JP2021104982A - ナフトピジル一塩酸塩二水和物およびナフトピジル調製のためのその使用 - Google Patents

ナフトピジル一塩酸塩二水和物およびナフトピジル調製のためのその使用 Download PDF

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裕介 吉田
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Abstract

【課題】ナフトピジル(Naftopidil、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル)の調製に有用な中間体およびそれを用いたナフトピジルの調製方法の提供。【解決手段】ナフトピジル一塩酸塩二水和物をフリー化することでナフトピジルを高収率かつ高純度で得ることができる。特に、再結晶等の精製操作を複数回繰り返すことなく、純度99.99%を実現できる。【選択図】図1

Description

本発明は、ナフトピジル(Naftopidil、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル)の調製に有用な中間体およびそれを用いたナフトピジルの調製方法に関する。
ナフトピジルは、前立腺肥大症に伴う排尿障害の改善剤として知られている。ナフトピジルはフリー体として投与されることから、そのフリー体を効率よく、また高い純度で得ることができるその調製方法が求められている。
特開昭50−121286号公報(特許文献1)は、ナフトピジルの調製方法を開示し、その実施例において、収率29%〜79%でナフトピジルを得たとしている。特に、その実施例3では、ナフトピジル塩酸塩無水物を経てナフトピジルを得ているが、その収率は49%とされ、また純度の記載はない。
特開2013−23467号公報(特許文献2)は、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジンと、2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシランとを反応させて粗ナフトピジルを得、これをトルエンと水、さらにトルエンとメタノールの混合溶媒から精製ナフトピジルを得る方法を開示している。この方法において、粗ナフトピジルの収率は80%には至らず、トルエンと水、さらにトルエンとメタノールを用いた2回の精製操作後の純度は、最も高いもので99.62%であったとされている。なお、この方法では、粗ナフトピジルは塩酸塩化されていない。
インド特許出願466/CHE/2011(特許文献3)は、粗ナフトピジルの酢酸エチルによる再結晶を経、収率79%、純度99.90%でナフトピジルを得、さらにメタノールにて再結晶させ、純度99.99%のナフトピジルを得る方法を開示している。この方法にあっても粗ナフトピジルは塩酸塩化されていない。
インド特許出願2071/DEL/2012(特許文献4)は、金属ナノ粒子を用いたグリーンケミカルなナフトピジルの製法を開示している。ここでは、ナフトピジルはシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率63%でナフトピジルを得ているが、純度の開示は無い。
以上の従来技術に加えて、医薬としてのナフトピジルを高収率かつ高純度で得ることができる技術への希求が依然として存在する。
特開昭50−121286号公報 特開2013−23467号公報 インド特許出願466/CHE/2011 インド特許出願2071/DEL/2012
本発明者らは、今般、ナフトピジル一塩酸塩二水和物をフリー化することでナフトピジルを高収率かつ高純度で得ることができるとの知見を得た。特に、ナフトピジル一塩酸塩二水和物を経由することで、再結晶等の精製操作を複数回繰り返すことなく、純度99.99%を実現できるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、ナフトピジルを高収率かつ高純度で得ることができるナフトピジル調製のための中間体、およびそれを用いたナフトピジルの調製方法の提供を目的としている。
そして、本発明によるナフトピジル調製のための中間体は、ナフトピジル一塩酸塩二水和物である。
また、本発明によるナフトピジルの調製方法は、ナフトピジル一塩酸塩二水和物をフリー化反応に付す工程を含んでなる方法である。
ナフトピジル一塩酸塩二水和物の粉末X線回折(Cu−Kα)のチャートである。 ナフトピジルの粉末X線回折(Cu−Kα)のチャートである。 ナフトピジル一塩酸塩二水和物の示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)のチャートである。 ナフトピジルの示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)のチャートである。
ナフトピジル一塩酸塩二水和物
本明細書において、ナフトピジルとは、下記構造式で表される化合物であり、その鏡像異性体も含む意味に用いる。
Figure 2021104982
そして、本発明によるナフトピジル一塩酸塩二水和物は、上記ナフトピジルの塩酸塩であり、かつ水分子がナフトピジル一塩酸塩一分子に二つの水分子が付加したものである。本発明によるナフトピジル一塩酸塩二水和物は、好ましくは、以下の特性により特徴付けられる。
・粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.7±0.2度、9.4±0.2度、14.2±0.2度、19.0±0.2度、22.3±0.2度、および24.0±0.2度にピークを有し、および/または
・示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが80±5℃、および187±3℃にある。
ナフトピジル一塩酸塩二水和物のフリー化
本発明によるナフトピジル一塩酸塩二水和物は、これをフリー化することで、ナフトピジルを容易かつ高純度で得ることができるとの、極めて有利な性質を有する。具体的には、後述するフリー化反応により純度99.98〜99.99%のナフトピジルを得ることができる。本発明の好ましい態様によれば、再結晶等の精製操作を複数回繰り返すことなく前記純度を実現でき、このことはナフトピジル一塩酸塩二水和物を用いることで得られる大きな利点である。
本発明の一つの態様によれば、ナフトピジル一塩酸塩二水和物のフリー化反応は、ナフトピジル一塩酸塩二水和物に溶媒を加え、さらに塩基を加えて、ナフトピジルを結晶化させることにより行われる。
上記フリー化反応において用いられる溶媒は、好ましくは、酢酸エチルのようなエステル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコ−ル系溶媒、t−ブチルメチルエーテルのようなエ−テル系溶媒、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素系溶媒、クロロホルムのようなハロゲン系溶媒、水およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに好ましい態様によれば、溶媒として、トルエン、メタノ−ル、水、またはそれらの混合物が挙げられる。
上記フリー化反応において用いられる前記塩基としては、無機塩基またはアミン類が挙げられ、具体的には、無機塩基類として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムなどが挙げられ、またアミン類としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、アンモニア、ジアザビシクロウンデセン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、およびこれら塩基類の組み合わせが挙げられる。さらに好ましい態様によれば、塩基として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが挙げられる。塩基の添加量は、化学量論的に必要とされる量に対し、0.1〜3.0当量程度過剰とすることが好ましい。
フリー化反応条件は、用いられる塩基および溶媒の組み合わせを勘案して適宜決定されてよいが、例えば、50〜65℃の温度で、0.5〜2時間実施すればよい。
ナフトピジル一塩酸塩二水和物の製造
本発明によるナフトピジル一塩酸塩二水和物は、好ましくは下記のスキームに従い調製される。
Figure 2021104982
すなわち、2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシランと、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジンにトルエンなどの溶媒を加えて反応させ、その後に塩酸を添加・存在させることで得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、上記スキームの反応により得られたナフトピジル一塩酸塩二水和物を経てナフトピジルを得ることで、全体として約83%以上の高収率を実現することができる。上述のナフトピジル一塩酸塩二水和物を経ることで99.98〜99.99%の高純度のナフトピジルを得ることができることと併せることで、極めて有利にナフトピジルを製造することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例における反応、および化合物に付記した番号は、下記のスキームに示されるとおりである。
Figure 2021104982
実施例1
1−ナフト−ル[1]100gをクロロメチルオキシラン[2]に溶解し、ナトリウムメトキシドメタノ−ル溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、有機層を濃縮し、2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]を取得した(収率89%)。
実施例2
2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]5.0gのトルエン溶液に1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン[4]のトルエン溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、塩酸を加えて冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]を取得した(収率95%)。
実施例3
2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]5.0gのトルエン溶液に1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン[4]のトルエン溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、メタノ−ル、塩酸を加えて分液後、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]を取得した(収率81%)。
実施例4
2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]5.0gのトルエン溶液に1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン[4]のトルエン溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、メタノ−ル、塩酸を加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]を取得した(収率86%)。
実施例5
2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]100gのトルエン溶液に、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン[4]のトルエン溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、メタノ−ル、塩酸を加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]を取得した(収率92%)。
実施例6
(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]7.0gにトルエン、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。有機層を水洗し濃縮後、メタノ−ル、アセトニトリルを加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]を取得した(収率82%、化学純度99.98%)。
実施例7
(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]12.0gにトルエン、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。有機層を水洗し濃縮後、メタノ−ルを加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]を取得した(収率90%、化学純度99.99%)。
実施例8
(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル一塩酸塩二水和物[5]116gにトルエン、メタノ−ル、水酸化カリウム水溶液を加えた。有機層を水洗し濃縮後、2−プロパノ−ルを加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]を取得した(収率90%、化学純度99.98%)。
比較例1
2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン[3]10.0gのトルエン溶液に1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン[4]のトルエン溶液を滴下した。反応終了後、水洗し、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]の粗結晶を取得した(収率89%)。
比較例2
比較例1で取得した(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]の粗結晶6.0gにメタノ−ル、アセトニトリルを加え、冷却した。懸濁液をろ別後、乾燥し、(2RS)−1−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)プロパン−2−オ−ル[6]を取得した(収率85%、化学純度99.96%)。
ナフトピジル一塩酸塩二水和物の同定
(1)水分およびHCl量
カ−ルフィッシャ−法により測定した水分値は7.3%〜7.5%であった。また、中和滴定により測定したHCl量は8.0%〜8.1%であった。これらより定まるナフトピジル:HCl:HOの質量比からこれらのモル比を算出すると、ほぼ1:1:2であった。これにより、ナフトピジル一塩酸塩二水和物が得られたと判断できた。
(2)粉末X線回折
ナフトピジル一塩酸塩二水和物の粉末X線回折(Cu−Kα)の結果のチャートは、図1に示されるとおりであった。参照として、ナフトピジルのチャートを図2として示す。
(3)示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)
ナフトピジル一塩酸塩二水和物の示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)の結果のチャートは、図3に示されるとおりであった。ここで、測定条件は、加熱速度は5℃/分とした。参照として、ナフトピジルのチャートを図4として示す。


Claims (11)

  1. ナフトピジル一塩酸塩二水和物。
  2. 粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=4.7±0.2度、9.4±0.2度、14.2±0.2度、19.0±0.2度、22.3±0.2度、および24.0±0.2度にピークを有し、および/または
    示差熱分析/熱重量測定(TG/DTA)において、吸熱ピークが80±5℃、および187±3℃にある、請求項1に記載のナフトピジル一塩酸塩二水和物。
  3. 請求項1または2に記載のナフトピジル一塩酸塩二水和物である、ナフトピジルの調製のための中間体。
  4. ナフトピジルの調製のための中間体としての、請求項1または2に記載のナフトピジル一塩酸塩二水和物の使用。
  5. ナフトピジル一塩酸塩二水和物をフリー化反応に付す工程を含んでなる、ナフトピジルの調製方法。
  6. 前記フリー化反応に付す工程が、ナフトピジル一塩酸塩二水和物に溶媒を加え、さらに塩基を加えて、ナフトピジルを結晶化させることにより行われる、請求項5に記載の調製方法。
  7. 前記溶媒が、エステル系溶媒、アルコ−ル系溶媒、エ−テル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、水およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項6に記載の調製方法。
  8. 前記塩基が、無機塩基またはアミン類である、請求項6または7に記載の調製方法。
  9. 前記溶媒が、トルエン、メタノ−ル、水、またはそれらの混合物である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の調製方法。
  10. 前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである、請求項6〜9のいずれか一項に記載の調製方法。
  11. 2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシランと、1−(2−メトキシフェニル)ピペラジンとを反応させ、その後塩酸を添加・存在させることを特徴とする、ナフトピジル一塩酸塩二水和物の調製方法。

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