JP2020116561A - 気体分離複合体、及びその製造方法 - Google Patents

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篤志 冨田
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Abstract

【課題】気体分離層又は中間層と多孔質基材との接着性と、気体分離性能に優れた気体分離複合体及びその製造方法を提供する。【解決手段】気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材と、前記多孔質基材と前記気体分離層とを接着する接着部とを備え、前記気体分離層の前記多孔質基材と接触しない領域には前記接着部が存在しない領域を有し、前記接着部は相互に独立した島状をなしているものとする。【選択図】 図3

Description

本発明の実施形態は、気体分離複合体、及びその製造方法に関するものである。
冷蔵庫などの貯蔵庫に貯蔵される食品などの貯蔵品の劣化要因として、空気中に存在する酸素による酸化がある。そこで、貯蔵容器内の空気をポンプなどの排気手段によって気体分離複合体(酸素分離膜)を通じて吸引することにより、高酸素濃度の空気を貯蔵容器の外部に排出し、貯蔵容器内の酸素濃度を低減させることで貯蔵品の酸化を抑えて貯蔵品の鮮度を維持することができる貯蔵庫が知られている。
このような貯蔵庫に用いられる気体分離複合体の製造方法としては、例えば、水面上に形成された気体分離層を多孔質基材に転写する水面展開法が知られている。
しかしながら、水面展開法では、水面上に形成された薄膜を取り扱うため、作業が煩雑で、膜が破れる等の欠陥も生じ易く、大量生産には不適であった。
また、このような製造方法の場合、気体分離層と多孔質基材との接着性を高めるために、気体分離層の多孔質基材との接着面の全面に接着層が形成されるか、あるいは、気体分離層を構成する気体分離層組成物への接着成分の配合等が行われることがある。
しかしながら、接着層又は気体分離層組成物中に含まれる接着成分が、気体分離層の気体透過を阻害するため、気体分離層と多孔質基材との接着性と気体分離性能の両立に改善の余地があった。
上記水面展開法の他にも、例えば、シロキサン結合を有する化合物を含有するシリコーン系組成物に触媒などの反応促進剤を混合した混合液を多孔質基材層に塗布し、加熱して架橋させることにより硬化させて、多孔質基材層上に気体分離層を形成する溶液塗布法が知られている。
しかしながら、このような従来の溶液塗布法では、塗布後に多孔質基材の孔部にシリコーン系組成物が含浸するため膜厚が均一とはならず、その場合、膜厚の薄い個所に空気の透過が集中するため、気体分離層全体が気体分離に効率的に寄与するものではなく、気体分離性能について改善の余地があった。
特開2015−062856号公報
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、気体分離層又は中間層と多孔質基材との接着性と、気体分離性能に優れた気体分離複合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本実施形態の気体分離複合体は、気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材と、前記多孔質基材と前記気体分離層とを接着する接着部とを備え、前記気体分離層の前記多孔質基材と接触しない領域には前記接着部が存在しない領域を有し、前記接着部は相互に独立した島状をなしているものとする。
本実施形態の気体分離複合体の製造方法は、気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、前記多孔質基材上に平滑層組成物を塗布し、平滑層を形成する工程と、前記平滑層上に気体分離層組成物を塗布し、前記気体分離層を形成する工程と、前記平滑層を溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
本発明の一実施形態に係る気体分離複合体を備える冷蔵庫を説明するための断面図。 図1の要部断面図。 本発明の第1実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 図3(d)の部分拡大図。 本発明の第2実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第3実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第4実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第5実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第6実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第7実施形態に係る気体分離複合体の製造工程を示す模式断面図。 本発明の第1,2,5,6実施形態に係る気体分離複合体の変更例を示す模式断面図。 本発明の第3,4,7実施形態に係る気体分離複合体の変更例を示す模式断面図。
以下、一実施形態の気体分離複合体62を備える冷蔵庫1について、図1〜2に基づいて説明する。
(1)気体分離複合体62を備える冷蔵庫1について
冷蔵庫1は、前面に開口する断熱箱体からなるキャビネット2を備える。キャビネット2は鋼板製の外箱3と合成樹脂製の内箱4との間に形成された断熱空間5に真空断熱材や発泡断熱材等の断熱材を有して構成されている。キャビネット2は内箱4の内側に複数の貯蔵空間が設けられており、貯蔵空間が断熱仕切壁6によって上下に区画されている。
断熱仕切壁6の上方の空間は、冷蔵温度帯(例えば、1〜4℃)に冷却される貯蔵室であり、内部がさらに仕切壁7によって上下に区画されている。仕切壁7の上方には冷蔵室10が設けられ、仕切壁7の下方には野菜室12が設けられている。
冷蔵室10の内部は、複数の棚板9によって上下に複数段に区画され、冷蔵室10の背面に冷蔵室10内の温度を測定する冷蔵温度センサ25が設けられている。
冷蔵室10の前面開口部には、ヒンジで枢支された回動式の冷蔵室扉11が設けられている。野菜室12の前面開口部は、引出し式の野菜室扉13により閉塞されている。野菜室扉13の庫内側には、貯蔵容器70を保持する左右一対の支持枠が固着され、開扉動作とともに貯蔵容器70が庫外に引き出されるように構成されている。野菜室12の前面開口部の周縁部には、扉センサ29が設けられ野菜室扉13が開放状態にあるか閉塞状態にあるかを検知する。
野菜室12内に設けられた貯蔵容器70は、前方壁、後方壁70a、左右側壁によって囲まれた有底の箱状の容器であり、上方に開口する上面開口部が設けられている。貯蔵容器70の内部は野菜等の貯蔵品を収納する貯蔵空間S1が形成され、貯蔵容器70の上面開口部より貯蔵品を出し入れするようになっている。貯蔵容器70は、その上面開口部が蓋体72によって開閉可能に閉塞されており、野菜室12を循環する空気(風)の直接的な進入が抑制された閉塞容器を構成している。貯蔵容器70の後方壁70aの下部には、開口部70bが穿設されるとともに、開口部70bの貯蔵空間S1側を、間隔をあけて覆うように設けられた風向板52が設けられている。風向板52は上方に行くほど前方へ傾斜しており、開口部70bから吹き出す空気が貯蔵容器70の天井面(つまり、蓋体72)に向けて吹き出すようにこれを案内する。
断熱仕切壁6の下方の空間には、自動製氷機を備えた製氷室(不図示)と第1冷凍室16とが左右に併設され、その下方に仕切板22を介して第2冷凍室17が設けられている。
製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17は、いずれも冷凍温度帯(例えば、−17℃以下)に冷却される。第2冷凍室17の背面には、第2冷凍室17内の温度を測定するための冷凍温度センサ26が設けられている。
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の開口部は、野菜室12と同様、引き出し式の扉18,19により閉塞されている。各扉18,19の裏面側に固着した左右一対の支持枠には貯蔵容器20,21が保持されており、開扉動作とともに該貯蔵容器20,21が庫外に引き出されるように構成されている。
冷蔵室10及び野菜室12の後部には、エバカバー23で前後に仕切られた冷蔵冷却器室32が設けられている。
冷蔵冷却器室32には、冷蔵冷却器30、冷蔵ファン31、ドレインパン27及び排気部90が収納されている。冷蔵冷却器室32は、ダクト33によって冷蔵室10と連結され、冷蔵冷却器30が冷却した冷蔵冷却器室32の空気を冷蔵ファン31によってダクト33を介して冷蔵室10へ供給するようになっている。
ドレインパン27は、冷蔵冷却器30の下方に配置され、除霜運転時に冷蔵冷却器30から生じる結露水(除霜水)を受ける。ドレインパン27に溜まった結露水は、排水ホース28を介してキャビネット2の背面下部に設けられた機械室38に配置された蒸発皿41へ排出する。
ドレインパン27に溜まった結露水を機械室38へ排出する排水ホース28は、キャビネット2の背面壁に設けられた冷蔵冷却器室32と機械室38とを連通する挿通孔2aに挿通され、冷蔵冷却器室32から機械室38へ引き出されている。
キャビネット2に設けられた挿通孔2aは、挿通する排水ホース28より口径が大きくなっている。そのため、挿通孔2aに排水ホース28を挿入した状態で、挿通孔2aと排水ホース28との間には、冷蔵冷却器室32から機械室38まで一続きに繋がった隙間が形成されている。つまり、挿通孔2aと排水ホース28との間に形成された隙間が、野菜室12と機械室38とを連通する通気孔2cとして機能する。
製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17の後部には、エバカバー24で前後に仕切られた冷凍冷却器室36と、製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17と冷凍冷却器室36とを連結するダクト37とが形成されている。冷凍冷却器室36には、冷凍冷却器34及び冷凍ファン35が収納されており、冷凍冷却器34が冷却した冷凍冷却器室36の空気を冷凍ファン35によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16、及び第2冷凍室17へ供給する。
冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34は、機械室38に収納された圧縮機39や凝縮器(不図示)とともに冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルでは、圧縮機39から吐出された冷媒が不図示の切替弁によって冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34の一方に供給されることで所定温度に冷蔵冷却器30及び冷凍冷却器34が冷却される。
冷蔵冷却器30は、冷蔵冷却器室32の空気を冷却して、例えば、−10〜−20℃の冷気を生成する。冷蔵冷却器室32で生成された冷気は、冷蔵ファン31の回転によって、ダクト33を介して冷蔵室10へ供給され、冷蔵室10を冷却する。
冷蔵室10を流れた冷気の一部は、仕切壁7の後部に設けられた吸込口から冷蔵冷却器室32へ戻り、残りの空気は仕切壁7に設けられた連通路7aを通って野菜室12の後方上部へ流れ込む。
野菜室12に流れ込んだ冷気は、野菜室12に設けられた貯蔵容器70の外側を流れながら野菜室12内を冷却することで、貯蔵容器70の外側から間接的にその内部を冷却する。野菜室12を流れた冷気は、吸込口から冷蔵冷却器室32へ戻る。冷蔵冷却器室32に戻った冷気は冷蔵冷却器30と熱交換して再び冷却される。
冷凍冷却器34は、冷凍冷却器室36の空気を冷却して、例えば、−20〜−30℃の冷気を生成する。生成した冷気は、冷凍ファン35の回転によってダクト37を介して製氷室、第1冷凍室16及び第2冷凍室17に供給され、これらの貯蔵室を冷却する。製氷室及び第1冷凍室16を冷却した空気は、不図示の透孔を通って第2冷凍室17へ流れ込み、第2冷凍室17に供給された冷気と合流し、その後、第2冷凍室17の背面に設けられた吸込口から冷凍冷却器室36に戻り、冷凍冷却器34と熱交換して再び冷却される。
(2)減酸素装置60について
このような構成の冷蔵庫1では、図1及び図2に示すように、気体分離複合体62を備える減酸素装置60が、野菜室12内、例えば、エバカバー23で区画された冷蔵冷却器室32の下方に貯蔵容器70の後方壁70aと対向するように設けられている。
減酸素装置60には、箱形のケース61の内部に気体分離複合体62を備えたセル63が設けられている。セル63は、調整空間S3と、排気空間S4と、両空間S3,S4を仕切る気体分離複合体62とで構成されている。なお、減酸素装置60は、ケース61の内部に気体分離複合体62の厚さ方向に複数のセル63を重ねて設けたものとしてもよい。
気体分離複合体62は、調整空間S3と排気空間S4との間に圧力差が生じると、高圧側の空気中の酸素が複合体内部を拡散移動して低圧側の表面から離脱することで、高圧側の酸素濃度を低下させる。
セル63に設けられた調整空間S3は、気体分離複合体62に平行に近接して配置された隔壁との間に区画されたダクト状の空間であり、その一端に導入流路198が連結されている。導入流路198は、後述する排気ポンプ90Aと90Bのそれぞれに接続された2本の送気流路98が相互に合流してなる流路である。
調整空間S3の他端は、貯蔵容器70の後方壁70aに設けられた開口部70bと前後に対向する位置に開口し、この開口の周縁部を取り囲むようにゴム又はシリコーン等のゴム状弾性体からなるシール材66が設けられている。
図1に示すような貯蔵容器70を野菜室12内に収納した状態において、シール材66は開口部70bを取り囲むように貯蔵容器70の後方壁70aに当接する。これにより、貯蔵容器70の開口部70bと調整空間S3の先端とがシール材66によって接続され、貯蔵空間S1の下部(貯蔵空間S1の高さ方向中央部より下側)においてケース61内に設けられた調整空間S3と貯蔵容器70の貯蔵空間S1とが連通する。
また、セル63の排気空間S4には吸込流路197を接続する排気口65が設けられている。
減酸素装置60は、排気部90が接続されており、気体分離複合体62を透過した貯蔵容器70内部の空気を、排気部90によって貯蔵容器70の外部へ排気することで、貯蔵空間S1の酸素濃度を低減する。
排気部90は、複数の排気手段、本実施形態では第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bとを備える。
第1排気ポンプ90Aの出口流路96と第2排気ポンプ90Bの出口流路96は、途中で合流して1つの庫外排気流路196となり、キャビネット2の背面壁に設けられた野菜室12と機械室38とを連通する挿通孔2bに挿通され、冷蔵冷却器室32から機械室38へ引き出されている。
第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bは基本的な構成が共通するものであり、セル63の排気空間S4の空気を吸込流路197及び入口流路97を介して、排気ポンプ90内のシリンダ室(不図示)へ取り込む吸気動作と、取り込んだ空気をシリンダ室から出口流路96及び庫外排気流路196を介して機械室38へ排出する排気動作とを繰り返す。
また、第1排気ポンプ90Aは、入口流路97からシリンダ室へ空気を取り込む際に、駆動室(不図示)の空気を送気流路98及び導入流路198を介して減酸素装置60の調整空間S3へ送り出す。
キャビネット2の背面上部には、冷蔵庫1の動作全般を制御する制御部50が設けられている(図1参照)。制御部50は、冷蔵温度センサ25、冷凍温度センサ26、扉センサ29などの各種センサ等から入力される信号や、EEPROM等の不揮発性記録媒体からなるメモリに記憶された制御プログラムに基づいて、冷蔵ファン31、冷凍ファン35、圧縮機39、冷凍サイクルに設けられた切替弁(不図示)、排気部90などの各種電気部品を制御することで、各室を所定温度に冷却したり、野菜室12に設けた貯蔵容器70内部の貯蔵空間S1の酸素濃度を低減したりする。
(3)気体分離複合体62について
(第1実施形態)
第1実施形態に係る気体分離複合体62は、図3(d)、及び図4に示すように、気体分離層101と、気体分離層101を支持する多孔質基材102と、多孔質基材102と気体分離層101とを接着する接着部103とを備え、気体分離層101の多孔質基材102と接触しない領域には接着部103が存在しない領域を有し、接着部103は相互に独立した島状をなしているものとする。
気体分離層101を構成する気体分離層組成物は、特に限定されないが、シリコーン系組成物や二置換ポリアセチレン等を必要に応じて溶媒に溶解させたものを用いることができ、必要に応じて、反応促進剤を含有するものであってもよい。
本明細書において、「シリコーン系組成物」とはシロキサン結合を有する化合物を含有し、脱水縮合反応、架橋、脱溶媒等により膜を形成しうる物質全般を指し、架橋構造が形成されていないものであってもよく、塗布後に架橋構造が形成されるものであってもよく、反応促進剤の添加により塗布する前に架橋構造が形成されたものであってもよく、これらを2種以上含むものであってもよい。また、シロキサン構造を有していないモノマーやプレポリマーを含有するものであってもよい。
二置換ポリアセチレンとしては、例えば、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)が挙げられる。
ここで反応促進剤とは、架橋剤、触媒、ラジカル開始剤等の、シリコーン系組成物の架橋反応を促進する物質全般を指し、2種以上を併用してもよく、シリコーン系組成物としては、そのような反応促進剤と混合することにより架橋反応が進行する二液硬化型であってもよい。
架橋剤としては、これらに限定されないが、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のシラン系架橋剤が挙げられる。
触媒としては、付加反応や脱アルコール縮合反応に通常使用される、白金触媒等の金属触媒が使用可能である。
ラジカル開始剤としては、アシル系有機過酸化物やアルキル系有機過酸化物等の有機過酸化物やアゾ化合物等が使用可能である。
上記溶媒としては、特に限定されないが、シリコーン系組成物や、二置換ポリアセチレン、反応促進剤などの溶解性や、溶媒の揮発性の観点から、ヘキサン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類であることが好ましい。
気体分離層101の膜厚は、特に限定されないが、1nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましく、50nm〜500nmであることがさらに好ましい。ここで本明細書において「膜厚」とは、光の干渉により膜厚測定を行う光学式膜厚測定機により測定した値とする。溶液塗布法では、気体分離層101の膜厚が薄くなるほど均一な膜厚の気体分離層101を形成するのが困難になる傾向にあり、気体分離層101を上記の膜厚で形成する場合、本実施形態の効果が顕著に認められる。
多孔質基材102に形成された細孔の平均孔径は、特に限定されないが、0.001μm〜0.1μmであることが好ましく、0.01μm〜0.1μmであることがより好ましい。0.001μm以上である場合、優れた気体透過性が得られやすく、0.1μm以下である場合、平滑層104の表面を平滑にしやすい。
接着部103は、多孔質基材102と気体分離層101との接触面に、接着剤106が付着し、相互に独立した島状をなしている。接着部103において、接着剤106は点在するものであってもよく、接着剤106同士が凝集し局所的に層を形成するものであってもよい。接着剤としては、気体分離複合体の各層を接着させるために従来から用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)などが挙げられる。
接着部103が、多孔質基材102と気体分離層101との接触面に、相互に独立した島状をなして形成されていることにより、優れた気体分離性能が得られやすい。具体的には、図3(d)及び図4に示すように、気体分離層101の多孔質基材102とは接触していない領域には、接着部103が形成されていない領域を有し、気体分離層101の気体透過に寄与する面積をより広くすることができるため、気体分離の効率が向上する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図3(a)〜(d)に示すように、多孔質基材102上に平滑層組成物を塗布し、平滑層104を形成する工程と、平滑層104上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、平滑層104を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
平滑層組成物としては、気体分離層組成物を塗布する面を平滑化することができ、溶媒等で溶解して除去できるものであれば、特に限定されないが、グリセリンや、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、グリセリンであることが好ましい。平滑層組成物としてグリセリンのような液状の化合物を用いた場合、多孔質基材102の表面に塗布した際に、表面張力によって平滑層104の表面が平滑化されやすく、除去工程において容易に除去しやすい。また、平滑層組成物は、接着剤106を含有するものであってもよい。
除去する工程としては、例えば、水やアルコール類等を用いて洗浄することで、平滑層組成物を溶解し、多孔質基材102の平滑層組成物が塗布された面と連通する裏面や側面の孔部から溶解物を排出させる工程が挙げられる。
このように、多孔質基材102上に平滑層104を形成し、平滑層104上に膜厚の均一な気体分離層101を形成した後、平滑層104を洗浄により除去することで、平滑層組成物中に含まれる接着剤106が、多孔質基材102の気体分離層101との接触面に残留し接着部103が形成される。
上述のとおり、膜厚の均一な気体分離層101を形成した上で、多孔質基材102の表面と密着させているため、気体分離層101が多孔質基材102の表面に沿って変形したとしても、多孔質基材102の孔部に位置する気体分離層101の膜厚は均一であり、空気の透過が気体分離層101の一部の個所に集中することがなく、気体分離層101全体で効率的に気体分離を行うことができる。
さらに、気体分離層101の接触面以外の領域に付着していた接着剤106は平滑層組成物と共に除去されるため、気体分離層101の気体透過に寄与する面積をより広くすることができ、気体分離の効率が向上する。
また、従来の製造方法では、気体分離層組成物が塗布した際に多孔質基材102の孔部に含浸するため、気体分離層101の膜を形成するためには、気体分離層組成物の使用量が多くなる傾向にあったが、本実施形態によれば、平滑な面に気体分離層組成物を塗布することができるため、従来の製造方法と比較し、気体分離層組成物の使用量を削減し、気体分離層101の膜厚を薄くしやすい。すなわち、本実施形態によれば、優れた気体分離性能が得られるだけでなく、コスト面でも有利である。
気体分離層組成物として、シリコーン系組成物を使用する場合、気体分離層101の強度を高める観点から気体分離層組成物を架橋する工程を有していても良く、除去工程は架橋工程の後に行うことが好ましい。すなわち、シリコーン系組成物を塗布する前に架橋を行うものであってもよく、シリコーン系組成物の塗布後に架橋を行うものであってもよく、好ましくは、塗布する前、あるいは塗布後であって除去工程の前に架橋を行うものとする。除去工程をシリコーン系組成物の架橋後に行うことにより、除去工程の際に、シリコーン系組成物が溶媒等に溶解するのを抑制することができる。
架橋させる方法としては、特に限定されず、反応促進剤の種類に応じて適宜選択する。すなわち、常温で架橋反応を進行させ得る架橋剤や触媒を反応促進剤として使用する場合は常温で放置すればよく、ラジカル開始剤を使用する場合は紫外線等のエネルギー線や電子線を照射するか加熱すればよく、加熱が必要な触媒を使用する場合は加熱すればよい。反応温度等、その他の反応条件は、従来から用いられている方法に準じて選択すればよい。
多孔質基材102上に平滑層組成物を塗布する方法、及び平滑層104上に気体分離層組成物を塗布する方法は特に限定されず、ダイコーターやロールコータを用いたコーター塗布、スプレー塗布等の方法を適宜用いることができる。
(第2実施形態)
多孔質基材102の孔径の大きさや気体分離層組成物の種類、あるいは、気体分離複合体として求められる気体分離性能の程度によっては、多孔質基材102にグリセリンやポリビニルアルコールなどの平滑層組成物を塗布するだけでは、気体分離層組成物を塗布する面の平滑化が十分でないこともある。そこで、第2実施形態では、多孔質基材102と気体分離層101との間に中間層105を介在させた気体分離複合体62について説明する。なお、第1実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
第2実施形態に係る気体分離複合体62は、図5(e)に示すように、気体分離層101と、中間層105と、気体分離層101及び中間層105を支持する多孔質基材102と、多孔質基材102と中間層105とを接着する接着部103とを備え、中間層105の多孔質基材102と接触しない領域には接着部103が存在しない領域を有し、接着部103は相互に独立した島状をなしているものとする。
中間層105を構成する中間層組成物としては、平滑層組成物よりも空気透過率の高い組成物が挙げられ、具体的には、溶媒に二置換ポリアセチレンや、ポリ(4−メチルペンテン−1)、シリコーン系組成物が溶解したものを用いることができ、二置換ポリアセチレンとしては、例えば、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)が挙げられる。気体透過性の観点からは、二置換ポリアセチレン、シリコーン系組成物であることが好ましく、中間層105の強度の観点からは、二置換ポリアセチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)であることが好ましい。
中間層105の膜厚は、特に限定されないが、気体透過性及びコスト削減の観点から、中間層105の膜厚は1nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがより好ましい。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図5(a)〜(e)に示すように、多孔質基材102上に平滑層組成物を塗布し、平滑層104を形成する工程と、平滑層104上に中間層組成物を塗布し、中間層105を形成する工程と、中間層105上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、平滑層104を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
上述のとおり、膜厚の均一な中間層105及び気体分離層101を形成した上で、多孔質基材102の表面と密着させているため、多孔質基材102の表面に沿ってこれらの層が変形したとしても、多孔質基材102の孔部に位置する中間層105及び気体分離層101の膜厚は均一であり、空気の透過が気体分離層101の一部の個所に集中することがなく、気体分離層101全体で効率的に気体分離を行うことができる。
さらに、中間層105上に気体分離層101を形成した後、平滑層104を洗浄により除去することで、平滑層組成物中に含まれる接着剤106が、多孔質基材102の中間層105との接触面に残留し接着部103が形成される。そして、中間層105の接触面以外の領域に付着していた接着剤106は平滑層組成物と共に除去されるため、気体分離層101及び中間層105の気体透過に寄与する面積をより広くすることができ、気体分離の効率が向上する。
また、従来の製造方法では、中間層組成物が塗布した際に多孔質基材102の孔部に含浸するため、中間層105及び気体分離層101の膜を形成するためには、これらを構成する組成物の使用量が多くなる傾向にあったが、本実施形態によれば、平滑な面に中間層組成物及び気体分離層組成物を塗布することができるため、従来の製造方法と比較し、中間層組成物及び気体分離層組成物の使用量を削減し、中間層105及び気体分離層101の膜厚を薄くしやすい。すなわち、本実施形態によれば、優れた気体分離性能が得られるだけでなく、コスト面でも有利である。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法の変更例について説明する。なお、第1,2実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図6(a)〜(d)に示すように、多孔質基材102に平滑層組成物を含浸させ、平滑層104を形成する工程と、平滑層104上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、平滑層104を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
多孔質基材102に平滑層組成物を含浸させる方法としては、平滑層組成物中に多孔質基材102を浸漬させる方法が挙げられる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第2実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法の変更例について説明する。なお、第1〜3実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図7(a)〜(e)に示すように、多孔質基材102に平滑層組成物を含浸させ、平滑層104を形成する工程と、平滑層104上に中間層組成物を塗布し、中間層105を形成する工程と、中間層105上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、平滑層104を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
(第1〜4実施形態の変更例)
上記実施形態1〜4では、平滑層組成物に接着剤106を配合した例について説明したが、これに限定されず、平滑層104を除去する際に使用する溶媒等に配合してもよい。
このような製造方法を用いることにより、平滑層組成物を除去する際に、多孔質基材102と、気体分離層101又は中間層105とが接触する個所に接着剤106が残留し、接着部103が形成される。そして、気体分離層101又は中間層105の、多孔質基材102との接触面以外の領域に付着していた接着剤106は平滑層組成物と共に除去されるため、気体分離層101の気体透過に寄与する面積をより広くすることができ、気体分離の効率が向上する。
また、気体分離層組成物として、強度の高い組成物を使用した場合、平滑な気体分離層101を形成した後、平滑層104を除去して多孔質基材102と接触させることで、気体分離層101の変形を抑制することができ、気体分離層101と多孔質基材102との接触面積を小さくすることができる。すなわち、多孔質基材102の孔部の周囲を形成する凸部の全てが気体分離層101と接触するわけではなく、図11に示すように、気体分離層101と接触する凸部の間には、気体分離層101と接触しない凸部があってもよく、多孔質基材102と接触しない面積がより大きくなることで、気体分離層101の気体分離性能を向上させることができる。
同様に、中間層組成物として、強度の高い組成物を使用した場合、平滑な中間層105及び気体分離層101を形成した後、平滑層104を除去して多孔質基材102と接触させることで、中間層105の変形を抑制することができ、中間層105及び気体分離層101と多孔質基材102との接触面積を小さくすることができる。すなわち、多孔質基材102の孔部の周囲を形成する凸部の全てが中間層105と接触するわけではなく、図12に示すように、中間層105と接触する凸部の間には、中間層105と接触しない凸部があってもよく、多孔質基材102と接触しない面積がより大きくなることで、中間層105の気体透過性が向上し、ひいては気体分離層101の気体分離性能を向上することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法の変更例について説明する。なお、第1実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図8(a)〜(d)に示すように、多孔質基材102に気体分離層組成物を塗布する工程と、塗布した気体分離層組成物107の多孔質基材102とは逆側の表面に反応促進剤を塗布し、塗布された面及びその近傍に架橋構造を有する気体分離層101を形成させる工程と、未架橋の気体分離層組成物を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有するものとする。
未架橋の気体分離層組成物を溶解させる溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられ、溶媒のsp値は特に限定されないが、気体分離層組成物がシリコーン系組成物を含有する場合、sp値が10以下であることが好ましい。
ここで本明細書において、sp値(溶解パラメータ)とは、Fedorsの式により算出される25℃における値δ[(cal/cm1/2]であり、1(cal/cm1/2=2.05(MJ/m1/2であり、そのため、SP値が10(cal/cm1/2以下とは20.5(MJ/m1/2以下であることを意味する。
Fedorsの式:
SP値(δ)=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
Ev:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
上記の式の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー、モル体積は、F. Fedors, Polym. Eng. Sci., 14, 147 〈1974〉を参照することができる。
上記有機溶媒としては、特に限定されないが、ヘキサン(sp値:7.3)、ペンタン(sp値:7.0)、シクロヘキサン(sp値:8.2)、ベンゼン(sp値:9.2)、トルエン(sp値:8.8)、キシレン(sp値:8.9)、酢酸エチル(sp値:9.1)などの炭化水素類や、メタノール(sp値:14.5)、エタノール(sp値:12.7)、n−プロパノール(sp値:11.9)、イソプロパノール(sp値:11.5)、ブタノール(sp値:11.4)などのアルコール類などが挙げられる。気体分離層組成物がシリコーン系組成物を含有する場合、これらの中でもトルエン、ヘキサン、酢酸エチルであることが好ましい。これらの有機溶媒を使用することにより、架橋構造を有する気体分離層101を残しつつ、未架橋の気体分離層組成物を除去しやすい。
本実施形態の製造方法によれば、気体分離層組成物の反応促進剤が塗布された面及びその近傍に架橋構造を有する気体分離層101が形成され、未架橋の気体分離層組成物は溶媒に溶解させて除去することで、溶媒中に含まれる接着剤106が、多孔質基材102の気体分離層101との接触面に残留し接着部103が形成される。また、反応促進剤の濃度や、反応促進剤の塗布量を調整することにより、気体分離層の膜厚を薄く形成することができ、気体分離性能に優れた気体分離複合体が得られやすい。
膜厚の均一な気体分離層101を形成した上で、多孔質基材102の表面と密着させているため、気体分離層101が多孔質基材102の表面に沿って変形したとしても、多孔質基材102の孔部に位置する気体分離層101の膜厚は均一であり、空気の透過が気体分離層101の一部の個所に集中することがなく、気体分離層101全体で効率的に気体分離を行うことができる。
さらに、気体分離層101の接触面以外の領域に付着していた接着剤106は未架橋の気体分離層組成物と共に除去されるため、気体分離層101の気体透過に寄与する面積をより広くすることができ、気体分離の効率が向上する。
(第6実施形態)
第6実施形態では、第1実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法の変更例について説明する。なお、第1実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図9(a)〜(c)に示すように、溶解性フィルム108上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、多孔質基材102に、溶解性フィルムを貼り合わせる工程と、溶解性フィルム108を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる工程とを有するものとする。
溶解性フィルム108としては、有機溶媒に可溶なものであってもよく、水やアルコールに可溶なものであってもよく、特に限定されないが、例えばポリビニルアルコールを挙げることができる。
溶解性フィルム108として有機溶媒に可溶なものを使用する場合、有機溶媒としては、ヘキサン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの炭化水素類などを使用することができ、これらの中でも、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンであることが好ましい。また、溶解性フィルム108として水やアルコールに可溶なものを使用する場合、溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類を使用することができ、これらの中でも、エタノール、メタノールであることが好ましい。これらの溶媒を使用することにより、気体分離層101を残しつつ、溶解性フィルム108を除去しやすい。
本実施形態の製造方法によれば、溶解性フィルム108上に膜厚の均一な気体分離層101を形成した後、多孔質基材102と溶解性フィルム108とを貼り合わせ、溶解性フィルム108を洗浄により除去することで、溶解性フィルム108や溶媒中に含まれる接着剤106が、多孔質基材102の気体分離層101との接触面に残留し接着部103が形成される。
上述のとおり、膜厚の均一な気体分離層101を形成した上で、多孔質基材102の表面と密着させているため、気体分離層101が多孔質基材102の表面に沿って変形したとしても、多孔質基材102の孔部に位置する気体分離層101の膜厚は均一であり、空気の透過が気体分離層101の一部の個所に集中することがなく、気体分離層101全体で効率的に気体分離を行うことができる。
さらに、気体分離層101の接触面以外の領域に付着していた接着剤106は溶解性フィルム108と共に除去されるため、気体分離層101の気体透過に寄与する面積をより広くすることができ、気体分離の効率が向上する。
また、従来の製造方法では、気体分離層組成物が塗布した際に多孔質基材102の孔部に含浸するため、気体分離層101の膜を形成するためには、気体分離層組成物の使用量が多くなる傾向にあったが、本実施形態によれば、平滑な面に気体分離層組成物を塗布することができるため、従来の製造方法と比較し、気体分離層組成物の使用量を削減し、気体分離層101の膜厚を薄くしやすい。すなわち、本実施形態によれば、優れた気体分離性能が得られるだけでなく、コスト面でも有利である。
(第7実施形態)
第7実施形態では、第6実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法の変更例について説明する。なお、第1〜6実施形態に係る気体分離複合体62と共通する点については説明を省略する。
本実施形態に係る気体分離複合体62の製造方法は、特に限定されないが、図10(a)〜(d)に示すように、溶解性フィルム108上に、中間層組成物を塗布し中間層105を形成する工程と、中間層105上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層101を形成する工程と、多孔質基材102に、溶解性フィルム108を貼り合わせる工程と、溶解性フィルム108を溶媒で溶解して多孔質基材102の孔部から溶解物を排出させる工程とを有するものとする。
溶解性フィルム108として有機溶媒に可溶なものを使用する場合、有機溶媒としては、ヘキサン、オクタン、ヘプタン、、酢酸エチル、アセトンなどの炭化水素類などを使用することができ、これらの中でも、ヘキサン、酢酸エチル、アセトンであることが好ましい。また、溶解性フィルム108として水やアルコールに可溶なものを使用する場合、溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類を使用することができ、これらの中でも、エタノール、メタノールであることが好ましい。これらの有機溶媒を使用することにより、中間層105及び気体分離層101を残しつつ、溶解性フィルム108を除去しやすい。
(第5〜7実施形態の変更例)
上記実施形態5,6において、気体分離層組成物として、強度の高い組成物を使用した場合、平滑な気体分離層101を形成した後、未架橋の気体分離層組成物107又は溶解性フィルム108を除去して多孔質基材102と接触させることで、気体分離層101の変形を抑制することができ、気体分離層101と多孔質基材102との接触面積を小さくすることができる(図11参照)。
同様に、上記実施形態7において、中間層組成物として、強度の高い組成物を使用した場合、平滑な中間層105及び気体分離層101を形成した後、溶解性フィルム108を除去して多孔質基材102と接触させることで、中間層105及び気体分離層101の変形を抑制することができ、中間層105と多孔質基材102との接触面積を小さくすることができる(図12参照)。
(4)冷蔵庫1の減酸素運転の実行について
貯蔵容器70の内部の酸素濃度を低減する減酸素運転を実行するには、扉センサ29によって野菜室扉13が閉扉状態にあることを検出している時に、排気部90を動作させる。
具体的には、排気部90を構成する第1排気ポンプ90Aと第2排気ポンプ90Bを動作させる。第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bが動作すると、減酸素装置60の排気空間S4の空気は、排気口65から吸込流路197を介して第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bのシリンダ室へ取り込まれ、シリンダ室から庫外排気流路196を介して機械室38へ排出される。
これにより、排気空間S4が気体分離複合体62を挟んで対向する調整空間S3より低圧になるため、調整空間S3の酸素が気体分離複合体62を透過して排気空間S4へ移動し、調整空間S3の酸素濃度が低下する。
また、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bの動作に伴って、各ポンプ90A,90Bの駆動室の空気が、送気流路98及び導入流路198を介して減酸素装置60に設けられたセル63の調整空間S3へ供給される。
調整空間S3へ供給された空気は、酸素が排気空間S4へ排出されながら気体分離複合体62に沿って流れることで酸素濃度が低下し、その後、貯蔵容器70の後方壁70aに設けられた開口部70bから貯蔵空間S1へ供給される。
これにより、貯蔵空間S1の酸素濃度が低下して、貯蔵空間S1に収納した貯蔵品の酸化を抑えて貯蔵品の鮮度を維持することができる。
そして、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bの動作を開始してから所定時間が経過する等の所定の終了条件を満たすと、第1排気ポンプ90A及び第2排気ポンプ90Bを停止して減酸素運転を終了する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1…冷蔵庫、2…キャビネット、10…冷蔵室、12…野菜室、30…冷蔵冷却器、31…冷蔵ファン、32…冷蔵冷却器室、60…減酸素装置、61…ケース、62…気体分離複合体、63…セル、65…排気口、66…シール材、70…貯蔵容器、70a…後方壁、70b…開口部、90…排気部、90A…第1排気ポンプ、90B…第2排気ポンプ、96…出口流路、97…入口流路、98…送気流路、196…庫外排気流路、197…排気流路、198…導入流路、S1…貯蔵空間、S3…調整空間、S4…排気空間、101…気体分離層、102…多孔質基材、103…接着部、104…平滑層、105…中間層、106…接着剤、107…気体分離層組成物、108…溶解性フィルム

Claims (14)

  1. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材と、前記多孔質基材と前記気体分離層とを接着する接着部とを備え、
    前記気体分離層の前記多孔質基材と接触しない領域には前記接着部が存在しない領域を有し、前記接着部は相互に独立した島状をなしていることを特徴とする、気体分離複合体。
  2. 請求項1に記載の気体分離複合体を用いたことを特徴とする、減酸素装置。
  3. 請求項2に記載の減酸素装置を用いたことを特徴とする、冷蔵庫。
  4. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、
    前記多孔質基材上に平滑層組成物を塗布し、平滑層を形成する工程と、
    前記平滑層上に気体分離層組成物を塗布し、前記気体分離層を形成する工程と、
    前記平滑層を溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有することを特徴とする、気体分離複合体の製造方法。
  5. 前記除去工程が、洗浄工程であることを特徴とする、請求項4に記載の気体分離複合体の製造方法。
  6. 前記平滑層組成物が、接着剤を含有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の気体分離複合体の製造方法。
  7. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、
    前記多孔質基材上に平滑層組成物を塗布し、平滑層を形成する工程と、
    前記平滑層上に中間層組成物を塗布し、中間層を形成する工程と、
    前記中間層上に気体分離層組成物を塗布し、前記気体分離層を形成する工程と、
    前記平滑層を溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有し、
    前記中間層は、平滑層よりも空気透過率が高いことを特徴とする、気体分離複合体の製造方法。
  8. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、
    前記多孔質基材上に、気体分離層を構成する気体分離層組成物を塗布する工程と、
    塗布した前記気体分離層組成物の前記多孔質基材とは逆側の表面に反応促進剤を塗布し、塗布された面及びその近傍に架橋構造を有する気体分離層を形成させる工程と、
    未架橋の気体分離層組成物を溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる除去工程とを有することを特徴とする、気体分離複合体の製造方法。
  9. 前記溶媒のsp値が、10以下であることを特徴とする、請求項8に記載の気体分離複合体の製造方法。
  10. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、
    溶解性フィルム上に気体分離層組成物を塗布し、気体分離層を形成する工程と、
    前記多孔質基材に、前記溶解性フィルムを貼り合わせる工程と、
    前記溶解性フィルムを溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる工程とを有する、気体分離複合体の製造方法。
  11. 気体分離層と、前記気体分離層を支持する多孔質基材とを有する気体分離複合体の製造方法であって、
    溶解性フィルム上に中間層組成物を塗布し、中間層を形成する工程と、
    前記中間層上に気体分離層組成物を塗布し、前記気体分離層を形成する工程と、
    前記多孔質基材に、前記溶解性フィルムを貼り合わせる工程と、
    前記溶解性フィルムを溶媒で溶解して多孔質基材の孔部から溶解物を排出させる工程とを有し、
    前記中間層は、平滑層よりも空気透過率が高いことを特徴とする、気体分離複合体の製造方法。
  12. 前記溶解性フィルムが水又はアルコールに可溶なものであり、
    前記溶媒が、水、エタノール、及びメタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10又は請求項11に記載の気体分離複合体の製造方法。
  13. 前記溶解性フィルムが有機溶媒に可溶なものであり、
    前記溶媒が、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム、及びアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10又は請求項11に記載の気体分離複合体の製造方法。
  14. 前記溶媒が、接着剤を含有することを特徴とする、請求項4,5,7〜13のいずれか1項に記載の気体分離複合体の製造方法。


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