以下、本発明の較正用スライドガラスについて説明する。
本発明の較正用スライドガラスは、複数の較正用パターンチップを有する較正用パターンと、上記較正用パターンの周囲に配置された第1のスペーサと、上記較正用パターンおよび上記第1のスペーサを介して対向するように配置され、上記較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも透過部を有する一対の保護基材と、上記第1のスペーサ、および上記一対の保護基材のうち、少なくとも一方の上記保護基材と上記第1のスペーサとの間に、上記較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように配置された第2のスペーサとを有し、上記第2のスペーサは、上記較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を有することを特徴とするものである。
本発明の較正用スライドガラスについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の較正用スライドガラスの一例を示す概略平面図である。図1に示すように、本発明の較正用スライドガラス100は、複数の較正用パターンチップを有する較正用パターンを有する。
図2(a)は、図1に示す本発明の較正用スライドガラス100の白色破線で囲った領域R1を拡大した拡大図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図であり、図2(c)は、図2(b)に示す較正用スライドガラス100の黒色破線で囲った領域R2を拡大した拡大図である。図2(a)〜(c)に示すように、本発明の較正用スライドガラス100は、複数の較正用パターンチップ1a、1b、1cを有する較正用パターン1と、較正用パターン1の周囲に配置された第1のスペーサ3と、第1のスペーサ3および第1のスペーサ3を介して対向するように配置され、較正用パターン1に平面視上重なる領域に少なくとも透過部20を有する一対の保護基材2a、2bと、第1のスペーサ3、および一対の保護基材2a、2bのうち少なくとも一方の保護基材の間に、較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように配置された第2のスペーサ4とを有する。また、本発明の較正用スライドガラス100は、第2のスペーサ4が、較正用パターン1に平面視上重なる領域に少なくとも開口部Aを有することを特徴とする。
従来の較正用スライドガラスは、保護基材上に較正用パターンが配置された構成を有している。このような構成を有する較正用スライドガラスでは、較正用パターンの表面が露出していることにより、較正用パターン表面の汚染や、物理的接触による色濃度の低下、さらには色素変化の発生等の不具合が生じるという問題がある。
そこで、本発明の発明者等は、例えば図10に示すように、一対の保護基材2a、2bの間に較正用パターン1を配置し、較正用パターンの表面の露出を防いだ構成を有する較正用スライドガラスを作製した。その結果、較正用パターン表面の汚染や、色濃度の低下、色素変化の発生を抑制することができたが、その一方で、保護基材に設けられた透過部を介して較正用パターンを観察した際に、ニュートンリングが出現するという課題を新たに発見した。
本発明の発明者等は、再度、研究を重ねた結果、ニュートンリングの発生は、較正用パターンおよび保護基材が接触することが原因の一つであることを新たに見出した。
したがって、本発明によれば、第2のスペーサが、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を有することにより、較正用パターン、および第2のスペーサが配置された少なくとも一方の保護基材の透過部の間に、第2のスペーサの厚みに相当する分の空隙を設けることができるため、ニュートンリングの出現を抑制することが可能な較正用スライドガラスとすることができる。
本発明の較正用スライドガラスは、較正用パターンチップと、第2のスペーサが配置された少なくとも一方の保護基材の透過部との間には、第2のスペーサの厚みに相当する分の空隙を有する。本発明の較正用スライドガラスにおいては、通常、空隙を有する側の面が観察側となる。したがって、較正用パターンチップの両側の面に空隙が配置されている場合には、較正用スライドガラスの両側の面を観察側とすることができ、また、較正用パターンチップの方側の面に空隙が配置されている場合には、較正用スライドガラスにおいて空隙が設けられた片側の面が観察側となる。
空隙の大きさは、較正用パターンチップと保護ガラスとが接触することによるニュートンリングの出現を抑制することができる程度であれば特に限定されず、較正用スライドガラスの設計等に応じて適宜調整することができる。例えば、空隙の厚みは、ニュートンリングの出現を抑制することができる程度であり、かつ後述する第2のスペーサの厚みに相当する。具体的な空隙の厚みは、例えば、10μm〜250μmの範囲内であることが好ましく、中でも15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、特に20μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。なお、空隙の厚みは、図1(c)に示す符号t1に相当する。
以下、本発明の較正用スライドガラスを構成する各部材について説明する。
1.第2のスペーサ
本発明における第2のスペーサは、第1のスペーサ、および一対の保護基材のうち、少なくとも一方の保護基材と第1のスペーサとの間に、較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように配置される部材である。また、本発明における第2のスペーサは、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を有することを特徴とする。さらに、本発明においては、例えば、図4に示すように、較正用パターンの周囲に配置された第1のスペーサ3に積層することができる。なお、図4の説明は後述するため、ここでの記載は省略する。
本発明においては、例えば、図3、図4に示すように、第2のスペーサ4が、第1のスペーサ3および一対の保護基材2a、2bの間、すなわち第1のスペーサ3の両面に、較正用パターンチップ1の一部と平面視上重なるように配置されることが好ましい。較正用スライドガラス100のいずれの面においても、保護基材2a、2bと較正用パターンチップ1との間に空隙Aを設けることができ、ニュートンリングの出現を抑制することができるからである。
本発明においては、第2のスペーサが、較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように配置されていることにより、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を形成した際、すなわち保護基材と較正用パターンチップとの間に空隙を設けた際に、空隙となる領域内に較正用パターンチップがずれ込む等の位置ずれを防ぐことができる。
本発明における第2のスペーサは、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を有する。本発明における第2のスペーサは、例えば、保護基材の透過部以外の全領域と平面視上重なるように層状に配置されていても良く、保護基材の透過部以外の領域であって、保護基材における周囲の領域と平面視上少なくとも一部が重なるように層状に配置されていても良い。中でも、第2のスペーサは、保護基材の透過部以外の全領域に平面視上重なるように配置されていることが好ましい。第2のスペーサが、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を有することにより、較正用パターンチップと保護基材との間に空隙が設けられた場合であっても、圧力により保護基材が撓み、割れ等が生じるといった較正用スライドガラスの強度の低下を抑制することが可能になる。
本発明における第2のスペーサの厚みとしては、較正用パターンチップと保護基材との間に設けようとする空隙の大きさに応じて適宜調整され、特に限定されない。具体的な第2のスペーサの厚みとしては、例えば、10μm〜250μmの範囲内であることが好ましく、中でも15μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、特に20μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。第2のスペーサの厚みが上記範囲内であることにより、ニュートンリングの出現を抑制することができる程度の空隙を設けることが可能となる。
本発明における第2のスペーサの材料としては、本発明の較正用スライドガラスに用いることができ、かつ、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも開口部を形成することができる材料であれば特に限定されない。具体的な第2のスペーサの材料としては、例えば、所定の剛性を有し、加工しやすい材料であることが好ましく、ステンレス、鉄ニッケル合金(42合金)、銅等の金属や、ガラス、プラスチック等が挙げられる。本発明においては、金属を用いることが好ましく、耐腐食性および加工性の観点からステンレスを用いることがより好ましい。
本発明における第2のスペーサの形成方法としては、所望の形状を有する第2のスペーサを形成することができる方法であれば特に限定されず、第2のスペーサに用いられる材料の種類等に応じて適宜選択することができる。本発明においては、例えば、金属板の打抜き加工やエッチング加工、プラスチック板の打抜き加工等による貫通加工や、プラスチック成型や印刷加工等の成形加工により第2のスペーサを形成することができる。
本発明において、較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように、第1のスペーサと保護基材との間に第2のスペーサを配置する方法としては、例えば、第2のスペーサを、較正用パターンチップの一部と平面視上重なるように、第1のスペーサと保護基材との間に接着して配置する方法が挙げられる。ここで、第2のスペーサを第1のスペーサと保護基材との間に接着させる際には、通常、接着剤が用いられるが、本発明においては、液状の接着剤を用いることが好ましい。接着シート等を用いた場合に比べて接着剤による厚みの増加を抑制することができ、また高い接着強度を得ることができるからである。なお、接着剤として用いられる具体的な材料については、一般的な材料と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
第2のスペーサの配置の際に液状の接着剤を用いる場合、第2のスペーサの表面に、接着剤を配置するための溝を有することが好ましい。例えば、図5に示すように、第2のスペーサ4の表面に、液状の接着剤を配置するための溝6を有することが好ましい。中でも、第2のスペーサの表面であって、較正用パターンチップの一部と平面視上重なる領域以外の領域に溝を有することが好ましい。第2のスペーサの表面において、較正用パターンチップの一部と平面視上重なる領域以外の領域に溝を有することにより、第2のスペーサにより、空隙となる領域内に較正用パターンチップがずれ込む等の位置ずれを効果的に防ぐことができる。なお、ここでの「第2のスペーサの表面」とは、第2のスペーサにおいて、第1のスペーサに接触する面、または保護基材に接触する面のいずれか一方の面を指すだけではなく、第1のスペーサに接触する面、および保護基材に接触する面の両方の面を包含する。
第2のスペーサの表面に溝を有する場合、当該溝の深さは、第2のスペーサの厚みよりも小さく、液状の接着剤を溝内に配置することにより、第2のスペーサを第1のスペーサと保護基材との間に十分に接着させて配置することができる程度の深さであることが好ましい。このように、溝の深さは、第2のスペーサの厚みに応じて適宜調整することができるが、例えば、第2のスペーサの厚みに対する割合が10%〜90%の範囲内であることが好ましく、中でも20%〜80%の範囲内であることが好ましく、特に30%〜70%の範囲内であることが好ましい。また、具体的な溝の深さは、例えば、5μm〜130μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜80μmの範囲内であることが好ましく、特に10μm〜40μmの範囲内であることが好ましい。溝の深さが上記範囲内であることにより、液状の接着剤を溝内に配置した際に、接着剤の逃がし溝として用いることができ、第2のスペーサと第1のスペーサおよび保護基材との間から接着剤が漏れ出すことを抑制することができる。したがって、品質の高い較正用スライドガラスとすることが可能となる。なお、溝の深さは、例えば、図5に示す符号t2に相当する。
第2のスペーサの表面に溝を有する場合、当該溝の大きさや数は特に限定されないが、第2スペーサの開口部の形状や使用する接着剤の量等に応じて適宜調整することが好ましい。
第2のスペーサの表面に溝を形成する方法としては、上述のような所定の深さを有する溝を形成することができる方法であることが好ましく、第2のスペーサに用いられる材料の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、第2のスペーサの表面にハーフエッチング処理を施すことにより、所望の溝を形成する方法を用いることができる。
2.第1のスペーサ
本発明における第1のスペーサは、較正用パターンの周囲に配置される部材である。
本発明においては、第1のスペーサが較正用パターンの周囲に配置されることにより、較正用パターンを有しない領域を第1のスペーサで埋めることが可能である。したがって、較正用パターンチップを所定の位置に固定することができ、較正用パターンチップが一対の保護基材の長さ方向に位置ずれすることを抑制することができる。
本発明における第1のスペーサは、較正用パターンの周囲に配置することができれば特に限定されず、1層から構成されていても良く、複数層から構成されていても良い。本発明においては、第1のスペーサの形成にあたり第1のスペーサにエッチング処理等の加工をし易いという観点から、例えば図4に示すように、薄い第1のスペーサ3を複数積層した構成であることが好ましい。なお、図4の説明については後述するため、ここでの記載は省略する。
本発明の第1のスペーサが複数層から構成されている場合、第1のスペーサの1層の厚みは、第1のスペーサに用いられる材料等に応じて適宜調整することができる。具体的な第1のスペーサの1層の厚みとしては、例えば、10μm〜250μmの範囲内であることが好ましく、中でも20μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。第1のスペーサの1層の厚みが上記範囲内であることにより、第1のスペーサを形成するにあたりエッチング処理等の加工を容易に行うことが可能となる。
また、本発明の第1のスペーサの総厚みは、後述する較正用パターンチップの厚みに応じて適宜調整され、特に限定されない。例えば、0.02mm〜0.8mmの範囲内であることが好ましく、中でも0.07mm〜0.6mmの範囲内であることが好ましく、特に0.1mm〜0.4mmの範囲内であることが好ましい。第1のスペーサの総厚みが上記範囲内であることにより、較正用パターンチップを十分に固定することが可能となる。
本発明における第1のスペーサの材料としては、較正用パターンの周囲に配置して、較正用パターンチップを固定することができる材料であれば特に限定されない。具体的な第1のスペーサの材料としては、例えば、所定の剛性を有し、加工しやすい材料であることが好ましく、ステンレス、鉄ニッケル合金(42合金)、銅合金等の金属や、ガラス、プラスチック等が挙げられる。本発明においては、金属を用いることが好ましく、耐腐食性および加工性の観点からステンレスを用いることがより好ましい。
本発明における第1のスペーサの形成方法としては、所望の形状を有する第1のスペーサを形成することができる方法であれば特に限定されず、第1のスペーサに用いられる材料の種類等に応じて適宜選択することができる。なお、具体的な第1のスペーサの形成方法については、上記「1.第2のスペーサ」の項で記載した第2のスペーサの形成方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明において、較正用パターンの周囲に第1のスペーサを配置する方法としては、例えば、第1のスペーサを、保護基材の所定の位置に接着して配置する方法が挙げられる。
ここで、第1のスペーサを保護基材に接着させる際には、通常、接着剤が用いられるが、本発明においては、液状の接着剤を用いることが好ましい。接着シート等を用いた場合に比べて接着剤による厚みの増加を抑制することができ、また高い接着強度を得ることができるからである。なお、接着剤として用いられる具体的な材料については、一般的な材料と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
第1のスペーサの配置の際に液状の接着剤を用いる場合、第1のスペーサの表面に、接着剤を配置するための溝を有することが好ましい。なお、ここでの「第1のスペーサの表面」とは、第1のスペーサが保護基材に接触する面の他に、第1のスペーサが複数層から構成される場合には第1のスペーサ同士が接触する面や、第1のスペーサが第2のスペーサに接触する面等も包含する。具体的な溝の深さ、大きさ、形成方法等については、上記「1.第2のスペーサ」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
3.較正用パターン
本発明における較正用パターンは、複数の較正用パターンチップを有する部材である。
本発明における較正用パターンは、本発明の較正用スライドガラスの用途に応じて適宜選択され、特に限定されない。例えば、本発明の較正用スライドガラスが撮像装置付き顕微鏡に用いられる場合には、当該較正用スライドガラスに用いられる較正用パターンは、撮像装置付き顕微鏡による測定画像の再現性評価に用いることができる。したがって、この場合の較正用パターンとしては、例えば、カラーチャート、グレイスケール、解像度チャート、インメガチャート、クロスハッチチャート、またはこれらを組み合わせもの等が挙げられる。
本発明における較正用パターンの数は、本発明の較正用スライドガラスが用いられる撮像装置付き顕微鏡等の対物レンズの数に応じて適宜調整することができる。なお、図1で示される較正用スライドガラスでは、較正用パターンが3か所に設けられている。
本発明における較正用パターンは、例えば、図1に示すように、段階的に大きさが変化し、パターンは相似的になるように設計される。具体的に較正用パターンの大きさは、対物レンズによる顕微鏡測定の視野内に収め得る大きさに設計される。また、較正用パターンの形状としては、図1のような長方形の他にも、正方形、多角形、円形等が挙げられる。
また、本発明における較正用パターン厚みは、本発明の較正用スライドガラスの設計に応じて適宜調整されるものであり、特に限定されない。具体的な較正用パターンの厚みとしては、例えば、0.02mm〜0.8mmの範囲内であることが好ましく、中でも0.07mm〜0.6mmの範囲内であることが好ましく、特に0.1mm〜0.4mmの範囲内であることが好ましい。
ここで、本発明における較正用パターンの一例としてカラーチャートについて説明する。カラーチャートは、色評価用の色として、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)から構成される。したがって、この場合、本発明における較正用パターンは、色評価用の各色の較正用パターンチップを配列したものとなる。
本発明における較正用パターンチップは、例えば図2(b)、(c)に示すように、着色部1a”、1b”および透明部1a’、1b’により構成することができる。着色部および透明部の配置は特に限定されないが、例えば、各較正用パターンチップで着色部および透明部の配置が同じであることが好ましい。具体的には、例えば、図2(b)に示すように、各較正用パターンチップ1a、1bで、着色部1a”、1b”が、保護基材2a側の面に配置され、当該着色部1a”、1b”の保護基材2b側の面に透明部1a’、1b’が配置されていることが好ましい。着色部および透明部の配置を、各較正用パターンチップで揃えることにより、次のような効果が得られる。すなわち、着色部および透明部は、それぞれ屈折率が異なるため、較正用パターンチップを光が透過する際、着色部および透明部の界面において光の屈折が生じる傾向にある。このとき、着色部および透明部の配置が、各較正用パターンチップで異なる場合、光の屈折が生じる界面の位置が異なることにより、各較正用パターンチップから出射される光の角度にバラつきが生じ、受光部での所望の色情報の取得が困難になるおそれがある。一方、上述のように、着色部および透明部の配置が、各較正用パターンチップで揃っている場合には、上記課題の発生を抑制することが可能となる。
本発明における較正用パターンチップは、例えば、較正用パターンチップのサイズよりも大きいサイズで形成されたカラーチャートを所望の大きさに切断することに得ることができる。このような方法により較正用パターンチップを作製することにより、色ムラや濃淡ムラの発生を抑制し、安定した特性を有する較正用パターンチップを得ることができる。
また、カラーチャートには、例えば、撮像装置付き顕微鏡の基準色となる大日本印刷(株)製:「スタンダードカラーバーチャート」を用いることができる。ここで、「スタンダードカラーバーチャート」は、予め設計された赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Y)シアン(C)、マゼンタ(M)から構成され、有効サイズは175mm×245mmである。
また、本発明における較正用パターンチップは、撮像装置付き顕微鏡による測定画像の再現性評価の基準色として用いられるが、このときの基準色としては、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)等が挙げられる。なお、基準色に用いられる色は、上述した6色に限定されず、撮像装置付き顕微鏡を用いて観察される対象に応じて適宜調整することができる。具体的には、生物組織や細胞を染色して観察する場合には、生物組織の一般的な染色法であるヘマトキシリン・エオシン染色法や、その他の染色法により染色された赤系色、緑系色、青系色、シアン系色、マゼンタ系色、イエロー系色、その他の系統色等から選択された色を基準色とすることができる。
較正用パターンにおける複数の較正用パターンチップは、一列に配列されていても良く、格子状に配列されていても良く、円形状に配列されていても良い。なお、図2(a)では、較正用パターン1は、較正用パターンチップ1a、1bが2行×5列の格子状に配置された例を示している。また、図2(a)、(b)に示されるように、上段の較正用パターンチップおよび下段の較正用パターンチップの間には、無色透光性のブランクの領域1cを有していても良い。
次に、本発明における較正用パターンの一例としてグレイスケールについて説明する。
グレイスケールは、反射型では、白から黒までの間の灰色の反射濃度を変化させて、段階的に階調を表現したスケールである。ここでは、透過型のグレイスケールについて説明する。較正用パターンとしてのグレイスケールは、透過率の異なる階調毎の較正用パターンチップを配列して構成することができる。配列としては、透過率が段階的に変化するように一列または格子状に配列することができる。なお、グレイスケールの形成方法としては、例えば、ガラスやフィルムなどの支持体に対して厚さの異なる金属皮膜を複数形成するスパッタリング法や、支持体上に濃淡の諧調、または支持体上に被覆面積の異なる網点状被覆部を形成させることのできる、印刷法やインクジェット法、フォトリソグラフィ法等が挙げられる。
本発明における較正用パターンは、必要に応じてIRカットフィルタやNDフィルタを有していても良い。例えば、図4に示すように、較正用パターンチップ1a、1bに平面視上重なる領域に、特定の波長を除去するIRカットフィルタ8を有していても良い。IRカットフィルタを有することにより、単層の較正用パターンチップに対して色相、彩度、明度、輝度等を調整することが可能となる。また、図4に示すように、IRカットフィルタ8を有する場合、第2のスペーサ4を、較正用パターンチップ1a、1bとIRカットフィルタ8との間に、較正用パターンチップ1の一部と平面視上重なるように配置して空隙Aを設け、ニュートンリングの発生を抑制することができる。
本発明においては、複数の較正用パターンチップのうち、少なくとも同一測定対象となる全ての較正用パターンチップは、較正用パターンチップの厚み方向の光路長が均一であることが好ましい。以下、詳細に説明する。
まず、較正用スライドガラスは、例えば、観察装置を用いて撮像された試料画像の色評価や色補正を行う際に、比較基準となる色情報を提供するという機能を有する。具体的には、較正用パターンを構成する複数の較正用パターンチップは、それぞれ色情報を有しており、当該複数の較正用パターンチップを測定して色情報を提供することにより、観察装置を用いて撮像された試料画像の色評価や色補正を行うことができる。
一方、較正用スライドガラスは、色情報を提供するにあたり、複数の較正用パターンチップの測定が行われるが、このとき測定される複数の較正用パターンチップは、当該較正用パターンチップの厚み方向の光路長が均一であることが好ましい。中でも、較正用パターンを構成する全ての較正用パターンチップの厚み方向の光路長が均一であることが好ましい。ここで、上記「このとき測定される複数の較正用パターンチップ」とは、一回の較正で測定する較正用パターンチップであり、いわゆる同一測定対象となる複数の較正用パターンチップである。例えば、基準色として白色較正用パターンチップを利用し、その他の色を呈するパターンチップの色情報を測定する場合には、白色較正用パターンチップとその他の色を呈するパターンチップとが、「同一測定対象」となる。また、較正用パターンが、所定の色を呈する較正用パターンチップの他にも輝度調整を行うためのグレイチップを有する場合であって、当該グレイチップと較正用パターンチップとを一回の較正で測定する場合には、グレイチップと較正用パターンチップとが、「同一測定対象」となる。
さらに、較正用パターンが、所定の色を呈する較正用パターンチップの他にも解像度チップを有する場合には、必ずしも一回の較正で解像度チップと較正用パターンチップとを測定しなくても良いため、解像度チャートと較正用パターンチップとは、必要に応じて「同一測定対象」とすることができる。
同一測定対象となる複数の較正用パターンチップの光路長が均一であることが好ましい理由については、次のようなことが考えられる。図11(a)、(b)は、較正用パターンチップとして、赤色較正用パターンチップ1R、白色較正用パターンチップ1W、および緑色較正用パターンチップ1Gを有し、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gの平面視上重なる領域には、IRカットフィルタ8が配置されている。なお、図11(a)、(b)におけるその他の構成については、上述した図4と同じであるため、ここでの記載は省略する。また、図11(a)、(b)では、図を簡略化のために、第1スペーサおよび第2スペーサ等については省略しており、較正用パターンチップの着色部および透明部についても省略する。
図11(a)に示すように、較正用スライドガラスに、光源hとして平行光を照射したところ、赤色較正用パターンチップ1Rを透過した平行光は、受光部30Rにより受光されて、所望の色情報が測定される。また、白色較正用パターンチップ1Wを透過した平行光は、受光部30Wにより受光されて、所望の色情報が測定される。さらに、緑色較正用パターンチップ1Gを透過した平行光は、受光部30Gにより受光されて、所望の色情報が測定される。一方、図11(b)に示すように、較正用スライドガラスに、光源hとして非平行光を照射したところ、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gを透過した非平行光は、受光部30Rおよび受光部30Gにより十分に受光されず、所望の色情報を測定することが困難になる場合がある。
そうすると、例えば、白色較正用パターンチップ1Wを基準色として利用し、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gの測定を行った場合には、測定結果にズレが生じ、正確な較正を行うことが困難になるおそれがある。また、結果として、較正用パターンチップを備えた較正用スライドガラスを用いた撮像装置付きの観察装置により、精度の高い測定を行うことが困難になるおそれがある。
なお、上記「非平行光」としては、例えば、顕微鏡等の結像光学系が挙げられる。
そこで、本発明の発明者等は、上記課題に対して検討を重ねたところ、図11(b)に示すように、光源hとして非平行光を用いた場合には、各較正用パターンチップの光路長の差異によって、各受光部においてそれぞれ受光しようとする光が十分に受光できず、結果として色情報にズレが生じるという知見を得た。本発明の発明者等は、このような知見に基づき、同一測定対象となる全ての較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一にすることにより、上記課題を解決するに至った。すなわち、本発明においては、同一測定対象となる全ての較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一にすることにより、当該較正用パターンチップを備えた較正用スライドガラスを用いた撮像装置付きの観察装置により、より精度の高い測定を行うことが可能となる。
ここで、「光路長」とは、下記式により求めることができる。
(光源が透過する較正用パターンチップの厚み)×(較正用パターンチップの屈折率)=光路長
また、「光路長を均一にする」とは、較正用スライドガラスを用いた撮像装置付きの観察装置により、精度の高い測定を行うことができる程度であれば良いが、例えば、同一測定対象となる全ての較正用パターンチップの厚み方向の光路長の差が、少なくとも15%以下であることが好ましく、中でも10%以下であることが好ましい。
図12は、上述した図11(b)に示す較正用スライドガラスにおいて、同一測定対象となる較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一に調整した例を示す模式図である。図11(b)では、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gは、平面視上重なるようにIRカットフィルタ8が配置されているのに対し、白色較正用パターンチップ1Wには、IRカットフィルタ8が配置されていない。図11に示す較正用スライドガラスは、この点で光路長が均一ではない。そこで、図12に示す較正用スライドガラスでは、白色較正用パターンチップ1Wにも、平面視上重なるように、IRカットフィルタ8と屈折率の近い調整用フィルタ8’を配置し、各較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一に調整した。これにより、例えば、白色較正用パターンチップ1Wを基準色として利用し、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gの測定を行った場合に、正確な較正を行うことができる。また、結果として、較正用パターンチップを備えた較正用スライドガラスを用いた撮像装置付きの観察装置により、より精度の高い測定を行うことができる。なお、このとき用いた調整用フィルタ8’は、IRカットフィルタ8の屈折率に近づけるために、材料や厚みを調整した部材である。したがって、調整用フィルタ8’として、IRカットフィルタ8のベースとなる材料と同じ材料から構成された部材を用いても良く、あるいはIRカットフィルタ8を用いても良い。調整用フィルタ8’が前者である場合の具体例としては、例えば、ソーダガラス、石英ガラス、光学用ガラスのBK7等が挙げられる。
本発明において、同一測定対象となる全ての較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一にする方法としては、例えば、同一測定対象となる較正用パターンチップの層数を揃える方法が挙げられる。また、層数を揃える際には、層を構成する材質が近いものを選択することが好ましい。光路長をより均一にすることができるからである。また、層数を揃えることにより得られる効果としては、光路長を均一にすることができる他にも、例えば、光路に配置される部材の数が揃うことによって、光が透過する界面の数が揃い、光の屈折を揃えることができるという効果が考えられる。
具体的には、図13(a)に示すように、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gを有し、白色較正用パターンチップ1Wとして空隙を有する場合には、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gは層数が1であるのに対し、白色較正用パターンチップ1Wは層数が0となり、互いに層数に差異が生じる。この場合には、例えば、図13(b)に示すように、白色較正用パターンチップ1Wとして、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gと屈折率の近い材質からなる層を設けることが好ましい。赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gと屈折率の近い材質からなる層としては、例えば、ソーダガラス等が挙げられる。
また、図14(a)に示すように、赤色較正用パターンチップ1R、白色較正用パターンチップ1Wおよび緑色較正用パターンチップ1Gを有し、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gに平面視上重なるようにIRカットフィルタ8が配置されている場合には、赤色較正用パターンチップ1Rおよび緑色較正用パターンチップ1Gは層数が2であるのに対し、白色較正用パターンチップ1Wは層数が1となり、互いに層数に差異が生じる。この場合には、例えば、図14(b)に示すように、白色較正用パターンチップ1Wに平面視上重なるように、IRカットフィルタ8と屈折率の近い調整用フィルタ8’を配置することが好ましい。
なお、図13(a)、(b)および図14(a)、(b)において説明していない符号は、上述した図4と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。また、図13(a)、(b)および図14(a)、(b)では、図の簡略化のために、第1スペーサおよび第2スペーサ等については省略しており、較正用パターンチップの着色部および透明部についても省略する。
ここで、同一測定対象となる較正用パターンチップの、厚み方向の光路長が均一である場合と、そうでない場合とで、光源として非平行光(顕微分光 OLYMPUS:OSP−SP200)利用したときの測定結果について比較した。具体的には、較正用パターンチップ1a、1bと、較正用パターンチップ1aのみに平面視上重なるようにNDフィルタ9とが配置された図15(a)に示す較正用スライドガラス、および較正用パターンチップ1a、1bと、較正用パターンチップ1aに平面視上重なるようにNDフィルタ9と、較正用パターンチップ1bに平面視上重なるように、NDフィルタ9と同じ材料を含む調整用フィルタ9’とが配置された図15(b)に示す較正用スライドガラスを準備した。上記較正用パターンチップには、ソーダガラスを用い、上記NDフィルタとしては、透過率が60%前後に設計されたフィルタを用いた。また、調整用フィルタ9’には、NDフィルタ9のベースとなる材料と同じ材料から構成された透明ガラスを用いた。測定では、図15(a)、(b)に示すように、非平行光hを照射し、それぞれ較正用パターンチップ1aならびに1b、NDフィルタ9、調整用フィルタ9’を透過した光を受光部30a、30bにより受光して透過率を測定した。測定の結果、図16に示すように、同一測定対象となる較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一に調整していない図15(a)では、透過率が10%前後となり、正確な測定を行うことができなかった。一方、同一測定対象となる較正用パターンチップの、厚み方向の光路長を均一に調整した図15(b)では、設計した通りに透過率が60%前後となり、正確な測定を行うことができた。
本発明においては、例えば、同一測定対象となる全ての較正用パターンチップの、厚み方向の光路長が均一であり、図14(b)や図15(b)に示すIRカットフィルタ8やNDフィルタ9が、隣接する較正用パターンチップに平面視上重なるように配置されている場合には、当該IRカットフィルタ8やNDフィルタ9は、較正用パターンチップ毎に別体として配置されていても良く、各較正用パターンチップに、一体として配置されていても良い。
4.保護基材
本発明における保護基材は、較正用パターンおよび第1のスペーサを介して対向するように配置され、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも透過部を有する部材である。ここで、「透過部」とは、少なくとも可視光を透過する領域をいい、例えば図2(b)、(c)に示される符号20の領域を指す。透過部の形状は、通常、図2(b)、(c)に示すように矩形形状である。
本発明における保護基材は、較正用パターンに平面視上重なる領域に少なくとも透過部が形成されていれば良い。具体的には、例えば、図2(c)に示すように、較正用パターンチップ1aの幅w2よりも透過部の幅w1が小さく、かつ、較正用パターンチップの両端よりも透過部の両端が内側に位置していれば良い。
本発明における保護基材は、較正用パターンの両面に対向して配置されるものであるが、このとき、対向する一対の保護基材における透過部は、上述した所定の位置に形成されていれば良く、例えば、各保護基材における透過部の位置や幅が同じであっても良く、異なっていても良い。本発明においては、各保護基材における透過部の位置や幅が同じであることが好ましい。較正用パターンチップの輪郭が明確になり、より品質の高い較正用スライドガラスとすることができるからである。また、一対の保護基材において、各保護基材における透過部の位置や幅が異なる場合には、較正用スライドガラスの観察側に設けられた保護基材の透過部から、較正用スライドガラスの観察側とは反対側に設けられた保護基材の透過部以外の領域が観察されないことが好ましい。すなわち、本発明においては、例えば図6に示すように、各保護基材2a、2bにおける透過部20の幅が異なる場合には、透過部20の幅がより狭い方の矢印で示す側を、較正用スライドガラスの観察側とすることが好ましい。
上述のように、一対の保護基材において、各保護基材における透過部の幅(開口寸法)が異なる場合には、その差が、0.2mm以内であることが好ましく、中でも0.1mm以内であることが好ましい。各保護基材における透過部の位置や幅の差が上記範囲内であることにより、較正用スライドガラスを所定の面から観察したときの較正用パターンチップの輪郭を明確にすることができ、品質の高い較正用スライドガラスとすることができる。なお、各保護基材における透過部の位置や幅の差とは、例えば、図6に示す符号w3に相当する。
また、保護基材における透過部の幅としては、較正用スライドガラスの設計に応じて適宜調整されるものであり、特に限定されない。
保護基材の大きさは、本発明の較正用スライドガラスの大きさに応じて適宜選択されるものであり、特に限定されない。具体的な保護基材の大きさとしては、例えば、短辺が26±0.1mmであり、長辺が76±0.1mmであることが好ましい。また、保護基材の厚みとしては、例えば、0.2mm〜0.4mmの範囲内であることが好ましい。
保護基材に用いられる材料は、例えば、一対の保護基材により挟持される較正用パターンを傷や塵から保護することができる材料であることが好ましい。具体的な保護基材の材料としては、例えば、ガラスやプラスチック等が挙げられる。本発明の較正用スライドガラスが撮像装置付き顕微鏡に用いられる場合には、保護基材の材料には通常ガラスが用いられる。また、保護基材の材料にプラスチックを用いる場合には、より良好な顕微鏡測定を可能にするという観点から、フィラー等を含まないプラスチックを用いることが好ましい。
保護基材の形成方法としては、透過部を有する所望の保護基材を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、無色透光性を有する基材表面に銀塩乳剤を塗布し、所定の領域に脱銀塩処理を施して透過部を形成して保護基材とする方法が挙げられる。なお、保護基材は1層から構成されていても良く、複数層から構成されていても良い。
5.封止部
本発明においては、一対の保護基材の間に、保護基材の外周に沿って配置された封止部を有することが好ましい。
図7は、本発明の較正用スライドガラスの一例を示す概略斜視図である。図7に示すように、本発明の較正用スライドガラス100は、一対の保護基材2a、2bの間に、保護基材2a、2bの外周に沿って配置された封止部5を有することが好ましい。封止部5を有することにより、第1のスペーサ3および第2のスペーサ4の側面が露出することを抑制することができるため、較正用スライドガラス100の機械的強度を高めることが可能となる。また、例えば、本発明の較正用スライドガラスを用いた撮像装置付き顕微鏡を医療現場等で用いた際には、較正用スライドガラスの内部に溶剤等が侵入することを抑制することが可能となる。なお、図7において説明していない符号については、図2(a)〜(c)と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本発明における封止部は、図7に示すように、一対の保護基材2a、2bの間に、保護基材2a、2bの外周に沿って配置することにより、第1のスペーサ3や第2のスペーサ4の側面が露出することを防ぐという機能を有することが好ましい。本発明における封止部は、例えば、保護基材の外周に沿って硬化剤を流し込み、その後、硬化させることにより形成することができる。その他にも、本発明における封止部は、例えば、樹脂材料を有する封止層を所定の形状に加工することにより形成することができる。封止部に用いられる具体的な硬化剤や樹脂材料としては、所望の封止部を形成することができる材料であれば特に限定されず、例えば、一般的な硬化剤や樹脂材料が挙げられる。また、樹脂材料は透過性を有していても良く、遮光性を有していても良い。
本発明における封止部の厚みは、本発明の較正用スライドガラスの構成に応じて適宜調整することができ特に限定されないが、通常、一対の保護基材の間の距離に相当し、第1のスペーサの厚みおよび第2のスペーサの厚みの総和に相当する。そのため、封止部の具体的な厚みについての記載は省略する。
本発明において、一対の保護基材の間に、保護基材の外周に沿って封止部を配置する方法としては、例えば、封止部が樹脂材料を有する場合には、封止部を保護基材に接着させて配置する方法が挙げられる。ここで、封止部を保護基材に接着させる際には、通常、接着剤が用いられるが、本発明においては、液状の接着剤を用いることが好ましい。接着シート等を用いた場合に比べて接着剤による厚みの増加を抑制することができ、また高い接着強度を得ることができるからである。なお、接着剤として用いられる具体的な材料については、一般的な材料と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
封止部の配置の際に液状の接着剤を用いる場合、封止部の表面に、接着剤を配置するための溝を有していても良い。なお、ここでの「封止部の表面」とは、保護基材と接触する面を指すため、通常、封止部の両方の面を指す。
6.原点マーク
本発明においては、一対の保護基材において、一方の保護基材の表面に原点マークを有することが好ましい。なお、ここでの一方の保護基材とは、通常、較正用スライドガラスの観察側となる方の保護基材を指す。また、ここでの保護基材の表面とは、通常、一対の保護基材が対向する側の面を指す。
本発明において、一方の保護基材の表面に原点マークを有する場合、通常、当該原点マークは、保護基材の透過部、較正用パターンチップ、および第2のスペーサの開口部と平面視上重なるような位置に形成される。本発明の較正用スライドガラスを透過する透過光により原点マークを照らすことができるからである。
図8(a)は、本発明の較正用スライドガラスの一例を示す概略平面図であり、図8(b)は、図8(a)に示す本発明の較正用スライドガラスにおける領域R3を拡大した拡大図である。図8(a)、(b)に示すように、本発明の較正用スライドガラス100は、表面に原点マーク6を有することが好ましい。本発明においては、例えば、図8(a)、(b)に示すように、x軸線を規定する原点マーク6xやy軸線を規定する原点マーク6y等を有することが好ましく、その他にも、必要に応じて補助となる原点マーク6’を有することが好ましい。x軸線を規定する原点マークやy軸線を規定する原点マークを有することにより、当該原点マークに基づいて較正用パターンの位置情報等を認識することが可能となる。そのため、オートチェンジャー機能に対応した較正用スライドガラスとすることができる。
本発明における原点マークの形状や大きさは、x軸線やy軸線等を規定することができ、また、原点マークとして認識することができる程度の形状や大きさであれば特に限定されず、較正用スライドガラスの設計等に応じて適宜調整することができる。
本発明における原点マークの形成方法は、所望の原点マークを形成することができる方法であれば特に限定されないが、例えば、保護基材における透過部と同様の方法により形成することができる。
7.アライメントマーク
本発明においては、一対の保護基材、第1のスペーサ、第2のスペーサ等に、位置ずれを防止するためのアライメントマークを形成することが好ましい。
アライメントマークを形成する位置は、較正用パターンや原点マークに重ならない領域であれば特に限定されず、較正用スライドガラスの構成に応じて適宜選択することができる。また、アライメントマークの数についても特に限定されず、較正用スライドガラスの構成等に応じて適宜調整することができる。本発明においては、例えば、図7に示すように、各部材の四隅にアライメントマーク7を形成することができる。
図9(a)〜(d)は、本発明におけるアライメントマークを説明するための説明図である。本発明の較正用スライドガラスの各部材にアライメントマークを形成する場合、例えば、図9(a)に示す保護基材2a、図9(b)に示す第1のスペーサ3、図9(c)に示す第2のスペーサ4、図9(d)に示す保護基材2bのように、所定の形状を有するアライメントマーク7を形成することにより、当該アライメントマークに基づいて各部材を平面視上重なるように位置合わせすることが可能となる。そのため、本発明の較正用スライドガラスを製造するにあたり、各部材の組立て時の位置精度を向上させることができ、品質の高い較正用スライドガラスとすることができる。
本発明において各部材にアライメントマークを形成する方法は、所望のアライメントマークを形成することができる方法であれば特に限定されず、各部材に用いられる材料等に応じて適宜選択することができる。例えば、保護基材にアライメントマークを形成する方法としては、例えば、保護基材における透過部と同様の形成方法が挙げられる。また、第1のスペーサおよび第2のスペーサにアライメントマークを形成する方法としては、例えば、金属板の打抜き加工やエッチング加工、プラスチック板の打抜き加工等による貫通加工や、プラスチック成型や印刷加工等の成形加工等が挙げられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。