JP2021091163A - 積層体、加飾積層体の製造方法、及び、タイヤ - Google Patents

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【課題】加飾を施した場合に、加飾部分の機械的耐久性に優れるとともに、意匠性に優れる積層体、及び、該積層体を備えるタイヤ、並びに、加飾部分の機械的耐久性及び意匠性に優れる加飾積層体の製造方法を提供する。【解決手段】複数の孔13を有する樹脂組成物層12と、加硫ゴム層11とを備え、前記孔13が、カーボンブラック14を含む2色以上の顔料を担持する積層体10。積層体10は、樹脂組成物層12をレーザー照射して加飾される。【選択図】図1

Description

本発明は、積層体、加飾積層体の製造方法、及び、タイヤに関する。
タイヤ等のゴム製品に対して、文字・マーク・図形等の絵柄を付与する表面加飾が行われることがある。
ゴム製品の加飾方法としては、インクジェット等によって絵柄を印刷する方法が知られている。印刷による加飾は、高精細の絵柄を付与することができるという利点がある。また、ゴム製品は、使用中に歪みが発生することが想定される製品であるところ、印刷による加飾部分はその歪みに追従することができるという利点がある。
更に別の加飾方法として、ゴム製品の一部を打ち抜き、打ち抜き部分と同じ形状に切り出した色素を含む樹脂成型品を打ち抜き部分にはめ込む加飾方法もある。この方法は簡便であり、単純なロゴ・文字・マーク等を表現するのに適している。
ところで、高精細な樹脂成型品の加飾方法として、レーザーマーキングが知られている。この方法では、カーボンブラックなどの黒色顔料を混合させた樹脂組成物に対してレーザー照射し、黒色顔料を分解・蒸発させることにより、照射部分に白色マーキングを形成している(例えば特許文献1)。
特開2011−32452号公報
上述した印刷による加飾では、インキ層が擦れて経時的に加飾部分の色彩が薄くなることがあった。また、打ち抜きによる加飾では、単純な意匠に限定されたり、打ち抜き部分のエッジが鈍くなることがあった。
本発明は、加飾を施した場合に、加飾部分の機械的耐久性に優れるとともに、意匠性に優れる積層体及びタイヤ、並びに、加飾部分の機械的耐久性及び意匠性に優れる加飾積層体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供する。
[1]複数の孔を有する樹脂組成物層と、加硫ゴム層とを備え、前記孔が、カーボンブラックを含む2色以上の顔料を担持する積層体。
[2]前記樹脂組成物層と前記加硫ゴム層との間に、加硫ブチル系ゴムを含む層を有する[1]に記載の積層体。
[3]前記顔料において、カーボンブラック以外の顔料は、分解温度が130℃以上である[1]又は[2]のいずれかに記載の積層体。
[4]前記樹脂組成物層が、ポリウレタンフォームを含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記ポリウレタンフォームのセル径が、600μm以下である[4]に記載の積層体。
[6]前記加硫ブチル系ゴムを含む層の層厚が0.2〜1.5mmである請求項2〜5のいずれか1項に記載の積層体。
[7]前記加硫ゴム層は、ゴム成分と老化防止剤を含むゴム組成物の加硫ゴムを含む[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]前記ゴム組成物中の前記老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0質量部を超え6質量部以下である[7]に記載の積層体。
[9]前記樹脂組成物層がレーザー照射により加飾された[1]〜[8]のいずれかに記載の積層体。
[10][1]〜[8]のいずれかに記載の積層体の樹脂組成物層を、レーザー照射して加飾する加飾積層体の製造方法。
[11][1]〜[9]のいずれかに記載の積層体又は[10]に記載の製造方法で製造された加飾積層体を、樹脂組成物層を最表層として備えるタイヤ。
本発明に依れば、加飾を施した場合に、加飾部分の機械的耐久性に優れるとともに、意匠性に優れる積層体及びタイヤを得ることができる。更に本発明に依れば、加飾部分の機械的耐久性及び意匠性に優れる加飾積層体及びタイヤを製造することができる。
本発明の一実施形態に係る積層体の断面概略図である。 本発明の別の実施形態に係る積層体の断面概略図である。 本発明の加飾積層体の写真である。
以下、本発明の積層体、加飾積層体の製造方法、及び、タイヤについて、詳細に説明する。なお、本明細書中の「AA〜BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
[積層体]
本発明の積層体は、複数の孔を有する樹脂組成物層と、加硫ゴム層とを備え、前記孔が、カーボンブラックを含む2色以上の顔料を担持する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面概略図である。図1の積層体10は、加硫ゴム層11と、樹脂組成物層12とを備える。
〔加硫ゴム層〕
加硫ゴム層11は、ゴム組成物を加硫させた加硫ゴムを含む。該ゴム組成物としては特に限定されない。ゴム組成物は主として、ゴム成分、充填剤、及び、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などの各種成分を含む。各成分の配合量は、加硫ゴム層11に要求される性能に応じて適宜選択することができる。
ただし、本発明の積層体10において、加硫ゴム層11に過剰の老化防止剤が含まれていると、老化防止剤が経時的に樹脂組成物層12に移行し、積層体自体や、後述する加飾積層体における加飾領域及び非加飾領域の色調が経時的に変化する虞がある。上記事情に鑑み、ゴム組成物中の老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0質量部を超え6質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
本発明において、加硫ゴム層11の厚さは特に限定されず、積層体10の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、積層体10がタイヤのサイドウォール部やトレッド部である場合、加硫ゴム層11の厚さは1〜11mmであることが好ましい。
〔樹脂組成物層〕
本発明の積層体10における樹脂組成物層12は、複数の孔13を有する。複数の孔13は、図1に示すように空間状であっても良く、層状になっていても良い。
樹脂組成物層12の樹脂成分(ここではエラストマーを含む)としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などが挙げられる。本発明では、樹脂の含浸性の観点から、樹脂組成物層12は、ポリウレタンフォームを含有することが好ましい。
ポリウレタンフォームは、セル径(孔13の大きさの平均)が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。セル径の上限値が上記範囲であると、孔13内に十分な量の顔料が存在することとなり、積層体及び加飾積層体の色調を適切な範囲とすることが可能となる。なお、孔13内に顔料を含ませる観点から、セル径は200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
なお、樹脂組成物層12中の孔13は、積層体10の断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって確認できる。
本発明の積層体10における樹脂組成物層12に含まれるポリウレタンフォームは、圧縮されていないものでも良いし、圧縮されたものでも良い。圧縮された場合も、ポリウレタンフォームのセル径は上述の範囲であることが好ましい。
本発明において、樹脂組成物層12の厚さは、積層体10の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、積層体10がタイヤのサイドウォール部やトレッド部である場合、樹脂組成物層12の厚さは100〜500μmであることが好ましい。
<顔料>
本発明の積層体10において、孔13はカーボンブラックを含む2色以上の顔料を担持する。すなわち、本発明の積層体では、顔料として、カーボンブラックと、カーボンブラック以外の顔料(以下、「発色剤」と称する)とが用いられる。2色以上の顔料を用いることにより、後述する加飾によって積層体に所望の絵柄を付与することができる。すなわち、意匠性に優れる加飾積層体を得ることができる。図1に示すように、1つの孔13内にカーボンブラック14と発色剤15とが共存していることが好ましいが、1つの孔13内に一方の顔料のみが収容する場合があっても良い。
カーボンブラックを用いることにより、上述した老化防止剤の移行による色調の変化や、表面に発生したクラック等の傷を目立ちにくくすることができる。また、後述する加飾により、加飾領域と非加飾領域との色のコントラストを大きくし、積層体表面に形成する絵柄を鮮明にすることも可能であり、意匠性に優れる加飾成形品を得ることが可能となる。さらに、カーボンブラックは、レーザー照射による加飾が容易であるという利点を有する。積層体がタイヤである場合には、カーボンブラックを含むことにより、タイヤの外観を良好にすることができる。
カーボンブラックとしては特に限定されず、公知のカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFなど各種グレードのカーボンブラック、カラー用カーボンブラックなどを使用することができる。
カーボンブラックの粒子径は特に限定されない。例えば、粒子径が10〜400nmのものを使用することができる。
本発明では、発色剤として、カーボンブラックと異なる色(すなわち、黒色以外の色)を呈する顔料を含有させることが好ましい。こうすることにより、積層体10を後述するレーザー照射により加飾した場合に、加飾領域に所望の色を付与することができ、意匠性に優れる加飾積層体を得ることができる。特に、カーボンブラックと色調が大きく異なる顔料を用いることにより、加飾領域と非加飾領域との色のコントラストを大きくして、鮮明な絵柄を形成することも可能であり、意匠性に優れる加飾積層体を得ることが可能となる。
発色剤は、1種類であっても良いし、2種類以上用いても良い。複数種類の発色剤を用いることにより、加飾領域を所望の色にすることができる。また、積層体の平面内で加飾領域の色を変えることも可能となり、より意匠性に優れる加飾積層体とすることができる。
発色剤としては、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。本発明の積層体10は、後述するように加硫工程を経て製造される。このため、発色剤は、加硫温度で分解しないものであることが好ましい。具体的に、発色剤は、分解温度が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。
無機顔料としては、例えば、亜鉛華、亜鉛末、亜鉛化鉛、アルミニウム顔料、一酸化鉛、雲母状酸化鉄顔料、塩基性クロム酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛丹、鉛白、黄鉛、オーカー、カオリン、クレー、群青、ご粉、紺青、酸化鉄顔料、酸化鉄粉、シアナミド鉛、重質炭酸カルシウム、ジンククロメート、タルク、地の粉、沈降炭酸カルシウム、沈降硫酸バリウム、鉄黄、との粉、二酸化チタン、白亜、バライト粉などが挙げられる。
有機顔料としては、例えば、溶性アゾレッド、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料;銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、コバルトフタロシアニンブルーなどのフタロシアニン系顔料などが挙げられる。分解温度の観点から、本発明で使用される有機顔料からは、リソールレッド、ボンマルーンライト、Pigment yellow 5などは除外される。
樹脂組成物層12中のカーボンブラックの含有量は、0.1〜1.0質量%であることが好ましく、0.2〜0.8質量%であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量を上記範囲とすることにより、積層体(加飾後においては非加飾領域)を所望の色調とすることができるとともに、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくすることができる。また、加飾工程でのレーザー照射により積層体10の熱損傷を抑制することができる。
樹脂組成物層12中の発色剤の含有量は、発色剤の種類、加飾後の加飾領域の色調、加飾領域と非加飾領域とのコントラストなどを考慮して適宜設定することができる。
本発明の積層体10において、孔13内はバインダー樹脂が充填されていても良い。バインダー樹脂は、顔料を孔13内部に固定する役割を果たす。バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴムなどが挙げられる。バインダー樹脂は、1種単独であっても良いし、2種以上を組み合わせたものであっても良い。特に、バインダー樹脂は、樹脂組成物層12と同じ樹脂成分であることが好ましい。
なお、本発明の積層体10は、孔13内にバインダー樹脂を含まない態様も含む。
樹脂組成物層12は、本発明の趣旨に反しない範囲で、前駆体である樹脂発泡体に含まれる添加物を含有していても良い。このような添加物の例としては、触媒、発泡剤、消泡剤、界面活性剤、硬化剤などである。
図2は、本発明の別の実施形態に係る積層体の断面概略図である。図2の積層体20は、加硫ゴム層11と樹脂組成物層12との間に、加硫ブチル系ゴムを含む加硫ブチル系ゴム層21を備える。
〔加硫ブチル系ゴム層〕
加硫ブチル系ゴム層21は、加硫ゴム層11に含まれる老化防止剤が樹脂組成物層12に移行し、樹脂組成物層12の色調が変化することを抑制する働きを有する。加硫ブチル系ゴム層21は、ゴム成分としてブチルゴムを含有するゴム組成物から形成される。
ブチルゴムは特に限定されず、公知のブチルゴムを用いることができる。ブチルゴムは未変性ブチルゴムでも良く、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどの変性ブチルゴムでもよい。
ブチルゴムは、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
ゴム成分中のブチルゴムの割合は、積層体に要求される性能に応じて適宜調節することができる。ゴム成分中のブチルゴムの割合は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、90質量部以上であることが特に好ましい。
ゴム成分は、ブチルゴム以外のゴム成分を含んでいても良い。ブチルゴム以外のゴム成分としては、例えば、イソブチレンと少なくとも1種の他のコモノマーとのコポリマー及びターポリマーなどが挙げられる。有用なコモノマーとしては、例えば、ジビニル芳香族モノマー、アルキル置換ビニル芳香族モノマー、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。ジビニル芳香族モノマーとしては、ビニルスチレンが挙げられる。アルキル置換ビニル芳香族モノマーとしては、α−メチルスチレンおよびp−メチルスチレンが挙げられる。
上記コポリマーおよびターポリマーは、塩素化、臭素化などハロゲン化されていても良い。例えば、ハロゲン化コポリマーまたはハロゲン化ターポリマーとして、p−ブロモメチルスチレンなどのモノマーに由来するものが挙げられる。
例えば、加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物は、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物(p−ブロモメチルスチレニルのモノマー単位を有するコポリマーを生ずる)、および、これらのハロゲン化物などが挙げられる。
イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーは、当該コポリマーの全質量に対して、0.5〜25質量%、または2〜20質量%のp−メチルスチレンを含み、当該コポリマーの残りはイソブチレンとしても良い。
イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーは、上記のように臭素などでハロゲン化されていても良い。ハロゲン化されている場合は、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーは、0質量%より多く10質量%以下、または0.3〜7質量%のハロゲンを含有しても良い。
イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマーは、当該ターポリマーの全質量に対して、95〜99質量%、または96〜98.5質量%のイソブチレンと、0.5〜5質量%、または0.8〜2.5質量%のイソプレンとを含み、当該ターポリマーの残りはビニルスチレンとしても良い。
上記ハロゲン化物の場合、上記コポリマーまたはターポリマーの全質量に対して、0.1〜10質量%、または0.3〜7質量%、または0.5〜3質量%のハロゲンが含まれていても良い。
例えば、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Exxpro(商標)」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、p−ブロモメチルスチレニルのマー単位を有するコポリマーは、商品名「Exxpro 3745」(ExxonMobil Chemical Co.)として入手可能である。また、例えば、イソブチレンと、イソプレンと、ビニルスチレンとのターポリマーのハロゲン化物および非ハロゲン化物は、商品名「Polysar Butyl(商標)」(Lanxess;Germany)として入手可能である。
本発明の加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物において、ゴム成分中のブチルゴム以外のゴム成分の割合は、適宜調節すればよい。ゴム成分中の当該割合は、例えば、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、または10質量部以下である。
例えば、ブチルゴム以外のゴム成分として、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマー、イソブチレンとイソプレンとビニルスチレンとのターポリマー、イソブチレンとp−メチルスチレンとのコポリマーの臭素化物およびこれらのハロゲン化物からなる群より選択される1種以上を選択し、当該ゴム成分の割合は、全ゴム成分100質量部に対して、20〜30質量部とすることが好ましい。
ブチルゴム以外のゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫ブチル系ゴム層21のゴム組成物は、フィラー、オイル、ステアリン酸、架橋剤、共架橋剤など、公知の添加剤を含んでいてもよい。なお、樹脂組成物層12の色調変化を抑制する観点から、加硫ブチル系ゴム層21は実質的に老化防止剤を含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、老化防止剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以下であることを意味する。
特に本発明においては、加硫ブチル系ゴム層21のゴム組成物が、フィラーを含んでいることが好ましい。フィラーとして、カーボンブラック、シリカ、層状又は板状粘土鉱物が挙げられる。特に、加硫ブチル系ゴム層21が層状又は板状粘土鉱物を含んでいると、加硫ゴム層11からの老化防止剤の移行を更に抑制することができるので好ましい。
層状又は板状粘土鉱物は、天然品、合成品のいずれも使用することができる。層状又は板状粘土鉱物としては、例えば、カオリン質クレー、セリサイト質クレー、焼成クレー、表面処理を施したシラン改質クレー等のクレー;モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;マイカ、長石、バーミキュライト、ハロイサイト、タルク及び膨潤性マイカ等が挙げられる。これらの中でも、加硫ゴム層11からの老化防止剤の移行を抑制する観点から、クレー、マイカ、タルク及び長石が好ましく、クレー、マイカ及びタルクが更に好ましく、クレー及びタルクがより一層好ましく、クレーが特に好ましい。また、クレーの中でも、カオリン質クレーが特に好ましい。これら層状又は板状粘土鉱物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
層状又は板状粘土鉱物の平均粒径(Malvern Methodにより測定)は、積層体の耐屈曲性を考慮すると、50μm以下であることが好ましく、0.2〜30μmであることがより好ましく、0.2〜5μmであることが更に好ましい。
加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物中における層状又は板状粘土鉱物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましく、25質量部以上であることが特に好ましい。上記割合であることにより、加硫ゴム層11からの老化防止剤の移行を抑制することができる。一方、ゴム組成物の混練における作業性(混練し易さ)を向上させる観点から、層状又は板状粘土鉱物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましい。
加硫ブチル系ゴム層21の層厚は、0.2〜1.5mmであることが好ましく、0.3〜1mmであることがより好ましい。
[加飾積層体]
本発明の積層体は、樹脂組成物層がレーザー照射により加飾されたもの(加飾積層体)であることが好ましい。特に、上述した積層体の一部の領域が加飾されている加飾積層体であることが特に好ましい。
レーザー照射された領域(加飾領域)では、孔内のカーボンブラックが消失しているが、発色剤が残留している。このため、加飾領域は、発色剤に由来する色調を呈する。一方、レーザー照射されていない領域(非加飾領域)は、主にカーボンブラックに由来する黒色を呈する。すなわち、レーザー照射による加飾により、積層体に、発色剤が呈する色で、文字・マーク・図形等の所望の絵柄を付与することができる。
[加飾積層体の製造方法]
本発明の加飾積層体は、主として(1)顔料担持工程、(2)積層工程、(3)加硫工程、(4)加飾工程、を経て製造される。
(1)顔料担持工程
顔料担持工程では、複数の孔を含む樹脂発泡体に、顔料を担持させる。樹脂発泡体として、シート状など、任意の形状及び大きさに切断されたものを使用することができる。
樹脂発泡体は、本発明の積層体における樹脂組成物層の前駆体である。樹脂発泡体は、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)フォームなどである。本発明では、ポリウレタンフォームを用いることが好ましい。
本発明では、用いる樹脂発泡体の厚さは、積層体としたときの樹脂組成物層の層厚を考慮して適宜選択することができる。例えば、ポリウレタンフォームは0.5〜50mmである。
ポリウレタンフォームは、セル径が600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。セル径の上限値が上記範囲であると、孔内に十分な量の顔料を担持させることができる。セル径は200μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
なお、セル径は、JIS K6400−1:2004付属書1に従って求めることができる。
ポリウレタンフォームは、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれでも良い。
ポリウレタンフォームの気泡構造は特に限定されず、独立気泡構造、連続気泡構造、または独立気泡構造と連続気泡構造とが混在している気泡構造(以下、単に「混在気泡構造」という)のいずれでも良い。ポリウレタンフォームの気泡構造は、顔料を担持させるとの観点から、独立気泡構造がより好ましい。
樹脂発泡体の気泡に顔料を担持させる方法としては、(i)発泡前の発泡原液顔料を添加した後、発泡成形して、気泡内に顔料を含有させる方法、(ii)顔料を含む含浸液に発泡後の樹脂発泡体を浸漬し、気泡内に顔料を含有させる方法、とがある。このうち、(ii)の方法は、気泡内に顔料を高濃度で含有させることができるので有利である。
(ii)の方法の場合、含浸液は少なくとも、上述した顔料(カーボンブラック、及び、1種以上の発色剤)と、分散媒と、を含有する。
分散媒は、有機溶媒、水、バインダー樹脂のうち少なくとも1種である。分散媒は、含浸液の粘度、顔料の分散性などを考慮して、適宜選択することができる。
有機溶媒としては、トルエン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴムなどが挙げられる。バインダー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂を他の分散媒(有機溶媒、水)と併存させる場合は、バインダー樹脂が有機溶媒または水に溶解することが好ましい。
また、バインダー樹脂には、架橋剤などの公知の添加物が含まれていても良い。
含浸液中のカーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましい。カーボンブラックの配合量が上記範囲であることにより、積層体(加飾後においては非加飾領域)を所望の色調とすることができるとともに、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくすることができる。一方で、後述する加飾工程で照射されるレーザー光をカーボンブラックが吸収するため、カーボンブラックの配合量が多すぎると積層体が損傷する虞がある。積層体の熱損傷を抑制する観点から、カーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。更に、レーザー照射によりカーボンブラックを確実に消失させて、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくするとの観点から、カーボンブラックの配合量は、分散媒100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
含浸液中の発色剤の配合量は、発色剤の種類、加飾領域の色調、加飾領域と非加飾領域とのコントラストを大きくすることなどを考慮して調整することができる。
また、非加飾領域及び加飾領域を所望の色調とするとともに、コントラストを大きくするとの観点から、含浸液中のカーボンブラック(CB)と、発色剤(CF、複数の顔料を含む場合は合計量)との比率(CF/CB、質量比)は、8/2〜5/5であることが好ましく、7/3〜6/4であることがより好ましい。
特に、含浸液がバインダー樹脂を含む場合には、バインダー樹脂(BD、固形分)と顔料(カーボンブラック及びそれ以外の顔料の合計、PG)との比率(BD/PG、質量比)は、100/1〜100/20であることが好ましい。
含浸方法としては、(i)樹脂発泡体に圧力をかけて圧縮し、圧縮した状態で含浸液中に浸漬し、含浸液中で圧力を解除して樹脂発泡体を膨張させる方法、(ii)樹脂発泡体を含浸液中に浸漬し、浸漬した状態で樹脂発泡体に対して圧力の付与及び解除を行う方法、とが挙げられる。含浸液から取り出された樹脂発泡体を、その後、所定間隔を空けて配置されたロールの間を通過させることにより、樹脂発泡体中の含浸液の量が調整されても良い。含浸後の樹脂発泡体は、所定の条件(温度、時間など)で乾燥される。
樹脂発泡体に付与される圧力、含浸時間、ロール間隔、乾燥温度・時間などの条件は、樹脂発泡体に担持される顔料の量、バインダー樹脂量、後工程での取り扱い性等を考慮して適宜設定することができる。
(2)積層工程
顔料担持工程により気泡に顔料を担持した樹脂発泡体を、加硫ゴム層のゴム組成物を含む成型体と積層させる。図2に示す加硫ブチル系ゴム層を有する積層体を形成する場合には、樹脂発泡体と加硫ゴム層のゴム組成物を含む成型体との間に、加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物を含む成型体を配置する。
加硫ゴム層となる成型体は、公知の方法により、上述した加硫ゴム層のゴム組成物から成形される。該成型体は、未加硫のものであっても良いし、予め加硫されたものであっても良い。なお、層間の接着性や再加硫による加硫ゴム層の劣化抑制の観点から、該成型体は未加硫であることが特に好ましい。
該成型体の厚さは、積層体としたときの加硫ゴム層の厚さを考慮して設定することができる。
加硫ブチル系ゴム層となる成型体は、公知の方法により、上述した加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物から成形される。該成型体は、未加硫のものであっても良いし、予め加硫されたものであっても良い。なお、層間の接着性や再加硫による加硫ブチル系ゴム層の劣化抑制の観点から、該成型体は未加硫であることが特に好ましい。
該成型体の厚さは、積層体としたときの加硫ブチル系ゴム層の厚さを考慮して設定することができる。例えば、厚さ0.1〜1.5mmの加硫ブチル系ゴム層のゴム組成物を含む成型体を用いることができる。
(3)加硫工程
加硫工程では、積層工程で得た積層体を圧縮しながら加熱する。これにより、ゴム組成物が加硫されて加硫ゴム層(及び加硫ブチル系ゴム層)が形成されるとともに、加硫ゴム層(または加硫ブチル系ゴム層)と密着した樹脂組成物層が形成された積層体が得られる。
加硫条件(圧力、温度など)は特に限定されず、加硫ゴム層(及び加硫ブチル系ゴム層)のゴム組成物を考慮して適宜設定することができる。
(4)加飾工程
加飾工程では、積層体の樹脂組成物層に対してレーザー照射を実施する。レーザー照射により、樹脂組成物層中のカーボンブラックがレーザー光を吸収し、消失する。レーザー照射された領域(加飾領域)にはカーボンブラックがなくなり、加飾領域は発色剤による色を呈する。
非加飾領域と加飾領域との色調の差によって、積層体に文字・マーク・図形等の絵柄を描画する観点から、樹脂組成物層の一部分にレーザー照射を実施することが特に好ましい。ただし、本発明は、樹脂組成物層の全面にレーザー照射を行うことを排除するものではない。
図3は、本発明の方法により加飾が施された加飾積層体の写真である。図3に示すように、本発明の方法に依れば、高精細かつ鮮明な絵柄を積層体表面に形成することができる。
カーボンブラックを消失させるためには、レーザー光の波長は、カーボンブラックの吸収波長域の範囲内にある必要がある。一方で、加飾領域で発色剤による色を発色させるためには、該顔料が吸収しない、あるいは、吸収量が小さい波長のレーザー光を選定することが好ましい。また、レーザー照射された加飾積層体の表面状態など良好な外観を保持するためには、少なくとも樹脂組成物層の主成分が吸収しない、あるいは、吸収量が小さい波長のレーザー光を選定することが好ましい。
使用するレーザー光は、基本波であっても良く、高調波であっても良い。例えば、レーザーとしては、Nd:YAGレーザー(波長:1.06μm)、Nd:YOVレーザー(波長:1.06μm)、希土類添加ファイバーレーザーなどが挙げられる。
出力、照射時間などのレーザー照射条件は、加飾領域の色調、加飾領域と非加飾領域とのコントラストなどを考慮して、適宜設定することができる。
上記で説明した製造方法では(2)積層工程の後に(3)加硫工程を行っているが、本発明は、(3’)加硫ゴム層のゴム組成物を含む成型体を加硫する加硫工程、(2’)気泡に顔料を担持した樹脂発泡体と加硫ゴム層とを積層させる積層工程、の順で、積層体を製造しても良い。加硫ブチル系ゴム層を有する積層体を形成する場合には、(3’)において加硫ゴム層と加硫ブチル系ゴム層とを同時に加硫させてから、加硫ブチル系ゴム層上に該樹脂発泡体を積層させる。
[積層体の用途]
本発明の積層体は、タイヤのサイドウォール部の外層に適用することが好ましい。本発明の積層体を用いることにより、タイヤの表面に高精細かつ鮮明な絵柄を形成することができ、意匠性に優れるタイヤを得ることができる。また、タイヤ自体に絵柄を形成するため、インクジェット等の印刷によって絵柄を形成する場合に比べて、加飾部分の機械的耐久性が優れる。
本発明の積層体は、タイヤ用途に限定されず、種々のゴム製品に適用することができる。例えば、ゴムマット、ホースチューブ類、配管類、免振ゴム類、防振ゴム類、コンベアベルト、クローラー、ウェザーストリップ類、車止め、靴底、手袋、ゴム栓、O−リング、寝具、卓球ラケットのラバー部、建材類などに適用することができる。
10,20 積層体
11 加硫ゴム層
12 樹脂組成物層
13 孔
14 カーボンブラック
15 発色剤
21 加硫ブチル系ゴム層

Claims (11)

  1. 複数の孔を有する樹脂組成物層と、加硫ゴム層とを備え、
    前記孔が、カーボンブラックを含む2色以上の顔料を担持する積層体。
  2. 前記樹脂組成物層と前記加硫ゴム層との間に、加硫ブチル系ゴムを含む層を有する請求項1に記載の積層体。
  3. 前記顔料において、カーボンブラック以外の顔料は、分解温度が130℃以上である請求項1又は2のいずれか1項に記載の積層体。
  4. 前記樹脂組成物層が、ポリウレタンフォームを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記ポリウレタンフォームのセル径が、600μm以下である請求項4に記載の積層体。
  6. 前記加硫ブチル系ゴムを含む層の層厚が0.2〜1.5mmである請求項2〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記加硫ゴム層は、ゴム成分と老化防止剤を含むゴム組成物の加硫ゴムを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記ゴム組成物中の前記老化防止剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0質量部を超え6質量部以下である請求項7に記載の積層体。
  9. 前記樹脂組成物層がレーザー照射により加飾された請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層体の樹脂組成物層を、レーザー照射して加飾する加飾積層体の製造方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層体又は請求項10に記載の製造方法で製造された加飾積層体を、樹脂組成物層を最表層として備えるタイヤ。
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