JP2022080219A - システム及び船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用を可能とするシステムと、このシステムを備える船舶とを提供することである。【解決手段】上記課題を解決するために、水素によって駆動する駆動機関と、海水を電解する海水電解部と、を備え、海水電解部から発生する水素を駆動機関に供給するシステム及びこのシステムを備える船舶を提供する。本発明によれば、水素によって駆動する駆動機関に対し、海水の電解処理から得られる水素を供給することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用が可能となる。また、本発明によれば、ゼロエミッションを実現する船舶を提供することが可能となる。【選択図】図4

Description

本発明は、システム及び船舶に関するものである。特に、本発明は、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用が可能なシステム及び船舶に関するものである。
近年、地球温暖化などの環境問題に対して大きな影響を与えるとされる二酸化炭素について、環境への排出を抑制することが早急に対応すべき課題となっている。この課題に対し、二酸化炭素の排出量自体を削減する技術や、排出された二酸化炭素を回収し、固定化する技術に係る研究が進められている。
大気中への二酸化炭素の排出抑制の観点から、二酸化炭素の発生・排出を伴わないエネルギー源に係る技術に関する検討が進んでいる。このようなエネルギー源の一つとして、水素が挙げられる。水素は、酸素との反応による発電や、燃焼による熱回収など、エネルギーとしての利用時に二酸化炭素を排出しないという利点を有することから、次世代のエネルギー源として着目されている。水素は、様々な資源からつくることができるという利点を有するが、現在主流とされている化石燃料を用いた水蒸気改質では、水素を得る際に一酸化炭素や二酸化炭素の排出を伴うという問題が生じてしまう。
一方、二酸化炭素の回収・固定化に係る技術についても、様々な方法が検討されている。例えば、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収する方法として、モノエタノールアミンなどの吸収液に二酸化炭素を溶解させる化学吸収法や、ガス吸着能を有する吸着剤に二酸化炭素を吸着させる物理吸着法のほか、膜を用いた膜分離法などが知られている。また、これらの方法以外に、大気中の二酸化炭素濃度を低減させるという観点から、海洋に二酸化炭素を供給することで、海洋中に二酸化炭素を貯留し、大気からは二酸化炭素を隔離するという海洋貯留に係る方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、深層の海水を海面付近まで汲み上げ、汲み上げた海水に二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素の固定化システムが記載されている。
特開2000-262888号公報
特許文献1に記載されるように、海水に二酸化炭素を吸収させる場合、大気中の二酸化炭素を一時的に海水中に溶存させることができるが、大気中の二酸化炭素分圧との差分により海水中に溶存した二酸化炭素は再び大気中に放散されてしまう。さらに、海水中に効果的に二酸化炭素を溶存させ、海洋における二酸化炭素の貯留量を高めることができたとしても、海洋中に二酸化炭素が溶存することにより、海洋のpHが低下するという海洋酸性化を引き起こす可能性がある。
海洋酸性化は、様々な海洋生物の成長や繁殖等に関与し、生態系への影響が懸念されている。また、本来、自然環境下においても海洋には一定量の二酸化炭素が吸収されているが、海洋酸性化により、海洋が吸収できる二酸化炭素の量が減少し、大気中の二酸化炭素が増加する要因ともなり得る。そして、大気中の二酸化炭素濃度が増加すると、海洋表面に接触する二酸化炭素濃度が増加するため、海洋酸性化は解消されることなく進行し続けることになる。このため、海洋酸性化と大気中の二酸化炭素濃度増加という2つの問題が同時に深刻化していくというおそれがある。
つまり、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う環境問題を解決するためには、二酸化炭素の排出抑制の面からは、新たなエネルギー源として着目される水素をカーボンフリーで得るための技術や、水素をエネルギー源として活用する際の二酸化炭素排出抑制に係る技術が求められている。一方、二酸化炭素の固定化に関しては、海水を利用することで大量の二酸化炭素を安価に固定できることが期待されるが、海洋酸性化の解消を考慮した技術が必要となる。
また、近年、船舶においては、駆動機関から排出される二酸化炭素削減のため、水素を燃料源とする駆動機関について提案がなされている。しかし、船舶という限られた空間内で、二酸化炭素の排出削減や水素供給を行うためには、さまざまな技術を効率的に複合化することが求められる。
本発明の課題は、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用を可能とするシステムと、このシステムを備える船舶とを提供することである。
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、海水を電解する海水電解部により発生させた水素を、水素によって駆動する駆動機関に対して供給することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下のシステム及び船舶である。
上記課題を解決するための本発明のシステムは、水素によって駆動する駆動機関と、海水を電解する海水電解部と、を備え、海水電解部から発生する水素を駆動機関に供給するという特徴を有する。
本発明のシステムは、水素によって駆動する駆動機関に対し、海水の電解処理から得られる水素を供給することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用が可能となる。また、本発明のシステムは、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
また、本発明のシステムの一実施態様としては、海水電解部から発生する塩素含有成分及び/又はアルカリ性水溶液を、駆動機関の排気浄化に用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、海水電解部で生成する水素以外の成分である塩素含有成分及び/又はアルカリ性水溶液を用い、駆動機関から排出される排気(NOxやSOx)を処理することが可能となる。また、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用を行うとともに、海水電解部で生成する水素以外の成分を有効活用することが可能となる。
また、本発明のシステムの一実施態様としては、海水電解部から発生する塩素含有成分を、駆動機関の冷却水に供給するという特徴を有する。
この特徴によれば、海水電解部で生成する水素以外の成分である塩素含有成分を用い、駆動機関の過熱を抑制するための冷却水を処理することが可能となる。特に、冷却水として海水を用いる場合において、冷却水に対して塩素含有成分を添加することで、冷却水の殺菌及び生物付着抑制に係る処理が可能となる。また、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用を行うとともに、海水電解部で生成する水素以外の成分を有効活用することが可能となる。
また、本発明のシステムの一実施態様としては、海水電解部から発生するアルカリ性水溶液を、二酸化炭素の固定化処理に用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、海水電解部で生成するアルカリ性水溶液を用い、二酸化炭素の固定化処理を行うことが可能となる。特に、海洋に対して直接アルカリ性水溶液を放出することで、海洋中の二酸化炭素の固定化処理を行うとともに、海洋酸性化を解消する技術として活用することが可能となる。また、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用を行うとともに、海水電解部で生成する水素以外の成分を有効活用し、二酸化炭素の排出抑制を一層推進することが可能となる。
また、本発明のシステムの一実施態様としては、海水電解部から発生するアルカリ性水溶液を、駆動機関の排気浄化に用いた後、さらに二酸化炭素の固定化処理に用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、海水電解部で生成するアルカリ性水溶液を用い、駆動機関から排出される排気(主にSOx)の処理と併せ、二酸化炭素の固定化処理が可能となる。また、アルカリ性水溶液を先に排気処理に供することで、アルカリ性水溶液のpH値を下げ、二酸化炭素の固定化処理に適したpHに調整することが容易となる。これにより、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用を行うとともに、海水電解部で生成する水素以外の成分を有効活用し、複数の処理を一つのシステムで効率的に行うことが可能となる。
また、上記課題を解決するための本発明の船舶は、上記システムのいずれか一つを備えるという特徴を有する。
本発明の船舶は、水素によって駆動する駆動機関に対し、海水の電解処理から得られる水素を供給することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用が可能となるシステムを備えることにより、ゼロエミッションを実現する船舶として活用することができる。また、海水電解部で生成した成分を有効活用することで、船舶で利用する海水(特にバラスト水)に対して適切な処理を行うことが容易となる。
本発明によれば、大気中の二酸化炭素濃度の増加に伴う各種環境問題を解決するための技術として、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用を可能とするシステムと、このシステムを備える船舶とを提供することができる。
本発明の第1の実施態様におけるシステムの概略説明図である。 本発明の第1の実施態様のシステムにおける海水電解部の構造を示す概略説明図である。 本発明の第1の実施態様のシステムにおける水素生成及び回収に係る工程を示す概略説明図である。 本発明の第1の実施態様における船舶の概略説明図である。 本発明の第2の実施態様におけるシステム及び船舶の概略説明図である。 本発明の第2の実施態様におけるシステム及び船舶の別態様を示す概略説明図である。 本発明の第2の実施態様におけるシステム及び船舶の別態様を示す概略説明図である。 本発明の第3の実施態様におけるシステム及び船舶の概略説明図である。 本発明の第4の実施態様におけるシステム及び船舶の概略説明図である。 本発明の第4の実施態様におけるシステム及び船舶の別態様を示す概略説明図である。 本発明の第5の実施態様におけるシステム及び船舶の概略説明図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシステムの実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係るシステムを備える船舶の実施態様についても説明する。
なお、実施態様に記載するシステム及び船舶については、本発明に係るシステム及び船舶を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
本発明のシステムは、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用を可能とするものであり、より具体的には、水素の生成時に二酸化炭素の排出を抑制すること、及び、生成した水素を主たるエネルギー源として活用することで、駆動機関の駆動において二酸化炭素の排出を抑制することを可能とするものである。
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様におけるシステムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様におけるシステム1Aは、図1に示すように、水素によって駆動する駆動機関10と、海水電解部20を有している。また、システム1Aは、海水電解部20に対して海水を供給するラインL1と、海水電解部20で発生した水素を、駆動機関10に供給するラインL2とを備えている。
駆動機関10は、水素によって駆動する駆動機関であればよく、特に限定されない。例えば、水素を燃料とする水素エンジンと呼ばれるものや、水素を用いた燃料電池を駆動エネルギー源とするモーターなどが挙げられる。
また、駆動機関10は、駆動に係るエネルギー源の一つとして水素を利用するものであればよく、水素以外のエネルギー源も併せて利用するハイブリッド式の駆動機関を用いるものとしてもよい。このような駆動機関としては、例えば、水素のほかに燃料油を用いる水素混焼エンジンなどが挙げられる。
また、駆動機関10として水素を燃料として用いる場合、このときの水素の燃焼方式については特に限定されない。例えば、直接燃焼やアルゴン循環燃焼などが挙げられる。なお、直接燃焼の場合、アルゴン循環燃焼と比較して装置構成が簡易であり、ランニングコストを抑えることが可能となる。一方、アルゴン循環燃焼の場合、駆動機関10の高効率化が可能になるとともに、駆動機関10から発生する排気に窒素酸化物(NOx)を含まないという利点がある。
海水電解部20は、海水を電解して、水素を発生させるとともに、発生した水素を回収するものである。特に、本実施態様におけるシステム1Aを船舶に適用する場合、海水電解部20はバラスト水を電解処理する設備と兼用してもよい。これにより、限られた空間内においてシステム1Aを効率的に適用することが可能となる。
海水電解部20に導入する海水の供給源(以下、「海水源」と呼ぶ)は、特に限定されない。例えば、自然環境(海洋)を海水源とし、海水電解部20に海洋から直接海水を導入するものとしてもよく、二酸化炭素の海洋貯留処理や船舶のバラスト水として用いられる海水など、人為的に一時貯留された海水を海水源として用いるものとしてもよい。
なお、海水の原料調達にかかるコストは、主として海水の搬送に係るコストとなる。例えば、本発明のシステム1Aを海に近い陸地あるいは海上に設置することにより、最小限の搬送コストで海水を利用することが可能となる。特に、本発明のシステム1Aを船舶に適用した場合、海水電解部20に導入する海水の調達にかかるコスト及びエネルギーを大幅に低減させることが可能になる。
図2は、本実施態様における海水電解部20の構造を示す概略説明図である。
図2に示すように、本実施態様における海水電解部20は、処理槽21内に、一対の電極(電極22a、22b)と、隔膜23が設けられている。なお、図2に示すように、処理槽21内は、隔膜23を介して、2つの空間を形成している(空間24a、24b)。
また、処理槽21には、海水源から海水電解部20に海水を供給するラインL1と、駆動機関10に水素を供給するラインL2が接続されている。なお、図2では、ラインL1は、空間24a、24bと接続するように配置され、ラインL2は、空間24bと接続するように配置されている。さらに、ラインL2は、海水電解部20で生成した水素(H)の回収手段を兼ねるものである。
処理槽21に海水を供給するラインL1上には、海水中の夾雑物や生物が処理槽21内に混入することを防ぐための手段を備えることが好ましい。例えば、海水中の夾雑物や生物を捕捉するためのフィルターやネットをラインL1上に設けることが挙げられる。
また、処理槽21で生成した水素を駆動機関10に供給するラインL2上に、水素以外の気体(水蒸気など)を除去するための手段を設けるものとしてもよい。これにより、純度の高い水素を駆動機関10に供給することができるようになる。また、ラインL2と駆動機関10の間に、水素を貯留するための設備や水素の供給量を制御するための設備を設けるものとしてもよい。これにより、生成した水素を適宜駆動機関10に供給することが可能となり、駆動機関10における運転効率の最適化が容易となる。
処理槽21は、海水を安定して貯留可能となるように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、電解槽や電気透析槽として知られている構造に用いられる素材や形状を使用すること等が挙げられる。
電極22a、22bは、それぞれ空間24a、24b内に設けられ、導線を用いて接続されている。なお、電極22a、22bは、隔膜23の表面あるいは近傍に設け、電極22a、22b及び隔膜23を一体化したユニットとして扱うものとしてもよい。
電極22a、22bとしては、アノードまたはカソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極22a、22bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極22a、22bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。なお、電極22a、22bを隔膜23の表面あるいは近傍に設ける場合、隔膜23に対する物質移動の阻害を抑制できる形状とすることが好ましい。このような形状としては、例えば、メッシュ状や針金等の細い棒状などが挙げられる。さらに、電極22a、22bの別の例としては、メッキ処理などの手法により、隔膜23の表面に直接電極パターンを作成するもの等が挙げられる。このとき、電極パターンの形状は特に限定されないが、隔膜23に対する物質移動の阻害を抑制できるものとすることが好ましい。
また、電極22a及び22bを導線により接続する際、電極間に電気エネルギーを供給するための直流電源を設けることが好ましい。このとき、一対の電極に接続される直流電源に対する給電手段については特に限定されないが、太陽光、風力、波力などの再生可能エネルギーを利用した給電設備や他の施設における余剰電力を利用するものとすることが好ましい。これにより、水素の生成及び回収において使用するエネルギーを低減させることが可能となる。特に、発電に際して二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを用いた給電手段を採用することで、二酸化炭素の排出抑制を推進することができるという効果も奏する。
隔膜23は、処理槽21を区画し、アノード側(空間24a)からカソード側(空間24b)へ、陽イオンを選択的に透過することができる膜である。特に、本実施態様における隔膜23としては、水素イオン(H)を透過することができる膜であることが好ましい。これにより、処理槽21での電解処理により発生した水素イオンを、カソード側(空間24b)に移動させ、カソード側(空間24b)における水素生成効率を高めることが可能となる。
本実施態様においては、隔膜23としては、少なくとも水素イオンを透過させる機能を有するものであればよく、具体的な成分や構造については特に限定されず、一価の陽イオンを選択的に透過できるように処理したもの(いわゆる一価イオン選択膜)や、二価の陽イオンを含む陽イオン交換膜として公知のものを用いることができる。
本実施態様における海水電解部20は、隔膜23によって区画された処理槽21を用いて、海水の電解処理を行い、水素の生成及び回収を行うものである。
以下、海水電解部20における水素の生成及び回収に係る工程について、図3に基づき説明する。
図3は、本実施態様のシステム1Aに係る海水電解部20における水素の生成及び回収工程を示す概略説明図である。図3における処理槽21内の構成は、図2に示した構成と同じである。なお、図3には、主に水素の生成及び回収に関わるイオンや分子の移動について示しており、一部のイオンや分子については図示を省略している。
図3に示すように、ラインL1を介して処理槽21内に導入された海水に対し、直流電源により電極22a、22b間に電圧を印加する。
このとき、空間24a内の電極22aにおける反応(アノード側の反応)は、以下の式で示される。
Figure 2022080219000002
ここで、式1により発生した水素イオンは、図3に示すように、隔膜23を介して空間24b側に移動する。
一方、空間24b内の電極22bにおける反応(カソード側の反応)は、以下の式で示される。
Figure 2022080219000003
また、空間24aから空間24bに移動した水素イオンは、電極22bにおける反応により水素が生成する(式3)。
Figure 2022080219000004
式1~式3に示すように、海水電解部20により、海水から水素を発生させ、ラインL2を介して水素を駆動機関10に供給することが可能となる。
また、式1~式3に示すように、水素の生成及び回収に係る工程で二酸化炭素が生じないため、二酸化炭素の排出抑制が可能となる。
また、海水電解部20における電極22a(アノード側)で生じる反応としては、式1以外に式4が挙げられる。
Figure 2022080219000005
式4において生成した塩素(Cl)はガス化して系外に放出することは少なく、空間24a内では、以下の式5及び式6が進行する。
Figure 2022080219000006
Figure 2022080219000007
上記した式5及び式6に基づき、空間24a内に生成した各成分は、システム1A内外で活用するものとしてもよい。なお、これら成分の活用の一例については後述する。
なお、システム1Aにおける海水電解部20は、図2及び図3で示した構造に限定するものではなく、水素生成及び回収を効率的に行うための各種手段を追加するものとしてもよい。このような手段の一例としては、例えば、電極22a、22bの表面で析出物が生成することを抑制するための手段や、隔膜23のイオン透過効率が低減することを抑制するための手段などが挙げられる。
以上のように、本実施態様のシステム1Aにより、水素によって駆動する駆動機関に対し、海水の電解処理から得られる水素を供給することで、二酸化炭素の排出を伴うことなく水素供給及び水素利用が可能となる。また、本実施態様におけるシステム1Aは、水蒸気改質とは異なり、水素の回収を常温・常圧下で行うこともできるため、運転に係るエネルギー及びコストを低減することが可能となる。
上述したシステム1Aのような本発明に係るシステムは、主たるエネルギー源として水素を利用する駆動機関を備えるものに対し、適用することが好ましい。また、本発明のシステムは、海水利用を前提とする設備を備えるものや、海水利用が容易であるものに適用することが好ましい。例えば、本発明のシステムは、船舶のほか、沿岸部に設けられた発電プラントや、海水を原料として用いる製造プラント(アルカリ金属塩や塩素の製造プラント等)などに適用することが挙げられる。特に、本発明のシステムは、限られた空間で水素供給及び水素利用を行う必要がある船舶に対し、好適に利用することができる。
図4は、本発明の第1の実施態様における船舶を示す概略説明図である。
図4に示すように、本実施態様における船舶100Aは、船舶本体101内に、上述したシステム1A(駆動機関10及び海水電解部20)と、バラスト水タンク30を備え、海水電解部20とバラスト水タンク30をラインL3により接続している。
このとき、駆動機関10としては、水素燃料電池とモーターの組み合わせや、水素エンジンのうち、アルゴン循環燃焼方式でイグナイター点火手段を備えるものなどが挙げられる。これにより、駆動機関10からの排気には二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)が含まれないため、駆動機関10からの排気浄化が不要になるという利点がある。
本実施態様における船舶100Aは、システム1Aにより、二酸化炭素の排出を抑制した駆動が可能となる。これにより、本実施態様における船舶100Aは、ゼロエミッションを実現する船舶として活用することができる。
一般的に、船舶においては、バラスト水タンク30内に海水を貯留し、船舶の浮力調整が行われている。このとき、バラスト水タンク30内に貯留される海水(以下、「バラスト水」とも呼ぶ)中に含まれる微生物、藻類の繁殖に伴う生物付着が生じると、タンク内の清掃など船舶のメンテナンス作業が煩雑となるという問題がある。
一方、上述した式5及び式6に示すように、システム1Aの海水電解部20では次亜塩素酸(HClO)や次亜塩素酸イオン(ClO)のような塩素含有成分が発生する。この塩素含有成分が溶解した水(以下、「塩素水」と呼ぶ)をラインL3を介してバラスト水タンク30に供給することで、バラスト水の殺菌やバラスト水タンク30内での生物付着抑制が可能となる。
したがって、本実施態様における船舶100Aは、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用と併せ、バラスト水に係る設備に関するメンテナンス作業を容易とすることが可能となる。
本実施態様における船舶100Aは、船舶本体101、システム1A及びバラスト水タンク30以外に、一般的な船舶における各種設備を備えるものとする。例えば、船舶100Aの針路変更に係る操舵装置のほか、駆動機関10を制御する制御部や、駆動機関10から排出される排気を船舶本体101外に放出する排気口などが挙げられる。
また、本実施態様における船舶100Aは、海水電解部20で生成した成分を貯留する設備を設けることが好ましい。より具体的には、図4に示すように、ラインL2上に海水電解部20で生成した水素を貯留する水素貯留タンク40を設けることや、ラインL3上に海水電解部20で生成した塩素水を貯留する塩素水貯留タンク50を設けることなどが挙げられる。これら各種タンク40、50を設けることで、海水電解部20で生成した成分を各設備(駆動機関10やバラスト水タンク30)に供給する際に、適量を供給するように制御することが容易となる。
さらに、本実施態様における船舶100Aは、システム1Aなどへの給電手段として再生可能エネルギーを用いることが好ましい。このような給電手段としては、船舶本体101に太陽光パネルなどの直接給電設備を設けることや、洋上風力や海流発電など海洋エネルギーを用いた発電設備から非接触で給電を受けることができる非接触給電設備を設けることなどが挙げられる。これにより、本実施態様における船舶100Aは、ゼロエミッションの実現性をより高くすることが可能となる。
本発明のシステムは、水素供給及び水素利用と併せて、二酸化炭素の削減に係る処理を可能としてもよい。具体的には、本発明のシステムとしては、水素供給及び水素利用に加え、排気浄化や二酸化炭素固定を可能とする構成を備えることが挙げられる。
以下、本発明のシステムの別態様を示すとともに、このシステムを船舶に適用したものについて説明する。
〔第2の実施態様〕
第2の実施態様に係るシステム1B及び船舶100Bは、第1の実施態様における駆動機関10の駆動に伴い生じる排気の浄化を可能とする構成を備えるものである。より具体的には、海水電解部20で生成する水素以外の成分を用い、駆動機関10からの排気浄化を行うものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図5は、本発明の第2の実施態様におけるシステム及びこのシステムを備える船舶を示す概略説明図である。
図5に示すように、本実施態様のシステム1B及び船舶100Bは、駆動機関10から排出される排気をラインL4を介して回収し処理を行う排気浄化部60を備えている。また、排気浄化部60には、海水電解部20で生成した成分を供給するラインL5及びラインL6が接続されている。
駆動機関10として、水素エンジンを用いた場合、燃焼方式や点火手段によっては駆動機関10からNOx及び/又はSOxを含む排気が排出されることがある。したがって、本実施態様におけるシステム1B及び船舶100Bでは、このような排気を排気浄化部60で処理して系外に放出する。
排気浄化部60で行う処理としては、湿式処理が挙げられる。より具体的には、塩素含有成分を用いたNOx浄化処理や、海水を利用した湿式スクラバ(Enhaust Gas Cleaning Systems:EGCS)によるSOx浄化処理などが挙げられる。
ここで、塩素含有成分を用いたNOx浄化処理とは、NOxを含む排気と塩素含有成分を含む水溶液とを反応させることで、NOxをイオン化し、水溶液に溶解させて処理を行うものである。
また、EGCSによるSOx浄化処理とは、SOxを含む排気と炭酸水素イオンや炭酸イオンを含む水溶液とを反応させることで、SOxをイオン化し、水溶液に溶解させて処理を行うものである。このとき、SOxと接触させる水溶液をアルカリ化することで、水溶液中の炭酸水素イオンや炭酸イオンの存在比が高くなり、処理が促進されることが知られている。
例えば、海水電解部20で生成した塩素含有成分を含む溶液(塩素水)を排気浄化部60に供給することで、NOx浄化処理を効果的に行うことが可能となる。このとき、海水電解部20のアノード側と排気浄化部60を直接接続するものとしてもよいが、図5に示すように、塩素水貯留タンク50からラインL5を介して塩素水を排気浄化部60に供給することが挙げられる。これにより、塩素水貯留タンク50内の塩素水を、バラスト水の処理と排気浄化に効率的に活用することが可能となる。
また、海水電解部20のカソード側では、式1に基づき水酸化物イオン(OH)が生成するため、空間24b内の溶液はアルカリ化している。したがって、この空間24b内のアルカリ性水溶液を排気浄化部60に供給することで、SOx浄化処理を効果的に行うことが可能となる。このとき、図5に示すように、海水電解部20のカソード側と排気浄化部60をラインL6を介して直接接続し、アルカリ性水溶液を供給するものとしてもよく、海水電解部20で電解処理した後のカソード側の溶液を貯留するタンクを別途設け、そのタンクと排気浄化部60を接続するものとしてもよい。
なお、排気浄化部60は、上述したNOx浄化処理及び/又はSOx浄化処理を行うことができるものであればよい。したがって、本実施態様におけるシステム1B及び船舶100Bは、駆動機関10の種類に応じ、海水電解部20から排気浄化部60に供給する成分の種類をあらかじめ特定した構造とするものとしてもよい。これにより、システム1B及び船舶100Bの構成に係る部品点数を減らすことが可能となる。
すなわち、本実施態様におけるシステム1B及び船舶100Bは、図5に示すように、排気浄化部60に対してラインL5及びラインL6を備えるものに限定されない。
図6及び図7は、本実施態様におけるシステム1B及び船舶100Bの別態様を示す概略説明図である。
例えば、本実施態様におけるシステム1Bは、図6や図7に示すように、ラインL5又はラインL6を省略するものとしてもよい。
例えば、駆動機関10が水素エンジンや水素混焼エンジンであり、直接燃焼方式かつパイロット燃料油を使用した点火手段を備える場合、駆動機関10からの排気にはNOx及びSOxが含まれることが想定される。したがって、図5に示すように、ラインL5及びラインL6を介して排気浄化部60に塩素水及びアルカリ性水溶液を供給する構造とすることが好ましい。
一方、駆動機関10が水素エンジンであり、直接燃焼方式かつイグナイター点火手段を備える場合、駆動機関10からの排気にはSOxは含まれないが、NOxが含まれることが想定される。したがって、図6に示すように、ラインL5を介して排気浄化部60に塩素水を供給する構造とすることが好ましい。
また、駆動機関10が水素エンジンであり、アルゴン循環燃焼方式かつパイロット燃料を使用した点火手段を備える場合、駆動機関10からの排気にはNOxは含まれないが、SOxが含まれることが想定される。したがって、図7に示すように、ラインL6を介して排気浄化部60にアルカリ性水溶液を供給する構造とすることが好ましい。
このように、駆動機関10に応じて排気浄化部60に供給する成分を選択した構造とすることで、部品点数を必要最小限とすることができ、かつ効率的な排気処理を行うことが可能となる。
また、ラインL5やラインL6を介して排気浄化部60に供給される海水電解部20で生成した成分は、排気浄化部60における排気の湿式処理に利用するほか、排気浄化部60において生じた廃液の処理を行うために利用するものとしてもよい。例えば、ラインL6を介して排気浄化部60で生じた廃液にアルカリ性水溶液を供給することで、廃液のpH調整を行うことなどが挙げられる。
以上のように、本実施態様のシステム1B及び船舶100Bにより、水素供給及び水素利用と併せて、駆動機関からの排気処理についても効率的に行うことが可能となる。
〔第3の実施態様〕
第3の実施態様に係るシステム1C及び船舶100Cは、第1の実施態様における駆動機関10に供給される冷却水を処理する構成を備えるものである。より具体的には、海水電解部20で生成する水素以外の成分を用い、駆動機関10に供給する冷却水に対する殺菌や生物付着抑制に係る処理を行うものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図8は、本発明の第3の実施態様におけるシステム及びこのシステムを備える船舶を示す概略説明図である。
図8に示すように、本実施態様のシステム1C及び船舶100Cは、駆動機関10に対して冷却水を供給するラインL7を備えている。また、ラインL7には、海水電解部20で生成した成分を供給するラインL8が接続されている。
駆動機関10として、水素エンジンを用いた場合、エンジンの過熱を防止するために、冷却水が用いられる。冷却水は多量の水を必要とすることから、安価及び簡便に取得できる水を用いることが好ましい。このため、特に船舶の場合は、海洋から直接取水した海水を冷却水とすることが行われている。
しかし、冷却水として海洋から取水した海水を用いた場合、バラスト水と同様に、海水中の微生物や藻類による不具合が生じるおそれがある。
本実施態様におけるシステム1C及び船舶100Cでは、ラインL7中の冷却水に、海水電解部20で生成した塩素水を添加する。より具体的には、図8に示すように、塩素水貯留タンク50と接続したラインL8を介し、塩素水をラインL7中の冷却水に添加することや、海水電解部20のアノード側(空間24a)とラインL8を接続し、塩素水をラインL7中の冷却水に添加することなどが挙げられる。これにより、塩素水による冷却水の殺菌や生物付着抑制に係る処理を行うことができる。また、冷却水に対する処理を行うことで、駆動機関10に対して冷却水を安定供給することが可能となり、駆動機関10の駆動効率低下を抑制することが可能となる。
以上のように、本実施態様のシステム1C及び船舶100Cにより、水素供給及び水素利用と併せて、駆動機関に供給される冷却水処理を行うことが可能となる。
〔第4の実施態様〕
第4の実施態様に係るシステム1D及び船舶100Dは、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用に加え、二酸化炭素の固定化処理を可能とする構成を備えるものである。より具体的には、海水電解部20で生成する水素以外の成分を用い、二酸化炭素の固定化処理を行うものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図9は、本発明の第4の実施態様におけるシステム及びこのシステムを備える船舶を示す概略説明図である。
図9に示すように、本実施態様のシステム1D及び船舶100Dは、海水電解部20で生成した成分を用いて、二酸化炭素の固定化処理を行うCO固定化処理部70を備えている。
一般的に、二酸化炭素を水に溶解したとき、以下の式7に示すような化学平衡式が成り立っている。
Figure 2022080219000008
式7において生成した炭酸イオン(CO 2-)は、式8に示すように、二価の金属イオン(カルシウムイオン)と反応させて炭酸塩化する。これにより、二酸化炭素の固定化処理が進行する。
Figure 2022080219000009
なお、式8には、二価の金属イオンとしてカルシウムイオンを示しているが、本実施態様の二酸化炭素の固定化処理においては、これに限定されるものではない。例えば、Ca以外の第2族元素の二価イオン(Mg2+等)や、遷移金属の二価イオン(Fe2+、Co2+、Ni2+等)を用いることが挙げられる。特に、二価の金属イオンとしては第2族元素の二価イオンを用いることが好ましい。第2族元素の炭酸塩は水への溶解度が低く、かつ無害であるため、生成した炭酸塩について更に処理を行う必要はない。また、生成した炭酸塩は回収が容易であるとともに、回収した炭酸塩を資源として様々な用途に利用することが可能であるという利点を有する。
式7及び式8から、炭酸イオンを生成する方向に化学平衡反応を進行させることで、二酸化炭素の固定化処理に係る効率化が可能になることが分かる。つまり、二酸化炭素を水に溶解させる際、水素イオンを消費する条件下にすることで、式7の化学平衡を右側に向かって進行させ、式8における炭酸イオン量を増加させることで、二酸化炭素の固定化処理に係る効率向上が可能となる。
本実施態様におけるCO固定化処理部70は、式7に基づく化学平衡反応を右側に進行させるためのものである。より具体的には、CO固定化処理部70は、二酸化炭素が溶解した水に対し、アルカリ性水溶液を添加することで水素イオンを消費する条件を満たすものである。
ここで、二酸化炭素が溶解した水とは、貯留した水に対し、二酸化炭素を強制的に接触させるなど人為的に処理されたもののほか、海洋(海水)のように自然環境下で二酸化炭素と水が接触しているものを含んでいる。
本実施態様におけるCO固定化処理部70の一例としては、図9に示すように、海水電解部20で生成したアルカリ性水溶液を直接海洋に放出するラインL9を設けることが挙げられる。海水には大気中の二酸化炭素が一部溶解しており、かつ海水中には、一定量のMgやCaがイオンの状態で含まれている。したがって、ラインL9を介してアルカリ性水溶液を海洋に放出することにより、海洋(海水)中に含まれる二酸化炭素の固定化処理が可能となる。また、海洋中に含まれる二酸化炭素を直接固定化処理することで、海洋中の二酸化濃度が減少する。これにより、大気中の二酸化炭素が海洋へ溶解することを促進し、さらに二酸化炭素の排出抑制が可能となる。そして、本実施態様におけるCO固定化処理部70による処理は、海洋酸性化を解消する技術としても有用となる。
なお、海水電解部20で生成したアルカリ性水溶液を直接海洋に放出する場合、強アルカリ(pH9.0以上)を海洋放出することがないように、ラインL9上に一時貯留部やpH検出器を設け、海洋に放出するアルカリ性水溶液のpHを監視及び調整する設備を設けるものとしてもよい。
また、CO固定化処理部70の他の例としては、二酸化炭素が溶解した水を貯留する貯水部を設け、そこに海水電解部20で生成したアルカリ性水溶液を供給することが挙げられる。なお、このとき貯水部に貯留するのは、バラスト水や冷却水として利用した海水の一部などが挙げられる。これにより、貯水部に対し、二価の金属イオンを別途添加することなく二酸化炭素の固定化処理を行うことが可能となる。また、システム1D及び船舶100Dに取り入れた海水を最大限活用することが可能となる。
本実施態様におけるシステム1D及び船舶100Dは、二酸化炭素の固定化処理以外の処理を組み合わせるものとしてもよい。
図10は、本実施態様におけるシステム1D及び船舶100Dの別態様を示す概略説明図である。
図10に示すように、駆動機関10から排出される排気の浄化を行う排気浄化部60に対し、ラインL6を介してアルカリ性水溶液を供給した後、排気浄化部60で用いたアルカリ性水溶液をCO固定化処理部70(ラインL9)を介して海洋に放出することで、排気浄化及び二酸化炭素の固定化処理を組み合わせることができる。これにより、複数の処理を一つのシステム内で可能にするとともに、海水電解部20で生成したアルカリ性水溶液を一度排気浄化部60で用いることにより、アルカリ性水溶液のpH値を下げ、強アルカリの海洋放出を抑制することが可能となる。
以上のように、本実施態様のシステム1D及び船舶100Dにより、水素供給及び水素利用と併せて、二酸化炭素の固定化処理についても効果的に推進することが可能となる。
〔第5の実施態様〕
第5の実施態様に係るシステム1E及び船舶100Eは、上述した第1~第4の実施態様における構造を全て備えるものである。なお、システム1E及び船舶100Eの各構造については、第1~第4の実施態様に係る構造と同じであるため、詳細な説明については省略する。
図11は、本発明の第5の実施態様におけるシステム及びこのシステムを備える船舶を示す概略説明図である。
図11に示すように、本実施態様におけるシステム1E及び船舶100Eは、駆動機関10、海水電解部20、バラスト水タンク30、水素貯留タンク40、塩素水貯留タンク50、排気浄化部60、CO固定化処理部70を備えている。
また、本実施態様におけるシステム1E及び船舶100Eは、海水を海水電解部20に供給するラインL1と、海水電解部20で生成した水素を水素貯留タンク40を経由して駆動機関10に供給するラインL2と、海水電解部20で生成した塩素水を塩素水貯留タンク50を経由してバラスト水タンク30に供給するラインL3と、駆動機関10から排出される排気を排気浄化部60に導入するラインL4と、塩素水を排気浄化部60に供給するラインL5と、アルカリ性水溶液を排気浄化部60に供給するラインL6と、冷却水を駆動機関10に供給するラインL7と、ラインL7内の冷却水にアルカリ性水溶液を供給するラインL8と、CO固定化処理部70としてアルカリ性水溶液を海洋へ放出するラインL9とを備えている。
なお、ラインL5及びラインL8は、図11に示すように、それぞれ独立したラインとしてもよいが、1つのライン上に分岐を設けるものとしてもよい。これにより、システム1E及び船舶100E内に設けられるライン(配管)の総延長を短くすることができ、部品点数を削減するとともに、メンテナンス作業に係る負担を軽減することが可能となる。
本実施態様におけるシステム1E及び船舶100Eは、二酸化炭素の排出を抑制した水素供給及び水素利用とともに、バラスト水の殺菌や生物付着抑制に係る処理、駆動機関10からの排気処理、駆動機関10に供給される冷却水の処理、二酸化炭素の固定化処理を同時に行うことが可能となる。
これにより、二酸化炭素の排出に係る環境問題に対する複数のアプローチを一つのシステムで行うことが可能となる。特に、本実施態様におけるシステム1Eを備える船舶100Eは、ゼロエミッションを実現し、環境問題に最大限配慮した機能を備える船舶として活用することができるものとなる。
なお、上述した実施態様は、システム及び船舶の一例を示すものである。本発明に係るシステム及び船舶は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るシステム及び船舶を変形してもよい。
例えば、本実施態様のシステムにおける海水電解部20は、処理槽21を1枚の隔膜23で区切った2室式とし、空間24a及び24bに海水を満たすものを示しているが、これに限定されない。海水電解部20の他の構造としては、例えば、海水電解部20の空間24b側に気体を導入し、電極22bを隔膜23表面に設けたエアカソードとすることや、処理槽21を3室以上に区切られたものとすることなどが挙げられる。
本発明のシステムは、水素によって駆動する駆動機関を備える設備(船舶やプラント等)に対し、好適に用いることができる。特に、本発明のシステムは、水素によって駆動する駆動機関を備える船舶に対し、好適に用いることができる。
また、本発明の船舶は、二酸化炭素の排出を抑制することができる船舶として好適に利用される。特に、本発明の船舶は、ゼロエミッションを実現する船舶として好適に利用することができる。
1A,1B,1C,1D,1E システム、10 駆動機関、20 海水電解部、21 処理槽、22a,22b 電極、23 隔膜、24a,24b 空間、30 バラスト水タンク、40 水素貯留タンク、50 塩素水貯留タンク、60 排気浄化部、70 CO固定化処理部、100A,100B,100C,100D,100E 船舶、101 船舶本体、L1~L9 ライン

Claims (6)

  1. 水素によって駆動する駆動機関と、
    海水を電解する海水電解部と、を備え、
    前記海水電解部から発生する水素を前記駆動機関に供給することを特徴とする、システム。
  2. 前記海水電解部から発生する塩素含有成分及び/又はアルカリ性水溶液を、前記駆動機関の排気浄化に用いることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記海水電解部から発生する塩素含有成分を、前記駆動機関の冷却水に供給することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記海水電解部から発生するアルカリ性水溶液を、二酸化炭素の固定化処理に用いることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
  5. 前記海水電解部から発生するアルカリ性水溶液を、前記駆動機関の排気浄化に用いた後、さらに二酸化炭素の固定化処理に用いることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のシステムを備えることを特徴とする、船舶。



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