JP2021105160A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021105160A
JP2021105160A JP2020204754A JP2020204754A JP2021105160A JP 2021105160 A JP2021105160 A JP 2021105160A JP 2020204754 A JP2020204754 A JP 2020204754A JP 2020204754 A JP2020204754 A JP 2020204754A JP 2021105160 A JP2021105160 A JP 2021105160A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
monocarboxylic acid
organic monocarboxylic
water
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2020204754A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021105160A5 (ja
JP7570909B2 (ja
Inventor
池上 正幸
Masayuki Ikegami
正幸 池上
将史 山本
Masashi Yamamoto
将史 山本
洋子 平
Yoko Taira
洋子 平
智章 石井
Tomoaki Ishii
智章 石井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to US17/129,466 priority Critical patent/US20210198508A1/en
Publication of JP2021105160A publication Critical patent/JP2021105160A/ja
Publication of JP2021105160A5 publication Critical patent/JP2021105160A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7570909B2 publication Critical patent/JP7570909B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Abstract

【課題】 インク付与から短い時間で耐擦過性が発現するメタリック画像を記録することができるとともに、保存安定性に優れる水性インクなどの提供。【解決手段】 銀粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、(i)pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸、及び、(ii)pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸、を含有することを特徴とする水性インク。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
金属粒子を含有するインクは、用いる金属粒子の導電性を利用して、電気回路の形成に使用されてきたが、近年では、クリスマスカードなどのメタリック感を表現する用途においても使用されるようになってきている。このような用途では、画像の装飾性を高めるために、メタリック感のある画像(以下、「メタリック画像」と記載することがある)を記録することが求められている。メタリック画像を記録するために、銀粒子、及びpH調整剤としての各種の成分を含有する水性インクが提案されている(特許文献1及び2参照)。また、銀粒子、及び樹脂粒子を含有する水性インクが提案されている(特許文献3参照)。
特開2011−241242号公報 特開2018−075828号公報 特開2018−090719号公報
本発明者らは、銀粒子を含有する従来のインクについて検討を行った。その結果、特許文献1及び2に記載されたインクは、保存安定性が良好であるものの、記録媒体に付与されてからある程度の耐擦過性が発現するまでに時間を要する、すなわち、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性が不十分であることがわかった。また、特許文献3に記載されたインクも、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性が不十分であるうえ、保存安定性も不十分であることがわかった。
したがって、本発明の目的は、インク付与から短い時間で耐擦過性が発現するメタリック画像を記録することができるとともに、保存安定性に優れる水性インク、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかる水性インクは、銀粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、(i)pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸、及び、(ii)pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸、を含有することを特徴とする。
本発明によれば、インク付与から短い時間で耐擦過性が発現するメタリック画像を記録することができるとともに、保存安定性に優れる水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
銀粒子を含有するインクにより記録されるメタリック画像は、記録媒体上に、銀層が形成された層構成を有する。銀粒子により形成された銀層が金属光沢感を示すことで、光沢性を有するメタリック画像となる。インクジェット用のインクに使用する銀粒子は、吐出性の観点から、通常、数十〜数百nmの粒子径を有する。この程度の粒子径を有する銀粒子は表面プラズモン共鳴を生ずるため、無彩色の銀色とは異なる色調を発現する。但し、記録媒体において凝集した銀粒子は、表面プラズモン共鳴を生じにくいので、凝集して銀層が形成されると、無彩色の銀色を呈する。
メタリック画像の記録に利用される記録媒体には、一般に、塩化物イオン(Cl)などのハロゲン化物イオンが含まれる。例えば、普通紙などの、インク受容層を有しない記録媒体には、パルプの漂白剤に由来する塩化物イオンが含まれる。また、インク受容層を有する記録媒体には、カウンターイオンが塩化物イオンである樹脂などのカチオン性化合物が含まれる。これらのハロゲン化物イオンは、記録媒体における銀粒子の凝集に関与する。このような記録媒体に銀粒子を含有する水性インクが付与されると、インクを構成していた液体成分は記録媒体に浸透する。記録媒体に含まれるハロゲン化物イオンは、この液体成分に溶解し、ハロゲン化物イオンの一部は記録媒体の表面近傍にまで拡散する。ハロゲン化物イオンは銀と反応しやすいので、銀粒子の表面にはハロゲン化銀が生成し、ハロゲン化銀を介して複数の銀粒子が結着し、強固な銀層が形成される。つまり、ハロゲン化物イオンによって銀粒子の凝集が促進されることで、メタリック画像の耐擦過性が向上し得る。
しかし、記録媒体によっては、インクが付与されてから強固な銀層が形成されるまでに数時間程度要し、メタリック画像を記録してから数分程度の短い時間での耐擦過性が不十分であった。本発明者らの検討の結果、このような現象は、ハロゲン化物イオンが少ない記録媒体において生じやすいことがわかった。詳細には、インクが付与されてから記録媒体の表面近傍にまでハロゲン化物イオンが拡散するのに時間を要するため、銀粒子が速やかに凝集しないことが原因となって、インク付与から短い時間での耐擦過性が不十分となっていた。
本発明者らは、インクが付与されてから強固な銀層が形成されるまでの時間を短縮することで、記録媒体におけるハロゲン化物イオンの含有量にかかわらずに、メタリック画像を記録してすぐの耐擦過性を向上するために検討を行った。その結果、銀粒子を含有するインクに、(i)pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸、及び、(ii)pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸、の両方を添加すればよいという知見を得た。pKa(酸解離定数)は、酸の強さを定量的に表す指標であり、化合物に固有の定数である。pKaは、酸などの化合物から水素イオンが放出される解離反応についての平衡定数Kaの、負の常用対数(pKa=−log10Ka)であり、pKaが小さいほど強い酸であることを示す。
上述の通り、記録媒体にはハロゲン化物イオンが含まれる。また、普通紙などのインク受容層を有しない記録媒体には、炭酸カルシウムなどの填料のようなカチオン性化合物が含まれ、インク受容層を有する記録媒体には、カウンターイオンが塩化物イオンである樹脂などのカチオン性化合物が含まれる。これらのカチオン性化合物は弱塩基性を示し、その少なくとも一部はハロゲン化物イオンとイオン性相互作用した状態で記録媒体に含まれている。銀粒子及び第1有機モノカルボン酸を含有するインクが記録媒体に付与されると、弱酸である第1有機モノカルボン酸は、弱塩基性を示すカチオン性化合物と選択的に反応(弱酸・弱塩基の中和反応)を生じ、塩を形成する。すると、第1有機モノカルボン酸を用いない場合と比較して、強酸であるハロゲン化物イオンがより多く遊離し、記録媒体の表面近傍にまで拡散するハロゲン化物イオンが増える。結果として、ハロゲン化物イオンによる銀粒子の凝集が促進され、強固な銀層が速やかに形成されるため、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性が向上しやすくなる。
このような作用を生ずる有機モノカルボン酸のpKaの範囲について本発明者らが検討した結果、pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸を用いればよいことを見出した。pKaが4.60未満である有機モノカルボン酸を用いても、上記のような弱酸・弱塩基の中和反応が生じないので、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性を向上することができない。
上述の通り、第1有機モノカルボン酸を用いることで、ハロゲン化物イオンによる銀粒子の凝集が促進され、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性が向上しやすくなる。但し、本発明者らの検討の結果、このような作用が生じにくい場合があることがわかった。記録媒体には、その種類にかかわらず、カルシウムイオンなどの多価金属イオンが含まれる。第1有機モノカルボン酸を含有するインクを記録媒体に付与すると、多価金属イオンによって第1有機モノカルボン酸の一部が捕捉されて、ハロゲン化物イオンを遊離させやすくする作用が生じにくくなる場合があった。本発明者らは、このような現象を踏まえ、第1有機モノカルボン酸の作用を確実に発揮させるための検討を行った。その結果、第1有機モノカルボン酸に、pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸を併用すればよいことを見出した。
第2有機モノカルボン酸は、水溶性が高く、コンパクトな分子であり拡散しやすい。このため、第2有機モノカルボン酸は、第1有機カルボン酸と比較して優先的にカルシウムイオンに捕捉されるとともに、pKaが4.60未満であるため、第1有機モノカルボン酸による作用を損なうことなく発揮させることができる。つまり、第1有機モノカルボン酸及び第2有機モノカルボン酸を併用することで、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性を有効に向上することができる。
上述の通り、インクに添加する有機カルボン酸は、単一のカルボン酸基を有する「モノカルボン酸」であることを要する。有機モノカルボン酸に代えて有機多価カルボン酸を用いると、銀イオンに配位する作用が支配的となる。この場合、記録媒体に含まれるカチオン性化合物との選択的な反応を生じにくいため、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性を向上することができない。また、有機モノカルボン酸ではなく、有機スルホン酸を用いても、上記のような弱酸・弱塩基の中和反応が生じないので、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性を向上することができない。
第1有機モノカルボン酸を用いることで、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性が向上するだけでなく、インクの保存安定性が向上するという作用を得ることもできる。
インク中で、銀粒子を構成する銀原子は銀イオンと平衡状態にある。つまり、銀粒子と銀イオンとの間で電子の授受が行われている。銀原子から移動しようとする電子が、他の銀原子ではなく、インクに溶存する酸素ガスに移動することもあり、活性酸素が発生する。活性酸素は酸化力が強く、銀粒子の表面に存在する銀原子を部分的に酸化し得る。銀粒子の表面には酸化された部分と酸化されていない部分とが生ずると、銀粒子の表面における電荷の分布状態が不均一になって銀粒子が凝集し、インクの保存安定性が低下すると考えられる。分散剤によって分散された状態の銀粒子であっても、同様にして生じた活性酸素が銀原子だけでなく分散剤をも酸化することで、銀粒子が凝集し、インクの保存安定性が低下すると考えられる。活性酸素の発生は、色材が銀粒子であるインクに特有に生ずる現象であり、一般的な染料や顔料などの色材を含有するインクと比して、銀粒子を含有するインクの保存安定性は特に低下しやすい傾向にある。
銀粒子を含有するインクに第1有機モノカルボン酸を添加すると、銀イオンが生じても、第1有機モノカルボン酸のカルボン酸基がこれに配位することで、銀イオンに電子が供給される。すると、銀イオンは銀粒子から電子を受け取ることができなくなるので、銀粒子と銀イオンとの間での電子の授受が生ずる頻度が低減する。これにより、活性酸素が発生しにくくなり、結果として銀粒子の凝集が抑制されて、インクの保存安定性が向上したと考えられる。検討の結果、インクの保存安定性の向上は、第2有機モノカルボン酸よりも、第1有機モノカルボン酸による効果のほうが支配的であった。第2有機モノカルボン酸のpKaは第1有機モノカルボン酸よりも低いため、水性のインク中では第2有機モノカルボン酸のほうがイオンとしての存在状態がより安定である。そのため、第1有機モノカルボン酸に比べて、第2有機モノカルボン酸は銀イオンに配位しにくく、結果として、活性酸素の発生を抑制する作用が弱いからであると考えられる。
<水性インク>
本発明のインクは、銀粒子、(i)pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸、及び、(ii)pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸、を含有する水性インクである。この水性インクは、インクジェット用として好適に用いることができる。但し、本発明のインクは、活性エネルギー線硬化型である必要はないので、重合性基を有するモノマーなどを含有させる必要もない。以下、水性インクを構成する成分について説明する。
(銀粒子)
銀粒子は、銀原子で構成されている。銀粒子は、銀原子以外にも、他の金属原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子などを含んで構成されていてもよい。但し、銀粒子中の銀原子の割合(%)は、50.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましい。インク中の銀粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.00質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、2.00質量%以上8.00質量%以下であることがさらに好ましい。インクは、銀粒子以外の色材(「他の色材」と記載)をさらに含有してもよいし、含有しなくてもよい。他の色材の含有量(質量%)は、銀粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.00倍以上5.00倍以下であることが好ましく、0.00倍以上3.00倍以下であることがより好ましい。前記質量比率は、0.00倍以上0.10倍以下であることがさらに好ましい。
銀粒子の製造方法としては、例えば、銀の塊をボールミルやジェットミルなどの粉砕機で粉砕する方法(粉砕法)、銀イオン又は銀錯体を還元剤により還元して凝集させる方法(還元法)などが挙げられる。本発明においては、銀粒子の粒子径制御のしやすさ、及び銀粒子の分散安定性の観点から、還元法により製造された銀粒子を用いることが好ましい。
銀粒子は、界面活性剤や樹脂などの分散剤を用いて分散されたものを用いることが好ましく、分散剤としては樹脂がより好ましい。インク中の分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上5.00質量%以下であることが好ましい。
銀粒子の分散剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの各種の界面活性剤を用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系化合物、シリコーン系化合物などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミンオキサイド、ホスファチジルコリンなどが挙げられる。なかでも、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を分散剤として用いることが好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を用いることが好ましい。また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが好ましい。分散剤として界面活性剤を用いる場合、インク中の分散剤の含有量(質量%)は、銀粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上1.00倍以下であることが好ましい。
また、銀粒子の分散剤としては、アニオン性基を有するユニットとアニオン性基を有しないユニットとを持つ樹脂を用いることができる。樹脂の骨格としては、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂、アミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。分散剤として樹脂を用いる場合、インク中の分散剤の含有量(質量%)は、銀粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上1.00倍以下であることが好ましい。
銀粒子の体積基準の累積50%粒子径(d50)は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。体積基準の累積50%粒子径は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として小粒子径側から積算して50%となった粒子の直径を指す。累積50%粒子径が小さい場合、単位質量当たりの銀原子数に占める、銀粒子の表面に存在する銀原子の割合が多いことになる。銀粒子中で動きやすい銀原子の割合が多くなることで、ある銀粒子の表面に存在する銀原子が、その周囲の銀粒子の表面に存在する銀原子と金属結合を形成しやすいので、銀粒子が融着しやすくなる。したがって、d50が50nm以下であると、光沢性が向上する傾向にある。累積50%粒子径は、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。
銀粒子の体積基準の累積50%粒子径は、インクや銀粒子の分散液を水で希釈したものを試料として、以下のように測定することができる。シリコン基板に試料を塗布した後に、水を除去して試料を作製する。得られた試料を利用して、3,000個以上の銀粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察し、画像処理を行って、上述の定義の粒子径を算出する。後述する実施例では、銀粒子を観察した後、画像解析・計測ソフトウェア(商品名「WinROOF2015」、三谷商事製)を利用して、粒子径を算出した。なお、銀粒子の粒子径は、インクや分散液について、動的光散乱法により測定することもできる。但し、測定値が凝集などの影響を受けて変動しやすいので、動的光散乱法で測定する場合は、水で十分に希釈して測定することが好ましい。
(有機モノカルボン酸)
インクは、所定の有機モノカルボン酸を含有する。有機モノカルボン酸のカルボン酸基は酸型(H型)及び塩型のいずれであってもよい。塩型とする場合の塩を形成するカウンターイオンとしては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)のカチオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンなどが挙げられる。記録媒体に含まれるカチオン性化合物との相互作用を生じやすいため、カルボン酸基は、酸型又はアルカリ金属塩型が好ましく、酸型がさらに好ましい。
有機モノカルボン酸のpKaは、水中、25℃での値を利用し、滴定法、吸光光度法、キャピラリー電気泳動法などの公知の方法で測定することができる。また、汎用の化合物のpKaは各種の文献にも記載がある。本明細書では、pKaの値は、「『化学便覧 基礎編 改定3版』、丸善株式会社、1984年、II−338〜342頁」の記載を参照した。また、この文献に記載されていない化合物のpKaは、滴定法により、Henderson−Hasselbalchの式に基づいて測定した値を採用した。この式は、非解離状態の酸化合物をHA、解離状態の酸化合物をAとし、これらの濃度(活量)を[HA]及び[A]としたとき、pH=pKa+log10([A]/[HA])で表される。非解離状態の酸化合物の濃度と、解離状態の酸化合物の濃度とが等しい、すなわち、酸化合物の半分が解離しているとき、log10([A]/[HA])=log10(1)=0となり、pHはpKaと等しくなる。したがって、滴定法によりpHを随時測定しながら中和点を求め、中和点までに使用した塩基水溶液の当量の0.5当量(濃度を塩基の価数で除した値)を加えた際のpHを、pKaとすることができる。
〔第1有機モノカルボン酸〕
インクは、pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸を含有する。第1有機モノカルボン酸としては、脂肪族のモノカルボン酸、芳香族のモノカルボン酸が挙げられる。また、第1有機モノカルボン酸は、ヒドロキシ基、及び、カルボン酸基を構成するもの以外のオキソ基(=O)、をいずれも有しないものが好ましい。第1有機モノカルボン酸は、後述する第2有機モノカルボン酸及び必要に応じてインクに使用し得る第3有機モノカルボン酸のいずれとも異なるものである。
第1有機モノカルボン酸としては、pKaが4.60以上であればいずれのものを用いてもよい。例えば、カッコ内にpKaを示すと、例えば、プロピオン酸(4.67)、酪酸(4.63)、2−メチルプロピオン酸(4.63)、吉草酸(4.64)、2,2−ジメチルプロピオン酸(4.90)、カプロン酸(4.63)、エナント酸(4.66)などが挙げられる。第1有機モノカルボン酸のpKaは、5.00以下であることが好ましい。
記録媒体にインクが付与された後の分子運動が妨げられにくく、カチオン性化合物との反応が生じやすいため、剛直な結合を有しない構造である、脂肪族のモノカルボン酸が好ましい。また、水性インクに含有させるのに適した親水性を有し、インクの保存安定性に優れるため、第1有機モノカルボン酸の炭素数は5以下であることが好ましい。また、第1有機モノカルボン酸の炭素数は3以上であることが好ましい。この場合の炭素数は、カルボン酸基を構成する炭素原子を含み、例えば、プロピオン酸の炭素数は3である。
インク中の第1有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、10ppm以上であることが好ましい。10ppm未満であると、高いレベルの耐擦過性及び保存安定性が十分に得られない場合がある。前記含有量は、50ppm以上であることがさらに好ましい。また、インク中の第1有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、8,000ppm以下であることが好ましく、5,000ppm以下であることがさらに好ましい。
〔第2有機モノカルボン酸〕
インクは、pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸を含有する。この場合の炭素数は、カルボン酸基を構成する炭素原子を含む。第2有機モノカルボン酸は、第1有機モノカルボン酸及び必要に応じてインクに使用し得る第3有機モノカルボン酸のいずれとも異なるものである。第2有機モノカルボン酸は、ヒドロキシ基、及び、カルボン酸基を構成するもの以外のオキソ基(=O)、をいずれも有しないものが好ましい。第2有機モノカルボン酸としては、脂肪族のモノカルボン酸が挙げられ、カッコ内にpKaを示すと、例えば、ギ酸(3.55)、酢酸(4.56)が挙げられる。第2有機モノカルボン酸のpKaは、3.00以上であることが好ましい。
インク中の第2有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、10ppm以上8,000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上5,000ppm以下であることがさらに好ましい。また、インク中の第2有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、第1有機モノカルボン酸の含有量(ppm)に対する質量比率で、0.10倍以上5.00倍以下であることが好ましく、1.00倍以上5.00倍以下であることがさらに好ましい。
〔第3有機モノカルボン酸〕
インクは、(iii)炭素数6以下であるとともに、ヒドロキシ有機モノカルボン酸及びオキソ有機モノカルボン酸からなる群より選択される第3有機モノカルボン酸を含有することが好ましい。上述の通り、インク中で生じた銀イオンに第1有機モノカルボン酸が配位することで、銀粒子の凝集が抑制される。但し、この場合、第1有機モノカルボン酸のカルボン酸基以外の構造、すなわち有機基部分が水性媒体側に位置した状態となるため、有機基間の疎水性相互作用が生じやすくなり、インクの保存安定性をさらに改善する余地がある。ここに第3有機モノカルボン酸を添加すると、水性媒体側に有機基が配置された第1有機モノカルボン酸に第3有機モノカルボン酸が相互作用して、親水性が高まるため、高いレベルのインクの保存安定性が得られる。第3有機モノカルボン酸は、第1有機モノカルボン酸と類似の構造を有することによる良好な親和性を持つ。さらに、第3有機モノカルボン酸は、炭素数が少ないとともにヒドロキシ基やオキソ基による親水性の向上効果に加えて、第1有機モノカルボン酸のカチオン性化合物との反応を阻害しないために、上記の効果を得ることができる。
第3有機モノカルボン酸は、炭素数6以下であるとともに、ヒドロキシ有機モノカルボン酸及びオキソ有機モノカルボン酸からなる群より選択される。この場合の炭素数は、カルボン酸基を構成する炭素原子を含む。第3有機モノカルボン酸の炭素数は4以上であることが好ましい。第3有機モノカルボン酸は、第1有機モノカルボン酸及び第2有機モノカルボン酸のいずれとも異なるものである。第3有機モノカルボン酸としては、脂肪族のモノカルボン酸、芳香族のモノカルボン酸が挙げられる。
第3有機モノカルボン酸としては、炭素数が6以下であり、カルボン酸基のほかに、ヒドロキシ基、オキソ基を有するものであればいずれのものを用いてもよい。例えば、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、オキソ酪酸、オキソ吉草酸、オキソカプロン酸などが挙げられる。
カルボン酸基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子にヒドロキシ基やオキソ基が存在することが好ましい。この場合、これらの基を構成する酸素原子が、カルボン酸基を構成する2つの酸素原子とともに配位に関与することで、第1有機モノカルボン酸への相互作用を強めることができる。具体的には、2−ヒドロキシ有機モノカルボン酸、α−オキソ有機モノカルボン酸が好ましい。2−ヒドロキシ有機モノカルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸などが挙げられる。また、α−オキソ有機モノカルボン酸としては、例えば、α−オキソ酪酸、α−オキソ吉草酸、α−オキソカプロン酸などが挙げられる。
第3有機モノカルボン酸が2−ヒドロキシ有機モノカルボン酸又はα−オキソ有機モノカルボン酸である場合、第1有機モノカルボン酸の炭素数N及び第3有機モノカルボン酸の炭素数Nは、N+1=Nの関係を満たすことが好ましい。これらの第3有機モノカルボン酸は、カルボン酸基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に結合するヒドロキシ基又はオキソ基の酸素原子と、カルボン酸基の2つの酸素原子とで、第1有機モノカルボン酸に配位し得る。第1有機モノカルボン酸は、そのカルボン酸基によって銀イオンに配位する。N+1=Nの関係を満たす場合、第1有機モノカルボン酸の分子構造のなかで銀イオンへの配位に関与しない炭素数(=N−1)と、第3有機モノカルボン酸の分子構造のなかで銀イオンへの配位に関与しない炭素数(=N−2)とが、同じになる。つまり、上記の関係を満たす場合、第1有機モノカルボン酸及び第3有機モノカルボン酸の相互作用に関与する有機基の炭素数が揃うため、より強い相互作用が生じ、高いレベルのインクの保存安定性を得ることができる。
インク中の第3有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、10ppm以上8,000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上5,000ppm以下であることがさらに好ましい。また、インク中の第3有機モノカルボン酸の含有量(ppm)は、第1有機モノカルボン酸の含有量(ppm)に対する質量比率で、0.10倍以上10.00倍以下であることが好ましい。
(5価以上の糖アルコール)
インクは5価以上の糖アルコールを含有することが好ましい。糖アルコールのヒドロキシ基はマイナスに帯電しやすい。上述の通り、銀粒子と銀イオンとの間では電子の授受が行われており、銀粒子の表面はプラスに帯電しやすいため、マイナスに帯電している化合物と相互作用しやすい。インクには水が多く存在するため、銀粒子と糖アルコールが共存しても、互いに影響を及ぼすことなく安定に存在し得る。記録媒体にインクが付与されて水が減少すると、糖アルコールの溶解状態が不安定になり析出し始める。この過程で、プラスに帯電した銀粒子の表面に、マイナスに帯電した糖アルコールのヒドロキシ基が配向するため、水性媒体側に糖アルコールの炭化水素鎖部分が配置されたような状態を取る。すると、炭化水素鎖による疎水性相互作用が生じて、銀粒子の凝集が促進されるため、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性をさらに向上することができる。このような作用は、糖アルコールのヒドロキシ基が多いほどより有効に生じ、5価以上の糖アルコールを用いることが好ましい。
糖アルコールは、糖類(好ましくは鎖状の糖類)におけるアルデヒド基又はケトン基をそれぞれ還元して、第1アルコール基又は第2アルコール基としたものに相当する多価アルコールである。糖アルコールの価数は、ヒドロキシ基の数を意味し、通常は糖アルコールを構成する炭化水素鎖の炭素数と等しい。糖アルコールの価数は、5価以上であることが好ましく、また、10価以下であることが好ましく、8価以下であることがさらに好ましい。5価以上の糖アルコールとしては、キシリトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどが挙げられる。立体障害が少なく、銀粒子の表面に効率よく配向しやすいため、単糖の糖アルコールが好ましく、キシリトール、ソルビトールがさらに好ましい。
インク中の5価以上の糖アルコールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。また、インク中の、5価以上の糖アルコールの含有量(質量%)は、銀粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.50倍以上であることが好ましい。前記質量比率が0.50倍未満であると、メタリック画像を記録してからすぐの耐擦過性をさらに向上する効果が十分に得られない場合がある。また、インクが固着しやすくなって、固着回復性が低下する場合があるため、前記質量比率は、5.00倍以下であることが好ましい。
(アルカンジオール)
インクはアルカンジオールを含有することが好ましい。なかでも、α,β−アルカンジオール及びα,ω−アルカンジオールがさらに好ましい。α,β−アルカンジオールは、飽和の炭化水素鎖(アルカン)における末端の炭素原子及びこれに隣接する炭素原子のそれぞれにヒドロキシ基が1つずつ置換した構造を持つ化合物である。また、α,ω−アルカンジオールは、飽和の炭化水素鎖(アルカン)における両方の末端の炭素原子のそれぞれにヒドロキシ基が1つずつ置換した構造を持つ化合物である。
α,β−アルカンジオールは、第1有機モノカルボン酸や、必要に応じて使用し得る第3有機モノカルボン酸と類似した分子構造を有し、これらの化合物との親和性に優れる。このため、α,β−アルカンジオールを用いると、これらの化合物の作用を損なうことなく、その溶解状態を特に安定に維持することができる。
α,β−アルカンジオールの炭化水素鎖の部分は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよいが、第1有機モノカルボン酸や第3有機モノカルボン酸と効率よく相互作用し得るため、直鎖であることが好ましい。α,β−アルカンジオールの炭素数は、3乃至8であることが好ましく、4乃至6であることがさらに好ましい。α,β−アルカンジオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。なかでも、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。インク中のα,β−アルカンジオールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。
α,ω−アルカンジオールは、2つのヒドロキシ基に挟まれた炭化水素鎖を有し、必要に応じて使用し得る5価以上の糖アルコールとの親和性に優れる。このため、α,ω−アルカンジオールを用いると、5価以上の糖アルコールの作用を損なうことなく、その溶解状態を特に安定に維持することができる。
α,ω−アルカンジオールの炭化水素鎖の部分は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよいが、5価以上の糖アルコールと効率よく相互作用し得るため、直鎖であることが好ましい。α,ω−アルカンジオールの炭素数は、3乃至8であることが好ましく、4乃至6であることがさらに好ましい。α,ω−アルカンジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。なかでも、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。インク中のα,ω−アルカンジオールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.00質量%以下であることが好ましい。
(界面活性剤)
インクは、銀粒子の分散剤として用い得る界面活性剤とは別に、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。インク中の、銀粒子の分散剤として用いる界面活性剤以外の、界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。なかでも、ノニオン性界面活性剤が好ましく、エチレンオキサイド基を有するものが好ましい。特に、アセチレングリコール骨格にエチレンオキサイド基が付加した構造を有するノニオン性界面活性剤が好ましい。エチレンオキサイド構造は金属イオンに配位しやすいため、このようなノニオン性界面活性剤をインクに配合することで、インク中で生じた銀イオンが安定化されて、保存安定性の低下を有効に抑制することができる。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、上記したもの以外のアルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性溶剤類、含硫黄極性溶剤類などをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲を外れると、吐出安定性などの信頼性がやや低下する場合がある。
(その他の成分)
インクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
インクの25℃における粘度は、1mPa・s以上6mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上4mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの25℃における表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上50mN/m以下であることがさらに好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像(メタリック画像)を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像(メタリック画像)が記録される。
本発明のインクを用いて記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよいが、普通紙や、インク受容層を有する記録媒体(光沢紙やアート紙)などの、浸透性を有するような、紙ベースの記録媒体を用いることが好ましい。なかでも、記録される画像のメタリック感に優れるため、光沢紙などのインク受容層を有する記録媒体を用いることが好ましい。インクジェット記録方法で用いられる光沢紙などの記録媒体は、通常、塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンを含有するインク受容層を具備する。ハロゲン化物イオンは、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ塩化アルミニウムなどに代表されるカチオン性化合物に由来する。
以下、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<有機酸のpKa>
有機酸のpKaは、「『化学便覧 基礎編 改定3版』、丸善株式会社、1984年、II−338〜342頁」の記載を参照したが、記載のないものは以下の方法で測定した。測定対象の化合物の0.1mol/L水溶液を調製し、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液[容量分析用滴定液](関東化学製)を用いて、滴定法によりpKaを測定した。中和滴定には、自動滴定装置(商品名「888Titrando」、Metrohm製)を用いた。
<体積基準の累積50%粒子径>
銀粒子及び樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は以下の手順で測定した。先ず、イオン交換水で約2,000倍(質量基準)に希釈した分散液を、シリコン材料で形成された基板に塗布して、水を乾燥により除去して試料を準備した。次いで、得られた試料を利用して、3,000個以上の銀粒子について、走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析・計測ソフトウェア(商品名「WinROOF2015」、三谷商事製)を利用して画像処理を行って算出した。
<銀粒子の分散液の調製>
(銀粒子の分散液1)
特表2010−507727号公報の実施例2の記載を参考にして、銀粒子の含有量が10.0%であり、樹脂分散剤(商品名「Disperbyk 190」)の固形分の含有量が3.0%である、銀粒子の分散液1を調製した。銀粒子の体積基準の累積50%粒子径は42nmであった。
(銀粒子の分散液2)
特開2012−121279号公報の実施例の記載を参考にして、銀粒子の含有量が10.0%であり、樹脂分散剤(ポリビニルピロリドン)の含有量が3.0%である、銀粒子の分散液2を調製した。銀粒子の体積基準の累積50%粒子径は38nmであった。
(銀粒子の分散液3)
特開2014−033176号公報のインク1の記載を参考にして、銀粒子の含有量が10.0%である、銀粒子の分散液3を調製した。銀粒子の体積基準の累積50%粒子径は22nmであった。 (銀粒子の分散液4)
特許文献3の「銀粒子分散液1の調製」の記載を参考にして、樹脂分散剤(商品名「Disperbyk 190」)及び保護コロイド(コール酸、pKa=4.98)を含有する、銀粒子の分散液4を調製した。銀粒子の体積基準の累積50%粒子径は15nmであった。調製した銀粒子の分散液4の組成を以下に示す。
・銀粒子:15.0%
・樹脂分散剤(固形分):1.0%
・ジメチルアミノエタノール:35.4%
・コール酸:0.6%
・イオン交換水(硝酸イオンを含む):48.0%。
(顔料分散液)
C.I.ピグメントブルー15:3を24.0部、樹脂分散剤の水溶液48.0部、及びイオン交換水28.0部を混合して混合物を得た。樹脂分散剤の水溶液としては、スチレン−アクリル酸共重合体(商品名「ジョンクリル680」、BASF製)を、酸価の0.85倍(モル比)の水酸化カリウムで中和し、適量のイオン交換水を加えて得た、水溶性樹脂の含有量が20.0%である水溶液を用いた。得られた混合物、及び0.3mm径のジルコニアビーズ85部を、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れて、水冷しながら3時間分散させた。その後、遠心分離して粗大粒子を除去した。ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が20.0%、樹脂の含有量が8.0%である顔料分散液を調製した。
<樹脂粒子の合成>
特許文献3の「樹脂粒子を含む樹脂分散液の調製例1」の記載を参考にして、ポリエステル系ウレタン樹脂で形成される樹脂粒子を合成し、樹脂粒子の含有量が30.0%である、樹脂粒子の水分散液を調製した。樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は20nmであった。
<インクの調製>
表1〜3の上段に示す各成分(単位は成分ごとに記載)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ0.8μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、インクを得た。第1有機モノカルボン酸及び第2有機モノカルボン酸、並びにその対照例として用いた有機モノカルボン酸には、カッコ内にpKaを示した。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名であり、アセチレングリコール骨格にエチレンオキサイド基が付加した構造を有する。イオン交換水の使用量は、成分の合計が100.0%となる残量とした。表1〜3の下段にはインク中の各有機モノカルボン酸の含有量を示した。
Figure 2021105160
Figure 2021105160
Figure 2021105160
<評価>
上記で調製した各インクを用いて、下記の評価を行った。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、AA、A、及びBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
(保存安定性)
上記で得られたインクについて、銀粒子の体積基準の累積50%粒子径(D)を測定した。その後、容量180mLのポリテトラフルオロエチレン製の密閉容器にインク100gを入れ、密閉して、温度60℃のオーブンに入れて1ヶ月間保存した。その後、インクを取り出して25℃に戻した後、銀粒子の体積基準の累積50%粒子径(D)を測定した。粒子径の変化率=D/D(倍)を求め、以下に示す評価基準にしたがって保存安定性を評価した。
AA:粒子径の変化率が1.2倍未満であった
A:粒子径の変化率が1.2倍以上2.0倍未満であった
B:粒子径の変化率が2.0倍以上4.0倍未満であった
C:粒子径の変化率が4.0倍以上であった。
(耐擦過性)
上記で調製した各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO 10−S」、キヤノン製)にセットした。本実施例では、1/600インチ×1/600インチの単位領域(1画素)に、約3.8ngのインク滴を8滴付与する条件で記録したベタ画像(メタリック画像)を、記録デューティが100%であると定義する。インク受容層を具備する記録媒体(光沢紙、商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]PT−201」、キヤノン製)に、2cm×2cmの記録デューティが100%であるベタ画像を2枚記録した。この記録媒体のインク受容層は、塩化物イオンを含有する。記録の5分後及び1時間後に各ベタ画像の上にシルボン紙を乗せ、さらにその上に3.5cm×3.5cmの分銅を乗せて、40g/cmの圧力をかけながら、20cm/秒の速度でシルボン紙を引っ張って、ベタ画像とシルボン紙とをこすり合わせた。その後、ベタ画像から非記録部に移ったインクの汚れの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性を評価した。なお、銀粒子を含有しないインクを用いた参考例1及び2については、耐擦過性の評価を行わなかった。
A:5分後の評価でインクの汚れが生じていなかった
B:1時間後の評価ではインクの汚れが生じていなかったが、5分後の評価ではインクの汚れが生じていた
C:1時間後の評価でインクの汚れが生じていた。
Figure 2021105160

Claims (9)

  1. 銀粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    (i)pKaが4.60以上である第1有機モノカルボン酸、及び、(ii)pKaが4.60未満であるとともに、炭素数が2以下である第2有機モノカルボン酸、を含有することを特徴とする水性インク。
  2. 前記第1有機モノカルボン酸の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、10ppm以上である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記第1有機モノカルボン酸の炭素数が、5以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. さらに、(iii)炭素数6以下であるとともに、ヒドロキシ有機モノカルボン酸及びオキソ有機モノカルボン酸からなる群より選択される、前記第1有機モノカルボン酸及び前記第2有機モノカルボン酸のいずれとも異なる、第3有機モノカルボン酸を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. さらに、5価以上の糖アルコールを含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. さらに、エチレンオキサイド基を有する界面活性剤を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
  7. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 前記記録媒体が、ハロゲン化物イオンを含有するインク受容層を具備する請求項8に記載のインクジェット記録方法。
JP2020204754A 2019-12-26 2020-12-10 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Active JP7570909B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US17/129,466 US20210198508A1 (en) 2019-12-26 2020-12-21 Aqueous ink, ink cartridge and ink jet recording method

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019237559 2019-12-26
JP2019237558 2019-12-26
JP2019237559 2019-12-26
JP2019237558 2019-12-26

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2021105160A true JP2021105160A (ja) 2021-07-26
JP2021105160A5 JP2021105160A5 (ja) 2023-11-30
JP7570909B2 JP7570909B2 (ja) 2024-10-22

Family

ID=

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6029304B2 (ja) インクと反応液とのセット、及び画像形成方法
JP2013209620A (ja) インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP2016138253A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
WO2013088549A1 (ja) インクジェット記録方法
JP2012077188A (ja) インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置
KR102071760B1 (ko) 수성 잉크, 잉크 카트리지 및 잉크젯 기록 방법
US20210198508A1 (en) Aqueous ink, ink cartridge and ink jet recording method
JP2021105160A (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP7570909B2 (ja) 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法
JP2019084682A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US10781329B2 (en) Aqueous ink, ink cartridge and ink jet recording method
JP2006070189A (ja) インクジェット記録用水性インクセット
JP2011074198A (ja) インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置の金属部材の腐食防止方法
JP2010229235A (ja) インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置
JP7375386B2 (ja) インクジェット用インク
JP6044836B2 (ja) インクジェット記録用水性インク、インクカートリッジ、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
KR20170077798A (ko) 잉크, 잉크 카트리지 및 잉크젯 기록 방법
JP7071149B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2011178944A (ja) インクジェット用インク
JP2019051629A (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP2019084684A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2012224740A (ja) インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ
JP6787264B2 (ja) インクジェット記録用水性インク
JP2012223975A (ja) インクと反応液とのセット及び該セットを用いる画像形成方法
KR20170077796A (ko) 잉크, 잉크 카트리지 및 잉크젯 기록 방법

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231120

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231120

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20231213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240830

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240910

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20241009