JP2021086998A - コイル絶縁シート - Google Patents

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裕介 渡瀬
Yusuke Watase
裕介 渡瀬
豊 野村
Yutaka Nomura
豊 野村
雅彦 鈴木
Masahiko Suzuki
雅彦 鈴木
佳之 土川
Yoshiyuki Tsuchikawa
佳之 土川
真之 浜
Masayuki Hama
真之 浜
紘之 石毛
Hiroyuki Ishige
紘之 石毛
篤史 大泉
Atsushi Oizumi
篤史 大泉
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Abstract

【課題】熱伝導性が向上可能なコイル絶縁シートを提供する。【解決手段】コイル絶縁シートは、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、コイル絶縁シートに関する。
OA(Office automation)化、FA(Factory automation)化の進展につれ、機械、装置等のモーションコントロールシステムに対する要求が一段と高度化及び多様化し、より高速、高頻度及び高精度で、メンテナンスフリーなモーションコントロールが求められている。
モーションコントロールシステムは、人間に喩えれば、感覚に相当するセンサ、頭脳に相当する情報処理部、手足にあたるアクチュエータ、そしてこれらを結ぶ神経に相当するインターフェースから構成される。これらの要素は、近年、エレクトロニクス技術の応用等により飛躍的に高性能化している。中でも高性能化の点で注目されているのが、アクチュエータにおけるACサーボモータの使用である。
ACサーボモータは、各種のアクチュエータの中でも、モーションコントロールの高速化、高頻度化、高精度化、及びメンテナンスフリー化が実現しやすく、急速に需要が増えつつある。ACサーボモータの特性の向上は、産業機器の性能の向上に密接に関係している。これら産業機器の高速化及び高機能化、並びに小型化及び省スペース化の要求に応えるには、ACサーボモータにいっそうの高出力化及び小型軽量化が求められる。
ここで、ACサーボモータは、鉄心とコイルとを有し、この鉄心とコイルの間は絶縁する必要がある。鉄心とコイルとの間の絶縁性を確保する材料としては、例えば、特許文献1〜3に記載のポリパラフェニレンサルファイド(PPS)が検討されている。
特開2007−98941号公報 特開2010−30222号公報 特開2016−10876号公報
ACサーボモータの高出力化及び小型化が進展した場合、モーターからの発熱を効率よく除去できるよう、絶縁シートは高熱伝導性も必要となる。上述の先行文献に記載のポリパラフェニレンサルファイド(PPS)で構成される絶縁シートの熱伝導率は0.3W/(m・K)程度である。そのため、高出力化されたACサーボモータからの発熱量を考慮すれば、絶縁シートにはさらなる熱伝導率の向上が望まれる。
上記状況を鑑み、本発明は、熱伝導性が向上可能なコイル絶縁シートを提供することを課題とする。
上記の課題を解決する手段は、以下の実施形態を含む。
<1> 熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有するコイル絶縁シート。
<2> 前記無機充填材が、熱伝導率が20W/(m・K)以上である無機充填材を含む<1>に記載のコイル絶縁シート。
<3> 前記無機充填材の含有率が、55体積%以上である<1>又は<2>に記載のコイル絶縁シート。
<4> 硬化後のガラス転移温度が140℃以上である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
<5> 前記熱硬化性樹脂及び前記無機充填材を含有する樹脂層と、支持体と、を有する<1>又は<2>に記載のコイル絶縁シート。
<6> 前記樹脂層中の前記無機充填材の含有率が、55体積%以上である<5>に記載のコイル絶縁シート。
<7> 前記樹脂層の硬化後のガラス転移温度が140℃以上である、<5>又は<6>に記載のコイル絶縁シート。
<8> 平均総厚が20μm〜300μmである、<1>〜<7>のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
<9> 硬化後の熱伝導率が1.4W/(m・K)以上である、<1>〜<8>のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
本発明によれば、熱伝導性が向上可能なコイル絶縁シートを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示のコイル絶縁シートは、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有する。このような構成とすることで、コイル絶縁シートの熱伝導性が向上可能となる理由は明らかではないが、以下のように考えることができる。
本開示のコイル絶縁シートは無機充填材を含有するため、熱伝導性の低い樹脂成分の占める割合が低減し、結果、熱伝導率が向上していると考えられる。
また、PPSは熱可塑性樹脂であり、且つガラス転移温度が93℃程度である。そのため、PPSを含有する絶縁シートを発熱量の多い部位に配置すると、軟化しやすい傾向にある。これに対して、本開示のコイル絶縁シートは熱硬化性樹脂を用いるため、コイル絶縁シートを硬化することで、発熱量の多い部位に硬化されたコイル絶縁シートが配置されても軟化が抑えられる傾向にある。結果、熱硬化性樹脂を用いる本開示のコイル絶縁シートでは、コイル絶縁シート内において無機充填材の配置位置が保持される。そのため、発熱量の多い部位に配置しても無機充填材による熱伝導性が維持される。
<コイル絶縁シートの構成>
コイル絶縁シートは、後述の成分(熱硬化性樹脂及び無機充填材、並びに任意成分としての硬化剤、硬化促進剤、エラストマー、溶剤等)を含む樹脂シートであってもよく、強靭性を増すために樹脂シートの少なくとも一方の面に支持体が設けられていてもよい。鉄心とコイルの間に配置した際の形状追従性の観点から、支持体は折り曲げ可能であることが好ましい。折り曲げ可能とは、鉄心とコイルの間の配置形状に追従が可能な程度の折り曲げ性を有していることをいう。
また、コイル絶縁シートは、樹脂シートの少なくとも一方の面に保護層が設けられていてもよい。保護層は、鉄心とコイルとの間に配置される際には除去される。
さらに、コイル絶縁シートは、樹脂シートの一方の面に支持体が設けられ、他方の面に保護層が設けられていてもよい。このような構成とすることで、取扱い性が向上し、巻き取りした場合に支持体の裏面に樹脂シートが張り付くことが抑えられる傾向にある。
(樹脂シート)
樹脂シートは、1枚のみで構成されていてもよく、2枚以上を積層して構成されていてもよい。樹脂シートが2枚以上の積層体である場合、それぞれの樹脂シートは、同一であっても異なっていてもよい。樹脂シートが異なるとは、樹脂シートに含まれる硬化性樹脂、無機充填材等の種類及び含有量、硬化の程度、厚さなどが異なることをいう。
樹脂シートは、未硬化のAステージ状態であっても、半硬化のBステージ状態であってもよい。取扱性の観点から、Bステージ状態であることが好ましい。
本開示においてBステージとは、絶縁層の粘度が、常温(25℃)においては10Pa・s〜10Pa・sであり、100℃においては10Pa・s〜10Pa・sであり、常温(25℃)から100℃への温度変化により、粘度が0.001%〜50%に低下するものである。また、硬化したCステージ状態では、加温によっても溶融することはない。上記粘度は、動的粘弾性測定(周波数1ヘルツ、荷重40g、昇温速度3℃/分)によって測定されうるものである。
樹脂シートの平均総厚は、面内の厚みのバラつきが抑制されやすい観点から、20μm以上であってよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。
樹脂シートの平均総厚は、深さ方向での乾燥の均一性が得られやすい観点から、300μm以下であってよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
樹脂シートの平均総厚は、20μm〜300μmであってよく、30μm〜300μmであってもよく、50μm〜200μmであってもよく、100μm〜150μmであってもよい。なお、樹脂シートは、平均総厚を300μm超としてもよい。
樹脂シートの平均総厚は、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、マイクロメーター IP65)を用いて、5点の厚みを測定し、その算術平均値として求める。
樹脂シートの硬化後のガラス転移温度(Tg)は、熱信頼性の観点から、80℃以上であってよく、90℃以上であってもよく、100℃以上であってもよく、105℃以上であってもよく、140℃以上であってもよい。
樹脂シートの硬化後のガラス転移温度(Tg)は、熱信頼性の観点から、80℃〜185℃であってよく、90℃〜180℃であってもよく、100℃〜175℃であってもよく、105℃〜175℃であってもよく、140℃〜175℃であってもよい。
なお、コイル絶縁シートが支持体を有さず樹脂シートのみで構成されている場合には、上記のガラス転移温度(Tg)は、コイル絶縁シートの硬化後のガラス転移温度(Tg)となる。
コイル絶縁シートの硬化後のガラス転移温度は、熱硬化性成分の種類及び含有量、エラストマー成分の種類及び含有量等により調整することができる。
ガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(支持体)
支持体は、用途に応じて適宜選択することができ、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。絶縁性をより高める場合には、支持体として高分子フィルムを用いることが好ましく、熱伝導性をより高める場合には、支持体として金属箔を用いることが好ましい。
高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられる。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。
支持体の平均厚みは、特に限定されず、2μm〜200μmであってよい。支持体の平均厚みが2μm以上であると、支持体の切断及び撓みが抑えられやすい傾向にある。また、支持体の平均厚みが200μm以下であると、乾燥工程において溶剤が充分除去されやすい傾向にある。
支持体の平均厚みは、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、マイクロメーター IP65)を用いて、5点の厚みを測定し、その算術平均値として求める。
(保護層)
保護層としては、高分子フィルム、金属箔等を用いることができる。
高分子フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム等のビニルフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;アセチルセルロースフィルム;テトラフルオロエチレンフィルムなどを例示することができる。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等を例示することができる。
(コイル絶縁シートの物性)
コイル絶縁シートの平均総厚(樹脂シート並びに必要に応じて設けられる支持体及び保護層の合計の厚み)は、絶縁性確保の観点から、20μm以上であってよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、100μm以上であってもよい。
コイル絶縁シートの平均総厚は、熱伝導性確保の観点から、300μm以下であってよく、250μm以下であってよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
コイル絶縁シートの平均総厚は、20μm〜300μmであってよく、30μm〜250μmであってもよく、50μm〜200μmであってもよく、100μm〜200μmであってもよく、100μm〜150μmであってもよい。なお、コイル絶縁シートは、平均総厚を300μm超としてもよい。なお、コイル絶縁シートの平均総厚は、無機充填材の体積平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
コイル絶縁シートの平均総厚は、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、マイクロメーター IP65)を用いて、5点の厚みを測定し、その算術平均値として求める。
コイル絶縁シートの平均総厚に対する樹脂シートの総厚の比率(樹脂シート厚/コイル絶縁シート厚)は、0.10以上であってよく、0.30以上であってよく、0.50以上であってもよい。
コイル絶縁シートの平均総厚に対する樹脂シートの総厚の比率(樹脂シート厚/コイル絶縁シート厚)は、0.99以下であってよく、0.80以下であってよく、0.75以下であってもよい。
コイル絶縁シートの平均総厚に対する樹脂シートの総厚の比率(樹脂シート厚/コイル絶縁シート厚)は、0.10〜0.99であってよく、0.30〜0.80であってよく、0.50〜0.75であってもよい。
コイル絶縁シートは、硬化後(Cステージ状態)の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であることが好ましく、1.0W/(m・K)以上であることがより好ましく、1.4W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。ここでいう熱伝導率は、コイル絶縁シートが支持体を有する場合には、支持体を有した状態(つまり、樹脂シートと支持体とを有する状態)での熱伝導率である。コイル絶縁シートが保護層を有する場合には、熱伝導率は保護層を外した状態で測定される。
<コイル絶縁シートの成分>
(熱硬化性樹脂)
コイル絶縁シートは熱硬化性樹脂を含む。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であれば特に制限はない。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂(ビキシレノールジグリシジルエーテル等)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等)、及びこれらの樹脂の二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
コイル絶縁シート表面の割れ及びひびの発生を抑制する観点から、エポキシ樹脂は、25℃で液状のエポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)を含んでもよい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型のグリシジルエーテル、ビスフェノールS型のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン等が挙げられる。
市販のエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社の「jER825」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)及び「jER806」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、DIC株式会社の「HP−4032D」(ナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:141g/eq)、「EXA−4850」(柔軟強靭性エポキシ樹脂)、「HP−4700」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4750」(3官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4710」(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、「エピクロンN−770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「エピクロンN−660」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)及び「エピクロンHP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社の「EPPN−502H」(トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂)及び「NC−3000」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社の「ESN−355」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル株式会社の「YX−8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、並びに住友化学株式会社の「ESCN−190−2」(o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)が挙げられる。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に制限なく公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂等が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。ナフトール類としては、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
フェノール樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
市販のフェノール樹脂としては、例えば、旭有機材工業株式会社の「PAPS−PN2」(ノボラック型フェノール樹脂)、エア・ウォーター株式会社の「SKレジンHE200C−7」(ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂)及び「HE910−10」(トリスフェニルメタン型フェノール樹脂)、明和化成株式会社の「MEH−7000」、「DL−92」、「H−4」及び「HF−1M」、群栄化学工業株式会社の「LVR−8210DL」、「ELP」シリーズ及び「NC」シリーズ、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社の「SN−100」、「SN−300」、「SN−395」及び「SN−400」(ナフタレン型フェノール樹脂)、並びに日立化成株式会社の「HP−850N」(ノボラック型フェノール樹脂)が挙げられる。
なお、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを併用する場合、フェノール樹脂はエポキシ樹脂に対して硬化剤として機能する場合があるが、本開示においてはフェノール樹脂は熱硬化性樹脂として扱う。
コイル絶縁シートにおける熱硬化性樹脂の含有率は、熱伝導性を高める観点から、50質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
また、コイル絶縁シートにおける熱硬化性樹脂の含有率は、絶縁シートの屈曲性を保持する観点から、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。
(無機充填材)
コイル絶縁シートは無機充填材を含む。
無機充填材としては、従来公知の無機充填材を使用することができ、特に限定されない。無機充填材の構成材料としては、シリカ類(無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、合成シリカ、中空シリカ等)、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。
表面改質(例えば、シラン化合物による表面処理)等により、樹脂組成物中での分散性の向上効果、及び、ワニス中での沈降抑制効果が得られやすい観点、並びに、比較的小さい熱膨張率を有するために所望の硬化膜特性が得られやすい観点では、シリカ類を含む無機充填材が好ましい。
高い熱伝導性が得られる観点では、熱伝導率が20W/(m・K)以上の無機充填材を含むことが好ましい。熱伝導率が20W/(m・K)以上の無機充填材としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられ、酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、シリカ類と酸化アルミニウムとを併用することが好ましい。無機充填材がシリカ類及び酸化アルミニウムを含む場合、シリカ類と酸化アルミニウムとの配合比率は用途に応じて適宜設することができる。例えば、シリカ類と酸化アルミニウムの総量に対する酸化アルミニウムの含有率は、体積基準で、30体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることがさらに好ましい。また、シリカ類と酸化アルミニウムの総量に対する酸化アルミニウムの含有率は、体積基準で、100体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましく、80体積%以下であることがさらに好ましい。
無機充填材は、表面処理剤により改質されていてもよい。熱伝導率が20W/(m・K)以上の無機充填材を含む場合には、熱伝導率が20W/(m・K)以上の無機充填材を表面処理剤で改質することが好ましい。
表面改質の手法は特に限定されない。処理が簡便であり、官能基の種類が豊富であり、所望の特性を付与しやすい観点から、シランカップリング剤を用いた表面改質が好ましい。
シランカップリング剤としては、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン(フェニルアミノシラン等)等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填材に対する表面処理剤の使用量は、無機充填材の表面積に応じて調整することが好ましい。具体的には、無機充填材の表面積に対して表面処理剤で被覆できる最小理論量を1倍としたとき、表面処理剤の使用量は、1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましく、10倍以上であってもよい。最小理論量は、下記式により求めることができる。
最小理論量(g)=無機充填材の質量(g)×無機充填材の比表面積(m/g)/表面処理剤の最小被覆面積(m/g)
例えば、表面処理剤がシランカップリング剤である場合、最小被覆面積は以下のようにして計算することができる。シランカップリング剤がトリアルコキシシランの場合、加水分解して得られるシリカの3個のシラノール基における3個のO原子が全て無機充填材の表面に反応すると仮定して、半径2.10Åの球形からなるSi原子、半径1.52Åの球形からなるO原子3個、Si−Oの結合距離1.51Å、四面体角109.5°の値から、3個のO原子が被覆することができる最小の円形面積を計算する。その結果、1分子当たりの被覆面積は1.33×10−19/分子、1モル当たりに換算すると8.01×10/モルとなる。シランカップリング剤の最小被覆面積は、1モル当たりの最小被覆面積値にシランカップリング剤の分子量を掛け合わせることで求めることができる。
無機充填材の表面積は、BET比表面積の測定から求めることができる。無機充填材のBET比表面積は、JIS Z 8830:2013に準じて窒素吸着能から測定する。評価装置としては、窒素吸着測定装置(AUTOSORB−1、QUANTACHROME社)等を用いることができる。BET比表面積の測定を行う際には、試料表面及び構造中に吸着している水分がガス吸着能に影響を及ぼすと考えられることから、加熱による水分除去の前処理を行う。
無機充填材の体積平均粒子径は、無機充填材の分散性の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましい。無機充填材の体積平均粒子径は、無機充填材の沈降を抑えてコイル絶縁シートの均質化を図る観点から、25μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
無機充填材の体積平均粒子径は、0.01μm〜25μmであることが好ましく、0.01μm〜10μmであることがより好ましく、0.1μm〜10μmであることがさらに好ましく、0.3μm〜5μmであることが特に好ましく、0.5μm〜5μmであることが極めて好ましい。無機充填材の平均粒子径は、10μm〜18μmであってもよい。
塗工性等の観点から、異なる体積平均粒子径を有する複数の無機充填材を組み合わせて用いることが好ましい。複数の無機充填材のなかで体積平均粒子径の最も大きい無機充填材は、体積平均粒子径が10μm〜25μmであることが好ましく、15μm〜25μmであることがより好ましい。複数の無機充填材のなかで体積平均粒子径の最も小さい無機充填材は、体積平均粒子径が0.05μm〜5μmであることが好ましく、0.05μm〜1μmであることがより好ましく、0.1μm〜1μmであることがより好ましい。
また、異なる体積平均粒子径を有する3種の無機充填材を組み合わせて用いる場合には、体積平均粒子径が最も大きい第一の無機充填材として10μm〜25μmの体積平均粒子径を有する無機充填材と、2番目に体積平均粒子径が大きい第二の無機充填材として0.5μm〜2.5μmの体積平均粒子径を有する無機充填材と、体積平均粒子径が最も小さい第三の無機充填材として0.05μm〜1μmの体積平均粒子径を有する無機充填材とを組み合わせて用いることが好ましく、第一の無機充填材として体積平均粒子径が15μm〜25μmの無機充填材と、第二の無機充填材として体積平均粒子径が0.5μm〜2.5μmの無機充填材と、第三の無機充填材として体積平均粒子径が0.1μm〜1μmの無機充填材とを組み合わせて用いることがより好ましい。
本開示において「体積平均粒子径」とは、体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)を表し、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。複数の無機充填材を併用したときのそれぞれの平均粒子径は、複数の無機充填材を混合した状態で、粒度分布を測定することにより確認してもよい。
無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ株式会社の「DAW20」、並びに、株式会社アドマテックスの「SC550O−SXE」及び「SC2050−KC」が挙げられる。
無機充填材の含有率は、熱伝導率を向上させる観点から、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、50体積%以上であることが好ましく、55体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることがさらに好ましく、75体積%以上であることが特に好ましい。
無機充填材の含有率は、コイル絶縁シートの乾燥工程での割れを抑制する観点から、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましく、85体積%以下であることがさらに好ましい。
無機充填材の含有率は、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、50体積%〜95質量%であることが好ましく、55体積%〜90体積%であることがより好ましく、55体積%〜85体積%であることがさらに好ましく、70体積%〜85体積%であることが特に好ましい。
無機充填材の含有率は、熱伝導率を向上させる観点から、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、84質量%以上であることが特に好ましい。
無機充填材の含有率は、コイル絶縁シートの乾燥工程での割れを抑制する観点から、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、93質量%以下であることが好ましく、91質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましい。
無機充填材の含有率は、樹脂成分と無機充填材との総量を基準として、70質量%〜93質量であることが好ましく、75質量%〜91質量%であることがより好ましく、80質量%〜91質量%であることがさらに好ましく、84質量%〜91質量%であることが特に好ましく、84質量%〜88質量%であることが極めて好ましい。
なお、本開示において「樹脂成分」とは、熱硬化性樹脂、並びに必要に応じて添加される硬化剤、硬化促進剤、及びエラストマーをいう。
すなわち、コイル絶縁シートが支持体を有する場合には、無機充填材の含有率は、支持体を除き、樹脂シートにおける樹脂成分と無機充填材との総量を基準としたときの無機充填材の占める割合をいう。他方、コイル絶縁シートが支持体を有さず樹脂シートのみで構成されているときには、コイル絶縁シート全体における樹脂成分と無機充填材との総量を基準としたときの無機充填材の占める割合をいう。
(その他の成分)
コイル絶縁シートは、熱硬化性樹脂及び無機充填材以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、硬化剤、硬化促進剤、エラストマー、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等が挙げられる。なお、硬化剤及び硬化促進剤のそれぞれは、含有していても、含有していなくてもよい。
[硬化剤]
硬化剤としては、特に制限なく用いることができ、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂の場合には、硬化剤としては、フェノール性化合物、酸無水物、アミン化合物、エステル化合物等を挙げることができる。
なお、上述の通り、フェノール樹脂はフェノール性化合物にも該当する場合があるが、本開示ではフェノール樹脂は熱硬化性樹脂として扱う。
[硬化促進剤]
硬化促進剤としては、特に制限なく用いることができ、アミン系の硬化促進剤及びリン系の硬化促進剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。硬化促進剤としては、優れた熱伝導率を有する硬化物が得られやすく、誘導体が豊富であり、所望の活性温度が得られやすい観点から、アミン系の硬化促進剤を含むことが好ましく、イミダゾール化合物、脂肪族アミン及び脂環族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、イミダゾール化合物を含むことがさらに好ましい。イミダゾール化合物としては、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業株式会社の「2P4MZ」、「2E4MZ−CN」及び「1B2MZ」が挙げられる。
コイル絶縁シートが硬化促進剤を含有する場合の硬化促進剤の含有率は、充分な硬化促進効果が得られやすい観点から、熱硬化性樹脂の合計量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。
コイル絶縁シートが硬化促進剤を含有する場合の硬化促進剤の含有率は、コイル絶縁シートの製造工程中(例えば、塗工及び乾燥)、又は保管中における硬化の進行を抑える観点から、熱硬化性樹脂の合計量を基準として、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。硬化の進行が抑えられると、コイル絶縁シートの割れ、溶融粘度の上昇に伴う成形不良等の発生が抑制されやすい傾向にある。
また、コイル絶縁シートが硬化促進剤を含有する場合の硬化促進剤の含有率は、熱硬化性樹脂の合計量を基準として、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.1質量%〜3質量%がより好ましく、0.3質量%〜1.5質量%がさらに好ましい。
[エラストマー]
エラストマー(可とう剤)としては、分散性及び溶解性に優れる観点から、ポリブタジエン粒子、スチレンブタジエン粒子、アクリル系エラストマー、シリコーンパウダ、シリコーンオイル及びシリコーンオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エラストマーの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社のアクリル系エラストマーである「SG−280 EK23」、「SG−70L」、「WS−023 EK30」等が挙げられる。また、エラストマーの市販品としては、エラストマーのみが単品で含まれているもの、及び液状樹脂(例えば、液状エポキシ樹脂)中にエラストマーが分散しているもの、いずれを用いてもよい。液状樹脂中にエラストマーが分散している市販品としては、例えば、株式会社カネカの「MX−136」及び「MX−965」が挙げられる。
コイル絶縁シートがエラストマーを含有する場合のエラストマーの含有率は、空隙の発生を抑える観点から、樹脂成分に対して、1質量%以上であってよく、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。
また、コイル絶縁シートがエラストマーを含有する場合のエラストマーの含有率は、成形性、ガラス転移温度(Tg)等が向上しやすい観点から、樹脂成分に対して、30質量%以下であってよく、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
コイル絶縁シートがエラストマーを含有する場合のエラストマーの含有率は、樹脂成分に対して、1質量%〜30質量%であってよく、5質量%〜25質量%であってもよく、10質量%〜20質量%以下であってもよい。
[溶剤]
溶剤(例えば、コイル絶縁シートの製造に用いる溶剤)としては、従来公知の有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤としては、無機充填材以外の成分を溶解できる溶剤であってよく、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、ハロゲン類、エステル類、ケトン類、アルコール類、アルデヒド類等が挙げられる。
溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤としては、環境負荷が小さく、熱硬化性成分を溶解しやすい観点から、エステル類、ケトン類及びアルコール類からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。中でも、熱硬化性成分がより溶解しやすい観点から、溶剤はケトン類を含むことが好ましい。室温(25℃)での揮発が少なく、乾燥時には除去しやすい観点から、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
コイル絶縁シートが溶剤を含有する場合の溶剤の含有率は、コイル絶縁シートの総質量を基準として、下記の範囲であることが好ましい。溶剤の含有率は、コイル絶縁シートの割れ等の発生を抑える観点から、0.2質量%以上であってよく、0.3質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよく、0.6質量%以上であってもよく、0.7質量%以上であってもよい。
コイル絶縁シートが溶剤を含有する場合の溶剤の含有率は、絶縁シートの粘着性が強くなりすぎるのを抑えて取扱い性を向上させやすく、コイル絶縁シートの熱硬化時における溶剤の揮発に伴う発泡等の不具合を抑制しやすい観点から、1.5質量%以下であってよく、1.0質量%以下であってもよい。
コイル絶縁シートが溶剤を含有する場合の溶剤の含有率は、0.2質量%〜1.5質量%であってよく、0.3質量%〜1.0質量%であってもよく、0.5質量%〜1.0質量%であってもよく、0.6質量%〜1.0質量%であってもよく、0.7質量%〜1.0質量%であってもよい。
<コイル絶縁シートの製造方法>
コイル絶縁シートの製造法方は特に限定されず、例えば、次のような方法を挙げることができる。
まず、樹脂シートの構成成分(熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、溶剤等)を混合してワニス(ワニス状樹脂組成物)を調製する。混合方法は、特に限定されず、ミル、ミキサ、撹拌羽根等を使用することができる。溶剤は、塗工後の乾燥工程で大部分を除去することができる。
このようにして調製したワニスを、支持体に付与した後、熱風吹き付け等によって乾燥することにより、支持体付きコイル絶縁シートを作製することができる。塗布(コーティング)方法としては、特に限定されず、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の塗工装置を用いることができる。
樹脂シートの硬化は、例えば、大気下又は不活性ガス下で行うことができる。
硬化温度(熱処理温度)は、特に限定されず、例えば、80℃〜280℃であってもよく、100℃〜240℃であってもよく、120℃〜200℃であってもよい。硬化温度が80℃以上であると、熱硬化性樹脂の硬化が充分に進行する傾向にある。硬化温度が280℃以下であると、他の材料への熱害の発生が抑制される傾向にある。
硬化時間(熱処理時間)は、特に限定されず、例えば、30分〜600分であってもよく、45分〜300分であってもよく、60分〜240分であってもよい。硬化時間が上記範囲内であると、熱硬化性樹脂の硬化が充分に進行し、かつ生産効率が良好となる傾向にある。
なお、硬化条件は、複数の条件を組み合わせてもよい。
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(熱硬化性樹脂)
A1:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ基当量:290g/eq)
B1:フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量:107g/eq)
(硬化促進剤)
C1:1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール
(エラストマー)
D1:アクリル酸エステルポリマー(分子量90万)
(無機充填材)
E1:アルミナ(体積平均粒子径:20μm)
E2:シリカ(体積平均粒子径:1.6μm)
E3:シリカ(体積平均粒子径:0.5μm)
(無機充填材表面処理剤)
F1:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
<絶縁シート(シート状エポキシ樹脂組成物)の作製>
(実施例1)
無機充填材E1は、予めF1(無機充填材表面処理剤)により表面処理を行った。F1は、E1に対して上述の最小理論量の15倍となる量を使用した。
0.5Lのポリエチレン容器に、A1、B1、D1、E2、E3及び表面処理したE1を加えて、さらに溶剤としてメチルエチルケトンを加え、撹拌羽で撹拌した。その後、硬化促進剤としてC1を加えて、さらに30分撹拌して混合液を得た。得られた混合液をナイロン製#150メッシュ(開口106μm)でろ過して、ろ液を採取し、ワニス状エポキシ樹脂組成物を得た。
なお、各成分の添加量は次の通りである。
D1(エラストマー)を除く、A1、B1、C1、E2、E3及び表面処理したE1の総量を100体積%としたときに、無機充填材E1(表面処理済み)、E2及びE3の総量が78体積%であり、残りのA1、B1及びC1(樹脂成分)の総量が22体積%となるように各成分を添加した。
D1(エラストマー)の添加料は、樹脂成分であるA1、B1及びC1の総量に対して、17.5質量%となるように添加した。
溶剤は、固形分が86質量%となる量で用いた。
塗工機を使用して、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上に、ワニス状エポキシ樹脂組成物を以下の条件で塗布し、乾燥した。これにより、支持体(PENフィルム)上に厚さ110μmの樹脂シートを作製した。
・塗布ヘッド方式:コンマ
・塗布及び乾燥速度:1m/分
・乾燥条件(温度/炉長):80℃/1.5m、100℃/1.5m
・支持体:厚さ38μmのPENフィルム
樹脂シートにおける支持体とは反対面側に保護層(厚さ25μmのPETフィルム)を配置した。
(実施例2)
実施例1と同様にして、但し、F1(無機充填材表面処理剤)の使用量を、最小理論量の1.5倍となる量に変え、かつ支持体を除去してコイル絶縁シートを得た。実施例2のコイル絶縁シートにおける樹脂シートの平均厚さは、110μmであった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、但し、F1(無機充填材表面処理剤)の使用量を、最小理論量の1.5倍となる量に変え、無機充填材E1、E2及びE3の総量を78体積%から55体積%に変え、かつ支持体を除去してコイル絶縁シートを得た。実施例3のコイル絶縁シートにおける樹脂シートの平均厚さは、110μmであった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、但し、F1(無機充填材表面処理剤)の使用量を、最小理論量の1.5倍となる量に変え、D1(エラストマー)を添加せず、かつ支持体を除去してコイル絶縁シートを得た。実施例4のコイル絶縁シートにおける樹脂シートの平均厚さは、110μmであった。
(実施例5)
実施例1と同様にして、但し、F1(無機充填材表面処理剤)の使用量を、最小理論量の1.5倍となる量に変え、かつ保護層を設けずに支持体を両面に付けてコイル絶縁シートを作製した。実施例5のコイル絶縁シートにおける樹脂シートの平均厚さは、110μmであった。
(実施例6)
実施例1と同様にして、但し、F1(無機充填材表面処理剤)の使用量を、最小理論量の1.5倍となる量に変えて、コイル絶縁シートを作製した。実施例2のコイル絶縁シートにおける樹脂シートの平均厚さは、110μmであった。
(比較例1)
コイル絶縁シートとして、PPSフィルム(平均厚さ:296μm)を用いた。
<評価方法>
以下の方法で、硬化後のコイル絶縁シートの熱伝導率、及びガラス転移温度の評価を行った。
(1)熱伝導率
コイル絶縁シートから保護層を剥がしてから、140℃、2時間で硬化し、コイル絶縁シートの硬化物を得た。コイル絶縁シートの硬化物を1cm角に切り、熱抵抗測定装置を用いて熱抵抗値から熱伝導率を算出した。
以下の判断基準にしたがって熱伝導性を評価した。
A:1.0W/(m・K)以上
B:0.5W/(m・K)以上1.0W/(m・K)未満
C:0.5W/(m・K)未満
(2)ガラス転移温度Tg
コイル絶縁シートから保護層及び支持体を剥がして樹脂シートを得て、この樹脂シートに以下の条件で銅箔をラミネートし、銅箔付きコイル絶縁シートを得た。
・ラミネータ装置:株式会社名機製作所、真空加圧ラミネータ「MVLP−500」
・ラミネート温度:110℃
・ラミネート圧力:0.5MPa
・真空引き時間:30秒
・ラミネート時間:40秒
銅箔付きコイル絶縁シートをSUS板に張り付け、以下の条件でコイル絶縁シートを硬化させ、銅箔付きコイル絶縁シートの硬化物を得た。
・オーブン:エスペック株式会社、「SAFETY OVEN SPH−201」
・オーブン温度:140℃
・時間:120分
銅箔付きコイル絶縁シートの硬化物から銅箔を剥離した後、4mm×30mmに切断し試験片を作製した。
作製した試験片について、以下の条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。
・測定装置:株式会社レオロジ、「DVE−V4」
・測定温度:25℃〜300℃
・昇温速度:5℃/分
以下の判断基準にしたがってガラス転移温度を評価した。
A:140℃以上
B:100℃以上140℃未満
C:100℃未満
<評価結果>
結果を表1に示す。
Figure 2021086998

表1に示すとおり、実施例1〜6では、従来のPPSを使用する比較例1の絶縁シートに比べて、熱伝導率が著しく向上していた。実施例のなかでは熱伝導率が低い実施例5(0.8W/(m・K))であっても、比較例1の0.2W/(m・K)に比べて4倍も熱伝導率が向上し、実施例4(2.7W/(m・K))は比較例1に対して13.5倍もの熱伝導率の向上が見られた。
また、実施例1〜6では、比較例1に比べて、ガラス転移温度も著しく向上していた。

Claims (9)

  1. 熱硬化性樹脂と、無機充填材と、を含有するコイル絶縁シート。
  2. 前記無機充填材が、熱伝導率が20W/(m・K)以上である無機充填材を含む請求項1に記載のコイル絶縁シート。
  3. 前記無機充填材の含有率が、55体積%以上である請求項1又は請求項2に記載のコイル絶縁シート。
  4. 硬化後のガラス転移温度が140℃以上である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
  5. 前記熱硬化性樹脂及び前記無機充填材を含有する樹脂シートと、支持体と、を有する請求項1又は請求項2に記載のコイル絶縁シート。
  6. 前記樹脂シート中の前記無機充填材の含有率が、55体積%以上である請求項5に記載のコイル絶縁シート。
  7. 前記樹脂シートの硬化後のガラス転移温度が140℃以上である、請求項5又は請求項6に記載のコイル絶縁シート。
  8. 平均総厚が20μm〜300μmである、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
  9. 硬化後の熱伝導率が1.4W/(m・K)以上である、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のコイル絶縁シート。
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