JP2021104608A - 表面処理層を有する無機繊維成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 加熱線収縮率を低く抑えることで最高使用温度を高めることが可能な無機繊維成形体を提供する。【解決手段】 好ましくはシリカ・カルシア系、シリカ・マグネシア系、又はシリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分とする母材の表面部に表面処理層が形成された無機繊維成形体であって、前記表面処理層が前記無機繊維と同じ種類の無機繊維を結晶化することで得た結晶化無機粉末と無機バインダーとから構成され、前記結晶化無機粉末はクリストバライトの結晶化度が70%以上であって且つメジアン径が95μm未満であり、前記表面処理層の厚みが0.1〜2.0mmである。【選択図】 なし
Description
本発明は、耐火断熱用途に使用される無機繊維成形体に関し、特に表面処理層を有することで最高使用温度が高められた無機繊維成形体に関する。
加熱炉や焼却炉等の熱処理設備に内張りされる耐火断熱材には、従来使われていたシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)から構成されるリフラクトリーセラミックファイバーに替えて、近年は作業環境への配慮から、吸引等で人体に摂取されても体内の水分によって分解・排出される特性を有する無機繊維である生体溶解性繊維(Bio Soluble Fiber)が採用される傾向にある。この生体溶解性繊維は、生体内での持続性が低い特徴を有しているので、低生体内持続性繊維(Low Bio−Persistent Fiber)と称されることもある。
上記の生体溶解性繊維を成形することで得られる無機繊維成形体は、無数の無機繊維が3次元的に複雑に絡み合った形態を有しているため、これにより形成される無機繊維成形体は、内部の無数の空隙によって高い断熱効果が得られ、また、該無機繊維を介した伝導伝熱も抑制される。しかしながら、上記の生体溶解性繊維は、従来のリフラクトリーセラミックファイバーと同じ非晶質ではあるものの、Al2O3はほとんど含まれておらず、SiO2やCaOやMgOを多く含んでいるため、900℃程度の比較的低温にて結晶化が生じる。その結果、繊維自体が収縮し、これに伴って上記空隙も縮小するので無機繊維成形体が全体的に収縮する。すなわち、生体溶解性繊維を用いた無機繊維成形体は、結晶化が比較的低温で生じるという問題を抱えている。
この無機繊維成形体は湿式成形法で製造することができ、その際、原材料に無機繊維に加えて無機バインダーとしてコロイダルシリカが一般的に用いられる。このコロイダルシリカに含まれるシリカ分やアルカリ分により加熱収縮がより一層生じやすく、無機繊維成形体の加熱線収縮率は更に大きくなる。他方、無機繊維成形体は、発塵防止や耐風速性向上のため、コロイダルシリカを含浸させて硬化処理する場合がある。このようにコロイダルシリカで表面を硬化処理した無機繊維成形体は、該表面に存在するシリカ分やアルカリ分の影響で加熱線収縮率が大きくなりやすかった。
上記のように、コロイダルシリカを用いる場合は加熱線収縮が大きくなるので、これが問題にならない程度まで従来は無機繊維成形体の使用温度を下げる必要があり、熱処理設備の温度条件が過度に制約されることがあった。従って、最高使用温度を高めることで使用温度を過度に下げることなく使用可能な低発塵性や耐風速性を有する無機繊維成形体が求められていた。上記のように最高使用温度を高めることができれば、コロイダルシリカ等の添加で使用温度が多少下がっても、母材の最高使用温度と同等に扱うことができる。なお最高使用温度T℃とは、雰囲気温度T℃で24時間加熱したときの加熱線収縮率が3.0%以下の場合と定義することができ、この定義から、加熱線収縮率を小さくすることで最高使用温度を高め得ることが分かる。
例えば特許文献1には、表面処理ではないが加熱線収縮率を小さくする技術が提案されている。具体的には、加熱により体積膨張する反応性無機粉体を無機繊維成形体の原材料に用いる技術が開示されている。また、特許文献2には、最高使用温度を高めるため、無機繊維質の断熱母材の表面にその1m2当たり固形分換算で合計50〜300gのアルミナゾル及びシリカゾルを別々に塗布又は含浸してから乾燥する処理を行った後、全体的に焼成する技術が提案されている。この特許文献2の技術では、上記塗布又は含浸させるアルミナゾル及びシリカゾルを、ムライト組成になるようにアルミナ/シリカの質量比で65/35より多く80/20以下の範囲内となるように配合している。
また、特許文献3には、表面処理ではないが表面コート剤に関する技術が開示されており、具体的には無機繊維、無機粒子、無機バインダー、及び有機バインダーを少なくとも含む組成物からなるセラミックコート材が開示されている。この無機繊維は、多結晶無機繊維であって、ムライト、αアルミナ、γアルミナ、δアルミナ、及びθアルミナのうちの1種類又は複数種類の結晶を有している。また、アルミナ含有率が70質量%以上であり、かつアルミナの結晶化度が20%以下であるのが好ましいことや、加熱線収縮率1質量%以下であるのが好ましいことが記載されている。
上記の特許文献1に開示されているように、加熱により体積膨張する反応性無機粉末の添加量を増やすことで加熱線収縮率を低くする効果が得られるものの、該反応性無機粉体の添加量の増加の影響で無機繊維成形体の熱伝導率が大きくなる傾向があり、断熱性が低下することが懸念される。また、特許文献2の無機繊維質の断熱母材は、実施例に示されているように主にリフラクトリーセラミックファイバーが想定されており、生体溶解性繊維を母材にすることは開示されていない。そのため、SiO2を多く含有し、CaOやMgOも含有するがアルミナの含有量が少ない生体溶解性繊維からなる母材に対して、特許文献2に示す配合割合でアルミナゾル及びシリカゾルを塗布又は含浸させた場合は、該アルミナゾルのアルミナ分が他成分系に変化しやすくなり、その結果、融点が低くなって最高使用温度が低下するおそれがある。
また、特許文献3では、実施例に示されているように、被コート材には多結晶質アルミナ繊維からなるボードが用いられており、生体溶解性繊維を被コート材に用いることは開示されていない。そのため、特許文献3の表面コート剤を生体溶解性繊維からなる被コート材に被覆した場合は、これら表面コート剤と被コート材との熱収縮差によりコート層が剥離するおそれがある。また、生体溶解性繊維はアルミナがほとんど含まれていないため、ムライト繊維やアルミナ繊維を添加すると多成分系化し、その結果、融点が低下するので最高使用温度が低下するおそれがある。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、加熱線収縮率を低く抑えることで最高使用温度を高めることが可能な無機繊維成形体を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明に係る無機繊維成形体は、生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分とする母材の表面部に表面処理層が形成された無機繊維成形体であって、前記表面処理層が前記無機繊維と同じ種類の無機繊維を結晶化することで得た結晶化無機粉末と無機バインダーとから構成され、前記結晶化無機粉末は結晶化度が70%以上であって且つメジアン径が95μm未満であり、前記表面処理層の厚みが0.1〜2.0mmであることを特徴とする。
本発明によれば、加熱線収縮率を低く抑えることで最高使用温度を高めた無機繊維成形体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係る無機繊維成形体について説明する。この本発明の実施形態の無機繊維成形体は、その母材が非晶質の生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分としている。この無機繊維は、シリカ・カルシア系、シリカ・マグネシア系、又はシリカ・マグネシア・カルシア系の繊維であるのが好ましく、例えばシリカ・カルシア系繊維ではイソライト工業株式会社製のイソウールBSSR1200(商品名)を挙げることができ、シリカ・マグネシア系繊維ではユニフラックス社製のイソフラックス1400(商品名)を挙げることができ、シリカ・マグネシア・カルシア系繊維ではイソライト工業株式会社製のイソウールBSSR1300(商品名)を挙げることができる。
上記母材の主成分である無機繊維同士は、無機バインダー若しくは有機バインダー又はそれら両方のバインダーを用いて互いに結合されているのが好ましい。この無機バインダーの種類には特に限定はないが、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ジルコニアゾル、チタニアゾル、ベントナイトを好適に用いることができる。また、有機バインダーの種類も特に限定はないが、アクリル樹脂、澱粉を好適に用いることができる。
上記母材の主成分である無機繊維は3次元的に複雑に絡み合った形態を有しており、母材内部に無数の空隙が形成されている。そのため、該母材は空隙率が約80容量%以上になっている。前述したように該無機繊維は非晶質であるため、加熱されると結晶化して体積が収縮する。この無機繊維の収縮に伴って該空隙のサイズが縮小するので、無機繊維成形体が全体的に収縮する。
そこで、本発明の実施形態の無機繊維成形体は、上記母材の主成分である生体溶解性繊維と同じ種類の無機繊維を結晶化して粉砕した結晶化無機粉末と、無機バインダーとからなる表面処理材で母材の表面部が表面処理されており、これにより該表面部の空隙が該結晶化無機粉末及び無機バインダーで埋められている。この空隙を埋める結晶化無機粉末は、既に結晶化しているので体積収縮がほとんどないことから、無機繊維成形体が全体的に収縮するのを抑えることができる。なお、上記の表面処理剤は、上記結晶化無機粉末及び無機バインダー以外に、無機粒子及び有機バインダーを含む組成物が添加されてもよい。
より具体的に説明すると、上記表面処理剤を構成する結晶化無機粉末は、該母材の主成分である無機繊維と同じ種類の生体溶解性繊維をクリストバライトの結晶化度70%以上となるように結晶化した後、メジアン径(D50)95μm未満となるように粉砕したものである。このように、母材を構成する無機繊維と同種の無機繊維を結晶化したものを用いて母材の表面部の空隙を埋めることによって、該表面部の熱膨張率を母材の熱膨張率に近づけることができる。これにより、該表面部が剥離したり母材に亀裂が発生したりするのを抑制することができる。
なお、結晶化度とは、X線回折法により得られるX線回折パターンにおいて、結晶質部分のピーク面積と非晶質部分の面積との合計に対する該結晶質部分のピーク面積を百分率(%)で表したものである。例えば、上記無機繊維を1100℃以上で焼成したときに生じるクリストバライトは、X線回析パターンのピークが2θ=26.3°に現れる。また、上記結晶化無機粉末が上記母材の主成分である無機繊維と同じ種類であるか否かは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて上記母材及び表面処理層から生体溶解性繊維及び結晶化無機粉末をそれぞれ取り出し、これら取り出した生体溶解性繊維及び結晶化無機粉末の各々に対してエネルギー分散型X線分析法(EDS又はEDX)により定量分析を行うことで判断することができる。上記の粉砕方法には特に限定はなく、プレス機等で圧縮して粉砕してもよいし、乳鉢、電動乳鉢装置(らいかい機)、ミキサー等で粉砕してもよいが、高速振動試料粉砕機(株式会社シー・エム・ティー製)で粉砕した粉砕品を用いることがより好ましい。
前述したように、母材の主成分である無機繊維は内部に無数の空隙が形成されており、それらに対して水銀圧入式ポロシメーターで測定した細孔径は、一般的には80〜100μm程度である。このため、該結晶化無機粉末はメジアン径(D50)を95μm未満に、好ましくは90μm以下に、より好ましくは50μm以下にする。なお、メジアン径(D50)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。この結晶化無機粉末のメジアン径は、例えば上記の粉砕機の粉砕時間を変えたり、その後段の分級装置の分級条件を変えたりすることで調整することができる。
上記表面処理剤を構成する無機バインダーは、上記無機繊維成形体が高温領域にさらされた時に表面処理層の接着強度を維持する役割を担っており、コロイダルシリカ若しくはジルコニアゾル又はそれらの少なくとも一方を含む混合物であるのが好ましい。これらコロイダルシリカやジルコニアゾルは、添加したときに多成分化しにくく、よって低融点化しない材料であるので好ましい。上記のコロイダルシリカには、例えば日産化学株式会社製のスノーテックス30(商品名)を使用するのが好ましく、上記のジルコニアゾルには例えば日産化学株式会社製のジルコニアゾル(商品名)等を使用するのが好ましい。
上記の表面処理剤に必要に応じて添加される無機粒子は、アルミナ含有率が少ない材質が好ましく、例えばコーディエライト、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの耐熱性を有する無機粒子を挙げることができる。この無機粒子はメジアン径(D50)が1〜100μmの範囲内にあるのが好ましい。無機粒子のメジアン径がこの範囲内であれば、該無機粒子を表面処理剤中により均一に分散させることができる。この無機粒子のメジアン径が1μm未満では、上記母材の空隙サイズに比べて小さすぎるので、該空隙を十分に充填するのが困難になる。逆にこの無機粒子のメジアン径が100μmを超えると、上記母材の空隙サイズに比べて大きいものの割合が多くなるので、充填されない空隙が多く残るので加熱収縮が生じやすくなる。
上記の表面処理剤に必要に応じて添加される有機バインダーは、該表面処理剤を構成する上記結晶化無機粉末や必要に応じて添加される上記無機粒子と相互に絡み合うことで、無機バインダーの乾燥に伴って該無機バインダーが移動する現象(マイグレーション)が発生するのを抑制する役割を担う。好適な有機バインダーの例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコールを挙げることができ、これらの中では、作業性が向上するうえ、常温領域で優れた接着性を示すのでカルボキシメチルセルロースが特に好ましい、
上記の複数の成分から構成される表面処理剤の配合割合は、上記結晶化無機粉末100質量部に対して、固形分換算で無機バインダーでは10質量部程度を限度として、有機バインダーでは10質量部程度を限度としてそれぞれ含まれているのが好ましい。更に結晶化無機粉末100質量部に対して無機粒子が1〜10質量部程度含まれていてもよい。
上記表面処理剤を、後述するように母材の表面部に含浸させて乾燥することで、該母材の表面部に表面処理層が形成される。その際、表面処理剤に水等の液体を添加してスラリー状にするのが好ましい。このスラリー状の表面処理剤の母材への含浸量や固形分濃度は、該母材のかさ密度によって適時調整するのが好ましい。また、母材の表面部に形成する表面処理層の厚みは0.1〜2.0mmであるのが好ましい。この厚みが0.1mm未満では、薄すぎて表面処理層の加熱線収縮率が母材と実質的に変わらなくなるので、該表面処理層を形成する効果がほとんど得られない。逆にこの厚みが2.0mmを超えると、無機繊維成形体を昇温したり降温したりする際に変形が生じるおそれがあるうえ、該表面処理層が形成されている無機繊維成形体の表面部の伝導伝熱が大きくなりすぎて断熱性能が低下するおそれがある。
上記の本発明の実施形態の表面処理層を有する無機繊維成形体は、表面処理層のない無機繊維成形体に比べて最高使用温度を少なくとも50℃以上高くすることができる。なお、最高使用温度は、JIS R3311に準拠した加熱線収縮率に基づいて求めることができる。更に、上記の本発明の実施形態の表面処理層を有する無機繊維成形体は、該表面処理層が母材から剥離しにくいので、長期間に亘って無機繊維成形体の断熱性能を維持することができる。具体的には、工業炉の内張りとして半年間使用した後の定期修理において、自然空冷後に目視にて検査したとき、該表面処理層の剥離がほとんど認められないようにすることができる。
次に、上記の表面処理層を有する無機繊維成形体の製造方法について説明する。先ず、生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分とする母材を好適には湿式成形法により作製する。この湿式成形法では、当該無機繊維、バインダー、及び水を所定の配合割合で混合して母材用スラリーを調製し、これを吸引ろ過することで所望の形状に成形する。得られた成形体を乾燥処理し、更に必要に応じて焼成処理することで母材が作製される。上記の母材用スラリーは固形分濃度3〜20質量%に調製するのが好ましい。
次に、表面処理剤を構成する結晶化無機粉末を作製するため、上記母材に用いた無機繊維と同じ種類の無機繊維を雰囲気温度1100℃以上、好ましくは1200〜1300℃の炉内に装入して好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上かけて焼成し、クリストバライトの結晶化度70%以上の焼成体を生成する。得られた焼成体を粉砕機等を用いて好ましくはメジアン径95μm未満まで粉砕する。得られた結晶化無機粉末100質量部に無機バインダーを3〜10質量部(固形分換算)程度の配合割合で混合し、更に固形分濃度5〜20質量%程度となるように水を加えて混合することで、粘度の調整されたスラリー状の表面処理剤を調製する。この表面処理剤を上記の母材の表面部に噴霧又は塗布するか、あるいは該表面処理剤中に母材の表面部を浸漬することで含浸させる。これにより、母材の表面部の空隙のほとんどを表面処理剤で埋めることができる。
その後、温度100〜120℃の空気中で8時間保持することで乾燥処理する。この乾燥処理により、該母材の表面部に表面処理層が形成された無機繊維成形体が得られる。なお、上記の湿式成形法により略直方体形状又は矩形板状の母材を成形する場合は、その6面のうち、熱処理設備に施工されたときに高温ガスに直接曝される片面側にのみ上記の表面処理層を形成してもよいし、該片面側とは反対面側にも表面処理層を形成してもよいし、6面全面に表面処理層を形成してもよい。
上記にて作製した表面処理層を有する無機繊維成形体は、加熱炉等に施工する前に焼成処理を行ってもよいし、該加熱炉等に施工した後に該加熱炉等で発生する実際の高温ガスを用いて焼成処理を行ってもよい。あるいは、表面処理層の形成前の母材の段階で施工し、そこに表面処理剤を噴霧又は塗布して含浸させた後、好適には高温雰囲気で加熱して乾燥処理し、更に上記のように実際の高温ガスを用いて焼成処理してもよい。
生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分とする複数の母材の表面部に、それぞれ仕様の異なる様々な表面処理層を設けて、それらの特性は加熱線収縮率を測定することで評価した。具体的には、先ず、生体溶解性繊維からなる無機繊維としてイソライト工業株式会社製のシリカ・カルシア系繊維であるイソウールBSSR1200(商品名)を用意し、その100質量部に固形分濃度3質量%となるように水を加えて分散混合した後、無機バインダーとして日産化学株式会社製のスノーテックス30(商品名)を15質量部添加し、更に日澱化学株式会社製の澱粉PJ(商品名)4質量部を水溶させた液を添加した。
このようにして調製した母材用スラリーを湿式吸引装置に導入し、矩形平板状の成形体を複数個成形した。得られた複数の成形体を乾燥機に装入して105℃の空気中にて24時間かけて乾燥処理することで、複数の矩形平板状の母材(縦300mm×横300mm×厚さ50mm、かさ密度260kg/m3)を作製した。
次に、上記複数の母材の表面処理剤用の結晶化無機粉末を作製するため、別途用意した上記無機繊維と同じイソライト工業株式会社製のイソウールBSSR1200を1300℃の空気中で24時間保持して焼成処理を行った。この焼成処理後の無機繊維をX線回析装置を用いて分析したところ、クリストバライトの結晶化度が70%以上であることを確認できたので、株式会社シー・エム・ティー製の高速振動試料粉砕機で粉砕した後、乾式分級した。
得られた乾式分級後の無機粉末をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定したところ、メジアン径が90μmであることを確認した。この無機粉末100質量部に無機バインダーとして日産化学株式会社製のコロイダルシリカであるスノーテックス30(商品名)を15質量部の割合で配合し、更に水を加えて混合することで固形分濃度5質量%のスラリー状の表面処理剤を調製した。
得られたスラリー状の表面処理剤を、上記にて作製した矩形平板状の複数の母材の各々に対して、その6面全ての表面部にスプレーで噴霧することにより塗布させた後、乾燥機に装入して105℃の空気中で8時間保持することで乾燥処理した。更に、電気加熱炉に装入して750℃の空気中で3時間保持することで焼成処理した。このようにして試料1の無機繊維成形体を複数個作製した。
更に、無機繊維の種類、表面処理剤に用いた結晶化無機粉末のクリストバライトの結晶化度及びメジアン径並びにその原材料の無機繊維の種類、無機バインダーの種類、表面処理層の厚みを様々に変えた以外は上記試料1の場合と同様にして本発明の実施例である、試料2〜21の無機繊維成形体を各々複数個作製した。なお、試料7、14及び21では無機バインダーに上記コロイダルシリカとジルコニアゾルとを質量基準で1:1の配合割合で混合したものを用いた。また、シリカ・カルシア系繊維からなる母材にそれとは異なる種類の無機繊維を原材料に用いて作製した無機粉末を含む表面処理剤を用いて試料27及び28の無機繊維成形体を各々複数個作製した。更に表面処理層を有しない以外は試料1、8、及び15とそれぞれ同様にして試料29、30、及び31の無機繊維成形体を各々複数個作製した。
このようにして作製した試料1〜31の無機繊維成形体から各々1個を抜き取って裁断し、その断面における表面処理層の厚みを電子顕微鏡により測定した。また、各試料の残りを試料1〜7については1200℃、1250℃、1300℃、及び1400℃の高温雰囲気で、試料8〜21については1300℃、1350℃、1400℃、及び1500℃の高温雰囲気で、試料22〜29については1200℃、1250℃、及び1300℃の高温雰囲気で、試料30〜31については1200℃、1300℃、及び1400℃の高温雰囲気で24時間保持した後の加熱線収縮率をJIS R3311に準拠して測定した。更に、該高温雰囲気で保持後の無機繊維成形体の状態を目視にて確認した。
上記の試料1〜31の無機繊維成形体の加熱線収縮率及び目視による検査結果を、母材に用いた無機繊維の種類、表面処理剤に用いた結晶化無機粉末のクリストバライトの結晶化度及びメジアン径並びにその原材料の無機繊維の種類、無機バインダーの種類、及び表面処理の厚みと共に下記表1及び表2に示す。
上記表1及び表2の結果から分かるように、シリカ・カルシア系繊維を用いた場合は、表面処理層のない試料29では加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は1200℃なので、最高使用温度は1200℃であった。一方、本発明の要件を満たす実施例の試料1〜7においては、加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は試料5では1300℃、それ以外では1250℃なので、最高使用温度は試料5が1300℃、それ以外が1250℃となり、表面処理層を設けることで試料1〜4、6、7は最高使用温度が50℃向上し、試料5は最高使用温度が100℃向上した。
シリカ・マグネシア系繊維を用いた場合は、表面処理層のない試料30では加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は1300℃なので、最高使用温度は1300℃であった。一方、本発明の要件を満たす実施例の試料8〜14においては、加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は試料12では1400℃、それ以外では1350℃なので、最高使用温度は試料12が1400℃、それ以外が1350℃となり、表面処理層を設けることで試料8〜11、13、14は最高使用温度が50℃向上し、試料12は最高使用温度が100℃向上した。
シリカ・カルシア・マグネシア系繊維を用いた場合は、表面処理層のない試料31では加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は1300℃なので、最高使用温度は1300℃であった。一方、本発明の要件を満たす実施例の試料15〜21においては、加熱線収縮率3.0%以下を満たす温度条件は試料19では1400℃、それ以外では1350℃なので、最高使用温度は試料19が1400℃、それ以外が1350℃となり、表面処理層を設けることで試料15〜18、20、21は最高使用温度が50℃向上し、試料19は最高使用温度が100℃向上した。
また、本発明の要件を満たさない試料22〜28の無機繊維成形体は、温度条件1250℃での加熱線収縮率が3.0%を超えたり変形したりするものがあり、試料27、28は剥離が生じた。具体的には、結晶化無機粉末のクリストバライトの結晶化度が小さい試料22は温度条件1250℃での加熱線収縮率が3.0%を超えていた。試料23はメジアン径が大きい無機粉末が母材の内部にほとんど浸透せずに表面部に堆積したため、温度条件1250℃での加熱線収縮率が3.0%を超えていた。表面処理層の厚みが0.1mmに満たない試料25は、温度条件1250℃での加熱線収縮率が3.0%を超えていた。表面処理層の厚みが2.0mmを超える試料26は、温度条件1250℃で変形した。表面処理剤に用いる無機粉末の原材料により耐熱性の高いアルミナ繊維を用いた試料27及び試料28では、母材と表面処理層とが熱膨張係数等の熱特性が互いに異なるため変形や剥離が生じた。
Claims (4)
- 生体溶解性繊維からなる無機繊維を主成分とする母材の表面部に表面処理層が形成された無機繊維成形体であって、前記表面処理層が前記無機繊維と同じ種類の無機繊維を結晶化することで得た結晶化無機粉末と無機バインダーとから構成され、前記結晶化無機粉末はクリストバライトの結晶化度が70%以上であって且つメジアン径が95μm未満であり、前記表面処理層の厚みが0.1〜2.0mmであることを特徴とする無機繊維成形体。
- 前記無機繊維成形体の最高使用温度が前記母材の最高使用温度より50℃以上大きいことを特徴とする、請求項1に記載の無機繊維成形体。
- 前記無機繊維が、シリカ・カルシア系、シリカ・マグネシア系、又はシリカ・マグネシア・カルシア系であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機繊維成形体。
- 前記無機バインダーが、コロイダルシリカ若しくはジルコニアゾル又はそれらの少なくとも一方を含む混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機繊維成形体。
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JP2019236488A Pending JP2021104608A (ja) | 2019-12-26 | 2019-12-26 | 表面処理層を有する無機繊維成形体 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2021104608A (ja) |
-
2019
- 2019-12-26 JP JP2019236488A patent/JP2021104608A/ja active Pending
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