JP2021087925A - 酸素富化膜の製造方法、及び、酸素富化膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリコーン系組成物の濃度が低い場合であっても、シリコーン系組成物を均一に塗布することができ、作業性に優れた酸素富化膜の製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも、気体分離層と、上記気体分離層を支持する多孔質基材層とを有する酸素富化膜の製造方法であって、シロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈し、シリコーン系組成物を調製する希釈工程と、上記シリコーン系組成物を化学反応させることにより増粘させる増粘工程と、上記増粘工程で増粘させたシリコーン系組成物に、化学反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、上記多孔質基材層に、増粘後の上記シリコーン系組成物を塗布することにより気体分離層を積層する塗布工程とを有する、酸素富化膜の製造方法とする。【選択図】 図3
Description
本発明の実施形態は、酸素富化膜の製造方法、及び、酸素富化膜に関するものである。
冷蔵庫などの貯蔵庫に貯蔵される食品などの貯蔵品の劣化要因として、空気中に存在する酸素による酸化がある。そこで、貯蔵容器の内部の空気をポンプなどの排気手段によって酸素富化膜(酸素分離膜)を通じて吸引することにより、高酸素濃度の空気が貯蔵容器の外部に排出され、貯蔵容器内の酸素濃度を低減させることで貯蔵品の酸化を抑えて貯蔵品の鮮度を維持することができる貯蔵庫が知られている。
このような貯蔵庫に用いられる酸素富化膜は、一般的に、シロキサン結合を有する化合物を含有するシリコーン系組成物に触媒などの反応促進剤を混合した混合液を多孔質基材層に塗布し、加熱して架橋させることにより硬化させている。
しかし、多孔質基材層上に直接シリコーン系組成物を塗布すると、多孔質基材層の孔部にシリコーン系組成物が含浸するため、均一な膜厚の気体分離層を形成するのが困難である。この問題を解決する方法として、気体分離層と多孔質基材層との間に、中間層を設けることが知られている。
また、酸素富化膜の気体分離能を向上させる方法としては、塗布するシリコーン系組成物の濃度を低くし、気体分離層の膜厚を薄くすることが挙げられる。
しかしながら、気体分離層の膜厚を薄くするために、シリコーン系組成物の濃度を低くすると粘度が下がり過ぎて、均一な膜厚の気体分離層を積層するのが困難な場合がある。
さらに、シリコーン系組成物の濃度を低くすると、中間層を構成する中間層組成物がシリコーン系組成物中の溶剤に溶け出し、中間層の表面が劣化するという問題があった。中間層の劣化によりその表面には微細な凹凸が形成されるため、その上に形成された気体分離層は膜厚にばらつきが生じ、膜厚の薄い個所に空気の透過が集中するため、優れた気体分離能が得られにくいという問題があった。
本発明者は、鋭意検討の結果、予めシリコーン系組成物を化学反応させて増粘させることで、シリコーン系組成物の濃度が低い場合であっても、シリコーン系組成物を均一に塗布できることに想到した。しかしながら、化学反応が進み過ぎて、塗布する前にシリコーン系組成物が一部ゲル化し、均一な塗膜を製造できないことがあり、作業性に問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、シリコーン系組成物の濃度が低い場合であっても、シリコーン系組成物を均一に塗布することができ、作業性に優れた酸素富化膜の製造方法を提供することを目的とする。
本実施形態の酸素富化膜の製造方法は、少なくとも、気体分離層と、上記気体分離層を支持する多孔質基材層とを有する酸素富化膜の製造方法であって、シロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈し、シリコーン系組成物を調製する希釈工程と、上記シリコーン系組成物を化学反応させることにより増粘させる増粘工程と、上記増粘工程で増粘させたシリコーン系組成物に、化学反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、上記多孔質基材層に、増粘後の上記シリコーン系組成物を塗布することにより気体分離層を積層する塗布工程とを有するものとする。
以下、一実施形態の酸素富化膜62を備える冷蔵庫1について、図1〜2に基づいて説明する。
(1)酸素富化膜62を備える冷蔵庫1について
冷蔵庫1は、前面に開口する断熱箱体からなるキャビネット2を備える。キャビネット2は鋼板製の外箱3と合成樹脂製の内箱4との間に形成された断熱空間5に真空断熱材や発泡断熱材等の断熱材を有して構成されている。キャビネット2は内箱4の内側に複数の貯蔵空間が設けられており、貯蔵空間が断熱仕切壁6によって上下に区画されている。
冷蔵庫1は、前面に開口する断熱箱体からなるキャビネット2を備える。キャビネット2は鋼板製の外箱3と合成樹脂製の内箱4との間に形成された断熱空間5に真空断熱材や発泡断熱材等の断熱材を有して構成されている。キャビネット2は内箱4の内側に複数の貯蔵空間が設けられており、貯蔵空間が断熱仕切壁6によって上下に区画されている。
断熱仕切壁6の上方の空間は、冷蔵温度帯(例えば、1〜4℃)に冷却される貯蔵室であり、内部がさらに仕切壁7によって上下に区画されている。仕切壁7の上方には冷蔵室10が設けられ、仕切壁7の下方には野菜室12が設けられている。
冷蔵室10の内部は、複数の棚板9によって上下に複数段に区画され、冷蔵室10の背面に冷蔵室10内の温度を測定する冷蔵温度センサ25が設けられている。
冷蔵室10の前面開口部には、ヒンジで枢支された回動式の冷蔵室扉11が設けられている。野菜室12の前面開口部は、引出し式の野菜室扉13により閉塞されている。野菜室扉13の庫内側には、貯蔵容器70を保持する左右一対の支持枠が固着され、開扉動作とともに貯蔵容器70が庫外に引き出されるように構成されている。野菜室12の前面開口部の周縁部には、扉センサ29が設けられ野菜室扉13が開放状態にあるか閉塞状態にあるかを検知する。
野菜室12内に設けられた貯蔵容器70は、前方壁、後方壁70a、左右側壁によって囲まれた有底の箱状の容器であり、上方に開口する上面開口部が設けられている。貯蔵容器70の内部は野菜等の貯蔵品を収納する貯蔵空間S1が形成され、貯蔵容器70の上面開口部より貯蔵品を出し入れするようになっている。貯蔵容器70は、その上面開口部が蓋体72によって開閉可能に閉塞されており、野菜室12を循環する空気(風)の直接的な進入が抑制された閉塞容器を構成している。貯蔵容器70の後方壁70aの下部には、開口部70bが穿設されるとともに、開口部70bの貯蔵空間S1側を、間隔をあけて覆うように設けられた風向板52が設けられている。風向板52は上方に行くほど前方へ傾斜しており、開口部70bから吹き出す空気が貯蔵容器70の天井面(つまり、蓋体72)に向けて吹き出すようにこれを案内する。
断熱仕切壁6の下方の空間には、自動製氷機を備えた製氷室(不図示)と第1冷凍室16とが左右に併設され、その下方に仕切板22を介して第2冷凍室17が設けられている。
製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17は、いずれも冷凍温度帯(例えば、−17℃以下)に冷却される。第2冷凍室17の背面には、第2冷凍室17内の温度を測定するための冷凍温度センサ26が設けられている。
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の開口部は、野菜室12と同様、引出し式の扉18,19により閉塞されている。各扉18,19の裏面側に固着した左右一対の支持枠には貯蔵容器20,21が保持されており、開扉動作とともに該貯蔵容器20,21が庫外に引き出されるように構成されている。
冷蔵室10及び野菜室12の後部には、エバカバー23で前後に仕切られた冷蔵冷却器室32が設けられている。
冷蔵冷却器室32には、冷蔵冷却器30、冷蔵ファン31、ドレインパン27及び排気部90が収納されている。冷蔵冷却器室32は、ダクト33によって冷蔵室10と連結され、冷蔵冷却器30が冷却した冷蔵冷却器室32の空気を冷蔵ファン31によってダクト33を介して冷蔵室10へ供給するようになっている。
ドレインパン27は、冷蔵冷却器30の下方に配置され、除霜運転時に冷蔵冷却器30から生じる結露水(除霜水)を受ける。ドレインパン27に溜まった結露水は、排水ホース28を介してキャビネット2の背面下部に設けられた機械室38に配置された蒸発皿41へ排出する。
ドレインパン27に溜まった結露水を機械室38へ排出する排水ホース28は、キャビネット2の背面壁に設けられた冷蔵冷却器室32と機械室38とを連通する挿通孔2aに挿通され、冷蔵冷却器室32から機械室38へ引き出されている。
キャビネット2に設けられた挿通孔2aは、挿通する排水ホース28より口径が大きくなっている。そのため、挿通孔2aに排水ホース28を挿入した状態で、挿通孔2aと排水ホース28との間には、冷蔵冷却器室32から機械室38まで一続きに繋がった隙間が形成されている。つまり、挿通孔2aと排水ホース28との間に形成された隙間が、野菜室12と機械室38とを連通する通気孔2cとして機能する。
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の後部には、エバカバー24で前後に仕切られた冷凍冷却器室36と、製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17と冷凍冷却器室36とを連結するダクト37とが形成されている。冷凍冷却器室36には、冷凍冷却器34及び冷凍ファン35が収納されており、冷凍冷却器34が冷却した冷凍冷却器室36の空気を冷凍ファン35によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17へ供給する。
冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34は、機械室38に収納された圧縮機39や凝縮器(不図示)とともに冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルでは、圧縮機39から吐出された冷媒が不図示の切替弁によって冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34の一方に供給されることで所定温度に冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34が冷却される。
冷蔵冷却器30は、冷蔵冷却器室32の空気を冷却して、例えば、−10〜−20℃の冷気を生成する。冷蔵冷却器室32で生成された冷気は、冷蔵ファン31の回転によって、ダクト33を介して冷蔵室10へ供給され、冷蔵室10を冷却する。
冷蔵室10を流れた冷気の一部は、仕切壁7の後部に設けられた吸込口から冷蔵冷却器室32へ戻り、残りの空気は仕切壁7に設けられた連通路7aを通って野菜室12の後方上部へ流れ込む。
野菜室12に流れ込んだ冷気は、野菜室12に設けられた貯蔵容器70の外側を流れながら野菜室12内を冷却することで、貯蔵容器70の外側から間接的にその内部を冷却する。野菜室12を流れた冷気は、吸込口から冷蔵冷却器室32へ戻る。冷蔵冷却器室32に戻った冷気は冷蔵冷却器30と熱交換して再び冷却される。
冷凍冷却器34は、冷凍冷却器室36の空気を冷却して、例えば、−20〜−30℃の冷気を生成する。生成した冷気は、冷凍ファン35の回転によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17に供給され、これらの貯蔵室を冷却する。製氷室及び第1冷凍室16を冷却した空気は、不図示の透孔を通って第2冷凍室17へ流れ込み、第2冷凍室17に供給された冷気と合流し、その後、第2冷凍室17の背面に設けられた吸込口から冷凍冷却器室36に戻り、冷凍冷却器34と熱交換して再び冷却される。
(2)酸素分離モジュール60について
このような構成の冷蔵庫1では、図1及び図2に示すように、酸素富化膜62を備える酸素分離モジュール60が、野菜室12内、例えば、エバカバー23で区画された冷蔵冷却器室32の下方に貯蔵容器70の後方壁70aと対向するように設けられている。
このような構成の冷蔵庫1では、図1及び図2に示すように、酸素富化膜62を備える酸素分離モジュール60が、野菜室12内、例えば、エバカバー23で区画された冷蔵冷却器室32の下方に貯蔵容器70の後方壁70aと対向するように設けられている。
酸素分離モジュール60は、箱形のケース61の内部に酸素富化膜62を備えたセル63が設けられている。セル63は、調整空間S3と、排気空間S4と、両空間S3,S4を仕切る酸素富化膜62とで構成されている。なお、酸素分離モジュール60は、ケース61の内部に酸素富化膜62の厚さ方向に複数のセル63を重ねて設けてもよい。
酸素富化膜62は、調整空間S3と排気空間S4との間に圧力差が生じると、高圧側の空気中の酸素が膜内部を拡散移動して低圧側の表面から離脱することで、高圧側の酸素濃度を低下させる。
セル63に設けられた調整空間S3は、酸素富化膜62に平行に近接して配置された隔壁との間に区画されたダクト状の空間であり、その一端に導入流路198が連結されている。導入流路198は、後述する排気部90Aと90Bのそれぞれに接続された2本の送気流路98が相互に合流してなる流路である。
調整空間S3の他端は、貯蔵容器70の後方壁70aに設けられた開口部70bと前後に対向する位置に開口し、この開口の周縁部を取り囲むようにゴム又はシリコーン等のゴム状弾性体からなるシール材66が設けられている。
図1に示すような貯蔵容器70を野菜室12内に収納した状態において、シール材66は開口部70bを取り囲むように貯蔵容器70の後方壁70aに当接する。これにより、貯蔵容器70の開口部70bと調整空間S3の先端とがシール材66によって接続され、貯蔵空間S1の下部(貯蔵空間S1の高さ方向中央部より下側)においてケース61内に設けられた調整空間S3と貯蔵容器70の貯蔵空間S1とが連通する。
また、セル63の排気空間S4には吸込流路197を接続する排気口65が設けられている。
酸素分離モジュール60は、排気部90が接続されており、酸素富化膜62を透過した貯蔵容器70内部の空気を、排気部90によって貯蔵容器70の外部へ排気することで、貯蔵空間S1の酸素濃度を低減する。
排気部90は、複数の排気手段、本実施形態では第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bとを備える。
第1排気ポンプ90Aの出口流路96と第2排気ポンプ90Bの出口流路96は、途中で合流して1つの庫外排気流路196となり、キャビネット2の背面壁に設けられた野菜室12と機械室38とを連通する挿通孔2bに挿通され、冷蔵冷却器室32から機械室38へ引き出されている。
第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bは基本的な構成が共通するものであり、セル63の排気空間S4の空気を吸込流路197及び入口流路97を介して、排気ポンプ90内のシリンダ室(不図示)へ取り込む吸気動作と、取り込んだ空気をシリンダ室から出口流路96及び庫外排気流路196を介して機械室38へ排出する排気動作とを繰り返す。
また、第1排気ポンプ90Aは、入口流路97からシリンダ室へ空気を取り込む際に、駆動室(不図示)の空気を送気流路98及び導入流路198を介して酸素分離モジュール60の調整空間S3へ送り出す。
キャビネット2の背面上部には、冷蔵庫1の動作全般を制御する制御部50が設けられている(図1参照)。制御部50は、冷蔵温度センサ25、冷凍温度センサ26、扉センサ29などの各種センサ等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリに記憶された制御プログラムに基づいて、冷蔵ファン31、冷凍ファン35、圧縮機39、冷凍サイクルに設けられた切替弁(不図示)、排気ポンプ90などの各種電気部品を制御することで、各室を所定温度に冷却したり、野菜室12に設けた貯蔵容器70内部の貯蔵空間S1の酸素濃度を低減したりする。
(3)冷蔵庫1の減酸素運転の実行について
貯蔵容器70の内部の酸素濃度を低減する減酸素運転を実行するには、扉センサ29によって野菜室扉13が閉扉状態にあることを検出している時に、排気部90を動作させる。
貯蔵容器70の内部の酸素濃度を低減する減酸素運転を実行するには、扉センサ29によって野菜室扉13が閉扉状態にあることを検出している時に、排気部90を動作させる。
具体的には、排気部90を構成する第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bを動作させる。第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bが動作すると、酸素分離モジュール60の排気空間S4の空気は、排気口65から吸込流路197を介して第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bのシリンダ室へ取り込まれ、シリンダ室から庫外排気流路196を介して機械室38へ排出される。
これにより、排気空間S4が酸素富化膜62を挟んで対向する調整空間S3より低圧になるため、調整空間S3の酸素が酸素富化膜62を透過して排気空間S4へ移動し、調整空間S3の酸素濃度が低下する。
また、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bの動作に伴って、各ポンプ90A,90Bの駆動室の空気が、送気流路98及び導入流路198を介して酸素分離モジュール60に設けられたセル63の調整空間S3へ供給される。
調整空間S3へ供給された空気は、酸素が排気空間S4へ排出されながら酸素富化膜62に沿って流れることで酸素濃度が低下し、その後、貯蔵容器70の後方壁70aに設けられた開口部70bから貯蔵空間S1へ供給される。
これにより、貯蔵空間S1の酸素濃度が低下して、貯蔵空間S1に収納した貯蔵品の酸化を抑えて貯蔵品の鮮度を維持することができる。
そして、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bの動作を開始してから所定時間が経過する等の所定の終了条件を満たすと、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bを停止して減酸素運転を終了する。
(4)酸素富化膜62の第一実施形態について
本実施形態に係る酸素富化膜62は、図3に示すように、シロキサン結合を有する化合物を含有する固体状シリコーンからなる気体分離層101と、気体分離層101を支持する多孔質基材層102とを有する。
本実施形態に係る酸素富化膜62は、図3に示すように、シロキサン結合を有する化合物を含有する固体状シリコーンからなる気体分離層101と、気体分離層101を支持する多孔質基材層102とを有する。
なお本明細書において、「シリコーン系組成物」とはシロキサン結合を有する化合物を含有し、架橋構造を形成しうる物質全般を指し、「固体状シリコーン」とは、上記シリコーン系組成物が脱溶剤等により流動性を失ったもの全般を指し、架橋構造が形成されたものと形成されていないものの双方を含むものとする。
多孔質基材層102に形成された細孔の平均孔径は、特に限定されないが、0.001μm〜1μmであることが好ましく、0.01μm〜0.1μmであることがより好ましい。
本実施形態に係る酸素富化膜62の製造方法は、特に限定されないが、例えば、シロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈し、シリコーン系組成物を調製する希釈工程と、上記シリコーン系組成物を架橋反応させることにより増粘させる増粘工程と、上記増粘工程で増粘させたシリコーン系組成物に、架橋反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、多孔質基材層102に、増粘後の上記シリコーン系組成物を塗布することにより気体分離層101を積層する塗布工程とを有するものとすることができる。
[希釈工程]
上記溶剤としては、特に限定されないが、シリコーン系組成物や反応促進剤などの溶解性や、溶剤の揮発性の観点から、ヘキサン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類であることが好ましい。
上記溶剤としては、特に限定されないが、シリコーン系組成物や反応促進剤などの溶解性や、溶剤の揮発性の観点から、ヘキサン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類であることが好ましい。
上記シリコーン系組成物中のシロキサン結合を有する化合物の濃度は、特に限定されないが、気体分離層101の膜厚を薄くする観点から、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。
また、シリコーン系組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シロキサン構造を有していないモノマーやプレポリマー、さらには酸素富化膜を形成する組成物に対して、通常用いられる添加剤を配合していてもよい。
[増粘工程]
上記シリコーン系組成物を増粘させるためには、架橋反応の反応促進剤として、付加反応や縮合反応に通常使用される、白金触媒等の金属触媒を配合することができる。
上記シリコーン系組成物を増粘させるためには、架橋反応の反応促進剤として、付加反応や縮合反応に通常使用される、白金触媒等の金属触媒を配合することができる。
上記架橋反応の反応条件は、架橋反応させる方法や使用するシロキサン結合を有する化合物に応じて適宜選択すればよく、これらに限定されるものではないが、白金触媒を用いる場合、常温で放置するか、50〜120℃で加熱すればよい。
[増粘抑制工程]
上記増粘抑制工程は、上記増粘工程における上記シリコーン系組成物の25℃における粘度が、1mPa・s〜50mPa・sになれば実施することが好ましく、10mPa・s〜30mPa・sになれば実施することがより好ましい。粘度が上記範囲内である場合、均一塗布性に優れ、かつ十分に架橋反応が進んでおり、シリコーン系組成物を多孔質基材層102に塗布した後に架橋反応を行わなくても十分な強度が得られやすい。ここで本明細書において、「粘度」とは、円錐平板型回転粘度計を用いて、回転数100rpmで測定した値とする。
上記増粘抑制工程は、上記増粘工程における上記シリコーン系組成物の25℃における粘度が、1mPa・s〜50mPa・sになれば実施することが好ましく、10mPa・s〜30mPa・sになれば実施することがより好ましい。粘度が上記範囲内である場合、均一塗布性に優れ、かつ十分に架橋反応が進んでおり、シリコーン系組成物を多孔質基材層102に塗布した後に架橋反応を行わなくても十分な強度が得られやすい。ここで本明細書において、「粘度」とは、円錐平板型回転粘度計を用いて、回転数100rpmで測定した値とする。
架橋反応を抑制させる化合物としては、架橋反応の反応促進剤として、触媒を用いる場合、触媒毒を用いることができる。具体的には、触媒として白金触媒を用いる場合、触媒毒としては、トリメチルアミンなどのアミン化合物や、トリメチルホスフィンなどのリン化合物、エタンチオールなどの硫黄化合物などが挙げられる。また、沸点が100℃以下であるものが好ましい。沸点が100℃以下である場合、後工程において加熱することで基材変性を起こすことなく、触媒毒を除去しやすい。
上記触媒毒の配合量は、特に限定されないが、上記白金触媒1モルに対して、上記官能基が1〜1000モルとなるように配合することが好ましく、10〜100モルとなるように配合することがより好ましい。
[塗布工程]
架橋反応後の上記シリコーン系組成物を塗布する方法は特に限定されず、ダイコーターやロールコータを用いたコーター塗布、刷毛塗り、浸漬、流し込み等の方法を適宜用いることができる。
架橋反応後の上記シリコーン系組成物を塗布する方法は特に限定されず、ダイコーターやロールコータを用いたコーター塗布、刷毛塗り、浸漬、流し込み等の方法を適宜用いることができる。
また、上記塗布工程の後には、必要に応じて、気体分離層101を架橋反応させる工程を有するものであってもよいが、多孔質基材層102の変性を抑制する観点から、加熱温度は、基材変性が起こらない温度以下であることが好ましく、使用する基材の種類によっても異なるが、例えば、50℃〜120℃であることが好ましく、80℃〜100℃であることがより好ましい。150℃を超えると、多孔質基材層102が変性するおそれがあるからである。
このように、シリコーン系組成物を多孔質基材層102に塗布する前に架橋反応させることにより、シリコーン系組成物の粘度が適度に大きくなるため、シリコーン系組成物のシロキサン結合を有する化合物の濃度が低い場合であっても、多孔質基材層102に均一に塗布することができる。また、シリコーン系組成物の粘度が適度に大きくなった際に、架橋反応を抑制させる化合物を添加することにより、架橋反応を抑制することで、シリコーン系組成物の粘度を適度な範囲で維持することができ、作業性が改善する。
また、膜厚の均一な気体分離層101が形成されることにより、膜全体で効率的に気体分離(気体透過)が行われるため、優れた気体分離能が得られる。
このような方法により得られた気体分離層101は、白金触媒と、窒素、硫黄、又はリンを含む官能基を少なくとも1つ有する触媒毒とを含有する。窒素を含有する官能基としては、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレア基が挙げられ、硫黄を含む官能基としては、チオール基、ジスルフィド結合、スルホ基が挙げられ、リンを含む官能基としては、ホスフィンが挙げられる。
上記方法により得られた酸素富化膜62は、常法に従い、酸素分離モジュール60に適用することができる。
(5)酸素富化膜62の第二実施形態について
本実施形態に係る酸素富化膜62は、図4に示すように、シロキサン結合を有する化合物を含有する固体状シリコーンからなる気体分離層101と、気体分離層101を支持する多孔質基材層102とを有し、多孔質基材層102と気体分離層101との間には、中間層103を有する。
本実施形態に係る酸素富化膜62は、図4に示すように、シロキサン結合を有する化合物を含有する固体状シリコーンからなる気体分離層101と、気体分離層101を支持する多孔質基材層102とを有し、多孔質基材層102と気体分離層101との間には、中間層103を有する。
中間層103は、気体透過性が高いものであることが好ましく、そのような中間層103に用いられる中間層組成物としては、例えば、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)を含有するものが挙げられ、モノマーやオリゴマー、溶剤、中間層に通常用いられる添加剤等を含んでいてもよい。
本実施形態に係る酸素富化膜62の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記シリコーン系組成物を架橋反応させることにより増粘させる増粘工程と、上記増粘工程で増粘させたシリコーン系組成物に、架橋反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、多孔質基材層102に、中間層103を構成する中間層組成物を塗布することにより中間層103を積層し、中間層103に増粘後の上記シリコーン系組成物を塗布することにより気体分離層101を積層する塗布工程とを有するものとすることができる。
このように、シリコーン系組成物を中間層103に塗布する前に架橋反応させることにより、シリコーン系組成物の粘度が適度に大きくなるため、シリコーン系組成物のシロキサン結合を有する化合物の濃度が低い場合であっても、中間層103に均一に塗布することができる。また、シリコーン系組成物の粘度が適度に大きくなった際に、架橋反応を抑制させる化合物を添加することにより、架橋反応を抑制することで、シリコーン系組成物の粘度を適度な範囲で維持することができ、作業性が改善する。
また、膜厚の均一な気体分離層101が形成されることにより、膜全体で効率的に気体分離(気体透過)が行われるため、優れた気体分離能が得られる。
また、シリコーン系組成物としてシロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈した溶液を使用する場合に、シリコーン系組成物の増粘により、シリコーン系組成物による中間層103の表面の劣化を抑えることもできる。このメカニズムは定かではないが、溶液中でシロキサン結合を有する化合物が架橋反応することでシリコーン系組成物が増粘し、シリコーン系組成物の流動性が低下することで、中間層103を構成する中間層組成物のシリコーン系組成物に対する溶解性が悪くなるためと推測される。
その他の特徴については、第一実施形態と同じであるため省略する。
(6)変更例
上記実施形態では、架橋反応により、シリコーン系組成物を増粘させる方法について説明したが、化学反応により増粘させることができればこれに限定されない。
上記実施形態では、架橋反応により、シリコーン系組成物を増粘させる方法について説明したが、化学反応により増粘させることができればこれに限定されない。
上記実施形態では、架橋反応を促進させる反応促進剤として、触媒を用いた例について説明したが、これに限定されず、反応促進剤として、架橋剤やラジカル開始剤を配合することで架橋反応を促進させるものであってもよく、スズ触媒やチタン触媒と加水分解可能な基(アルコキシ基など)を有する多官能シラン化合物とを配合することで縮合反応を促進させるものであってもよい。
架橋剤としては、これらに限定されないが、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のシラン系架橋剤が挙げられる。
ラジカル開始剤としては、アシル系有機過酸化物やアルキル系有機過酸化物等の有機過酸化物やアゾ化合物等が使用可能である。
上記架橋反応の反応条件は、架橋反応させる方法や使用するシロキサン結合を有する化合物に応じて適宜選択すればよく、これらに限定されるものではないが、常温硬化による場合には、常温で架橋反応を進行させ得る架橋剤を反応促進剤として使用し常温で放置すればよく、加熱硬化による場合には、加熱が必要な架橋剤を反応促進剤として使用し、例えば100℃〜150℃に加熱すればよく、エネルギー線硬化や電子線硬化による場合には、ラジカル開始剤を反応促進剤として使用し、紫外線等のエネルギー線を例えば1,000mJ/cm2〜10,000mJ/cm2や電子線を例えば10kGy〜100kGyで照射すればよい。
反応促進剤として、架橋剤やラジカル開始剤を用いた場合、化学反応を抑制させる化合物としては、例えば、ヒドロキノンを用いることができる。
反応促進剤として、スズ触媒やチタン触媒と加水分解可能な基(アルコキシ基など)を有する多官能シラン化合物を用いた場合、化学反応を抑制させる化合物として、例えば、単官能のシラン化合物を用いることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…冷蔵庫、2…キャビネット、10…冷蔵室、12…野菜室、30…冷蔵冷却器、31…冷蔵ファン、32…冷蔵冷却器室、60…酸素分離モジュール、61…ケース、62…酸素富化膜、63…セル、65…排気口、66…シール材、70…貯蔵容器、70a…後方壁、70b…開口部、90…排気部、90A…第1排気ポンプ、90B…第2排気ポンプ、96…出口流路、97…入口流路、98…送気流路、196…庫外排気流路、197…排気流路、198…導入流路、S1…貯蔵空間、S3…調整空間、S4…排気空間、101…気体分離層、102…多孔質基材層、103…中間層
Claims (7)
- 少なくとも、気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材層とを有する酸素富化膜の製造方法であって、
シロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈し、シリコーン系組成物を調製する希釈工程と、
前記シリコーン系組成物を化学反応させることにより増粘させる増粘工程と、
前記増粘工程で増粘させた前記シリコーン系組成物に、化学反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、
前記多孔質基材層に、増粘後の前記シリコーン系組成物を塗布することにより前記気体分離層を積層する塗布工程とを有する、酸素富化膜の製造方法。 - 少なくとも、気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材層と、前記気体分離層と前記多孔質基材層との間に中間層とを有する酸素富化膜の製造方法であって、
シロキサン結合を有する化合物を溶剤で希釈し、シリコーン系組成物を調製する希釈工程と、
前記シリコーン系組成物を化学反応させることにより増粘させる増粘工程と、
前記増粘工程で増粘させた前記シリコーン系組成物に、化学反応を抑制させる化合物を添加する増粘抑制工程と、
前記多孔質基材層に、前記中間層を構成する中間層組成物を塗布することにより前記中間層を積層し、前記中間層に増粘後の前記シリコーン系組成物を塗布することにより前記気体分離層を積層する塗布工程とを有する、酸素富化膜の製造方法。 - 前記化学反応が架橋反応である、請求項1又は2に記載の酸素富化膜の製造方法。
- 前記増粘工程において、前記シリコーン系組成物の25℃における粘度が1mPa・s〜50mPa・sになれば、前記増粘抑制工程を実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素富化膜の製造方法。
- 前記架橋反応は、白金触媒を用いたものであり、化学反応を抑制させる化合物が、アミン化合物、リン化合物、及び硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1つの触媒毒である、請求項3に記載の酸素富化膜の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により得られた酸素富化膜を用いて作製する、貯蔵庫の製造方法。
- 少なくとも、気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材層とを有する酸素富化膜であって、
前記気体分離層が、白金触媒と、窒素、硫黄、又はリンを含む官能基を少なくとも1つ有する触媒毒とを含有し、
前記触媒毒を、前記白金触媒1モルに対して、前記官能基が1〜1000モルとなるように含有する、酸素富化膜。
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