JP2021093501A - 電子部品搭載基板、及びこれを用いた電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】PCT密着性、基板保護性、工程作業性に優れ、信頼性の高い電子部品搭載基板、及びそれを用いた電子機器を提供すること。【解決手段】基板と、前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、前記基板および前記電子部品の少なくとも一部を被覆した保護層と、を備え、前記保護層は、バインダー樹脂と鱗片状金属フィラーとを含み、135℃、85%RH、0.23MPa、96時間のプレッシャークッカーテスト後の前記保護層表面の水との接触角が90〜130°である電子部品搭載基板により解決される。【選択図】図1

Description

本発明は、保護層を有する電子部品搭載基板に関する。また前記電子部品搭載基板が搭載された電子機器に関する。
スマートフォン、ウェアラブル機器をはじめとする端末系の電子機器は多種多様な環境で使用されることから、過酷な条件下でも誤作動を生じることの無いよう、高い信頼性が求められている。これら電子機器には半導体素子等の電子部品が搭載されている。半導体素子等の電子部品は通常、基板上に形成され外部からの物理的ダメージ、熱や光、湿度による劣化を防止するため、予めエポキシ樹脂等で封止された状態で電子機器に用いられている。
特開2003−145687号公報
特許文献1には電子部品の湿度による劣化を抑制するための電子機器部品用防湿シートが開示されている。上記シートでは、例えばプレッシャークッカーテスト(以下、「PCT」と略記することもある。)のような厳しい環境試験では電子部品や基板の樹脂成分が劣化し、シートが剥離する問題があった(以下、PCT後の密着性のことを「PCT密着性」と表記することがある。)。また基板の劣化に伴い反りが発生するといった問題があった(以下、前記基板の反りにくさのことを「基板保護性」と表記することがある。)。
さらに、後工程であるダイシング工程や実装工程の際に当該電子部品をダイシングテープで固定、剥離するための最適な表面特性が求められていた。(以下、前記ダイシングテープで固定した後、剥離する際の適性のことを「工程作業性」と表記することがある。)。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、PCT密着性、基板保護性、工程作業性に優れ、信頼性の高い電子部品搭載基板、及びそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、
本発明は、
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、
前記基板および前記電子部品の少なくとも一部を被覆した保護層と、
を備え、
前記保護層は、バインダー樹脂と鱗片状金属フィラーとを含み、
135℃、85%RH、0.23MPa、96時間のプレッシャークッカーテスト後の前記保護層表面の水との接触角が90〜130°である電子部品搭載基板に関する。
前記保護層のマルテンス硬さは、50〜250N/mm2であることが好ましい。
また、前記保護層のガラス転移温度は、20〜100℃であることが好ましい。
また、前記保護層は、ISO 25178−2:2012に準拠して求めた展開界面面積率(Sdr)が1.0%〜4.0%であり、かつ最大谷深さ(Sv)が1.5μm〜4.5μmであることが好ましい。
また、前記保護層は、更に、
デンドライト状金属フィラーまたは針状金属フィラーを含むことが好ましい。
さらに、本発明は、前記電子部品搭載基板が搭載された、電子機器に関する。
上記構成の本発明によれば、PCT後でも基板や電子部品の劣化が少なく、長期信頼性に優れた電子部品搭載基板、及びそれを用いた電子機器を提供できるという優れた効果を奏する。
電子部品搭載基板の一例を示す模式的斜視図。 図1のII−II切断部断面図。 電子部品搭載基板の別の一例を示す模式的断面図。 積層体の一例を示す模式的断面図。 電子部品搭載基板の製造工程の一例を示す模式的断面図。 電子部品搭載基板の製造工程の一例を示す模式的断面図。 電子部品搭載基板の製造工程の一例を示す模式的断面図。 実施例で使用した試験基板を示す模式的断面図
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書におけるシートとは、JISにおいて定義されるシートのみならず、フィルムも含むものとする。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。本明細書中に記載される各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
<電子部品搭載基板>
図1に、本発明に係る電子部品搭載基板の一例を示す模式的斜視図を、図2に図1のII−II切断部断面図を示す。電子部品搭載基板51は、基板20、電子部品30および保護層1等を有する。
<基板>
基板20は、電子部品30を搭載可能であり、且つ後述する熱圧着工程に耐え得るものであればよく、任意に選択できる。例えば銅箔等からなる導電パターンが表面又は内部に形成されたワークボード、実装モジュール基板、プリント配線板またはビルドアップ法等により形成されたビルドアップ基板が挙げられる。また、フィルムやシート状のフレキシブル基板を用いてもよい。前記導電パターンは、例えば、電子部品30と電気的に接続するための電極・配線パターン(不図示)、保護層1と電気的に接続するためのグランドパターン22である。基板内部には電極・配線パターン、ビア(不図示)等を任意に設けることができる。基板20はリジッド基板のみならず、フレキシブル基板であってもよい。
<電子部品>
電子部品30は、図1の例においては基板20上に5×4個アレイ状に配置されている。そして、基板20および電子部品30の露出面を被覆するように保護層1が設けられている。即ち、保護層1は、電子部品30により形成される凹凸に追従するように被覆されている。保護層1により、電子部品30または基板20を高温高湿環境や物理的衝撃から保護する。また、保護層1が導電性を有する場合、電子部品30または基板20に内蔵された信号配線等から発生する不要輻射を遮蔽し、また、外部からの磁場や電波による誤動作を防止できる。
電子部品30の個数、配置、形状および種類は任意である。アレイ状に電子部品30を配置する態様に代えて、電子部品30を任意の位置に配置してもよい。電子部品搭載基板51を単位モジュールに個片化する場合、図2に示すように、基板上面から基板の厚み方向に単位モジュールを区画するように基板20中にハーフダイシング溝25を設けてもよい。なお、本発明における電子部品搭載基板は、単位モジュールに個片化する前の基板、および単位モジュールに個片化した後の基板の両方を含む。即ち、図1、図2のような複数の単位モジュール(電子部品30)が搭載された電子部品搭載基板51の他、図3のような単位モジュールに個片化した後の電子部品搭載基板52も含む。本発明においては、図3に示すように1つのみの単位モジュールを含むように個片化されてもよく、2つ以上の単位モジュールを含むように個片化されてもよい(不図示)。無論、個片化工程を経ずに、基板20上に1つの電子部品30を搭載し、保護層1で被覆した電子部品搭載基板も含まれる。即ち、本発明に係る電子部品搭載基板は、基板上に少なくとも1つの電子部品が搭載されており、電子部品の搭載により形成された段差部の少なくとも一部を保護層1が被覆した構造を包括する。
電子部品30は、半導体集積回路等の電子素子がエポキシ樹脂等の絶縁体により一体的に被覆された部品全般を含む。例えば、集積回路(不図示)が形成された半導体チップ31(図3参照)が封止材(モールド樹脂32)によりモールド成型されている態様がある。基板20と半導体チップ31は、これらの当接領域を介して、又はボンディングワイヤ33、はんだボール(不図示)等を介して基板20に形成された配線又は電極21と電気的に接続される。電子部品は、半導体チップの他、インダクタ、サーミスタ、キャパシタおよび抵抗等が例示できる。
電子部品30および基板20は、公知の態様に対して広く適用できる。図3の例においては、半導体チップ31は、インナービア23を介して基板20の裏面にはんだボール24が接続されている。また、基板20内には、保護層1が導電性を有する場合、保護層1と電気的に接続するためのグランドパターン22が形成されていてもよい。また、電子部品30内には、単数又は複数の電子素子等を搭載できる。
<保護層>
保護層は、バインダー樹脂と鱗片状金属フィラーとを含み、135℃、85%RH、0.23MPa、96時間のプレッシャークッカーテスト後の前記保護層表面の水との接触角(以後、「PCT後の水接触角」と略記することがある。)が90〜130°である。保護層は保護シートから形成される。保護シートは鱗片状金属フィラーと、熱硬化性樹脂とを含有する組成物(以後、この組成物を「保護シート形成用組成物」とも表記する。)を混合攪拌し、離形性基材上に塗工し、溶剤などを含んでいる場合には必要に応じて乾燥することで形成することができる。また後述する離形性クッション部材3に直接塗工し、溶剤などを含んでいる場合には必要に応じて乾燥する方法でも形成することができる。
《バインダー樹脂》
本発明におけるバインダー樹脂は、熱硬化性樹脂が硬化したものである。熱硬化性樹脂は、反応性官能基を有する。上記に加え硬化剤を併用できる。また、自己架橋性樹脂や互いに架橋する複数の樹脂を用いてもよい。また、これらの樹脂に加えて、保護シート形成用組成物中で反応性を有しない熱可塑性樹脂を併用してもよい。
なお、保護シートの段階で架橋が一部形成されてBステージ(半硬化した状態)となっていてもよい。例えば、熱硬化性樹脂と硬化剤の一部が反応して半硬化した状態が含まれていてもよい。
熱硬化性樹脂の好適な例は、反応性官能基を有するポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂系、フェノキシ系樹脂、ポリウレタンウレア系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネートイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂およびポリエーテルエステル系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、リフロー時における過酷な条件で使用する場合の熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンウレア系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシエステル系樹脂のうち少なくとも一つを含んでいることが好ましい。また、ポリカーボネート骨格を有する樹脂を用いることにより耐PCT密着性(プレッシャークッカーテスト後における保護層と基板との密着性)が向上する。
熱硬化性樹脂は、1種単独で用いても良く、または任意の比率で2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート骨格を有する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂の他、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂およびポリイミド樹脂が例示できる。例えば、ポリカーボネートイミド樹脂によれば、ポリイミド骨格を有することにより、耐熱性、絶縁性および耐薬品性を高めることができる。一方、ポリカーボネート骨格を有することにより、PCT密着性と基板保護性を効果的に高めることができる 。
ポリカーボネートウレタン樹脂に用いるポリオール成分として、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ノナンジオール、又は2−メチル−1,8−オクタンジオール等のジオールが好ましい。上記ポリオールは、1種のみを用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
上記熱硬化性樹脂として、加熱による架橋反応に利用できる官能基を複数有していてもよい。反応性官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基等が挙げられる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂の反応性官能基と架橋可能な官能基を有している。架橋することで密着性をより強固にし、PCT密着性を向上させることができる。硬化剤は、エポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、ポリカルボジイミド化合物、アジリジン化合物、ジシアンジアミド化合物、イミダゾール化合物、芳香族ジアミン化合物等のアミン化合物、フェノールノボラック樹脂等のフェノール化合物、有機金属化合物等が好ましい。硬化剤は、樹脂であってもよい。この場合、熱硬化性樹脂と硬化剤との区別は、含有量の多い方を熱硬化性樹脂とし、含有量の少ない方を硬化剤として区別する。
上記エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の性状としては、液状および固形状を問わない。エポキシ化合物としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ化合物、グリジシルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物等が好ましい。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、α−ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
環状脂肪族(脂環型)エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。また、液状のエポキシ化合物を好適に用いることができる。
イミダゾール化合物は、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらの中でも、保護シートの熱溶融後に硬化を開始させる観点から潜在性硬化促進剤が好ましい。
硬化剤の構造、分子量は用途に応じて適宜選択できる。保護シートの柔軟性を向上させる観点からは、分子量の異なる2種類以上の硬化剤を用いることが好ましい。2種以上の硬化剤を用いることにより、保護層内で十分な3次元架橋構造が構築され、PCT密着性が向上できる。
硬化剤は、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜70質量部含むことが好ましく、3〜65質量部がより好ましく、3〜60質量部が更に好ましい。硬化剤を2種以上併用する場合には、主となる硬化剤を熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜60質量部含むことが好ましく、10〜60質量部含むことがより好ましく、20〜60質量部含むことが更に好ましい。
保護シート形成用組成物中で反応性を有しない熱可塑性樹脂の好適な例は、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリエーテル、ウレタン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、ポリアミド、エステルアミド系樹脂、ポリイソプレン、およびセルロースが例示できる。粘着付与樹脂としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂環式系石油樹脂、および芳香族系石油樹脂等が例示できる。また、導電性ポリマーを用いることができる。導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンが例示できる。
《鱗片状金属フィラー》
鱗片状金属フィラーは、鱗片状の金属粉であって、本発明においてはプレート状、薄片状、板状と称されるものも含む。フィラーの周囲に切れ込み等が存在してもよい。
鱗片状金属フィラーの平均粒子径D50は、0.1μm〜100μmが好ましく、0.5μm〜70μmがより好ましく、1.0μm〜40μmが更に好ましい。鱗片状金属フィラーの厚みは、0.05μm〜3μmが好ましく、0.07μm〜1.5μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが更に好ましい。ここで鱗片状金属フィラーの厚みは電子顕微鏡で千倍〜5万倍程度に拡大した画像を元に異なる粒子を約10〜20個を測定し、その平均値を使用したものである。
鱗片状金属フィラーの好適な金属の種類としては、金、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀コート銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉等のコアシェル型フィラーが例示できる。優れた導電特性を得る観点から、銀又は銅を含有する鱗片状金属フィラーが好ましい。コストの観点からは、銅粉を銀で被覆した銀コート銅粉が特に好ましい。
銀コート銅粉における銀の含有量は、銀および銅の合計100質量%中、3〜20質量%が好ましく、より好ましくは8〜17質量%であり、更に好ましくは10〜15質量%である。コアシェル型フィラーの場合、コア部に対するコート層の被覆率は、平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。コア部は非金属でもよいが、導電性の観点からは導電性物質が好ましく、金属であることがより好ましい。
鱗片状金属フィラーとして、電磁波吸収フィラーを用いてもよい。例えば、鉄、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Si合金、Fe−Al合金、Fe−Cr−Si合金、Fe−Cr−Al合金、Fe−Si−Al合金等の鉄合金、Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Cu−Znフェライト、Mg−Mn−Srフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライト系物質などが挙げられる。
保護層は更に、デンドライト(樹枝)状フィラー、針状フィラー、ブドウ状フィラー、繊維状フィラー、球状フィラーなどといった他の形状の金属フィラーを含有させることが好ましい。より好ましくは針状フィラーまたはデンドライト状フィラーを含有させる。鱗片状金属フィラーとデンドライト状金属フィラーを併用することにより、表面形状度を最適化し、工程作業性を高めることができる。
ここで、針状とは長径が短径の3倍以上のものをいい、いわゆる針形状の他、紡錘形状、円柱形状等も含む。また、デンドライト状とは、電子顕微鏡(500〜20、000倍)で観察した際に、棒状の主軸から複数の分岐枝が2次元的または3次元的に延在した形状をいう。デンドライト状は、前記分岐枝が折れ曲がったり、分岐枝から更に分岐枝が延在していてもよい。
これら金属フィラーは、単独で、または2種類以上を混合して用いられる。例えば、鱗片状金属フィラーと球状金属フィラーとの組み合わせ、鱗片状金属フィラーとデンドライト状金属フィラーとの組み合わせ、鱗片状金属フィラーと針状金属フィラーとの組み合わせ、鱗片状金属フィラー、デンドライト状金属フィラーおよび針状金属フィラーの組み合わせが例示できる。これらに更にナノサイズの球状金属フィラーを併用してもよい。
鱗片状金属フィラーを用いると保護層表面の硬度が高くなる傾向にあり、球状、デンドライト状フィラーはマルテンス硬さが低くなる傾向にある。また、鱗片状金属フィラーの含有量が多くなるとマルテンス硬さが高くなる傾向にある。更に、保護層内に鱗片状金属フィラーが存在することで保護層表面の撥水性が向上し、基板保護性が向上する。
銀や銅からなる導電性の高い鱗片状金属フィラーや、電磁波吸収フィラーを含有させることで電磁波シールド性を付与できる。
導電性の高い鱗片状金属フィラーを含有する場合、保護層の抵抗値は200mΩ以下であることが好ましく、100mΩ以下がより好ましく、50mΩ以下がさらに好ましい。上記数値範囲とすることで、優れた電磁波シールド性を発現させることができる。
また、鱗片状金属フィラーと、デンドライト状金属フィラーまたは針状金属フィラーとを併用することによって、金属フィラー同士の接触点を多くし、電磁波シールド性を向上させることができる。
鱗片状金属フィラーの含有量は、保護層の固形分(100質量%)中、40〜85質量%であることが好ましく、50〜80質量%がより好ましい。
保護層中の金属フィラーの合計100質量%に対して、針状金属フィラーまたはデンドライト状金属フィラーは、両者の合計で0.5〜50質量%含有させることが好ましい。より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは2〜35質量%、特に好ましくは3〜30質量%である。0.5〜50%質量以下含有させることで、PCT後の膜強度がより優れた保護シートを提供することができる。
針状金属フィラーの平均粒子径D50は2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。デンドライト状金属フィラーの平均粒子径D50の好ましい範囲も同様に、2〜100μmが好ましく、2〜80μmがより好ましい。更に好ましくは3〜50μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法により測定できる。具体的には、例えば、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、各導電性フィラーを測定して得た数値であり、フィラーの積算値が50%である粒度の直径である。なお、屈折率の設定は1.6として測定する。
保護層は、さらに着色剤、難燃剤、無機添加剤、滑剤、ブロッキング防止剤等を含んでいてもよい。
着色剤としては、例えば、有機顔料、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。品質安定性の観点から有機顔料が好ましい。着色力と分散安定性の観点からは、カーボンブラックが特に好ましい。
難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、りん含有難燃剤、窒素含有難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。
無機添加剤としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、タルク、セラミック等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪族アルコール、金属石鹸、変性シリコーン等が挙げられる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、ポリメチルシルセスキオサン、ケイ酸アルミニウム塩等が挙げられる。
数十nmから数百nm程度の粒径の小さな添加剤を用いるとバインダー樹脂が補強され、硬化後の硬度が増すことでよりPCT密着性に優れる保護層を提供できる。
<水接触角>
本願における保護層は、PCT後の水接触角が90〜130°である。PCT後の水接触角は95〜125°が好ましく、100〜120°がより好ましい。90°以上では保護層の撥水性が向上しPCT密着性が向上する。また、130°以下ではダイシングテープとの密着性が向上し工程作業性が向上する。
PCTは高圧、高温、高湿下での耐性試験であり、PCT後の保護層表面の水の接触角を90°以上に保つことで、保護層内の電子部品や基板への水の浸透を抑制できる。その結果これら電子部品や基板の劣化を著しく抑制すると考えられる。
PCT後の水接触角を90〜130°とするためにはバインダー樹脂の疎水性と親水性のバランスを調整する。また使用する鱗片状金属フィラー表面の疎水性と親水性のバランスを調整する。
保護シートに耐水性、耐熱性の高い熱硬化性樹脂や硬化剤を含有させることで、また疎水処理された金属フィラーや着色剤等を添加することで、熱硬化後の保護層の耐加水分解性、耐吸湿性が高まりPCT後の水接触角が低下しにくくなる。
<マルテンス硬さ>
保護層のマルテンス硬さは、50〜250N/mmが好ましく、80〜240N/mmがより好ましく、105〜230N/mmがさらに好ましい。50N/mmより小さい場合には保護層の耐傷性が悪く、また密着性が低い。250N/mmを超える場合、加工後に衝撃によるクラックが発生することがある。
マルテンス硬さは、フィッシャースコープH100C(フィッシャー・インストルメンツ社製)型硬度計を用いて測定する。マルテンス硬さは耐傷性やPCT後の電子部品搭載基板の反りに影響する。
保護層のマルテンス硬さは、バインダー成分の硬さ、および金属フィラーの種類、添加量により調整が可能である。バインダー成分の硬さは、その構成材料である熱硬化性樹脂の硬化物の硬さが反映されるため、樹脂種の選択により所望のマルテンス硬さが得られやすい。さらに、金属フィラーの含有量が多いほどマルテンス硬さは高くなるが、その効果は鱗片状金属フィラーにおいて特に顕著に見られ、球状金属フィラー、デンドライト状金属フィラーについては、その効果は、鱗片状金属フィラーよりは劣る。
<ガラス転移温度>
保護層のガラス転移温度は、20℃〜100℃が好ましく、30℃〜80℃がより好ましく、40℃〜60℃が更に好ましい。保護層のガラス転移温度を上記範囲に調整することで、高い密着性と基板保護性を両立することができる。ガラス転移温度が20℃以上では保護層の膜の強度が確保され、PCT後においても硬度が維持される。ガラス転移温度が100℃以下では保護層は熱収縮が少なく、保護層の剥離が抑制される。
<展開界面面積率(Sdr)、最大谷深さ(Sv)>
展開界面面積率(Sdr)は、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表すパラメーターである。Sdrは完全な平面、すなわち凹凸がまったく無い状態において値は0を示し、表面が荒れているほど高い値を示す。Sdrは鱗片状金属フィラーの粒子径及び含有量を変更することで調整できる。
最大谷深さ(Sv)は、表面の平均面からの高さの最小値の絶対値であり、凹凸の深さを示すパラメーターである。Svは金属フィラーの形状と平均粒子径D50およびその配合量、並びに熱硬化性樹脂の加熱軟化時の粘度を変更することによって調整できる。金属フィラーは、鱗片状金属フィラーとデンドライト状金属フィラーや針状金属フィラーを併用することが好ましい。
保護層の表面のSdrは1.0%〜4.0%が好ましく、1.5%〜3.5%がより好ましく、2.0%〜3.0%が更に好ましい。最大谷深さ(Sv)は、1.5μm〜4.5μmが好ましく、2.0μm〜4.0μmがより好ましく、2.5μm〜3.5μmが更に好ましい。
SdrおよびSvを上記範囲とすることで、工程作業性が向上する。即ち、保護層の凹凸の深さと表面積が適度に調整されることで、ダイシングテープとの適度な密着性を付与し、ピックアップ時やダイシング工程時においても剥がれることなく、上記工程後には保護層を傷つけず剥がすことができる。
<電子部品搭載基板の製造方法>
以下、電子部品搭載基板の製造方法の一例について図面を用いて説明する。但し、本発明の電子部品搭載基板の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
電子部品搭載基板の製造方法は、[a]基板20に電子部品30を 搭載する工程と、[b]電子部品30が搭載された基板20上に保護シート2を載置する工程と、[c]電子部品30の搭載により形成された段差部の側面および基板20の露出面の少なくとも一部に追従するように熱圧着によって保護シート2を接合する工程と、[d]離形性クッション部材3を剥離する工程と、[e]電子部品搭載基板51を個片化する工程を備える。以下、各工程について説明する。
[a]基板に電子部品を搭載する工程:
まず、基板20に電子部品30を搭載する。例えば、基板20上に半導体チップ(不図示)を搭載し、半導体チップが形成されている基板20上を封止樹脂によりモールド成形し、電子部品30を得、当該電子部品30間の上方から基板20内部まで到達するように、モールド樹脂および基板20をダイシング等によりハーフカットする。予めハーフカットされた基板20上に電子部品30をアレイ状に配置する方法でもよい。これらの工程を経て、例えば、図5に示すような電子部品30が搭載された基板20が得られる。なお、電子部品30とは、図5の例においては半導体チップをモールド成形した一体物をいい、絶縁体により保護された電子素子全般をいう。ハーフカットは、基板20内部まで到達させる態様の他、基板20の表面までカットする態様がある。また、基板20全体をこの段階でカットしてもよい。この場合には、粘着テープ付き基体上に基板20を載置して位置ずれが生じないようにしておくことが好ましい。モールド成形する場合のモールド樹脂の材料は特に限定されないが、熱硬化性樹脂が通常用いられる。モールド樹脂の形成方法は特に限定されず、印刷、ラミネート、トランスファー成形、コンプレッション、注型等が挙げられる。モールド成形は任意であり、電子部品30の搭載方法も任意に変更できる。
[b]基板上に保護シートを載置する工程:
次いで、電子部品30が搭載された基板20を熱圧着により溶融させて被覆させる、積層体4を用意する(図4参照)。積層体4の保護シート2が電子部品30側になるように電子部品30の天面上に積層体4を載置する。製造設備あるいは基板20のサイズ等に応じて、基板20の領域毎に複数の積層体4を用いてもよい。また、電子部品30毎に積層体4を用いてもよい。製造工程の簡略化の観点からは、基板20上に搭載された複数の電子部品30全体に1枚の積層体4を用いることが好ましい。
[c]保護層を形成する工程:
続いて、一対のプレス基板40間に挟持し、熱圧着する(図6参照)。積層体4は、保護シート2および離形性クッション部材3が熱により溶融され、押圧によって製造基板に設けられたハーフカット溝に沿うように延伸され、電子部品30および基板20に追従して被覆する。保護シート2が電子部品30や基板20と接合されると共に熱圧着により熱硬化して保護層1として機能する。熱圧着後に、熱硬化をさらに促すこと等を目的として別途加熱処理を行うこともできる。
積層体4を加熱プレスする際に、この積層体4とプレス基板40との間に、必要に応じて、熱軟化性部材やクッション紙等を用いてもよい。
熱圧着工程の温度および圧力は、電子部品30の耐熱性、耐久性、製造設備あるいはニーズに応じて、保護シート2の被覆性が確保できる範囲においてそれぞれ独立に任意に設定できる。圧力範囲としては限定されないが、0.1〜15MPa程度が好ましく、0.5〜10MPaの範囲がより好ましい。プレス基板40をリリースすることにより図7に示すような製造基板が得られる。このようにして、保護層1により電子部品の天面および側面と基板の露出面とが被覆される。
熱圧着工程の加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、上限値としては、電子部品30の耐熱性に依存するが、220℃であることが好ましく、200℃であることがより好ましく、180℃であることがさらに好ましい。
熱圧着時間は電子部品30の耐熱性、保護シート2に用いる熱硬化性樹脂、および生産工程等に応じて設定できるが、1分〜2時間程度の範囲が好適である。なお、熱圧着時間は1分〜1時間程度がより好ましい。この熱圧着により熱硬化性樹脂は、硬化し保護層1が形成される。但し、熱硬化性樹脂は、流動が可能であれば熱圧着前に部分的に硬化あるいは実質的に硬化が完了していてもよい。
保護シート2の厚みは、電子部品30の天面および側面および基板20の露出面に被覆して、保護層1を形成することが可能な厚みとする。用いる熱硬化性樹脂の流動性や、電子部品30間の距離およびサイズにより変動し得るが、通常、10〜200μm程度が好ましく、15〜100μm程度がより好ましく、20〜70μm程度がさらに好ましい。これにより、電子部品および基板への被覆性を良好にし、PCT密着性を効果的に発揮することができる。
離形性クッション部材3は、軟化して保護シート2の被覆を促し、電子部品30の天面および側面並びに基板20の露出面を被覆する機能を有すると共に、剥離工程において離形性に優れる材料を用いることができる。離形性クッション部材3の上層に、必要に応じて、クッション材として機能する熱軟化性部材を用いてもよい。保護層が導電性を有する場合、保護層1の被覆により、基板20内に形成されたグランドパターン22と保護層1とが電気的に接続される(図7参照)。
[d]離形性クッション部材を剥離する工程:
保護層1の上層に積層されている離形性クッション部材3を剥離する。これにより、電子部品30を被覆する保護層1を有する電子部品搭載基板51を得る(図1、図2参照)。例えば、離形性クッション部材3の剥離は端部から人力で剥がしてもよく、離形性クッション部材3の外面を吸引して保護層1から引き剥がしてもよい。自動化による歩留まり向上の観点から吸引による剥離が好ましい。
[e]個片化する工程:
ダイシングブレード等の切削工具を用いて、電子部品搭載基板51の個品の製品エリアをダイシングして個片化する。これらの工程を経て、電子部品30が保護層1で被覆され、個片化された電子部品搭載基板が得られる。ダイシングの方法は、保護層1の表面側をダイシングテープで固定し基板20側から行われる。これは基板側には半田ボールが付着している場合が多いためである。ダイシングが終了すると個片化した電子部品搭載基板をダイシングテープから剥離して各々の電子機器に実装する。
ダイシングテープは、微粘着タイプ、UVによる粘着力低下タイプを用いることができる。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」に基づく値である。
(試験基板の作製)
ガラスエポキシからなる基板(1)上に、モールド封止された電子部品(1cm×1cm)を5×5個アレイ状に搭載した基板を用意した。基板の厚みは300μmであり、モールド封止厚、即ち基板(1)上面からモールド封止材の頂面までの高さ(部品高さ)は700μmである。その後、部品同士の間隙である溝に添ってハーフダイシングを行い、試験基板を得た(図8参照)。ハーフカット溝深さは800μm(基板20のカット溝深さは100μm)、ハーフカット溝幅は200μmとした。
実施例で使用した材料を以下に示す。
〈熱硬化性樹脂〉
・熱硬化性樹脂1(ポリカーボネート樹脂):トーヨーケム株式会社製、酸価=10mgKOH/g、アミン価=0.1mgKOH/g
・熱硬化性樹脂2(ポリウレタンウレア樹脂):トーヨーケム株式会社製、酸価=10mgKOH/g、アミン価=0.1mgKOH/g
・熱硬化性樹脂3(フェノキシ樹脂):トーヨーケム株式会社製、酸価=10mgKOH/g、アミン価=0.1mgKOH/g
〈硬化剤〉
・硬化剤1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER828」(エポキシ当量=189g/eq)三菱ケミカル社製
・硬化剤2:変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂「EXA4850−150」(エポキシ当量=450g/eq)DIC社製
・硬化剤3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂「JER806H」(エポキシ当量=171g/eq)三菱ケミカル社製
・硬化剤4:アジリジン化合物「ケミタイトPZ−33」日本触媒社製
〈金属フィラー〉
・鱗片状金属フィラー:鱗片状銀粉(平均粒子径D50、11.0μm)福田金属箔粉工業社製
・デンドライト状金属フィラー:デンドライト状銀コート銅粉(平均粒子径D50、4.2μm)福田金属箔粉工業社製
・球状金属フィラー:球状銀粉(平均粒子径D50、5.0μm)福田金属箔粉工業社製
・剥離性シート:表面にシリコーン離型剤をコーティングした厚みが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム
・離形性クッション部材:厚みが150μmの3層TPX「オピュラン CR1040」三井化学東セロ社製
[実施例1]
(保護シートの作製)
熱硬化性樹脂1を100部、鱗片状金属フィラーを265部、デンドライト状金属フィラーを53部容器に仕込み、硬化剤1を50部、硬化剤4を0.5部加え不揮発分濃度が32%になるようトルエンを加え調製した。ディスパーで10分攪拌し、保護シート形成用組成物を得、この組成物を剥離性シートに、乾燥厚みが30μmになるようにドクターブレードを使用して塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥することで実施例1に係る保護シートを得た。
(積層体の作製)
その後、離形性クッション部材を用意し、前記保護シート面と離形性クッション部材とをラミネートすることにより実施例1に係る積層体を得た。
(電子部品搭載基板の作製)
次に、この積層体を8cm×3.5cmにカットし、離形性シートを剥離した後、8cm×3.5cmの前記試験基板(図8参照)に対して、積層体の保護シート側が接するように載置し仮貼付した。そして、この積層体の上方から基板面に対し10MPa、170℃の条件で5分熱圧着した。熱圧着後、離形性クッション部材を剥離し、さらに180℃で2時間加熱し、実施例1に係る電子部品搭載基板を作製した。
[実施例2〜11、比較例1〜3]
実施例1の保護シート形成用組成物の、トルエン以外の成分を表1に記載した種類および配合量に変更した以外は実施例1と同様に行うことで得た(なお表1中、トルエンは表記していない)。
<保護層のマルテンス硬さの測定>
上記の電子部品搭載基板について、ISO14577−1に準拠して、フィッシャースコープH100C型硬度計(フィッシャー・インストルメンツ社製)にてマルテンス硬さを測定した。測定は、保護層に対して、ビッカース圧子(100φの先端が球形のダイアモンド圧子)を用い、25℃の恒温室にて試験力0.3N、試験力の保持時間20秒、試験力の付加所要時間5秒の条件で行った。同一硬化膜面をランダムに10箇所繰り返し測定して得た値の平均値をマルテンス硬さとした。なお、試験力は保護層厚みに応じて調整する。具体的には最大押し込み深さが保護シートの厚みの10分の1程度になるように試験力を調整した。
<PCT後の水接触角>
上記の電子部品搭載基板を135℃、湿度85%RH、0.23MPaのプレッシャークッカー試験を96時間実施した。試験機から取り出して直ちに以下の方法で水接触角の測定を行った。即ち、保護層の表面に対して、協和界面科学(株)製「自動接触角計DM‐501/解析ソフトウェアFAMAS」を用いて保護層の水接触角を測定した。測定は液滴法により行った。測定は1cmずつ間隔をおいて7点について行い、それらの平均値を記録した。
<保護層の硬化後のガラス転移温度>
各実施例および比較例の保護シートを180℃で2時間加熱し、JIS K7198に準拠して、銅的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御株式会社製)にてガラス転移温度を測定した。測定は、各保護シートを0.5cm×3cmにカットし、180℃で2時間加熱し、剥離性シートを剥がしたものを用いた。変形様式は引張で、歪み0.08%、周波数10Hz、昇温速度10℃/minで測定される損失正接(tanδ)の主分散ピークの現れる温度をもってガラス転移温度とした。
<抵抗値>
各実施例および比較例の電子部品搭載基板の抵抗値を以下の方法で測定した。
即ち、JIS K 7194に則り、抵抗計 RM3544(日置電機株式会社製)にピン型リード L2103(日置電機株式会社製)を接続し、表層上5mm幅間隔で測定をした。
<展開界面面積率(Sdr)及び最大谷深さ(Sv)>
各実施例および比較例の電子部品搭載基板について、電子部品30上の上面にあたる部分に対して以下の方法を用いて表面形状の測定を行った。
即ち、ISO 25178−2:2012に準拠し、デジタルマイクロスコープVHX−7000(KEYENCE社製)を用いて、倍率50倍にて保護層の真上から測定した。異なる箇所で5回測定した平均値から展開界面面積率(Sdr)及び最大谷深さ(Sv)を得た。
<PCT密着性>
実施例および比較例の電子部品搭載基板について135℃、湿度85%RH、0.23MPaのプレッシャークッカー試験(PCT)を96時間実施した。そして、JISK5600に準じてクロスカットガイドを使用し、間隔が1mmの碁盤目を保護層面に100個作製した後、粘着テープを圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がしてクロスカット試験を行った。粘着テープは、幅18mmのニチバン製粘着テープを用いた。保護層の碁盤目のうち、FR4(ガラス繊維にエポキシ樹脂をしみ込ませ熱硬化処理を施し板状にしたガラスエポキシのうち、厚み1mmのもの)上に残った保護層の状態(クロスカット残存率)を、以下の基準で評価した。
◎:100/100の残存率を示す。(極めて良好)
〇:95〜99/100の残存率を示す。(良好)
△:85〜94/100の残存率を示す。(実用下限)
×:85/100の残存率未満である。(不良)
<基板保護性>
厚み1mmのFR4を5×6cmにカットし基板とした。一方、各実施例、比較例に係る保護シートの積層体を5cm×6cmにカットし、剥離性シートを剥離した後、前記基板に対して、積層体の保護シート側が接するように載置し仮貼付した。そして、この積層体の上方から基板面に対し10MPa、170℃の条件で5分熱圧着した。熱圧着後、離形性クッション部材を剥離し、180℃で2時間加熱し、試験基板を作製した。その後試験基板について、135℃、湿度85%RH、0.23MPaのプレッシャークッカー試験(PCT)を96時間実施した。試験基板の1辺を固定し、その反対の端辺の反り量を測定した。反り量の測定は4辺それぞれについて行い平均をとり、PCT前とPCT後の反り量の平均値をそれぞれ算出し、その差(PCT後−PCT前)をもって評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:差が1mm未満 (極めて良好)
〇:差が1mm以上、2mm未満 (良好)
△:差が2mm以上、3mm未満 (実用下限)
×:差が3mm以上 (不良)
<工程作業性>
作業工程性に関する評価は、ダイシングテープの剥離力試験を行って評価した。
各実施例、比較例に係る電子部品搭載基板の保護層に幅2.5cmにカットしたダイシングテープを圧着させ、23℃湿度50%の恒温室にて30分間静置させた後、UV照射機にてダイシングテープをUV硬化させ、以下の方法を用いてピール試験を行った。
即ち、JIS Z 0237:2009に準拠し、TENSILON シングルコラム型材料試験機STB−1225S(A&D社製)を用いて、300mm/secにて180°剥離試験を行った。ダイシングテープは、デンカ社製のダイシングテープ UHP−110AT(UVタイプ、基材PET、総厚み110μm(粘着層厚10μmを含む))を用いた。測定は2回行った平均値を記録し、結果を以下の基準で評価した。
◎:4.0N<剥離力≦5.5N(極めて良好)
○:3.5N<剥離力≦4.0N、または5.5N<剥離力≦6.0N(良好)
△:3.0N<剥離力≦3.5N、または6.0N<剥離力≦7.0N(実用下限)
×:剥離力≦3.0N、または7.0N<剥離力(不良)
Figure 2021093501
1 保護層
2 保護シート
3 離形性クッション部材
4 積層体
20 基板
21 電極
22 グランドパターン
23 インナービア
24 はんだボール
25 ハーフダイシング溝
30 電子部品
31 半導体チップ
32 モールド樹脂
33 ボンディングワイヤ
40 プレス基板
51、52 電子部品搭載基板

Claims (6)

  1. 基板と、
    前記基板の少なくとも一方の面に搭載された電子部品と、
    前記基板および前記電子部品の少なくとも一部を被覆した保護層と、
    を備え、
    前記保護層は、バインダー樹脂と鱗片状金属フィラーとを含み、
    135℃、85%RH、0.23MPa、96時間のプレッシャークッカーテスト後の前記保護層表面の水との接触角が90〜130°である電子部品搭載基板。
  2. 前記保護層のマルテンス硬さが、50〜250N/mm2である請求項1に記載の電子部品搭載基板。
  3. 前記保護層のガラス転移温度が、20〜100℃である請求項1または2に記載の電子部品搭載基板。
  4. 前記保護層は、ISO 25178−2:2012に準拠して求めた展開界面面積率(Sdr)が1.0%〜4.0%であり、かつ最大谷深さ(Sv)が1.5μm〜4.5μmである請求項1〜3いずれかに記載の電子部品搭載基板。
  5. 前記保護層は、更に、
    デンドライト状金属フィラーまたは針状金属フィラーを含む請求項1〜4いずれかに記載の電子部品搭載基板。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品搭載基板が搭載された、電子機器。
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