JP2021091923A - Ce含有耐食鋼 - Google Patents
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Abstract
【課題】腐食の発生起点となる非金属介在物の組成の改質により、優れた耐食性を有するCe含有耐食鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.001〜1%、Si:0.1〜2%、Mn:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.03%、Al:0.001〜1%、Ca:0.0001〜0.03%、Ce:0.001〜1%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、硫化物系介在物のCe濃度が10%以上である。要求される耐食性のレベルに応じて、Cr:10〜35%を鋼に添加してもよい。さらに高い信頼性で耐食性を確保したい場合には、Ni:5〜40%、Mo:0.1〜10%、Cu:0.1〜3%、N:0.01〜0.3%を添加してもよい。【選択図】図1
Description
本発明は、Ce含有耐食鋼に関する。
鋼は、乾燥した大気中では実用上充分な耐食性を有している。さらに、Crを含有するステンレス鋼は、湿潤環境でも高い耐食性を有している。しかし、これら耐食鋼であっても、海浜環境などの塩化物イオン濃度が高い条件下では、孔食、すき間腐食、応力腐食割れなどの局部腐食が発生する場合がある。このような腐食損傷を低減するため、Ni、Cr、Moなどの希少元素を、鋼に多量に添加して高耐食化することが通常行われている。例えば、Moを、質量%にて2.0〜10.00%添加したオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、Ni、Cr、Moなどの希少金属を多量に添加した鋼材は、原料および製造コストが高いという課題をかかえている。また、Niを添加した海浜用の耐候性鋼も実用化されているが(例えば、特許文献2参照)、付着塩分量が多いと、局部的な侵食が生じてしまうことが知られている。
ステンレス鋼などに代表される耐食鋼の局部腐食は、製造過程で生成する硫化物などの非金属介在物を起点として発生することが多い。介在物が水溶液に溶解しやすいほど鋼の耐食性が低下する傾向にあるため、介在物の組成制御による難溶性化が精力的に行われている。具体的には、Ti系介在物およびZr系介在物を鋼中に生成させた耐食鋼(例えば、特許文献3参照)、Mn硫化物をTi系硫化物に変化させることで耐食性を向上させたフェライト系ステンレス鋼(例えば、特許文献4参照)などが開示されている。
ところで、鋼の熱間加工性を改善させるために、Caを添加する場合がある。鋼中のSは、粒界に偏析して熱間加工性を劣化させるが、Caには、鋼中のSを硫化物として固定することで熱間加工性を改善する作用がある。しかし、Ca添加により生成する硫化物系介在物CaSは、水溶液に極めて容易に溶解し、鋼の耐食性を低下させる。鋼に対するCa添加量を調整することで、熱間加工性と耐食性とを兼備した二相ステンレス鋼や(例えば、特許文献5参照)、CaSの生成を抑制したフェライト系ステンレス鋼が開示されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、これらの技術をもってしても、製造条件によっては、CaSが生成してしまう場合がある。CaSを起点とする腐食を防止して鋼の耐食性を高めるためには、CaSの組成を変化させて、水溶液に溶解しにくい介在物にする必要がある。しかし、CaSの組成を制御して難溶性化させる技術は、未だ提示されていない。
CaSを難溶性化させる添加元素としては、硫化物を形成しやすく、水溶液に対する硫化物の溶解度が低いことが望ましい。このような元素として、希土類元素のCeがある。Ceは、硫化物を形成しやすいため、Ceを鋼に添加することで、硫化物を形成するCaの一部をCeで置換した形態の介在物を生成させる可能性がある。また、Ceの硫化物は、水溶液に対する溶解度が低いことも知られている。既存の鋼にCeを添加した例はある。例えば、硫黄酸化物が多い大気環境において耐食性に優れる鋼(例えば、特許文献7参照)や、耐食性に有害なMnS介在物の形成を阻害したステンレス鋼(例えば、特許文献8参照)、Ce系硫化物を鋼中に生成させることで、ステンレス鋼を高耐食化させる方法(例えば、非特許文献1参照)が開示されている。しかし、これらの技術は、耐食性に有害な介在物の生成を抑制するためのものであり、水溶性のCaSの組成を制御して難溶性化させるのに必要な条件が開示されているものとは言えない。Ceの添加によりCaSが難溶性化するのかどうか、さらには、難溶性化に適する介在物中のCeの濃度などの具体的な数値やその範囲は、明らかにされていない。
Masashi Nishimoto, Izumi Muto, Yu Sugawara, and Nobuyoshi Hara, "Micro-Electrochemical Properties of CeS Inclusions in Stainless Steel and Inhibiting Effects of Ce3+ Ions on Pitting", Journal of The Electrochemical Society, 2017, 164, 13, C901-C910
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、腐食の発生起点となる非金属介在物の組成の改質により、優れた耐食性を有するCe含有耐食鋼を提供することを目的とする。
本発明者は、以上のような従来技術の限界を克服し、未解決の課題を解決するため種々の試験研究を行い、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るCe含有耐食鋼は、質量%で、C:0.001〜1%、Si:0.1〜2%、Mn:0.001〜2%、P:0.001〜0.1%、S:0.0001〜0.03%、Al:0.001〜1%、Ca:0.0001〜0.03%、Ce:0.001〜1%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、硫化物系介在物のCe濃度が10%以上であることを特徴とする。
本発明に係るCe含有耐食鋼は、さらに質量%で、Cr:10〜35%を含有していてもよい。また、さらに質量%で、Ni:5〜40%、Mo:0.1〜10%、Cu:0.1〜3%、N:0.01〜0.3%のうちのいずれか1種または2種以上を含有していてもよい。また、本発明に係るCe含有耐食鋼は、孔食電位が0.3 V(vs. Ag/AgCl, 3.33 mol/L KCl)以上であることが好ましい。
本発明によれば、腐食の発生起点となる非金属介在物の組成の改質により、優れた耐食性を有するCe含有耐食鋼を提供することができる。特に、合金元素を多量に添加することなく、硫化物系介在物の組成を変化させて無害化することにより、Ce含有耐食鋼を得ることができる。また、海水や化学薬品など腐食性を有する環境においても、早期に腐食が発生することのないCe含有耐食鋼を提供することが可能である。
以下、実施例等に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
鋼の耐食性を向上させるための硫化物系介在物の組成としては、質量%で、Ceを10%以上含有させる必要がある。硫化物系介在物のCe濃度が、質量%で10%を下回る場合には、十分な耐食性向上の効果が現れない。特に、高い耐食性を必要とする時は、Ceの濃度を40%以上に制御することが望ましい。なお、ここでの硫化物系介在物の組成とは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡により分析した値である。具体的には、鋼の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、硫化物系介在物を含む観察視野の特性X線を計測・積算し、Ce、Ca、Sの3つの元素について定量分析を行うことで、介在物組成を評価したときの値である。
鋼の耐食性を向上させるための硫化物系介在物の組成としては、質量%で、Ceを10%以上含有させる必要がある。硫化物系介在物のCe濃度が、質量%で10%を下回る場合には、十分な耐食性向上の効果が現れない。特に、高い耐食性を必要とする時は、Ceの濃度を40%以上に制御することが望ましい。なお、ここでの硫化物系介在物の組成とは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡により分析した値である。具体的には、鋼の表面を走査型電子顕微鏡により観察し、硫化物系介在物を含む観察視野の特性X線を計測・積算し、Ce、Ca、Sの3つの元素について定量分析を行うことで、介在物組成を評価したときの値である。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼の硫化物系介在物とは、CaとCeとの複合硫化物(Ca, Ce)Sであり、硫化物を形成するCaの一部を、Ceで置換した形態の介在物、もしくはCa硫化物とCe硫化物とが隣り合った形態の介在物である。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Cは、鋼の強度を増大させるが、多量に含まれていると鋼の耐食性に悪影響を及ぼす。Cを0.001%未満に低減するには製造コストが高くなるため、0.001〜1%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Siは、脱酸のために有用な元素であるが、あまりに多量に添加されると加工性が低下するため、0.1〜2%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Mnは、脱酸と強度確保のために有用な元素であるが、過剰な添加によりMnS介在物が生成し、耐食性が低下するため、0.001〜2%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Pは、不可避不純物として混入する元素であり、耐食性に有害なため、0.1%以下に低減することが望ましい。ゼロにすることは困難であるため、下限を0.001%とする。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Sは、不可避不純物として混入する元素であり、多量に含まれていると硫化物系介在物が多量に生成し、耐食性の低下を引き起こす。S含有量が0.03%を超えると耐食性向上の効果が現れなくなることから、0.03%以下に低減することが望ましい。ゼロにすることは困難であるため、下限を0.0001%とする。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Alは、脱酸のために有効な元素であるが、あまりに多量に添加されると酸化物系介在物であるAl2O3の生成量が増加して、表面品質が低下しやすくなるため、0.001〜1%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Caは、脱酸のために有効な元素であるとともに、鋼中のSを硫化物として固定することで熱間加工性を改善するのに有効な元素であり、その効果は0.0001%以上で顕著である。しかし、過剰な添加によりCaSが生成しやすくなり、(Ca, Ce)S中のCe濃度が相対的に低くなって、耐食性向上の効果が減少することから、0.0001〜0.03%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Ceは、硫化物をCaSから(Ca, Ce)Sに変化させるために必要不可欠である。Ce量が0.001%を下回る場合、(Ca, Ce)S中のCeの濃度が低くなり、耐食性向上の効果が小さくなる。1%を越えると熱間加工性が低下する場合があるため、0.001〜1%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Crは、ステンレス鋼の主要合金元素のひとつであり、鋼の耐食性の向上に極めて有効な元素であるが、必ずしも必要な添加元素ではなく、要求される耐食性のレベルに応じて添加してもよい。しかし、過剰な添加は、熱間加工性などの製造性の低下を招くため、10〜35%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Niは、必ずしも必要な添加元素ではないが、耐食性の向上に有効な元素である。また、オーステナイト安定化元素であり、5%以上の添加でオーステナイト相が安定的に得られやすくなる。しかし、過剰な添加により熱間加工性が低下しやすくなるため、添加する場合には、5〜40%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Moは、必ずしも必要な添加元素ではないが、耐食性の向上に極めて有効な元素であり、0.1%以上の添加で耐食性向上の効果が顕著に現れる。しかし、過剰な添加により鋼中で金属間化合物を生成し、靭性を低下させるため、添加する場合には、0.1〜10%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Cuは、必ずしも必要な添加元素ではないが、耐食性の向上に有効な元素であり、0.1%以上の添加で耐食性向上の効果が顕著である。しかし、過剰な添加には熱間加工性を低下させるため、添加する場合には、0.1〜3%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼で、Nは、必ずしも必要な添加元素ではないが、耐食性の向上に有効な元素であり、0.01%以上の添加で耐食性向上の効果が顕著に現れる。しかし、過剰な添加により靭性を損なうため、添加する場合には、0.01〜0.3%にすることが望ましい。
本発明の実施の形態のCe含有耐食鋼は、より高い信頼性で耐食性を確保したい場合には、孔食電位が0.3 V (vs. Ag/AgCl, 3.33 mol/L KCl)以上であることが望ましい。ここでの孔食電位とは、アノード分極曲線において、電流密度が1 A/m2 (100μA/cm2)に達した電位とする。電位表示の基準は、3.33 mol/L KCl水溶液を内部液とする銀・塩化銀電極である。電位の掃引速度は、20 mV/minとする。温度25℃の0.001 mol/L NaCl含有H3BO3-Na2B4O7混合液(pH 8.6)中における炭素鋼の孔食電位が0.3 V以上であれば、屋外大気腐食環境において、良好な耐食性を示す。温度25℃の0.1 mol/L NaCl(pH 5.5)中におけるフェライト系ステンレス鋼の孔食電位が0.3 V以上であれば、配管などの水溶液環境において、良好な耐食性を示す。温度25℃の3 mol/L NaCl(pH 5.0)中におけるオーステナイト系の高合金ステンレス鋼の孔食電位が0.3 V以上であれば、腐食性の高い海水環境などにおいても、良好な耐食性を示す。
以下、実施例に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
表1に示す化学組成(質量%)の鋼を溶製し、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延を施して、板厚1 mmの冷延板を製造した。試験片表面をSiC紙で320番から1500番まで湿式研磨した後、6μmと1μmのダイヤモンドペーストで鏡面研磨を行った。研磨後、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分析装置などを使用し、各試験片に存在する硫化物系介在物の組成を分析した。表1に、各試験片に存在する介在物の組成分析の結果を示す。
表1の番号1〜4は、炭素鋼の化学組成である。番号1に示すように、Ceを添加しない炭素鋼には、主にCaS介在物が生成していた。番号2〜4が炭素鋼にCeを添加した例であり、介在物の組成は、主に(Ca, Ce)Sであった。鋼に添加するCeの量が増加するとともに、介在物中のCe濃度が高くなった。番号2に示すように、Ceの添加量が0.001%未満の場合、介在物中のCe濃度が、質量%で10%を下回った。
表1の番号5に示すように、Ceを添加しないフェライト系ステンレス鋼では、主にCaS介在物が生成していた。表1の番号6〜8に示すように、Ceを添加したステンレス鋼では、主に(Ca, Ce)Sが生成しており、CeとCaの添加量により、(Ca, Ce)S中のCe濃度が変化した。番号8に示すように、鋼に添加するCeの量が0.001%以上であっても、Caの添加量が0.03%を上回る場合、介在物中のCe濃度が、質量%で10%を下回った。
表1の番号9〜12に示すように、オーステナイト系の高合金ステンレス鋼においても、Ceの添加により、主な介在物の組成がCaSから(Ca, Ce)Sへと変化した。Ceの添加量が増加するとともに、介在物中のCe濃度が増加した。
次に、試験片を鏡面研磨した後、介在物を一つだけ含む微小な電極面を作製し(電極面積:約0.01 mm2)、非脱気のNaCl水溶液中で、動電位アノード分極曲線を測定した。分極曲線から孔食電位を求めることにより、試験片の耐食性を評価した。電位の掃引速度は20 mV/minとし、電流密度が1 A/m2(100μA/cm2)に達した電位を孔食電位とした。電位表示の基準は、3.33 mol/L KCl水溶液を内部液とする銀・塩化銀電極である。表2に、NaCl水溶液中でアノード分極することにより測定した孔食電位をまとめた。
表2の番号1は、Ceを添加していない炭素鋼を試験片として、0.001 mol/LのNaClを含有するH3BO3-Na2B4O7混合液を用いて、動電位アノード分極曲線を測定し、孔食電位を計測した例である。この場合の孔食電位は、-0.06 Vであった。表2の番号2〜4は、Ceを添加した炭素鋼を試験片として、孔食電位を計測した場合の例である。番号2に示すように、介在物中のCeの濃度が質量%で10%を下回る場合、孔食電位は -0.08 Vであり、耐食性は向上しなかった。番号3と番号4に示すように、介在物中のCeの濃度が質量%で10%以上になると、孔食電位が0.10 V以上まで上昇し、耐食性が向上した。Ceの添加によりステンレス鋼の耐食性を向上させるためには、介在物中のCeの濃度が、質量%で10%以上でなければならないことがわかる。さらに、介在物中のCeの濃度が質量%で65%のとき、孔食電位が0.37 Vであり、良好な耐食性を示した。
表2の番号5は、Ceを添加していないフェライト系ステンレス鋼を試験片として、0.1 mol/L NaCl水溶液を用いて、動電位アノード分極曲線を測定し、孔食電位を計測した場合の例である。約0.04 Vにおいて電流密度が急激に上昇し始め、0.05 Vにおいて1 A/m2(100μA/cm2)に達したため、孔食が発生したと判断した。試験後の電極表面を光学顕微鏡で観察すると、CaS介在物を起点に孔食が発生していた。
表2の番号6〜8は、Ceを添加したフェライト系ステンレス鋼を試験片として、孔食電位を計測した場合の例である。介在物中のCe濃度が33%の場合、孔食電位は0.19 Vまで上昇した。介在物中のCe濃度が69%の場合、孔食電位は0.48 Vまで上昇し、きわめて高い耐食性を示した。しかし、表2の番号8に示すように、介在物中のCeの濃度が質量%で10%を下回る場合、番号5に示すCaSとくらべて、耐食性に大きな差はみられない。Ceの添加によりステンレス鋼の耐食性を向上させるためには、介在物中のCeの濃度が、質量%で10%以上でなければならないことがわかる。
表2の番号9〜12は、オーステナイト系の高合金ステンレス鋼を試験片とし、3 mol/L NaCl水溶液中で孔食電位を計測した場合の結果である。介在物の組成がCaSから(Ca, Ce)Sに変化すると、孔食電位が高くなった。特に、番号10と番号11に示すように、介在物中のCeの濃度が質量%で40%以上のとき、孔食電位が0.50 V以上になり、耐食性が著しく向上した。溶液の腐食性が著しく厳しい場合や、非常に高い信頼性で耐食性を確保したい場合には、(Ca, Ce)S中のCeの濃度が40%以上であることが好ましいことがわかる。
図1に、介在物中のCeの濃度(質量%)と孔食電位との関係を示す。耐食性に優れた鋼材を得るためには、介在物に含まれるCeの濃度が10%以上であることが必要であると分かる。
本発明に係るCe含有耐食鋼は、建材、自動車、厨房など、様々な分野において汎用的に用いることができ、工業上の利益が大きいものである。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.001〜1%、
Si:0.1〜2%、
Mn:0.001〜2%、
P:0.001〜0.1%、
S:0.0001〜0.03%、
Al:0.001〜1%、
Ca:0.0001〜0.03%、
Ce:0.001〜1%
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物から成り、硫化物系介在物のCe濃度が10%以上であることを特徴とするCe含有耐食鋼。 - さらに質量%で、
Cr:10〜35%
を含有していることを特徴とする請求項1記載のCe含有耐食鋼。 - さらに質量%で、
Ni:5〜40%、
Mo:0.1〜10%、
Cu:0.1〜3%、
N:0.01〜0.3%、
のうちのいずれか1種または2種以上を含有していることを特徴とする請求項1または2記載のCe含有耐食鋼。 - 孔食電位が0.3 V(vs. Ag/AgCl, 3.33 mol/L KCl)以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のCe含有耐食鋼。
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CN113881891A (zh) * | 2021-08-27 | 2022-01-04 | 北京科技大学 | 一种含稀土硫化物形核剂的铁素体不锈钢及其制备方法 |
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2019
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