本発明は、揚力発生手段を備える無人飛行体に関する。
従来、トンネルあるいは橋の調査及び点検においては、地中レーダシステムを用い、コンクリート厚、空洞、鉄筋状況を調査している。このような調査の際には、高所作業車を用いたり、仮設の足場を用いたりして、人力での計測、あるいは専用治具の設置による計測を実施している。
地中レーダシステムは、アンテナとコントローラとが個々に製作されており、これらアンテナとコントローラとをケーブルで接続して電力及びデータを送受信している。計測の際には、アンテナを操作する人員、コントローラを操作する計測員、車両の運転員、及び計測サポートの作業補助員を含む、最低四名の人員を要する。
そのため、近年、計測装置をドローンなどの無人飛行体に搭載することで、無人飛行体の操作員がそのまま計測員となることにより、人員を削減する方法が用いられる。すなわち、情報取得部を無人飛行体の本体部に設け、この無人飛行体を被調査部などの構造部に沿って移動させることで、構造部の情報を情報取得部により取得する。その際、構造部に対する無人飛行体の姿勢を安定させるために、構造部に接触する機構を本体部の上部に突設している(例えば、特許文献1ないし3参照。)。
特開2015−223995号公報
特開2018−118525号公報
特開2019−26244号公報
しかしながら、上記の特許文献1ないし3に記載された構成の場合、無人飛行体を移動させる際、前後に位置する回転翼の回転数を変えることによって前後方向への推進力を生じさせている。
そのため、特許文献1及び2に記載された構成の場合、前後方向に移動する際に、本体部が前傾することとなり、本体部に搭載された計測装置を構造部と平行な姿勢に維持することが困難となる。その結果、計測装置による情報取得の精度が低下する。
また、特許文献3に記載された構成の場合、前後方向に移動する際に、本体部を前傾させないようにするために、回転翼を支持する支持体を本体部に対して回動可能に接続するなど、本体部や計測装置の姿勢を維持するための構造が複雑になる。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素な構成で、上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部に沿って移動させることができる無人飛行体を提供することを目的とする。
請求項1記載の無人飛行体は、本体部と、この本体部に対し揚力を付与可能な揚力発生手段と、前記本体部の上部に位置し、前記揚力発生手段による揚力をグリップとして上方の構造部に対して走行可能な走行手段と、を備えるものである。
請求項2記載の無人飛行体は、請求項1記載の無人飛行体において、本体部に対し走行手段の走行方向に沿って推進力を付与可能な補助移動手段を備えるものである。
請求項3記載の無人飛行体は、請求項2記載の無人飛行体において、補助移動手段は、走行手段の走行方向と交差する方向に対をなして配置されているものである。
請求項4記載の無人飛行体は、請求項1ないし3いずれか一記載の無人飛行体において、走行手段は、走行方向と交差する方向に対をなして配置されているものである。
請求項5記載の無人飛行体は、請求項1ないし4いずれか一記載の無人飛行体において、少なくとも本体部の上側の情報を取得する情報取得部を備えるものである。
請求項1記載の無人飛行体によれば、本体部の上部に位置する走行手段が、揚力発生手段による揚力をグリップとして上方の構造部に対して走行することにより、簡素な構成で、上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部に沿って移動させることができる。
請求項2記載の無人飛行体によれば、請求項1記載の無人飛行体の効果に加えて、補助移動手段によって走行手段の走行を補助する推進力を付与できるので、上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、走行手段による走行を補助移動手段によって補助できる。
請求項3記載の無人飛行体によれば、請求項2記載の無人飛行体の効果に加えて、一方の補助移動手段と他方の補助移動手段との駆動力を変えることにより、上方の構造部に対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
請求項4記載の無人飛行体によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の無人飛行体の効果に加えて、一方の走行手段と他方の走行手段との駆動力を変えることにより、上方の構造部に対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
請求項5記載の無人飛行体によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の無人飛行体の効果に加えて、情報取得部を上方の構造部に正対させた状態を維持しながら構造部に沿って移動できるので、構造部の情報を情報取得部によって精度よく取得できる。
本発明の一実施の形態の無人飛行体を示す側面図である。
同上無人飛行体の背面図である。
同上無人飛行体を含む調査システムの説明図である。
同上無人飛行体の構造部に対して一方の走行手段が接触し他方の走行手段が接触していない状態を示す正面図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1及び図2において、10は無人飛行体を示す。無人飛行体10は、ドローン、あるいはUAV(Unmanned Aerial Vehicle)などと呼ばれるものである。無人飛行体10は、本体部12を備えている。本体部12には、本体部12に対して揚力を付与する揚力発生手段13が設けられている。また、揚力発生手段13は、無人飛行体10に作用する重力と釣り合う揚力を付与することにより、無人飛行体10を浮遊(ホバリング)させる機能を有する。揚力発生手段13は、一例として上下方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(水平回転翼)であり、回転によって本体部12に対して揚力を付与する。揚力発生手段13は、複数設けられている。揚力発生手段13は、好ましくは本体部12の周囲に均等または略均等に配置されている。
本実施の形態において、揚力発生手段13は、本体部12に形成された腕部14に取り付けられている。腕部14は、本体部12から水平方向に沿って延びている。
また、本実施の形態において、本体部12は、情報取得部16を有する。情報取得部16は、少なくとも本体部12の上側の情報を取得する。情報取得部16は、本体部12の上部に位置している。本実施の形態において、情報取得部16は、四角形箱状、または、直方体状に形成されている。情報取得部16は、検出部16aを上端に有する。検出部16aは、平面状に形成されている。また、検出部16aは、水平方向に沿って配置されている。本実施の形態において、情報取得部16は、本体部12の上方に突出して位置している。これに限らず、情報取得部16は、本体部12に収容されていてもよい。本実施の形態において、情報取得部16は、検出部16aの位置から検査対象物に向けて電磁波を反射するとともに、その反射波を検出部16aの位置で検出することで、トンネルや橋梁などの人工構造物である調査対象物の天井面などのコンクリート内部、すなわち構造部S(被調査部)内の空隙G(図3)の有無や厚みなどを調査するための、既知の地中レーダアンテナ装置とするが、これに限らず、各種のセンサやカメラでもよい。また、情報取得部16には、取得した情報を記憶する記憶部を備えていてもよい。記憶部としては、例えばUSBメモリなど、着脱可能なものが好適に用いられる。
さらに、本体部12には、この本体部12または無人飛行体10を走行可能とする走行手段18が設けられている。走行手段18は、一例として、水平方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される駆動輪であり、回転により無人飛行体10を上方の構造部Sに沿って走行可能とする。以下、説明を明確にするために、走行手段18による無人飛行体10の走行方向を前後方向、走行手段18の回転軸に沿う方向、つまり上下方向及び前後方向と直交する方向を左右方向と称する。
走行手段18は、本体部12の上部に位置する。本実施の形態において、走行手段18は、本体部12の情報取得部16の上部に位置する。また、走行手段18は、この走行手段18の走行方向に対して交差する方向(駆動輪の回転軸に沿う方向)に対をなして配置されている。つまり、走行手段18は、本体部12の左右に対をなして位置する。さらに、本実施の形態において、走行手段18は、前後方向に複数配置される。図示される例では、走行手段18は、本体部12にて情報取得部16の前部の左右と後部の左右とにそれぞれ位置する。なお、走行手段18は、オムニホイールやメカナムホイールなどの駆動輪を用いてもよいし、無限軌道などの駆動輪も含むものとする。
また、本体部12には、走行手段18の走行方向に沿って推進力を付与して走行手段18による走行を補助する補助移動手段20が設けられている。補助移動手段20は、一例として前後方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(垂直回転翼)であり、回転によって本体部12に対して前後方向の推進力を付与する。補助移動手段20は、複数設けられている。補助移動手段20は、走行手段18の走行方向と交差する方向に対をなして配置されている。すなわち、補助移動手段20は、左右に配置されている。
本実施の形態において、補助移動手段20は、本体部12に形成された脚部21に取り付けられている。脚部21は、無人飛行体10の着地時に地面に対して設置する部分である。脚部21は、本体部12から下方へと延びている。本実施の形態において、脚部21は、左右に対をなして配置されている。また、脚部21は、本体部12の前後方向に複数配置される。図示される例では、脚部21は、本体部12にて前部の左右と後部の左右とにそれぞれ位置する。そして、脚部21,21間に橋架されて左右方向に沿って配置された梁部材23に補助移動手段20が取り付けられている。そのため、本実施の形態では、補助移動手段20の回転軸が揚力発生手段13の回転軸よりも下方に位置する。
また、本体部12には、制御部25が配置されている。制御部25は、揚力発生手段13、走行手段18、及び、補助移動手段20の動作を制御する。例えば、制御部25は、図3に示す操作員POにより、所定のコントローラCを介して入力された操作信号に応じて、揚力発生手段13、走行手段18、及び、補助移動手段20の動作を制御する。すなわち、無人飛行体10は、操作員POにより遠隔操作される。コントローラCは、制御部25と無線通信可能とすることが好ましいが、これに限らず、制御部25と有線通信するように構成されていてもよい。なお、操作員POは、トンネルの内部などの暗所を調査する場合、通常、作業補助員PAとともに調査を実施する。作業補助員PAは、例えば無人飛行体10及び構造部Sを照明することで操作員POによる無人飛行体10の操作を補助する。その他に、制御部25は、情報取得部16の動作を制御してもよいし、情報取得部16により取得された情報を記憶したり、解析したりする機能を備えていてもよい。
さらに、図1に示す本体部12には、電源部が配置されている。電源部は、揚力発生手段13、走行手段18、補助移動手段20、及び、制御部25の動力源となる。また、電源部は、情報取得部16の電源となっていてもよい。電源部は、充電可能な二次電池としてもよいし、交換可能な一次電池としてもよいし、有線によって外部電源から電力を取るものでもよい。
そして、無人飛行体10は、空中を移動する際には、制御部25により制御された揚力発生手段13、及び/または、補助移動手段20により生じる推進力を利用し、前後、左右、上下に移動可能となっている。
一方、本実施の形態において、無人飛行体10は、例えば上方の構造部Sを調査する際などの場合、図1及び図2に示すように、揚力発生手段13による上方向に向かう揚力によって走行手段18を構造部Sに押圧し、その押圧力をグリップとして走行手段18によって構造部Sに沿って走行する。そして、情報取得部16によって構造部Sの情報を取得する場合、無人飛行体10は、例えば時速4km程度の所定の速度で構造部Sに沿って移動しつつ、情報取得部16によって構造部Sの情報を取得する。つまり、本実施の形態の場合、構造部Sに沿って移動する際には、前後や左右の揚力発生手段13の揚力差、例えば回転翼の回転速度差により生じる前後方向や左右方向の推進力を用いず、上方向の揚力のみを用い、前後方向や左右方向の推進力は基本的に走行手段18によって生じさせる。
このため、例えば回転翼の回転速度差によって無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させる従来の場合のように、本体部12を構造部Sに対し前後に傾斜させることなく、簡素な構成で、上方の構造部Sに対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部Sに沿って移動させることができる。
したがって、本体部12の上側の情報を取得する情報取得部16を備える場合、情報取得部16を構造部Sに正対させた状態を維持しながら構造部Sに沿って移動できるので、構造部Sの情報を情報取得部16によって精度よく取得できる。すなわち、無人飛行体10に搭載した情報取得部16によって、構造部Sを調査できるため、従来の計測方法と比較して、計測車両、高所作業者、仮設足場などの準備が不要になり、作業員の削減、時間短縮、及びコスト削減が可能になる。
走行手段18は、無人飛行体10が飛行している間、常時駆動させていてもよいが、電源部が電池の場合には、電池の不必要な消耗を抑制するために、必要なときにのみ駆動させるようにしてもよい。例えば、走行手段18は、操作員POがコントローラCを介して操作信号を制御部25に送信することで操作員POの操作に応じて駆動されてもよいし、操作員POがコントローラCに対し所定の操作をしたこと、あるいは、走行手段18が構造部Sに接触したことなどの所定の条件をトリガとして、自動的に駆動されるようにしてもよい。このようにすることで、操作員POは、基本的に走行手段18を構造部Sに押圧する、つまり揚力発生手段13により上方向に向かう揚力を生じさせるためのコントローラCの単純な操作を維持するのみで、構造部Sに沿って無人飛行体10を移動させることができる。
また、例えば図4に示すように、トンネルの天井面など、構造部Sによっては、その形状が湾曲していることで、左右の走行手段18のうちの一方のみが構造部Sに接触し、他方が構造部Sに接触しない場合がある。この場合、走行手段18のみでは構造部Sに沿って適切な方向に無人飛行体10を走行させることが困難となることが想定される。そこで、本実施の形態では、補助移動手段20によって走行手段18の走行を補助する推進力を付与することで、構造部Sに対して安定した姿勢に維持しつつ、走行手段18による走行を補助移動手段20によって補助できる。例えば、走行手段18の一方のみが構造部Sに接触する場合、走行手段18は揚力発生手段13による揚力によって構造部Sに押圧するのみで走行を停止し、補助移動手段20により生じる推進力によって無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させてもよいし、一方の走行手段18により生じる推進力と、補助移動手段20により生じる推進力とを用いて無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させてもよい。
さらに、補助移動手段20を、走行手段18の走行方向と交差する方向に対をなして配置することで、一方の補助移動手段20と他方の補助移動手段20との駆動力を変えることにより、構造部Sに対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
そして、走行手段18を、その走行方向と交差する方向に対をなして配置することで、一方の走行手段18と他方の走行手段18との駆動力を変えることにより、構造部Sに対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
10 無人飛行体
12 本体部
13 揚力発生手段
16 情報取得部
18 走行手段
20 補助移動手段
本発明は、揚力発生手段を備える無人飛行体に関する。
従来、トンネルあるいは橋の調査及び点検においては、地中レーダシステムを用い、コンクリート厚、空洞、鉄筋状況を調査している。このような調査の際には、高所作業車を用いたり、仮設の足場を用いたりして、人力での計測、あるいは専用治具の設置による計測を実施している。
地中レーダシステムは、アンテナとコントローラとが個々に製作されており、これらアンテナとコントローラとをケーブルで接続して電力及びデータを送受信している。計測の際には、アンテナを操作する人員、コントローラを操作する計測員、車両の運転員、及び計測サポートの作業補助員を含む、最低四名の人員を要する。
そのため、近年、計測装置をドローンなどの無人飛行体に搭載することで、無人飛行体の操作員がそのまま計測員となることにより、人員を削減する方法が用いられる。すなわち、情報取得部を無人飛行体の本体部に設け、この無人飛行体を被調査部などの構造部に沿って移動させることで、構造部の情報を情報取得部により取得する。その際、構造部に対する無人飛行体の姿勢を安定させるために、構造部に接触する機構を本体部の上部に突設している(例えば、特許文献1ないし3参照。)。
特開2015−223995号公報
特開2018−118525号公報
特開2019−26244号公報
しかしながら、上記の特許文献1ないし3に記載された構成の場合、無人飛行体を移動させる際、前後に位置する回転翼の回転数を変えることによって前後方向への推進力を生じさせている。
そのため、特許文献1及び2に記載された構成の場合、前後方向に移動する際に、本体部が前傾することとなり、本体部に搭載された計測装置を構造部と平行な姿勢に維持することが困難となる。その結果、計測装置による情報取得の精度が低下する。
また、特許文献3に記載された構成の場合、前後方向に移動する際に、本体部を前傾させないようにするために、回転翼を支持する支持体を本体部に対して回動可能に接続するなど、本体部や計測装置の姿勢を維持するための構造が複雑になる。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡素な構成で、上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部に沿って移動させることができる無人飛行体を提供することを目的とする。
請求項1記載の無人飛行体は、本体部と、この本体部に対し揚力を付与可能な揚力発生手段と、少なくとも本体部の上方の情報を取得するレーダアンテナ装置である情報取得部と、前記本体部の上部にて前記情報取得部に取り付けられ、前記揚力発生手段による揚力をグリップとして駆動されることで上方の構造部に対して走行可能な走行手段と、を備えるものである。
請求項2記載の無人飛行体は、請求項1記載の無人飛行体において、本体部に対し走行手段の走行方向に沿って推進力を付与可能な補助移動手段を備えるものである。
請求項3記載の無人飛行体は、請求項2記載の無人飛行体において、補助移動手段は、走行手段の走行方向と交差する方向に対をなして配置されているものである。
請求項4記載の無人飛行体は、請求項1ないし3いずれか一記載の無人飛行体において、走行手段は、走行方向と交差する方向に対をなして配置されているものである。
請求項1記載の無人飛行体によれば、本体部の上部にてレーダアンテナ装置である情報取得部に取り付けられた走行手段が、揚力発生手段による揚力をグリップとして駆動されて上方の構造部に対して走行することにより、簡素な構成で、情報取得部を上方の構造部に正対させた状態を維持しながら上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部に沿って移動させることができ、上方の構造部の情報を情報取得部によって精度よく取得できる。
請求項2記載の無人飛行体によれば、請求項1記載の無人飛行体の効果に加えて、補助移動手段によって走行手段の走行を補助する推進力を付与できるので、上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、走行手段による走行を補助移動手段によって補助できる。
請求項3記載の無人飛行体によれば、請求項2記載の無人飛行体の効果に加えて、一方の補助移動手段と他方の補助移動手段との駆動力を変えることにより、上方の構造部に対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
請求項4記載の無人飛行体によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の無人飛行体の効果に加えて、一方の走行手段と他方の走行手段との駆動力を変えることにより、上方の構造部に対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
本発明の一実施の形態の無人飛行体を示す側面図である。
同上無人飛行体の背面図である。
同上無人飛行体を含む調査システムの説明図である。
同上無人飛行体の構造部に対して一方の走行手段が接触し他方の走行手段が接触していない状態を示す正面図である。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1及び図2において、10は無人飛行体を示す。無人飛行体10は、ドローン、あるいはUAV(Unmanned Aerial Vehicle)などと呼ばれるものである。無人飛行体10は、本体部12を備えている。本体部12には、本体部12に対して揚力を付与する揚力発生手段13が設けられている。また、揚力発生手段13は、無人飛行体10に作用する重力と釣り合う揚力を付与することにより、無人飛行体10を浮遊(ホバリング)させる機能を有する。揚力発生手段13は、一例として上下方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(水平回転翼)であり、回転によって本体部12に対して揚力を付与する。揚力発生手段13は、複数設けられている。揚力発生手段13は、好ましくは本体部12の周囲に均等または略均等に配置されている。
本実施の形態において、揚力発生手段13は、本体部12に形成された腕部14に取り付けられている。腕部14は、本体部12から水平方向に沿って延びている。
また、本実施の形態において、本体部12は、情報取得部16を有する。情報取得部16は、少なくとも本体部12の上側の情報を取得する。情報取得部16は、本体部12の上部に位置している。本実施の形態において、情報取得部16は、四角形箱状、または、直方体状に形成されている。情報取得部16は、検出部16aを上端に有する。検出部16aは、平面状に形成されている。また、検出部16aは、水平方向に沿って配置されている。本実施の形態において、情報取得部16は、本体部12の上方に突出して位置している。これに限らず、情報取得部16は、本体部12に収容されていてもよい。本実施の形態において、情報取得部16は、検出部16aの位置から検査対象物に向けて電磁波を反射するとともに、その反射波を検出部16aの位置で検出することで、トンネルや橋梁などの人工構造物である調査対象物の天井面などのコンクリート内部、すなわち構造部S(被調査部)内の空隙G(図3)の有無や厚みなどを調査するための、既知の地中レーダアンテナ装置とする。また、情報取得部16には、取得した情報を記憶する記憶部を備えていてもよい。記憶部としては、例えばUSBメモリなど、着脱可能なものが好適に用いられる。
さらに、本体部12には、この本体部12または無人飛行体10を走行可能とする走行手段18が設けられている。走行手段18は、一例として、水平方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される駆動輪であり、回転により無人飛行体10を上方の構造部Sに沿って走行可能とする。以下、説明を明確にするために、走行手段18による無人飛行体10の走行方向を前後方向、走行手段18の回転軸に沿う方向、つまり上下方向及び前後方向と直交する方向を左右方向と称する。
走行手段18は、本体部12の上部に位置する。本実施の形態において、走行手段18は、本体部12の情報取得部16の上部に位置する。また、走行手段18は、この走行手段18の走行方向に対して交差する方向(駆動輪の回転軸に沿う方向)に対をなして配置されている。つまり、走行手段18は、本体部12の左右に対をなして位置する。さらに、本実施の形態において、走行手段18は、前後方向に複数配置される。図示される例では、走行手段18は、本体部12にて情報取得部16の前部の左右と後部の左右とにそれぞれ位置する。なお、走行手段18は、オムニホイールやメカナムホイールなどの駆動輪を用いてもよいし、無限軌道などの駆動輪も含むものとする。
また、本体部12には、走行手段18の走行方向に沿って推進力を付与して走行手段18による走行を補助する補助移動手段20が設けられている。補助移動手段20は、一例として前後方向に沿って回転軸を有してモータにより回転駆動される回転翼(垂直回転翼)であり、回転によって本体部12に対して前後方向の推進力を付与する。補助移動手段20は、複数設けられている。補助移動手段20は、走行手段18の走行方向と交差する方向に対をなして配置されている。すなわち、補助移動手段20は、左右に配置されている。
本実施の形態において、補助移動手段20は、本体部12に形成された脚部21に取り付けられている。脚部21は、無人飛行体10の着地時に地面に対して設置する部分である。脚部21は、本体部12から下方へと延びている。本実施の形態において、脚部21は、左右に対をなして配置されている。また、脚部21は、本体部12の前後方向に複数配置される。図示される例では、脚部21は、本体部12にて前部の左右と後部の左右とにそれぞれ位置する。そして、脚部21,21間に橋架されて左右方向に沿って配置された梁部材23に補助移動手段20が取り付けられている。そのため、本実施の形態では、補助移動手段20の回転軸が揚力発生手段13の回転軸よりも下方に位置する。
また、本体部12には、制御部25が配置されている。制御部25は、揚力発生手段13、走行手段18、及び、補助移動手段20の動作を制御する。例えば、制御部25は、図3に示す操作員POにより、所定のコントローラCを介して入力された操作信号に応じて、揚力発生手段13、走行手段18、及び、補助移動手段20の動作を制御する。すなわち、無人飛行体10は、操作員POにより遠隔操作される。コントローラCは、制御部25と無線通信可能とすることが好ましいが、これに限らず、制御部25と有線通信するように構成されていてもよい。なお、操作員POは、トンネルの内部などの暗所を調査する場合、通常、作業補助員PAとともに調査を実施する。作業補助員PAは、例えば無人飛行体10及び構造部Sを照明することで操作員POによる無人飛行体10の操作を補助する。その他に、制御部25は、情報取得部16の動作を制御してもよいし、情報取得部16により取得された情報を記憶したり、解析したりする機能を備えていてもよい。
さらに、図1に示す本体部12には、電源部が配置されている。電源部は、揚力発生手段13、走行手段18、補助移動手段20、及び、制御部25の動力源となる。また、電源部は、情報取得部16の電源となっていてもよい。電源部は、充電可能な二次電池としてもよいし、交換可能な一次電池としてもよいし、有線によって外部電源から電力を取るものでもよい。
そして、無人飛行体10は、空中を移動する際には、制御部25により制御された揚力発生手段13、及び/または、補助移動手段20により生じる推進力を利用し、前後、左右、上下に移動可能となっている。
一方、本実施の形態において、無人飛行体10は、例えば上方の構造部Sを調査する際などの場合、図1及び図2に示すように、揚力発生手段13による上方向に向かう揚力によって走行手段18を構造部Sに押圧し、その押圧力をグリップとして走行手段18によって構造部Sに沿って走行する。そして、情報取得部16によって構造部Sの情報を取得する場合、無人飛行体10は、例えば時速4km程度の所定の速度で構造部Sに沿って移動しつつ、情報取得部16によって構造部Sの情報を取得する。つまり、本実施の形態の場合、構造部Sに沿って移動する際には、前後や左右の揚力発生手段13の揚力差、例えば回転翼の回転速度差により生じる前後方向や左右方向の推進力を用いず、上方向の揚力のみを用い、前後方向や左右方向の推進力は基本的に走行手段18によって生じさせる。
このため、例えば回転翼の回転速度差によって無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させる従来の場合のように、本体部12を構造部Sに対し前後に傾斜させることなく、簡素な構成で、上方の構造部Sに対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部Sに沿って移動させることができる。
したがって、本体部12の上側の情報を取得する情報取得部16を備える場合、情報取得部16を構造部Sに正対させた状態を維持しながら構造部Sに沿って移動できるので、構造部Sの情報を情報取得部16によって精度よく取得できる。すなわち、無人飛行体10に搭載した情報取得部16によって、構造部Sを調査できるため、従来の計測方法と比較して、計測車両、高所作業者、仮設足場などの準備が不要になり、作業員の削減、時間短縮、及びコスト削減が可能になる。
走行手段18は、無人飛行体10が飛行している間、常時駆動させていてもよいが、電源部が電池の場合には、電池の不必要な消耗を抑制するために、必要なときにのみ駆動させるようにしてもよい。例えば、走行手段18は、操作員POがコントローラCを介して操作信号を制御部25に送信することで操作員POの操作に応じて駆動されてもよいし、操作員POがコントローラCに対し所定の操作をしたこと、あるいは、走行手段18が構造部Sに接触したことなどの所定の条件をトリガとして、自動的に駆動されるようにしてもよい。このようにすることで、操作員POは、基本的に走行手段18を構造部Sに押圧する、つまり揚力発生手段13により上方向に向かう揚力を生じさせるためのコントローラCの単純な操作を維持するのみで、構造部Sに沿って無人飛行体10を移動させることができる。
また、例えば図4に示すように、トンネルの天井面など、構造部Sによっては、その形状が湾曲していることで、左右の走行手段18のうちの一方のみが構造部Sに接触し、他方が構造部Sに接触しない場合がある。この場合、走行手段18のみでは構造部Sに沿って適切な方向に無人飛行体10を走行させることが困難となることが想定される。そこで、本実施の形態では、補助移動手段20によって走行手段18の走行を補助する推進力を付与することで、構造部Sに対して安定した姿勢に維持しつつ、走行手段18による走行を補助移動手段20によって補助できる。例えば、走行手段18の一方のみが構造部Sに接触する場合、走行手段18は揚力発生手段13による揚力によって構造部Sに押圧するのみで走行を停止し、補助移動手段20により生じる推進力によって無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させてもよいし、一方の走行手段18により生じる推進力と、補助移動手段20により生じる推進力とを用いて無人飛行体10を構造部Sに沿って移動させてもよい。
さらに、補助移動手段20を、走行手段18の走行方向と交差する方向に対をなして配置することで、一方の補助移動手段20と他方の補助移動手段20との駆動力を変えることにより、構造部Sに対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
そして、走行手段18を、その走行方向と交差する方向に対をなして配置することで、一方の走行手段18と他方の走行手段18との駆動力を変えることにより、構造部Sに対する姿勢を変えることなく、走行方向を容易に変えることができる。
10 無人飛行体
12 本体部
13 揚力発生手段
16 情報取得部
18 走行手段
20 補助移動手段
請求項1記載の無人飛行体は、本体部と、この本体部に対し揚力を付与可能な揚力発生手段と、前記本体部の上部に配置され、上端に検出部を有し、この検出部から上方へと出力される電磁波により少なくとも前記本体部の上方の情報を取得するレーダアンテナ装置である情報取得部と、前記本体部の上部にて前記検出部を囲んで前記情報取得部に取り付けられ、前記揚力発生手段による揚力をグリップとして駆動されることで上方の構造部に対して走行可能な走行手段と、を備えるものである。
請求項1記載の無人飛行体によれば、本体部の中心部の上部にてレーダアンテナ装置である情報取得部に検出部を囲んで取り付けられた走行手段が、揚力発生手段による揚力をグリップとして駆動されて上方の構造部に対して走行することにより、簡素な構成で、情報取得部の上端の検出部を上方の構造部に正対させた状態を維持しながら上方の構造部に対して安定した姿勢に維持しつつ、上方の構造部に沿って移動させることができ、上方の構造部の情報を検出部から上方へと電磁波を出力することで情報取得部によって精度よく取得できる。
10 無人飛行体
12 本体部
13 揚力発生手段
16 情報取得部
16a 検出部
18 走行手段
20 補助移動手段