JP2021088740A - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】浸炭を抑制する性能を高めることができるオーステナイト系ステンレス鋼を提供する。【解決手段】Fe、並びに、質量%で、Crを10.0質量%以上30.0質量%以下、Niを25.0質量%以上45.0質量%以下、及び、Alを2.5質量%以上4.5質量%以下で含み、少なくとも1方向における表面の残留応力の絶対値が250MPa以上500MPa以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
例えば化学物質の製造プラントに用いられる鋼管は、高温の化学物質に長時間にわたって晒されることがあるため、その素材として高温における強度に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が用いられることが多い。
オーステナイト系ステンレス鋼では、高温雰囲気中でその表面に金属酸化物が形成され、これが浸炭による材料劣化を防止する被膜として機能する。形成される金属酸化物の種類は材料に含まれる成分によるが、浸炭に対しては酸化アルミニウム(Al、アルミナ)が効果的であり、例えば特許文献1乃至特許文献3にはAlを所定量の割合で含むものが開示されている。
国際公開番号WO2010/113830 国際公開番号WO2018/088070 特表2012−505314号公報
しかしながら、単にオーステナイト系ステンレス鋼にAlを添加しても、Alのみでなく、FeやCrも酸化物を形成するため、均一なAlの形成を阻害する傾向にあり、これにより浸炭を抑制する効果を低下させてしまう。
そこで本発明は、上記問題に鑑み浸炭を抑制する性能を高めることができるオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための1つの態様として、Fe、並びに、質量%で、Crを10.0質量%以上30.0質量%以下、Niを25.0質量%以上45.0質量%以下、及び、Alを2.5質量%以上4.5質量%以下で含み、少なくとも1つの方向における表面の残留応力の絶対値が250MPa以上500MPa以下である、オーステナイト系ステンレス鋼を開示する。
上記の加えてさらに、Cを0.005質量%以上0.250質量%以下、Siを0.01質量%以上1.00質量%以下、Mnを2.00質量%以下、Pを0.040質量%以下、Sを0.010質量%以下、及び、Nbを0.20質量%以上3.50質量%以下、で含むとともに、Zrを0.100質量%以下、Hfを0.100質量%以下、Tiを0.200質量%未満、Moを2.50質量%以下、Wを5.00質量%以下、Bを0.100質量%以下、Vを0.500質量%以下、Cuを5.00質量%以下、Coを5.00質量%以下、Caを0.0500質量%以下、Mgを0.0500質量%以下、Nを0.0300質量%以下、及び、希土類元素を0.100質量%以下、から選ばれる少なくとも1つを含み、残部は不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼であってもよい。
上記オーステナイト系ステンレス鋼によれば、浸炭を抑制する性能を高めることができる。
本形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼(以下、「本鋼」と記載することがある。)は、Fe及び不可避的不純物に加えて他に少なくとも次の成分を含んでいる。
Cr:10.0質量%以上30.0質量%以下
Ni:25.0質量%以上45.0質量%以下
Al:2.5質量%以上4.5質量%以下
ここで、Cr及びNiは、オーステナイト系ステンレスを構成する基本成分であり、Cr(クロム)により耐食性が実現され、Ni(ニッケル)によりオーステナイトの安定化が図られている。従って、Cr、Niは、少なくともオーステナイト系ステンレス鋼となる量が添加されている。ただし、Crについては含有量が30質量%を超えると浸炭の抑制効果が低下するため、30質量%以下とした。これはCrの含有量が30質量%を超えるとCrの酸化物が発生しやすくなりAlの均一な形成を阻害することによると考えられる。
Al(アルミニウム)は、本鋼が高温環境に晒されることで表面にAl被膜を形成するために必要な成分である。本鋼では後述するように表面に残留応力を有することにより、表面におけるAl被膜の均一性を高め、浸炭を抑制する効果を高めることができる。ただし、Alの量が2.5質量%より少ないとこの効果が表れない。一方、Alの量が4.5質量%より多いと浸炭を抑制する効果は認められるものの、鋼の熱間加工性が低下する。
さらに、本鋼は、上記成分に加えて次の成分の少なくとも1つを含んでいてもよい。ただし、これらの成分はそれぞれの目的に応じて任意的に添加されるものであり必ずしも含まれる必要はなく、又は不可避的に含まれることもある。
Cを0.005質量%以上0.250質量%以下で含むことができる。C(炭素)を0.005質量%以上含ませることにより、主にCrと結合して鋼中にCr炭化物を形成し、高温浸炭環境での使用時におけるクリープ強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼の鋳造後の凝固組織中に粗大な共晶炭化物を多数形成し、鋼の靭性を低下させる。
Siを0.01質量%以上1.00質量%以下で含むことができる。Si(シリコン)は鋼を脱酸する。他の元素で脱酸を十分に実施できる場合、Siの含有量は出来るだけ少なくてもよい。一方、Si含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。
Mnを2.00質量%以下で含むことができる。Mn(マンガン)は鋼中に含まれるSと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、鋼が硬くなりすぎ、熱間加工性及び溶接性が低下する。
Pを0.040質量%以下で含むことができる。ただし、P(燐)は不純物の1つであり鋼の溶接性及び熱間加工性を低下させる。従って、Pの含有量はなるべく低い方が好ましく、より好ましくは0.030質量%以下である。
Sを0.010質量%以下で含むことができる。ただし、S(硫黄)は不純物の1つであり、鋼の溶接性及び熱間加工性を低下させる。従って、Sの含有量はなるべく低い方が好ましく、より好ましくは0.008質量%以下である。
Nbを0.20質量%以上3.50質量%以下で含むことができる。Nb(ニオブ)は、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNiNb相)を形成して、結晶粒界及び結晶粒内を析出強化し、鋼のクリープ強度を高める。一方、Nb含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、鋼の靭性が低下する。Nb含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性も低下する。
Zrを0.100質量%以下で含むことができる。Zr(ジルコニウム)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下でAl皮膜の形成を促進する。一方、Zr含有量が高すぎれば、鋼中の金属間化合物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。
Hfを0.100質量%以下で含むことができる。Hf(ハフニウム)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下でAl皮膜の形成を促進する。一方、Hf含有量が高すぎれば、鋼中の金属間化合物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。
Tiを0.200質量%未満で含むことができる。Ti(チタン)は、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNiTi相)を形成して、析出強化によりクリープ強度を高める。一方、Ti含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、高温延性及び熱間加工性が低下する。Ti含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性が低下する。
Moを2.50質量%以下で含むことができる。Mo(モリブデン)は、母相であるオーステナイトに固溶する。固溶したMoは、固溶強化によりクリープ強度を高める。一方、Mo含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。
Wを5.00質量%以下で含むことができる。W(タングステン)は、母相であるオーステナイトに固溶する。固溶したWは、固溶強化によりクリープ強度を高める。一方、W含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。
Bを0.100質量%以下で含むことができる。B(ボロン)は粒界に偏析して、粒界での金属間化合物の析出を促進する。これにより、鋼のクリープ強度を高める。一方、B含有量が高すぎれば、鋼の溶接性及び熱間加工性が低下する。
Vを0.500質量%以下で含むことができる。V(バナジウム)は、Tiと同様に金属間化合物を形成し、鋼のクリープ強度を高める。一方、V含有量が高すぎれば、鋼中の金属間化合物の堆積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。
Cuを5.00質量%以下で含むことができる。Cu(銅)はオーステナイトを安定化する。Cuはさらに、析出強化により鋼の強度及びクリープ強度を高める。一方で、Cu含有量が高すぎれば、鋼の延性及び熱間加工性が低下する。
Coを5.00質量%以下で含むことができる。Co(コバルト)はオーステナイトを安定化して、鋼材のクリープ強度を高める。一方で、Co含有量が高すぎれば、原料コストが高くなる。
Caを0.0500質量%以下で含むことができる。Ca(カルシウム)は、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を高める。一方、Ca含有量が高すぎれば、靱性及び延性が低下する。そのため、熱間加工性が低下する。Ca含有量が高すぎればさらに、清浄性が低下する。
Mgを0.0500質量%以下で含むことができる。Mg(マグネシウム)は、Sを硫化物として固定し、鋼の熱間加工性を高める。一方、Mg含有量が高すぎれば、靱性及び延性が低下する。そのため、熱間加工性が低下する。Mg含有量が高すぎればさらに、清浄性が低下する。
Nを0.0300質量%以下で含むことができる。N(窒素)は、オーステナイトを安定化する。一方、N含有量が高すぎれば、熱処理後でも未固溶で残存する粗大な窒化物及び/又は炭窒化物が生成する。粗大な窒化物及び/又は炭窒化物は鋼の靱性を低下する。
REMを0.100質量%以下で含むことができる。REM(希土類元素)は、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を高める。REMはさらに、酸化物を形成して、耐食性、クリープ強度、及びクリープ延性を高める。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、酸化物等の介在物が多くなり、熱間加工性及び溶接性を低下させ、製造コストが上昇する。
本鋼はさらに、その表面における残留応力の絶対値が250MPa以上500MPa以下である。これにより本鋼が例えば鋼管とされ、その内側に高温の化学物質が通される際にもAlの被膜が速やかに均一性高く形成されて、浸炭から材料が保護される。
残留応力の絶対値の好ましい下限値は275MPaであり、より好ましくは300MPaである。一方、残留応力の絶対値の好ましい上限値は475MPaであり、より好ましくは450MPaである。
ここで残留応力の絶対値とは、圧縮応力を負、引張応力を正で表したときにおける絶対値である。すなわち、圧縮応力であればその範囲は、−500MPa以上−250MPa以下を意味し、引張応力であればその範囲は、250MPa以上500MPa以下である。
残留応力の絶対値がこれより小さいと、鋼中のAlの拡散が促進されず、Fe酸化物およびFe−Crスピネル酸化物が主に形成されてしまい、均一なAlが形成されないと考えられる。一方、残留応力がこれより大きいと、鋼表面近傍におけるAlのみならずCrも拡散が促進されるため、表面においてAlとCrがそれぞれ形成され、均一なAlの形成が阻害されると考えられる。従って、これは残留応力が圧縮であっても引張であっても同様に考えることができる。特に、1030℃以上の高温浸炭環境では、Crは揮発性のあるCrOに変態しやすくなるため、表面の保護の観点から不安定であり、十分な浸炭の抑制機能を発揮し難い。これに対して本鋼によれば、安定性の高いAlの被膜を速やかに均一性高く形成することができるので、浸炭の抑制に有利である。
また、表面における残留応力は次のように得た値を用いる。
試験片の表面に対して、JIS K 0131(1996)に準拠して、残留応力を測定する。測定位置は試験片中央とし、X線応力測定方法として、sinφ法を用い、特性X線はCrKαとする。入射スリットは直径2mmとし、入射角を0°から50.8°の範囲で合計10点測定し、その測定値を平均して測定結果とする。回折角の決定は半価幅法を用い、応力定数Kは−622MPa/°とする。
ここで、残留応力の測定ではその表面において直交する2つの方向(いわゆるx方向とy方向)があるが、本発明では、当該x方向及びy方向の少なくとも一方において、本発明規定の範囲の残留応力が認められればよい。
表面に残留応力を付与する方法は特に限定されることはないが、圧縮応力であれば、ショットピーニング、ショットブラスト、研磨、ギアスカイビング加工、ホーニング加工等を挙げることができる。一方、引張応力であれば、フライス加工、グラインダ加工等を挙げることができる。
以上のように、オーステナイト系ステンレス鋼において、Alの含有量を規定し、さらに表面の残留応力を所定の範囲とすることで、高温で使用される場合にも速やかに均一性の高いAlによる被膜を形成させることができ、浸炭の抑制が図られる。なお、形成されるAlの被膜厚さは特に限定されることはないが、より効果的に浸炭を抑制する観点から0.5μm以上3μm以下の範囲であることが好ましい。
このような鋼は、例えば化学プラントにおける配管のための管材として用いることができる。また、これに限らず、鋼板および棒鋼等の形態でも、浸炭が発生する環境において使用することができる。
実施例として成分及び残留応力を変更した試験片を作製し、浸炭に対する性能を評価した。
<試験片の成分>
表1に各試験の試験材の成分を示した。
Figure 2021088740
<試験材の作製>
上記各成分の鋼材を次のように加工することで浸炭試験のための試験材を得た。
表1に示した材料ごとに、インゴットを作製し、このインゴットを1220℃で3時間加熱して、加熱後のインゴットに対して熱間鍛造を実施し、円柱状のビレットを製造した。
次に機械加工により円柱状のビレットの中心軸に貫通孔を形成し、ビレット温度を1200℃として熱間押出を実施して熱間中間鋼材(鋼管)を製造した。この熱間中間鋼材に対して、冷間加工を実施して、直径60mm、肉厚8mmの冷間中間鋼材(鋼管)を得た。
得られた冷間中間鋼材に対して、大気雰囲気中で加熱することで溶体化処理を行い、その後、5.0体積%以上8.0体積%以下の硝酸及び5.0体積%以上8.0体積%以下の弗酸を含む酸洗溶液に浸漬することで、酸洗処理を実施し、表面酸化スケールを除去して酸洗中間鋼材を得た。
得られた酸洗中間鋼材の管内表面に対して、内部残留応力を付与するために表2に示す表面処理を施した。表2の括弧内は、ショットピーニング及びショットブラストについてはショット材の材質、研磨については番号記号をそれぞれ表している。
なお、各表面処理の詳細は次の通りである。
ショットピーニング及びショットブラストは、圧力を5kgf/cm、ショット粒径を0.5mm、ショット量を5kg/min、送り量を5mm/sに統一して行った。
ギアスカイビングは、歯数を25、回転速度を2000rpm、送り量を0.1mm/rev(=約3.3mm/s)、交差角を20°、すくい角を10°とした。
ホーニングは、圧力を5kgf/cm、砥石粒度を#60、振動数を10/s、送り量を200mm/sとした。
研磨は周方向(幅方向)に研磨目ができるように研磨した。
Figure 2021088740
<残留応力の測定>
得られた各試験材に対して、次のようにして残留応力を得た。
表面処理を行った管内面を残すようにして、厚さが4mm、幅(管の周方向)が20mm、及び長さ(管の軸方法)が20mmの試験片を採取した。採取した試験片の管内表面側の中央部に対して、JIS K 0131(1996)に準拠して、残留応力を測定した。本例における表面処理はいずれも残留圧縮応力を生じる方法なので、残留圧縮応力となった。より具体的には次の通りである。
・測定位置:試験片中央
・測定方向:長さ方向(管軸方向)
・X線応力測定方法:sinφ法
・特性X線:CrKα
・入射スリット(=測定範囲):直径2mm
・入射角:0°以上50.8°以下の範囲で変化させ計10点
・回折角決定法:半価幅法
・応力定数(K):−622MPa/°
そして10点の測定値を平均し、これを測定結果とした。表3に結果を「残留応力(MPa)」として示す。
ここで、本例では測定方向を長さ方向(管軸の方向)としたが、幅方向(管の周方向)で測定を行ってもよい。長さ方向及び幅方向の少なくとも一方で本発明規定の範囲の残留応力が認められればよい。
<浸炭試験>
得られた各試験片について次のようにして浸炭試験を行った。
(浸炭)
15体積%のCH、3体積%のCO、及び、82体積%のHの雰囲気で、これを1150℃に加熱し、ここに各試験片を入れて96時間保持することにより浸炭を行った。
(浸炭評価)
浸炭後の試験片の管内表面に対して、#600の乾式研磨を行い、表面の酸化皮膜を除去し、表層から0.5mmずつ、4層分(合計2mm深さまで)の分析用切粉を採取した。次に、この各層の分析用切粉を用いて、JIS G1211−3(2013)に準拠した高周波燃焼赤外吸収法により、各層のC含有量(質量%)を求めた。また、浸炭前の試験片のC含有量(以下、「母材C含有量」と記載することがある。)を、予め、JIS G1211−3(2013)に準拠した高周波燃焼赤外吸収法により測定しておいた。浸炭後の各層でのC含有量と、母材C含有量との差分値を、各層の侵入C量と定義した。得られた4つの侵入C量の算術平均値を、平均侵入C量(質量%)とした。得られた平均侵入C量を、表3に「平均侵入C量(質量%)」として示す。
<熱間加工評価>
浸炭の抑制自体に直接関連はしないが、Alの含有量による熱間加工性への影響があるため、熱間加工評価も行った。具体的には次の通りである。
浸炭試験のために作製したインゴットから一部を引張試験用試験片として取得し、試験片を作製した。引張試験片の平行部の直径は10mm、平行部の長さは130mmとした。得られた引張試験片を用いて、JIS G 0567(2012)に準拠して、900℃で、10/秒のひずみ速度で引張試験を行った。
引張試験前の引張試験片の平行部の原断面積をS(mm)、破断後の引張試験片の最小断面積をS(mm)と定義して、次式から絞りR(%)を求めた。
=(1−S/S)×100(%)
得られた絞りRが、60%以上である場合、熱間加工性が高いと判断し、表3の「熱間加工性」に「高」と示した。一方、得られた絞りRが60%未満である場合、熱間加工性が低いと判断し、表3の「熱間加工性」に「低」と示した。
Figure 2021088740
以上の結果からわかるように、Crが10.0質量%以上30.0質量%以下、Niが25.0質量%以上45.0質量%以下、Al:2.5質量%以上4.5質量%以下、及び、残留応力の絶対値が250MPa以上500MPa以下である例は、いずれも平均C量が0.2質量%以下であり、浸炭が抑制されている。
これに対して、Cr量がこれを満たさないNo.13、No.14、Al量がこれを満たさないNo.16、残留応力の絶対値がこれを満たさないNo.18乃至No.22はいずれも平均侵入C量が0.2質量%を超えており、浸炭が抑制できていないことがわかる。
すなわち、本鋼によりAlの被膜が円滑に均一性高く形成され、浸炭の抑制効果を高めることができたと考えられる。
なお、Ni量がこれを超えるNo.15、Al量がこれを超えるNo.17について浸炭は抑制されているが熱間加工性が低下してしまう。
また、残留応力付与の方法による効果への影響は特に見られなかった。

Claims (2)

  1. オーステナイト系ステンレス鋼であって、
    Fe、並びに、質量%で、
    Crを10.0質量%以上30.0質量%以下、
    Niを25.0質量%以上45.0質量%以下、及び、
    Alを2.5質量%以上4.5質量%以下で含み、
    少なくとも1方向における表面の残留応力の絶対値が250MPa以上500MPa以下である、
    オーステナイト系ステンレス鋼。
  2. さらに、
    Cを0.005質量%以上0.250質量%以下、
    Siを0.01質量%以上1.00質量%以下、
    Mnを2.00質量%以下、
    Pを0.040質量%以下、
    Sを0.010質量%以下、及び、
    Nbを0.20質量%以上3.50質量%以下、で含むとともに、
    Zrを0.100質量%以下、
    Hfを0.100質量%以下、
    Tiを0.200質量%未満、
    Moを2.50質量%以下、
    Wを5.00質量%以下、
    Bを0.100質量%以下、
    Vを0.500質量%以下、
    Cuを5.00質量%以下、
    Coを5.00質量%以下、
    Caを0.0500質量%以下、
    Mgを0.0500質量%以下、
    Nを0.0300質量%以下、及び、
    希土類元素を0.100質量%以下、
    から選ばれる少なくとも1つを含み、残部は不可避的不純物である、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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