以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、ダイアフラムに固定されたフランジによって、第1の鋼管柱と第2の鋼管柱とがボルト接合された構造を有する。以下、その継手構造を詳細に説明する。
図1(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の展開図を示し、図1(B)はその斜視図を示す。なお、図1(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。また、図1(A)及び(B)は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112が角形鋼管柱である場合を示す。
以下の説明では、便宜上、第1の鋼管柱102が4つの面を有し、各面を時計回りに第1面11、第2面12、第3面13、及び第4面14と符号を付けて示し、第2の鋼管柱112も同様に、各面を時計回りに第1面21、第2面22、第3面23、及び第4面24と符号を付けて示す。また、特に断りのない限り、鋼管柱を立てたとき、その材軸方向において、第1の鋼管柱102は下側に配置され、第2の鋼管柱112は上側に配置されるものとする。
図1(A)に示すように、第1の鋼管柱102の一端に第1のダイアフラム104が設けられ、第2の鋼管柱112の一端に第2のダイアフラム114が設けられる。第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114は、それぞれ第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112に溶接により取り付けられる。本実施形態では、第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114は角形鋼管柱に取り付けられるため、平面視で正方形の形状を有している。
第1のダイアフラム104には、第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bが取り付けられる。第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bは第1のダイアフラム104に溶接される。第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bは、図示されるように2つの平板状のフランジをL字形に繋ぎ合わせた形状を有していてもよいし、図示されないが山形鋼や金属の無垢材で形成されていてもよい。また、第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bのそれぞれは、2枚の平板状のフランジをL字形に配置したもの(一体化されてないもの)、さらに2枚の平板状のフランジがL字状に配置されつつも相互に接触しないように配置したものに置き換えられてもよい。
第1のL形フランジ106aは、各面に複数のボルト孔122が設けられている。第1のL形フランジ106aの幅L1、L2は、第1のダイアフラム104の幅LD1の1/2よりも小さくされている。第1のL形フランジ106b、及び第2のL形フランジ108a、108bは、第1のL形フランジ106aと略同一の形状を有する。そのため、第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bは、第1のダイアフラム104の4つの角部に対応して配置するとき、それぞれのL形フランジを接触させず、離隔して配置することができる。
図1(A)は、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bが、第1のダイアフラム104の角部に対応して配置される形態を示す。すなわち、第1のL形フランジ106aが第1面11及び第4面14の角部に、第2のL形フランジ108aが第1面11及び第2面12の角部に、第1のL形フランジ106bが第2面12及び第3面13の角部に、第2のL形フランジ108bが第3面13及び第4面14の角部に対応して配置される態様を示す。このようなL形フランジの配置により、第1のダイアフラム104上には、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bで囲まれる領域が形成される。また、第1のL形フランジ106aと第2のL形フランジ108aとの間に第1の間隙110aが形成され、第2のL形フランジ108aと第1のL形フランジ106bとの間に第2の間隙110bが形成され、第1のL形フランジ106bと第2のL形フランジ108bとの間に第3の間隙110cが形成され、第2のL形フランジ108bと第1のL形フランジ106aとの間に第4の間隙110dが形成される。
第2のダイアフラム114には、第3のL形フランジ116a、116b、及び第4のL形フランジ118a、118bが取り付けられる。第3のL形フランジ116a、116b、及び第4のL形フランジ118a、118bは、第1のL形フランジ106aと略同一の形態を有する。第3のL形フランジ116a、116b、及び第4のL形フランジ118a、118bは、第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bと同様に第2のダイアフラム114の角部に対応して配置される。
図1(A)に示すように、第2のダイアフラム114の側には、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bで囲まれる領域が形成される。そして、第2のダイアフラム114上には、第3のL形フランジ116aと第4のL形フランジ118aとの間に第5の間隙120aが形成され、第4のL形フランジ118aと第3のL形フランジ116bとの間に第6の間隙120bが形成され、第3のL形フランジ116bと第4のL形フランジ118bとの間に図示されない第7の間隙(120c)が形成され、第4のL形フランジ118bと第3のL形フランジ116aとの間に図示されない第8の間隙(120d)が形成される。
第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下に配置されるとき、第1のL形フランジ106aと第3のL形フランジ116aとは上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第2のL形フランジ108aと第4のL形フランジ118aも同様に上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第1のL形フランジ106bと第3のL形フランジ116bとの配置、及び第2のL形フランジ108bと第4のL形フランジ118bとの配置についても同様である。
第1のL形フランジ106aの2つの外側面には第1の添え板130a、130bが当接される。第2のL形フランジ108aの2つの外側面には第2の添え板132a、132bが当接される。また、第1のL形フランジ106aの内側面には、第3の添え板140a、140bが当接され、第2のL形フランジ108bの内側面には第4の添え板142a、142bが当接される。第1の添え板130aは板状の部材であり、複数のボルト孔122が設けられる。他の添え板も同様の構成を有する。第1の添え板130a、130b、第3の添え板140a、140bは、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを上下方向に配置したとき、第1のL形フランジ106aと第3のL形フランジ116aの両方と当接することのできる長さを有する。
第1のL形フランジ106aと第3のL形フランジ116aは、第1の添え板130a、130bと第3の添え板140a、140bとに挟まれてボルト接合される。第2のL形フランジ108aと第4のL形フランジ118aとは、第2の添え板132a、132bと第4の添え板142a、142bとに挟まれてボルト接合される。第1のL形フランジ106bと第3のL形フランジ116b、及び第2のL形フランジ108bと第4のL形フランジ118bについても同様である。
図1(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置されて、第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100cによって繋がれた態様を示す(図示されないが、背面側には第4のボルト接合部100dが形成される)。第1のボルト接合部100aは、第1のL形フランジ106aと第3のL形フランジ116aとが、第1の添え板130aと第3の添え板140a(及び図示されない第1の添え板130bと第3の添え板140b)とボルト及びナットによって締結されることで形成される。第1のボルト接合部100aでは、第1の添え板130a、130bが第1のL形フランジ106a及び第3のL形フランジ116aの外側面と当接され、第3の添え板140a(及び図示されない第3の添え板140b)が第1のL形フランジ106a及び第3のL形フランジ116aの内側面と当接される。このような構成は、第2乃至第4のボルト接合部についても同様である。
第1のL形フランジ106aと第3のL形フランジ116aとがボルト接合され、第2のL形フランジ108aと第4のL形フランジ118bとがボルト接合されることにより、第1の間隙110aと第5の間隙120aが連結された第1の開口部150aが形成される。第1の開口部150aは、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21に面している。同様に、第1の鋼管柱102の第2面12及び第2の鋼管柱112の第2面22側には第2の開口部150bが形成される。また、図1(B)には図示されないが、第1の鋼管柱102の第3面13及び第2の鋼管柱112の第3面23側には第3の開口部150cが形成され、第1の鋼管柱102の第4面14及び第2の鋼管柱112の第4面24側には第4の開口部150dが形成される。
第1の開口部150a、第2の開口部150b(及び図示されない第3の開口部150c、第4の開口部150d)はハンドホールとして用いることができる大きさを有する。すなわち、これらの開口部は作業者が工具等を入れてボルト接合の施工を行うことのできる大きさを有する。
第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112は鉄鋼材料で形成される。第1のダイアフラム104、第2のダイアフラム114、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108b、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118b、第1の添え板130a、130b、第2の添え板132a、132b、第3の添え板140a、140b、第4の添え板142a、142bも同様に鉄鋼材料で形成される。例えば、鉄鋼材料として構造用圧延鋼材が用いられる。
図2は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。図2は、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21に第1のボルト接合部100aが形成され、同様に、第2面12及び第2面22に第2のボルト接合部100bが形成され、(図示されないが、第4面14及び第4面24に第4のボルト接合部100dが形成されることを示す第3面13及び第3面23には第3のボルト接合部100cが形成される)。
第1の開口部150aは、第1のL形フランジ106a及び第3のL形フランジ116aと、第2のL形フランジ108a及び第4のL形フランジ118aと、第1のダイアフラム104と、第2のダイアフラム114とに囲まれた領域である。第1の開口部150aは、第1のL形フランジ106a及び第3のL形フランジ116aの高さ、及び幅方向の長さ(図1(A)に示すL2)によって、その大きさを設定することができる。
図1(A)及び(B)に示すように、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108b、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bの大きさを一致させた場合、形成される開口部(第1の開口部150a、第2の開口部150b、第3の開口部150c、第4の開口部150d)の大きさは略同一となる。各開口部は、上下に配置されるL形フランジの両方に亘って広がる大きさを有している。そのため、開口部をハンドホールとして用いる場合、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。
図3(A)は、図2において矢印A1、A2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示し、図3(B)は、図2において矢印B1、B2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示す。
図3(A)に示すように、第1のダイアフラム104の面上に、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bが配置される。本実施形態において第1の鋼管柱102は角形鋼管柱であるため、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bは角形鋼管柱の角部に対応し、それぞれのL形フランジが離隔するように配置される。具体的には、第1のL形フランジ106aと第2のL形フランジ108aとの間に第1の間隙110aを有し、第2のL形フランジ108aと第1のL形フランジ106bとの間に第2の間隙110bを有し、第1のL形フランジ106bと第2のL形フランジ108bとの間に第3の間隙110cを有し、第2のL形フランジ108bと第1のL形フランジ106aとの間に第4の間隙110dを有している。
図3(B)に示すように、第2のダイアフラム114の面上に、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bが配置される。本実施形態において第2の鋼管柱112は角形鋼管柱であるため、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bは角形鋼管柱の角部に対応し、それぞれのL形フランジが離隔するように配置される。具体的には、第3のL形フランジ116aと第4のL形フランジ118aとの間に第5の間隙120aを有し、第4のL形フランジ118aと第3のL形フランジ116bとの間に第6の間隙120bを有し、第3のL形フランジ116bと第4のL形フランジ118bとの間に第7の間隙120cを有し、第4のL形フランジ118bと第3のL形フランジ116aとの間に第8の間隙120dを有している。
図3(A)及び(B)に示すように、第1のL形フランジ106a及び第3のL形フランジ116aに対して、外側から第1の添え板130a、130bが当接され、内側から第3の添え板140a、140bが当接され、ボルト孔122に挿通されたボルト152とナット154により第1のボルト接合部100aが形成される。また、第2のL形フランジ108a及び第4のL形フランジ118aに対して、外側から第2の添え板132a、132bが当接され、内側から第4の添え板142a、142bが当接され第2のボルト接合部100bが形成される。他の2箇所、すなわち、第1のL形フランジ106b及び第3のL形フランジ116b、並びに第2のL形フランジ108bと第4のL形フランジ118bについても、同様に第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100dが形成される。
また、第1の間隙110aと第5の間隙120aとは重なる位置に配置されて第1の開口部150aが形成され、第2の間隙110bと第6の間隙120bとは重なる位置に配置されて第2の開口部150bが形成され、第3の間隙110cと第7の間隙120cとは重なる位置に配置されて第3の開口部150cが形成され、第4の間隙110dと第8の間隙120dとは重なる位置に配置されて第4の開口部150dが形成される。
図3(A)及び(B)に示すように、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bは第1のダイアフラム104に取り付けられるため、第1の鋼管柱102の肉厚と異なる厚さにすることができる。同様に、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bは第2のダイアフラム114に取り付けられる構造であるため、第2の鋼管柱112の肉厚と異なる厚さにすることができる。第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bは第1の鋼管柱102の肉厚より厚くすることができ、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bは第2の鋼管柱112の肉厚より厚くすることができる。これにより、ボルト接合部の強度を高めることができる。一方、各L形フランジは、間隙をもって配置されるため、継手部分の重量の増加を抑えることができる。
なお、本実施形態では、第1のL形フランジ106aの外側面から第1の添え板130a、130bが当接され、内側面から第3の添え板140a、140bが当接される態様を示すが、ボルト接合部の強度を十分保てる場合には、外側に配置する添え板及び内側に配置する添え板の一方を省略することも可能である。
本実施形態によれば、L形フランジにより形成される4箇所のボルト接合部の間にハンドホールとして用いることのできる開口部が設けられることで、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。別言すれば、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112との継手部分において、異なる方向を向く開口部を4箇所設けることで、ボルト接合の作業が容易となる。このような継手の構造において、4箇所にL形フランジを配置することで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。このように、本実施形態によれば、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。
なお、本実施形態は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112が角形である場合を示すが、これに限定されず円形鋼管柱にも適用することができる。
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し、フランジの構成が異なる態様を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図4(A)は、本実施形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、図4(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。なお、図4(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
図4(A)に示すように、第1の鋼管柱102の側には第1のダイアフラム上に、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bが設けられるのに対し、第2の鋼管柱112の側には第2のダイアフラムに第3のフランジ115a、115b、115c(図示されず)、115dが取り付けられている。本実施形態では、第3のフランジ115a、115b、115c(図示されず)、115dが平板状のフランジである点で、第1の実施形態と相違する。第3のフランジ115a、115b、115c(図示されず)、115dは、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bの各フランジ面と面一になるように配置される。
第1の添え板130a、第3の添え板140aは、第1のL形フランジ106a及び第3のフランジ115aと当接し、第1の添え板130b、第3の添え板140bは、第1のL形フランジ106a及び第3のフランジ115dと当接するように配置され、ボルト接合される。また、第2の添え板132a、第4の添え板142aは、第2のL形フランジ108aと第3のフランジ115aと当接するように配置され、第2の添え板132b、第4の添え板142bは、第2のL形フランジ108aと第3のフランジ115bと当接するように配置されボルト接合される。
図4(B)に示すように、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとの間に第1の開口部150aが形成され、第2のボルト接合部100bと第3のボルト接合部100cとの間に第2の開口部150bが形成される。第1の開口部150a及び第2の開口部150bの高さは、第1のL形フランジ106a、106b及び第2のL形フランジ108aの高さ(材軸方向の長さ)と略一致する。
図4(B)に示すD1線対応する断面構造を図5(A)に示し、D2線に対応する断面構造を図5(B)に示す。図5(A)に示す、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bの構成は、図3(A)に示す構成と同様である。各L形フランジの配置により、第1の間隙110a、第2の間隙110b、第3の間隙110c、第4の間隙110dが形成される。一方、図5(B)に示すように、第2のダイアフラム114の側に設けられる第3のフランジ115a、115b、115c、115dは平板状のフランジであり、4方向を囲むように配置される。そのため、間隙は形成されていない。このように、本実施形態によれば、第1の鋼管柱102の側の間隙(第1の間隙110a、第2の間隙110b、第3の間隙110c、第4の間隙110d)によって開口部(第1の開口部105a、第2の開口部150b、第3の開口部150c、第4の開口部150d)が形成され、第2の鋼管柱112の側に設けられる第3のフランジ115a、115b、115c、115dによっては開口部が形成されない。
なお、図4(A)及び(B)、並びに図5(A)及び(B)は、第1の鋼管柱102の側にL形フランジが設けられ、第2の鋼管柱112の側には平板状のフランジが設けられる態様を示すが、このような配置は一例であり、第1の鋼管柱102の側に平板状のフランジが設け、第2の鋼管柱112の側にL形フランジを設けてもよい。
このような構成によれば、ボルト接合を形成するために材軸方向に上下に配置されるフランジの一方をL形フランジとし、他方を平板状のフランジとすることで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。本実施形態によっても、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。
なお、図4(A)に示す第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bの高さ(材軸方向の長さ)と、第3のフランジ115a、115b、115c(図示されず)、115dの高さ(材軸方向の長さ)とは異なっていてもよい。すなわち、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bの高さ(材軸方向の長さ)を変えることで、開口部(第1の開口部150a、第2の開口部150b、第3の開口部150c、第4の開口部150d)の大きさを調整することができる。別言すれば、第1のL形フランジ106a、106b、第2のL形フランジ108a、108bの高さ(材軸方向の長さ)を調節することで(これに連動して第3のフランジ115a、115b、115c、115dの高さも調節することで)、ハンドホールとして用いる開口部の大きさを、作業性を損なわない適切な大きさで設けることができる。
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第3のフランジ115a、115b、115c、115dの形態が異なる他は第1の実施形態と同じであり同様の作用効果を奏する。
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態に対し、フランジの構造が異なる態様を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図6(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の展開図を示し、図6(B)はその斜視図を示す。なお、図6(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。また、図6(A)及び(B)は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112が角形鋼管柱である場合を示す。
図6(A)に示すように、第1の鋼管柱102の側に設けられる第1のダイアフラム104に、第1の溝形フランジ107と第2の溝形フランジ109が取り付けられる。第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109は、平板状のフランジの両端が同じ方向に曲がった溝形の形状を有している。第1の溝形フランジ107と第2の溝形フランジ109とは、溝形に曲がった側が相互に対向するように配置される。別言すれば、第1の溝形フランジ107と第2の溝形フランジ109とは、第1のダイアフラム104上で、溝形に曲がった面が内向きに配置されている。また、第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109は、フランジ面が第1の鋼管柱102の材軸方向と平行な方向に向けられている。第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109は、第1のダイアフラム104の一辺に沿った平板部と、溝形に曲がった部分にフランジ面を有し、それぞれ複数のボルト孔122が設けられている。
第1の溝形フランジ107の溝形に折れ曲がった部分の長さL3、及び第2の溝形フランジ109の溝形に折れ曲がった部分の長さL4の合計は、第1のダイアフラム104の幅LD1の1/2よりも小さい値を有する。そのため、第1の溝形フランジ107と第2の溝形フランジ109とを対向して配置させたとき、溝形に折れ曲がった端部同士が接触せず、間隙111a、111bを有するように配置することができる。
第2の鋼管柱112の側に設けられる第2のダイアフラム114には、第3の溝形フランジ117と第4の溝形フランジ119が取り付けられる。第3の溝形フランジ117及び第4の溝形フランジ119は、第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109と同様の構成を有し、第2のダイアフラム114に同様に取り付けられる。但し、第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109で形成される間隙111a、111bが、第1の鋼管柱102の第1面11及び第3面13の側に形成されるとき、第3の溝形フランジ117及び第4の溝形フランジ119は、形成される間隙121a、121b(図示されず)が第2の鋼管柱112の第2面22及び第4面24を向くように配置される。
第1の溝形フランジ107、第2の溝形フランジ109、第3の溝形フランジ117、第4の溝形フランジ119は、図示されるように2つの平板状のフランジをL字形に繋ぎ合わせた形状を有していてもよいし、図示されないが金属の無垢材で形成されていてもよい。
第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下に配置されるとき、第1の溝形フランジ107と第3の溝形フランジ117とは上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。第2の溝形フランジ109と第4の溝形フランジ119も同様に上下に並び、それぞれのフランジ面が面一になるように配置される。
第1の溝形フランジ107及び第3の溝形フランジ117の外側表面には第1の添え板130a、130bが当接され、内側表面には第3の添え板140a、140bが当接されボルト接合部が形成される。第1の添え板130a、130b及び第2の添え板132a、132bは、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とが上下方向に配置されたとき、第1の溝形フランジ107及び第3の溝形フランジ117の両方に当接することのできる長さを有する。また、第2の溝形フランジ109及び第3の溝形フランジ117の外側表面には、第2の添え板132a、1321bが当接され、内側表面には第4の添え板142a、142bが当接されボルト接合部が形成される。なお、図6(A)に示されるように、第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109の他方の部分も、添え板によって第4の溝形フランジとボルト接合される。
図6(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置されて繋ぎ合わせることによって、第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100cが形成される態様を示す(図示されないが、背面側には第4のボルト接合部100dが形成される)。第1のボルト接合部100aは、第1の溝形フランジ107と第3の溝形フランジ117とが、第1の添え板130aと第3の添え板140a、及び第1の添え板130bと第3の添え板140b(図示されない)とによって挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。また、第2のボルト接合部100bは、第2の溝形フランジ109と第3の溝形フランジ117とが、第2の添え板132aと第4の添え板142a(図示されない)と、第2の添え板132bと第4の添え板142b(図示されない)とによって挟まれてボルト及びナットによって締結されることで形成される。第3のボルト接合部100cは第2の溝形フランジ109及び第4の溝形フランジ119により、第4のボルト接合部100dは第1の溝形フランジ107及び第4の溝形フランジ119により、添え板を介して同様に形成される。
図6(B)に示すように、第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21側には、第1の開口部150aが形成される。第1の鋼管柱102の第2面12及び第2の鋼管柱の第2面22側には、第2の開口部150bが形成される。第1の開口部150aは、第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109と、第3の溝形フランジ117と、第1のダイアフラム104とに囲まれた領域であり、第2の開口部150bは、第2の溝形フランジ109と、第3の溝形フランジ117及び第4の溝形フランジ119と、第2のダイアフラム114とに囲まれた領域である。
図6(B)に示すD3線に対応する断面構造を図7(A)に示し、D4線に対応する断面構造を図7(B)に示す。図7(A)に示すように、第1の溝形フランジ107と第2の溝形フランジ109とが離隔して配置されることにより、第1面11側に間隙111aが形成され、第3面13側に間隙111bが形成される。間隙111aは第1の開口部150aを形成し、間隙111bは第3の開口部150cを形成する。図7(B)に示すように、第3の溝形フランジ117と第4の溝形フランジ119とが離隔して配置されることにより、第2面22側に間隙121aが形成され、第4面24側に間隙121bが形成される。間隙121aは第2の開口部150bを形成し、間隙121bは第4の開口部150dを形成する。
図7(A)及び(B)に示すように、第1の開口部150a及び第3の開口部150cは第1の溝形フランジ107及び第2の溝形フランジ109によって形成され、第2の開口部150b及び第4の開口部150dは第3の溝形フランジ117及び第4の溝形フランジ119によって形成される。そのため、第1の開口部150a及び第3の開口部150cと、第2の開口部150b及び第4の開口部150dとは、高さが異なっている。すなわち、図6(B)に示すように、第1の開口部150aに対して第2の開口部150bは高い位置に形成されている。
このように、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、隣接する2つの面に異なる高さの開口部を設けることができる。このような開口部の配置によれば、例えば、両腕を使ってボルト接合を施工するときの作業性を向上させることができる。そして、このような一組の開口部を、高さを異ならせて斜かい状に配置することで、各面にボルト接合を形成するときの作業性を向上させることができ、建設現場における溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性を向上させ、接合部分の強度が他の部分と同等かそれ以上の強度を有する継手構造を得ることができる。また、鋼管柱の各面に配置される開口部の全てが同じ高さに配置されないことにより、継手部分の強度の低下を抑制することができる。
[第4の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し、ダイアフラムの構成が異なる態様について示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図8(A)は、第1のダイアフラム104に配置された第1のL形フランジ106a、106b、及び第2のL形フランジ108a、108bの斜視図を示し、図8(B)はその平面図を示す。本実施形態において、第1のL形フランジ106aは、2つのフランジ面に接するリブ126aが設けられている。リブ126aは、第1のL形フランジ106aの内側に設けられている。第1のL形フランジ106b、第2のL形フランジ108a、108bにも同様にリブ126b、126c、126dが設けられている。
このようにリブを設けることで、L形フランジの面外剛性を高めることができる。それにより、ボルト接合部に作用する圧縮軸力に対する局部座屈耐力を高めることができ、丈夫な継手構造を提供することができる。本実施形態では、第1の鋼管柱102の側に設けられる第1のL形フランジ106a、106b、106c、106dにリブが設けられる態様を示すが、リブを備えたL形フランジの構造は、第3のL形フランジ116a、116b、第4のL形フランジ118a、118bにも適用することができる。
本実施形態に係るリブ構成は、第2の実施形態、第3の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。
[第5の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し、ダイアフラムの構成が異なる態様について示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図9(A)及び(B)は、図3(A)及び(B)に対応する図面であり、鋼管柱のボルト接合部の断面構造を示す。本実施形態において、第1のダイアフラム104に貫通孔124aが設けられ、第2のダイアフラム114に貫通孔124bが設けられている。貫通孔124a及び貫通孔124bの大きさ及び平面視における形状は任意である。このように、第1のダイアフラム104及び第2のダイアフラム114の一方及び両方に貫通孔を設けることで、継手部分の強度を維持しつつ、重量を低減することができる。
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、ダイアフラムの構造以外は第1の実施形態と同様である。したがって、上記の効果に加え、第1の実施形態と同様の有利な効果を得ることができる。なお、本実施形態は、第2乃至第4の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。
[第6の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、添え板を介して第1の鋼管柱と第2の鋼管柱とがボルト接合された構造を有する。以下、その継手構造を詳細に説明する。
図10(A)は、本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の展開図を示し、図10(B)は本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、図10(A)において、ボルト、ナット等の締結部材は省略されている。また、本実施形態では、鋼管柱が角形鋼管柱である場合を示す。
図10(A)に示すように、第1の鋼管柱102に一端に、複数のボルト孔122が形成された領域が設けられる。本実施形態において第1の鋼管柱102は角形であるため4面に複数のボルト孔122が形成された領域が設けられる。ここでは便宜上、各面に複数のボルト孔122が設けられた領域を、第1の領域160a、160b、160c、160dと呼ぶこととする。ボルト孔122は、第1の鋼管柱102の材軸方向に沿って複数が配列されるため、第1の領域160a、160b、160c、160dは、第1の鋼管柱102の端部から材軸方向に所定の長さを有する領域として画定することができる。
第1の鋼管柱102は、端部の一部が、材軸方向に所定の長さに亘って切欠かれた切欠き部を有する。切欠き部は第1の領域に設けられる。具体的には、図10(A)に示すように、第1の領域160a、160b、160c、160dに対応して、第1の切欠き部162a、第2の切欠き部162b、第3の切欠き部162c、第4の切欠き部162dが設けられる。第1の切欠き部162aは、第1の領域160aにおいて、第1の鋼管柱102の端部の一辺の略中央部分に設けられる。第1の領域160aにおいて、複数のボルト孔122は、第1の切欠き部162aの両側を挟むように設けられる。このような態様は、第1の領域160b、160c、160dに設けられる第2の切欠き部162b、第3の切欠き部162c、第4の切欠き部162dについても同様である。
第2の鋼管柱112は、同様に各面に対応して、複数のボルト孔122が設けられた第2の領域170a、170b、170c、170dが設けられる。第2の領域170a、170b、170c、170dは、切欠き部が設けられていない点で第1の領域160a、160b、160c、160dと相違し、それ以外の部分については同様の構成を有する。
第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21には、外側から第1の添え板130a及び第2の添え板132aが、第1の領域160a及び第2の領域170aに当接するように配置される。また、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の内側から第3の添え板140a及び第4の添え板142aが、第1の添え板130a及び第2の添え板132aと重畳するように配置される。第1の添え板130a及び第2の添え板132aは、鋼管柱の材軸方向に沿った長さにおいて、第1の領域160a及び第2の領域170aの両方に当接することのできる長さを有する。また、第1の添え板130aと第2の添え板132aは、第1の切欠き部162aとは重ならず、左右方向の両側から第1の切欠き部162aを挟むように配置される。
第1の鋼管柱102の第2面12及び第2の鋼管柱112の第2面22には、同様に第1の添え板130b及び第2の添え板132b、並びに第3の添え板140b及び第4の添え板142bが配置される。また、詳細には説明しないが、図示されるように第1の鋼管柱102の第3面13及び第4面14、並びに第2の鋼管柱112の第3面23及び第4面24にも同様に添え板が配置される。
図10(B)は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が上下方向に配置されて第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100bによって繋がれた態様を示す(図示されないが、背面側には第3のボルト接合部100c、第4のボルト接合部100dが形成される)。第1のボルト接合部100aは、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とが、第1の添え板130aと第2の添え板132a(及び図示されない第3の添え板140aと第4の添え板142b)とによってボルト及びナットによって締結されることで形成される。このような構成は、第2乃至第4のボルト接合部についても同様である。
図10(B)に示すように、第1の鋼管柱102の第1面11は第1の開口部150aを有し、第2面12には第2の開口部150bを有している(図示されないが、第3面13には第3の開口部150cを有し、第4面14には第4の開口部を有している)。第1の開口部150aは第1の切欠き部162aによって形成され、第2の開口部150bは第2の切欠き部162bによって形成される。第1の開口部150a。第2の開口部150bは、鋼管柱の外側と内側の領域を連通させる貫通孔であり、施工現場においてハンドホールとして用いることができる。そのため、これらの開口部は、なお、それぞれのフランジに設けられるボルト孔122は、締結具であるボルトを挿通可能な口径を有している。
図11(A)は、図10(B)においてD5線に対応する断面構造を示し、図11(B)は、図10(B)においてD6線に対応する断面構造を示す。
図11(A)に示すように、第1の鋼管柱102の第1面11には第1の切欠き部162aが設けられ、第2面12には第1の切欠き部162bが設けられ、第3面13には第1の切欠き部162cが設けられ、第4面14には第1の切欠き部162dが設けられる。第1の鋼管柱102の第1面11は、外側から第1の添え板130a、第2の添え板132aが当接され、内側から第3の添え板140a、第4の添え板142aが当接され、ボルト孔122に挿通されたボルト152とナット154により第1のボルト接合部100aが形成される。また同様に、第2面12には、外側から第1の添え板130b、第2の添え板132bが当接され、内側から第3の添え板140b、第4の添え板142bが当接され、第2のボルト接合部100bが形成され、第3面13には、外側から第1の添え板130c、第2の添え板132cが当接され、内側から第3の添え板140c、第4の添え板142cが当接され、第3のボルト接合部100cが形成され、第4面14には、外側から第1の添え板130d、第2の添え板132dが当接され、内側から第3の添え板140d、第4の添え板142dが当接され、第4のボルト接合部100dが形成される。
第1の鋼管柱102の第1面11には、第1の切欠き部162aにより第1の開口部150aが形成される。第1の開口部150aは、第1の添え板130aと第2の添え板132a、及び第3の添え板140aと第4の添え板142aとに挟まれて配置される。第2面12に設けられる第2の開口部150b、第3面13に設けられる第3の開口部150c、第4面14に設けられる第4の開口部150dも同様の構成を有する。
図11(B)は、第2の鋼管柱112のボルト接合部の部分の断面構造を示す。第2の鋼管柱112には切欠き部が設けられておらず、第1面21に第1のボルト接合部100a、第2面22に第2のボルト接合部100b、第3面23に第3のボルト接合部100c、第4面24に第4のボルト接合部100dが形成される。
第1の鋼管柱102に切欠き部(第1の切欠き部162a、第2の切欠き部162b、第3の切欠き部162c、第4の切欠き部162d)が形成されることにより、その部分の断面積が減少し、強度の低下が懸念される。しかしながら、切欠き部の両側に添え板を配置してボルト接合を形成することで、切欠き部が形成されたことによる断面積の低下を補い、強度の低下を防ぐことができる。このことから、第1の鋼管柱102に形成する切欠き部の材軸方向の長さは、添え板の長さより短いことが好ましい。一方、切欠き部の幅に関しては、ボルト孔を形成する領域を確保できる範囲内で適宜設定することができる。
なお、本実施形態では、第1の鋼管柱102の外側から第1の添え板130a、130b及び第2の添え板132a、132bが当接され、内側から第3の添え板140a、140b及び第4の添え板142a、142bが当接される態様を示すが、ボルト接合部の強度を十分保てる場合には、外側に配置する添え板及び内側に配置する添え板の一方を省略することも可能である。
本実施形態によれば、上下に配置される鋼管柱の一方に切欠き部を形成することで、施工作業においてハンドホールとして用いることのできる開口部を形成することができ、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。別言すれば、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112との継手部分において、異なる方向を向く開口部を4箇所設けることができ、ボルト接合の作業を容易に行うことができる。このような継手の構造において、開口部(切欠き部)を挟むように添え板を配置してボルト接合部を形成することで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対する耐性を高めることができる。このように、本実施形態によれば、溶接量を極力少なくし、ボルト接合の作業性が向上する継手構造を得ることができる。
[第7の実施形態]
本実施形態は、第5の実施形態に対し、開口部の構成が異なる態様を示す。以下においては、第6の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図12(A)は、本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の展開図を示し、図12(B)は本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、図12(A)において、ボルト、ナット等の締結部材は省略されている。
図12(A)に示すように、第2の鋼管柱112は、第1面21に第1の切欠き部172aが形成され、第2面22に第2の切欠き部172bが形成される。第1の切欠き部172aは第2の領域170aに形成され、第2の切欠き部172bは第2の領域170bに形成される。第2の鋼管柱112が第1の鋼管柱102の上に配置されたとき、第1の切欠き部172aは、材軸方向で第1の切欠き部162aと繋がる位置に形成され、第2の切欠き部172bは第2の切欠き部162bと繋がる位置に形成される。また、図12(A)には図示されないが、第2の鋼管柱112は、第3面23及び第4面24にも同様の切欠き部が設けられる。
図12(B)に示すように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112をボルト接合で繋いだとき、第1面11及び第2面12には第1の開口部150aが設けられ、第2面12及び第2面22には第2の開口部150bが設けられる。図12(B)には図示されないが、第3面13及び第3面23、並びに第4面14及び第4面24にも同様に開口部が設けられる。
本実施形態では、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の両方に切欠き部を設けることにより、ハンドホールとして用いられる開口部の口径を大きくすることができる。それにより、ボルト接合を施工するときの作業性を向上させることができる。一方、第6の実施形態における開口部と口径を同じとする場合には、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112に形成する切欠き部のサイズを小さくすることができる。それにより、各鋼管柱における強度の低下を抑制することができる。
本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第2の鋼管柱に切欠き部を設けたこと以外は第6の実施形態と同様の構成を有しているので、同様の作用効果を奏することができる。
[第8の実施形態]
本実施形態は、第6の実施形態及び第7の実施形態に対し、開口部の構成が異なる態様を示す。以下においては、第6の実施形態及び第7の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図12(A)は、本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の展開図を示し、図12(B)は本実施形態に係る角形鋼管柱の接合部の斜視図を示す。なお、図12(A)において、ボルト、ナット等の締結部材は省略されている。
図13(A)に示すように、第1の鋼管柱102は、第1面11に第1の切欠き部162aが形成され、第3面13に第3の切欠き部162cが形成されており、第2面12及び第4面14には切欠き部が設けられていない。第2の鋼管柱112は、第2面22に第2の切欠き部172bが形成され、第4面24に第4の切欠き部172d(図示しない)が形成されており、第1面21及び第3面23には切欠き部は形成されていない。
図12(B)に示すように、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112をボルト接合で繋いだとき、第1面11に第1の開口部150aが設けられ、第2面22に第2の開口部150bが設けられる。図13(B)には図示されないが、第3面13及び第4面24にも同様に開口部が設けられる。
図14(A)は、図13(B)においてD7線に対応する断面構造を示し、図14(B)は、図13(B)においてD8線に対応する断面構造を示す。
図14(A)に示すように、第1の鋼管柱102の第1面11に第1の切欠き部162aが設けられ、第3面13に第3の切欠き部162cが設けられ、第2面12及び第4面14には切欠き部が設けられていない。第1の切欠き部162aは第1の開口部150aを形成し、第3の切欠き部162cは第3の開口部150cを形成する。また、図14(B)は、第2の鋼管柱112の第2面22に第2の切欠き部172bが設けられ、第4面24に第4の切欠き部172dが設けられ、第1面21及び第3面23には切欠き部が設けられていない。
このような構成から、第1の切欠き部162a及び第3の切欠き部162c、と、第2の切欠き部172b及び第4の切欠き部172dとは異なる高さに配置される。別言すれば、第1の切欠き部162aと第2の切欠き部172bとは斜かい状に配置され、第3の切欠き部162cと第4の切欠き部172dとは斜かい状に配置されているといえる。
このような切欠き部の配置から、第1の開口部150a及び第3の開口部150cと、第2の開口部150b及び第4の開口部150dとは、鋼管柱の材軸方向において異なる高さに配置される。すなわち、図13(B)に示すように、第1の開口部150aと第2の開口部150bとは、異なる高さに配置される。また、図示されないが、第3の開口部150cと第4の開口部150dも異なる高さに配置される。
本実施形態によれば、鋼管柱の継手構造において各面に開口部を設けると共に、隣接する面に設けられる開口部の高さを異ならせ斜かい状に配置することができる。このような開口部の配置によれば、鋼管柱の各面に配置される貫通孔の全てが同じ高さに配置されないことにより、鋼管柱に作用する軸力、剪断力、曲げ応力に対する耐力を高めることができる。
また、本実施形態によれば、ボルト接合により形成される継手部分に開口部を設け、隣接する開口部を斜かい状に配置することで、上下に配置される2つの鋼管柱をボルト接合するときの作業を容易に行うことができる。