JP2021095806A - 壁面補強塗料及び、塗膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な塗装作業性及び塗装外観を得ることができ、厚膜形成が可能な壁面補強塗料、及び、引張強度が高く、崩落防止性能に優れた塗膜を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の壁面補強塗料は、平均長さが30μmより大きく3000μmより小さいガラス短繊維と、樹脂エマルジョンと、を含み、前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲で含まれることを特徴とする。本発明では、前記ガラス短繊維の平均長さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい。また、前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、30質量%以上50質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、コンクリート壁面に付着してその崩落を防止するために用いる壁面補強塗料及び、塗膜に関する。
下記特許文献には、コンクリートの劣化を防止するための塗料に関する発明が記載されている。
特許文献1に記載の発明では、コンクリートの壁面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成している。
特許文献2に記載の発明には、コンクリートと金属のいずれにも使用でき、エポキシ樹脂塗料及び塩化ビニリデン系樹脂エマルジョンに金属箔片等を加え、更に、ポリアミドアミンを含む硬化剤を組み合わせた劣化防止用塗料が開示されている。
また、特許文献3には、塗膜防水材として、繊維長2〜10mmの短繊維を0.3〜10重量%程度含む発明が開示されている。
特開2019−7312号公報 特開2016−199664号公報 特開2011−226210号公報
コンクリートの崩落防止のために塗膜として重要な性能は、引張強度であるが、それを厚膜塗膜として実現するためには、均一に連続した塗膜が得られないといけない。そのためには、塗装作業性及び塗膜外観が必要な特性と言える。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、良好な塗装作業性及び塗装外観を得ることができ、厚膜形成が可能な壁面補強塗料、及び、引張強度が高く、崩落防止性能に優れた塗膜を提供することを目的とする。
本発明の壁面補強塗料は、平均長さが30μmより大きく3000μmより小さいガラス短繊維と、樹脂エマルジョンと、を含み、前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲で含まれることを特徴とする。
本発明では、前記ガラス短繊維の平均長さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい。
本発明では、前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、30質量%以上50質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
本発明では、前記樹脂エマルジョンは、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、及び、酢酸ビニル−スチレンエマルジョンのうち少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
本発明の壁面補強塗料は、粘稠性を有することが好ましい。
本発明の塗膜は、上記に記載の壁面補強塗料を、壁面に塗布し、乾燥してなることを特徴とする。
本発明の壁面補強塗料によれば、樹脂エマルジョンに、ガラス短繊維を加え、この際、ガラス短繊維の平均長さ及び含有量を調整することで、良好な塗装作業性及び塗装外観を実現でき、厚膜形成が可能となる。そして、本発明の壁面補強塗料を用いた塗膜によれば、引張強度を高めることができ、優れた崩落防止性能を得ることができる。
本実施例と従来例の各塗膜の引張試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明者らは、例えば、コンクリート壁面に強く付着してその崩落を防ぐ厚膜形成可能な壁面補強塗料(耐震塗料ともいう)を得るべく、鋭意研究を重ねた結果、樹脂エマルジョンに、所定長さを有するガラス短繊維を所定量だけ加えることで、崩落防止性能を飛躍的に向上させた壁面補強塗料を開発するに至った。
すなわち、本実施の形態における壁面補強塗料は、(1)平均長さが30μmより大きく3000μmより小さいガラス短繊維と、(2)樹脂エマルジョンと、を含み、ガラス短繊維は、不揮発分に対し、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲で含まれることを特徴とする。ここで、壁面補強塗料には、少なくとも、(1)ガラス短繊維と、(2)樹脂エマルジョンを含み、(3)その他、溶剤等が含まれる。
以下、ガラス短繊維、樹脂エマルジョン、及びその他成分について、詳細に説明する。
<(1)ガラス短繊維>
「ガラス短繊維」とは、平均長さの短いガラス繊維(ガラスファイバー)を指し、具体的には、平均長さが30μmより大きく3000μmより小さいガラス繊維である。
また、「平均長さ」とは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、又は、偏光顕微鏡等で観察し、ほぼ同一の測定深度の横断面にて、ランダムに抽出した10本以上のガラス短繊維の長さを測定し、これら長さを平均して求めることができる。
ガラス短繊維の平均長さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい。より好ましくは、60μm以上250μm以下であり、更に好ましくは、65μm以上200μm以下である。
本実施の形態では、ガラス短繊維の平均長さが30μm以下であると、塗膜として最も重要な引張強度が低下し、一方、ガラス短繊維の平均長さが3000μm以上であると、塗装作業性が悪化し、均一な連続塗膜を得ることができず、引張強度の測定が不可となることが後述する実験によりわかっている。そこで、本実施の形態では、ガラス短繊維の平均長さを、30μmより大きく3000μmより小さい範囲に規定した。また、後述する実施例の平均長さに基づいて、好ましい範囲を、上記のように規定した。
ガラス短繊維は、不揮発分に対し、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲で含まれる。
ここで、「不揮発分」とは、壁面補強塗料中、揮発分以外の成分であって、乾燥塗膜中に構成成分として残存する成分を指す。なお、壁面補強塗料に、ガラス短繊維及び樹脂エマルジョン以外に、不揮発分を添加した場合は、その添加分は除去して「不揮発分」を規定することが好ましい。すなわち、本実施の形態における「不揮発分」とは、樹脂エマルジョン中の不揮発分+ガラス短繊維であることが好ましい。
本実施の形態では、ガラス短繊維は、不揮発分に対し、25質量%以上60質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは、25質量%以上55質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以上50質量%以下である。
本実施の形態では、ガラス短繊維の含有量が、不揮発分中、20質量%以下であると、厚膜形成が困難となり、高い引張強度を得ることができず、70質量%以上であると、塗装作業性が悪化し、また、塗膜外観も悪く凹凸が目立つことが後述する実験によりわかっている。係る場合、伸長率が非常に低く(後述の実験では0%である)、例えば、地震で壁面が揺れたときに、揺れに基づく伸長に追従できず、優れた崩落防止性能を得ることができない。そこで、本実施の形態では、ガラス短繊維の不揮発性分中の含有量を、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲に規定した。また、後述する実施例の含有量に基づいて、好ましい範囲を、上記のように規定した。
限定するものではないが、ガラス短繊維は、例えば、塗料総量の30%質量%〜50質量%程度含まれる。
また、限定するものでないが、ガラス短繊維の平均径(直径の平均値)は、10μm前後である。例えば、ガラス短繊維の平均径を、6μm〜30μm程度とすることができる。また、限定するものではないが、ガラス短繊維のアスペクト比(平均長さ/平均径)を、5〜100程度の範囲とすることができる。また、例えば、ガラス短繊維は、一般的なホウケイ酸アルミナガラス(SiO−Al−B)を適用できる。
<(2)樹脂エマルジョン>
「樹脂エマルジョン」とは、樹脂を含有するエマルジョンを意味し、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、及び、酢酸ビニル−スチレンエマルジョンのうち少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。本実施の形態では、特に、アクリル樹脂エマルジョンを選択することが好適である。上述のガラス短繊維とアクリル樹脂エマルジョンとは親和性が高く、厚膜形成を容易にでき、また、塗膜の優れた耐候性を得ることできる。また、アクリル樹脂エマルジョンは、水性アクリル樹脂エマルジョンであることが好ましい。なお、本実施の形態では、アクリル樹脂エマルジョンに限定するものではなく、厚膜形成及びコスト面を考慮すると、酢酸ビニルエマルジョン、或いは、酢酸ビニル−スチレンエマルジョンを選択することも可能である。
限定するものではないが、樹脂エマルジョンは、不揮発分換算で例えば、塗料総量の20%質量%〜40質量%程度含まれる。
<(3)その他>
本実施の形態における壁面補強塗料は、水を含む溶剤成分を含有する。溶剤成分は、塗料総量の40質量%以下程度である。
また、造膜助剤を含有することができる。造膜助剤は、塗料総量の5質量%以下程度である。造膜助剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、イソホロン等を挙げることができる。
また、本実施の形態における壁面補強塗料には、着色顔料を含めることができる。着色顔料には、酸化チタン、カーボンブラック、その他の金属酸化物顔料を例示することができる。着色顔料は、例えば、塗料総量の0%質量%〜5質量%程度含まれる。
その他、必要に応じて、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、及び増粘剤等を含有することができる。
<本実施の形態における壁面補強塗料>
本実施の形態における壁面補強塗料は、溶剤中に、ガラス短繊維及び、樹脂エマルジョンを含み、或いは、溶剤中に、ガラス短繊維、樹脂エマルジョン及び、その他の添加剤を含む。
壁面補強塗料は、厚膜塗装に適した粘稠性を有することが好ましい。「粘稠性」とは、流動性を有するとともに、厚膜形成に適した適度な粘度を有する性質を言う。これにより、良好な塗装作業性及び塗装外観を得ることができ、均一に連続した厚膜塗膜を得ることができる。
なお、限定するものではないが、本実施の形態における壁面補強塗料は、25℃での粘度が、4000cPより大きく10000cPより小さいことが好ましい。また、25℃での粘度は、5000cP以上9000cP以下であることが好ましく、6000cP以上8000cP以下であることがより好ましい。これにより、より効果的に、良好な塗装作業性及び塗装外観を得ることができる。
<本実施の形態における塗膜>
本実施の形態では、上記にて詳述した壁面補強塗料を、コンクリート壁面に塗布し、乾燥させることで塗膜を得ることができる。「コンクリート壁面」を限定するものでないが、例えば、ブロック塀や、建物、トンネル、橋等の壁面を例示することができる。また、コンクリート壁面に限定されず、煉瓦、タイル等の壁面にも適用することができる。
本実施の形態の塗膜は、少なくとも、ガラス短繊維と、樹脂エマルジョンの不揮発分を含んでいる。本実施の形態では、塗膜を厚膜で形成することができ、限定するものではないが、塗膜の平均膜厚は、0.5〜2.0mm程度である。平均膜厚は、例えば、塗膜断面を走査型電子顕微鏡で観察し、壁面からの法線方向の厚みの平均値で表すことができる。測定箇所はランダムに選んだ複数点(5点以上が好ましい)の膜厚を測定し、平均化する。
本実施の形態の塗膜外観は、凹凸が小さく、略均一な連続塗膜として現れており、美しい外観であることが、後述する実験により証明されている。
また、本実施の形態によれば、平均膜厚1mmの塗膜における隠ぺい率を、90%以上とすることができる。なお、隠ぺい率は、隠ぺい率試験紙を用いて測定することができる。
壁面補強塗料を、壁面に塗布した後の乾燥工程については、自然乾燥であっても加熱乾燥であってもよい。
<本実施の形態における効果について>
本実施の形態の壁面補強塗料によれば、コンクリート壁面に塗布する際、良好な塗装作業性を得ることができ、容易に厚膜形成することができる。本実施の形態では、樹脂エマルジョンの他に、ガラス短繊維を含有し、特に、ガラス短繊維の平均長さと含有量の双方を適正化した。本実施の形態の壁面補強塗料を用いることにより、マスチックローラで、簡単に厚膜塗装が可能であり、高い施工性を確保できる。また、上塗りが不要であり、塗膜表面の凹凸を低減でき、きれいな塗膜外観に仕上げることができる。このように、厚膜で且つ均一な連続膜を形成でき、伸張性を維持したままの高い引張強度を得ることができる。したがって、本実施の形態の壁面補強塗料を用いることで、崩落防止性能を効果的に向上させることができる。
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<ガラス短繊維の平均長さ、及び含有量に関する実験>
以下に示すように、複数の実施例及び比較例を用いて、ガラス短繊維の平均長さ、及び含有量について、引張強度等の実験結果を指標として求めた。
[実施例1]
溶剤(水)中に、水性アクリル樹脂エマルジョン「ボンコートCE8510」(DIC(株)製、不揮発分55質量%)81gと、ガラス短繊維「MF20JH1−20」(旭ファイバーグラス(株)製)19gを混合し、均一になるまでハードミキサーでよく攪拌して、壁面補強塗料を得た。なお、ガラス短繊維の平均長さは、200μmであった。
ここで、「ボンコートCE8510」の不揮発分は、55質量%であるから、この壁面補強塗料の不揮発分は、63.55g(水性アクリル樹脂エマルジョンの不揮発分44.55gと、ガラス短繊維19g)である。したがって、ガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約30質量%(=19/63.55)であった。
上記の壁面補強塗料を、シリコンオイルを塗布した平板ガラスに、アプリケーターで塗布して、常温で7日間乾燥し、膜厚1mmの引張強度試験用の塗膜(フィルム)を得た。
[実施例2]
実施例1の「ボンコートCE8510」を64.5g、「MF20JH1−20」を35.5gとした以外は、実施例1と同様に調製して塗膜を得た。なお、実施例2におけるガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約50質量%であった。
[実施例3]
実施例1の「ボンコートCE8510」を64.5gとし、ガラス短繊維を「MF20JH1−20」から「MF06JB1−20」(旭ファイバーグラス(株)製)35.5gに変更した以外は実施例1と同様に調製して塗膜を得た。ガラス短繊維の平均長さは、65μmであった。なお、実施例3におけるガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約50質量%であった。
[比較例1]
実施例1の「ボンコートCE8510」を87.9g、「MF20JH1−20」を12.1gとした以外は、実施例1と同様に調製して塗膜を得た。なお、比較例1におけるガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約20質量%であった。
[比較例2]
実施例1の「ボンコートCE8510」を43.9g、「MF20JH1−20」を56.1gとした以外は、実施例1と同様に調製して塗膜を得た。なお、比較例2におけるガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約70質量%であった。
[比較例3]
実施例1のガラス短繊維を「MF20JH1−20」から「MF03JB1−20」(旭ファイバーグラス(株)製)とした以外は、実施例1と同様に調製して塗膜を得た。したがって、ガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約30質量%であった。また、ガラス短繊維の平均長さは、30μmであった。
[比較例4]
実施例1のガラス短繊維を「MF20JH1−20」から「ECS03−615」(セントラル硝子(株)製)とした以外は、実施例1と同様に調製して塗膜を得た。したがって、ガラス短繊維の不揮発分に占める比率は、約30質量%であった。また、ガラス短繊維の平均長さは、3000μmであった。
上記の実施例1〜3、及び比較例1〜4の各壁面補強塗料の成分等について、以下の表1にまとめた。
Figure 2021095806
実験では、実施例1〜3、及び比較例1〜4の引張強度試験用の塗膜を用いて、JIS K5600−5−7に準拠した引張強度及び伸長率を求めた。
更に、砂骨ローラー標準目タイプ(大塚刷毛製造(株)製)を用い、壁面塗装を前提として垂直に固定した平滑セメント板上に、実施例1〜3、及び比較例1〜4の壁面補強塗料を塗り拡げて、塗装作業性を判定するとともに、塗膜外観を目視にて判定した。
以下の表2に実験結果を示す。
Figure 2021095806
実施例1〜3は、いずれも高い伸張率及び引張強度を得ることができた。ここで、実施例1〜3は、塗装作業性が良好であり、また、塗膜外観が美しかった。これら特性は、厚膜形成、ひいては、高い引張強度を得るうえで必要とされる。
なお、塗装作業性は、市販の砂骨ローラーで垂直面に塗布して2回以内に容易に下地を被覆できた場合に「良好」と判定し、塗布ができるもののそれ以外であると「悪い」と判定し、下地の被覆ができなかった場合に「厚膜困難」と判定した。また、塗装外観は、平滑で垂れ現象もみられない場合に「美しい」と安定し、マスチック調の凹凸が顕著な場合に「凹凸顕著」と判定し、ムラが多く均一な塗膜が形成されていない場合に「均一膜不可」と判定した。
以上により、塗装作業性が良好で、塗膜外観が美しく、引張強度が高いサンプルは、実施例1〜3であった。実施例に対し、比較例1は、ガラス短繊維の質量比率が低すぎて、塗装作業性において「厚膜困難」となり、高い引張強度を得ることができなかった。また、比較例2は、ガラス短繊維の質量比率が高すぎて、塗装作業性が悪化し、また塗膜外観も凹凸顕著と判定され、引張強度は比較的高い値であったものの伸張率が0%であり、耐震性能の悪い塗膜であった。また、比較例3は、ガラス短繊維の平均長さが短すぎて、高い引張強度を得ることができなかった。また、比較例4は、ガラス短繊維の平均長さが長すぎて、塗膜作業性が悪く、また塗膜外観も均一膜不可と判定され、引張強度及び伸張率が測定不可であった。
以上により、比較例の範囲が外れるように、ガラス短繊維の平均長さを30μmより大きく3000μmより小さいと規定し、また、不揮発分に対するガラス短繊維の含有量を、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲と規定した。
また、実施例1〜3の構成に基づいて、ガラス短繊維の平均長さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい範囲に設定した。また、ガラス短繊維は、不揮発分に対し、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい範囲とした。
<引張強度試験>
次に、JIS K5600−5−7に準拠した引張強度試験を、市販の複層弾性塗材(JIS A6909準拠の防水塗材:以下、「従来例」と言う)と比較した。実験で用いた実施例には、上記の実施例1同じ塗料を用いた。その実験結果が図1に示されている。
図1に示すように、実施例は、従来例と同等以上の伸張率を有するとともに、伸張に2倍以上の荷重を要することがわかった。このように、本実施例では、伸張率は従来例と同等以上で且つ、従来例よりも非常に高い引張強度を得ることができた。
<耐摩耗試験>
次に、JIS K7204に準拠したテーバー形摩耗試験機を使用して、上記の引張強度試験で用いた実施例及び従来例の各塗膜の耐摩耗性を調べた。なお、実験では、CS−10(ダイトロン(株)製)摩耗輪を用いた。以下に実験結果を示す。
Figure 2021095806
表3は、回数数と、摩耗による重量減との関係について記載されている。一般的には、回転の摩擦熱で、回転数が多くなるほど、摩擦減量も多くなるが、実施例は、さほど重量が減少しておらず、安定した塗膜性能を有することがわかった。
<水分、塩分透過性の測定>
次に、10cm×10cm×5cmのモルタルブロックを作製し、その表面に、上記の引張強度試験で用いた実施例及び従来例の塗料を夫々、塗布して、飽和食塩水に8週間浸漬させた。そして、水分の浸透による重量増加と浸透した塩分(塩化ナトリウム(NaCl換算)、JIS A1154準拠)を測定した。以下に実験結果を示す。
Figure 2021095806
表4に示すように、実施例では、従来例に比べて、水分の浸透による重量の増加が小さく、且つ、浸透した塩分量も少なかった。これにより、本実施例は、従来例と比較して、高い防水性能及び塩害防止性能を有することがわかった。
本発明によれば、塗装作業性に優れ、良好な塗装外観を得ることができ、厚膜形成が可能である。そして、本発明では、高い引張強度とともに、耐摩擦性及び耐候性にも優れ、長期間にわたって優れた崩落防止性能を得ることができる。
本発明によれば、コンクリート壁面への塗装により、優れた崩落防止性能を発揮することができる。

Claims (6)

  1. 平均長さが30μmより大きく3000μmより小さいガラス短繊維と、
    樹脂エマルジョンと、
    を含み、
    前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、20質量%より大きく70質量%より小さい範囲で含まれることを特徴とする壁面補強塗料。
  2. 前記ガラス短繊維の平均長さは、50μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の壁面補強塗料。
  3. 前記ガラス短繊維は、不揮発分に対し、30質量%以上50質量%以下の範囲で含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面補強塗料。
  4. 前記樹脂エマルジョンは、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、及び、酢酸ビニル−スチレンエマルジョンのうち少なくともいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の壁面補強塗料。
  5. 粘稠性を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の壁面補強塗料。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の壁面補強塗料を、壁面に塗布し、乾燥してなることを特徴とする塗膜。
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