JP2021116469A - 溶融Zn系めっき鋼板および電気機器 - Google Patents

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【課題】溶融Zn系めっき層からのウィスカの発生を抑制できる溶融Zn系めっき鋼板を提供すること。【解決手段】本発明は、溶融Zn系めっき鋼板に関する。上記溶融Zn系めっき鋼板は、基材鋼板と、前記基材鋼板の表面に形成された溶融Zn系めっき層と、を有するめっき鋼板であって、前記溶融Zn系めっき層の、前記基材鋼板とは反対側の表面における、Zn相の面積率は、75%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、溶融Zn系めっき鋼板および電気機器に関する。
Zn系めっき鋼板は製造コストが安価であり、かつ、犠牲防食効果により鋼材を錆から保護する効果を有する。そのため、Zn系めっき鋼板は、自動車、建材、家電、土木など幅広い分野で利用されている。
めっき鋼板には、経年使用によりめっき層の表面から針状結晶(ウィスカ)が発生することがある。ウィスカは、大きいものだと径が数μm、長さが数mmに達するものもある。このようなウィスカがめっき層表面から脱落して、配電盤などの電気機器の他の部品に接触すると、基盤のショートや絶縁不良などを引き起こす可能性がある。
そのため、めっき層からのウィスカの発生を抑制する方法が検討されている。
たとえば、特許文献1には、亜鉛含有銅合金材に銅下地めっきを施し、さらに冷間圧延を施した後に、光沢錫めっきを施すことにより、錫めっき層からのウィスカの発生を抑制できると記載されている。特許文献1によれば、上記方法では、銅下地めっきおよび冷間圧延によって、亜鉛含有銅合金材から錫めっき層への亜鉛の拡散速度を小さくして錫めっき層の内部応力の増大を抑制できること、および結晶粒を小さくした光沢錫めっき層中の錫の移動を抑制できること、により、錫めっき層からのウィスカの発生が抑制される、とされている。
また、特許文献2には、電気亜鉛めっき法によるZn系めっき層の形成時に、電流が流れる方向を周期的に変化させることにより、ウィスカ発生を促進する光沢剤を用いずに、長期間にわたって光沢を維持できるZn系めっきを作製できると記載されている。
また、特許文献3には、電流密度を低くするなどの方法で理論析出電圧と実際の電析時に必要な電圧との差を小さくして電気亜鉛めっき法によるZn系めっき層の形成を行い、めっき層中の(0002)面の結晶配向性指数を2.5以上にすることにより、Zn系めっき層からのウィスカの発生を抑制できると記載されている。
特開平4−314875号公報 特開2004−124202号公報 特開2016−106178号公報
めっき層からのウィスカの発生を抑制する方法が特許文献1〜特許文献3には記載されているが、特許文献1は錫めっき層からのウィスカ発生を抑制する方法であり、特許文献2および特許文献3は電気Zn系めっき層からのウィスカ発生を抑制する方法であり、溶融Zn系めっき層からのウィスカの発生を抑制する方法は今まで知られていない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、溶融Zn系めっき層からのウィスカの発生を抑制できる溶融Zn系めっき鋼板、および当該溶融Zn系めっき鋼板を用いた電気機器を提供することをその目的とする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する溶融Zn系めっき鋼板は、基材鋼板と、前記基材鋼板の表面に形成された溶融Zn系めっき層と、を有するめっき鋼板であって、前記溶融Zn系めっき層の、前記基材鋼板とは反対側の表面における、Zn相の面積率は、75%以下である。
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に関する電気機器は、上記溶融Zn系めっき鋼板を有する。
本発明によれば、溶融Zn系めっき層からのウィスカの発生を抑制できる溶融Zn系めっき鋼板、および当該溶融Zn系めっき鋼板を用いた電気機器が提供される。
図1は、6質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の表面写真である。 図2Aは、3質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の断面写真であり、図2Bは、6質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の断面写真である。
[溶融Zn系めっき鋼板]
本発明の一実施形態に関する溶融Zn系めっき鋼板(以下、単に「めっき鋼板」ともいう。)は、基材鋼板と、上記基材鋼板の表面に形成された溶融Zn系めっき層と、を有する。
めっき鋼板は、板状のめっき鋼板でもよいし、加工された鋼板にめっきが施された加工品や、めっきが施された板状の鋼板を加工して得られる加工品であってもよい。
なお、めっき鋼板に含まれる各めっき層および金属間化合物の組成は、エネルギー分散型X線分析(EDX)やナノビーム電子回折(NBD)などの公知の方法で測定することができる。
[基材鋼板]
基材鋼板の種類は、特に限定されない。たとえば、基材鋼板は、低炭素鋼、中炭素鋼および高炭素鋼などを含む炭素鋼でもよいし、Mn、Cr、Si、Niなどを含有する合金鋼(ステンレス鋼など)でもよい。また、基材鋼板は、Alキルド鋼などを含むキルド鋼でもよいし、リムド鋼でもよい。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼および低炭素Nb添加鋼などを含む深絞り用鋼板が基材鋼板として好ましい。また、P、Si、Mnなどの量を特定の値に調整した高強度鋼板を基材鋼板として用いてもよい。
[溶融Zn系めっき層]
溶融Zn系めっき層は、基材鋼板の表面に形成された、Znを主成分とする溶融めっき層である。なお、Znを主成分とするとは、溶融Zn系めっき層が50質量%以上のZnを含むことを意味する。溶融Zn系めっき層に含まれ得るZn以外の元素の例には、AlおよびMgなどが含まれる。
たとえば、溶融Zn系めっき層は、0.1質量%以上22.0質量%以下のAlを含んでもよい。Alは、不動態化してめっき鋼板の耐食性を高め、かつ、製造時のドロス発生を抑制する。Al含有量を1.0質量%以上とすることで、めっき鋼板の耐食性を十分に高め、また、ドロスの発生も十分に抑制することができる。Al含有量を22.0重量%以下とすることで、溶融Zn系めっき層の密着性の低下を抑制し、また、Znによる犠牲防食効果の低下を抑制することができる。
また、溶融Zn系めっき層は、1.0質量%以上10.0質量%以下のMgを含んでもよい。Mgは、後述するZn相およびZnMg相を含むラメラ状の組織を形成し、ウィスカの発生を効果的に抑制することができる。また、Mgは、溶融Zn系めっき層の表面に緻密な腐食生成物を均一に生成させ、腐食因子の浸食を防いでめっき鋼板の耐食性を高める。Mg含有量を1.0重量%以上とすることで、ウィスカの発生を効果的に抑制し、かつ、上記緻密で均一な腐食生成物を十分に生成させてめっき鋼板の耐食性を十分に高めることができる。Mg含有量を10.0重量%以下とすることで、Znによる犠牲防食効果の低下を抑制することができ、また、ドロスの発生も抑制することができる。
また、溶融Zn系めっき層は、Alを含むとき、基材鋼板と溶融Zn系めっき層との密着性を向上させるために、基材鋼板と溶融Zn系めっき層との界面におけるFe−Zn合金層およびFe−Al合金層の成長を抑制できるSiを0.005質量%以上2.0質量%以下の範囲で含んでいてもよい。さらに、溶融Zn系めっき層は、Mgを含むとき、外観および耐食性に悪影響を与えるZn11Mg相の生成および成長を抑制するために、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物を含んでいてもよい。これらの化合物の含有量は、Tiが0.001質量%以上0.1質量%以下の範囲内であることが好ましく、Bが0.0005質量%以上0.045質量%以下の範囲内であることが好ましい。
ところで、溶融Zn系めっき層に発生するウィスカの原因はめっき層内部の残留応力であり、上記残留応力によりZn相を構成するZn原子が移動して、溶融Zn系めっき層の表面から押し出されることにより、ウィスカが発生する。従来、電気めっきで作製したZn系めっき層からはウィスカが発生しやすいと考えられていたが、めっきが溶融状態から凝固する溶融Zn系めっき層では、残留応力が少ないため、ウィスカが発生しにくいと考えられていた。しかし、本発明者らの知見によれば、温度変化が大きい環境などの厳しい条件下では、溶融Zn系めっき層からもウィスカが発生し得る。
そこで、本実施形態では、溶融Zn系めっき層の、基材鋼板とは反対側の表面におけるZn相の面積率を、75%以下とする。これにより、軟質なZn相をより硬質な金属間化合物相で分断して、Zn相中のZnの自由な移動を制限することで、上記Znの移動によるウィスカの発生を抑制し得る。また、上記表面におけるZn相の面積率を75%以下とすれば、溶融Zn系めっき層の表面のうち、ウィスカが発生し得る起点を少なくすることによっても、ウィスカの発生が抑制される。上記観点から、上記表面におけるZn相の面積率は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以上70%以下であることがさらに好ましい。
上記表面におけるZn相の面積率は、溶融Zn系めっき層に含まれるZn以外の元素を含む相の形成によって、上述した範囲に調整することができる。
たとえば、AlおよびMgを含む溶融Zn−Al−Mg合金めっき層では、Alの量に応じて、めっき層中の金属組織中に、Al/Zn/ZnMg三元共晶組織の素地中に初晶Al相、Zn単相およびZnMg相が混在してラメラ状に分布した組織が形成される。このようなZnMg相を含むラメラ状の組織では、硬質のZnMg相によってZn相が細かく分断されているため、ウィスカの発生がより効果的に抑制される。
本実施形態では、溶融Zn系めっき層中で上記ZnMg相を含むラメラ状の組織の組織が占める体積の割合が、40%以上であることが好ましい。上記体積の割合が40%以上であると、溶融Zn系めっき層中に含まれるZn相のうち、上記ラメラ状の組織において分断されているZn相の割合が十分に多くなるため、ウィスカの発生がより効果的に抑制される。上記観点からは、上記体積の割合は50%以上であることが好ましく、60%以上75%以下であることがより好ましく、55%以上70%以下であることがさらに好ましい。上記体積の割合は、溶融Zn系めっき層中のMgの割合によって変化させることができ、たとえば溶融Zn系めっき層中のMgの割合を1.0質量%以上とすることで、上記体積の割合を40%以上とすることができる。
図1は、6質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の表面写真である。溶融Zn系めっき層の表面においても、図中白色のZn相が、灰色のZnMg相および黒色のAl相によって分断されていることが確認できる。このような溶融Zn系めっき層では、表面に対してウィスカ発生の起点となるZn相が占める割合が小さくなっているため、ウィスカの発生が抑制される。
図2Aは、3質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の断面写真であり、図2Bは、6質量%のAl、および3質量%のMgを含む溶融Zn系めっき層の断面写真である。いずれの断面でも、図中白色のZn相、灰色のZnMg相および黒色のAl相を含むラメラ状の組織が形成されており、Zn相がZnMg相に分断されていることが確認できる。また、図2Bでは、島状の初晶Al相が形成されていることも確認できる。このような溶融Zn系めっき層では、Zn相が細かく分断されているため、Zn原子の自由な移動が制限され、ウィスカの発生がさらに効果的に抑制される。
溶融Zn系めっき層の厚みは、特に限定されないが、3μm以上100μm以下であることが好ましい。溶融Zn系めっき層の厚みを3μm以上とすることで、取り扱い時に発生するキズが基材鋼板に到達しにくくして、外観の保持性および耐食性を保ちやすくすることができる。一方、溶融Zn系めっき層の厚みを100μm以下とすることで、圧縮を受けた際の延性がめっき層と基材鋼板との間で異なることによる、加工部における溶融Zn系めっき層と基材鋼板との剥離を抑制することができる。
めっき鋼板は、溶融Zn系めっき層の表面に形成されたクロメートフリー皮膜、無機系皮膜および有機系樹脂皮膜などの表面層を有してもよい。
[溶融Zn系めっき鋼板の製造方法]
上述した溶融Zn系めっき鋼板は、上述した溶融Zn系めっき層と同じ組成を有するめっき浴に基材鋼板を浸漬する方法で、製造することができる。
また、めっき浴に基材鋼板を浸漬する前に、アルカリ脱脂、酸洗などの前処理を行ってもよい。
[用途]
上述しためっき鋼板は、ウィスカの発生が抑制されているので、配電盤および制御盤などの電気機器に用いたときに、ウィスカの脱落によるショートや絶縁不良などが生じにくい。
また、上述しためっき鋼板は、特に加熱および冷却に繰り返しさらされるような苛酷な状況でもウィスカの発生が抑制されている。このような状況では、基材鋼板とZn系めっき層との間の熱膨張係数の違いにより、より膨張しやすいZn系めっき層には、膨張しにくい基材鋼板により体積変化が規制させることによる圧縮応力が印加され、この圧縮応力によって、ウィスカ発生の原因となる内部応力が発生しやすい。しかし、上述しためっき鋼板は、このような苛酷な状況でもウィスカの発生が抑制されているので、車両、船舶および飛行機などの、加熱および冷却に繰り返しさらされるような用途に適している。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.溶融Zn系めっき鋼板の作製
板厚0.8mmの中炭素鋼の冷延鋼板(基材鋼板)を用意し、めっき浴に浸漬して、溶融Zn系めっき層を有する溶融Zn系めっき鋼板1〜溶融Zn系めっき鋼板7を作製した。溶融Zn系めっき層は、露点が−40℃の雰囲気で最高到達温度を600℃とした還元炉で基材鋼板を加熱処理し、浴温を460℃としためっき浴に3秒浸漬させた後、冷却速度18℃/秒として冷却することにより、形成した。
めっき浴の組成は、表1に記載の組成を有する溶融Zn系めっき層が形成されるように調整した。
2.電気Zn系めっき鋼板の作製
板厚0.8mmの中炭素鋼の冷延鋼板を用意し、電気めっきを行い、電気Zn系めっき層を有する電気Zn系めっき鋼板8を作製した。電気Zn系めっき層は、電解によるアルカリ脱脂および濃度が50g/Lの硫酸水溶液で10秒間の酸洗および洗浄を行った基材鋼板を、温度60℃の亜鉛めっき浴に浸漬し、めっき浴と基材鋼板との間の相対流速を1.0m/sとして電流密度を30A/dmとして電気めっきを行うことにより、形成した。めっき液は、350g/Lの硫酸亜鉛7水和物、80g/Lの硫酸ナトリウム、およびpHが1.3となる量の硫酸を含有する硫酸酸性めっき浴だった。
3.評価
3−1.めっき層の表面におけるZn相の面積率
それぞれの溶融Zn系めっき鋼板および電気Zn系めっき鋼板の表面のうち、表面形状が平均的である部分を、倍率を3000倍として走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、当該視野におけるZn相の面積率を測定した。15視野について測定されたZn相の面積率の平均値を、当該めっき鋼板の表面におけるZn相の面積率(表1中、「Zn相面積率」と示す)とした。
3−2.めっき層中でZnMg相を含むラメラ状の組織の組織が占める体積の割合
それぞれの溶融Zn系めっき鋼板および電気Zn系めっき鋼板の表面のうち、表面形状が平均的である部分を5箇所切断し、得られた断面を倍率を2000倍としてSEMで観察して、当該視野におけるZnMg相を含むラメラ状の組織の組織が占める面積の割合を測定した。測定された面積の割合の平均値を、当該めっき層中でZnMg相を含むラメラ状の組織の組織が占める体積の割合(表1中、「ラメラ組織割合」と示す)とした。
3−3.耐ウィスカ性の評価
それぞれの溶融Zn系めっき鋼板および電気Zn系めっき鋼板を30mm×30mmに切り出し、125℃と−55℃の雰囲気へのそれぞれ10分のさらしを1サイクルとした冷熱サイクル試験を1000サイクルおよび5000サイクル行い、冷熱サイクル試験後のそれぞれのめっき鋼板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、以下の基準で耐ウィスカ性を評価した。
○ ウィスカの発生は観察されなかった
△ 長さ5μm未満のウィスカが観察された
× 長さ5μm以上のウィスカの発生が観察された
Figure 2021116469
表1に示すように、溶融Zn系めっき層の表面におけるZn相の面積率が75%以下であると、冷熱サイクル試験を繰り返してもウィスカの発生は抑制されていた。
特に、溶融Zn系めっき層にZnMg相を含むラメラ状の組織の組織が含まれていると、より苛酷な条件での冷熱サイクル試験を繰り返しても、ウィスカの発生は抑制されていた。
一方で、溶融Zn系めっき層の表面におけるZn相の面積率が75%を超えると、めっき層からウィスカが発生しやすかった。
本発明の溶融Zn系めっき鋼板は、加熱および冷却に繰り返しさらされるような苛酷な状況にさらされてもウィスカが発生しにくい。そのため、本発明の溶融Zn系めっき鋼板は、車両、船舶および飛行機などに好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 基材鋼板と、前記基材鋼板の表面に形成された溶融Zn系めっき層と、を有するめっき鋼板であって、
    前記溶融Zn系めっき層の、前記基材鋼板とは反対側の表面における、Zn相の面積率は、75%以下である、
    溶融Zn系めっき鋼板。
  2. 前記溶融Zn系めっき層は、1.0質量%以上10.0質量%以下のMgを含み、かつ
    Zn相と、前記Zn相を分断するZnMg相と、を含むラメラ状の組織を有する、
    請求項1に記載の溶融Zn系めっき鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の溶融Zn系めっき鋼板を有する電気機器。
  4. 配電盤である、請求項3に記載の電気機器。
  5. 制御盤である、請求項3に記載の電気機器。
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