域IWの補正後の画素値とする。
図27は、実施例4に従う加熱パルスを生成して記録ヘッドを駆動する画像処理を示すフローチャートである。この図は、図6、図8、及び図14それぞれのステップS616における印刷ジョブ実行の詳細を示すフローチャートである。なお、図27において、既に図10と図22において説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付して、その説明は省略する。ここでは、この実施例に特有の処理ステップについてのみ説明する。
図27によれば、ステップS1001〜S1002を実行後、ステップS1002−1において、現在処理中のライン(nライン)が非発色域で次の(n+1)ラインが発色域であると判断されたなら処理はステップS1002aに進む。そして、ステップS1002a〜S1002cを実行する。そして、ステップS1002cにおいて、nラインの画素が特定色データ、この例では、“白”、つまり、R=255、G=255、B=255であると判定された(Yes)なら、処理はステップS1002hに進む。これに対して、その画素が特定色ではない(No)なら、処理はステップS1004に進む。
ステップS1002hでは、nライン画素を直前画素領域IWとして処理する。具体的には、図26で説明した補正テーブルを用いて、直前画素領域IWに相当するnラインの画素値を画像始端IAに相当するn+1ライン画素値を使って補正する。その後、処理はステップS1004に進む。
ステップS1004において輝度濃度変換を実行後、処理はステップS1005の出力補正を実行し、さらにステップ1006の予熱パルス生成&合成を実行する。
その後、処理はステップS1007〜S1008の処理を実行する。
以上説明した例を図22と比較すると、この例では、ステップS1004〜S1006に対応する輝度濃度変換、出力補正、予熱パルス生成及び合成の処理をそれ以前の判定結果によらず共通にできる。そのため、ステップS1004〜S1006で参照するテーブルも判定結果によらず共通にできるという利点がある。
従って以上説明した実施例に従えば、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
実施例3〜4では直前画素領域IWが白データであれば、画像始端IAに対して予熱効果を発揮するように予熱パルスを印加する例を説明した。この実施例では直前画素領域IWが白データも含め、直前画素領域IWと画像始端IAの特定色の組み合わせに応じて、直前画素領域IWに予熱パルスを印加する例を説明する。
図28は直前画素領域IWと画像始端IAの特定色の組み合わせに応じた予熱指示と使用するテーブル群の番号を示す図である。なお、この実施例の実行には既に説明した図22に示したフローチャートを用いることができる。
図22におけるステップS1002cにおいて、図28に示すテーブルを参照する。例えば、nラインの画素がR=255、G=255、B=0であり、(n+1)ラインの画素がR=0、G=255、B=255である場合、予熱指示が「する」である為、特定色であると判定をして(Yes)、処理はステップS1002dに進む。さらにステップS1002eでは、実施例1でも説明したように特定色を発色するための加熱パルスも持たせられる3D_LUTを3D_LUTpreとして用いる。また、この3D_LUTは画像始端IAのための予熱パルスも含んでいる。
ステップS1002fで用いる1D_LUTpreと合わせてテーブル群を識別する番号を特定色の組み合わせ毎に予め決めて、図28に示すテーブルのように管理しておくことで、そのテーブルを参照して適切なテーブル群を設定することができる。nラインの画素がR=255、G=255、B=0(即ち、Y色)であり、(n+1)ラインの画素がR=0、G=255、B=255(即ち、C色)である場合、テーブル群番号は12であり、この番号に対応するテーブルが各処理に設定される。
図29はnラインの画素と(n+1)ラインの画素の特定色の組み合わせに対する加熱パルスを説明する図である。図29において、その左端に記載した色はnラインの画素の印刷色を示し、その右端に記載した色は(n+1)ラインの画素の印刷色を示している。
図29に示した、nライン画素のR=255、G=255、B=0(Y色)に対し印加タイミングp’0とp’1で加熱パルスを投入後、(n+1)ライン画素のR=0、G=255、B=255(C色)に対する印加タイミングp5の加熱パルスまでを考える。この場合、経過時間が長いので、Cの画像形成層18は予熱が不十分となる。そこで、図28に示したテーブル群番号12のテーブルには、nライン画素の印加タイミングp’6、p’7、p’8に(n+1)ライン画素のための予熱パルスを生成できる値を設定しておく。さらに、nライン画素の印刷色がRで(n+1)ライン画素Cの場合も印加タイミングp’4からp5まで時間が長い為、印加タイミングp’8に(n+1)ラインのための予熱パルスを設定する。
これに対して、nライン画素の発色によって、(n+1)ライン画素の発色のための予熱効果が十分であれば、(n+1)ライン画素のための予熱パルスをnライン画素に設定する必要はない。例えば、図29に示すように、nライン画素がKで(n+1)ライン画素がCの場合は、nライン画素を発色させる為の加熱によって、(n+1)ライン画素に対しても予熱が十分である為、予熱パルスを設定する必要はない。
nライン画素がR=0、G=0、B=0であり、(n+1)ライン画素がR=0、G=255、B=255である場合、図28のテーブルに従うと、予熱指示が「しない」である。このため、図22のステップS1002cでは特定色でないと(No)判定して、処理はステップS1004に進む。
さて、図22において、ステップS1005’、S1006’、S1004−3ではテーブルを用いるが、nライン画素と(n+1)ライン画素の組に対応するテーブル群番号に対応するテーブルを使って処理を実行する。
従って以上説明した実施例に従えば、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
なお、以上の説明では、図22に示したフローチャートの処理を適用する例について説明したが、図27に示したフローチャートの処理を適用してこの実施例の処理を実行することができる。
即ち、図27におけるステップS1002cにおいて、図28に示すテーブルを参照する。例えば、nライン画素がR=255、G=255、B=0であり、(n+1)ライン画素がR=0、G=255、B=255である場合、予熱指示が「する」である為、特定色である(Yes)と判定して、処理はステップS1002hに進む。また、nライン画素がR=0、G=0、B=0であり、(n+1)ライン画素がR=0、G=255、B=255である場合、予熱指示が「しない」である為、特定色でない(No)と判定して、処理はステップS1004に進む。
なお、図27に示すフローチャートを適用する場合は、ステップS1002hで用いるテーブルを特定色の組み合わせに応じて設定できるように、テーブル群番号を設定しておけばよい。
実施例3〜5では設定し印加される直前画素領域IWの予熱パルスを設定する例を説明した。この実施例では、熱履歴によって直前画素領域IWの予熱パルスの幅または印加タイミングを変更する例について説明する。熱履歴によって予熱パルス幅や印加タイミングを変更する理由は、予熱効果の過不足を低減することにある。熱履歴とはサーミスタにより検知した赤外線画像部材10の周辺温度、または直前画素領域IW以前に印加された加熱パルスのパターンに基づいた、赤外線画像部材10の直前画素領域IWの各層の推定温度の履歴である。
赤外線画像部材10の画像形成層14と画像形成層16と画像形成層18の予め分かっている活性化温度と、実験によって様々な画像を印刷して発色した色とから、発色した色毎の各画像形成層の温度を推定することができる。また、各印刷時の発色時の記録装置40に備えられたサーミスタ(不図示)の温度を記録し、サーミスタの温度と推定した各画像形成層の温度との対応関係をテーブル化する。または、上記実験において上記発色した色に対する加熱パルスのパターンと上記推定した各画像形成層の温度との対応関係をテーブル化しても良い。
ステップS616の印刷ジョブ実行時、ステップS615Aの高発色印刷ジョブ実行時、ステップS615”の高速印刷ジョブ実行時に、上記説明したテーブルを参照して、サーミスタの温度又は加熱パルスのパターンから直前画素領域IWの温度を推定できる。
この実施例では、その推定温度によって、図20、図21、図23の印加タイミングp’0〜p’8の予熱パルス幅と印加タイミングを変更する。具体的には、実施例3で説明した予熱パルス幅と印加タイミングの両方を算出できる3D_LUTpreを温度に応じて予め複数用意しておき、推定温度に対応する3D_LUTpreを選択する。このようにして、印加タイミングp’0〜p’8の予熱パルス幅と印加タイミングを変更することができる。
この変更では、温度が高い方が、予熱パルス幅が狭くなるか、或いは、印加タイミングの回数が少なくなるように制御する。
図30は熱履歴が高温の場合の予熱パルスとこれに続く加熱パルスの例を示す図である。これに対して、図20は熱履歴が常温の場合のnライン画素の予熱パルス幅を示している。
図30と図20とを比較すると分かるように、色がY、R、Kの場合、印加タイミングp’8における予熱パルス幅Δt’1は図20の場合より図30の場合は狭い。また、色がM、Bの場合、図30では印加タイミングp’7では予熱パルスを印加しない。色がC、Gの場合、図30では印加タイミングp’6では予熱パルスを印加しない。ここでは、図20と図30の2つのパターンで説明をしたが、予熱パルス幅または印加タイミングの回数が異なる3つ以上のパターンを熱履歴に応じて使い分けてもよい。また、直前画素領域IWは視認される発色に至らず、画像始端IAに予熱効果を発揮する予熱パルス幅と印加タイミングを温度に応じて3D_LUTpreに予め設定しておくと良い。
従って以上説明した実施例に従えば、画像始端IAに対する予熱効果と内部領域IBに対する予熱効果の違いを熱履歴に応じて小さくし、画像始端IAの発色を改善することができる。
<その他の実施例>
内部領域IBと同様に実施例3〜6は画像始端IAの加熱パルスに予熱パルスを含んでいる例で説明した。しかし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、画像始端IAに対する予熱を直前画素領域IWの予熱パルスのみで実行しても良い。
図31は、画像始端IAに対する予熱を直前画素領域IWの予熱パルスのみで実行する例を示す図である。
以下、図31に示す予熱パルスの特徴を図20と比較して説明する。
Yの場合、図20の直前画素領域IWの予熱パルスと画像始端IAのパルスをΔt0だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。
Mの場合、図20の直前画素領域IWにおける予熱パルスをΔt0だけ早く印加し、画像始端IAのパルスをΔt0×2だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。ここで、予熱パルスの数を4つから3つに減らしているのは、図20と異なり、予熱パルスを連続した印加タイミングで印加できるため、予熱効果が高く、予熱パルスの数を4つのままにすると直前画素領域IWでMが発色してしまうからである。
Cの場合、図20の直前画素領域IWにおける予熱パルスをΔt0×2だけ早く印加し、画像始端IAのパルスをΔt0×8だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。ここで、予熱パルスの数を6つから5つに減らしているのは、図20と異なり、予熱パルスを連続した印加タイミングで印加できるため、予熱効果が高く、予熱パルスの数を6つのままにすると直前画素領域IWでCが発色してしまうからである。
Rの場合、図20の直前画素領域IWの予熱パルスと画像始端IAのパルスをΔt0だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。
Gの場合、図20の直前画素領域IWにおける予熱パルスと画像始端IAのパルスをΔt0だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。
Bの場合、図20の直前画素領域IWにおける予熱パルスをΔt0だけ早く印加し、画像始端IAのパルスをΔt0×2だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。ここで、予熱パルスの数を4つから3つに減らしているのは、図20と異なり、予熱パルスを連続した印加タイミングで印加できるため、予熱効果が高く、予熱パルスの数を4つのままにすると直前画素領域IWでMが発色してしまうからである。
Kの場合、図20の直前画素領域IWにおける予熱パルスと画像始端IAのパルスをΔt0だけ早く印加することで、図31に示すように画像始端IAは画像形成パルスのみになる。
以上説明したように、図31に示すようなタイミングでのパルス印加にすることでも、画像始端IAの発色を改善できる。
これまで説明してきたように、予熱用加熱パルスを、RGBやCMY等の3刺激値の組み合わせに応じて設定することで、発色効率を上げる事ができる。そして、その発色効率の向上を高発色の実現に用いることも、高速記録に用いることも可能になる。
なお、3刺激値の組み合わせによる予熱用加熱パルスの要/不要の判定を簡単な処理とするため、Y=0であるか否か(B=255であるか否か)という判定とし、その判定結果がYesの場合に予熱用加熱パルスを用いる構成としても良い。
これは、赤外線画像部材10において、その部材の最も表面近くにY色発色層を持ち、最も発色温度が高い為、他の色の発色に対して予熱的効果を持つからである。当然、赤外線画像部材10において、他の色、例えば、その部材の最も表面近くにM色発色層を持ち、最も発色温度が高い場合には、M=0であるか否か(G=255であるか否か)という判定を行うことが適切であることは言うまでもない。
さらに、以上説明した実施形態では記録装置とホスト装置とが分離した形態として説明したが、画像データを供給する供給元としてのホスト装置はデジタルカメラなどの撮像装置でよい。この場合、記録装置とデジタルカメラとが一体化した装置、いわゆる、撮影機能付きの記録装置も本発明に含まれるものである。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。