JP2021092010A - 溶融紡糸用樹脂組成物及びその製造方法、並びに繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】設備面での問題が生じることなく、原料の熱劣化を防止しながらも、高いハンドリング性及び高い連続供給性を兼ね備えた溶融紡糸用樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本発明の溶融紡糸用樹脂組成物は、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである。このフィラメントは、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である樹脂組成物の溶融液をフィラメント状に成形し、その成形物を搬送しながら冷却することによって製造することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、溶融紡糸用樹脂組成物及びその製造方法、並びに繊維の製造方法に関する。
溶融紡糸法は、気体流又は電界の存在下で原料樹脂の溶融液を吐出して、細径の繊維を有する繊維シートを簡便且つ高い生産性で製造できる技術である。本出願人は、溶融電界紡糸法によって繊維を製造する装置及びその製造方法を提案している(特許文献1)。
特許文献2には、1.0mm以下の直径を有する熱可塑性樹脂糸を溶融エレクトロスピニングして、微細熱可塑性樹脂繊維を製造する方法が開示されている。また特許文献3には、メルトマスフローレイトが0.1〜30g/10minのポリプロピレン樹脂、オレフィン系共重合体ゴム、及び軟化剤を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物からなるフィラメントが開示されている。このフィラメントは原料を溶融した後に延伸することで製造されるものであり、また該フィラメントは3次元プリンター造形に用いられることが同文献に開示されている。
特開2017−190533号公報 特開2007−321246号公報 特開2018−144308号公報
溶融紡糸法によって繊維及び繊維シートを高い生産効率で製造するにあたり、原料のハンドリング性の向上、原料の熱劣化の防止、及び原料の連続供給を兼ね備えた方法が望まれている。一般的に、このような方法を採用する場合、新たな設備を導入したり、設備の操作が煩雑になったりするなどの設備面での問題が生じうる。また、大量の原料を溶融し調製する場合、多くの熱エネルギーが必要になることに加え、原料の溶融及び調製に時間がかかることによって、原料の熱劣化が生じうる。このような点を解決することに関して、特許文献1ないし3では何ら検討されていない。
したがって本発明は、高いハンドリング性及び高い連続供給性を兼ね備えたフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物に関する。
本発明は、溶融紡糸用樹脂組成物に関する。
一実施形態では、前記溶融紡糸用樹脂組成物はフィラメントである。
一実施形態では、前記フィラメントは、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である。
一実施形態では、前記フィラメントは、引張強度が10MPa以上である。
また本発明は、フィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物の製造方法に関する。
一実施形態では、前記製造方法は、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である樹脂組成物の溶融液をフィラメント状に成形する。
一実施形態では、前記製造方法は、フィラメント状の成形物を搬送しながら冷却する。
更に本発明は、溶融紡糸装置を用いる繊維の製造方法に関する。
一実施形態では、前記溶融紡糸装置は、原料が供給される供給口と、該供給口から供給された該原料に混練力を加えずに溶融させる加熱部と、該加熱部と直接に連通しており且つ溶融した該原料を吐出するノズルとを備える。
一実施形態では、前記製造方法は、前記原料として、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物を用いる。
一実施形態では、前記製造方法は、前記供給口から前記フィラメントを供給しながら、溶融した前記原料を前記ノズルから吐出して紡糸する。
本発明によれば、高いハンドリング性及び高い連続供給性を兼ね備えたフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物が提供される。
図1は、本発明のフィラメント製造装置の一実施形態を示す模式図である。 図2は、本発明のフィラメント製造装置の別の実施形態を示す模式図である。 図3(a)及び(b)は、本発明のフィラメント製造装置の更に別の実施形態をそれぞれ示す断面模式図である。 図4は、図3(a)に示すフィラメント製造装置を備える溶融紡糸装置の一実施形態を示す模式図である。 図5(a)及び(b)は、吐出口と搬送部との配置位置を示す拡大模式図である。 図6は、本発明の溶融紡糸装置の一実施形態を示す斜視模式図である。 図7(a)及び(b)は、本発明の溶融紡糸装置における紡糸ユニットの一実施形態を示す断面模式図である。
以下に本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
樹脂組成物は、所定の溶融粘度と、所定の引張強度とを有する、中実又は中空のフィラメントであるものである。
この樹脂組成物は、これを加熱溶融させた溶融液として、メルトブロー法及び溶融電界紡糸法等の溶融紡糸の用途に好適に用いられるものである。メルトブロー法及び溶融電界紡糸法は、溶融紡糸法の中でも極細繊維の製造に特に適した紡糸方法である。
紡糸した繊維の細径化を達成する観点から、樹脂組成物は、温度200℃、せん断速度0.1s−1における溶融粘度が、好ましくは250Pa・s以下、より好ましくは150Pa・s以下、更に好ましくは80Pa・s以下であり、特に好ましくは30Pa・s以下である。
またフィラメントの成形性の向上と、紡糸した繊維の意図しない破断の抑制とを両立する観点から、温度200℃、せん断速度0.1s−1における樹脂組成物の溶融粘度が、好ましくは0.05Pa・s以上、より好ましくは0.1Pa・s以上、更に好ましくは0.5Pa・s以上である。
溶融粘度がこのような範囲にあることによって、樹脂組成物を溶融紡糸した際に、繊維を細径化できる。
また、樹脂組成物を溶融紡糸に供する際に、溶融液の吐出効率を高めて、繊維の形成効率を高めることができる。
樹脂組成物の溶融粘度は、例えば、使用する原料樹脂の分子量を変更したり、後述する可塑剤や改質剤等を添加したりする等の方法で適宜変化させることができる。
樹脂組成物の溶融粘度は、樹脂組成物を公知の押出機を用いて得た試料を、株式会社アントンパール・ジャパン製の粘弾性測定装置(型番MCR302)を用いて、以下の方法で、温度200℃、せん断速度0.1s−1の条件で測定することができる。
<樹脂組成物の溶融粘度の測定方法>
詳細には、まず、測定試料を、100mm×100mm×1mmの穴の空いたフッ素樹脂コートSUS板の穴部に充填する。
次いで、公知のヒートプレス装置を用いて、充填した測定試料を、温度180℃で、圧力設定として300mm×300mmあたり0.5MPaで1.5分間ヒートプレスして、予備加圧する。
その後、上述の加圧条件で3秒加圧し、1秒加圧解除するという工程を1サイクルとして、該サイクルを4回繰り返して、試料中の空気抜きを行う。
続いて、温度180℃、圧力設定として300mm×300mmあたり20MPaで1分間ヒートプレスして、本加圧する。
最後に、温度14℃、圧力設定として300mm×300mmあたり0.5MPaで1分間プレスして冷却する。
この方法で得られたプレス成形板を直径50mm×厚み1mmにカットし、円形状の検体板を得る。この検体板を、直径50mmの円盤‐円盤型測定治具または円錐‐円盤型測定治具を備えた前記粘弾性測定装置に導入して、温度200℃で検体板を溶融させて、せん断速度0.1s−1の条件で溶融粘度を測定する。
樹脂組成物は、引張強度が、フィラメントのハンドリング性や、繊維紡糸時の連続供給性を両立して向上する観点から、好ましくは10MPa以上、より好ましくは12MPa以上、更に好ましくは15MPa以上である。
また、フィラメントを巻取って保管する場合に、巻き取り性及び保管性を向上させる観点から、樹脂組成物の引張強度が、好ましくは150MPa以下、より好ましくは120MPa以下、更に好ましくは100MPa以下である。
引張強度がこのような範囲にあることによって、樹脂組成物の取扱いを容易にするとともに、溶融紡糸の原料として連続的に供給しやすくして、繊維の製造効率を高めることができる。
樹脂組成物の引張強度は、例えば、使用する樹脂の種類を変更したり、冷却の温度や速度を変化させて、得られる樹脂組成物の結晶状態を変化させたり、後述する可塑剤や改質剤等を添加したりする等の方法で適宜変化させることができる。
フィラメントのハンドリング性や、繊維紡糸時の連続供給性を両立して向上する観点から、樹脂組成物は、その破断ひずみが、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上、更に好ましくは2%以上であり、特に好ましくは2.5%以上である。
また樹脂組成物の破断ひずみは、特に制限はないが、20%以下、好ましくは18%以下が現実的である。
破断ひずみがこのような範囲にあることによって、樹脂組成物の取扱いを容易にするとともに、溶融紡糸の原料として連続的に供給しやすくして、繊維の製造効率を高めることができる。
樹脂組成物の破断ひずみは、例えば、使用する樹脂の種類を変更したり、冷却の温度や速度を変化させて、得られる樹脂組成物の結晶状態を変化させたり、後述する可塑剤や改質剤等を添加したりする等の方法で適宜変化させることができる。
樹脂組成物の引張強度及び破断ひずみは、引張試験機(株式会社島津製作所製AG−X plus)を用いて測定される。試験速度は50mm/min、チャック間距離は80mmとし、長さ120mmのフィラメントである樹脂組成物を用いて試験を行い、フィラメント長さ方向に沿って引張試験を行ったときにおける、破断に至るまでの最大試験力とチャック移動距離とを測定する。この測定を3回行う。
引張強度及び破断ひずみは、3回の各測定値から以下の式に基づいて算出した値の算術平均値とする。以下の式中、Rは後述するフィラメント断面直径とする。
引張強度[MPa]=(最大試験力[N])/(π×(引張試験開始時のフィラメント断面直径R)/4)
破断ひずみ[%]=(チャック移動距離[mm]/引張試験開始時のチャック間距離[mm])×100
上述のとおり、樹脂組成物はフィラメントであるものである。樹脂組成物のフィラメント断面直径の平均値R、すなわち、フィラメントの長さ方向と直交する方向における断面平均直径Rは、フィラメントのハンドリング性や、繊維紡糸時の連続供給性を両立して向上する観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。
またフィラメントの溶融容易性といった観点から、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下、一層好ましくは5mm以下、特に一層好ましくは3mm以下である。
フィラメントとは、一般に末端を実質的に有さない無限長の繊維のことであるが、本明細書においては、これよりも実質的に広義に解釈する。詳細には、フィラメントを棒状に成形しやすくして、紡糸装置に導入する際のハンドリング性を高める観点から、断面平均直径Rに対する長さの比(フィラメントの長さ/フィラメントの断面平均直径R)が、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上である繊維が、本明細書におけるフィラメントに包含される。
フィラメントは実質的に無限長であるので、当該比に上限値はないが、フィラメントの保管性を高める観点から、1000000以下が現実的である。
フィラメントの長さは上述のとおり無限長であるが、フィラメントの保管性を高める観点から、該長さが好ましくは10000m以下、更に好ましくは5000m以下である。
またフィラメントを棒状に成形しやすくして、紡糸装置に導入する際のハンドリング性を高める観点から、好ましくは50mm以上、更に好ましくは100mm以上であれば、本明細書におけるフィラメントに包含される。
このようなフィラメントは、例えば無限長のフィラメントを所定の長さとなるように切断することによって得ることができる。
フィラメント長さは、巻取長の測長や巻取径を測定したり、測長や巻取径の寸法から算出したりすることができる。
以上のとおり、フィラメント径、フィラメント長さ、及びフィラメントの長さ/断面平均直径Rの比がそれぞれ上述の範囲にあることによって、フィラメントの保管時及び紡糸時の取扱いを一層容易にすることができる。
<フィラメントの断面平均直径の測定方法>
フィラメントの断面平均直径は、以下のように測定することができる。すなわち、長さ50cm超の一本のフィラメントについて、フィラメントの長さ方向に直交する方向の長さを、ノギスを用いて、フィラメントの長さ方向に沿って5cm間隔で10点測定し、得られた測定値の算術平均値を断面平均直径とする。フィラメント断面が真円でない場合、各測定点において長径と短径とをそれぞれノギスを用いて測定し、各測定点での長径と短径との算術平均値を各測定点での測定値とし、全測定点の測定値の算術平均値を本開示の「フィラメントの断面平均直径」とする。
またフィラメントの断面直径の標準偏差はフィラメントの断面直径の均一性を表す指標の一つである。フィラメントの断面直径の標準偏差を測定する場合、上述の方法で10点測定した測定値に基づいて、標準偏差を算出する。この標準偏差が小さいほど、一本のフィラメントにおける断面直径が均一であることを示す。
フィラメントである樹脂組成物は、その主たる成分として、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。本明細書において「主たる成分」とは、樹脂組成物中における含有比率が50質量%以上の成分を意味する。
この熱可塑性樹脂は、溶融紡糸において繊維形成性を有し、融点を有するものである。
「融点を有する」樹脂とは、示差走査熱量測定法において、測定対象の樹脂を加熱していったときに、該樹脂が熱分解する前に、固体から液体へ相変化することに起因する吸熱ピークを示す樹脂のことである。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル−エチレン共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン−α−オレフィンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマー等が挙げられる。
ビニル系ポリマーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等が挙げられる。
アクリル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル等が挙げられる。
ナイロン系ポリマーとしては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。
これらの樹脂は、市販品を用いてもよく、市販品に加水分解等の後処理を施したものであってもよく、あるいは合成品を用いてもよい。これらの樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、フィラメントとした際の強度や可撓性等の機械的特性を高くする観点、及び、該フィラメントを用いて繊維を製造した際に、該繊維の用途の汎用性を高める観点から、樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる一種以上を含むことが好ましく、PP及びポリ乳酸系樹脂から選ばれる一種以上を含むことが更に好ましい。ポリ乳酸系樹脂の繰り返し単位を構成する乳酸は、L体及びD体のいずれの光学異性体であってもよい。
樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、添加剤の添加を可能にして、繊維形成性を良好にする観点から、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは70質量部以上、より好ましくは75質量部以上、更に好ましくは80質量部以上であり、特に好ましくは95質量部以上である。
また繊維の用途の汎用性を高める観点から、樹脂組成物100質量部に対する熱可塑性樹脂の含有量は好ましくは100質量部以下である。
<樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量の測定方法>
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、以下の方法で測定することができる。具体的には、樹脂組成物をNMR(核磁気共鳴)分析、IR(赤外分光)分析等の各種分析に供して、これらの分析によって得られる各シグナル、スペクトルの位置に基づいて、分子骨格の構造及び分子構造の末端の官能基構造を同定する。これによって、含有する樹脂の種類を同定し、各種熱可塑性樹脂に相当する分子構造を示す測定値の強度から各種樹脂組成部中に含まれる熱可塑性樹脂の量を算出する。そして、該算出値を合計することにより樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量を測定することができる。
樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含む場合、柔軟性が高く、且つ耐薬品性が高いことから、熱可塑性樹脂としてPP樹脂を含むことが好ましい。また、汎用性が高く生分解性を示すことから、熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を含むことが好ましい。高い柔軟性及び耐薬品性、又は高い汎用性及び生分解性を発現する観点から、樹脂組成物は、PP樹脂又はポリ乳酸系樹脂が主たる成分であることが一層好ましい。
樹脂組成物がPP樹脂又はポリ乳酸系樹脂を含むことは、以下の方法で特定することができる。測定対象の樹脂組成物を上記と同様にNMR分析、IR分析等の各種分析に供して、分子骨格の構造及び分子構造の末端の官能基構造を同定する。これによって、樹脂組成物の構成樹脂が単一種であるか又は複数種であるか、並びに樹脂組成物がPP樹脂又はポリ乳酸系樹脂を含有することを特定する。
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としてPP樹脂を含む場合、その重量平均分子量は、紡糸時の繊維の細径化を達成する観点から、好ましくは150000g/mol以下、より好ましくは100000g/mol以下、更に好ましくは80000g/mol以下である。
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としてPP樹脂を含む場合、その重量平均分子量は、フィラメントの成形性の向上と、紡糸した繊維の意図しない破断の抑制とを両立する観点から、好ましくは1000g/mol以上、より好ましくは5000g/mol以上、更に好ましくは10000g/mol以上である。
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を含む場合、その重量平均分子量は、紡糸時の繊維の細径化といった観点から、好ましくは150000g/mol以下、より好ましくは100000g/mol以下、更に好ましくは80000g/mol以下、一層好ましくは50000g/mol以下である。
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を含む場合、その重量平均分子量は、フィラメントの成形性の向上と、紡糸した繊維の意図しない破断の抑制とを両立する観点から、好ましくは1000g/mol以上、より好ましくは5000g/mol以上、更に好ましくは10000g/mol以上である。
熱可塑性樹脂がポリ乳酸系樹脂を含む場合、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する場合、前処理として、測定対象となる熱可塑性樹脂を後述する溶離液に所定濃度で溶解させ、溶解しなかった不純物を除去した溶解液を調製する。その後、この溶解液を測定試料として用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーによって、以下の条件に従って分子量分布の測定を行う。
同様に、ポリスチレン標準試料として、重量平均分子量が既知であり且つ重量平均分子量がそれぞれ異なるポリスチレン試料(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン(型番:F450、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、A500及びA300)を用いて分子量較正曲線を予め作成し、該較正曲線と測定試料の結果とを比較することによってポリスチレン換算の重量平均分子量を測定することができる。
本測定方法では、ゲル浸透クロマトグラフィーの原理に基づいて分子量が大きいものが早く溶出してくるので、測定試料をカラムに通過させたときに溶出した成分、質量及び時間を測定し、これらの結果を前記較正曲線と比較することによって、測定試料の分子量分布を算出することができる。
<ゲル浸透クロマトグラフィー条件>
・測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(東ソー株式会社製)
・溶離液:1mmol ファーミンDM20(花王株式会社製)/CHCl3
・溶離液流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI
・サンプル濃度:0.1体積%(クロロホルム溶液)
・サンプル注入量:100mL
なお、樹脂組成物に複数の樹脂種が含まれる場合、上述したNMR分析、IR分析等の各種分析より含まれる熱可塑性樹脂の種類を同定する。次いで、ポリ乳酸樹脂が溶解し、その他樹脂が溶解しない溶媒、もしくはポリ乳酸系樹脂が溶解せず、その他樹脂が溶解する溶媒を用いてポリ乳酸系樹脂を抽出する。そして、抽出したポリ乳酸系樹脂を対象として、重量平均分子量を上述の方法で測定する。
熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含む場合、重量平均分子量は、溶離液にオルソジクロロベンゼンを用い、溶解温度を140〜150℃として溶解したポリプロピレン樹脂の溶解液を用いて、上述の測定方法に準じて測定することができる。
樹脂組成物は、繊維の製造効率を高める観点から、溶融紡糸の用途に応じて、エラストマー、可塑剤、改質剤、分解抑制剤及び電荷調整剤から選ばれる一種又は二種以上である添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は複数用いることができる。
エラストマーは、樹脂組成物の弾性を向上させて靭性を高めるものである。エラストマーとしては、例えばポリオレフィン系エラストマーやポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を用いることができる。
樹脂組成物中の添加剤の含有量や分子構造は、NMR、各種クロマトグラフィー、IR分析等の公知の技術やその組み合わせによって分子構造を特定し同定することができる。また、添加物の含有量は、上記の測定手段によって、上記の分子構造を示す部分の測定値の強度で測定することができる。
また添加剤は、測定対象となる繊維から添加剤を各種溶剤でソックスレー抽出・濃縮し、該濃縮液を熱分解ガスクロマトグラフ(GC−MS)分析を行う。ここで得られたマススペクトルより化合物を同定するとともに、含有量を算出することもできる。
可塑剤は、樹脂組成物の柔軟性を高めたり、ガラス転移温度(Tg)を変化させたり、樹脂組成物の溶融液の流動性を高めるように改質するものである。
可塑剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸エステル、リン酸エステル、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース:HPCやメチルセルロース:MC)、ラクトン、カルバミン酸エステル、フタル酸等を用いることができる。
改質剤は、樹脂組成物の柔軟性を高めたり、樹脂組成物を溶融液とした際の流動性を高めたりするように改質するものである。
改質剤としては、例えば低立体規則性ポリオレフィン(出光興産株式会社製 成形加工改質剤L−MODU)等の低結晶性ポリオレフィンを用いることができる。
分解抑制剤は、樹脂組成物の溶融液をメルトブロー法及び溶融電界紡糸法等の溶融紡糸に供する際に、該樹脂組成物が分解し、分子量が低下することを抑制するものである。
分解抑制剤としては、例えばモノカルボジイミド化合物やポリカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられる。これらの添加剤は単独で又は複数用いることができる。
モノカルボジイミド化合物としては、芳香族モノカルボジイミド化合物、脂環族モノカルボジイミド化合物、脂肪族モノカルボジイミド化合物等が挙げられる。
芳香族モノカルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、ジ−o−トリルカルボジイミド、ジ−p−トリルカルボジイミド、ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、及びジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
脂環族モノカルボジイミド化合物としては、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、及びジ−シクロヘキシルメタンカルボジイミド等が挙げられる。
脂肪族モノカルボジイミド化合物としては、ジ−イソプロピルカルボジイミド、及びジ−オクタデシルカルボジイミド等が挙げられる。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、芳香族ポリカルボジイミド化合物、脂環族ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。
芳香族ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、及びポリ(トリイソプロピルフェニルカルボジイミド)等が挙げられる。
脂環族ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等が挙げられる。
電荷調整剤は、樹脂組成物の溶融液を溶融電界紡糸法に供する際に、該溶融液に高い帯電量を発現させるように改質するものである。
電荷調整剤としては、高級脂肪酸と金属との塩、硫酸エステル塩及びスルホン酸塩等が挙げられる。
高級脂肪酸とは、典型的には炭素数12以上24以下である。脂肪酸部分は、不飽和結合があっても良い。金属塩としては、Zn、Mg、Liが挙げられる。
高級脂肪酸と金属との塩としては、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Li、ラウリン酸Zn、リシノール酸Zn等が挙げられる。
硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、N‐アルキル‐N‐アシルアミノアルキルスルホン酸塩、及びアルカンスルホン酸塩等が挙げられる。
N‐アルキル‐N‐アシルアミノアルキルスルホン酸塩としては、N−ステアロイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられるが、これに限られない。
これらの添加剤は単独で又は複数用いることができる。
細径繊維の製造効率を高める観点から、樹脂組成物中の添加剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0質量部以上であることが好ましい。
また細径繊維の強度を向上する観点から、樹脂組成物中の添加剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
上述した樹脂組成物によれば、所定の溶融粘度を有するので、これを溶融液として溶融紡糸に供した際に、溶融液の外部への吐出量及び吐出速度を高めることができるとともに、溶融液の延伸効率を高めることができるので、細径の繊維を高い製造効率で製造することができる。
また、樹脂組成物は所定の引張強度を有するフィラメントであるので、該フィラメントを保存する際、あるいは該フィラメントを溶融紡糸に供する際に、意図しない折れや割れ、座屈、破断を低減して、フィラメントである樹脂組成物の保存性及び取扱い性を高めることができる。
フィラメントである樹脂組成物の好適な態様によれば、可撓性が高く、保存時及び紡糸時の取扱いを更に容易にするとともに、繊維の製造効率を更に高めることができる。
これに加えて、従来の技術では溶融紡糸に適用することが困難であった、ポリ乳酸系樹脂を用いた場合であっても、溶融時における熱や加水分解による原料の劣化を防止しながらも細径の繊維を効率よく製造できる。
また、フィラメントとした樹脂組成物を用いることによって、フィラメント原料の一部分のみを溶融するという簡便な操作で、溶融紡糸法によって繊維や繊維シートを製造できる。その結果、押し出し機等を用いて、粉末又はペレット状の樹脂原料から溶融液を調製しながら溶融紡糸する場合と異なり、大型の設備導入をすることなく、設備の小型化と省力化を図ることができる。これに加えて、樹脂組成物は、溶融紡糸に供される際に一部分のみが溶融されるので、繊維形成に供する樹脂組成物全体を溶融させる必要がない。そのため、原料の熱劣化を防止することができる。
次に、フィラメントである樹脂組成物の製造方法について説明する。
本製造方法は、図1ないし図5に示すフィラメントの製造装置10によって好適に実施することができる。図1に示す製造装置10は、押出成形部20及び搬送部30に大別される。
押出成形部20は、シリンダ21、吐出部22及び樹脂組成物を供給するホッパー29を備えている。
シリンダ21では、ホッパー29から供給された樹脂組成物をシリンダ21内で加熱溶融して、樹脂組成物の溶融液Lとすることができる。
この溶融液は、シリンダ21内に設けられたスクリュー(図示せず)によって、後述する吐出部22の方向に向けて溶融液を押し出して供給できるようになっている。
吐出部22は、樹脂組成物の溶融液を押し出して、フィラメント状に押出成形する部材であり、吐出基部23及び吐出口24を備えている。
シリンダ21、吐出基部23及び吐出口24はそれぞれ連通しており、シリンダ21内の溶融液は、吐出基部23内を介して、吐出口24から連続的に押し出せるようになっている。
吐出基部23内には、ギヤポンプ(図示せず)が設置されており、樹脂組成物の溶融液を定量で吐出できるようになっている。
搬送部30は、吐出口24から押出成形されたフィラメント状の成形物Sを、次の工程へ搬送するものである。
搬送部30は、吐出口24と略対向する位置に離間して備えられており、コンベア及びロールのうち一種以上から構成されている。
図1及び図2に示す搬送部30は、無端ベルトが一方向に周回するように配されたベルトコンベアの態様となっており、成形物Sを他の部材を介さずに直接受け取って、該ベルトコンベアに直接接触させた状態で搬送できるようになっている。
図3(a)及び(b)並びに図4に示す搬送部30は、搬送ロール36,37の態様となっている。
製造装置10は、押出成形部20における吐出口24と、搬送部30との距離を所定の範囲にするとともに、吐出口24の直径を所定の範囲とすることを特徴の一つとしている。
製造装置10が上述の構成を有することによって、本製造装置に導入される樹脂組成物として、その溶融粘度が比較的小さく、溶融液の流動性が高いものを用いた場合でも、吐出口24からフィラメント状に押出成形する際に、吐出口24から液だれして、吐出された成形物が搬送部30以外の部材に意図せず付着することを防ぎつつ、成形物を意図した形状に延伸することができる。その結果、均一且つ連続的なフィラメントを形成することができる。
詳細には、押出成形部20における吐出口24と、搬送部30との距離D1(図5(a)及び(b)参照)は、成形物が意図しない形状に延伸されることを抑制し、得られるフィラメントを均一な形状とする観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
また吐出口から押出した溶融液の形状を安定化させ、得られるフィラメントの形状の均一性を高める観点から、距離D1は、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。
吐出口24と搬送部30との距離D1は、吐出口24の末端から、吐出口24の軸方向に沿って延びる仮想延長線と搬送部30の面との交点との最短距離とする。
また、図3(b)に示すように、吐出口24から吐出された成形物Sを他の部材を介さずに液体Wに直接浸漬させる場合、距離D1は、吐出口24と液体Wの液面との最短距離とする。
また、吐出口24の直径は、フィラメントを適度に延伸させたり、製造の安定化や所望の直径を有するフィラメントを得やすくしたりする観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。
また溶融樹脂を均一に押し出して、溶融樹脂の形態維持を達成する観点から、吐出口24の直径は、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下、更に好ましくは30mm以下である。
吐出口24の形状は、好ましくは真円形である。
製造装置をこのような寸法にすることによって、高いハンドリング性及び高い連続供給性を両立した樹脂組成物のフィラメントを形成することができる。
吐出口から押出成形されたフィラメント状の成形物Sは、押出成形後には冷却固化が十分に進行していないことがある。押し出された成形物Sのフィラメント形状を確実に維持させる観点から、成形物Sを一方向MDへ搬送しながら冷却する手段を備えていることが好ましい。
冷却手段としては、例えば、搬送部30の搬送路を搬送方向に沿って長く形成して自然冷却させてもよく、搬送部30と、冷媒又は冷却装置(図示せず)とを接触させた状態にして、搬送部30自体が冷却されていてもよく、あるいは、搬送部30の下流側に冷却部40を更に備えていてもよい。
冷却部40を備える場合、冷却部40は、冷媒又は冷却装置(図示せず)と接触させて冷却されているコンベア及び冷却ロール、冷却気体流を吹き付け可能な冷却気体供給部、冷却気体が収容され、その内部を成形物Sが通過可能な気体槽、並びに冷却液体が収容され、成形物Sが液体に接触可能な液体槽の少なくとも一種から構成されることも好ましい。
冷却気体としては、例えば空気を用いて、成形物Sを空冷することができる。
冷却液体としては、成形物Sの組成に影響を及ぼさない観点から、水が好ましく用いられる。
これらのうち、成形物の冷却効率を高める観点から、液体槽を用いることが好ましく、水が収容された液体槽を用いることが更に好ましい。
図1に示す製造装置10は、搬送部30の搬送方向下流側に、液体槽41及び搬送ロール42を有する冷却部40を備えている。
吐出口24から吐出されて押出成形され、搬送部30及び搬送ロール42によって搬送されている成形物Sは、該成形物Sを液体槽41内の液体Wに接触させることによって冷却することができる。
また図2に示す製造装置10は、搬送部30の上方且つ搬送方向下流側に冷却気体供給部45を備えており、成形物Sに対して気体流Aを接触させて、空冷することができる。
また図3(a)及び図4に示す製造装置10は、搬送部30を構成する搬送ロール36が、液体槽41に収容された液体Wに一部浸漬した状態で配されている。
本実施形態では、搬送ロール36の液体Wに浸漬していない周面で吐出口24から吐出された成形物Sを直接受け取るとともに、該周面に付着した成形物Sを搬送ロール36の回転によって、液体Wに接触させて冷却する。
これによって、成形物Sの成形時の形状を維持しやすくして、保存性及び取扱い性が高いフィラメントをより簡便に製造することができる。
更に、図3(b)に示す製造装置10は、搬送部30を構成する搬送ロール36が、液体槽41に収容された液体Wに全て浸漬した状態で配されている。
本実施形態では、吐出口24から吐出された成形物Sを液体Wに直接接触させて冷却するとともに、冷却した成形物Sを搬送ロール36の周面に付着させて搬送する。
以上のとおり、搬送部30と冷却部40とは分離して配置されていてもよく、一体配置されていてもよい。
成形物Sの冷却効率を高めて、高いハンドリング性及び高い連続供給性を両立した樹脂組成物のフィラメントを形成する観点から、搬送部30又は冷却部40における温度(冷却温度)に対する、樹脂組成物の溶融液温度の比(溶融液温度/冷却温度)を、絶対温度換算で、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.4倍以上とする。
また、冷却温度に対する、樹脂組成物の溶融液の温度の比(溶融液温度/冷却温度)を、絶対温度換算で、2.1倍以下、好ましくは1.9倍以下、より好ましくは1.7倍以下とすることが現実的である。
樹脂組成物の溶融液温度は、吐出口24における溶融液の温度とする。
このような温度比の範囲は、冷却速度に依存する樹脂の結晶化の度合を適度なものとして、また、フィラメントへのボイドや亀裂の発生を抑制でき、溶融紡糸法に適用可能な可撓性と強度とを両立したフィラメントを得る点で特に有利である。
成形物Sの冷却効率を高めるとともに、可撓性と強度とが両立したフィラメントを形成する観点から、冷却温度は、好ましくは−40℃以上、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは5℃以上である。
また冷却温度の上限は、用いる樹脂や目的とする物性に応じて適宜変更可能であるが、成形物の冷却に水を用いる場合、実用上の観点から、冷却温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
同様の観点から、冷却部40において、上述の温度範囲を有する気体又は液体を用いて、成形物Sを冷却するように構成されていることも好ましい。
フィラメントである樹脂組成物の製造方法は、以下のとおりである。
まず、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である樹脂組成物を、押出成形部20におけるシリンダ21内に供給して加熱溶融し、樹脂組成物の溶融液Lとする。
次いで、この溶融液を吐出口24に向かって供給するとともに、該溶融液を吐出口24からフィラメント状に且つ連続的に押し出して、フィラメント状の成形物Sとする。
続いて、この成形物Sを搬送部30に直接受け取らせつつ、下流へ搬送しながら冷却する。
成形物Sが十分に冷却固化する前に適度な外力を付与して、表面状態や形状が均一なフィラメントを形成しやすくする観点から、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1に対する、成形物Sの搬送速度V2の比(V2/V1)を、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、一層好ましくは7以上とする。
また過剰な延伸による形状変化を抑制する観点から、V2/V1を、好ましくは50以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは25以下とする。
同様の観点から、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1は、好ましくは0.1m/min以上、より好ましくは0.15m/min以上、更に好ましくは0.2m/min以上である。
過剰な延伸による形状変化を抑制する観点から、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1は、好ましくは20m/min以下、より好ましくは10m/min以下、更に好ましくは5m/min以下である。
吐出口24からの溶融液の押し出し速度は、例えばシリンダ21からの溶融液の供給速度を調整することによって、適宜変更することができる。
また同様の観点から、成形物Sの搬送速度V2は、好ましくは0.2m/min以上、より好ましくは1.0m/min以上、更に好ましくは1.5m/min以上、特に好ましくは2以上である。
過剰な延伸による形状変化を抑制する観点から、成形物Sの搬送速度V2は、好ましくは200m/min以下、より好ましくは100m/min以下、更に好ましくは50m/min以下、特に好ましくは35m/min以下である。
成形物Sの搬送速度は、例えば搬送部30におけるコンベアの移動速度やロールの回転速度を調整したり、あるいは、後述する巻取部50におけるフィラメントの巻き取り速度を調整したりすることによって、適宜変更することができる。
押出成形された成形物Sを一方向MDへ搬送しながら冷却する場合、上述のとおり、搬送部30で成形物Sを搬送しながら自然冷却してもよく、搬送部30で成形物Sを搬送しつつ、該成形物Sに気体又は液体を接触させて冷却してもよい。あるいは、成形物Sを冷却された搬送部30に接触させた状態で搬送しながら冷却してもよく、冷却部40を更に配して、成形物Sを冷却部40内に通過させながら冷却してもよい。
以上の工程を経て、フィラメントである樹脂組成物F(以下、単に「フィラメントF」ともいう。)を得ることができる。
得られたフィラメントFは、例えば図1ないし図3に示すように、巻取部50によって巻き取って、フィラメントFが巻回された巻回体の態様で保存することができる。
この巻回体は、後述する極細繊維の製造工程において、フィラメントを原料として、該原料を連続的に又は断続的に供給するために用いることができる。
これに代えて、図4に示すように、上述の製造装置10を備える溶融紡糸装置100の態様として、製造装置10によって製造されたフィラメントFを溶融紡糸装置100に直接供給して、繊維を製造してもよい。溶融紡糸装置100の詳細は後述する。
いずれの場合であっても、このフィラメントである樹脂組成物は、溶融紡糸法によって繊維を製造する際の原料としてそのまま用いることができるので、溶融時の原料の熱劣化が低減されるとともに、設備の増設などの設備面での問題が生じることなく、既存の設備に適用可能である。
また、フィラメントである樹脂組成物は、可撓性及び強度を両立しているので、保存時や溶融紡糸時における意図しない折れや割れ、座屈、破断を低減して、ハンドリング性が高いものとなる。
また上述した好適な製造方法によって製造されたフィラメントは、吐出口24から連続的に押し出された溶融液によって形成されるので、連続した一本の均一なフィラメントを製造することができる。その結果、フィラメントを原料として後述する溶融紡糸装置100を用いて繊維を製造する際に、原料を連続的に且つ安定的に供給して、繊維の製造を安定的に行うことができる。
続いて、溶融紡糸装置100について、図4及び図6を参照して説明する。この溶融紡糸装置100は、溶融紡糸法、特にメルトブロー法又は溶融電界紡糸法による繊維の製造を行う際に好適に用いることができる。メルトブロー法及び溶融電界紡糸法は、溶融紡糸法の中でも極細繊維の製造に特に適した紡糸方法である。
溶融紡糸装置100は、床や棚、机の上等に載置した状態で好適に用いられる据え置き型のものであってもよく、人手で把持可能な寸法を有し、人手によって把持した状態で好適に用いられるハンディタイプのものであってもよい。
図4に示す溶融紡糸装置100は、原料Fが供給される供給口110と、供給口110から供給された原料Fに混練力を加えずに溶融させる加熱部120と、加熱部120と直接に連通しており且つ溶融した原料を吐出するノズル130とを備える。
溶融紡糸装置100において供給される原料Fは、好ましくは熱可塑性樹脂を含む原料であり、特に上述したフィラメントである樹脂組成物Fが好ましく用いられる。
これに加えて、ノズル130から吐出された原料Fを気体流に搬送させるための気体流噴射部140、及び、ノズル130から吐出された原料Fを帯電させる電場を形成するための電極160の少なくとも一方を備えていることが更に好ましい。
溶融紡糸装置100は、原料Fが供給される供給口110を備える。
図4に示す溶融紡糸装置100は、供給口110の近傍に、ステッピングモーター等の電動モータ(図示せず)を有する駆動部111が備えられており、電動モータの回転によって、原料Fを供給口110側へ連続的に所定の速度で供給できるようになっている。
駆動部111における電動モータは、シャフト112を介して、平歯車である歯車113と連結されており、電動モータの回転を歯車113に伝達できるようになっている。
歯車113と対向する側には、歯車113の回転によって連れ回り可能なベアリング115を備えており、歯車113の軸方向とベアリング115の軸方向をそれぞれ一致させた状態で配されている。
歯車113とベアリング115との間に原料Fを供給することによって、歯車113の回転方向に沿って、原料Fを一方向MDに搬送し、供給口110に供給する。
駆動部111は、供給口110又は床等に設けられた支持部材(図示せず)によって固定されて支持されている。
溶融紡糸装置100は、供給口110から供給された原料Fを溶融させる加熱部120を備える。
加熱部120は、供給口110と連通している。加熱部120はヒーター等の加熱手段(図示せず)によって加熱されており、原料Fを加熱部120内に供給することによって、混練力を加えずに、原料Fを溶融させた溶融液とすることができる。
「混練力を加えずに」とは、溶融させる原料に対してせん断力を与えないことを指す。すなわち、加熱部120は、その内部にスクリューや撹拌翼等といった、原料に対してせん断力を与える部材や手段を備えていない。
加熱部120で溶融した溶融液は、供給口110から供給される原料Fの供給速度に応じて押し出されながら、ノズル130側へ移動する。
加熱部120における加熱温度は、供給される原料Fの物性に応じて適宜変更可能であるが、原料の固化温度以上の温度であることが好ましい。
例えば、原料としてPP(融点:160℃)を含む場合、加熱部120における加熱温度は、原料を確実に溶融させて均一な溶融液を得て、該溶融液の送液を容易にする観点から、好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上である、
またPPを用いた場合での加熱部120における加熱温度は、原料の熱劣化を抑制する観点から、好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
また、例えば、原料としてPLA(融点:160℃)を含む場合、加熱部120における加熱温度は、原料を確実に溶融させて均一な溶融液を得て、該溶融液の送液を容易にするた観点から、好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上である。
PLAを含む場合での加熱部120における加熱温度は、原料の熱劣化を抑制する観点から、好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
溶融紡糸装置100は、加熱部120と直接に連通し、溶融した原料を吐出する中空のノズル130と、ノズル130から吐出された溶融原料を気体流に搬送させるための気体流噴射部140とを備えている。
図4及び図6に示す溶融紡糸装置100は、ノズル130と、気体流噴射部140とを備えた紡糸ユニット200の形態となっている。また、紡糸ユニット200の上部には、加熱された気体流を気体流噴射部140に供給する気体流発生部150が備えられていることも好ましい。
図7(a)及び(b)は、溶融紡糸装置100における紡糸ユニット200の断面を模式的に示している。
図7(a)に示す紡糸ユニット200は、溶融紡糸法のうち、メルトブロー法に好適に用いられるものである。
図7(a)に示すノズル130は、紡糸ユニットの中央域に配されており、加熱部120と直接に連通している。つまり、供給口110、加熱部120及びノズル130はいずれも直接に連通している。
ノズル130は、加熱部120内で溶融した原料の溶融液を、加熱部120及びノズル130と連通する樹脂供給路131を介して、ノズル130の先端から外部に吐出できるようになっている。
ノズル130から吐出される溶融液は、供給口110から供給される原料Fの供給速度に応じて、押し出されるようにして吐出されるので、溶融液の吐出量は、原料の供給速度を適宜変更することによって適宜調整することができる。つまり、供給口110から供給される原料Fの供給速度が遅くなれば、ノズル130からの溶融液の吐出量は少なくなり、これに代えて、供給口110から供給される原料Fの供給速度が速くなれば、ノズル130からの溶融液の吐出量は多くなる。
ノズル130と対向する位置には、ネットコンベアーや捕集スクリーン等の公知の捕集手段(図示せず)が備えられており、吐出された溶融液が、繊維状に固化した状態で該捕集手段上に堆積し、捕集できるようになっている。
また図7(a)に示す気体流噴射部140は、紡糸ユニット200を正面からみたときに、ノズル130の位置を基準として外側に一個以上配されている。
気体流噴射部140は、ノズル130の後端側から先端側に向かって、加熱された気体流を噴射できるように構成されている。
気体流噴射部140には、加熱された気体流を気体流噴射部140に供給する気体流発生部150が接続されており、気体流を各気体流噴射部140,140に供給できるようになっている。利便性の観点から、気体流としては、例えば空気流を用いることができる。
一方、図7(b)に示す紡糸ユニット200は、溶融紡糸法のうち、溶融電界紡糸法に好適に用いられるものである。
図7(b)に示す紡糸ユニット200は、図7(a)に示す紡糸ユニット200と同様に、ノズル130及び気体流噴射部140を備えている。
本実施形態については、上述の実施形態と異なる部分を主として説明し、特に説明しない部分については、上述の実施形態の説明が適宜適用される。
図7(b)に示す紡糸ユニット200は、ノズル130を帯電させ、ノズル130との間に電場を生じさせて、原料Fを帯電させるための電極160を備えている。
本実施形態における電極160は、金属等の導電性材料から構成されており、電極160に電圧を印加する高電圧発生装置162と電気的に接続されている。また、ノズル130も金属等の導電性材料から構成されている。
電極160は、電極160とノズル130との間に電場を形成可能である限りにおいて、その形状や配置を適宜変更することができる。
同図に示す実施形態では、電極160は、ノズル130を囲むように配置された略椀形状となっており、ノズル130と電極160とは互いに離間している。電極160におけるノズル130に臨む面は凹曲面状に形成されている。
説明の便宜上、以下の説明では、電極160におけるノズル130に臨む面を「凹曲面161」ともいう。電極160は、ノズル130の先端側に開口端を有しており、その開口端の平面形状は、真円形又は楕円形等の円形形状となっている。電極160は、高電圧発生装置162を更に備えており、電極160と高電圧発生装置162とが接続されて、該装置によって、正又は負の電圧が印加されている。
また図7(b)に示すように、紡糸ユニット200は、電極160におけるノズル130に臨む面である凹曲面161に少なくとも配置された電気絶縁性の壁部165を備えていることも好ましい。これによって、ノズル130と電極160との間の放電を防いで、繊維の紡糸を安定して行うことができる。
壁部165は、例えばセラミックス材料や、樹脂系材料等の絶縁体から好ましく構成される。
気体流噴射部140の構成材料は特に制限されないが、ノズル130の帯電性を考慮して選択することが好ましく、例えば壁部165と同様の材料を用いることができる。
図6及び図7(b)に示す紡糸ユニット200は、ノズル130と対向する位置に、金属等の導電性材料から構成された捕集用電極が配置された捕集手段(図示せず)を用いてもよい。
捕集用電極は、接地されているか、又は高電圧発生装置に接続されて電圧が印加されていることが好ましい。この場合、捕集用電極には、ノズル130に印加されている電圧と異なる電圧が印加されていることも好ましい。
また捕集手段は、ノズル130と捕集用電極との間に配されたベルトコンベア等の搬送手段を有していてもよい。紡糸後捕集された繊維は、これを搬送手段によって下流の工程に搬送することができる。
以下に、溶融紡糸装置100を用いた溶融紡糸法による繊維の製造方法について説明する。
繊維の製造においては、原料Fとして、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物(すなわち、「フィラメントF」)を好ましく用いることができる。
溶融紡糸法としてメルトブロー法を採用する場合、まず、供給口110からフィラメントFを供給して、フィラメントFを加熱部120において加熱して、溶融液とする。この溶融液は、供給口110からフィラメントFが供給される速度に応じて、ノズル130側に押し出されるように移動する。
次いで、気体流発生部150から加熱された気体流を気体流噴射部140に供給して、気体流噴射部140から気体流を噴射させた状態で、溶融したフィラメントF、すなわちフィラメントFの溶融液をノズル130から吐出して紡糸する。これによって、溶融液を加熱気体流に搬送させながら延伸し、極細の繊維を紡糸することができる。
また、溶融紡糸法として溶融電界紡糸法を採用する場合には、まずメルトブロー法と同様に、供給口110からフィラメントFを供給して、フィラメントFを加熱部120において加熱して、溶融液とする。この溶融液は、供給口110からフィラメントFが供給される速度に応じて、ノズル130側に押し出されるように移動する。
次いで、ノズル130と電極160との間に電場を形成させた状態下に、フィラメントFの溶融液をノズル130から電場中に吐出して紡糸する。このとき、フィラメントFの溶融液は、電場の極性に応じて、正の極性又は負の極性に帯電した状態となっている。この電場は、図6及び図7(b)に示す紡糸ユニット200を例にとると、ノズル130を接地するとともに、高電圧発生装置162から発生した電圧を電極160に対して印加することによって、ノズル130と電極160との間に発生させることができる。
ノズル130と電極160との間の電位差の絶対値は、より細径の繊維を形成しやすくする観点から、好ましくは5kV以上、好ましくは10kV以上となるように、電圧を電極160に印加する。
またノズル130と電極160との間の電位差の絶対値は、意図しない放電や漏れ電流を抑制して、製造装置10の動作不良を防ぐ観点から、好ましくは100kV以下、さらに好ましくは80kV以下となるように、電圧を電極160に印加する。
吐出された溶融液は、その内部で発生した電気的反発力によって、溶融液が三次元的に延伸されながら微細化し、これとともに、樹脂の冷却固化が進行して、細径の繊維が形成される。
特に、溶融液の微細化を更に高めて、より細径の繊維を形成する観点から、溶融紡糸装置100は、図7(b)に示すように、気体流噴射部140と、電極160とをともに備えていることが更に好ましい。つまり、気体流発生部150から加熱された気体流を気体流噴射部140に供給して、気体流噴射部140から気体流を噴射させた状態で、且つ電極160に電極を印加して、電場を形成させた状態で、フィラメントFの溶融液を電場中に帯電させた状態でノズル130から吐出して紡糸することが更に好ましい。
また繊維の製造にあたり、メルトブロー法又は溶融電界紡糸法のいずれを採用する場合であっても、気体流噴射部140から噴射される気体流の温度は、樹脂組成物の構成成分にもよるが、より細径の繊維を形成しやすくする観点から、好ましくは100℃以上、更に好ましくは200℃以上である。
また気体流噴射部140から噴射される気体流の温度は、用いる樹脂の融点に応じて適宜変更可能であるが、現実的には、500℃以下、好ましくは450℃以下である。つまり、気体流噴射部140から噴射される気体流は、加熱気体であることが好ましい。
同様の目的のために、気体流噴射部140の吐出口において噴射される気体流の流量は、より細径の繊維を形成しやすくする観点から、好ましくは5L/min以上、更に好ましくは10L/min以上である。
また気体流噴射部140の吐出口において噴射される気体流の流量は、紡糸される繊維の意図しない破断を抑制する観点から、好ましくは500L/min以下、更に好ましくは400L/min以下である。
このような温度及び風量の少なくとも一方を有する気体流を接触させることによって、接触させた気体流の外力に起因して、溶融液の延伸効率を高めることができる。また、ノズル周囲の空間温度を高い状態に維持することができるので、溶融樹脂の冷却固化を遅らせて、溶融液の延伸状態を長時間維持できる。その結果、細径化した極細繊維を効率良く製造することができる。
特に、溶融電界紡糸法による繊維の製造の際に、吐出した溶融液に気体流を接触させて紡糸することによって、加熱気体との接触による溶融液の延伸効率の向上に加えて、帯電した溶融液に発生した電気的反発力によって延伸効率を更に高めることができるので、一層細径化した極細繊維を高い生産性で効率良く製造できるという利点がある。
以上の溶融紡糸法によって製造される繊維は、その繊維径を円相当直径で表した場合、繊維径が10μm以下のナノファイバと呼ばれる極細繊維となる。
ナノファイバは、その繊維径が、ナノファイバの強度向上の観点から、好ましくは0.1μm以上である。
またナノファイバの繊維径は、繊維径の細径化による表面積の向上、密着性の向上の観点から、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下のものである。
特に、繊維の形成にあたり、フィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物を原料として用いることによって、熱劣化を防止しながらも、高いハンドリング性及び高い連続供給性を兼ね備えたものとなる。
<メジアン繊維径の測定方法>
繊維の繊維径は、走査型電子顕微鏡観察による二次元画像から、紡糸された繊維の塊、繊維どうしの交差部分、ポリマー液滴といった欠陥を除いた繊維を任意に200本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引いたときの長さを繊維径として直接読み取ることで測定することができる。測定した繊維径の分布からメジアン繊維径を求め、これを本発明の繊維径とする。
溶融紡糸装置100を用いた電界紡糸方法によって製造されたナノファイバ又はその堆積体は、それを集積させた繊維成型体として各種の目的に使用することができる。
繊維成型体の形状としては、シート、綿状体、糸状体、多孔質膜などが挙げられる。
繊維成型体は、他のシートと積層したり、各種の液体、微粒子、ファイバなどを含有させたりして使用してもよい。
繊維シートは、例えば医療目的や、美容目的、装飾目的等の非医療目的でヒトの肌、歯、歯茎、毛髪、非ヒト哺乳類の皮膚、歯、歯茎、枝や葉等の植物表面等に付着されるシートとして好適に用いられる。
また、高集塵性でかつ低圧損の高性能フィルタ、高電流密度での使用が可能な電池用セパレータ、高空孔構造を有する細胞培養用基材等としても好適に用いられる。繊維の綿状体は防音材や断熱材等として好適に用いられる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、上述した実施形態における電極160は、電極160に接続され、電極160に電圧を印加する高電圧発生装置162を備えた態様として説明したが、原料Fを帯電させるための電場を形成できる限りにおいて、その態様に特に制限はない。
詳細には、ノズル130と、電極160と、ノズル130に接続され、ノズル130に電圧を印加する高電圧発生装置162とを備える態様となっていてもよく、ノズル130と、捕集用電極が配置された捕集手段とを備え、ノズル130及び捕集用電極の少なくとも一方に電圧を印加して、電場を発生させてもよい。この場合であっても、原料Fを帯電させるための電場を形成することができる。
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の溶融紡糸用樹脂組成物及びその製造方法、並びに繊維及びその製造方法を開示する。
<1>
200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物。
<2>
前記樹脂組成物は、200℃、せん断速度0.1s−1における溶融粘度が、0.05Pa・s以上250Pa・s以下、好ましくは150Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは10Pa・s以下であり、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上である、前記<1>に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<3>
前記樹脂組成物は、引張強度が10MPa以上150MPa以下、好ましくは12MPa以上、より好ましくは15MPa以上、更に好ましくは20MPa以上であり、好ましくは120MPa以下、より好ましくは100MPa以下である、前記<1>又は<2>に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<4>
前記フィラメントにおける長さ方向と直交する方向における断面平均直径が1mm以上30mm以下である、前記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<5>
前記フィラメントの長さ方向と直交する方向における断面平均直径は、1mm以上30mm以下、好ましくは1.3mm以上、より好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは5mm以下、一層好ましくは1.7mm以下である、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<6>
前記フィラメントにおける断面平均直径に対する長さの比(フィラメントの長さ/フィラメントの断面平均直径)が20以上である、前記<1>ないし<5>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<7>
前記フィラメントにおける断面平均直径に対する長さの比(フィラメントの長さ/フィラメントの断面平均直径)が、20以上1000000以下、好ましくは50以上、より好ましくは100以上である、前記<1>ないし<6>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<8>
前記フィラメントの長さが、50mm以上10000m以下、好ましくは5000m以下であり、好ましくは100mm以上である、前記<1>ないし<7>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<9>
前記樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、70質量部以上100質量部以下、好ましくは75質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは95質量部以上である、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<10>
熱可塑性樹脂を主たる成分として含む、前記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<11>
前記樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる一種以上を含み、好ましくはポリプロピレン及びポリ乳酸系樹脂から選ばれる一種以上を含む、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<12>
前記熱可塑性樹脂はポリ乳酸系樹脂を含む、前記<9>ないし<11>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<13>
前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が150000g/mol以下であるポリプロピレン樹脂、及び、重量平均分子量が150000g/mol以下であるポリ乳酸系樹脂から選ばれる一種以上を含む、前記<9>ないし<12>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<14>
前記熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を含み、
前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量は、1000g/mol以上150000g/mol以下、好ましくは100000g/mol以下、より好ましくは80000g/mol以下であり、好ましくは5000g/mol以上、より好ましくは10000g/mol以上である、前記<9>ないし<13>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<15>
前記熱可塑性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を含み、
前記ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、1000g/mol以上150000g/mol以下、好ましくは100000g/mol以下、より好ましくは80000g/mol以下、更に好ましくは50000g/mol以下であり、好ましくは5000g/mol以上、より好ましくは10000g/mol以上である、前記<9>ないし<14>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<16>
破断ひずみが1%以上20%以下、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上であり、更に好ましくは2.5%以上であり、好ましくは18%以下である、前記<1>ないし<15>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<17>
前記樹脂組成物100質量部に対して、添加剤を0質量部以上40質量部以下含み、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下含む、前記<1>ないし<16>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<18>
前記添加剤が、エラストマー、可塑剤、改質剤、分解抑制剤及び電荷調整剤から選ばれる一種又は二種以上を含む、前記<17>に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
<19>
200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である樹脂組成物の溶融液をフィラメント状に成形し、その成形物を搬送しながら冷却する工程を有する、フィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物の製造方法。
<20>
前記溶融液を吐出口から押し出して成形する押出成形部と、その成形物を搬送する搬送部とを備えるフィラメント製造装置を用い、
前記吐出口と前記搬送部との距離を、1mm以上50mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは15mm以下とし、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とする、前記<19>に記載の製造方法。
<21>
前記溶融液を吐出口から押し出して成形する押出成形部と、その成形物を搬送する搬送部と、該成形物を冷却する冷却部とを備え、
フィラメント状の前記成形物を、空冷、冷却ロール、気体槽及び液体槽の少なくとも一種を用いて冷却する、前記<19>又は<20>に記載の製造方法。
<22>
前記冷却部が、液体が収容された液体槽であり、
前記搬送部が、前記液体に一部浸漬した状態で配された搬送ロールであるフィラメント製造装置を用い、
前記搬送ロールの前記液体に浸漬していない周面で、前記吐出口から吐出された前記成形物を直接受け取るとともに、該周面に付着した該成形物を該搬送ロールの回転によって、該液体に接触させて冷却する、前記<21>に記載の製造方法。
<23>
前記溶融液を押し出してフィラメント状に成形し、その成形物を搬送しながら冷却する工程を備え、
前記溶融液の押し出し速度V1に対する、前記成形物の搬送速度V2の比(V2/V1)を、1以上50以下、好ましくは3以上、より好ましくは5以上とし、好ましくは35以下、より好ましくは25以下とする、前記<19>ないし<22>のいずれか一に記載の製造方法。
<24>
前記成形物の搬送速度V2は、0.2m/min以上200m/min以下、好ましくは1m/min以上、より好ましくは1.5m/min以上であり、好ましくは100m/min以下、より好ましくは50m/min以下、特に好ましくは35m/min以下である、前記<23>に記載の製造方法。
<25>
ポリプロピレンを含む前記樹脂組成物を用い、
前記樹脂組成物を、180℃以上280℃以下、好ましくは190℃以上であり、好ましくは260℃以下に加熱して前記溶融液とする、前記<19>ないし<24>のいずれか一に記載の製造方法。
<26>
溶融紡糸装置を用いる繊維の製造方法であって、
前記溶融紡糸装置は、原料が供給される供給口と、該供給口から供給された該原料に混練力を加えずに溶融させる加熱部と、該加熱部と直接に連通しており且つ溶融した該原料を吐出するノズルとを備え、
前記原料として、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物を用い、前記供給口から該フィラメントを供給しながら、溶融した前記原料を前記ノズルから吐出して紡糸する、繊維の製造方法。
<27>
前記溶融紡糸装置は、前記ノズルから吐出された前記原料を気体流に搬送させるための気体流噴射部を更に備え、
前記供給口から前記フィラメントを供給しながら、且つ前記気体流噴射部から気体流を噴射させた状態下に、溶融した前記原料を前記ノズルから吐出して紡糸する、前記<26>に記載の繊維の製造方法。
<28>
前記溶融紡糸装置は、前記ノズルから吐出された前記原料を帯電させるための帯電手段を更に備え、
前記供給口から前記フィラメントを供給しながら、且つ前記帯電手段によって電場を形成した状態下に、溶融した前記原料を前記ノズルから前記電場中に吐出して紡糸する、前記<26>又は<27>に記載の繊維の製造方法。
<29>
前記<1>ないし<18>のいずれか一に記載の溶融紡糸用樹脂組成物によって形成された繊維。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。以下の表中、「−」の欄は原料を非含有であるか、又は評価を実施していないことを示す。
〔実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−3〕
本実施例及び比較例は、フィラメントである樹脂組成物を製造するときの、樹脂組成物の組成と、フィラメントの可撓性及び強度との関連を調べたものである。また、これらのフィラメントから製造された繊維の形成性に関するものである。
〔1.フィラメントの製造〕
フィラメントの製造装置10を用いて、PP又はPLAと、電荷調整剤と、エラストマーと、改質剤とを以下の表1に示す割合で含む樹脂組成物を溶融混練し、樹脂の溶融液を吐出口24から押出成形し、成形物Sとした。吐出口24の直径は5mm、距離D1は10mm、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1は3〜4.2m/min、成形物Sの搬送速度V2は1〜2m/minとした。実施例1−1では、図3(a)に示す構造を有するフィラメントの製造装置10を用いて、成形物Sを搬送しながら、成形物Sを液体槽中の水に浸漬させて水冷し、フィラメントである樹脂組成物を製造した。
実施例1−1以外の実施例並びに比較例1−1ないし比較例1−3は、図2に示すような構造を有し、冷却気体供給部45を備えていない製造装置10を用いて、搬送部30をベルトコンベアの態様とし、成形物Sを搬送しながら自然に空冷させて、フィラメントである樹脂組成物を製造した。比較例1−3は、3Dプリンタ用のPP製フィラメント(ユニプラス滋賀株式会社製、MFR:20g/10min(条件:230℃、2.16kg))を用いた。
フィラメントの製造に用いた原料は、以下のとおりである。
・ポリプロピレン:ポリプロピレン(PolyMirae社製、MF650Y、融点160℃、MFR:1800g/10min(条件:230℃、2.16kg)、重量平均分子量:7.9万g/mol。
・ポリ乳酸A:NatureWorks社製、品番4032Dを、85℃、95%RHの環境下に18時間置いて加水分解して、重量平均分子量を4.2万g/molに調整したもの。
・ポリ乳酸B:NatureWorks社製、品番4032Dを、85℃、95%RHの環境下に12時間置いて加水分解して、重量平均分子量を8.1万g/molに調整したもの。
・ポリ乳酸C:NatureWorks社製、品番6252D(重量平均分子量:10万g/mol)、MFR:70〜85g/10min(条件:210℃、2.16kg)。
・ポリ乳酸D:NatureWorks社製、品番4032D(重量平均分子量:20万g/mol)、MFR:7g/10min(条件:210℃、2.16kg)。
・電荷調整剤:N−ステアロイルメチルタウリンナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製、商品名:ニッコールSMT)
・エラストマー:ポリオレフィン系エラストマー(三井化学株式会社製、タフマー PN−20300)
・改質剤:低結晶性ポリオレフィン(出光興産株式会社製、L−MODU S400)
〔2.繊維の製造〕
各実施例及び比較例で得られたフィラメントである樹脂組成物を、図5に示す溶融紡糸装置100に供給して、繊維を製造した。各実施例及び比較例は、図6に示す紡糸ユニット200を用い、いずれも溶融電界紡糸法によって製造した。製造条件を以下に示す。
〔繊維の製造条件〕
・製造環境:27℃、50%RH
・加熱部120内の加熱温度:250℃
・ノズル130からの溶融液の吐出速度:2〜6g/min
・ノズル130(ステンレス製)への印加電圧:0kV(アースに接地されている。)
・電極160(ステンレス製)への印加電圧:−20kV
・ノズル130の先端における内径:0.4mm
・ノズル130先端と捕集手段との間の距離:600mm
・気体流噴射部140から噴射される空気流の温度:450℃
・気体流噴射部140から噴射される空気流の流量:150L/min
〔フィラメントの作製の可否〕
各実施例及び比較例について、フィラメントが作製できているか否かを、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
G:上述のフィラメントの断面直径の測定方法で計測したフィラメントの断面直径が1mm以上であるフィラメントが作製できる。
P:上述のフィラメントの断面平均直径の測定方法で計測したフィラメントの断面直径が1mm未満でありフィラメントが安定的に作製できないか、または、作製されたフィラメントが屈曲しやすく不安定な形状であり、フィラメントとしての回収及び使用が困難である。
〔フィラメントの溶融粘度及び引張強度〕
上述した方法にてそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
〔フィラメントの断面平均直径及びフィラメントの断面直径の標準偏差〕
フィラメントの断面平均直径は、上述のフィラメントの断面平均直径の測定方法にて測定し、これとともに、フィラメントの断面直径標準偏差を求めた。標準偏差が小さいほど、一本のフィラメントにおける断面直径が均一であることを示す。結果を表1に示す。
〔フィラメント断面の真円度の測定〕
フィラメント製造における安定性の評価として、フィラメント断面の真円度の測定を行った。フィラメントの断面の真円度は、上述した断面平均直径の測定と同様に、各測定点での長径と短径とを測定し、各測定点での短径/長径の比を算出した。全測定点での短径/長径の比の算術平均値を真円度とした。
本測定方法における真円度は0(ゼロ)超1以下の範囲で表され、フィラメントの断面形状が真円であれば1と算出され、真円度が1に近いほど、断面形状が真円に近いものである。本実施例で用いたフィラメントの製造装置10における吐出口24の形状は、真円度が1に近い円形形状であるので、フィラメント断面の真円度が1に近いことは、樹脂の溶融液を吐出口24から押出成形した直後の断面形状と、冷却固化後のフィラメントの断面形状との形状変化が少なく、安定的にフィラメントを製造できることを意味している。結果を表1に示す。
〔フィラメントの断面平均直径に対するフィラメント長さの比〕
上述した方法にてそれぞれ測定し、フィラメント長さをフィラメントの断面平均直径で除することにより、比を算出した。結果を表1に示す。
〔フィラメントの曲げ評価〕
各実施例及び比較例で製造したフィラメントについて、以下の方法で曲げ評価を行った。長さ15cmの直線状のフィラメントの一端を人手で固定し、その状態でフィラメントの他端を、フィラメントの中央部を折り曲げ軸として、固定された一端側に接触させるように折り曲げていったときに、フィラメントの破断が生じるときのフィラメントの角度に基づいて、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。C<B<Aの順に可撓性が高く、保存時及び紡糸時の取扱いが容易となるものである。
<評価基準>
A:フィラメントの他端を180度移動させて折り曲げても破断が生じずに、フィラメントの両端を容易に接触させることができ、可撓性に優れる。
B:フィラメントの他端を120度以上180未満移動させたときに、フィラメントの破断が生じ、可撓性にやや劣る。
C:フィラメントの他端を120度未満移動させたときに、フィラメントの破断が生じ、可撓性が悪い。
〔フィラメントの破断ひずみ〕
各実施例及び比較例で製造したフィラメントについて、引張試験機(島津製作所社製、AG−X plus)を用いて、上述した破断ひずみの測定及び算出方法に基づいて算出した。結果を表1に示す。
〔メジアン繊維径の測定〕
実施例及び比較例の各製造条件において、紡糸された繊維の繊維径を上述した方法で測定した。なお、紡糸ユニット200から溶融液を吐出できないことによって繊維の製造ができなかったものについては、「紡糸不可」とした。結果を表1に示す。
Figure 2021092010
表1に示すように、各実施例の条件は、比較例のものと比較して、用いる樹脂の原料が異なる場合でも、連続供給が可能なフィラメントの長さを有しつつ、フィラメント曲げ評価及び引張強度を高いレベルで備えていることから、軸に巻き付けたり屈曲させて省スペース化したりすることができるとともに溶融紡糸装置へギアを用いて押し込むことができる高いハンドリング性と高い連続供給性を有するものである。また各実施例で得られたフィラメントを用いて製造した繊維はいずれも極細であり、繊維の製造効率も高いものであることが判る。
特に、実施例1−4〜1−6によれば、従来の技術では溶融紡糸法への適用が困難であったPLAを用いた場合であっても、熱や加水分解等による原料の劣化も生じにくく、高い製造効率で繊維が製造できることも判る。
なお、比較例1−2で用いたPLAは、表1に示すように、溶融粘度が各実施例の樹脂組成物よりも高いものであったので、製造装置10では吐出が困難であり、フィラメントの製造ができなかった。
また、実施例1−5及び実施例1−6の条件で作製したフィラメントにおける引張強度及び破断ひずみは、引張試験にて用いたロードセルが100Nであったため、オーバーロードとなった時点での値を示しており、引張強度及び破断ひずみが高いものであることが判る。なお、実施例1−5及び1−6の引張強度は100MPa以下であった。
一方、比較例1−3に示す3Dプリンタ用のフィラメントについては、引張試験において最大試験力を示したが、破断することなく伸長し続けたため、破断ひずみを測定することはできなかった。
〔実施例2−1〜2−11〕
本実施例は、フィラメントである樹脂組成物を製造するときに、吐出口24と搬送部30との距離D1が、フィラメント作製に及ぼす影響を調べたものである。
図2に示すような構造を有し、冷却気体供給部45を備えていない製造装置10を用いて、熱可塑性樹脂として100質量%のポリプロピレン(実施例1−1に用いたものと同一のもの)を原料として用い、溶融混練を経て、樹脂の溶融液を吐出口24から押出成形し、成形物Sとした。吐出口の直径は5mmとし、距離D1、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1、成形物Sの搬送速度V2及びV2/V1比は、以下の表2に示すとおりとした。また、搬送部30はベルトコンベアの態様とし、成形物Sを搬送しながら自然に空冷させて、各実施例のフィラメントである樹脂組成物を製造した。
表2には実施例1−1の製造条件の詳細を併せて示している。
〔フィラメントの断面平均直径及びその標準偏差、断面の真円度〕
上述した〔フィラメントの断面平均直径及びその標準偏差〕及び〔フィラメント断面の真円度の測定〕のとおり行った。結果を表2に示す。
〔フィラメントの平均断面直径に対するフィラメント長さの比〕
上述した方法にてフィラメントの平均断面直径と長さとをそれぞれ測定し、フィラメント長さをフィラメントの平均断面直径で除することにより、比を算出した。結果を表2に示す。
〔フィラメントの作製の可否〕
上述した評価基準にて評価した。結果を表2に示す。
Figure 2021092010
表2に示すように、吐出口24と搬送部30との距離D1を5mm以上50mm以下の範囲とすることによって、所定の直径を有するフィラメントが安定的に且つ連続的に製造できることが判る。
また、吐出口24からの溶融液の押し出し速度V1、成形物Sの搬送速度V2及びV2/V1比の少なくとも一つを好適な範囲に設定することによって、フィラメント断面直径のばらつきが少なく、且つ断面形状が良好なフィラメントを連続的且つ安定的に製造することができる。
10 フィラメントの製造装置
20 押出成形部
30 搬送部
40 冷却部
100 溶融紡糸装置
110 供給口
120 加熱部
130 ノズル

Claims (10)

  1. 200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物。
  2. 前記フィラメントにおける長さ方向と直交する方向における断面平均直径が1mm以上30mm以下である、請求項1に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  3. 前記フィラメントにおける断面平均直径に対する長さの比(フィラメントの長さ/フィラメントの断面平均直径)が20以上である、請求項1又は2に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂を主たる成分として含み、該熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂及びポリエステル樹脂の一種以上を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂はポリ乳酸系樹脂を含む、請求項4に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、重量平均分子量が150000g/mol以下であるポリプロピレン樹脂、又は、重量平均分子量が150000g/mol以下であるポリ乳酸樹脂を含む、請求項4に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  7. 破断ひずみが2%以上である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の溶融紡糸用樹脂組成物。
  8. 200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下である樹脂組成物の溶融液をフィラメント状に成形し、その成形物を搬送しながら冷却する工程を有する、フィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物の製造方法。
  9. フィラメント状の前記成形物を、空冷、冷却ロール、気体槽及び液体槽の少なくとも一種を用いて冷却する、請求項8に記載の製造方法。
  10. 溶融紡糸装置を用いる繊維の製造方法であって、
    前記溶融紡糸装置は、原料が供給される供給口と、該供給口から供給された該原料に混練力を加えずに溶融させる加熱部と、該加熱部と直接に連通しており且つ溶融した該原料を吐出するノズルとを備え、
    前記原料として、200℃及びせん断速度0.1s−1における溶融粘度が250Pa・s以下であり、引張強度が10MPa以上であるフィラメントである溶融紡糸用樹脂組成物を用い、前記供給口から該フィラメントを供給しながら、溶融した前記原料を前記ノズルから吐出して紡糸する、繊維の製造方法。
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