JP2021115505A - 水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システム - Google Patents

水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムを提供することである。【解決手段】上記課題を解決するために、水素イオン源中から水素イオン交換膜を介して透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段を備える水素回収装置及び水素回収方法を提供する。また、水素回収部と、濃縮部と、炭酸イオン生成部と、反応部を備えた二酸化炭素固定化システムを提供する。本発明によれば、低コスト・低エネルギー、かつ二酸化炭素の排出を伴うことなく水素が得られる。また、本発明によれば、水素イオン源からの水素回収と併せて、二価イオンと、炭酸イオン化した二酸化炭素とを反応させた炭酸塩化による二酸化炭素固定化を行うことで、低コスト・低エネルギー、かつ高効率で二酸化炭素の固定化ができる。【選択図】図2

Description

本発明は、水素回収装置及び水素回収方法に関するものである。特に、本発明は、水素イオン源から水素を回収する水素回収装置及び水素回収方法に関するものである。
また、本発明は、二酸化炭素固定化システムに関するものである。特に、本発明は、水素イオン源から水素を回収する水素回収部を備える二酸化炭素固定化システムに関するものである。
近年、地球温暖化などの環境問題に対して大きな影響を与えるとされる二酸化炭素について、環境への排出を抑制することが早急に対応すべき課題となっている。この課題に対し、二酸化炭素の排出量自体を削減する技術や、排出された二酸化炭素を回収し、固定化する技術に係る研究が進められている。
特に、二酸化炭素の回収・固定化に係る技術として、様々な方法が検討されている。例えば、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する方法として、モノエタノールアミンなどの吸収液に二酸化炭素を溶解させる化学吸収法や、ガス吸着能を有する吸着剤に二酸化炭素を吸着させる物理吸着法のほか、膜を用いた膜分離法などが知られている。また、これらの方法以外に、大気中の二酸化炭素濃度を低減させるという観点から、海洋に二酸化炭素を供給することで、海洋中に二酸化炭素を貯留し、大気からは二酸化炭素を隔離するという海洋貯留に係る方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、深層の海水を海面付近まで汲み上げ、汲み上げた海水に二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素の固定化システムが記載されている。
特開2000−262888号公報
特許文献1に記載されるように、海水に二酸化炭素を吸収させる場合、大気中の二酸化炭素を一時的に海水中に溶存させることができるが、大気中の二酸化炭素分圧との差分により海水中に溶存した二酸化炭素は再び大気中に放散されてしまう。さらに、海水中に効果的に二酸化炭素を溶存させ、海洋における二酸化炭素の貯留量を高めることができたとしても、海洋中に二酸化炭素が溶存することにより、海洋のpHが低下するという海洋酸性化を引き起こす可能性がある。
海洋酸性化は、様々な海洋生物の成長や繁殖等に関与し、生態系への影響が懸念されている。また、本来、自然環境下においても海洋には一定量の二酸化炭素が吸収されているが、海洋酸性化により、海洋が吸収できる二酸化炭素の量が減少し、大気中の二酸化炭素が増加する要因ともなり得る。そして、大気中の二酸化炭素濃度が増加すると、海洋表面に接触する二酸化炭素濃度が増加するため、海洋酸性化は解消されることなく進行し続けることになる。このため、海洋酸性化と大気中の二酸化炭素濃度増加という2つの問題が同時に深刻化していくというおそれがある。したがって、大気中の二酸化炭素濃度を減少させるとともに、海洋酸性化を解消するための技術が求められている。
一方、近年、大気中への二酸化炭素の排出抑制の観点から、二酸化炭素の発生・排出を伴わないエネルギー源に係る技術に関する検討も進んでいる。このようなエネルギー源の一つとして、水素が挙げられる。水素は、酸素との反応による発電や、燃焼による熱回収など、エネルギーとしての利用時に二酸化炭素を排出しないという利点を有することから、次世代のエネルギー源として着目されている。水素は、様々な資源からつくることができるという利点を有するが、現在主流とされている化石燃料を用いた水蒸気改質では、水素を得る際に一酸化炭素や二酸化炭素の排出を伴うという問題が生じてしまう。
したがって、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う環境問題を解決するためには、二酸化炭素の固定化のみならず、海洋酸性化の解消に係る技術やカーボンフリーな新たなエネルギー源を得る技術等が求められている。
本発明の課題は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムを提供することである。具体的には、低コスト・低エネルギー、かつ二酸化炭素の排出を伴わずに水素を回収することができる水素回収装置及び水素回収方法を提供することである。また、低コスト・低エネルギー、かつ高効率で二酸化炭素を固定化することができる二酸化炭素固定化システムを提供することである。
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、水素イオン交換膜を用い、イオン状態の水素を含む水素イオン源から水素イオンのみを透過させた後、水素として回収することで、低コスト・低エネルギー、かつ二酸化炭素の排出を伴うことなく水素が得られることを見出して、本発明を完成した。また、本発明者は、水素イオン源からの水素回収と併せて、二価イオンと、炭酸イオン化した二酸化炭素とを反応させた炭酸塩化による二酸化炭素固定化を行うことで、低コスト・低エネルギー、かつ高効率で二酸化炭素を固定化することが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムである。
上記課題を解決するための本発明の水素回収装置は、水素イオン源から水素を回収する水素回収装置であって、水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜と、水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段と、を備えるという特徴を有する。
本発明の水素回収装置は、水素イオン源から水素イオン交換膜を介して水素イオンのみを透過させ、その後水素として回収することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を得ることが可能となる。また、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
また、本発明の水素回収装置の一実施態様としては、水素回収手段は、水素イオン交換膜を透過した水素イオンに電子供与を行うものであるという特徴を有する。
この特徴によれば、水素イオン交換膜を透過した水素イオンに対する電子供与手段を設けることで、イオンを容易に単体(水素)の形として回収することができる。特に、膜表面あるいは膜近傍で電子供与を行うことで、効率的に水素を回収することができる。このとき、水素回収手段として必要なエネルギーは、水素イオンに電子供与することができる程度のものであればよく、水の電気分解などに比べ、低コスト・低エネルギーで実施することができる。
また、本発明の水素回収装置の一実施態様としては、水素イオン源は、二酸化炭素が溶解した水溶液であるという特徴を有する。
二酸化炭素が水溶液に溶解すると、水溶液内では、二酸化炭素と炭酸との平衡状態から、炭酸の一部が水素イオンと重炭酸イオンに電離する。さらに、重炭酸イオンが水素イオンと炭酸イオンに電離する。したがって、二酸化炭素が溶解した水溶液中には、水素がイオン状態で含まれるため、水素イオン源として利用することが可能である。また、二酸化炭素が溶解した水溶液を水素イオン源として用いることで、水素イオンを消費することになるため、二酸化炭素の水溶液への溶解に係る化学平衡は、炭酸イオンを生成する方向に反応が進行することになる。したがって、水溶液に溶解する二酸化炭素の量を増大させることが可能となるため、水素回収とともに、大気中への二酸化炭素の排出を抑制することができる。さらに、炭酸イオンの生成量が増加することで、炭酸塩固定法による二酸化炭素の固定化を高効率化することが可能となる。
また、本発明の水素回収装置の一実施態様としては、水素イオン源は、海水であるという特徴を有する。
一般に、自然環境下において海水には一定量の二酸化炭素が溶解し得るため、海水は水素イオン源として活用することができる。また、海洋貯留に用いられた海水など、人為的に二酸化炭素を溶解させた海水も水素イオン源として活用することができる。したがって、この特徴によれば、水素イオン源の調達にかかるコスト及びエネルギーを大幅に低減させることが可能になる。また、海水を水素イオン源とし、海水中から水素を回収することにより、海水中の水素イオンを減少させることになるため、海水のpHが本来の値から酸性側になることを抑制し、海洋酸性化の進行を抑制することも可能となるという効果を奏する。
また、上記課題を解決するための本発明の水素回収方法は、水素イオン源から水素を回収する水素回収方法であって、水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜を用い、水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収工程を備えるという特徴を有する。
本発明の水素回収方法は、水素イオン源から水素イオン交換膜を介して水素イオンのみを透過させ、その後水素として回収することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を得ることが可能となる。また、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
また、上記課題を解決するための本発明の二酸化炭素固定化システムは、水素イオン源から水素を回収する水素回収部と、二価イオンを濃縮する濃縮部と、二酸化炭素から炭酸イオンを生成する炭酸イオン生成部と、濃縮部で濃縮された二価イオンと炭酸イオン生成部で生成された炭酸イオンとを接触させ、炭酸塩を生成する反応部と、を備える二酸化炭素固定化システムであって、水素回収部は、水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜と、水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段とを備え、炭酸イオン生成部により水素イオン源が供給されるという特徴を有する。
本発明の二酸化炭素固定化システムは、水素回収部を備えることにより、エネルギーとしての水素を回収するとともに、二価イオンをあらかじめ濃縮し、かつ二酸化炭素をあらかじめ炭酸イオンとした上で、濃縮した二価イオンと炭酸イオンを接触させるため、高効率で炭酸塩の生成反応を進行させることが可能となる。このとき進行する炭酸塩の生成反応は、イオン同士を反応させる発熱反応であるため、反応進行に際して外部からエネルギーを供給する必要がなく、二酸化炭素の固定化における低コスト化・低エネルギー化が可能となる。さらに、二酸化炭素から炭酸イオンを生成する過程で生じた水素イオンを含む溶液を水素イオン源として用い、この水素イオンから水素イオン交換膜を介して水素イオンのみを透過させ、その後水素として回収することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を得ることができる。これにより、二酸化炭素の固定化に加えて、カーボンフリーの水素回収を行うことが可能となる。
本発明によれば、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムを提供することができる。具体的には、低コスト・低エネルギー、かつ二酸化炭素の排出を伴わずに水素を回収することができる水素回収装置及び水素回収方法を提供することが可能である。また、低コスト・低エネルギー、かつ高効率で二酸化炭素を固定化することができる二酸化炭素固定化システムを提供することが可能である。
本発明の第1の実施態様における水素回収装置の概略説明図である。 本発明の第1の実施態様の水素回収装置における水素回収工程を示す概略説明図である。 本発明の第2の実施態様における水素回収装置の概略説明図である。 本発明の第3の実施態様における二酸化炭素固定化システムの概略説明図である。 本発明の第3の実施態様の二酸化炭素固定化システムにおける濃縮部での濃縮工程を示す概略説明図である。 本発明の第4の実施態様における二酸化炭素固定化システムの概略説明図である。 本発明の第4の実施態様における二酸化炭素固定化システムの別態様を示す概略説明図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムの実施態様を詳細に説明する。本発明における水素回収方法は、本発明における水素回収装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムについては、本発明に係る水素回収装置、水素回収方法、及び二酸化炭素固定化システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
(水素回収装置)
本発明の水素回収装置は、水素を回収する水素回収工程を行うためのものである。具体的には、水素イオン源に含まれる水素イオンを取り出し、水素として回収するためのものである。
本発明における水素イオン源Pとしては、水素イオンPを含むものであれば特に限定されない。例えば、河川、湖沼水、地下水、海水のような天然資源のほか、工場からの排水・廃水、埋立地の浸出水などにおいて、酸性度(水素イオン濃度)の高い水溶液が挙げられる。酸性度の高い水溶液の例としては、二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)、塩素(Cl)が溶解した水溶液などが挙げられる。
水素イオン源Pとしては二酸化炭素が溶解した水溶液(以下、「CO溶解水」ともいう)を用いることが好ましい。二酸化炭素(CO)を水(HO)に溶解したとき、一般的には式1に示すような化学平衡式が成り立っている。
Figure 2021115505
式1に示すように、二酸化炭素は水に溶解すると、炭酸(HCO)との平衡状態に達した後、炭酸の一部が水素イオンと重炭酸イオン(HCO3−)に電離する。さらに、重炭酸イオンが水素イオンと炭酸イオン(CO 2−)に電離する。したがって、二酸化炭素が溶解した水溶液中には、水素がイオン状態で含まれるため、水素イオン源Pとして利用することが可能である。また、二酸化炭素が溶解した水溶液を水素イオン源Pとして用いることで、水素イオンPを消費することになるため、式1で示した化学平衡は、炭酸イオン(CO 2−)を生成する方向に反応が進行することになる。したがって、水溶液に溶解する二酸化炭素の量を増大させることが可能となる。これにより、水素回収とともに、大気中への二酸化炭素の排出を抑制することができる。また、後述する二酸化炭素固定化システムに関する原料の一つである炭酸イオンの生成効率を向上させることもできるため、炭酸塩固定法による二酸化炭素の固定化に利用することで、二酸化炭素の固定化を高効率で進行させることが可能となる。
また、水素イオン源Pとしては、海水を用いることが挙げられる。一般に、自然環境下において海水には一定量の二酸化炭素が溶解し得るため、水素イオン源Pとして活用できる。また、海洋貯留に用いられた海水など、人為的に二酸化炭素を溶解させた海水が水素イオン源Pとして特に有用である。この場合、水素イオン源Pの原料調達にかかるコストは、主として海水の搬送に係るコストのみとなる。例えば、本発明の水素回収装置を海に近い陸地あるいは海上に設置することにより、最小限の搬送コストで海水を利用することが可能となる。このため、水素イオン源Pの調達にかかるコスト及びエネルギーを大幅に低減させることが可能になる。また、海水を水素イオン源Pとし、海水中から水素を回収することにより、海水中の水素イオンを減少させることになるため、海水のpHが本来の値から酸性側になることを抑制し、海洋酸性化の進行を抑制することも可能となるという効果を奏する。
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における水素回収装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様における水素回収装置1Aは、図1に示すように、処理槽10を有し、処理槽10内には、水素イオン交換膜12を備えている。そして、水素イオン交換膜12には、一対の電極(電極11a、11b)が設けられている。なお、図1に示すように、処理槽10内は、水素イオン交換膜12を介して、水素イオン源Pを導入する側(空間13a)と、水素イオンPが透過する側(空間13b)に分かれている。
また、処理槽10には、水素イオン源P(CO溶解水)を導入するラインL1と、水素(H)を回収するラインL2が接続されている。なお、図1では、ラインL1は、空間13aと接続するように配置され、ラインL2は、空間13bと接続するように配置されている。
処理槽10は、水素イオン交換膜12を備え、水素イオン源Pを貯留可能となるように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、電解槽や電気透析槽として知られている構造に用いられる素材や形状を使用すること等が挙げられる。
電極11a、11bは、水素イオン交換膜12の表面あるいは近傍に設けられ、導線を用いて接続されている。本実施態様における電極11a、11bは、水素回収手段の一つとして用いられるものである。
電極11a、11bとしては、アノードまたはカソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極11a、11bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極11a、11bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。なお、電極11a、11bは水素イオン交換膜12の表面あるいは近傍に設けるため、水素イオン交換膜12に対する物質移動の阻害を抑制できる形状とすることが好ましい。したがって、本実施態様における電極11a、11bの形状としては、例えば、メッシュ状や針金等の細い棒状などが挙げられる。さらに、電極11a、11bの別の例としては、メッキ処理などの手法により、水素イオン交換膜12の表面に直接電極パターンを作成するもの等が挙げられる。このとき、電極パターンの形状は特に限定されないが、水素イオン交換膜12に対する物質移動の阻害を抑制できるものとすることが好ましい。
また、電極11a及び11bを導線により接続する際、電極間に電気エネルギーを供給するための直流電源を設けることが好ましい。このとき、一対の電極に接続される直流電源については特に限定されないが、太陽電池、風力、波力などの再生可能エネルギーや他の施設における余剰電力を利用するものとすることが好ましい。これにより、水素の回収において使用するエネルギーを低減させることが可能となる。特に、発電に際して二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを用いた場合、二酸化炭素の排出抑制を推進することができるという効果も奏する。
水素イオン交換膜12は、水素イオンPを選択的に透過することができる膜である。
本実施態様においては、例えば、水素イオン交換膜12としては、水素イオンのみを透過させる機能を有するものであればよく、具体的な成分や構造については特に限定されず、公知のものを用いることができる。なお、水素イオン源Pに含まれる一価の陽イオンが水素イオンPのみであることが明らかである場合など、水素回収工程を行う条件によっては、水素イオン交換膜12として、一価の陽イオンを選択的に透過できるように処理したもの(いわゆる一価イオン選択膜)や、二価の陽イオンを含む陽イオン交換膜を用いるものとしてもよい。このとき、一価イオン選択膜や陽イオン交換膜を構成する具体的な成分や構造については特に限定されず、公知のものを用いることができる。
水素回収装置1Aは、水素イオン交換膜12を介して、水素イオン源Pから水素イオンPを選択的に透過させ、水素の回収を行うものである。より具体的には、水素回収装置1Aは、水素イオン源Pが供給された処理槽10内において、水素イオン交換膜12を介して、処理槽10内の空間13aから空間13bへ水素イオンPを選択的に透過させ、その後、水素回収手段により水素イオンPを水素(H)とし、水素回収を行うものである。
水素回収手段は、水素イオン交換膜12を透過させた水素イオンPを水素(H)の形とすることができる手段であればよく、具体的な内容については特に限定されない。
水素回収手段としては、例えば、水素イオン源P中の水素イオンPを水素イオン交換膜12に透過させる手段と、透過させた水素イオンPを水素(H)の形にする手段を含むものが挙げられる。
水素回収手段において、水素イオンPをイオンの状態から単体(水素(H))の形にする手段としては、例えば、電極11a、11b間に電圧を印加することで、水素イオンPに電子を供与し、水素(H)として回収することが挙げられる。このとき、電極11aがアノード、電極11bがカソードとして機能する。
また、水素回収手段において、水素イオン源P中の水素イオンPを水素イオン交換膜12に透過させる手段は特に限定されず、膜を介して特定のイオンを透過させるための公知の手段を用いることができる。このような手段としては、例えば、いわゆる電気透析の原理に基づくことによるイオン移動や、イオンの濃度勾配によるイオン移動等が挙げられる。
電気透析の原理に基づくイオン移動の一例としては、処理槽10内の空間13a及び13bに電解質溶液を導入し、電極11a、11b間に電圧を印加し、水素イオン交換膜12を介したイオン移動を行うことが挙げられる。なお、空間13aに導入する水素イオン源Pは、電解質溶液として機能するものである。したがって、この場合、空間13bにも電解質溶液を導入することが好ましい。これにより、電気透析の原理に基づくイオン移動が生じ、水素イオン交換膜12を介した水素イオンPの移動速度を速め、水素回収に係る時間短縮が可能となるという利点も有する。
このとき、空間13bに導入する電解質溶液は、水素イオン源Pを導入するものとしてもよく、水素イオン源P以外の電解質溶液を導入するものとしてもよい。空間13a及び13b内に電解質溶液を導入する手段としては、例えば、図1に示すように、ラインL1を、空間13a及び13bのそれぞれと接続するように配置し、空間13a及び13b内に水素イオン源Pを導入することが挙げられる。これにより、水素イオン源Pのみを用いて、水素回収を行うことができるため、装置構造及び運転操作が簡易化されるとともに、水素回収に係る原料コストを大幅に低減させることが可能となる。
電極11a及び11b間において電気透析の原理に基づくイオン移動を行う場合、イオン移動させる対象がプラスの電荷を有する水素イオンPであるため、電極11aをカソードとし、電極11bをアノードとして機能させる方が、水素イオンPの移動速度をより速くすることが可能となる。したがって、電極11a及び11b間に、直流電源を介して電流が流れる方向を切り換えることができる機構を設けるものとしてもよい。これにより、電気透析の原理に基づくイオン移動と水素イオンPへの電子供与を効果的に実施することが可能となる。
また、イオンの濃度勾配によるイオン移動の一例としては、処理槽10内の空間13aに電解質溶液(水素イオン源P)を導入し、空間13bには純水などの非電解質溶液を導入してイオン移動を行うものとすることが挙げられる。イオンの濃度勾配に基づくイオン移動は、水素イオン交換膜12を介してイオン濃度勾配を生じさせるための条件を整え、かつイオンの濃度勾配を維持することができれば、外部から供給するエネルギーをほとんど必要とすることなく、イオン移動を進行させることができるという利点を有する。したがって、電極11a、11bには、水素イオンPに電子供与することができる程度の電圧を印加すればよく、電気透析や電気分解などと比較して、電力消費に係るコストを大幅に低減させることが可能となる。
本実施態様の水素回収装置1Aにおける水素回収工程について、図2に基づき説明する。
図2は、本実施態様の水素回収装置1Aにおける水素回収工程を示す概略説明図である。図2における処理槽10内の構成は、図1に示した構成と同じであり、空間13a及び13b内には全て水素イオン源P(CO溶解水)を導入している。なお、図2には、水素回収に関わるイオンの移動についてのみ示しており、それ以外のイオンについては図示を省略している。
図2に示すように、ラインL1を介して処理槽10内に導入された水素イオン源Pは、二酸化炭素が溶解することによって生成する炭酸、重炭酸イオン、炭酸イオン、水素イオンPを含んでいる。そして、空間13a内の水素イオンPは、電気透析あるいはイオン濃度勾配により水素イオン交換膜12を透過し、空間13b側に移動する。また、水素イオン交換膜12を透過した水素イオンPに対し、電極11bから電子が供与されることにより、空間13b内で水素イオンPが水素(H)の形となる。空間13b内で生成した水素は、ラインL2を介して回収される。このとき、水素回収手段として設けられた電極11a、11bは、少なくとも電極11bから水素イオンPに電子を供与することができるように直流電源から電圧を印加するものであればよい。
ラインL2を介して回収された水素の取り扱いについては特に限定されず、貯留施設に移送して貯留するものとしてもよく、あるいは直接ユースポイントに移送してエネルギー源として利用するものとしてもよい。
また、上記水素回収工程後、空間13a内には水素イオン濃度が低下した水素イオン源Pが貯留されることになる。このため、本実施態様の水素回収装置1Aは、空間13a内に貯留された水素イオン濃度が低下した水素イオン源Pを系外に放出する排出手段を設けるものとしてもよい。特に、本実施態様の水素イオン源Pとして、二酸化炭素が溶解し、酸性化した海水を用いる場合、上記排出手段により、空間13a内に貯留された水素イオン濃度が低下した水素イオン源Pを海洋に放出することが好ましい。これにより、二酸化炭素の溶解により酸性度が高くなった海水について、その酸性度を低下させることができるため、本実施態様における水素回収装置1Aは、水素回収と併せて海洋酸性化の解消に係る技術としての活用が可能となる。このような排出手段の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、空間13aに排出配管を設け、排出配管の排出口を直接あるいは間接的に海洋に配設することが挙げられる。このとき、水素イオン源Pを供給するラインL1の取水口を直接あるいは間接的に海洋に配設することが好ましい。これにより、本実施態様における水素回収装置1Aにおいて、海洋から取水した海水をそのまま循環させ、水素回収と併せて海水の酸性化解消に係る処理を連続的に行うことが可能となる。
なお、水素回収装置1Aは、図1及び図2で示した構造に限定するものではなく、水素回収を効率的に行うための各種手段を追加するものとしてもよい。このような手段の一例としては、例えば、電極11a、11bの表面で析出物が生成することを抑制するための手段や、水素イオン交換膜12のイオン透過効率が低減することを抑制するための手段などが挙げられる。
以上のように、本実施態様の水素回収装置1A及び水素回収装置1Aを用いた水素回収方法により、水素イオン源から水素イオン交換膜を介して水素イオンのみを透過させ、その後水素として回収することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を得ることが可能となる。また、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
〔第2の実施態様〕
第2の実施態様に係る水素回収装置1Bは、第1の実施態様における処理槽10内の空間13bに気体を導入するものである。また、第1の実施態様における電極11bに代えて、エアカソードとして機能する電極11cを備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図3は、本発明の第2の実施態様における水素回収装置を示す概略説明図である。
図3に示すように、本実施態様の水素回収装置1Bは、ラインL1を介して空間13aのみに水素イオン源Pを導入し、空間13bには気体を導入するものである。
空間13bに導入する気体は、水素と反応せず、かつ水素より比重の重い気体であればよく、特に限定されない。したがって、空間13bに特定の気体を導入するものとしてもよいが、気体の供給に係るコストなどの観点から、空間13bには大気圧下の空気が導入されていることが好ましい。これにより、水素イオン交換膜12を透過した水素イオンPは、電極11bからの電子供与により水素ガスの形となり、速やかに空間13b内を上昇することになる。したがって、ラインL2による水素回収を容易に行うことができる。さらに、空間13b内の他の成分(気体)と水素ガスの分離を容易に行うことが可能となる。これにより、純度の高い水素をより高効率で得ることが可能となる。
空間13b内に気体(空気)が導入される場合、電極11cは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は水素イオン源P(液体)と接する。このため、電極11cは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。このような電極11cの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極11cを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
本実施態様の水素回収装置1Bを用いた水素回収工程は、水素の回収を気体中で行うこと以外は、第1の実施態様における水素回収工程と同様に実施することができる。
また、本実施態様の水素回収装置1Bにおいても、第1の実施態様における水素回収装置1Aと同様に各種付帯機構を設けるものとしてもよい。特に、水素イオン源Pとして海水を用いる場合、水素回収工程後、空間13a内に貯留された水素イオン源Pを海洋に排出するための排出手段を設けることが好ましい。これにより、水素回収装置1Bを、水素回収及び海水の酸性化を解消する技術として活用することが可能となる。
以上のように、本実施態様の水素回収装置1B及び水素回収装置1Bを用いた水素回収方法により、水素の回収を容易に行うことができるとともに、純度の高い水素をより高効率で得ることが可能となる。
(二酸化炭素固定化システム)
本発明の二酸化炭素固定化システムは、二酸化炭素(炭酸イオン)と二価イオンとを反応させて炭酸塩化することで二酸化炭素の固定化を行うものである。特に、二酸化炭素をあらかじめ水溶液に溶解し、炭酸イオンとしたものと、二価イオンとを反応させて炭酸塩化するものである。また、本発明の二酸化炭素固定化システムは、水素イオン源から水素の回収を行う水素回収部を備えるものである。特に、炭酸イオンを得るために二酸化炭素を溶解した水溶液を水素イオン源として用い、水素を回収するものである。
本発明の二酸化炭素固定化システムにおいて、固定化を行う対象である二酸化炭素の供給源(あるいは発生源)については、特に限定されない。具体的な二酸化炭素の供給源の例としては、例えば、生活・産業活動に伴い、各種施設(発電施設・工場・一般家庭等)や運輸手段から排出される二酸化炭素を含むガスのほか、大気や火山ガス等、天然に存在する二酸化炭素を含むガスなどが挙げられる。
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における二酸化炭素固定化システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Aは、図4に示すように、水素回収部1と、濃縮部2と、炭酸イオン生成部3と、反応部4を備えるものである。また、図4に示すように、二酸化炭素固定化システム100Aは、濃縮部2と炭酸イオン生成部3がそれぞれ反応部4と接続するように配置されている。さらに、図4に示すように、水素回収部1は、炭酸イオン生成部3内に配置され、炭酸イオン生成部3から水素イオン源Pが供給されている。濃縮部2は二価イオン源Mを供給するラインL3と、濃縮された二価イオンMを排出するラインL4を備え、炭酸イオン生成部3は二酸化炭素(二酸化炭素含有ガス)を供給するラインL5と、生成した炭酸イオンを排出するラインL6とを備え、反応部4はラインL4及びラインL6を介して濃縮部2及び炭酸イオン生成部3と接続されるとともに、生成した炭酸塩を回収するラインL7とを備えている。
本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aでは、濃縮部2において二価イオン源M中の二価イオンMを濃縮し、ラインL4を介して濃縮した二価イオンMを反応部4に導入する。一方、炭酸イオン生成部3では、二酸化炭素(二酸化炭素含有ガス)から炭酸イオンを生成し、ラインL6を介して炭酸イオンを反応部4に導入する。そして、反応部4において二価イオンMと炭酸イオンが接触、反応し、炭酸塩が生成される。このように、反応部4での炭酸塩生成反応が進行することで、二酸化炭素が炭酸塩として固定され、二酸化炭素の固定化が行われることになる。また、このとき、炭酸イオン生成部3では、炭酸イオンを生成すると同時に、水素イオンが生成される。このため、炭酸イオン生成部3は、水素回収部1に対して水素イオン源P(CO溶解水)を供給することが可能となる。
本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aにおける水素回収部1は、水素イオン源Pから水素を回収する水素回収工程を行うためのものである。
本実施態様における水素回収部1としては、水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜と、水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段を備えることが好ましい。これにより、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を得ることが可能となる。また、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。このような水素回収部1としては、上述した第1の実施態様における水素回収装置1A、あるいは第2の実施態様における水素回収装置1Bなどが挙げられる。なお、図4における水素回収部1としては、上述した水素回収装置1Aと同様の構造を用いるものとし、電極11a、11bに係る図示を省略している。
本実施態様における水素回収部1の各構造に係る詳細な説明は省略するが、処理槽10は、後述する炭酸イオン生成部3における溶解槽30と兼用することが好ましい。これにより、炭酸イオン生成部3で得られる二酸化炭素が溶解した水溶液を、水素回収部1の水素イオン源Pとして用いることが容易となる。
濃縮部2は、二価イオン源Mから二価イオンMを濃縮する濃縮工程を行うためのものである。
本実施態様における二価イオンMとしては、二酸化炭素(炭酸イオン)と反応し、炭酸塩を生成することができるものであれば特に限定されない。このような二価イオンMとしては、例えば、MgやCaなどの第2族元素の二価イオンや、Fe、Co、Niのような遷移金属の二価イオンが挙げられる。特に、二価イオンMとしては第2族元素の二価イオンを用いることが好ましい。第2族元素の炭酸塩は水への溶解度が低いため、生成した炭酸塩の回収が容易となるという効果を奏する。また、第2族元素の炭酸塩は無害であって、回収した炭酸塩を資源として様々な用途に利用することが可能であるという利点を有する。
また、本実施態様における二価イオン源Mとしては、上述した二価イオンMを含むものであれば特に限定されない。例えば、河川、湖沼水、地下水、海水のような天然資源のほか、工場からの排水・廃水、埋立地の浸出水、二価イオンMを含む鉱物・鉱石の処理工程(採石、加工処理、保管など)から排出される排水・廃水などが挙げられる。
二価イオン源Mとしては海水を用いることが好ましい。従来、炭酸塩固定法では、鉱物・鉱石や鉄鋼スラグなどを用い、様々な化学的・物理的処理を経て炭酸塩化の原料である二価イオンを取り出す必要があった。一方、海水は、一定量のMgやCaがイオンの状態で含まれているため、安定した量の二価イオンMを供給することができる二価イオン源Mとして用いることができる。また、海水を二価イオン源Mとして用いる場合、鉱物・鉱石や鉄鋼スラグと異なり、化学的・物理的処理が不要である。したがって、この場合、二価イオンの原料調達にかかるコストは、主として海水の搬送に係るコストのみとなる。特に、本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Aを海に近い陸地あるいは海上に設置することにより、最小限の搬送コストで利用することが可能である。このため、二価イオンの原料調達にかかるコスト及びエネルギーを大幅に低減させることが可能になる。
本実施態様の濃縮部2は、上述した二価イオン源Mから二価イオンMを濃縮することができるものであればよく、具体的な濃縮手段は特に限定されない。このような濃縮手段としては、例えば、陽イオン交換膜と電極を用い、電気透析の原理に基づきイオン移動を行う手段が挙げられる。これにより、上述した二価イオン源Mのうち、複数のイオン価数のイオンを含むものから効率的に特定のイオン価数のイオン(二価イオン)を選択して濃縮することが可能となる。また、二価イオンMの濃縮を、常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
濃縮部2は、図4に示すように、処理槽20を有し、処理槽20の両端に電極21a、21bを備え、さらに、処理槽20内には2つの陽イオン交換膜22a、22bを備えている。なお、図4では、電極21aと陽イオン交換膜22aの間の空間を第1室23a、陽イオン交換膜22a、22bの間の空間を第2室23b、陽イオン交換膜22bと電極21bの間の空間を第3室23cとしている。
また、処理槽20には、二価イオン源M(海水)を導入するラインL3と、濃縮した二価イオンMを排出するラインL4が接続されている。なお、図4では、ラインL3は、第1室23a、第2室23b、第3室23cのそれぞれと接続するように配置され、ラインL4は、第2室23bと接続するように配置されている。
濃縮部2は、電極間に電流が流れることで二価イオンMを含むイオンが移動するものであればよく、例えば、図4に示した濃縮部2は、電極21a、第1室23a〜第3室23c、電極21b間に電流を流すものである。そのため、第1室23a〜第3室23c内は、電気伝導性を有する溶液(電解質溶液)で満たす必要がある。ここで、二価イオン源Mは二価イオンMを含む溶液であり、電解質溶液として機能する。したがって、二価イオン源Mを、第1室23a〜第3室23cのうち、少なくとも1カ所以上に導入することで、陽イオン交換膜22a、22bを介して二価イオンMの移動方向が制御され、二価イオン源Mから二価イオンMを濃縮することができる。
このとき、第1室23a〜第3室23c内に導入する電解質溶液としては、全て同じものを用いるものとしてもよく、異なるものを用いるものとしてもよい。
なお、濃縮部2は、電極間に第1室23a〜第3室23c全てが配置されるものだけに限定されるものではなく、第1室23a〜第3室23c内全てを電解質溶液で満たすことは必須の要件ではない。電極の配置によっては、純水のような非電解質溶液を第1室23a〜第3室23cのいずれかに導入するものとしてもよい。
第1室23a〜第3室23c内に電解質溶液を満たす手段としては、例えば、図4に示すように、ラインL3を、第1室23a、第2室23b、第3室23cのそれぞれと接続するように配置し、第1室23a〜第3室23c内に二価イオン源Mを導入することが挙げられる。これにより、二価イオン源Mのみを用いて、二価イオンMの濃縮を行うことができるため、装置構造及び運転操作が簡易化されるとともに、二酸化炭素の固定化に係る原料コストを大幅に低減させることが可能となる。
なお、第1室23a〜第3室23c内を全て二価イオン源Mで満たす場合、ラインL3の配置は図4に示すものに限定されない。他の例としては、例えば、処理槽20のいずれか1カ所に設けたラインL3を介し、あらかじめ二価イオン源Mで処理槽20内を満たした後、陽イオン交換膜22a、22bを配置して、第1室23a〜第3室23cを形成するもの等が挙げられる。
また、第1室23a〜第3室23c内に電解質溶液を満たす手段の他の例としては、ラインL3を第1室23a及び第3室23cと接続するように配置して二価イオン源Mを導入する一方、第2室23bには、二価イオン源M以外の電解質溶液を導入するものとすることが挙げられる。このとき、二価イオン源M以外の電解質溶液としては、特に、塩酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含まないものを用いることが好ましい。
後述するように、第2室23bには濃縮された二価イオンMが貯留されるが、このとき、二価イオン源Mとして塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンのような陰イオンが含まれるもの(例えば海水など)を用い、第2室23bに導入すると、第2室23b中にはこれらの陰イオンが残留する。これらの陰イオンが二価イオンMと反応して、第2室23b内に濃縮された二価イオンMが消費される可能性がある。したがって、これらの陰イオンを含まないものを第2室23bにおける電解質溶液として用いることで、二価イオンMと炭酸イオンの反応効率が低下することを抑制することが可能となる。
処理槽20は、電極21a、21bと、陽イオン交換膜22a、22bとを備え、二価イオン源Mを貯留可能となるように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、電解槽や電気透析槽として知られている構造に用いられる素材や形状を用いること等が挙げられる。
電極21a、21bは、導線により直流電源と接続されている(不図示)。
本実施態様においては、電極21aはカソードとして機能するものを、電極21bはアノードとして機能するものを示している。電極21a、21bとしては、カソードまたはアノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極21a、21bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極21a、21bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
また、電極21a、21bに接続される直流電源は特に限定されないが、太陽電池などの再生可能エネルギーや他の施設における余剰電力を利用するものとすることが好ましい。これにより、二酸化炭素の固定化において使用するエネルギーを低減させることが可能となる。特に、太陽電池など、発電に際して二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを用いることで、二酸化炭素の排出抑制をより一層推進することができる。
陽イオン交換膜22a、22bは、陽イオンを選択的に透過することができる膜である。また、本実施態様における陽イオン交換膜22aと陽イオン交換膜22bは、それぞれに異なる機能を有するものとする。本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aにおいて、異なる機能を有する2つの陽イオン交換膜(陽イオン交換膜22a、22b)を用いることで、複数のイオン価数のイオンを含むものから効率的に特定のイオン価数のイオンを選択的に濃縮することが可能となる。
本実施態様においては、例えば、陽イオン交換膜22aとしては、陽イオン交換能を有するものであればよく、透過する陽イオンの種類を限定しないもの(無処理膜)を用いることが挙げられる。一方、陽イオン交換膜22bとしては、例えば、一価の陽イオンを選択的に透過できるように処理したもの(一価イオン選択処理膜)を用いることが挙げられる。これにより、後述する濃縮工程において、二価イオンMを選択的に濃縮することが可能となる。
なお、陽イオン交換膜22a及び陽イオン交換膜22bは、上述した機能を有するものであればよく、それぞれの陽イオン交換膜22a、22bを構成する具体的な成分や構造については特に限定されず、公知のものを用いることができる。
本実施態様の濃縮部2における濃縮工程について、図5に基づき説明する。
図5は、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aにおける濃縮部2での濃縮工程を示す概略説明図である。図5における濃縮部2の構成は、図4に示した構成と同じであり、第1室23a〜第3室23c内には全て二価イオン源M(海水)を導入している。なお、図5には、陽イオンの移動についてのみ示しており、陰イオンについては省略している。
図5に示すように、濃縮部2の電極21a、21bに直流電源により電圧を印加すると、第1室23a内の陽イオン(Na、K、Ca2+、Mg2+)は陽イオン交換膜22aを透過し、第2室23b内に移動する。なお、図5におけるCa2+、Mg2+が本実施態様の二価イオンMに相当する。さらに、第2室23bに移動した陽イオンのうち、一価の陽イオン(Na、K)のみが陽イオン交換膜22bを透過して第3室23c内に移動する。この結果、第2室23b内には、二価イオンM(Ca2+、Mg2+)が濃縮することになる。したがって、本実施態様において、第2室23bは、二価イオンMの濃縮室として機能するものである。
また、上記濃縮工程後、第3室23c内には一価の陽イオン濃度が増加した電解質溶液が貯留されるが、この電解質溶液の処理については特に限定されない。例えば、第3室23cに排出配管を設け、濃縮工程後の電解質溶液を系外に排出するものとすることや、濃縮工程後の電解質溶液を第1室23aに導入して一価の陽イオンを処理槽20内で循環させるものとすることなどが挙げられる。
なお、濃縮部2は、図4及び図5で示した構造に限定するものではなく、二価イオンMの濃縮を効率的に行うための各種手段を追加するものとしてもよい。このような手段の一例としては、例えば、電極21a、21bの表面で析出物が生成することを抑制するための手段や、陽イオン交換膜22a、22bのイオン透過効率が低減することを抑制するための手段などが挙げられる。
濃縮部2により濃縮された二価イオンMは、ラインL4を介して、反応部4へ導入される。なお、本実施態様においては、濃縮された二価イオンMは、濃縮部2内の第2室23bからラインL4を介して、反応部4へ導入される。
炭酸イオン生成部3は、二酸化炭素から炭酸イオンを生成する炭酸イオン生成工程を行うためのものである。
本実施態様における炭酸イオン生成部3としては、二酸化炭素から炭酸イオンを生成できるものであればよく、具体的な生成手段は特に限定されない。このような生成手段としては、例えば、二酸化炭素を水溶液に溶解させる溶解手段が挙げられる。これにより、気体である二酸化炭素を容易に炭酸イオンの形とすることが可能となる。また、水溶液中に炭酸イオンを存在させた状態とし、後述する反応部4に導入することで、二価イオンMと炭酸イオンの接触効率を高めることができ、炭酸塩の生成に係る化学反応の効率を向上させることが可能となる。さらに、炭酸イオン生成部3で得られる二酸化炭素が溶解した水溶液は、炭酸イオン以外にも水素イオンが含まれるため、水素回収部1の水素イオン源P(CO溶解水)として用いることができる。
本実施態様における炭酸イオン生成部3は、図4に示すように、溶解槽30を備え、溶解槽30には二酸化炭素を溶解するための液体31が貯留されている。この液体31は、二酸化炭素が溶解するものであれば特に限定されず、常温・常圧下で二酸化炭素が溶解するものであることが好ましい。液体31としては、例えば、純水・処理水のほか、二価イオン源Mとして用いられる溶液(海水、排水・廃水等)やアルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)などが挙げられる。なお、二酸化炭素が溶解した液体31は、上述した式1に示すように、炭酸イオン以外に水素イオンPを含むものとなる。したがって、炭酸イオン生成部3における液体31は、水素回収部1における水素イオン源P(CO溶解水)としても機能する。
炭酸イオン生成部3は、溶解槽30における二酸化炭素の溶解効率を向上させるための手段を設けるものとしてもよい。このような手段としては、例えば、加圧手段や、二酸化炭素の溶解度を高めるための薬品を液体31に添加する薬品添加手段などが挙げられる。これにより、反応部4に導入する炭酸イオン濃度を高め、二酸化炭素の固定化に係る効率を向上させることが可能となる。
なお、炭酸イオン生成部3における液体31を水素イオン源Pとして用いることで、液体31内の水素イオンPが減少するため、式1で示した化学平衡は、炭酸イオンを生成する方向に進行する。このため、炭酸イオン生成部3における炭酸イオンの生成効率が向上するという効果を奏する。
炭酸イオン生成部3に二酸化炭素を導入する手段については、特に限定されない。例えば、二酸化炭素の供給源からラインL5を介して直接導入することや、二酸化炭素の供給源に含まれる二酸化炭素を一旦高濃度化(濃縮)したものをラインL5を介して導入することなどが挙げられる。
一般に、二酸化炭素の固定化においては、反応効率を上げるために、気体中の二酸化炭素を高濃度化する必要があった。一方、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aでは、炭酸イオン生成部3において二酸化炭素を水溶液に溶解させている。そのため、炭酸イオン生成部3では、水溶液への二酸化炭素の溶解度に相当する分、二酸化炭素が高濃度化されることになる。したがって、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aにおいては、二酸化炭素の供給源として、大気等のように低濃度の二酸化炭素を含有するガスを用い、炭酸イオン生成部3に直接導入して、二酸化炭素の固定化を行うことが可能である。これにより、気体中の二酸化炭素の高濃度化に係る設備コストや運転コストを大幅に削減することが可能となる。なお、所望する二酸化炭素の処理効率やランニングコストを考慮し、二酸化炭素の供給源に含まれる二酸化炭素の高濃度化を行った後、炭酸イオン生成部3に導入するものとしてもよい。
炭酸イオン生成部3により生成した炭酸イオンは、ラインL6を介して反応部4に導入される。
反応部4は、二価イオンと炭酸イオンを接触させ、炭酸塩を生成する反応工程を行うものである。また、反応部4での反応工程が進行することにより、二酸化炭素の固定化が行われる。
本実施態様における反応部4は、図4に示すように、反応槽40を備えている。また、反応槽40には、濃縮部2からラインL4を介して濃縮された二価イオンMが導入されるとともに、炭酸イオン生成部3からラインL6を介して炭酸イオンが導入される。
反応槽40内では、導入された二価イオンMと炭酸イオンが水溶液(主に、水(HO))中で反応し、炭酸塩を生成する。このとき、二価イオンMと炭酸イオンはイオンの状態を維持したまま、水中で反応するため、イオン同士の接触効率が高まり、反応槽40内における反応を速やかに進行させることができる。これにより、二酸化炭素の固定化を高効率で行うことが可能となる。また、炭酸塩の生成反応は、基本的に発熱反応であることが知られており、反応槽40における反応工程を進行させるために、外部からエネルギーを供給する必要がない。したがって、低コスト・低エネルギーで二酸化炭素の固定化を行うことが可能となる。
反応槽40において生成する炭酸塩の一例としては、例えば、導入された二価イオンMがCa2+である場合、反応槽40内ではCaCOが生成する。また、他の炭酸塩の例としては、導入された二価イオンMがMg2+である場合、反応槽40内ではMgCOが生成する。これらの炭酸塩(CaCO、MgCO)は、水への溶解度が低く、かつ密度が水よりも大きいため、反応槽40内に沈降する。沈降した炭酸塩は、ラインL7を介して容易に回収することができる。また、回収した炭酸塩は資源として様々な用途に用いることが可能となる。
なお、反応部4には、二価イオンMと炭酸イオンによる炭酸塩の生成反応に係る条件を最適化し、二価イオンMと炭酸イオンの反応効率を高めるための手段を設けるものとしてもよい。このような手段としては、例えば、撹拌等のように、二価イオンMと炭酸イオンの接触効率を向上させる機械的手段のほか、アルカリ剤などの薬品添加等のように、反応槽40内のpH調整を行う化学的手段などが挙げられる。
以上のように、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aにより、低コスト・低エネルギー、かつ高効率で炭酸塩固定法による二酸化炭素の固定化を行うことが可能となる。
特に、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Aとして、水素回収部を備え、二酸化炭素から炭酸イオンを生成する過程で生じた水素イオンを含む水溶液を水素イオン源として用いることで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素を効率よく得ることができる。これにより、二酸化炭素の固定化に加えて、カーボンフリーの水素回収を行うことが可能となる。
〔第4の実施態様〕
第4の実施態様に係る二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2に対し、水素回収部1、炭酸イオン生成部3及び反応部4の一部又は全部の機能を一体化したものである。なお、第3の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図6は、本発明の第4の実施態様における二酸化炭素固定化システムを示す概略説明図である。なお、図6は、第3の実施態様における濃縮部2に対し、反応部4の機能を一体化したものを示している。
図6に示すように、本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2における第2室23bに対し、炭酸イオン生成部3からのラインL6を接続することにより、第2室23b内で二価イオンMと炭酸イオンの反応を行うものである。つまり、図6に示した本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2の第2室23bが、反応部4としても機能するものとなっている。また、本実施態様における濃縮部2の第2室23bは、ラインL4に代えて生成した炭酸塩を回収するためのラインL7を設けるものとしている。これにより、二酸化炭素固定化システム100Bの装置構造を簡略化することができるとともに、システム全体を小型化することができ、低コスト化・低エネルギー化が可能となる。
また、図6に示した二酸化炭素固定化システム100Bでは、濃縮部2の第2室23bが反応部4の機能を有することにより、第2室23b内に貯留されている濃縮された二価イオンMは、炭酸イオンと反応し、速やかに消費されていく。一方、濃縮部2のイオン移動手段によって、第2室23b内には陽イオン交換膜22aを介して陽イオンが連続的に供給されるため、炭酸塩を生成する反応工程も連続的に進行する。また、第2室23b内の陽イオン濃度が低下することで、イオン移動手段として、電気透析の原理に基づくイオン移動と併せてイオンの濃度勾配によるイオン移動が進行する。これにより、第1室23aから陽イオン交換膜22aを介して第2室23b内に移動する陽イオンの移動速度を速くすることができるという効果も奏する。したがって、二酸化炭素の固定化効率を格段に向上させることが可能となる。
一方、図7は、本発明の第4の実施態様における二酸化炭素固定化システムの別態様を示す概略説明図である。なお、図7は、第3の実施態様における濃縮部2に対し、水素回収部1と炭酸イオン生成部3と反応部4の機能を全て一体化したものを示している。
図7に示すように、本実施態様の二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2における第2室23bに対し、ラインL5を接続し、二酸化炭素(二酸化炭素含有ガス)を直接導入することにより、第2室23b内で炭酸イオンを生成させるものである。つまり、図7に示した本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2の第2室23bが、反応部4に加えて炭酸イオン生成部3としても機能するものとなっている。
また、第2室23b内では二酸化炭素の溶解により炭酸イオンとともに、水素イオンPが生成する。したがって、第2室23b内には水素イオン源Pが貯留されることになり、陽イオン交換膜22bを介して水素イオンPは第3室23c内に移動する。電極21a、21b間に電圧が印加されているため、第3室23cに移動した水素イオンPは陽イオン交換膜22bの表面で電子が供与されて水素となり、ラインL2を介して回収される。これにより、二酸化炭素固定化システム100Bの装置構造を更に簡略化することができるとともに、システム全体を小型化することができ、低コスト化・低エネルギー化が可能となる。
図7に示した二酸化炭素固定化システム100Bでは、陽イオン交換膜22b近傍に一対の電極を設け、水素イオンPに電子を供与するものとしてもよい。これにより、陽イオン交換膜22bを透過した水素イオンPをより効率的に水素とすることができ、水素の回収効率を向上させることが可能となる。
また、図7に示した二酸化炭素固定化システム100Bでは、濃縮部2の第2室23bが反応部4として機能するため、炭酸塩の生成反応により炭酸イオンが消費される。このため、ラインL5を介して第2室23b内に導入された気体の二酸化炭素(CO)に対し、炭酸イオン(CO 2−)を生成する反応(溶解反応)が速やかに進行し、連続して炭酸イオンを供給することが可能となる。したがって、濃縮部2の第2室23bは、反応部4の機能とともに炭酸イオン生成部3の機能を備えることで、二酸化炭素の溶解効率及び溶解速度をより一層向上させることが可能となる。これにより、ラインL4を介して導入する二酸化炭素(二酸化炭素含有ガス)が低濃度のものであっても、二酸化炭素の固定化を高効率で行うことが可能となる。
以上のように、本実施態様における二酸化炭素固定化システム100Bは、濃縮部2に対し、水素回収部1、炭酸イオン生成部3及び反応部4の一部又は全部の機能を一体化することで、システム全体を小型化して、低コスト化・低エネルギー化を行うことが可能となる。また、炭酸塩を生成する反応工程及び水素回収工程を連続的に進行させることができ、二酸化炭素の固定化の効率及び水素の回収効率を格段に向上させることが可能である。
なお、上述した実施態様は、水素回収装置及び水素回収方法、並びに二酸化炭素固定化システムの一例を示すものである。本発明に係る水素回収装置及び水素回収方法、並びに二酸化炭素固定化システムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水素回収装置及び水素回収方法、並びに二酸化炭素固定化システムを変形してもよい。
例えば、本実施態様における水素回収装置及び二酸化炭素固定化システムにおいて、イオン交換膜を設ける個数は1つに限定されるものではない。例えば、膜の個数を増やし、水素回収部や二価イオンの濃縮室(貯留槽)に相当する区画を増やすことで、水素回収効率及び二価イオンの濃縮効率の向上や、水素回収処理及び濃縮処理の大規模化を図るものとしてもよい。
また、本実施態様における水素回収装置及び二酸化炭素固定化システムにおいて、イオン交換膜に代えて、イオン交換樹脂を充填した層を用いるものとしてもよい。これにより、透過対象となる成分等に応じ、イオンが透過する層の厚さを制御することが容易となる。
また、本実施態様における水素回収装置及び二酸化炭素固定化システムにおいて、イオン交換膜により形成される空間(第1室〜第3室)のいずれか一つあるいは二つ以上にイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂又は陰イオン交換樹脂、あるいは両方)を充填するものとしてもよい。イオン交換膜とイオン交換樹脂を組み合わせることで、イオンの移動速度を高め、濃縮効率を向上させることが可能となる。また、電気式脱イオン(EDI:Electrodeionization)として知られる技術と同様に、イオン交換膜及びイオン交換樹脂の再生処理を容易(あるいは不要)とすることが可能となる。
また、本実施態様における二酸化炭素固定化システムにおいて、濃縮部における電極の配置は、処理槽内の両端部に限定されるものではない。例えば、それぞれの陽イオン交換膜ごとに、膜近傍に一対の電極を設けるものとしてもよい。これにより、イオン移動を行う必要がある箇所のみに電力供給することが可能となるため、処理槽の規模によっては、電力消費に係るコストを大幅に削減することが可能となる。
さらに、本実施態様における二酸化炭素固定化システムにおいて、濃縮部において、電極を設けることは必須ではない。例えば、第1室〜第3室間でイオンの濃度勾配が形成され、かつ維持されるようにすることで、濃縮部内に電極を設けることなく、イオンの濃度勾配によるイオン移動を実施するものとしてもよい。これにより、二価イオンの濃縮における低コスト・低エネルギー化が可能となる。なお、イオンの濃度勾配の形成及び維持に係る手段としては、例えば、第1室〜第3室内に導入する溶液(電解質溶液及び非電解質溶液)の組み合わせを選択することなどが挙げられる。
本発明の水素回収装置及び水素回収方法は、水素イオンを含む水素イオン源からの水素回収に好適に用いることができる。特に、二酸化炭素が溶け込んだ海水を水素イオン源とすることで、水素を効率的に回収するとともに、海洋酸性化の解消に係る装置及び方法としても好適に用いることができる。
また、本発明の二酸化炭素固定化システムは、水素を回収するとともに、二酸化炭素を炭酸塩化する炭酸塩固定法を実施するシステムとして好適に用いることができる。特に、高濃度の二酸化炭素の固定化だけではなく、大気のような比較的低濃度の二酸化炭素の固定化においても好適に利用されるものである。
1A,1B 水素回収装置、10 処理槽、11a,11b 電極、12 水素イオン交換膜、13a,13b 空間、100A,100B,100C 二酸化炭素固定化システム、1 水素回収部、2 濃縮部、20 処理槽、21a,21b 電極、22a,22b 陽イオン交換膜、23a 第1室、23b 第2室(濃縮室)、23c 第3室、3 炭酸イオン生成部、30 溶解槽、31 液体、4 反応部、40 反応槽、L1〜L7 ライン、M 二価イオン源、M 二価イオン、P 水素イオン源、P 水素イオン

Claims (6)

  1. 水素イオン源から水素を回収する水素回収装置であって、
    水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜と、
    前記水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段と、を備えることを特徴とする、水素回収装置。
  2. 前記水素回収手段は、前記水素イオン交換膜を透過した水素イオンに電子供与を行うものであることを特徴とする、請求項1に記載の水素回収装置。
  3. 前記水素イオン源は、二酸化炭素が溶解した水溶液であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水素回収装置。
  4. 前記水素イオン源は、海水であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素回収装置。
  5. 水素イオン源から水素を回収する水素回収方法であって、
    水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜を用い、
    前記水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収工程を備えることを特徴とする、水素回収方法。
  6. 水素イオン源から水素を回収する水素回収部と、
    二価イオンを濃縮する濃縮部と、
    二酸化炭素から炭酸イオンを生成する炭酸イオン生成部と、
    前記濃縮部で濃縮された二価イオンと前記炭酸イオン生成部で生成された炭酸イオンとを接触させ、炭酸塩を生成する反応部と、を備える二酸化炭素固定化システムであって、
    前記水素回収部は、水素イオン源中の水素イオンを選択的に透過する水素イオン交換膜と、前記水素イオン交換膜を透過した水素イオンを、水素として回収する水素回収手段と、を備え、
    前記炭酸イオン生成部により前記水素イオン源が供給されることを特徴とする、二酸化炭素固定化システム。

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