JP2021080217A - 糖飢餓条件下での微生物の増殖を抑制する物質群 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、微生物の増殖を抑制する化合物に関する。より具体的には、糖飢餓時特異的に微生物の増殖を抑制する化合物に関する。
微生物は古くから食物・飲料などの発酵に用いられており、産業的にも物質生産に広く用いられている。微生物における代謝システムは、炭素源である糖などの存在の有無によって、大きく変化することが知られている。
クロストリジウム属のアセトン・ブタノール発酵を行うバクテリアは、増殖時期により生産物を変えることが知られており、対数増殖期には酢酸や酪酸を生産するが、糖が枯渇してくる定常期に入ると、酢酸や酪酸を消費して、アセトン、ブタノール、エタノールを生産する(非特許文献1)。アセトバクター属のA. pasteurianusは、糖を利用して酢酸を生産するが、糖が消費されると、生産物である酢酸を消費するようになる(非特許文献2)。
バクテリア以外でも真菌類に属する出芽酵母(S. cerevisiae)は、対数増殖期においてグルコースを消費し酢酸やエタノールなどを生産するが、定常期に入りグルコースの消費が制限されてくると、対数増殖期において生産した酢酸やエタノールを消費するようになる(非特許文献3)。
クロストリジウム属のアセトン・ブタノール発酵を行うバクテリアは、増殖時期により生産物を変えることが知られており、対数増殖期には酢酸や酪酸を生産するが、糖が枯渇してくる定常期に入ると、酢酸や酪酸を消費して、アセトン、ブタノール、エタノールを生産する(非特許文献1)。アセトバクター属のA. pasteurianusは、糖を利用して酢酸を生産するが、糖が消費されると、生産物である酢酸を消費するようになる(非特許文献2)。
バクテリア以外でも真菌類に属する出芽酵母(S. cerevisiae)は、対数増殖期においてグルコースを消費し酢酸やエタノールなどを生産するが、定常期に入りグルコースの消費が制限されてくると、対数増殖期において生産した酢酸やエタノールを消費するようになる(非特許文献3)。
バクテリアや真菌などの微生物によって生産される物質の中には、人間にとって有用な物質が多く含まれている。しかしながら、上述のように、エネルギー源である糖の枯渇により、有用物質を含む生産物を微生物が自ら消費してしまうと、生産物の収量が著しく減少してしまうことも少なくない。
微生物が生産する有用物質の収量低下を防ぐためには、糖を連続的に供給して糖飢餓状態を回避する必要があるが、糖の供給にはコストがかかる。そのため、糖飢餓状態においても有用物質の生産を維持させる環境、あるいは、糖枯渇時における微生物の増殖を抑制して生産物の消費を抑えるシステムを低コストに実現する手段が求められている。
しかしながら、糖飢餓時における上記問題を改善するための手段は、現在のところ、報告されていない。
微生物が生産する有用物質の収量低下を防ぐためには、糖を連続的に供給して糖飢餓状態を回避する必要があるが、糖の供給にはコストがかかる。そのため、糖飢餓状態においても有用物質の生産を維持させる環境、あるいは、糖枯渇時における微生物の増殖を抑制して生産物の消費を抑えるシステムを低コストに実現する手段が求められている。
しかしながら、糖飢餓時における上記問題を改善するための手段は、現在のところ、報告されていない。
小林元太 生物工学 第89巻 319-322 2011.
松下一信 生物工学 第90巻 340-343 2012.
Pacziaら, Microbial. Cell Factories 11:122 2012
上記事情に鑑み、本発明は、糖飢餓条件下特異的に微生物の増殖を抑制する物質(微生物の増殖抑制剤)の提供を課題とする。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、一群の吉草酸誘導体が、糖飢餓条件下に酵母の増殖を抑制することを見出した。
本発明者らは、吉草酸誘導体の2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸(2-Hydroxy-4-methylvaleric acid)および3-メチル-2-オキソ吉草酸(3-Methyl-2-oxovaleric acid)を糖が欠乏した培地に添加したところ、微生物の増殖が抑制され、最終的には死滅することを見出した。また、糖飢餓状態の微生物の増殖抑制に十分な量の2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸または3-メチル-2-オキソ吉草酸含む培地に、糖を再び添加すると、微生物の増殖が再開されることを確認した。従って、本発明を構成する物質は、糖飢餓条件下特異的に微生物の増殖を抑制し、最終的に微生物を殺傷することができる。
本発明者らは、吉草酸誘導体の2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸(2-Hydroxy-4-methylvaleric acid)および3-メチル-2-オキソ吉草酸(3-Methyl-2-oxovaleric acid)を糖が欠乏した培地に添加したところ、微生物の増殖が抑制され、最終的には死滅することを見出した。また、糖飢餓状態の微生物の増殖抑制に十分な量の2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸または3-メチル-2-オキソ吉草酸含む培地に、糖を再び添加すると、微生物の増殖が再開されることを確認した。従って、本発明を構成する物質は、糖飢餓条件下特異的に微生物の増殖を抑制し、最終的に微生物を殺傷することができる。
本発明にかかる増殖抑制剤を使用することにより、糖飢餓時特異的に微生物の増殖を抑制することができる。微生物は糖飢餓状態において自らの生産物を消費することがあるが、本発明にかかる増殖抑制剤で微生物の増殖を抑えることで、生産物の消費を回避することが可能となる。
本発明にかかる増殖抑制剤を含む医薬または医薬組成物により、微生物による感染症の治療が可能となる。
本発明にかかる殺菌剤または殺菌剤組成物は、微生物の殺傷が可能であるため、生活環境における衛生状態の向上に資することができる。
本発明の第1の実施形態は、上記一般式(1)で表される化合物もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物もしくは水和物を有効成分として含む、微生物の増殖抑制剤である。
式(1)中、Xは−CO−、−CH2−または−COH−である。
R1はカルボキシル基を含んでもよい低級アルキル基(すなわち、カルボキシル基を含まない低級アルキル基およびカルボキシル基を含む低級アルキル基)またはカルボキシル基を含んでもよい低級アルケニル基(すなわち、カルボキシル基を含まない低級アルケニル基およびカルボキシル基を含む低級アルケニル基)である。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の直鎖状、分枝鎖状、環状またはそれらの組合せからなる炭化水素のことで、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルなどである。また、「低級アルケニル」とは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5で二重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、環状またはそれらの組合せからなる炭化水素のことで、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニルまたはペンテニルのことである。より具体的には、R1のカルボキシル基を含んでもよい低級アルキル基として、特に限定はしないが、例えば、1−メチルエチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基および2−カルボキシエチル基などを挙げることができる。また、R1のカルボキシル基を含んでもよい低級アルケニル基として、特に限定はしないが、例えば、2−カルボキシエテニル基などを挙げることができる。
R2は水素または低級アルキル基である。ここで、「低級アルキル」とは上述の通りである。より具体的には、R2の低級アルキル基として、限定はしないが、例えば、エチル基、3−メチルブチル基などを挙げることができる。
式(1)中、Xは−CO−、−CH2−または−COH−である。
R1はカルボキシル基を含んでもよい低級アルキル基(すなわち、カルボキシル基を含まない低級アルキル基およびカルボキシル基を含む低級アルキル基)またはカルボキシル基を含んでもよい低級アルケニル基(すなわち、カルボキシル基を含まない低級アルケニル基およびカルボキシル基を含む低級アルケニル基)である。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の直鎖状、分枝鎖状、環状またはそれらの組合せからなる炭化水素のことで、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルなどである。また、「低級アルケニル」とは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5で二重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、環状またはそれらの組合せからなる炭化水素のことで、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニルまたはペンテニルのことである。より具体的には、R1のカルボキシル基を含んでもよい低級アルキル基として、特に限定はしないが、例えば、1−メチルエチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基および2−カルボキシエチル基などを挙げることができる。また、R1のカルボキシル基を含んでもよい低級アルケニル基として、特に限定はしないが、例えば、2−カルボキシエテニル基などを挙げることができる。
R2は水素または低級アルキル基である。ここで、「低級アルキル」とは上述の通りである。より具体的には、R2の低級アルキル基として、限定はしないが、例えば、エチル基、3−メチルブチル基などを挙げることができる。
本発明の実施形態にかかる微生物の増殖抑制剤に含まれる化合物の塩としては、薬学上許容される塩であればよく、例えば、酸性基が存在する場合には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N, N-ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、L-グルカミンなどのアミンの塩;またはリジン、δ-ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩などを挙げることができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸塩、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸などの有機酸との塩;またはアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩などを挙げることができる。
本発明の実施形態における化合物もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物もしくは水和物などで公知のものは、市販されており、当該市販品を購入して使用することができる。
また、本実施形態にかかる微生物の増殖阻害剤に含まれる化合物には、特に断らない限り、そのエナンチオマー(enantiomer)およびジアステレオマー(diastereomer)などの立体異性体が含まれる。
また、本実施形態にかかる微生物の増殖阻害剤に含まれる化合物には、特に断らない限り、そのエナンチオマー(enantiomer)およびジアステレオマー(diastereomer)などの立体異性体が含まれる。
一般式(1)で表される本実施形態にかかる化合物としては、限定はしないが、例えば、2-ヒドロキシ-4-メチル吉草酸、3-メチル-2-オキソ吉草酸、2-ヒドロキシグルタル酸、グリセリン酸、グルタコン酸、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸、4-メチル-2-オキソ吉草酸、イソ吉草酸エチルまたはイソ吉草酸イソアミルなどを挙げることができる。
本実施形態において、「微生物」とは、特に限定しないが、例えば、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、シアノバクテリアなどを含む真正細菌、メタン菌、高度好塩菌、超好熱菌などを含む古細菌、酵母(例えば、サッカロマイセス属、 シゾサッカロマイセス属、カンジダ属、トルロプシス属、ジゴサッカロマイセス属、ピチア属、 クルイウェロマイセス属、スポロボロマイセス属など)、カビ(例えば、いわゆる糸状菌類、特に限定はしないが、ニューロスポラ属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フザリウム属、トリコデルマ属またはムコール属に属する菌類など)を含む真菌などを挙げることができる。
また、第1の実施形態において、「微生物の増殖を抑制する」とは、当該微生物の増殖を低下させること、さらに、増殖を低下させて死に至らしめることを含む概念である。
本実施形態にかかる微生物の増殖抑制剤は、糖飢餓状態における微生物の増殖を抑制することができるため、培地または培養液に当該増殖抑制剤を適当な量添加することで、当該微生物の増殖を糖飢餓時特異的に制御することができる。
また、第1の実施形態において、「微生物の増殖を抑制する」とは、当該微生物の増殖を低下させること、さらに、増殖を低下させて死に至らしめることを含む概念である。
本実施形態にかかる微生物の増殖抑制剤は、糖飢餓状態における微生物の増殖を抑制することができるため、培地または培養液に当該増殖抑制剤を適当な量添加することで、当該微生物の増殖を糖飢餓時特異的に制御することができる。
カビなどの真菌類は生活環境に広く存在しており、食品や家具などに付着生育し、感染症の原因となっている。本実施形態の微生物の増殖抑制剤は、糖飢餓状態における真菌類の増殖を抑え、死滅させる効果を有しており、これらの微生物の殺菌剤として使用することもできる。そこで、本発明の第2の実施形態は、上記一般式(1)で表される化合物もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物もしくは水和物を有効成分として含む、殺菌剤または殺菌剤組成物である。すなわち、第1の実施形態の微生物の増殖抑制剤を有効成分として含む、殺菌剤または殺菌剤組成物である。第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、他の殺菌成分を配合してもよい。配合可能な他の殺菌成分として、例えば、ベンザルコニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系殺菌剤、ヨウ素グリシン複合体などの有機ヨード系殺菌剤を挙げることができる。
第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含有してもよい。配合可能な他の添加剤としては、例えば、エタノール、着色料、香料等が挙げられる。
第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含有してもよい。配合可能な他の添加剤としては、例えば、エタノール、着色料、香料等が挙げられる。
第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、錠剤や粉末等の固形の形態、またはペーストやゼリー状等の半固形の形態であってもよく、あるいは、水溶液の形態であってもよい。第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物が固形または半固形の形態である場合には、使用時に、水等に溶解させ、溶液の形態として殺菌目的物に適用することができる。
第2の実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、例えば、水溶液の形態で殺菌目的物と接触させることによって殺菌を行うことができる。目的物に接触させる方法は、特に限定しないが、散布、噴霧、浸漬または塗布などの一般的な方法で実施することができる。
本実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、病院、ホテル、レストラン、学校、食品工場、店舗等の床や壁を殺菌する目的においても、有用である。
本実施形態の殺菌剤および殺菌剤組成物は、病院、ホテル、レストラン、学校、食品工場、店舗等の床や壁を殺菌する目的においても、有用である。
第2の実施形態の殺菌剤組成物は、カビなどの真菌類や一般細菌への殺菌効果に加え、第四級アンモニウム塩および/またはビグアナイド系殺菌剤に対し抵抗性を有する微生物、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)および/またはポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩(PHMB)に対し抵抗性を有する微生物に対して殺菌力を発揮する可能性があり、かかる微生物が存在する対象に対して使用する殺菌剤組成物として有用であり得る。
本発明の第3の実施形態は、上記一般式(1)で表される化合物もしくはその塩、またはそれらの溶媒和物もしくは水和物を有効成分として含む、医薬または医薬組成物である。すなわち、第1の実施形態の微生物の増殖抑制剤を有効成分として含む、医薬または医薬組成物である。第3の実施形態にかかる医薬または医薬組成物は、微生物の感染によって引き起こされる、種々の疾患の予防または治療に使用することができる。
本実施形態の医薬は、有効成分である一般式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物もしくは水和物自体を投与してもよいが、一般的には、有効成分であるこれらの物質と1または2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。また、本発明の実施形態にかかる医薬または医薬組成物の有効成分として、一般式(1)で表される化合物のうち2種類以上を組み合わせて用いてもよく、さらに、感染症の予防または治療に有効な既知の成分を配合してもよい。
本実施形態の医薬は、有効成分である一般式(1)で表される化合物もしくはその塩またはそれらの溶媒和物もしくは水和物自体を投与してもよいが、一般的には、有効成分であるこれらの物質と1または2以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。また、本発明の実施形態にかかる医薬または医薬組成物の有効成分として、一般式(1)で表される化合物のうち2種類以上を組み合わせて用いてもよく、さらに、感染症の予防または治療に有効な既知の成分を配合してもよい。
本実施形態の医薬または医薬組成物の剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、ローション、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤などが挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水または他の適当な溶媒に溶解または懸濁するものであってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また、緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
経口投与用または非経口投与用の製剤は、任意の製剤形態で提供される。製剤形態としては、例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤または液剤等の形態の経口投与用医薬または医薬組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用、皮膚投与用もしくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤、軟膏、ローションまたはクリーム剤などの形態の非経口投与用医薬または医薬組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの適宜の水性媒体に溶解して用いることもできる。
第3の実施形態の医薬および医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、あるいは、医薬および医薬組成物の製造方法は、その形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機または有機物質、あるいは、固体または液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、製剤用添加物の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分、例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式または乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤および顆粒剤をそのまま、あるいは、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒または錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤、あるいは、エチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま、あるいは、グリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、さらにマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジおよびモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
第3の実施形態の医薬および医薬組成物の投与量および投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止および/または治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。
一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01〜1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回または数回に分けて、あるいは、数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与または間欠投与することが望ましい。
一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01〜1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回または数回に分けて、あるいは、数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与または間欠投与することが望ましい。
第3の実施形態の医薬および医薬組成物は、植込錠およびマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。そのような担体として、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬学上許容される担体として使用することができる。リポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG-PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製することができる。
第3の実施形態の医薬および医薬組成物は、投与方法等の説明書と共にキットの形態で提供してもよい。キット中に含まれる薬剤は、医薬または医薬組成物の構成成分の活性を長期間有効に持続し、容器内側に吸着することなく、また、構成成分を変質することのない材質で製造された容器により供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性を示すガスの存在下で封入されたバッファーなどを含んでもよい。
また、キットには使用説明書が添付されてもよい。当該キットの使用説明は、紙などに印刷されたものであっても、CD-ROM、DVD-ROMなどの電磁的に読み取り可能な媒体に保存されて使用者に供給されてもよい。
また、キットには使用説明書が添付されてもよい。当該キットの使用説明は、紙などに印刷されたものであっても、CD-ROM、DVD-ROMなどの電磁的に読み取り可能な媒体に保存されて使用者に供給されてもよい。
本発明の第4の実施形態は、第3の実施形態の医薬または医薬組成物を、治療対象に投与し、微生物の感染よって引き起こされる疾患を予防または治療する方法である。
ここで「治療」とは、疾患等に罹患した哺乳動物において、その病態の進行および悪化を阻止または緩和することを意味し、これによって該疾患の進行および悪化を阻止または緩和することを目的とする処置のことである。
また、「予防」とは、ある種の微生物に感染するおそれがある哺乳動物について、その発症を予め阻止することを意味し、これによって感染症の発症を予め阻止することを目的とする処置のことである。
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
ここで「治療」とは、疾患等に罹患した哺乳動物において、その病態の進行および悪化を阻止または緩和することを意味し、これによって該疾患の進行および悪化を阻止または緩和することを目的とする処置のことである。
また、「予防」とは、ある種の微生物に感染するおそれがある哺乳動物について、その発症を予め阻止することを意味し、これによって感染症の発症を予め阻止することを目的とする処置のことである。
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
本明細書において引用されたすべての文献の開示内容は、全体として明細書に参照により組み込まれる。また、本明細書全体において、単数形の「a」、「an」、および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものを含むものとする。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
1.材料および方法
分裂酵母(S. pombe)として、972 h-株を、出芽酵母(S. cerevisiae)として、IAM4274株(ワイン酵母)を用いた。
まず、YES液体培地(サプリメントを添加した酵母エキス;3% グルコース、0.5% 酵母エキス、200 mg/L アデニン、100 mg/L ウラシル、200 mg/L ヒスチジンおよび200 mg/L ロイシン)で、30℃の条件下で24時間細胞の前培養を行った。その後、グルコースを含まないMM培地に表1に示す化合物を10〜30 mMの濃度で加え、30℃の条件下で培養した。MM培地の組成は以下の通りである;14.7 mM フタル酸水素カリウム、15.5 mM Na2HPO4、93.5 mM NH4Cl、0.05 % エタノール、5.2 mM MgCl2、 0.1 mM CaCl2・H2O、13.4 mM KCl、0.28 mM Na2SO4、4.2 μM パントテン酸、81.2 μM ニコチン酸、 55.5 μM イノシトール、40.8 nM D-ビオチン、4.76 μM クエン酸、8.09 μM ホウ酸、2.37 μM MnSO4、1.39 μM ZnSO4・7H2O、0.74 μM FeCl3・6H2O、0.81 μM (NH4)6Mo7O24・4H2O、0.60 μM ヨウ化カリウム、0.16 μM CuSO4・5H2O、200 mg/L アデニン、100 mg/L ウラシル、200 mg/L ヒスチジンおよび200 mg/L ロイシン。
酵母の増殖は、OD600の値を測定しモニターした。
分裂酵母(S. pombe)として、972 h-株を、出芽酵母(S. cerevisiae)として、IAM4274株(ワイン酵母)を用いた。
まず、YES液体培地(サプリメントを添加した酵母エキス;3% グルコース、0.5% 酵母エキス、200 mg/L アデニン、100 mg/L ウラシル、200 mg/L ヒスチジンおよび200 mg/L ロイシン)で、30℃の条件下で24時間細胞の前培養を行った。その後、グルコースを含まないMM培地に表1に示す化合物を10〜30 mMの濃度で加え、30℃の条件下で培養した。MM培地の組成は以下の通りである;14.7 mM フタル酸水素カリウム、15.5 mM Na2HPO4、93.5 mM NH4Cl、0.05 % エタノール、5.2 mM MgCl2、 0.1 mM CaCl2・H2O、13.4 mM KCl、0.28 mM Na2SO4、4.2 μM パントテン酸、81.2 μM ニコチン酸、 55.5 μM イノシトール、40.8 nM D-ビオチン、4.76 μM クエン酸、8.09 μM ホウ酸、2.37 μM MnSO4、1.39 μM ZnSO4・7H2O、0.74 μM FeCl3・6H2O、0.81 μM (NH4)6Mo7O24・4H2O、0.60 μM ヨウ化カリウム、0.16 μM CuSO4・5H2O、200 mg/L アデニン、100 mg/L ウラシル、200 mg/L ヒスチジンおよび200 mg/L ロイシン。
酵母の増殖は、OD600の値を測定しモニターした。
2.結果
2−1.分裂酵母の増殖に対する本実施形態の化合物の影響
分裂酵母(S. pombe; 972 h-株)の増殖に対する化合物1および化合物2の影響を、各々、図1AおよびBに示す。いずれの化合物も、分裂酵母の増殖を抑制し、一定量以上の量が存在すると、その増殖完全に抑制した。
なお、化合物3〜7についても同様の実験を行い、いずれの化合物も分裂酵母の増殖抑制または阻害効果があることを確認した。
2−1.分裂酵母の増殖に対する本実施形態の化合物の影響
分裂酵母(S. pombe; 972 h-株)の増殖に対する化合物1および化合物2の影響を、各々、図1AおよびBに示す。いずれの化合物も、分裂酵母の増殖を抑制し、一定量以上の量が存在すると、その増殖完全に抑制した。
なお、化合物3〜7についても同様の実験を行い、いずれの化合物も分裂酵母の増殖抑制または阻害効果があることを確認した。
2−2.化合物1および化合物2の添加量依存的な細胞死
グルコース非添加培地における、各種濃度の化合物1および化合物2の分裂酵母への影響を調べた。その結果、化合物1は約30 mM、化合物2は約25 mM存在すると972 h-株の致死率がほぼ100 %となった(図2)。
なお、酵母の細胞死は、phloxine Bによる死細胞の蛍光染色を行い、フローサイトメトリー(FACS)を使って蛍光細胞の割合を検出して判断した。
グルコース非添加培地における、各種濃度の化合物1および化合物2の分裂酵母への影響を調べた。その結果、化合物1は約30 mM、化合物2は約25 mM存在すると972 h-株の致死率がほぼ100 %となった(図2)。
なお、酵母の細胞死は、phloxine Bによる死細胞の蛍光染色を行い、フローサイトメトリー(FACS)を使って蛍光細胞の割合を検出して判断した。
2−3.化合物1による分裂酵母の糖非存在下選択的増殖抑制
3 % グルコース存在下またはグルコース非存在下における、分裂酵母の増殖に対する化合物1(30 mM)の影響を調べた。その結果、グルコース非添加培地に30 mMの化合物1を添加して972 h-株を培養すると増殖が抑制されたのに対し、3 %グルコース存在下では、30 mMの化合物1を添加しても972 h-株の増殖は抑制されなかった(図3)。すなわち、化合物1は、糖飢餓条件下選択的に微生物を殺傷する効果を示すことが確認された。
3 % グルコース存在下またはグルコース非存在下における、分裂酵母の増殖に対する化合物1(30 mM)の影響を調べた。その結果、グルコース非添加培地に30 mMの化合物1を添加して972 h-株を培養すると増殖が抑制されたのに対し、3 %グルコース存在下では、30 mMの化合物1を添加しても972 h-株の増殖は抑制されなかった(図3)。すなわち、化合物1は、糖飢餓条件下選択的に微生物を殺傷する効果を示すことが確認された。
2−4.出芽酵母の増殖に対する本実施形態の化合物の影響
出芽酵母(S. cerevisiae;IAM4274株)の増殖に対する化合物1および化合物2の影響を、各々、図4AおよびBに示す。いずれの化合物も、出芽酵母の増殖を抑制し、化合物2については一定量以上の量が存在すると、その増殖を完全に抑制した。
なお、化合物3〜7についても同様の実験を行い、いずれの化合物も出芽酵母の増殖抑制または阻害効果があることを確認した。
出芽酵母(S. cerevisiae;IAM4274株)の増殖に対する化合物1および化合物2の影響を、各々、図4AおよびBに示す。いずれの化合物も、出芽酵母の増殖を抑制し、化合物2については一定量以上の量が存在すると、その増殖を完全に抑制した。
なお、化合物3〜7についても同様の実験を行い、いずれの化合物も出芽酵母の増殖抑制または阻害効果があることを確認した。
以上の結果は、式(1)の化合物が進化的にかなり距離の離れたS. pombeとS. cerevisiaeの増殖を糖飢餓条件選択的に抑制することを示している。すなわち、式(1)の化合物は、微生物の糖飢餓条件下での増殖における共通のメカニズムに作用していると考えられる。従って、本発明の増殖抑制剤は、酵母などの真菌類のみならず、バクテリアなどの細菌における糖飢餓条件下での増殖にも影響を及ぼすものと考えられる。
本発明の増殖抑制剤は、糖飢餓条件下特異的に真菌類などの微生物の増殖を抑制する作用を示す。従って、本発明の増殖抑制剤は、微生物を利用した、例えば、発酵産業などにおいての利用が期待される。さらに、微生物の増殖を抑制し、動物への感染を防ぐ効果を有すると考えられることから、医療分野における利用も期待できる。
Claims (6)
- R1が1−メチルエチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、ヒドロキシメチル基、2−カルボキシエチル基または2−カルボキシエテニル基である請求項1に記載の増殖抑制剤。
- R2が水素、エチル基または3−メチルブチル基である請求項1または2に記載の増殖抑制剤。
- 一般式(1)で表される化合物が、2−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸、3−メチル−2−オキソ吉草酸、2−ヒドロキシグルタル酸、グリセリン酸、グルタコン酸、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、イソ吉草酸エチルまたはイソ吉草酸イソアミルである請求項1に記載の増殖抑制剤。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の増殖阻害剤を含む、医薬または医薬組成物。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の増殖抑制剤を含む、殺菌剤または殺菌剤組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019210145A JP2021080217A (ja) | 2019-11-21 | 2019-11-21 | 糖飢餓条件下での微生物の増殖を抑制する物質群 |
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