JP2021099106A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合における空走感に起因した違和感を抑制できる車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。【解決手段】エンジン12と駆動輪14との間に、第1動力伝達経路PT1と第2動力伝達経路PT2とが並列に設けられ、第1動力伝達経路PT1に設けられた第1クラッチC1と出力軸30との間には選択可能一方向クラッチSOWCが設けられている。被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合、選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であると、第1クラッチC1が係合された状態で入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_outに向けて上昇させられると共に、エンジン12による駆動輪14に対する被駆動トルクの減少分を補填するように駆動輪14に対して被駆動トルクが車輪ブレーキ66,68から出力される。【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンと駆動輪との間に、第1動力伝達経路と第2動力伝達経路とが並列に設けられた車両用動力伝達装置の制御装置に関する。
エンジンと駆動輪との間に、ギヤ機構を経由した第1動力伝達経路と無段変速機を経由した第2動力伝達経路とが並列に設けられた車両用動力伝達装置の、制御装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用動力伝達装置の制御装置がそれである。
国際公開第2013/176208号
特許文献1に記載された車両用動力伝達装置では、ギヤ機構を経由した第1動力伝達経路には噛合クラッチが設けられているが、コストダウンなどを目的にしてその噛合クラッチを選択可能一方向クラッチに置き換える構成が考えられる。選択可能一方向クラッチは、車両が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、車両が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向ロック状態と、車両が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力を伝達する両方向ロック状態と、が選択可能に構成されたものである。しかし、このように置き換えられた構成では、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合に、選択可能一方向クラッチにおける一方向ロック状態から両方向ロック状態への切替ショックを抑制するために選択可能一方向クラッチの入力側の回転速度と出力側の回転速度との同期が取れるまでは選択可能一方向クラッチを両方向ロック状態に切り替えられない。これにより、選択可能一方向クラッチが両方向ロック状態に切り替えられるまでの期間はエンジンと駆動輪との間で被駆動力が伝達されず、駆動輪に伝達される被駆動トルクの減少に伴う空走感に起因して運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合における空走感に起因した違和感を抑制できる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
本発明の要旨とするところは、エンジンと駆動輪との間に、第1動力伝達経路と第2動力伝達経路とが並列に設けられ、前記第1動力伝達経路には第1クラッチ及び選択可能一方向クラッチが設けられ、前記第2動力伝達経路には無段変速機及び第2クラッチが設けられ、前記第1クラッチが前記選択可能一方向クラッチよりも前記エンジン側に配置されている車両用動力伝達装置の、制御装置であって、(a)前記選択可能一方向クラッチは、車両が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、前記車両が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向ロック状態と、前記車両が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力を伝達する両方向ロック状態と、が選択可能に構成され、(b)前記車両が被駆動状態にある場合に前記第2動力伝達経路から前記第1動力伝達経路に動力伝達経路を切り替える被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合、前記選択可能一方向クラッチにおける入力回転速度が出力回転速度未満であるか否かを判定する回転速度差判定部と、(c)前記回転速度差判定部により前記入力回転速度が前記出力回転速度未満であると判定されると、前記第1クラッチが係合された状態で前記入力回転速度を前記出力回転速度に向けて上昇させる上昇制御を実行する入力回転速度制御部と、(d)前記被駆動ダウンシフト変速の実行中に、前記エンジンから前記駆動輪に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように前記駆動輪に対して被駆動トルクを出力するように制御するトルク補填制御部と、を備えることにある。
本発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、(a)前記選択可能一方向クラッチは、車両が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、前記車両が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向ロック状態と、前記車両が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力を伝達する両方向ロック状態と、が選択可能に構成され、(b)前記車両が被駆動状態にある場合に前記第2動力伝達経路から前記第1動力伝達経路に動力伝達経路を切り替える被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合、前記選択可能一方向クラッチにおける入力回転速度が出力回転速度未満であるか否かを判定する回転速度差判定部と、(c)前記回転速度差判定部により前記入力回転速度が前記出力回転速度未満であると判定されると、前記第1クラッチが係合された状態で前記入力回転速度を前記出力回転速度に向けて上昇させる上昇制御を実行する入力回転速度制御部と、(d)前記被駆動ダウンシフト変速の実行中に、前記エンジンから前記駆動輪に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように前記駆動輪に対して被駆動トルクを出力するように制御するトルク補填制御部と、が備えられる。被駆動ダウンシフト変速の実行中におけるエンジンから駆動輪に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように駆動輪に対して被駆動トルクが出力されることから、被駆動トルクの減少に伴う空走感に起因した違和感が抑制される。
本発明の実施例に係る電子制御装置が搭載される車両の概略構成図であると共に、車両における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。 シフトレバーによって選択される操作ポジション毎の各係合装置の作動状態の組み合わせを示す作動図表である。 図1に示す選択可能一方向クラッチの構造を簡略的に示す図であって、一方向ロック状態に切り替えられた場合の周方向の一部を切断した断面図である。 図1に示す選択可能一方向クラッチの構造を簡略的に示す図であって、両方向ロック状態に切り替えられた場合の周方向の一部を切断した断面図である。 図1に示す電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。 被駆動ダウンシフト変速が実行される場合におけるタイムチャートの一例である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の実施例に係る電子制御装置100が搭載される車両10の概略構成図であると共に、車両10における各種制御のための制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
車両10は、例えば、走行用の駆動力源として用いられるエンジン12、駆動輪14、エンジン12から出力された動力(駆動力)を駆動輪14に伝達する車両用動力伝達装置16(以下、「動力伝達装置16」と記す。)、車輪ブレーキ66,68、油圧制御回路46、及び電子制御装置100を備える。
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている。
動力伝達装置16は、トルクコンバータ20、入力軸22、前後進切替装置26、無段変速機60、ギヤ機構28、出力軸30、カウンタ軸32、出力軸30及びカウンタ軸32に各々相対回転不能に設けられて噛み合う一対のギヤから成る減速歯車装置34、カウンタ軸32に相対回転不能に設けられたギヤ36、ギヤ36に連結されたデフギヤ38、及び車軸40を含む。エンジン12で発生させられた動力は、トルクコンバータ20を介して入力軸22に伝達される。
動力伝達装置16では、入力軸22と出力軸30との間で第1動力伝達経路PT1及び第2動力伝達経路PT2が並列に設けられ、それらのいずれか一方が選択的に形成可能となっている。第1動力伝達経路PT1は、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を含む前後進切替装置26と、選択可能一方向クラッチSOWCを含むギヤ機構28と、を備え、エンジン12の動力を入力軸22からギヤ機構28を経由して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。第1動力伝達経路PT1において、エンジン12側から駆動輪14側に向かって、前後進切替装置26及びギヤ機構28の順番で配置されている。すなわち、第1クラッチC1が、選択可能一方向クラッチSOWCよりもエンジン12側に配置されている。第1動力伝達経路PT1が形成され、ギヤ機構28を経由してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行モードが、ギヤ走行モードである。第2動力伝達経路PT2は、無段変速機60及び第2クラッチC2を備え、エンジン12の動力を入力軸22から無段変速機60を経由して駆動輪14へ伝達する動力伝達経路である。第2動力伝達経路PT2において、エンジン12側から駆動輪14側に向かって、無段変速機60及び第2クラッチC2の順番で配置されている。第2動力伝達経路PT2が形成され、無段変速機60を経由してエンジン12の動力が出力軸30に伝達される走行モードが、ベルト走行モードである。出力軸30は、減速歯車装置34、カウンタ軸32、ギヤ36、デフギヤ38、及び車軸40を介して駆動輪14に動力を伝達する。前記動力は、特に区別しない場合には、トルクや力も同意である。
トルクコンバータ20は、周知の流体式動力伝達装置である。トルクコンバータ20はエンジン12から伝達された動力を入力軸22に伝達する。
オイルポンプ44は、トルクコンバータ20のポンプ翼車20pに連結されて配設されている。オイルポンプ44は、エンジン12によって回転駆動されることにより、各種油圧制御のための元圧を油圧制御回路46に供給する。
前後進切替装置26は、第1クラッチC1と、第1ブレーキB1と、ダブルピニオン型の遊星歯車装置26pと、を主体として構成されている。遊星歯車装置26pは、サンギヤ26s、キャリア26c、及びリングギヤ26rを有する。キャリア26cと入力軸22とは、一体的に回転させられるように連結されている。リングギヤ26rは、第1ブレーキB1を介して非回転部材であるケース18に選択的に連結される。サンギヤ26sは、ギヤ機構28を構成する小径ギヤ48に連結されている。サンギヤ26sとキャリア26cとは、第1クラッチC1を介して選択的に連結される。
ギヤ機構28は、小径ギヤ48、大径ギヤ52、ギヤ機構カウンタ軸50、カウンタギヤ54、及び出力ギヤ56を備える。回転中心線CL1は、ギヤ機構カウンタ軸50、大径ギヤ52、及びカウンタギヤ54の共通の回転中心線である。大径ギヤ52は、ギヤ機構カウンタ軸50に相対回転可能に設けられて小径ギヤ48と噛み合っている。大径ギヤ52は、小径ギヤ48よりも大径である。出力ギヤ56は、出力軸30に相対回転不能に設けられている。カウンタギヤ54は、ギヤ機構カウンタ軸50に相対回転不能に設けられて出力ギヤ56と噛み合っている。出力ギヤ56は、カウンタギヤ54よりも大径である。したがって、ギヤ機構28は、入力軸22と出力軸30との間で形成される第1動力伝達経路PT1において、1つのギヤ段を構成して入力軸22の回転速度を変速して出力軸30から出力する有段変速機能を有する。なお、大径ギヤ52とギヤ機構カウンタ軸50との間に選択可能一方向クラッチSOWCが設けられているが、これについては後述する。
無段変速機60は、入力軸22側に設けられた入力側部材である有効径が可変のプライマリプーリ60aと、出力側部材である有効径が可変のセカンダリプーリ60bと、プライマリプーリ60aとセカンダリプーリ60bとの間に巻き掛けられた伝動ベルト60cと、を備える周知のベルト式の無段変速機である。
動力伝達装置16では、第1動力伝達経路PT1における変速比γgear(=入力軸回転速度Nin[rpm]/出力軸回転速度Nout[rpm])は、無段変速機60における最大変速比γcvtmaxよりも大きな値に設定されている。なお、入力軸回転速度Ninは入力軸22の回転速度であり、出力軸回転速度Noutは出力軸30の回転速度である。したがって、第1動力伝達経路PT1が形成されるギヤ走行モードは、車両10が比較的低車速領域にある場合に用いられる走行モードであり、第2動力伝達経路PT2が形成されベルト走行モードは、車両10が比較的高車速領域にある場合に用いられる走行モードである。
第1クラッチC1は、第1動力伝達経路PT1内に設けられて第1動力伝達経路PT1を選択的に断接可能な係合装置である。第1ブレーキB1は、非回転部材であるケース18に選択的に断接可能な係合装置である。第2クラッチC2は、第2動力伝達経路PT2内に設けられて第2動力伝達経路PT2を選択的に断接可能な係合装置である。第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第1ブレーキB1は、例えばいずれも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる公知の油圧式の湿式摩擦係合装置である。第1クラッチC1が係合され且つ第2クラッチC2及び第1ブレーキB1が共に解放されて第1動力伝達経路PT1が形成されると、前進走行が可能となる。第1クラッチC1及び第2クラッチC2が共に解放され且つ第1ブレーキB1が係合されて第1動力伝達経路PT1が形成されると、後進走行が可能となる。第1クラッチC1及び第1ブレーキB1が共に解放され且つ第2クラッチC2が係合されて第2動力伝達経路PT2が形成されると、前進走行が可能となる。
選択可能一方向クラッチSOWCは、第1クラッチC1と出力軸30との間に配設されたギヤ機構28内に設けられた係合装置である。選択可能一方向クラッチSOWCは、一方向ロック状態と両方向ロック状態とが選択可能に構成されている。一方向ロック状態では、車両10が前進走行における駆動状態にある場合にエンジン12から駆動輪14へ動力が伝達される一方、車両10が前進走行における被駆動状態にある場合にエンジン12から駆動輪14へ動力(被駆動力)の伝達が遮断される。両方向ロック状態では、車両10が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でもエンジン12と駆動輪14との間で動力が伝達される。選択可能一方向クラッチSOWCの構造については後述する。なお、「車両10が駆動状態にある」とは、入力軸22のトルクが進行方向を基準とした場合に正の値となる状態、実質的にはエンジン12の動力によって車両10が駆動させられる状態に対応している。また、「車両10が被駆動状態にある」とは、入力軸22のトルクが進行方向を基準とした場合に負の値となる状態、実質的には車両10の慣性によって走行させられ、駆動輪14から伝達される回転によって入力軸22及びエンジン12が連れ回される状態に対応している。
図2は、シフトレバー64(図1参照)によって選択される操作ポジションPOSsh毎の各係合装置の作動状態の組み合わせを示す作動図表である。図2において、「C1」、「C2」、「B1」、及び「SOWC」は、それぞれ第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、及び選択可能一方向クラッチSOWCに対応している。「P(Pポジション)」、「R(Rポジション)」、「N(Nポジション)」、「D(Dポジション)」、及び「M(Mポジション)」は、シフトレバー64によって選択される各操作ポジションPOSshを示している。図2中の「○」は各係合装置が係合状態を示し、空欄は解放状態を示している。ただし、選択可能一方向クラッチSOWCに対応する「SOWC」にあっては、「○」は両方向ロック状態を示し、空欄が一方向ロック状態を示している。
シフトレバー64の操作ポジションPOSshとして、車両停止ポジションであるPポジション、又は、動力伝達遮断ポジションであるNポジションが選択された場合には、図2に示すように、第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び第1ブレーキB1が解放される。これにより、第1動力伝達経路PT1及び第2動力伝達経路PT2のいずれにおいても動力が伝達されないニュートラル状態となる。
シフトレバー64の操作ポジションPOSshとして、後進走行ポジションであるRポジションが選択された場合には、図2に示すように、第1ブレーキB1が係合されるとともに、選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態とされる。第1ブレーキB1が係合されることで、エンジン12から車両後進方向に作用する動力がギヤ機構28に伝達される。このとき、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態であると、エンジン12の動力の伝達が選択可能一方向クラッチSOWCによって遮断されるため、後進走行できない。選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態とされることで、車両後進方向に作用する動力が選択可能一方向クラッチSOWCを介して出力軸30側に伝達されるため、後進走行が可能となる。よって、操作ポジションPOSshとしてRポジションが選択されると、第1ブレーキB1が係合されるとともに選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態とされることで、第1動力伝達経路PT1(ギヤ機構28)を経由して車両後進方向の動力が伝達される、後進用ギヤ段が形成される。
シフトレバー64の操作ポジションPOSshとして、前進走行ポジションであるDポジションが選択された場合には、図2に示すように、第1クラッチC1が係合されるか、或いは、第2クラッチC2が係合される。図2に示す「D1(D1ポジション)」及び「D2(D2ポジション)」は、制御上設定される仮想の操作ポジションであって、操作ポジションPOSshとしてDポジションが選択されると、車両10の走行状態に応じてD1ポジション又はD2ポジションに自動的に切り替えられる。車両停止中を含む比較的低車速領域においては、D1ポジションへ切り替えられ、中車速領域を含む比較的高車速領域においては、D2ポジションへ切り替えられる。
シフトレバー64の操作ポジションPOSshとしてMポジションが選択された場合には、運転者の手動操作によってアップシフト及びダウンシフトに切り替えることが可能となる。すなわち、Mポジションは、運転者の手動操作による変速が可能なマニュアルシフトポジションである。
例えば、操作ポジションPOSshとしてMポジションが選択された状態で、運転者よってダウンシフト側に手動操作されると、第2クラッチC2が解放されると共に第1クラッチC1が係合され、選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態に切り替えられる。このとき、第1動力伝達経路PT1を経由して駆動輪14に動力が伝達される前進用ギヤ段が形成される。選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態に切り替えられることで、選択可能一方向クラッチSOWCにおいて、車両10が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力伝達が可能となる。例えば、惰性走行中は、エンジン12から駆動輪14へ動力(被駆動力)が伝達される被駆動状態となり、駆動輪14から伝達される回転によってエンジン12が連れ回されることによりエンジンブレーキが発生させられる。
例えば、操作ポジションPOSshとしてMポジションが選択された状態で、運転者によってアップシフト側に手動操作されると、第1クラッチC1が解放されると共に第2クラッチC2が係合される。このとき、第2動力伝達経路PT2を経由して駆動輪14に動力が伝達される前進用無段変速段が形成される。
このように、操作ポジションPOSshとしてMポジションが選択されると、運転者の手動操作によって、第1動力伝達経路PT1を経由して動力が伝達される前進用ギヤ段(すなわちギヤ走行モード)、及び、第2動力伝達経路PT2を経由して動力が伝達される前進用無段変速段(すなわちベルト走行モード)のいずれか一方に切り替えられるマニュアルシフトが可能となる。なお、操作ポジションPOSshがMポジションである場合において、ダウンシフトされた場合が図2のM1ポジションに対応し、アップシフトされた場合が図2のM2ポジションに対応している。これらM1ポジション及びM2ポジションは、制御上設定される仮想の操作ポジションであるが、以下において、操作ポジションPOSshがMポジションでダウンシフト側に手動操作された場合には、M1ポジションに切り替えられたと便宜的に記載し、操作ポジションPOSshがMポジションでアップシフト側に手動操作された場合には、M2ポジションに切り替えられたと便宜的に記載する。
ここから、選択可能一方向クラッチSOWCの構造について説明する。
選択可能一方向クラッチSOWCは、回転中心線CL1方向において大径ギヤ52とカウンタギヤ54との間に設けられている。選択可能一方向クラッチSOWCは、回転中心線CL1方向で隣り合うようにして設けられている油圧式の油圧アクチュエータ42によって、一方向ロック状態及び両方向ロック状態のいずれか一方が選択可能に構成されている。
図3は、図1に示す選択可能一方向クラッチSOWCの構造を簡略的に示す図であって、一方向ロック状態に切り替えられた場合の周方向の一部を切断した断面図である。図4は、図1に示す選択可能一方向クラッチSOWCの構造を簡略的に示す図であって、両方向ロック状態に切り替えられた場合の周方向の一部を切断した断面図である。なお、図3及び図4の紙面上下方向が回転方向に対応し、紙面上方が車両後進方向(後進回転方向)に対応し、紙面下方が車両前進方向(前進回転方向)に対応している。図3及び図4の紙面左右方向が、回転中心線CL1方向に対応し、紙面右側が大径ギヤ52側に対応し、紙面左側がカウンタギヤ54側に対応している。
選択可能一方向クラッチSOWCは、円盤状に形成され、ギヤ機構カウンタ軸50の外周側に配置されている。選択可能一方向クラッチSOWCは、入力側回転部材70と、第1出力側回転部材72aと、複数個の第1ストラット74a及び複数個の捩りコイルバネ76aと、第2出力側回転部材72bと、複数個の第2ストラット74b及び複数個の捩りコイルバネ76bと、を含む。
入力側回転部材70、第1出力側回転部材72a、第2出力側回転部材72bは、いずれも円盤状に形成され、回転中心線CL1を中心に回転可能に配置されている。入力側回転部材70は、回転中心線CL1方向において第1出力側回転部材72aと第2出力側回転部材72bとの間に挟まれるようにして配置されている。入力側回転部材70は、ギヤ機構カウンタ軸50に対して相対回転可能に配置されている。入力側回転部材70の外周側には、大径ギヤ52の噛合歯が一体的に形成されている。入力側回転部材70は、ギヤ機構28の小径ギヤ48、前後進切替装置26等を介して、エンジン12に動力伝達可能に連結されている。第1出力側回転部材72a及び第2出力側回転部材72bは、ギヤ機構カウンタ軸50に相対回転不能に設けられることで、ギヤ機構カウンタ軸50と一体的に回転する。第1出力側回転部材72a及び第2出力側回転部材72bは、ギヤ機構カウンタ軸50、カウンタギヤ54、出力軸30、デフギヤ38等を介して駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
入力側回転部材70において第1出力側回転部材72aに対向する面には、周方向で等角度間隔に複数個の第1収容部80aが形成され、それぞれの第1収容部80aには第1ストラット74a及び捩りコイルバネ76aが収容されている。入力側回転部材70において第2出力側回転部材72bに対向する面には、周方向で等角度間隔に複数個の第2収容部80bが形成され、それぞれの第2収容部80bには第2ストラット74b及び捩りコイルバネ76bが収容されている。
第1出力側回転部材72aにおいて入力側回転部材70と対向する面には、周方向で等角度間隔に第1収容部80aと同じ数だけの複数個の第1凹部82aが形成されている。第1出力側回転部材72aの径方向において、第1凹部82aは、入力側回転部材70に形成されている第1収容部80aと同じ位置に形成されている。第1収容部80aと第1凹部82aとの回転位置が一致すると、各第1収容部80aと各第1凹部82aとが、それぞれ回転中心線CL1方向で互いに隣接した状態となる。第2出力側回転部材72bにおいて入力側回転部材70と対向する面には、周方向で等角度間隔に第2収容部80bと同じ数だけの複数個の第2凹部82bが形成されている。第2出力側回転部材72bの径方向において、第2凹部82bは、入力側回転部材70に形成されている第2収容部80bと同じ位置に形成されている。第2収容部80bと第2凹部82bとの回転位置が一致すると、各第2収容部80bと各第2凹部82bとが、それぞれ回転中心線CL1方向で互いに隣接した状態となる。
第1ストラット74aは、所定の厚みを有する板状の部材からなり、図3及び図4の断面で示すように、回転方向(紙面上下方向)に沿って長手状である。第1ストラット74aの長手方向の一端は、捩りコイルバネ76aによって第1出力側回転部材72a側に付勢され、第1凹部82aに形成されている第1壁面84aに当接可能とされている。第1ストラット74aの長手方向の他端は、第1収容部80aに形成されている第1段付部86aに当接している。第1ストラット74aは、第1段付部86aと当接する他端を中心にして回動可能である。
上記のように構成されることで、エンジン12から車両前進方向に作用する動力(図3、図4に示す紙面下方に回転させる動力)が伝達される場合すなわち車両10が前進走行における駆動状態にある場合、第1ストラット74aは、第1ストラット74aの長手方向の一端が第1壁面84aに当接させられるとともに、第1ストラット74aの長手方向の他端が第1段付部86aに当接させられて入力側回転部材70と第1出力側回転部材72aとの相対回転が阻止される。一方、車両10が前進走行における被駆動状態にある場合やエンジン12から車両後進方向に作用する動力(図3、図4に示す紙面上方に回転させる動力)が伝達される場合すなわち車両10が後進走行における駆動状態にある場合には、第1ストラット74aの一端と第1壁面84aとが当接することはなく、入力側回転部材70と第1出力側回転部材72aとの相対回転が許容される。
第2ストラット74bは、所定の厚みを有する板状の部材からなり、図3及び図4の断面で示すように、回転方向(紙面上下方向)に沿って長手状である。第2ストラット74bの長手方向の一端は、捩りコイルバネ76bによって第2出力側回転部材72b側に付勢され、第2凹部82bに形成されている第2壁面84bに当接可能とされている。第2ストラット74bの長手方向の他端は、第2収容部80bに形成されている第2段付部86bに当接している。第2ストラット74bは、第2段付部86bと当接する他端を中心にして回動可能である。
第2出力側回転部材72bには、回転中心線CL1方向に貫通する複数個の貫通穴92が形成されている。各貫通穴92は、回転中心線CL1方向から見て各第2凹部82bと重なる位置に形成されている。各貫通穴92には、それぞれ円柱状のピン94が貫通穴92内を摺動可能に挿し通されている。ピン94の一端は、油圧アクチュエータ42を構成する押圧プレート78に当接しており、ピン94の他端は、周方向の一部が第2凹部82bを通る円環状のリング90に当接している。
リング90は、第2出力側回転部材72bに形成されるとともに周方向で隣り合う第2凹部82bを繋ぐように形成されている複数個の円弧状の溝88に嵌合し、回転中心線CL1方向において第2出力側回転部材72bに対する相対移動が許容されている。
油圧アクチュエータ42は、回転中心線CL1方向において第2出力側回転部材72bと隣接する位置に配置されている。油圧アクチュエータ42は、押圧プレート78と、押圧プレート78を回転中心線CL1方向で第2出力側回転部材72b側に付勢するコイルスプリング96と、ソレノイド弁S0から作動油が供給されることで押圧プレート78を回転中心線CL1方向でカウンタギヤ54側に移動させる推力を発生させる図示しない油圧室と、を備える。
選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態では、油圧アクチュエータ42の前記油圧室にソレノイド弁S0(図1参照)から作動油が供給されない。一方向ロック状態では、図3に示すように、コイルスプリング96の付勢力によって押圧プレート78が回転中心線CL1方向で第2出力側回転部材72b側に移動させられ、押圧プレート78が第2出力側回転部材72bに接触させられる。このとき、ピン94、リング90、及び第2ストラット74bの長手方向の一端が、それぞれ回転中心線CL1方向で入力側回転部材70側に移動させられる。
選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態では、油圧アクチュエータ42の前記油圧室にソレノイド弁S0から作動油が供給される。両方向ロック状態では、図4に示すように、コイルスプリング96の付勢力に抗って押圧プレート78が回転中心線CL1方向でカウンタギヤ54側に移動させられ、押圧プレート78が第2出力側回転部材72bから離れた状態となる。このとき、ピン94、リング90、及び第2ストラット74bの長手方向の一端が、捩りコイルバネ76bの付勢力によって回転中心線CL1方向でカウンタギヤ54側に移動させられる。
上記のように構成されることで、選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態では、第2ストラット74bは、その長手方向の一端が第2壁面84bに当接させられるとともに、その長手方向の他端が第2段付部86bに当接させられて入力側回転部材70と第2出力側回転部材72bとの相対回転が阻止される。一方、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態では、第2ストラット74bの一端と第2壁面84bとが当接することはなく、入力側回転部材70と第2出力側回転部材72bとの相対回転が許容される。
図3に示す選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態では、選択可能一方向クラッチSOWCは以下のように作動する。
車両10が前進走行における駆動状態にある場合は、入力側回転部材70と第1出力側回転部材72aとの相対回転が阻止されることから、車両前進方向に作用する動力が駆動輪14に伝達される。車両10が前進走行における被駆動状態にある場合及び車両10が後進走行における駆動状態にある場合は、入力側回転部材70と第1出力側回転部材72a及び第2出力側回転部材72bとの相対回転が許容されることから、エンジン12と駆動輪14との間での動力の伝達が遮断される。このように一方向ロック状態では、前進走行において、車両10が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、車両10が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向クラッチとして機能する。
図4に示す選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態では、選択可能一方向クラッチSOWCは以下のように作動する。
車両10が前進走行における駆動状態にある場合は、入力側回転部材70と第1出力側回転部材72aとの相対回転が阻止されることから、車両前進方向に作用する動力が駆動輪14に伝達される。車両10が前進走行における被駆動状態にある場合及び車両10が後進走行における駆動状態にある場合は、入力側回転部材70と第2出力側回転部材72bとの相対回転が阻止されることから、エンジン12と駆動輪14との間で動力が伝達される。このように両方向ロック状態では、車両10が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力が伝達される。
選択可能一方向クラッチSOWCでは、半係合状態というものが存在しない。そのため、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態へ切り替えられる場合には、選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_in[rpm]と出力回転速度Nso_out[rpm]との回転数差が大きいすなわち同期が取れていないと、切替ショックが発生する。なお、入力回転速度Nso_inは、選択可能一方向クラッチSOWCに設けられた入力側回転部材70の回転速度である。出力回転速度Nso_outは、選択可能一方向クラッチSOWCに設けられた第1出力側回転部材72a及び第2出力側回転部材72b(以下、特に区別しない場合には、「出力側回転部材72」と記す。)の回転速度である。
図1に戻り、車両10は、電子制御ブレーキ(Electronic Control Brake:ECB)の一部を構成する車輪ブレーキ66,68を備える。車輪ブレーキ66,68には、それらの制動力(被駆動力)を制御する油圧アクチュエータ66a,68aがそれぞれ設けられている。図1では、駆動輪14に設けられた車輪ブレーキ66,68のみが代表して図示されているが、車両10における駆動輪14を含む全車輪(例えば前後左右の4つの車輪)にそれぞれ車輪ブレーキが設けられ、それら全車輪ブレーキにはそれらの制動力を制御する油圧アクチュエータがそれぞれ設けられている。以下、車輪ブレーキ66,68が油圧アクチュエータ66a,68aにより制御される態様を説明するが、実際には全車輪ブレーキがそれぞれの制動力を制御する油圧アクチュエータによって制御される。つまり、全車輪ブレーキ及びそれらを制御する油圧アクチュエータの代表として車輪ブレーキ66,68及び油圧アクチュエータ66a,68aについて説明する。
車輪ブレーキ66,68は、例えば車軸40と一体となって回転する円盤をブレーキパッドで挟み付けその摩擦力で制動力を得る、所謂ディスクブレーキである。車輪ブレーキ66,68におけるディスクブレーキの円盤へのブレーキパッドの押し付け力は、それぞれ油圧アクチュエータ66a,68aによって制御され、車輪ブレーキ66の制動力と車輪ブレーキ68の制動力とを異ならせることが可能である。電子制御ブレーキでは、車輪ブレーキ66,68における制動力の最適な割合が算出され、その割合となるように車輪ブレーキ66,68の制動力がそれぞれ制御される。
電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、エンジン12の出力制御、無段変速機60の変速制御やベルト挟圧力制御、前記複数個の係合装置(C1、B1、C2、SOWC)の各々の作動状態を切り替える油圧制御等を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、油圧制御用等に分けて構成される。
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば、各種回転速度センサ110,112,114,116、アクセル開度センサ120、スロットル弁開度センサ122、シフトポジションセンサ124、及び油温センサ126など)による各種検出信号等(例えば、エンジン回転速度Ne[rpm]、入力軸22の回転速度である入力軸回転速度Ninと同値となるプライマリ回転速度Npri[rpm]、セカンダリ回転速度Nsec[rpm]、車速V[km/h]に対応する出力軸回転速度Nout[rpm]、運転者によるアクセルペダル62の操作量を表すアクセル開度θacc[%]、スロットル弁開度θth[%]、車両10に備えられたシフト切替装置としてのシフトレバー64の操作ポジションPOSsh、油圧制御回路46内の作動油の温度である作動油温THoil[℃]など)がそれぞれ入力される。なお、プライマリ回転速度Npri(=入力軸回転速度Nin)は、タービン翼車20tの回転速度であるタービン回転速度Nt[rpm]とも同値である。電子制御装置100は、プライマリ回転速度Npriとセカンダリ回転速度Nsecとに基づいて無段変速機60の実際の変速比γcvt(=Npri/Nsec)を算出する。
また、電子制御装置100は、タービン回転速度Nt(=プライマリ回転速度Npri)に基づいて、第1クラッチC1が係合された場合における選択可能一方向クラッチSOWCの入力回転速度Nso_in[rpm]を算出する。第1クラッチC1が係合されると、入力軸22、キャリア26c、第1クラッチC1、及び小径ギヤ48を介してタービン翼車20tと入力側回転部材70(大径ギヤ52)とが連結される。そのため、タービン回転速度Ntと小径ギヤ48及び大径ギヤ52の歯数比ρ1(=小径ギヤ48の歯数/大径ギヤ52の歯数)とに基づいて、タービン回転速度Ntと歯数比ρ1との乗算により入力回転速度Nso_in(=Nt×ρ1)が算出される。
また、電子制御装置100は、出力軸回転速度Noutに基づいて、選択可能一方向クラッチSOWCの出力回転速度Nso_out[rpm]を算出する。ギヤ機構カウンタ軸50、カウンタギヤ54、及び出力ギヤ56を介して出力側回転部材72と出力軸30とが連結されている。そのため、出力軸回転速度Noutとカウンタギヤ54及び出力ギヤ56の歯数比ρ2(=カウンタギヤ54の歯数/出力ギヤ56の歯数)とに基づいて、出力軸回転速度Noutに対する歯数比ρ2の除算により出力回転速度Nso_out(=Nout/ρ2)が算出される。
電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、油圧制御回路46など)に各種制御信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御信号Se、無段変速機60の変速やベルト挟圧力等を制御するための油圧制御信号Scvt、前記複数個の係合装置の各々の作動状態を制御するための油圧制御信号Scbs、車輪ブレーキ66,68の制動力を制御するための油圧制御信号Sbrkなど)が、それぞれ出力される。このように、エンジン12から出力されるエンジントルクTeは、電子制御装置100により制御される。
油圧制御回路46は、油圧制御信号Scvtに基づいてプライマリプーリ60a及びセカンダリプーリ60bの有効径を制御する各油圧アクチュエータに制御油圧を供給する。油圧制御回路46は、油圧制御信号Scbsに基づいて係合装置(C1,C2,B1,SOWC)の作動状態をそれぞれ制御する各油圧アクチュエータにソレノイド弁SL1,SL2,SL3,S0から制御油圧をそれぞれ供給する。油圧制御回路46は、油圧制御信号Sbrkに基づいて車輪ブレーキ66,68の制動力を制御する油圧アクチュエータ66a,68aに制御油圧をそれぞれ供給する。このように、車輪ブレーキ66,68の制動力は、油圧制御回路46を介して電子制御装置100により制御される。
電子制御装置100は、変速判定部100a、被駆動トルク算出部100b、トルク判定部100c、回転速度差判定部100d、係合状態判定部100e、係合装置制御部100f、入力回転速度制御部100g、トルク補填制御部100h、及び同期判定部100iを機能的に備える。なお、電子制御装置100は、本発明における「制御装置」に相当する。
変速判定部100aは、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求されたか否かを判定する。「被駆動ダウンシフト変速」とは、車両10が被駆動状態にある場合において第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に動力伝達経路を切り替えるダウンシフト変速である。例えば、アクセル開度θaccが零値にされたことに応じてエンジンブレーキが発揮された状態すなわち車両10が被駆動状態にある場合において、第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に動力伝達経路を切り替える制御を実行することが決定されると、前記要求がされたと判定される。被駆動ダウンシフト変速の実行が要求される前、すなわち第2動力伝達経路PT2が形成されたベルト走行モードでは、選択可能一方向クラッチSOWCは一方向ロック状態とされている。ベルト走行モードにおいて選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態とされるのは、ベルト走行中においてギヤ機構28の大径ギヤ52や小径ギヤ48等の引き摺りをなくすとともに、高車速において大径ギヤ52や小径ギヤ48等が高回転化するのを防止するためである。車両10が被駆動状態にあるため、エンジン12から駆動輪14へ無段変速機60を介して被駆動力が伝達される。なお、後述する回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下となって同期が取れていると判定されるまで、選択可能一方向クラッチSOWCは一方向ロック状態が維持される。
被駆動トルク算出部100bは、被駆動ダウンシフト変速の実行中において駆動輪14に対して出力させる被駆動トルク値Tdvn[Nm]を算出する。被駆動トルク値Tdvnは、被駆動ダウンシフト変速の実行中においてエンジンブレーキの替わりにそれ以外の構成要素でエンジンブレーキに相当する被駆動トルクを出力するのに必要なトルク値である。例えば、現在の車速V及び被駆動ダウンシフト変速後のギヤ段からその被駆動ダウンシフト変速後の被駆動力量が推定されて、被駆動ダウンシフト変速後の被駆動力量が算出される。あるいは、その推定された被駆動力量とその被駆動ダウンシフト変速前の要求駆動力量との中間値が、被駆動ダウンシフト変速後の被駆動力量として算出される。このように算出された被駆動ダウンシフト変速後の被駆動力量に基づいて、被駆動ダウンシフト変速後の被駆動トルク値Tdvnが算出される。
また、被駆動トルク算出部100bは、算出された被駆動トルク値Tdvn分の被駆動トルクを出力させる補填トルク出力装置を決定する。例えば、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態にある場合に、駆動輪14に対して被駆動トルク(制動トルク)を出力可能に配設された車輪ブレーキ66,68が補填トルク出力装置として決定される。被駆動トルク算出部100bは、決定した補填トルク出力装置である車輪ブレーキ66,68のそれぞれから出力させる被駆動トルクの最適な割合を算出し、その割合となるように車輪ブレーキ66,68のそれぞれから出力させる被駆動トルクの被駆動トルク値を算出する。補填トルク出力装置である車輪ブレーキ66,68のそれぞれから出力させる被駆動トルクの被駆動トルク値の合計は、被駆動トルク値Tdvnである。なお、「駆動輪14に対して被駆動トルクを出力可能」とは、駆動輪14に対して直接的に被駆動トルクを出力可能な場合に限らず、例えば従動輪に対して被駆動力を出力可能とすることで車両10の車体を介して駆動輪14に対して間接的に被駆動力が出力可能とされる場合も含まれる。
変速判定部100aにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求されたと判定されると、トルク判定部100cは、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時(被駆動ダウンシフト変速の実行の開始直前)におけるエンジントルクTeが所定のトルク値Te1[Nm]未満であるか否かを判定する。所定のトルク値Te1は、入力回転速度Nso_inを出力回転速度Nso_outに向けて上昇させるのに必要なエンジントルクTeのトルク値として、予め実験的に或いは設計的に定められた値である。
変速判定部100aにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求されたと判定されると、回転速度差判定部100dは、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時に、選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であるか否かを判定する。
回転速度差判定部100dにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時における選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out以上であると判定されると、係合装置制御部100fは、選択可能一方向クラッチSOWCを一方向ロック状態から両方向ロック状態に切り替える。
トルク判定部100cにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時におけるエンジントルクTeが所定のトルク値Te1以上であると判定され、且つ、回転速度差判定部100dにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時に選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であると判定されると、トルク補填制御部100hは、被駆動ダウンシフト変速の実行中において選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態に切り替えられるまで(すなわち、被駆動ダウンシフト変速の実行中においてエンジンブレーキが発揮されていない期間)、被駆動トルク算出部100bで算出された被駆動トルク値Tdvnに基づいて車輪ブレーキ66,68から被駆動トルクを出力するように制御する。そして同期判定部100iは、出力回転速度Nso_outと入力回転速度Nso_inとの差である回転速度差ΔNso[rpm](=Nso_out−Nso_in)が同期判定値ΔNsyn[rpm](>0)以下であるか否かを判定する。なお、同期判定値ΔNsynは、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態に切り替えられても、選択可能一方向クラッチSOWCの耐久性に問題がなく且つ切替ショックが許容範囲内に抑制されるものとして予め実験的に或いは設計的に定められた値である。
トルク判定部100cにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時におけるエンジントルクTeが所定のトルク値Te1未満であると判定され、且つ、回転速度差判定部100dにより被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時に選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であると判定されると、係合状態判定部100eは、第1クラッチC1が係合状態であるか否かを判定する。第1クラッチC1が係合状態であるか否かは、例えば電子制御装置100が第1クラッチC1を係合させる油圧制御信号Scbsを出力しているか否かに基づいて判定される。
係合状態判定部100eにより第1クラッチC1が係合状態であると判定されると、入力回転速度制御部100gは、入力回転速度Nso_inを出力回転速度Nso_outに向けて上昇させる上昇制御を実行する。具体的には、入力回転速度制御部100gは、第1クラッチC1が係合された状態でエンジントルクTeが所定のトルク値Te1未満である場合にはそのエンジントルクTeを所定のトルク値Te1に増加させる。すなわち、入力回転速度制御部100gは、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時にエンジントルクTeが所定のトルク値Te1未満である場合には、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時よりも大きい所定のトルク値Te1にエンジントルクTeを増加させる。
係合状態判定部100eにより第1クラッチC1が係合状態ではない、すなわち解放状態であると判定されると、入力回転速度制御部100gは、係合装置の作動を制御する係合装置制御部100fを介して第2クラッチC2を解放させつつ第1クラッチC1を係合させるクラッチツゥクラッチ変速制御を開始させると共に、第1クラッチC1が係合された状態で入力回転速度Nso_inを出力回転速度Nso_outに向けて上昇させる上昇制御を実行する。
係合装置制御部100fにより第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に動力伝達経路を切り替える被駆動ダウンシフト変速の実行中において、トルク補填制御部100hは、選択可能一方向クラッチSOWCが両方向ロック状態に切り替えられるまで、被駆動トルク算出部100bで算出された被駆動トルク値Tdvnに基づいて車輪ブレーキ66,68から被駆動トルクを出力するように制御する。
入力回転速度制御部100gによる上昇制御が開始されると、同期判定部100iは、出力回転速度Nso_outと入力回転速度Nso_inとの差である回転速度差ΔNso[rpm](=Nso_out−Nso_in)が同期判定値ΔNsyn[rpm](>0)以下であるか否かを判定する。
同期判定部100iにより回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsynよりも大きいと判定されると、出力回転速度Nso_outと入力回転速度Nso_inとの同期が取れていないとして、入力回転速度制御部100gによる上昇制御及びトルク補填制御部100hによる被駆動トルクの出力制御が継続される。
同期判定部100iにより回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下であると判定されると、係合装置制御部100fは、出力回転速度Nso_outと入力回転速度Nso_inとの同期が取れているとして選択可能一方向クラッチSOWCを一方向ロック状態から両方向ロック状態に切り替える。同期が取れているため、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態へ切り替えられても、その切替ショックは許容範囲内に抑制される。この選択可能一方向クラッチSOWCにおける一方向ロック状態から両方向ロック状態への切り替えに伴って、入力回転速度制御部100gは、エンジントルクTeを所定のトルク値Te1未満(例えば零値)に減少させ、且つ、トルク補填制御部100hは、車輪ブレーキ66,68から出力させる被駆動トルクの合計である被駆動トルク値Tdvnを漸減させる。すなわち、被駆動ダウンシフト変速の実行中(第2クラッチC2を解放させつつ第1クラッチC1を係合させるクラッチツゥクラッチ変速制御の開始時点から選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態へ切り替えられるまでの間)に、トルク補填制御部100hは、駆動輪14からエンジン12に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように駆動輪14に対して被駆動トルクを出力するように制御する。
図5は、図1に示す電子制御装置100の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。図5のフローチャートは繰り返し実行される。
変速判定部100aの機能に対応するステップS10において、被駆動ダウンシフト変速の実行が要求されたか否かが判定される。ステップS10の判定が肯定された場合には、ステップS20が実行される。ステップS10の判定が否定された場合には、リターンとなる。
被駆動トルク算出部100bの機能に対応するステップS20において、被駆動トルク値Tdvnが算出される。また、被駆動トルク出力制御用アクチュエータが決定される、例えば被駆動トルク出力制御用アクチュエータとして、車輪ブレーキ66,68の制動力を制御する油圧アクチュエータ66a,68aが決定される。車輪ブレーキ66,68から出力させる制動力の最適な割合が算出され、車輪ブレーキ66,68から出力される被駆動トルクがその割合となるように、それらを制御する油圧アクチュエータ66a,68aへの被駆動トルクの出力指示量がそれぞれ算出される。そしてステップS30が実行される。
トルク判定部100c及び回転速度差判定部100dの機能に対応するステップS30において、エンジントルクTeが所定のトルク値Te1未満であり且つ入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であるか否かが判定される。ステップS30の判定が肯定された場合には、ステップS40が実行される。ステップS30の判定が否定された場合には、ステップS110が実行される。
係合状態判定部100eの機能に対応するステップS40において、第1クラッチC1が係合状態であるか否かが判定される。ステップS40の判定が肯定された場合(既に第2クラッチC2を解放させつつ第1クラッチC1を係合させるクラッチツゥクラッチ変速制御が開始されており、第1クラッチC1が係合状態である場合)には、ステップS60が実行される。ステップS40の判定が否定された場合(未だ第2クラッチC2を解放させつつ第1クラッチC1を係合させるクラッチツゥクラッチ変速制御が開始されていない場合)には、ステップS50が実行される。
入力回転速度制御部100g及び係合装置制御部100fの機能に対応するステップS50において、第2クラッチC2を解放させつつ第1クラッチC1を係合させるクラッチツゥクラッチ変速制御が開始される。そしてステップS60が実行される。
入力回転速度制御部100gの機能に対応するステップS60において、入力回転速度Nso_inを出力回転速度Nso_outに向けて上昇させる上昇制御が実行される。そしてステップS70が実行される。
トルク補填制御部100hの機能に対応するステップS70において、被駆動トルク出力制御用アクチュエータである油圧アクチュエータ66a,68aへの被駆動トルク値Tdvnに基づいた被駆動トルクの出力指示が行われる。これにより、車輪ブレーキ66,68から被駆動トルク値Tdvnに基づいた被駆動トルクが出力される。そしてステップS80が実行される。
同期判定部100iの機能に対応するステップS80において、回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下であるか否かが判定される。ステップS80の判定が肯定された場合には、ステップS90が実行される。ステップS80の判定が否定された場合には、ステップS80が再度実行される。
入力回転速度制御部100gの機能に対応するステップS90において、エンジントルクTeが減少させられる。そしてステップS100が実行される。
トルク補填制御部100hの機能に対応するステップS100において、油圧アクチュエータ66a,68aへの被駆動トルクの出力指示量が零値まで漸減される。そしてステップS120が実行される。
回転速度差判定部100dの機能に対応するステップS110において、入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であるか否かが判定される。ステップS110の判定が否定された場合(入力回転速度Nso_inと出力回転速度Nso_outとの同期が取れている場合)には、ステップS120が実行される。ステップS110の判定が肯定された場合(エンジントルクTeが所定のトルク値Te1以上である場合)には、ステップS70が実行される。
係合装置制御部100fの機能に対応するステップS120において、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態に切り替えられる。そしてリターンとなる。
図6は、被駆動ダウンシフト変速が実行される場合におけるタイムチャートの一例である。
図6において、横軸は時間t[ms]であり、縦軸は上から順に回転速度(入力回転速度Nso_in及び出力回転速度Nso_out)、第1クラッチC1の断接状態を制御するソレノイド弁SL1の状態、第2クラッチC2の断接状態を制御するソレノイド弁SL2の状態、選択可能一方向クラッチSOWCの断接状態を制御するソレノイド弁S0の状態、エンジントルクTe、及び車両10を制御させるトルクであるブレーキトルクTb[Nm]である。回転速度において、実線は入力回転速度Nso_inを示し、一点鎖線は出力回転速度Nso_outを示している。ブレーキトルクTbは、被駆動ダウンシフト変速の実行中においてエンジンブレーキの替わりにそれ以外の構成要素でエンジンブレーキに相当するものとして出力される被駆動トルクである。
時刻t1において、選択された操作ポジションPOSshがM2ポジション(ベルト走行モード)からM1ポジション(ギヤ走行モード)へ切り替えられることで、ソレノイド弁SL2がON状態(第2クラッチC2を係合状態とする制御油圧の供給状態)からOFF状態(第2クラッチC2を解放状態とする制御油圧の供給状態)へ変化させられるとともに、ソレノイド弁SL1がOFF状態(第1クラッチC1を解放状態とする制御油圧の供給状態)からON状態(第1クラッチC1を係合状態とする制御油圧の供給状態)へ変化させられる。また、時刻t1において、エンジントルクTeが時刻t1以前(ベルト走行モード時)よりも増加させられて所定のトルク値Te1とされるとともに、ブレーキトルクTbも時刻t1以前には零値であったものが時刻t1以降は増加させられて被駆動トルク値Tdvnとされる。
時刻t2において、入力回転速度Nso_inがそれ以前よりもイナーシャ相判定値ΔNiner[rpm]だけ上昇し、イナーシャ相が開始されたと判定される。
イナーシャ相が開始されたと判定された時刻t2後であり且つ後述する同期が取れたと判定される時刻t4前である時刻t3において、エンジントルクTeが所定のトルク値Te1から減少させられる。なお、前述の図5のフローチャートでは、回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下となるまで継続してエンジントルクTeが増加させられていたが、図6のタイムチャートのように回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下となる前にエンジントルクTeが減少させられてもその後に同期が取れるのであれば構わない。なお、時刻t1から時刻t3までの期間の長さは、エンジントルクTeが所定のトルク値Te1に増加させられた場合に選択可能一方向クラッチSOWCのおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_outまで上昇させることができるように、予め実験的に或いは設計的に定められた期間である。例えば、時刻t1から時刻t3までの期間の長さは、所定のトルク値Te1と被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された時における出力回転速度Nso_outに応じた車速V及び回転速度差ΔNso(=Nso_out−Nso_in)とに応じて予め記憶されたマップに基づいて定められる。
時刻t4において、回転速度差ΔNsoが同期判定値ΔNsyn以下となり、選択可能一方向クラッチSOWCのおける出力回転速度Nso_outと入力回転速度Nso_inとの同期が取れたと判定される。これにより、時刻t4において、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態から両方向ロック状態へ切り替えられる。この両方向ロック状態への切り替えに伴って、ブレーキトルクTbが零値まで漸減させられる。
本実施例によれば、(a)選択可能一方向クラッチSOWCは、車両10が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、車両10が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向ロック状態と、車両10が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力を伝達する両方向ロック状態と、が選択可能に構成され、(b)車両10が被駆動状態にある場合に第2動力伝達経路PT2から第1動力伝達経路PT1に動力伝達経路を切り替える被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合、選択可能一方向クラッチSOWCにおける入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であるか否かを判定する回転速度差判定部100dと、(c)回転速度差判定部100dにより入力回転速度Nso_inが出力回転速度Nso_out未満であると判定されると、第1クラッチC1が係合された状態で入力回転速度Nso_inを出力回転速度Nso_outに向けて上昇させる上昇制御を実行する入力回転速度制御部100gと、(d)被駆動ダウンシフト変速の実行中に、駆動輪14からエンジン12に伝達される被駆動トルクの減少分である被駆動トルク値Tdvnを補填するように駆動輪14に対して被駆動トルク値Tdvnに基づいた被駆動トルクを出力するように制御するトルク補填制御部100hと、が備えられる。被駆動ダウンシフト変速の実行中におけるエンジン12に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように駆動輪14に対して被駆動トルクが出力されることから、エンジン12に伝達される被駆動トルクの減少に伴う空走感に起因した違和感が抑制される。すなわち、被駆動ダウンシフト変速の実行中においても減速力が継続されることで、車両10における空走感に起因した違和感が抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、前進走行における被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合における空走感に起因した違和感を抑制できる車両用動力伝達装置の制御装置について説明されたが、本発明は、例えば後進走行における被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合にも適用可能である。
前述の実施例では、選択された操作ポジションPOSshがM2ポジション(ベルト走行モード)からM1ポジション(ギヤ走行モード)へ切り替えられる被駆動ダウンシフト変速について説明されたが、この態様に限らない。例えば、選択された操作ポジションPOSshがDポジションである場合においてD2ポジション(ベルト走行モード)からD1ポジション(ギヤ走行モード)へ自動的に切り替えられる被駆動ダウンシフト変速についても本発明は適用可能である。
前述の実施例では、電子制御ブレーキを構成する車輪ブレーキ66,68が補填トルク出力装置として機能させられたが、この態様に限らない。例えば、補填トルク出力装置としては、選択可能一方向クラッチSOWCが一方向ロック状態にある場合に、駆動輪14に対して被駆動トルクを出力可能に配設された回生ブレーキを発揮する回生モータなどの他の構成であっても良い。この回生ブレーキを発揮する回生モータとは、例えば走行中に駆動力源としても用いられるモータを発電機として機能させて回生ブレーキを発揮させる所謂モータジェネレータである。補填トルク出力装置は、駆動輪14に対して被駆動トルクを出力できるように配設されていれば良い。例えば、補填トルク出力装置は、選択可能一方向クラッチSOWCの出力側と駆動輪14との間の動力伝達経路、或いは、第1動力伝達経路PT1と並列に設けられた動力伝達経路、に配設される。また、補填トルク出力装置としては、車輪ブレーキ66,68や回生モータなど複数の構成要素の組み合わせであっても良い。
前述の実施例では、無段変速機60はベルト式無段変速機であったが、この態様に限らない。例えば、パワーローラー式無段変速機など他の形式の無段変速機であっても良い。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両
12:エンジン
14:駆動輪
16:車両用動力伝達装置
60:無段変速機
100:電子制御装置(制御装置)
100d:回転速度差判定部
100g:入力回転速度制御部
100h:トルク補填制御部
C1:第1クラッチ
C2:第2クラッチ
Nso_in:入力回転速度
Nso_out:出力回転速度
PT1:第1動力伝達経路
PT2:第2動力伝達経路
SOWC:選択可能一方向クラッチ

Claims (1)

  1. エンジンと駆動輪との間に、第1動力伝達経路と第2動力伝達経路とが並列に設けられ、前記第1動力伝達経路には第1クラッチ及び選択可能一方向クラッチが設けられ、前記第2動力伝達経路には無段変速機及び第2クラッチが設けられ、前記第1クラッチが前記選択可能一方向クラッチよりも前記エンジン側に配置されている車両用動力伝達装置の、制御装置であって、
    前記選択可能一方向クラッチは、車両が駆動状態にある場合に動力を伝達する一方、前記車両が被駆動状態にある場合に動力の伝達を遮断する一方向ロック状態と、前記車両が駆動状態及び被駆動状態のいずれにある場合でも動力を伝達する両方向ロック状態と、が選択可能に構成され、
    前記車両が被駆動状態にある場合に前記第2動力伝達経路から前記第1動力伝達経路に動力伝達経路を切り替える被駆動ダウンシフト変速の実行が要求された場合、前記選択可能一方向クラッチにおける入力回転速度が出力回転速度未満であるか否かを判定する回転速度差判定部と、
    前記回転速度差判定部により前記入力回転速度が前記出力回転速度未満であると判定されると、前記第1クラッチが係合された状態で前記入力回転速度を前記出力回転速度に向けて上昇させる上昇制御を実行する入力回転速度制御部と、
    前記被駆動ダウンシフト変速の実行中に、前記エンジンから前記駆動輪に伝達される被駆動トルクの減少分を補填するように前記駆動輪に対して被駆動トルクを出力するように制御するトルク補填制御部と、を備える
    ことを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
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