JP2021113389A - ピッチ系炭素繊維ミルド、熱伝導性成形体及びピッチ系炭素繊維ミルドの製造方法 - Google Patents

ピッチ系炭素繊維ミルド、熱伝導性成形体及びピッチ系炭素繊維ミルドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱伝導性に優れ、樹脂等のマトリックスの硬化阻害が小さいピッチ系炭素繊維ミルドを提供する。【解決手段】異方性ピッチを原料とし、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、繊維横断面はオニオン構造又はランダム構造であり、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、グラフェンシートが開いているピッチ系炭素繊維ミルド。体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%以上である。体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%以下である。【選択図】図3

Description

本発明は放熱部材の熱伝導性フィラー、及び樹脂やゴムの補強材として使用されるピッチ系炭素繊維ミルド等に関する。
近年、発熱性電子部品の高密度化や、電子機器の小型、薄型、軽量化に伴い、それらに用いられる放熱部材への放熱特性の更なる向上が要求されている。放熱部材としては、従来、熱伝導率の高いアルミや銅等の金属が用いられているが、更なる高熱伝導性、軽量性が求められており、熱伝導性フィラーが充填された硬化物からなる熱伝導性シート、液状マトリックスに熱伝導性フィラーが充填された流動性のある熱伝導性ペースト、熱伝導性塗料、熱伝導性接着剤等が提案されている。これらを実現する材料として、軽量で高放熱性、低膨張性の性能を合わせ持ったピッチ系炭素繊維が注目されている。
炭素繊維はポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、ピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。そして炭素繊維は強度・弾性率が高いという特徴を利用し、航空・宇宙用途、建築・土木用途、スポーツ・レジャー用途などに広く用いられている。また炭素繊維は熱伝導率が高く放熱性に優れていると言われている。PAN系炭素繊維の熱伝導率は、通常200W/(m/K)よりも低い。これは、PAN系炭素繊維が難黒鉛化性の炭素繊維であって、熱伝導を担う黒鉛結晶の成長を高めることが難しいためである。これに対して、異方性ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維は、大きな黒鉛結晶を形成しやすく、大きな熱伝導率を発現しやすい。このため、メソフェーズピッチを原料とするピッチ系炭素繊維は、高熱伝導性フィラーとしての利用が期待されている。
炭素繊維の熱伝導性部材への加工は、マトリックスと複合化させ、樹脂組成物とすることが主流となっている。そして樹脂組成物である成形体は、発熱体の表面に貼り付けた状態や、発熱体と放熱体の間に挟みこんだ状態で使用される。そのため樹脂組成物には柔軟性を付与することが望まれ、熱伝導性フィラーを充填させたゴム組成物が提案されている。しかしながら熱伝導性フィラーを高充填すると、粘度が高くなり、更にはゴムの硬化反応を阻害することがある。
そのため、特許文献1、特許文献2では特定の繊維端面形状および繊維表面構造を持つピッチ系黒鉛化短繊維とすることで、ゴムとの組成物とした際の表面積の増大に伴う粘度の増大を防止し、また硬化を阻害せず、ゴムにピッチ系黒鉛化短繊維を高充填させることが可能となることが提案されている。しかしながら、硬化阻害を抑制するために、特定の繊維端面形状にすることで、熱伝導性フィラー自体の熱伝導特性を十分発現させることが難しくなっている。
また、特許文献3では、黒鉛化してから粉砕すると、繊維軸方向に縦割れが発生し易くなり、粉砕された炭素繊維の全表面積中に占める破断面表面積の割合が大きくなり、熱伝達の効率が悪くなる問題が指摘されている。そのため特許文献3では、紡糸、不融化及び炭化後に粉砕され、その後黒鉛化処理を実施することで、繊維軸方向に縦割れの発生を抑制している。
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3に提案されているように、粉砕後に黒鉛化することで、繊維端面において、ほとんどのグラフェンシートが閉じていると考えられ、熱伝導特性を十分に発現させることが難しくなっていると考えられる。このため、マトリックス樹脂やゴム組成物の硬化阻害を最小限に抑え、粉砕時に繊維軸方向の縦割れを抑制した、高い熱伝導特性を持った炭素繊維ミルドが求められていた。
特許文献4はピッチ系炭素繊維において、引張弾性率が高く、かつ圧縮強度が高い炭素繊維の製造方法に関するものであり、炭素繊維を製造する際に、導入孔入口部で構造制御して溶融紡糸することを特徴とする炭素繊維の製造方法が提案されている。また、特許文献5では放熱シートの材料として用いられる炭素繊維前駆体の製造に関して、繊維断面におけるドメインサイズが熱伝導率に大きく影響していることを説明しており、そのドメインサイズの調整方法が提案されている。本発明では特許文献4、特許文献5の知見を、ピッチ系炭素繊維ミルドの製造に対して新規に最適化した。
W02010/087371 特開2007−291576号公報 特許第4759122号明細書 特開平7−42025号公報 特開2014−188129号公報
熱伝導性成形体の熱伝導性を向上させるために、炭素繊維ミルドを樹脂またはゴムに高密度で充填させた場合、樹脂またはゴムの硬化反応が阻害されることが多いため、高充填させることが困難であった。
また、硬化阻害を抑制させる場合、特定の繊維端面形状、すなわちほとんどのグラフェンシートが閉じている状態にすることにより、熱伝導性フィラー自体の熱伝導特性を十分発現させることが難しい。
そこで、本発明の目的は、従来品より高い熱伝導性を有しながら、樹脂またはゴムの硬化阻害を最小限に抑え、マトリックスがゴムの場合、柔軟性を損なわない範囲で、高密度に充填させることで、高熱伝導性を有した成形体が製造可能なピッチ系炭素繊維ミルドを提供することにある。
課題を解決するための手段としての本発明は以下の通りである。
(1)異方性ピッチを原料とし、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、繊維横断面がオニオン構造又はランダム構造であり、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、グラフェンシートが開いていることを特徴とするピッチ系炭素繊維ミルド。
(2)体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%以上であり、かつ、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%以下であることを特徴とする(1)に記載のピッチ系炭素繊維ミルド。
(3)繊維方向の熱伝導率が500〜1400W/mKであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のピッチ系炭素繊維ミルド。
(4)(1)乃至(3)のうちいずれか一つに記載のピッチ系炭素繊維ミルドと、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム成分から選択される少なくとも1種類のマトリックス成分とを含む熱伝導性成形体。
(5)光学的異方性のメソフェーズピッチを溶融紡糸して、繊維横断面がオニオン構造又はランダム構造のピッチ系炭素繊維前駆体を得る第1工程と、前記第1工程で得られたピッチ系炭素繊維前駆体を不融化工程、及び炭化工程において加熱処理した後、チョップ状態または長繊維状態にて2800℃から3200℃の焼成温度で焼成処理する第2工程と、前記第2工程で得られたピッチ系炭素繊維焼成物を、粉砕・分級工程よりサイズ調整して(1)に記載のピッチ系炭素繊維ミルドを製造するピッチ系炭素繊維ミルドの製造方法。
本発明のピッチ系炭素繊維ミルドは従来品より高い熱伝導性を有しながら、樹脂等のマトリックスの硬化阻害を最小限に抑え、柔軟性を損なわない範囲で、高密度に充填させることが可能であるため、高熱伝導性を有した熱伝導性成形体が提供可能である。
体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%以上を説明するためのグラフ 体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積90%(L10)の繊維長が250%以下を説明するためのグラフ ピッチ系炭素繊維ミルド 製造フロー図 異方性ピッチ系炭素繊維の断面をランダム構造にするための紡糸ノズル部の拡大図である。 異方性ピッチ系炭素繊維の断面をオニオン構造にするための紡糸ノズル部の拡大図である。 ピッチ系炭素繊維ミルド(ランダム構造)の全体写真である。 ピッチ系炭素繊維ミルドの断面及び表面の写真である。 透過型電子顕微鏡により観察した繊維端面の写真であり,グラフェンシートが開いた状態を示している。 透過型電子顕微鏡により観察した繊維端面の写真であり,グラフェンシートが閉じた状態を示している。
本発明の一実施形態であるピッチ系炭素繊維ミルドについて説明する。本実施形態のピッチ系炭素繊維ミルドは、マトリックス材料に混合されて、熱伝導性成形体として用いられる。マトリックス材料には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、およびゴム成分からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。本実施形態のピッチ系炭素繊維ミルドは熱伝導性に優れているため、熱伝導性成形体の柔軟性が損なわれる程、高密度に充填する必要はない。したがって、熱伝導性及び柔軟性を兼ね備えた熱伝導性成形体を得ることができる。
本実施形態のピッチ系炭素繊維ミルドは、異方性ピッチを原料とし、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、繊維横断面はオニオン構造又はランダム構造で構成されており、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、グラフェンシートが開いている。以下、各構成要件に文節して、限定理由などを説明する。
(異方性ピッチについて)
異方性ピッチは、所定のピッチに対してメソフェーズを発生させ、これを曳糸性に富むピッチに改質することで得られる。蒸留や溶剤抽出、必要に応じて水素化等を行い、さらにろ過等で不純物を取り除き、熱重合により改質を行う。所定のピッチとして、コールタール、コールタールピッチ等の石炭系ピッチ、石炭液化ピッチ、エチレンタールピッチ、流動接触触媒分解残査油から得られるデカントオイルピッチ等の石油系ピッチ、あるいはナフタレン等から触媒などを用いて生成される合成ピッチ等を用いることができる。異方性ピッチの全体を100体積%としたとき、メソフェーズの含有量は好ましくは60体積%以上であり、より好ましくは90%以上である。メソフェーズの含有量を増やすことにより、後述する黒鉛化工程において黒鉛結晶への転換が進みやすくなり、熱伝導特性が向上する。
(オニオン構造、ランダム構造について)
異方性ピッチ系炭素繊維の横断面に見られる構造として、ラジアル構造、オニオン構造、ランダム構造が知られている。ラジアル構造とは、炭素繊維の黒鉛結晶の分子が(炭素六角網平面が)繊維の中心軸に対して放射状になっている構造である。ただし、実際の異方性ピッチ系炭素繊維では、横断面の全てが綺麗に整った放射状に形成されることはなく、部分的にオニオン類似の構造、ランダム類似の構造が含まれる場合が多い。したがって、異方性ピッチ系炭素繊維の横断面の約80%以上が放射状である場合には、ラジアル構造とみなす。
オニオン構造とは、炭素繊維の黒鉛結晶の分子が(炭素六角網平面が)繊維の中心軸に対して同心円状になっている構造をいう。ただし、実際の異方性ピッチ系炭素繊維では、横断面の全てが綺麗に整った同心円状に形成されることはなく、部分的にラジアル類似の構造、ランダム類似の構造が含まれる場合が多い。したがって、異方性ピッチ系炭素繊維の横断面の約80%以上が同心円状である場合には、オニオン構造とみなす。
ランダム構造とは、炭素繊維の黒鉛結晶の分子が(炭素六角網平面が)繊維の中心軸に対して放射状の構造部も同心円状の構造部も有していない構造をいう。異方性ピッチ系炭素繊維の横断面が上述のラジアル構造でも、オニオン構造でもない場合、ランダム構造とみなす。
異方性ピッチ系炭素繊維は、溶融紡糸工程における紡糸条件を制御することで、繊維の特性や構造が大きく変わることが知られている。異方性ピッチ系炭素繊維の横断面の構造は、紡糸工程における紡糸ノズルの形状、ノズル直上でのピッチの流れ方等によって制御することができる。
ここで、異方性ピッチ系炭素繊維を熱伝導性フィラーとして使用する場合、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した際、激しい凹凸からなる欠陥(以下、凹凸欠陥と称する)が存在しないことが重要である。繊維表面に凹凸欠陥が存在する場合は、マトリックス材料との混練に際して、粘度の増大を引き起こし、更にはマトリックス材料の硬化阻害の原因にもなる。
繊維横断面がラジアル構造である場合、繊維表面に凹凸欠陥が発生し易くなり、更には粉砕工程において繊維軸方向の縦割れが発生する頻度が高くなる。そこで繊維横断面は、凹凸欠陥の発生しにくいオニオン構造、ランダム構造となるように制御することが重要である。本発明者等は、繊維横断面の構造をオニオン構造又はランダム構造で構成することによって、異方性ピッチ系炭素繊維によるマトリックス材料の硬化阻害効果を大幅に低減できることを知見した。
また、オニオン構造又はランダム構造にすることによって、黒鉛化工程後の粉砕工程において(これらの工程の詳細は後述する)繊維軸方向における縦割れが発生しにくくなり、熱伝導率を高めることができる。ピッチ系炭素繊維ミルドの横断面の構造は、走査型顕微鏡もしくは、偏光顕微鏡を用いて観察することにより、特定することができる。
(ピッチ系炭素繊維ミルドの平均繊維径について)
ピッチ系炭素繊維ミルドの平均繊維径は5μm以上15μm以下であり、好ましくは10μm以上13μm以下である。平均繊維径が5μm未満になると、熱伝導率が低下する。平均繊維径が15μm超になると、繊維軸方向に縦割れが発生し易くなり、繊維の表面積が増えるため、マトリックス材料と混合した際に、マトリックス材料の硬化不良を招く。
平均繊維径には、走査型電子顕微鏡を用いて測定した各繊維の繊維径の算術平均値を用いることができる。
(体積換算平均繊維長が300μm以下について)
ピッチ系炭素繊維ミルドの体積換算平均繊維長は、300μm以下である。体積換算平均繊維長が300μmを超過すると、ピッチ系炭素繊維ミルドの嵩が増し、マトリックス材料の硬化不良を招くおそれがある。そのため、マトリックス材料に対するピッチ系炭素繊維ミルドの混合量を減らす必要があり、結果的に熱伝導率が大きく低下する。なお、ピッチ系炭素繊維ミルドの体積換算平均繊維長の下限値は、特に限定しないが、好ましくは100μmである。100μmよりも体積換算平均繊維長が短くなると、熱伝導成形体の熱伝導率を低下させる。
(グラフェンシートが開いているについて)
透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、異方性ピッチ系炭素繊維のグラフェンシートは開いていなければならない。グラフェンシートとは、炭素原子が六角形状に平面上で結合した格子構造をなすシート状物のことである。グラフェンシートが開いているとは、炭素繊維を構成するグラフェンシートの端部が炭素繊維端部に露出していることを意味する。一方、グラフェンシートが閉じているとは、グラファイト層がU字状に湾曲し、湾曲部分が炭素繊維端部に露出している場合を意味する。
グラフェンシートを開いた構造とすることによって、短繊維の全長にわたって黒鉛結晶が配列されるため、熱伝導効率を高めることができる。また、電気絶縁性被膜などが形成され易くなる。
グラフェンシートを開いた構造とするためには、後述するように、ピッチ系炭素繊維を不融化、炭化した後に、チョップ状態又は長繊維状態で黒鉛化し、この黒鉛化処理の後に粉砕する必要がある。これに対して、特許文献3では、背景技術で説明したように、粉砕後に黒鉛化処理を行っているため、グラフェンシートが閉じており、熱伝導特性を十分に発現させることができない。
ここで、グラフェンシートが開いている場合、グラフェンシートが閉じている場合よりも、繊維断面の官能基、活性点が多くなり、触媒との反応が促進されるため、硬化阻害が起こりやすくなる。しかしながら、本実施形態では、異方性ピッチ系炭素繊維の横断面構造をランダム構造又はオニオン構造とすることによって、硬化阻害を起こりにくくしているため、異方性ピッチ系炭素繊維全体としての硬化阻害効果を低くすることができる。
(体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が好ましくは40%以上であるについて)
好ましい条件として、本実施形態の異方性ピッチ系炭素繊維では、体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%以上である。図1のグラフを参照しながら、体積換算繊維長累積について説明する。図1において、横軸は繊維長であり、縦軸は各繊維長の比率である。なお、体積換算平均繊維長はX(μm)とする(以下、同様である)。
体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%とは、繊維長分布の短尺側から累積10%目の繊維長が体積換算平均繊維長の40%(すなわち、0.4X(μm))となることを意味する。つまり、図1の繊維長分布において、ハッチングで示す部分が短尺側累積10%を示す短尺群であり、この短尺群の最大繊維長が0.4X(μm)となる。
体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%未満になると、小さい繊維長の占める割合が増大するため、マトリックス材料と混合して熱伝導性成形体を製造する際に、黒鉛化炭素繊維同士の接触が少なくなり、熱伝導性が低下する。また、マトリックスの硬化阻害の原因になる場合もある。
体積換算平均繊維長は、画像解析機能を備えた粒度・形状分布測定器(例えば、セイシン企業製)を用いて測定することができる。具体的には、「セイシン企業製PITA1を用いて1500本測定し、各繊維長の2乗値の平均値を求め、この平均値の平方根より体積換算平均繊維長を求めた。
(体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が好ましくは250%以下であるについて)
好ましい条件として、本実施形態の異方性ピッチ系炭素繊維では、体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%以下である。図2を参照して、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%とは、繊維長分布の短尺側から累積90%目の繊維長が体積換算平均繊維長の250%(すなわち、2.5X(μm))となることを意味する。つまり、図2の繊維長分布のハッチングで示す部分が長尺側累積10%を示す長尺群であり、この長尺群の最小繊維長が2.5X(μm)となる。
体積換算平均繊維長に対する、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%超になると、大きい繊維長の占める割合が増大し、黒鉛化炭素繊維が嵩高くなって、マトリックス中に高密度に充填することが困難になる。そのため、マトリックス材料に対するピッチ系炭素繊維ミルドの混合量を減らす必要があり、結果的に熱伝導率が低下する。
次に、図3、図4及び図5を参照しながら、本発明の一実施形態であるピッチ系炭素繊維ミルドの製造方法について説明する。ただし、ここで説明する製造方法は、本発明の例示であり、これに限定されるものではない。図3は、ピッチ系炭素繊維ミルドの工程図である。図4は、異方性ピッチ系炭素繊維の断面をランダム構造にするための紡糸ノズル部の拡大図である。図5は、異方性ピッチ系炭素繊維の断面をオニオン構造にするための紡糸ノズル部の拡大図である。
紡糸工程:S1において、異方性ピッチを所定の紡糸条件で溶融紡糸する。図4を参照して、紡糸ノズル部10は、異方性ピッチの吐出方向における上流側から下流側に向かって縮流部孔1、導入孔2、アプローチ部3、平坦部4及び吐出孔5がこの順序で設けられた構成となっている。縮流部孔1は紡糸ノズル部10に向かって異方性ピッチをフィードする入口に2つ形成されている。ただし、縮流部孔1は1つとすることもできる。
各縮流部孔1を前記吐出方向に対して直交する方向に切断したときの断面形状は楕円であり、この楕円の長径をD1、短径をD1´としたとき、D1≧8D1´であり、好ましくは30D1´≧D1≧10D1´である。
長径D1は例えば0.5〜3.0mmに設定することができる。短径D1´は例えば0.05〜0.25mmに設定することができる。
縮流部孔1に進入した異方性ピッチは一旦縮流された後、導入孔2で拡大し、テーパ形状のアプローチ部3で再度縮流される。導入孔2の径は例えば2.0〜3.0mmに設定することができる。アプローチ部3は下流側が上流側よりも径の小さいテーパ形状に形成されており、その好ましい角度は130〜140度である。
アプローチ部3の下端部には平坦部4が形成されており、この平坦部4には断面形状が円形の吐出孔5が形成されている。アプローチ部3で縮流された異方性ピッチは、この吐出孔5から所定圧力で押し出され、所定の引き取り速度で延伸されることにより、所定の繊維径のピッチ繊維が得られる。ピッチ繊維の好ましい温度は粘土100〜1500ポイズを示す温度であり、より好ましい温度は200〜800ポイズを示す温度である。吐出孔5の好ましい口径は、0.05mm〜0.5mmである。所定圧力は、好ましくは、1〜200kg/cmである。引き取り速度は、好ましくは、100〜2000m/minである。延伸後の繊維径は、好ましくは、5〜20μmである。
上述の紡糸ノズルによれば、縮流部孔1のアスペクト比を大きくすることによって、縮流部孔1の断面形状がより扁平化し、異方性ピッチ系炭素繊維の断面をランダム構造にすることができる。すなわち、アスペクト比をD1≧8D1´に設定することによって、異方性ピッチ系炭素繊維の断面をランダム構造にすることができる。これにより、異方性ピッチ系炭素繊維の繊維表面における凹凸欠陥が減少し、異方性ピッチ系炭素繊維によるマトリックス材料の硬化阻害を大幅に低減することができる。なお、アスペクト比がD1<8D1´になると、ラジアル構造になる。
図5を参照して、紡糸ノズル部20の中の異方性ピッチ21を、撹拌棒22を用いてキャピラリー23上部の位置で撹拌することによって、異方性ピッチ21のキャピラリー23に向かう流れを乱すか、又は新たな流れ(キャピラリー23上部での円周方向の渦状の流れ)を作り出す。この条件下で、異方性ピッチ21を吐出させることにより、異方性ピッチ系炭素繊維の断面をオニオン構造にすることができる。なお、異方性ピッチ21の温度,粘度、吐出時の圧力は、ランダム構造の場合と同じにすることができる。
上記の方法で異方性ピッチを構造制御しながら、吐出孔から所定圧力で押し出し、所定の引き取り速度で延伸し、所定の繊維径のピッチ系炭素繊維前駆体を得る。
不融化工程:S2において、不融化処理を行う。不融化処理とは、酸化性ガス雰囲気下で、加熱処理を行い、ピッチ系炭素繊維前駆体に酸素を付加することである。加熱温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは130〜320℃である。加熱時間は、好ましくは10分〜10時間であり、より好ましくは1〜6時間である。酸化性ガスには、酸素、空気あるいはこれらに二酸化窒素、塩素等を混合したガスを用いることができる。
炭化工程:S3において、不融化したピッチ系炭素繊維前駆体を炭化処理する。炭化処理は、不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことにより実施される。不活性ガスには、窒素、アルゴン等を用いることができる。加熱温度は、好ましくは900〜1500℃である。ここで、炭化処理したピッチ系炭素繊維前駆体には、不融化処理後に行う熱処理温度とその熱処理後の弾性率の値に相関性があることが分かっており、熱処理温度を調整することにより弾性率を10GPa〜1000GPaの範囲で調整することができる。
チョップ処理工程:S4において、炭化工程まで終了した炭素繊維前駆体を2mm〜200mmに切断してチョップ状に加工する。これにより、ハンドリング性が向上するとともに、後述する黒鉛化工程においてピッチ系炭素繊維前駆体の嵩密度が高くなり、焼成効率を上げることができる。ただし、チョップ処理工程:S4を省略して、黒鉛化処理工程:S5に進んでもよい。
黒鉛化処理工程:S5において、チョップ処理されたピッチ系炭素繊維前駆体を、不活性ガス中にて高温で熱処理する。これにより、熱伝導性に優れたピッチ系炭素繊維焼成物が得られる。黒鉛化には、通常バッチ式の電気炉が用いられる。この電気炉は、黒鉛性発熱ヒータを備え、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で昇温し、最高到達温度で一定時間保持した後降温、冷却し黒鉛化処理を行う。また、別の加熱炉として、比較的大容積で3000℃前後の黒鉛化が実施できるアチソン炉を用いることもできる。これは被加熱部材の回りにコークスやカーボンビーズを充填し、炉の前後に配置された電極より大電流を投入することで、コークスやカーボンビーズがジュール熱により発熱し、かつ雰囲気中の酸素等の酸化性ガスがコークスやカーボンビーズにより消費され、被加熱物の周囲が不活性ガス雰囲気下となる焼成方法である。
黒鉛化処理における加熱温度は、2800〜3200℃でなければならない。加熱温度が2800℃以下では、熱伝導性を十分に高めることができない。加熱温度が3200℃を越えると黒鉛昇華温度に達するため、これ以上温度を高めても黒鉛化性の向上は工業的に困難となる。また、加熱温度の下限値は、好ましくは2900℃以上であり、より好ましくは2950℃以上である。これにより、得られた黒鉛化ピッチ系炭素繊維の長さ方向の熱伝導率を500〜1400W/m・Kに高めることができる。熱伝導率が500W/m・Kより低いと熱伝導を改善するには不十分であり、一方、熱伝導率が1400W/m・Kを超えるように調整するには工業的に困難な黒鉛化温度ならびに時間を必要とし本発明には不適である。
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維焼成物は、所定の繊維長にするために、切断、粉砕、分級等の処理が実施される。切断にはギロチン式切断機、多軸回転式等のカッター、また粉砕にはカッターミル、ジェットミル、ターボミル、ハンマミルなどの繊維軸に対して直角方向に切断するタイプの粉砕方法が適切である。ボールミル等の摩砕機による方法もあるが、これらの方法では、繊維軸方向の縦割れの発生が多くなるので望ましくない。
分級には、振動篩式、遠心分離式等の分級装置を用いることができる。分級を実施し、微粉量、粗粉量をコントロールし、繊維長分布を調整する。所定の繊維長を得るために、切断、粉砕、分級を多種複数機で構成した製造ラインでも良い。機種選定以外の制御方法としては、原料の投入速度、粉砕装置のミルの回転数、篩装置のメッシュ、スクリーナーのスクリーン種類等を組み合わせることで、所定の繊維長分布に調整することができる。繊維長分布はレーザー回折方式、画像解析方式により算出することができる。
図6は上記の製造工程により製造されたピッチ系炭素繊維ミルド(ランダム構造)の全体写真であり、図7は当該ピッチ系炭素繊維ミルドの断面及び表面の写真である。これらの写真等に示す通り、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、グラフェンシートが開いており、体積換算平均繊維長に対して、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が40%以上、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が250%以下の繊維長分布を持ち、長さ方向の熱伝導率は500〜1400W/m・Kであるピッチ系炭素繊維ミルドを得ることができる。
また、そのピッチ系炭素繊維は、繊維横断面がオニオン構造又はランダム構造であり、繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維表面の凹凸欠陥が少なく、繊維形状が保持されている。
ここで、ピッチ系炭素繊維ミルドの表面処理を目的として、炭素繊維の表面を予め電解酸化などの手段によって酸化処理したり、カップリング剤やサイジング剤で処理することによってマトリックスの高分子材料との濡れ性や充填性を向上させたり、高分子材料と粉末界面の剥離強度を改良することが可能である。
また、黒鉛化炭素繊維の表面に金属やセラミックスなどを無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによる物理的蒸着法、化学的蒸着法、塗装法、浸漬法などの方法によって被覆させることもできる。
本実施形態のピッチ系炭素繊維ミルドは、上述した通りマトリックス材料に混合され、熱伝導性成形体として用いられる。熱伝導性成形体において、マトリックス材料を100重量部としたとき、ピッチ系炭素繊維ミルドの好ましい混合量は10〜350重量部である。
マトリックス材料に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリフェニレン−エーテル共重合体(PPE)樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等を例示できる。
マトリックス材料に使用される熱硬化性樹脂としては、エポキシ類、アクリル類、ウレタン類、シリコーン類、フェノール類、イミド類、熱硬化型変性PPE類、および熱硬化型PPE類、ポリブタジエン系ゴム及びその共重合体、アクリル系ゴム及びその共重合体、シリコーン系ゴム及びその共重合体、天然ゴムなどが例示できる。また、これらを二種以上組み合わせたものであってもよい。
熱伝導性成形体には、マトリックス材料及びピッチ系炭素繊維ミルドの他に、粉末状或いは繊維状の金属又はセラミックスを混合してもよい。金属には、銀、銅、金、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。また、金属被覆樹脂などの従来の熱伝導性成形体に使用されている熱伝導率が大きな充填剤を用いることもできる。
セラミックスには、従来の黒鉛化炭素繊維、或いは黒鉛化されていない炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、ウィスカー状、ナノチューブ状のカーボンを用いることができる。
なお、最終製品として特に電気絶縁性が要求される用途においては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び水酸化アルミニウムからなる電気絶縁性の熱伝導性充填剤を併用することが好ましい。
本実施形態のピッチ系炭素繊維ミルドは、ゴム組成物の硬化を阻害せず、高充填が可能であることから、マトリクス材料がゴム成分である場合、本発明の効果がより発現される。この観点から本発明の熱伝導性成形体はマトリクス成分がゴム成分である場合に好適である。
ゴム成分としては天然ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴムなどを用いることができる。
熱伝導性成形体は、コンプレッション成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、ロール成形法、押出成形法にて、成形することが可能である。このようにして得られた熱伝導性成形体は、必要に応じ加工することで、発熱体に組み込み用いることができる。また、熱伝導性成形体を用いた熱伝導性シートとしても良い。シート状に加工することで、電子機器等における半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放熱する放熱部材、伝熱部材あるいはそれらの構成材料等として用いることができる。
(実施例)
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2021113389
(実施例1)
キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni−Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下480℃で熱処理した後、減圧し低沸点分を除きメソフェーズピッチを得た。このピッチをさらにフィルターを用いて温度340℃でろ過して、ピッチ中の異物を取り除き、精製されたメソフェーズピッチを得た。このピッチは、軟化点が304℃、トルエン不溶分が85重量%、ピリジン不溶分が42重量%、メソフェーズ含有量が97%であった。
このピッチを用いて溶融紡糸を行った。導入孔入口部で個数は1個で長辺2.6mm、短辺0.1mmの楕円形状の縮流部にて一旦縮流した後、径が2.8mmである導入孔で拡大し、導入孔から吐出孔にいたる形状が、135度の角度を形成するアプローチ部で縮流し、アプローチの終端で一旦平坦部とし、平坦部に設けられた断面形状が円形である吐出孔を通過させて、紡糸を実施した。メソフェーズピッチの粘度400ポイズ、ピッチ繊維の引き取り速度400m/minで紡糸し単糸直径が14μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。このピッチ繊維を酸化性ガス雰囲気中で130〜320℃にて不融化処理を行った。
次に、炭化工程にて不融化が終了した不融化ピッチ繊維を、窒素ガス雰囲気中で、1200℃の加熱温度で炭化処理した。炭化処理した炭素繊維前駆体を、ギロチン式切断機で5mmのサイズに切断してチョップ状に加工した後、アチソン炉にて3000℃で加熱、焼成し、黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得た。
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを、カッターミル(ターボ工業製)とターボミル(ターボ工業製)にて粉砕し、ターボスクリーナー(ターボ工業製)にて分級を実施した。カッターミル周波数30Hz、ターボミル周波数36Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.6μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また、図8は透過型電子顕微鏡により観察した繊維端面の写真であり、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は21W/mKであった。
(実施例2)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数32Hz、ターボミル周波数34Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き100μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.4μm、体積換算平均繊維長が150μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が85μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が295μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が57%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が197%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは実施例1と同様に繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長150μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は27W/mKであった。
(実施例3)
精製されたメソフェーズピッチを得るまでは実施例1と同様に製造し、このピッチを用いて溶融紡糸を行った。導入孔入口部で個数は2個で長辺1.0mm、短辺0.1mmの楕円形状の縮流部にて、径が2.2mmである導入孔で拡大し、導入孔から吐出孔にいたる形状が、135度の角度を形成するアプローチ部で縮流し、アプローチの終端で一旦平坦部とし、平坦部に設けられた断面形状が円形である吐出孔を通過させて、紡糸を実施した。メソフェーズピッチの粘度400ポイズ、ピッチ繊維の引き取り速度400m/minで紡糸し、単糸直径が14μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。このピッチ繊維を酸化性ガス雰囲気中で130〜320℃にて不融化処理を行った。次に、炭化工程にて不融化が終了した不融化ピッチ繊維を、窒素ガス雰囲気中で、1200℃の加熱温度で炭化処理した。炭化処理した炭素繊維前駆体を、ギロチン式切断機で5mmのサイズに切断してチョップ状に加工した後、アチソン炉にて3000℃で加熱、焼成し、黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得た。
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを、カッターミル(ターボ工業製)とターボミル(ターボ工業製)にて粉砕し、ターボスクリーナー(ターボ工業製)にて分級を実施した。カッターミル周波数30Hz、ターボミル周波数36Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.5μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が194μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が194%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は20W/mKであった。
(実施例4)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例3と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数32Hz、ターボミル周波数35Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き100μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.3μm、体積換算平均繊維長が150μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が84μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が297μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が56%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が198%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長150μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は25W/mKであった。
(実施例5)
精製されたメソフェーズピッチを得るまでは実施例1と同様に製造し、このピッチを用いて実施例1と同条件で溶融紡糸を実施し、単糸直径が11μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。その後の黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数29Hz、ターボミル周波数35Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が7μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは実施例1と同様に繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は19W/mKであった。実施例1よりも平均繊維径が小さいため、熱伝導率が低下したものと考えられる。
(実施例6)
精製されたメソフェーズピッチを得るまでは実施例1と同様に製造し、このピッチを用いて実施例3と同条件で溶融紡糸を実施し、単糸直径が11μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。その後の黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例3と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数29Hz、ターボミル周波数34Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が7μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が194μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が194%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は18W/mKであった。
(実施例7)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数22Hz、ターボミル周波数28Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き150μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.6μm、体積換算平均繊維長が280μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が132μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が525μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が47%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が188%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは実施例1と同様に繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長280μmのピッチ系炭素繊維ミルドを12重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子68重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。体積換算平均繊維長が大きく、樹脂の硬化不良を起こし易いため、ピッチ系炭素繊維ミルドの添加量を他の実施例より少なくした。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は18W/mKであった。
(実施例8)
精製されたメソフェーズピッチを得るまでは実施例1と同様に製造した。図5の装置を用いて、撹拌棒を回転させることで、円周方向の渦状の流れを作り出し、この条件下で溶融紡糸した。紡糸条件は実施例1と同条件で実施し、単糸直径が14μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。
このピッチ繊維を酸化性ガス雰囲気中で130〜320℃にて不融化処理を行った。その後の黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数30Hz、ターボミル周波数35Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.3μm、体積換算平均繊維長が99μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が191μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が48%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が193%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はオニオン構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長99μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は20W/mKであった。
(実施例9)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例8と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数31Hz、ターボミル周波数33Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き100μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.3μm、体積換算平均繊維長が149μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が84μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が294μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が56%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が197%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは実施例8と同様に繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はオニオン構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長149μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は26W/mKであった。
(実施例10)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミルのみで周波数40Hzの運転条件で粉砕した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.3μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が31μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が275μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が31%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が275%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを10重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子70重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。体積換算平均繊維長に対する体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が低く、樹脂の硬化不良を起こし易いため、ピッチ系炭素繊維ミルドの添加量を他の実施例より少なくした。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は17W/mKであった。
(比較例1)
精製されたメソフェーズピッチを得るまでは実施例1と同様に製造し、このピッチを用いて溶融紡糸を行った。導入孔入口部で個数は1個で長辺1.8mm、短辺0.3mmの楕円形状の縮流部にて、径が2.0mmである導入孔で拡大し、導入孔から吐出孔にいたる形状が、180度の角度である平坦部とし、平坦部に設けられた断面形状が円形である吐出孔を通過させて、紡糸を実施した。メソフェーズピッチの粘度400ポイズ、ピッチ繊維の引き取り速度400m/minで紡糸し単糸直径が14μmのピッチ繊維を得て、このピッチ繊維を6000本束ねてピッチ繊維を製造した。このピッチ繊維を酸化性ガス雰囲気中で130〜320℃にて不融化処理した。
次に、炭化工程にて不融化が終了した不融化ピッチ繊維を、窒素ガス雰囲気中で、1200℃の加熱温度で炭化処理した。炭化処理した炭素繊維前駆体を、ギロチン式切断機で5mmのサイズに切断してチョップ状に加工した後、アチソン炉にて3000℃で加熱、焼成を実施し、黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得た。
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを、カッターミル(ターボ工業製)とターボミル(ターボ工業製)にて粉砕し、ターボスクリーナー(ターボ工業製)にて分級を実施した。カッターミル周波数30Hz、ターボミル周波数36Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.5μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が41μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が235μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が41%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が235%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が多く、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、凹凸が確認された。繊維横断面は、ラジアル構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型したが、シリコーン樹脂の硬化が不十分であり、完全なシリコーン硬化物を得ることができなかった。これはピッチ系炭素繊維ミルドに繊維軸方向の縦割れの発生が多く、繊維表面に凹凸が多かったため、表面積が増大し、硬化阻害を引き起こしたと思われる。またシリコーン樹脂との混合分散に際して、表面積増大に伴う粘度の増大を引き起こし、十分に混合分散できなかった。
(比較例2)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは比較例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数32Hz、ターボミル周波数35Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き100μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.3μm、体積換算平均繊維長が149μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が69μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が320μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が46%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が218%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が多く、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、凹凸が確認された。繊維横断面は、ラジアル構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長149μmのピッチ系炭素繊維ミルドを12重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子68重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。繊維軸方向の縦割れが多く、樹脂の硬化不良を起こしやすいため、ピッチ系炭素繊維ミルドの添加量を実施例1等より少なくした。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は12W/mKであった。更に繊維断面におけるドメインサイズが実施例2と比較して小さくなっていることで熱伝導率が悪くなっていると考えられる。
(比較例3)
炭化工程まで終了した炭素繊維前駆体を得るまでは、実施例1と同様に製造し、その炭素繊維前駆体を、粉砕工程にてカッターミル周波数34Hz、ターボミル周波数36Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き100μmのスクリーンを使用して、炭素繊維前駆体ミルドを得た。その炭素繊維前駆体ミルドをアチソン炉にて3000℃で加熱、焼成し、黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維ミルドを得た。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.2μm、体積換算平均繊維長が149μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が82μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が293μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が55%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が197%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。図9は透過型電子顕微鏡により観察した繊維端面の写真であり、グラフェンシートが閉じていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長140μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は16W/mKであった。
比較例3では、グラフェンシートが閉じたピッチ系炭素繊維ミルドを用いて熱伝導性シートを構成しているため、実施例と比較して、熱伝導率が低下したと考えられる。
(比較例4)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数27Hz、ターボミル周波数34Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が4μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは実施例1と同様に繊維軸方向の縦割れの発生が少なく、繊維形状が保持されており、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、激しい凹凸のような欠陥は存在せず、繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを15重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子65重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は12W/mKであった。平均繊維径が5μm未満であるため、実施例と比較して、熱伝導率が低下したと考えられる。
(比較例5)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数31Hz、ターボミル周波数37Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き74μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が16μm、体積換算平均繊維長が100μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が50%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が190%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が多く、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、凹凸が確認された。繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長100μmのピッチ系炭素繊維ミルドを12重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子68重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。平均繊維径が15μm超で、樹脂の硬化不良を起こし易いため、ピッチ系炭素繊維ミルドの添加量を実施例1等より少なくした。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は15W/mKであった。
(比較例6)
黒鉛化焼成されたピッチ系炭素繊維チョップを得るまでは実施例1と同様に製造し、粉砕工程にてカッターミル周波数22Hz、ターボミル周波数25Hzの運転条件で、ターボスクリーナーに目開き250μmのスクリーンを使用した。得られたピッチ系炭素繊維ミルドを、セイシン企業製の画像解析方式である粒度・形状分布測定器で測定した結果、平均繊維径が11.6μm、体積換算平均繊維長が350μm、体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が158μm、体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が652μm、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積10%(L10)の繊維長が45%、体積換算平均繊維長に対して体積換算繊維長累積90%(L90)の繊維長が186%であった。
得られたピッチ系炭素繊維ミルドは繊維軸方向の縦割れの発生が多く、走査型電子顕微鏡で繊維表面を観察した結果、凹凸が確認された。繊維横断面はランダム構造であった。また透過型電子顕微鏡による繊維端面観察によって、グラフェンシートが開いていることを確認した。
東レダウコーニング社製二液性付加反応型シリコーン樹脂(SE1885)20重量%と、上記体積換算平均繊維長350μmのピッチ系炭素繊維ミルドを5重量%と、平均粒径3μmのアルミナ粒子75重量%を混合分散させて、シリコーン樹脂組成物を得た。体積換算平均繊維長が300μm超で、樹脂の硬化不良を起こし易いため、ピッチ系炭素繊維ミルドの添加量を実施例1等より大幅に少なくした。このシリコーン樹脂組成物を、ホットプレス成型機にて80℃で1時間プレス硬化し、厚み3.0mmのシリコーン成型板を成型した。得られたシリコーン成型板を切断し、厚さ3.0mm、縦長さ20mm、横長さ20mmの熱伝導性成型板を得た。熱伝導性成型板の面内方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、熱伝導率は9W/mKであった。
1 縮流部孔
2 導入孔
3 アプローチ部
4 平坦部
5 吐出孔
10 紡糸ノズル部

Claims (3)

  1. 異方性ピッチを原料とし、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、繊維横断面がランダム構造であり、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、グラフェンシートが開いていることを特徴とするピッチ系炭素繊維ミルド。
  2. 異方性ピッチを原料とし、平均繊維径が5〜15μm、体積換算平均繊維長が300μm以下であり、繊維横断面がオニオン構造であり、透過型電子顕微鏡による繊維端面観察において、グラフェンシートが開いていることを特徴とするピッチ系炭素繊維ミルド。
  3. 請求項1または2に記載のピッチ系炭素繊維ミルドと、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム成分から選択される少なくとも1種類のマトリックス成分とを含む熱伝導性成形体。
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