JP2021080190A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な化合物の提供。【解決手段】式(1)で表される多環芳香族化合物;式中、A環、B環、C環、D環、およびE環は、アリール環またはヘテロアリール環であり、X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R(Rは、置換されていてもよいアリール等)等であり、式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池などの有機デバイス、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから種々研究されており、さらに、有機材料からなる有機電界発光素子(以下「有機EL素子」ということがある。)は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。
例えば、有機電界発光素子の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、熱活性型遅延蛍光(TADF)材料の3種類が検討、利用されているが、蛍光材料は、発光効率が低く、およそ25〜62.5%程度である。一方、りん光材料とTADF材料は、発光効率が100%に達する場合もあり発光効率が高いが、いずれも色純度が低い(発光スペクトルの幅が広い)という問題がある。表示装置では、光の三原色である赤・緑・青色の発光を混合することによりさまざまな色を表現しているが、それぞれの色純度が低いと、再現できない色ができてしまい、画質が大きく低下する。そこで、市販の表示装置では、発光スペクトルから不必要な色を光学フィルターで除去することにより、色純度を高めてから(スペクトル幅を狭くしてから)使用している。したがって、元々のスペクトル幅が広いと除去する割合が増えるために、材料の発光効率が高い場合でも、実質的な効率は大きく低下する。例えば、市販のスマートフォンの青色の発光スペクトルの半値幅は、およそ20〜25nm程度であるが、一般的な蛍光材料の半値幅は40〜60nm程度、りん光材料は60〜90nm程度、TADF材料だと70〜100nm程度である。蛍光材料を用いた場合は半値幅が比較的狭いため不要な色を一部除去するだけで足りるが、りん光材料やTADF材料を用いた場合は半分以上除去する必要がある。このような背景から、発光効率と色純度の両方を兼ね備えた発光材料の開発が望まれていた。
特許文献1では、TADF材料の色純度を飛躍的に向上させる新たな化合物として、芳香環をホウ素、リン、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物が、開示されている。特許文献1では、この多環芳香族化合物は、大きなHOMO−LUMOギャップおよび高い三重項励起エネルギー(ET)を有するため、特に有機EL素子の蛍光材料として有用であることが報告されている。
国際公開第2015/102118号
上述のように有機電界発光素子の発光特性を更に高めたり、有機電界発光素子などの有機デバイスの材料の選択肢を増やすたりするために、従来知られていなかった化合物の開発が望まれている。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特許文献1に記載の化合物の基本構造を維持しつつ、多重共鳴効果を調節する構造を導入した化合物が、有機EL素子等の有機デバイスの製造のための材料として有利な特性を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス材料などを提供する。
<1>下記式(1)で表される多環芳香族化合物。
Figure 2021080190
(式(1)中、
A環、B環、C環、D環、およびE環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素原子は置換されていてもよく、
1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合していてもよく、
および、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
<2>A環、B環、C環、D環、およびE環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、またはトリ置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、A環およびB環はB、X1およびX2から構成される式(1)左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環はB、X3およびX4から構成される式(1)右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、
1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはトリ置換シリルで置換されていてもよく、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルである、
式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
<1>に記載する多環芳香族化合物。
<3>下記式(2)で表される、<1>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2021080190
(式(2)中、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、またはトリ置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、R2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合してそれぞれ、a環、b環、c環、またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはトリ置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
<4>R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシ、炭素数6〜12のアリールチオ、炭素数3〜10のシクロアルキル、アリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、またはジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>OまたはN−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合していてもよく、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい
<3>に記載の多環芳香族化合物。
<5>R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリールオキシ、炭素数3〜10のシクロアルキル、アリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜10のアリール、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、またはジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
1は、水素であり、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
<4>に記載の多環芳香族化合物。
<6>下記いずれかの式で表される、<1>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2021080190
Figure 2021080190
(式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、R100は、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールオキシであり、前記アリールは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
<7>下記式で表される、<1>に記載の多環芳香族化合物。
Figure 2021080190
<8><1>〜<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
<9>前記有機デバイス用材料は、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、<8>に記載の有機デバイス用材料。
<10>前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、<9>に記載の有機デバイス用材料。
<11>有機電界発光素子の発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、
第1成分として、<1>〜<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物の少なくとも1種と、
第2成分として、少なくとも1種の有機溶媒と、
を含む発光層形成用組成物。
<12>陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層とを有する、有機電界発光素子であって、
前記発光層が<1>〜<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する前記有機電界発光素子。
<13>陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を有する、有機電界発光素子であって、
前記発光層が<11>に記載の発光層形成用組成物から形成された層である前記有機電界発光素子。
<14>前記陰極と該発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<12>または<13>に記載の有機電界発光素子。
<15>前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<14>に記載の有機電界発光素子。
<16><12>〜<15>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
<17><12>〜<15>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
本発明により、従来知られていなかった多環芳香族化合物として、式(1)で表される化合物が提供される。式(1)で表される多環芳香族化合物は発光層用材料などの有機デバイス材料として用いることができる。式(1)で表される化合物の利用によって、有機電界発光素子の発光特性を向上させることができる。
本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。 バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機EL素子を作製する方法を説明する図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
1.多環芳香族化合物
本発明の化合物は、特許文献1に記載の化合物と同様に芳香環をヘテロ元素(ホウ素)で連結した多環芳香族化合物である。本発明に係るヘテロ元素を含有する多環芳香族化合物は、三重項励起状態(T1)におけるSOMO1およびSOMO2の局在化により、両軌道間の交換相互作用が小さくなるため、三重項励起状態(T1)と一重項励起状態(S1)のエネルギー差が小さく、熱活性型遅延蛍光を示す。
「熱活性型遅延蛍光」とは、熱エネルギーを吸収して励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して放射される遅延蛍光のことを意味する。本明細書においては、このような遅延蛍光を放射しうる化合物を「熱活性型遅延蛍光体」または「TADF材料」ということがある。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367−01)を用いて行うことができる。
通常の蛍光発光では電流励起により生じた75%の三重項励起子は熱失活経路を通るため蛍光として取り出すことはできないが、TADF材料の利用により全ての励起子を蛍光発光に利用することができるようになるため、高効率な有機EL素子が実現できる。
一般にTADF材料は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMOとLUMOを局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされているが、ドナーやアクセプターを用いると励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、色純度が低い幅広な発光スペクトルを与えることになる。
そこで、特許文献1(国際公開第2015/102118号)では、TADF材料の色純度を飛躍的に向上させる新たな分子設計を提案している。当該文献に開示された例えば化合物(1−401)では、ホウ素(電子供与性)と窒素(電子吸引性)の多重共鳴効果を利用することで、6つの炭素からなるベンゼン環上の3つの炭素(黒丸)にHOMOを、残りの3つの炭素(白丸)にLUMOを局在化させることに成功している。この効率的な逆項間交差により、当該化合物の発光効率は最大で100%に達する。さらに、化合物(1−401)のホウ素と窒素はHOMOとLUMOを局在化させるだけではなく、3つのベンゼン環を縮環させることにより堅牢な平面構造を維持し、励起状態での構造緩和を抑制するという役割も担っており、結果として吸収および発光のピークのストークスシフトが小さい、色純度の高い発光スペクトルを得ることにも成功している。その発光スペクトルの半値幅は28nmであり、実用化されている高色純度の蛍光材料をも凌駕するレベルの色純度を示している。また、式(1−422)のような二量体化合物では、2つのホウ素と2つの窒素が中央のベンゼン環に結合することで、中央のベンゼン環においてさらに多重共鳴効果を増強させており、その結果、極めて狭い発光ピーク幅を有する発光が可能となっている。
Figure 2021080190
一方で、式(1−422)のような二量体化合物では、分子の平面性が高く共鳴が広くなったため発光波長が長くなり、実用的な青色の波長からは離れ、また、高い平面性のため分子間スタッキングが誘起されたためか、発光素子における効率も十分満足できるほどではないという課題も生まれた。
そこで我々は鋭意研究の結果、多重共鳴効果を調節する構造を導入することで、発光波長の短波長化および高い素子効率を実現した。具体的には、本発明の式(1)で表される多環芳香族化合物は、X2とC環との間に結合を有していないことにより、立体反発で平面性を下げることで発光波長が短くなり、分子間スタッキングを阻害することで発光素子における素子効率を増加させることが可能となった。ただし、本発明の多環芳香族化合物の効果は、上記原理に基づくものに拘束されるわけではない。
本発明の多環芳香族化合物は、例えば、450nm〜500nmに極大値を有する発光を高い色純度で与えることができ、例えば、30nm以下、25nm以下、さらには20nm以下での半値幅で与えることができる。
式(1)で表される多環芳香族化合物を以下に示す。また、式(1)で表される多環芳香族化合物は、好ましくは、下記式(2)で表される多環芳香族化合物である。
Figure 2021080190
式(1)におけるA環、B環、C環、D環、およびE環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ基)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のヘテロアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオ、置換もしくは無置換のヘテロアリールチオ、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合もしくは連結基を介して結合していてもよい)、または置換もしくは無置換のトリ置換シリルが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルが挙げられる。
また、A環およびB環は「B(ホウ素原子)」、「X1」および「X2」から構成される式(1)左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環は「B(ホウ素原子)」、「X3」および「X4」から構成される式(1)右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
ここで、「縮合2環構造」とは、式(1)の左部分に示した、「B(ホウ素原子)」、「X1」および「X2」を含んで構成される2つの飽和炭化水素環が縮合した構造を意味する。また、式(1)の右部分の縮合2環構造についても同様である。また、「縮合2環構造と結合を共有する6員環」とは、例えば上記式(2)で示すように縮合2環構造に縮合したa環(ベンゼン環(6員環))を意味する。また、「(A環である)アリール環またはヘテロアリール環がこの6員環を有する」とは、この6員環だけでA環が形成されるか、または、この6員環を含むようにこの6員環にさらに他の環などが縮合してA環が形成されることを意味する。言い換えれば、ここで言う「6員環を有する(A環である)アリール環またはヘテロアリール環」とは、A環の全部または一部を構成する6員環が、縮合2環構造に縮合していることを意味する。「B環(b環)」、「C環(c環)」、「D環(d環)」、「E環(e環)」また「5員環」についても同様の説明が当てはまる。
式(1)におけるA環(またはB環、C環、D環、E環)は、式(2)におけるa環とその置換基R2〜R5(またはb環とその置換基R6〜R9、c環とその置換基R10〜R13、d環とその置換基R14〜R16、e環とその置換基R1)に対応する。すなわち、式(2)は、式(1)のA〜E環として「6員環を有するA〜D環」が選択された式に対応する。その意味で、式(2)の各環を小文字のa〜eで表した。
式(2)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、またはトリ置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。式(2)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立して、水素、または置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、または置換されていてもよいジアリールアミノであることが好ましい。
式(2)においては、R2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれa環、b環、c環およびd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。ここで、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。例えばa環(またはb環、またはc環またはd環)であるベンゼン環に対して、置換基が結合して、ベンゼン環、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、シクロヘキセン環、インデン環が形成されたとき、形成されてできた縮合環a’(縮合b’環、または縮合環c’または縮合環d’)はそれぞれナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、テトラリン環、フルオレン環である。
式(2)において、a環、b環、c環およびd環の置換基R2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合して形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシアリールオキシ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、または、トリ置換シリルで置換されていてもよい。
式(1)のA環、B環、C環D環、およびE環である「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。
式(1)のA環、B環、C環、D環およびE環である「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。なお、この「ヘテロアリール環」は、後述の式(2)で規定された「R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、またはc環と共に形成されたヘテロアリール環」に対応し、また、a環(またはb環、c環)がすでに炭素数6のベンゼン環で構成されているため、これに5員環が縮合した縮合環の合計炭素数6が下限の炭素数となる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環などがあげられる。
上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は、第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールチオ」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリールチオ」または置換もしくは無置換の「ジアリールボリル」(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換の「トリ置換シリル」、で置換されていてもよいが、この第1の置換基としての「アリール」や「ヘテロアリール」、「ジアリールアミノ」のアリール、「ジヘテロアリールアミノ」のヘテロアリール、「アリールヘテロアリールアミノ」のアリールとヘテロアリール、「アリールオキシ」のアリール、「ヘテロアリールオキシ」のヘテロアリール、「アリールチオ」のアリール、「ヘテロアリールチオ」のヘテロアリール、「ジアリールボリル」のアリール、「トリ置換シリル」中の「アリール」や「ヘテロアリール」としては上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基があげられる。
具体的な「アリール」としては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル(1−ナフチルまたは2−ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリルまたはp−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
「ヘテロアリール」(第1置換基)としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、「ヘテロアリール」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール」としては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、ナフトベンゾチオフェニル、フラザニル、チアントレニルなどがあげられる。これらのうち、カルバゾリルが好ましく、9−カルバゾリルがより好ましい。
また第1の置換基としての「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル(炭素数3〜8の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)が特に好ましく、炭素数1〜5のアルキル(炭素数3〜5の分岐鎖アルキル)が最も好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル(t−アミル)、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル(1,1,3,3−テトラメチルブチル)、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられ、t−ブチル、ネオペンチル、t−ペンチル(t−アミル)が好ましい。
また、例えば、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1−エチル−1−メチルブチル、1,1,4−トリメチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,1−ジメチルオクチル、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1,5−トリメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルヘキシル、1−エチル−1,3−ジメチルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1−ブチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1,3−トリメチルブチル、1−プロピル−1−メチルペンチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1,2,2−トリメチルプロピル、1−プロピル−1−メチルブチル、1,1−ジメチルヘキシルなどもあげられる。
また第1の置換基としての「シクロアルキル」としては、炭素数3〜24のシクロアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数3〜16のシクロアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数5〜6のシクロアルキル、炭素数5のシクロアルキルなどがあげられる。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、およびこれらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体や、ノルボルネニル、ビシクロ[1.0.1]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、アダマンチルがより好ましい。
なお、本発明の化合物にシクロアルキルを導入することによっては、融点や昇華温度の低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイスを得ることができる。また、シクロアルキルの導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
また第1の置換基としての「アルコキシ」としては、例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシがあげられる。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ(炭素数3〜5の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、t−アミルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどがあげられる。
「ジアリールアミノ」(第1置換基)、「ジヘテロアリールアミノ」(第1置換基)、「アリールヘテロアリールアミノ」(第1置換基)および「アリールオキシ」(第1置換基)、「ヘテロアリールオキシ」(第1置換基)、「アリールチオ」(第1置換基)、「ヘテロアリールチオ」(第1置換基)、「ジアリールボリル」(第1置換基)、「トリ置換シリル」(第1置換基)における「アリール」や「ヘテロアリール」の詳細は、上述した「アリール」や「ヘテロアリール」の説明を引用することができる。
「トリ置換シリル」としては、トリアルキルシリル、トリアリールシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリルなどがあげられる。
「トリアルキルシリル」としては、シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−アミルなどがあげられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、トリt−アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、t−アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、t−アミルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリル、t−アミルジi−プロピルシリルなどがあげられ、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリルが好ましい。
「トリアリールシリル」としては、シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してアリールで置換された基があげられ、このアリールは上述した第1の置換基における「アリール」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアリールは、炭素数6〜10のアリールであり、具体的にはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどがあげられる。
具体的なトリアリールシリルとしては、トリフェニルシリル、ジフェニル−2−ナフチルシリル、フェニル−ジ−2−ナフチルシリル、トリ−2−ナフチルシリルなどがあげられ、トリフェニルシリルが好ましい。
第1置換基の構造の立体障害性、電子供与性および電子吸引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、t−オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリル、フェノキシ、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびトリフェニルシリルであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、t−アミル、ネオペンチル、アダマンチル、t−オクチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリル、トリフェニルシリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t−ブチル、t−アミル、ネオペンチル、t−オクチル、アダマンチル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジ−p−トリルアミノ、ジフェニルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリル、トリフェニルシリルが好ましく、t−ブチル、t−アミル、ネオペンチル、アダマンチル、ジフェニルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノがさらに好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「tOct」はt−オクチルを表す。
Figure 2021080190
Figure 2021080190
Figure 2021080190
Figure 2021080190
第1の置換基である、置換もしくは無置換の「アリール」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリール」、置換もしくは無置換の「ジアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「ジヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アリールヘテロアリールアミノ」、置換もしくは無置換の「アルキル」、置換もしくは無置換の「シクロアルキル」、置換もしくは無置換の「アルコキシ」、置換もしくは無置換の「アリールオキシ」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリールオキシ」、置換もしくは無置換の「アリールチオ」、置換もしくは無置換の「ヘテロアリールチオ」、置換もしくは無置換の「ジアリールボリル」、または置換もしくは無置換の「トリ置換シリル」は、置換または無置換と説明されているとおり、それらにおける少なくとも1つの水素が第2の置換基で置換されていてもよい。この第2の置換基としては、例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルがあげられ、それらの具体例は、上述した「アリール環」または「ヘテロアリール環」の一価の基、第1の置換基としての「アルキル」また第1の置換基としての「シクロアルキル」の説明を参照することができる。また、第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールには、それらにおける少なくとも1つの水素が、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)や、メチルなどのアルキル(具体例は上述した基)またはシクロヘキシルなどのシクロアルキル(具体例は上述した基)で置換された構造も第2の置換基としてのアリールやヘテロアリールに含まれる。
式(2)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16におけるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノのアリール、ジヘテロアリールアミノのヘテロアリール、アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリール、またはアリールオキシのアリール、ヘテロアリールオキシのヘテロアリール、アリールチオのアリール、ヘテロアリールチオのヘテロアリール、トリアリールシリルのアリール、ジアリールボリルのアリールとしては、式(1)で説明した「アリール」または「ヘテロアリール」があげられる。
また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16におけるアルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはトリ置換シリルとしては、上述した式(1)の説明における第1の置換基としての「アルキル」、「シクロアルキル」、「アルコキシ」または「トリ置換シリル」の説明を参照することができる。さらに、これらの基への置換基としてのアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルも同様である。
式(2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ、または炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜12のアリールチオ、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜12のアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、または炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であることが好ましく、水素、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールオキシ、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜10のアリール、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、または炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であることがより好ましく、水素、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールオキシであることがさらに好ましい。
式(2)において、R1は水素、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜12のアリールであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、およびR16が、それぞれ独立して、水素であるか、または後述のように環を形成しており、かつR15が炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリール、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数6〜12のアリールで置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜12のアリールオキシ、または炭素数6〜12のアリールもしくは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜12のアリールチオであることも好ましい。
2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環、またはd環と共に形成したアリール環またはヘテロアリール環の詳細は、上述した第1置換基の「アリール」または「ヘテロアリール」の説明のうち、ベンゼン環を含む多環構造を無価の環構造として引用することができる。また、R2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環、d環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成した場合の、これらの環への置換基であるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、またはトリ置換シリルおよび、さらなる置換基であるアリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルについての詳細は、上述した第1置換基および第2置換基の説明を引用することができる。
式(1)におけるX1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>S、または>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいシクロアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合によりA環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合していてもよい。
式(2)におけるX1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルである。
1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>OまたはN−Rであることが好ましい。X1、X2、X3およびX4のうち、1つ以上が>Oであり残りがN−Rであることがより好ましく、X1、X2、X3およびX4のうち、1つまたは2つがN−Rであり、残りが>Oであることがさらに好ましい。
前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであることが好ましく、Rが炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよい炭素数6〜10のアリールであるN−Rであることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいフェニルであるN−Rであることがさらに好ましい。炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよいフェニルとしては、無置換フェニル、4位(パラ位)が炭素数1〜6のアルキルで置換されているフェニル、およびメシチルなどがあげられる。
1、X2、X3およびX4としての>N−RのRにおける「炭素数6〜12のアリール」、「炭素数2〜15のヘテロアリール」、「炭素数1〜6のアルキル」または「炭素数3〜14のシクロアルキル」、およびこれらに置換し得る「炭素数6〜12のアリール」、「炭素数2〜15のヘテロアリール」、「炭素数1〜6のアルキル」または「炭素数3〜14のシクロアルキル」の詳細は、上述した第1置換基および第2置換基の説明を引用することができる。また、「−C(−R)2−」におけるRの「炭素数1〜6のアルキル」の詳細は、上述した第1置換基の説明を引用することができる。特に炭素数1〜4のアルキル(例えばメチル、エチルなど)が好ましい。
式(1)における「>N−RのRは−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合」、または式(2)における「>N−RのRは−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合」との規定は、例えば、下記式(2−4−1)で表される、X1が縮合環a’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、式(2)におけるa環であるベンゼン環に対してX1を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるa’環を有する化合物である。また、上記規定は、下記式(2−4−2)で表される、X4が縮合環c’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、式(2)におけるc環であるベンゼン環に対してX4を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるc’環を有する化合物である。さらに、上記規定は、下記式(2−4−3)で表される、X3が縮合環e’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、式(2)におけるe環であるベンゼン環に対してX3を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるe’環を有する化合物である。なお、式(2−4−1)、式(2−4−2)および式(2−4−3)における各符号の定義は式(1)または式(2)中の定義と同じである。その他同様に、b環であるベンゼン環に対してX2を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるb’環を有する化合物、d環であるベンゼン環に対してX3またはX3を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるd’環を有する化合物、e環であるベンゼン環に対してX1を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるe’環を有する化合物があげられる。形成される縮合環a’環、b’環、c’環、d’環、e’環は、例えば、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環であり、カルバゾール環が好ましい。
Figure 2021080190
式(1)で表される多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。また、式(2)で表される多環芳香族化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲン、または重水素で置換されていてもよい。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくはフッ素である。
式(1)で表される多環芳香族化合物は下記いずれかの構造式で表される化合物であることが好ましく、式(1−6R)で表される化合物および式(1−6−R100)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2021080190
Figure 2021080190
上記式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、R100は、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールオキシ、ジアリールボリル(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、トリアルキルシリル(ただしアルキルは炭素数1〜6のアルキル)、またはトリアリールシリル(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、である。前記アリールは炭素数1〜6のアルキル、または炭素数3〜10のシクロアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリール、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数3〜10のシクロアルキルで置換されていてもよい。また、上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(1)で表される多環芳香族化合物の具体的な例としては以下の構造式で表される化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルである。
Figure 2021080190
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1.多環芳香族化合物の製造方法
式(1)や(2)で表される多環芳香族化合物は、基本的には、それぞれの環構造同士で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、それぞれの環構造をホウ素原子で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的なエーテル化反応や、ブッフバルト―ハートウィッグ反応といった一般的なアミノ化反応などが利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。なお、以下の各スキームにおける構造式中の符号は、式(1)または式(2)のそれらと同じ定義である。
第2反応は、下記スキーム(1)に示すように、それぞれの環構造を結合するホウ素原子を導入する反応である。まず、X1とX2の間およびX3とX4の間の水素原子をn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウムなどでオルトメタル化する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素などを加え、リチウム−ホウ素の金属交換を行った後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどのブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウムなどのルイス酸を加えてもよい。
Figure 2021080190
スキーム(1)においては、オルトメタル化により所望の位置へリチウムを導入したが、下記スキーム(2)のようにリチウムを導入したい位置に予めハロゲン原子(Hal)を導入し、ハロゲン−メタル交換によっても所望の位置へリチウムを導入することができる。この方法によれば、置換基の影響でオルトメタル化ができないようなケースでも目的物を合成することができ有用である。
Figure 2021080190
上述の合成法を適宜選択し、使用する原料も適宜選択することで、所望の位置に置換基を有し、X1、X2、X3およびX4が、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seである多環芳香族化合物を合成することができる。
なお、中間体における例えばアミノ基の回転によりタンデムボラフリーデルクラフツ反応が起こる箇所が異なる場合があるため、副生物が生成する可能性もある。このような場合には、クロマトグラフィーや再結晶等により、これらの混合物から目的の多環芳香族化合物を単離することができる。
上記スキームで使用するオルトメタル化試薬としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ化合物が挙げられる。
上記スキームで使用するメタル−ホウ素の金属交換試薬としては、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物、CIPN(NEt22などのホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物、ホウ素のアリールオキシ化物などが挙げられる。
上記スキームで使用するブレンステッド塩基としては、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピぺリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、2,6−ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、Ar4BNa、Ar4BK、Ar3B、Ar4Si(なお、Arはフェニルなどのアリール)などが挙げられる。
上記スキームで使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などが挙げられる。なお、「Tf」はトリフルオロメチルスルホニルを示す。
上記スキームでは、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、ホウ素の三フッ化物、三塩化物、三臭化物、三ヨウ化物などのホウ素ハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を補足するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、ホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノ基やアルコキシ基の脱離能が低いために、その機能を促進するルイス酸の使用が効果的である。
また、式(1)または(2)で表される多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されている化合物も含まれるが、このような化合物などは所望の箇所がシアノ化、ハロゲン化、重水素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
2.有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。
3−1.有機電界発光素子
<有機電界発光素子の構造>
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<有機電界発光素子における発光層>
本発明の化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましく、発光層を形成する材料として用いられることがより好ましい。
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であることが好ましい。
本発明では、発光層用の材料として、ドーパント材料としての本発明の化合物とホスト材料とを用いることができる。
発光層は単一層からなっていても複数層からなっていてもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料とは、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999質量%であり、より好ましくは80〜99.95質量%であり、さらに好ましくは90〜99.9質量%である。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50質量%であり、より好ましくは0.05〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたカルバゾール誘導体、アントラセン、ピレン、ジベンゾクリセンまたはフルオレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体などがあげられる。カルバゾール誘導体、アントラセン系化合物、フルオレン系化合物、またはジベンゾクリセン系化合物、またはが好ましく、カルバゾール誘導体またはアントラセン系化合物がより好ましい。
カルバゾール誘導体の例として下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物をあげることができる。
Figure 2021080190
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は炭素数6〜24のアリーレン、炭素数2〜24のヘテロアリーレン、炭素数6〜24のヘテロアリーレンアリーレンおよび炭素数6〜24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレンであり、炭素数6〜16のアリーレンが好ましく、炭素数6〜12のアリーレンがより好ましく、炭素数6〜10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基が挙げられる。ヘテロアリーレンとしては、炭素数2〜24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環およびチアントレン環などの二価の基が挙げられる。
上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物が挙げられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1〜4のアルキル(例えばメチルやt−ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2021080190
Figure 2021080190
Figure 2021080190
Figure 2021080190
アントラセン系化合物としては、下記式(4)で表される化合物をあげることができる。
Figure 2021080190
式(4)中、L2およびL3は、それぞれ独立して、炭素数6〜30のアリールまたは炭素数2〜30のヘテロアリールである。アリールとしては、炭素数6〜24のアリールが好ましく、炭素数6〜16のアリールがより好ましく、炭素数6〜12のアリールがさらに好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、ペリレン環およびペンタセン環などの一価の基が挙げられる。ヘテロアリールとしては、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、オキサジアゾール環およびチアントレン環などの一価の基が挙げられる。
式(4)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、炭素数1〜6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
ホスト材料としては、下記式(5)で表される化合物を用いることも好ましい。
Figure 2021080190
式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、トリアルキルシリルまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けることが好ましい。
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性材料としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N,N'−ジナフチル−N,N'−ジフェニル−4,4'−ジフェニル−1,1'−ジアミン、N4,N4'−ジフェニル−N4,N4'−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、N4,N4,N4',N4'−テトラ[1,1'−ビフェニル]−4−イル)−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン、4,4',4"−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005−167175号公報)。
上述した正孔注入層用材料および正孔輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、正孔層用材料に用いることができる。
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9'−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4'−(2,2':6'2"−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体が好ましい。
[ボラン誘導体]
ボラン誘導体は、例えば下記式(ETM−1)で表される化合物であり、詳細には特開2007−27587号公報に開示されている。
Figure 2021080190
式(ETM−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
式(ETM−1)で表される化合物の中でも、下記式(ETM−1−1)で表される化合物や下記式(ETM−1−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2021080190
式(ETM−1−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
Figure 2021080190
式(ETM−1−2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアリールであり、X1は、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
1の具体的な例としては、下記式(X−1)〜式(X−9)で表される2価の基があげられる。
Figure 2021080190
(各式中、Raは、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたは置換されていてもよいフェニルであり、*は結合位置を表す。)
このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[ピリジン誘導体]
ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM−2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)で表される化合物である。
Figure 2021080190
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
式(ETM−2−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。
式(ETM−2−2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。
各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルで置換されていてもよい。また、ピリジン系置換基はフェニレン基やナフチレン基を介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。
Figure 2021080190
ピリジン系置換基は、式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれかであるが、これらの中でも、下記式(Py−21)〜式(Py−44)のいずれかであることが好ましい。
Figure 2021080190
各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。
11〜R18における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどがあげられる。
ピリジン系置換基に置換する炭素数1〜4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。
11〜R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
ピリジン系置換基に置換する炭素数5〜10のシクロアルキルとしては、上記シクロアルキルの説明を引用することができる。
11〜R18における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、単環系アリールであるフェニル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる。
好ましい「炭素数6〜30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどがあげられ、さらに好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはフェナントリルがあげられ、特に好ましくはフェニル、1−ナフチルまたは2−ナフチルがあげられる。
式(ETM−2−2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
フルオランテン誘導体は、例えば下記式(ETM−3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号に開示されている。
Figure 2021080190
式(ETM−3)中、X12〜X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールアルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
[BO系誘導体]
BO系誘導体は、例えば下記式(ETM−4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM−4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 2021080190
1〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、R1〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、式(ETM−4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(ETM−4)における置換基や環形成の形態の説明については、式(1)で表される多環芳香族化合物の説明を引用することができる。
このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[アントラセン誘導体]
アントラセン誘導体の一つは、例えば下記式(ETM−5−1)で表される化合物である。
Figure 2021080190
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンであり、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールである。
Arは、それぞれ独立して、2価のベンゼンまたはナフタレンから適宜選択することができ、2つのArが異なっていても同じであってもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じであることが好ましい。Arはピリジンと結合して、「Arおよびピリジンからなる部位」を形成しており、この部位は例えば下記式(Py−1)〜式(Py−12)のいずれかで表される基としてアントラセンに結合している。下記の式中の*は、結合位置を表す。
Figure 2021080190
これらの基の中でも、式(Py−1)〜式(Py−9)のいずれかで表される基が好ましく、式(Py−1)〜式(Py−6)のいずれかで表される基がより好ましい。アントラセンに結合する2つの「Arおよびピリジンからなる部位」は、その構造が同じであっても異なっていてもよいが、アントラセン誘導体の合成の容易さの観点からは同じ構造であることが好ましい。ただし、素子特性の観点からは、2つの「Arおよびピリジンからなる部位」の構造が同じであっても異なっていても好ましい。
1〜R4における炭素数1〜6のアルキルについては直鎖および分岐鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1〜6の直鎖アルキルまたは炭素数3〜6の分岐鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、または2−エチルブチルなどがあげられ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt−ブチルがより好ましい。
1〜R4における炭素数3〜6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
1〜R4における炭素数6〜20のアリールについては、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。
「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o−,m−,p−)トリル、(2,3−,2,4−,2,5−,2,6−,3,4−,3,5−)キシリル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、(o−,m−,p−)クメニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン−(1−,2−,9−)イル、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、テトラセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イルなどがあげられる。
好ましい「炭素数6〜20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはm−テルフェニル−5'−イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルまたは2−ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
アントラセン誘導体の一つは、例えば下記式(ETM−5−2)で表される化合物である。
Figure 2021080190
Ar1は、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。
Ar2は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、式(ETM−5−1)における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
1〜R4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールであり、式(ETM−5−1)における説明を引用することができる。
これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[ベンゾフルオレン誘導体]
ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM−6)で表される化合物である。
Figure 2021080190
Ar1は、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、式(ETM−5−1)における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどがあげられる。
Ar2は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、2つのAr2は結合して環を形成していてもよい。
Ar2における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルがあげられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルなどがあげられる。
Ar2における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルがあげられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどがあげられる。
Ar2における「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどがあげられる。
2つのAr2は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[ホスフィンオキサイド誘導体]
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号および国際公開第2013/079678号にも記載されている。
Figure 2021080190
5は、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
6は、CN、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数3〜20のシクロアルキル、炭素数1〜20のヘテロアルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数5〜20のヘテロアリール、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数6〜20のアリールオキシであり、
7およびR8は、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
9は酸素または硫黄であり、
jは0または1であり、kは0または1であり、rは0〜4の整数であり、qは1〜3の整数である。
ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどがあげられる。
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−2)で表される化合物でもよい。
Figure 2021080190
1〜R3は、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールエーテル(アリールエーテル基)、アリールチオエーテル(アリールチオエーテル基)、アリール、複素環基、ハロゲン、シアノ、アルデヒド(アルデヒド基)、カルボニル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、シリル、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
Ar1は、同じでも異なっていてもよく、アリーレンまたはヘテロアリーレンである。Ar2は、同じでも異なっていてもよく、アリールまたはヘテロアリールである。ただし、Ar1およびAr2のうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0〜3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。
これらの置換基の内、アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル、アリール、複素環基などをあげることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキルの炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1〜20の範囲である。
また、シクロアルキルとは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。
また、アラルキルとは、例えば、ベンジル、フェニルエチルなどの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルケニルとは、例えば、ビニル、アリル、ブタジエニルなどの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、シクロアルケニルとは、例えば、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセンなどの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
また、アルキニルとは、例えば、アセチレニルなどの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、アルコキシとは、例えば、メトキシなどのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシの炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルキルチオとは、アルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、シクロアルキルチオとは、シクロアルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールエーテルとは、例えば、フェノキシなどのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテルの炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、アリールチオエーテルとは、アリールエーテルのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールとは、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、フェナントリル、テルフェニル、ピレニルなどの芳香族炭化水素基を示す。アリールは、無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、複素環基とは、例えば、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、ピリジル、キノリニル、カルバゾリルなどの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
アルデヒド、カルボニル、アミノには、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。
また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。
シリルとは、例えば、トリメチルシリルなどのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリルの炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、Ar1とR2、Ar1とR3、Ar2とR2、Ar2とR3、R2とR3、Ar1とAr2などの間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR1同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[ピリミジン誘導体]
ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM−8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−8−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号にも記載されている。
Figure 2021080190
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[アリールニトリル誘導体]
アリールニトリル誘導体は、例えば下記式(ETM−9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国出願公開第2014/0197386号明細書に記載されている。
Figure 2021080190
Arniは、速い電子輸送性の観点からは炭素数が多いことが好ましく、高いT1の観点からは炭素数が少ないことが好ましい。Arniは、具体的には、発光層に隣接する層に用いるには高いT1であることが好ましく、炭素数6〜20のアリールであり、好ましくは炭素数6〜14のアリール、より好ましくは炭素数6〜10のアリールである。また、ニトリル基の置換個数nは、高いT1の観点からは多いことが好ましく、高いS1の観点からは少ないことが好ましい。ニトリル基の置換個数nは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2の整数であり、さらに好ましくは1である。
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。高いS1および高いT1の観点からドナー性のヘテロアリールであることが好ましく、電子輸送層として用いるためドナー性のヘテロアリールは少ないことが好ましい。電荷輸送性の観点からは炭素数の多いアリールまたはヘテロアリールが好ましく、置換基を多く有することが好ましい。Arの置換個数mは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
アリールニトリル誘導体は、式(ETM−9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。
このアリールニトリル誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021080190
このアリールニトリル誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[トリアジン誘導体]
トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM−10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−10−1)で表される化合物である。詳細は米国公開公報2011/0156013号明細書に記載されている。
Figure 2021080190
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜3の整数であり、好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−4'−イル、m−テルフェニル−5'−イル、o−テルフェニル−3'−イル、o−テルフェニル−4'−イル、p−テルフェニル−2'−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5'−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5'−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどがあげられる
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどがあげられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2021080190
このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[ベンゾイミダゾール誘導体]
ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−11)で表される化合物である。
Figure 2021080190
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がベンゾイミダゾール基に置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
Figure 2021080190
上記ベンゾイミダゾール基におけるR11は、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数6〜30のアリールであり、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)におけるR11の説明を引用することができる。
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。
このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールなどがあげられる。
Figure 2021080190
このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[フェナントロリン誘導体]
フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM−12)または式(ETM−12−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2006/021982号に記載されている。
Figure 2021080190
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
各式のR11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。また、式(ETM−12−1)においてはR11〜R18のいずれかがアリール環であるφと結合する。
各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
11〜R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、式(ETM−2)におけるR11〜R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式があげられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルであり、*は、結合位置を表す。
Figure 2021080190
このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9'−ジフルオロ−ビス(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロインや1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどがあげられる。
Figure 2021080190
このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[キノリノール系金属錯体]
キノリノール系金属錯体は、例えば下記式(ETM−13)で表される化合物である。
Figure 2021080190
式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素、フッ素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シアノ、アルコキシまたはアリールであり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどがあげられる。
このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体]
チアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−1)で表される化合物である。
Figure 2021080190
ベンゾチアゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−14−2)で表される化合物である。
Figure 2021080190
各式のφは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「チアゾール系置換基」や「ベンゾチアゾール系置換基」は、式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジル基がチアゾール基やベンゾチアゾール基に置き換わった置換基であり、チアゾール誘導体およびベンゾチアゾール誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
Figure 2021080190
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをチアゾール系置換基(またはベンゾチアゾール系置換基)で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。
これらのチアゾール誘導体またはベンゾチアゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[シロール誘導体]
シロール誘導体は、例えば下記式(ETM−15)で表される化合物である。詳細は特開平9−194487号公報に記載されている。
Figure 2021080190
XおよびYは、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリール、ヘテロアリールであり、これらは置換されていてもよい。これらの基の詳細については、式(1)および式(2)における説明、さらに式(ETM−7−2)における説明を引用できる。また、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシは、それぞれアルコキシにおけるアルキル部分がアルケニルまたはアルキニルに置き換わった基であり、これらのアルケニルおよびアルキニルの詳細については式(ETM−7−2)における説明を引用できる。
また、XとYが結合してシクロアルキル環(およびその一部が不飽和になった環)を形成していてもよく、このシクロアルキル環の詳細は式(1)および式(2)におけるシクロアルキルの説明を参照することができる。
1〜R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アゾ基、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、スルフィニル、スルフォニル、スルファニル、シリル、カルバモイル、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、ニトロ、ホルミル、ニトロソ、ホルミルオキシ、イソシアノ、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、または、シアノであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリールまたはハロゲンで置換されていてもよく、隣接置換基との間に縮合環を形成していてもよい。
1〜R4における、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、アルケニルおよびアルキニルの詳細については、式(1)および式(2)における説明を引用できる。
1〜R4における、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシ中の、アルキル、アリールおよびアルコキシの詳細についても、式(1)および式(2)における説明を引用できる。
シリルとしては、シリル、および、シリルの3つの水素の少なくとも1つが、それぞれ独立して、アリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換された基があげられ、トリ置換シリルが好ましく、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリルおよびアルキルジシクロアルキルシリル等があげられる。これらにおける、アリール、アルキルおよびシクロアルキルの詳細については、式(1)および式(2)における説明を引用できる。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、R1とR2、R2とR3、R3とR4等の間で形成された共役または非共役の縮合環である。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
ただし、好ましくは、R1およびR4がフェニル基の場合、XおよびYは、アルキルまたはフェニルではない。また、好ましくは、R1およびR4がチエニル基の場合、XおよびYは、アルキルを、R2およびR3は、アルキル、アリール、アルケニルまたはR2とR3が結合して環を形成するシクロアルキルを同時に満たさない構造である。また、好ましくは、R1およびR4がシリルの場合、R2、R3、XおよびYは、それぞれ独立して、水素または炭素数1から6のアルキルではない。また、好ましくは、R1およびR2でベンゼン環が縮合した構造の場合、XおよびYは、アルキルおよびフェニルではない。
これらのシロール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[アゾリン誘導体]
アゾリン誘導体は、例えば下記式(ETM−16)で表される化合物である。詳細は国際公開第2017/014226号に記載されている。
Figure 2021080190
式(ETM−16)中、
φは炭素数6〜40の芳香族炭化水素に由来するm価の基または炭素数2〜40の芳香族複素環に由来するm価の基であり、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよく、
Yは、それぞれ独立して、−O−、−S−または>N−Arであり、Arは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールで置換されていてもよく、R1〜R5はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、前記>N−ArにおけるArおよび前記R1〜R5のうちのいずれか1つはLと結合する部位であり、
Lは、それぞれ独立して、下記式(L−1)で表される2価の基、および下記式(L−2)で表される2価の基からなる群から選ばれ、
Figure 2021080190
式(L−1)中、X1〜X6はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X1〜X6のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X1〜X6のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
式(L−2)中、X7〜X14はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X7〜X14のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X7〜X14のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよく、
mは1〜4の整数であり、mが2〜4であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一であっても異なっていてもよく、そして、
式(ETM−16)で表される化合物中の少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
具体的なアゾリン誘導体は、下記式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)で表される化合物である。
Figure 2021080190
式(ETM−16−1)および式(ETM−16−2)中、
φは炭素数6〜40の芳香族炭化水素に由来するm価の基または炭素数2〜40の芳香族複素環に由来するm価の基であり、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよく、
式(ETM−16−1)中、Yは、それぞれ独立して、−O−、−S−または>N−Arであり、Arは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールで置換されていてもよく、
式(ETM−16−1)中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、またR3とR4は同一であり、
式(ETM−16−2)中、R1〜R5はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、またR3とR4は同一であり、
式(ETM−16−1)および式(ETM−16−2)中、
Lは、それぞれ独立して、下記式(L−1)で表される2価の基、および下記式(L−2)で表される2価の基からなる群から選ばれ、
Figure 2021080190
式(L−1)中、X1〜X6はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X1〜X6のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X1〜X6のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
式(L−2)中、X7〜X14はそれぞれ独立して=CR6−または=N−であり、X7〜X14のうちの少なくとも2つは=CR6−であり、X7〜X14のうちの2つの=CR6−におけるR6はφまたはアゾリン環と結合する部位であり、それ以外の=CR6−におけるR6は水素であり、
Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよく、
mは1〜4の整数であり、mが2〜4であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一であっても異なっていてもよく、そして、
式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)で表される化合物中の少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
好ましくは、φは、下記式(φ1−1)〜式(φ1−18)で表される1価の基、下記式(φ2−1)〜式(φ2−34)で表される2価の基、下記式(φ3−1)〜式(φ3−3)で表される3価の基、および下記式(φ4−1)〜式(φ4−2)で表される4価の基からなる群から選択され、φの少なくとも1つの水素は炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜14のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリールまたは炭素数2〜18のヘテロアリールで置換されていてもよい。
Figure 2021080190
Figure 2021080190
Figure 2021080190
式中のZは、>CR2、>N−Ar、>N−L、−O−または−S−であり、>CR2におけるRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、Rは互いに結合して環を形成していてもよく、>N−ArにおけるArは炭素数6〜12のアリールまたは炭素数2〜12のヘテロアリールであり、>N−LにおけるLは式(ETM−16)、式(ETM−16−1)または式(ETM−16−2)におけるLである。式中の*は、結合位置を表す。
好ましくは、Lは、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、およびプテリジンからなる群から選択される環の2価の基であり、Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜10のヘテロアリールで置換されていてもよい。
好ましくは、YまたはZとしての>N−ArにおけるArは、フェニル、ナフチル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、フタラジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、およびプテリジニルからなる群から選択され、Yとしての>N−ArにおけるArの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールで置換されていてもよい。
好ましくは、R1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であり、またR1〜R4の全てが同時に水素になることはなく、そして、mは1または2であり、mが2であるとき、アゾリン環とLとで形成される基は同一である。
アゾリン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを表す。
Figure 2021080190
より好ましくは、φは、下記式(φ2−1)、式(φ2−31)、式(φ2−32)、式(φ2−33)および式(φ2−34)で表される2価の基からなる群から選択され、φの少なくとも1つの水素は炭素数6〜18のアリールで置換されていてもよく、
Figure 2021080190
Lは、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、およびトリアジンからなる群から選択される環の2価の基であり、Lの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキル、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数2〜14のヘテロアリールで置換されていてもよく、
Yとしての>N−ArにおけるArは、フェニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、およびトリアジニルからなる群から選択され、当該Arの少なくとも1つの水素は炭素数1〜4のアルキル、炭素数5〜10のシクロアルキルまたは炭素数6〜10のアリールで置換されていてもよく、
1〜R4はそれぞれ独立して水素、炭素数1〜4のアルキルまたは炭素数5〜10のシクロアルキルであり、ただし、R1とR2は同一であり、R3とR4は同一であり、またR1〜R4の全てが同時に水素になることはなく、そして、
mは2であり、アゾリン環とLとで形成される基は同一である。
アゾリン誘導体の他の具体例としては、例えば以下の化合物があげられる。なお、構造式中の「Me」はメチルを表す。
Figure 2021080190
このアゾリン誘導体を規定する上記各式中の、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールの詳細については、式(1)および式(2)における説明を引用できる。
このアゾリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
[還元性物質、その他]
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
上述した電子輸注入層用材料および電子輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、電子層用材料に用いることができる。
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子線ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<有機電界発光素子の作製方法>
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法、レーザー加熱描画法(LITI)などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50〜+400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。
塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。
一例として、図2を参考にして、バンクを有する基板にインクジェット法を用いて塗膜を形成する方法を説明する。まず、バンク(200)は基板(110)上の電極(120)の上に設けられている。この場合、インクジェットヘッド(300)より、バンク(200)間にインクの液滴(310)を滴下し、乾燥させることで塗膜(130)を作製することができる。これを繰り返し、次の塗膜(140)、さらに発光層(150)まで作製し、真空蒸着法を用い電子輸送層、電子注入層および電極を成膜すれば、バンク材で発光部位が区切られた有機EL素子を作製することができる。
乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、下層の発光層の溶解を防ぐ手段があったり、また上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段などを用いることで、電子輸送層用材料や電子注入層用材料を含む層形成用組成物として準備して、それらを湿式成膜法により成膜できる。
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンク(隔壁材料)を作製する一連の工程もあげられる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
バンクに用いられる材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマーがあげられるが、それだけに限定されない。
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である本発明の多環芳香族化合物と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
(1)有機溶媒
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
(1−1)有機溶媒の物性
少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃〜300℃であり、140℃〜270℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が300℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。有機溶媒は、良好なインクジェットの吐出性、成膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、有機層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
さらに、有機溶媒が溶質の少なくとも1種に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低い、構成が特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
溶解度の差(SGS−SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS−BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)−30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
(1−2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、オクタン−2−オール、デカン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、s−ブチルベンゼン、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、シメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、3−フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、n−アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n−ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2−メチルビフェニル、3−フェノキシトルエン、2,2'−ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1−メチル−4−(プロポキシメチル)ベンゼン、1-メチル−4−(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテルなどがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
(2)任意成分
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
(2−1)バインダー
有機層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該有機層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、があげられるが、それだけに限定されない。
有機層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
(2−2)界面活性剤
有機層形成用組成物は、例えば、有機層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該有機層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックF−477、メガファックF−479、メガファックF−553、メガファックF−554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩をあげることができる。
また、界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(3)有機層形成用組成物の組成および物性
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。例えば、発光層形成用組成物の場合には、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0001質量%〜2.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0999質量%〜8.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、90.0質量%〜99.9質量%が好ましい。
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.005質量%〜1.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.095質量%〜4.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、95.0質量%〜99.9質量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.5質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.25質量%〜2.5質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、97.0質量%〜99.7質量%である。
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で攪拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
有機層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3〜3mPa・sであることが好ましく、1〜3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
有機層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該有機層形成用組成物の粘度は、25℃における表面張力が20〜40mN/mであることが好ましく、20〜30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10−335066号公報、特開2003−321546号公報、特開2004−281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003−257621号公報、特開2003−277741号公報、特開2004−119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
3−2.その他の有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造が挙げられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
なお、実施例に記載の化学式において、Meはメチル、Phはフェニル、を示す。
合成例(1)
11−メシチル−13−フェノキシ−11H−9,15,20−トリオキサ−11−アザ−4b,19b−ジボラジナフト[3,2,1−de:3’,2’,1’−hi]ペンタセン(化合物1−34)の合成
Figure 2021080190
フェノール(11.0mL,125mmol),炭酸セシウム(48.7g,149mmol)およびN−メチル−2−ピロリドン(100mL)に窒素雰囲気下,室温で1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(5.70mL,49.9mmol)を加え,120℃で18時間加熱攪拌した。反応溶液に0℃で6N塩酸(50mL)を加え,トルエン(30mL×2回)で抽出した。得られた有機層を水(100mL)で洗浄し,N−メチル−2−ピロリドンを除去した。溶媒を減圧留去して粗生成物を得た後,シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィーにより精製することで,白色固体として((5−ブロモ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ジベンゼン(15.6g,収率92%)を得た。
Figure 2021080190
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz):δ=6.59 (s, 1H), 6.81 (s, 2H), 7.03 (dd, 4H), 7.16 (t, 2H), 7.36 (t, 4H).
13C NMR (CDCl3, 101 MHz):δ=107.5 (1C), 115.8 (2C), 119.6 (4C), 123.0 (1C), 124.3 (2C), 130.0 (4C), 155.8 (2C), 159.4 (2C).
2-ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(0.103g,0.25 mmol),トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.115g,0.13mmol),((5−ブロモ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ジベンゼン(4.27g,13mmol),ナトリウム−tert−ブトキシド(2.40g,25mmol)および2,4,6−トリメチルアニリン(0.700mL,5.0mmol)に窒素雰囲気下,室温でo−キシレン(20mL)を加え,80℃で16時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷やした後,シリカゲルショートパスカラムを用いて濾過し,溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。その後,シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製と,ヘキサンを用いた洗浄を行うことで,白色固体としてN,N−ビス(3,5−ジフェノキシフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリン(2.85g,収率87%)を得た。
Figure 2021080190
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) :δ=2.03 (s, 6H), 2.27 (s, 3H), 6.10 (s, 2H), 6.43 (s, 4H), 6.88 (s, 2H), 6.94 (dd, 8H), 7.03 (t, 4H), 7.26 (t, 8H).
13C NMR (CDCl3, 101 MHz) :δ=18.4 (2C), 21.0 (1C), 102.2 (2C), 105.6 (4C), 118.6 (8C), 123.2 (4C), 129.6 (8C), 130.1 (2C), 137.1 (2C), 137.3 (1C), 139.1 (1C), 147.8 (2C), 156.7 (4C), 158.6 (4C).
N,N−ビス(3,5−ジフェノキシフェニル)−2,4,6−トリメチルアニリン(65.8mg,0.10mmol),三臭化ホウ素(0.30mL,3.2mmol)に窒素雰囲気下,室温で1,2,4−トリクロロベンゼン(2.0mL)を加え,220℃で6時間加熱攪拌した。未反応の三臭化ホウ素を室温で減圧留去した。反応溶液にジクロロメタン(10mL)を加えて希釈し,リン酸緩衝液(pH=7,5.0mL)を0℃で加えた。有機層を分離後,水層をジクロロメタン(10mL)で3回抽出した。その後,溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。粗生成物にトルエン(20mL),酢酸(0.10mL)を加え,70℃で30分間、90℃で30分間加熱攪拌した後,さらに酢酸(0.40mL)を加え,90℃で22時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷やして飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)を加え,トルエン(20mL×3回)で水層を抽出し,溶媒を減圧留去することで粗生成物を得た。その後,シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製,ジクロロメタンによる洗浄,GPCによる精製を行うことで,黄色個体として化合物(1−34)(26.9mg,収率40%)を得た。
Figure 2021080190
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) :δ=1.93 (s, 6H), 2.47 (s, 3H), 6.05 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 7.08 (d, 2H), 7.18 (t, 3H), 7.35-7.50 (m, 7H), 7.64-7.69 (m, 3H), 7.74 (t, 1H), 8.71 (dd, 1H), 8.76 (dd, 1H), 8.91 (dd, 1H).
13C NMR (CDCl3, 101 MHz) :δ=17.4 (2C), 21.3 (1C), 95.1 (1C), 96.7 (1C), 97.5 (1C), 117.4 (1C), 117.9 (1C), 118.7 (1C), 120.1 (2C), 121.7 (1C), 122.9 (1C), 123.1 (1C), 124.2 (1C), 129.8 (2C), 130.6 (2C), 132.4 (1C), 133.2 (1C), 133.3 (1C), 134.2 (1C), 134.6 (1C), 136.1 (1C), 136.6 (2C), 137.6 (1C), 138.9 (1C), 145.4 (1C), 152.3 (1C), 155.8 (1C), 159.3 (1C), 160.3 (1C), 160.3 (1C), 160.4 (1C), 160.6 (1C), 162.7(1C), 163.6 (1C).
<基礎物性の評価>
サンプルの準備
評価対象の化合物の吸収特性と発光特性(蛍光と燐光)を評価する場合、評価対象の化合物を溶媒に溶解して溶媒中で評価する場合と薄膜状態で評価する場合がある。さらに、薄膜状態で評価する場合は、評価対象の化合物の有機EL素子における使用の態様に応じて、評価対象の化合物のみを薄膜化し評価する場合と評価対象の化合物を適切なマトリックス材料中に分散して薄膜化して評価する場合がある。
マトリックス材料としては、市販のPMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いることができる。PMMAに分散した薄膜サンプルは、例えば、PMMAと評価対象の化合物をトルエン中で溶解させた後、スピンコーティング法により石英製の透明支持基板(10mm×10mm)上に薄膜を形成して作製することができる。
また、マトリックス材料がホスト材料である場合の薄膜サンプルの作製方法を以下に記す。石英製の透明支持基板(10mm×10mm×1.0mm)を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、ホスト材料を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着する。次に、真空槽を5×10-4Paまで減圧し、ホスト材料が入った蒸着用ボートとドーパント材料が入った蒸着用ボートを同時に加熱して適切な膜厚になるように蒸着してホスト材料とドーパント材料の混合薄膜を形成する。ホスト材料とドーパント材料の設定質量比に応じて蒸着速度を制御する。
吸収特性と発光特性の評価
前記サンプルの吸収スペクトルの測定は、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所、UV−2600)を用いて行う。また、前記サンプルの蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの測定は、分光蛍光光度計(日立ハイテク(株)製、F−7000)を用いて行う。
蛍光スペクトルの測定に対しては、室温で適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定した。燐光スペクトルの測定に対しては、付属の冷却ユニットを使用して、前記サンプルを液体窒素に浸した状態(温度77K)で測定した。燐光スペクトルを観測するため、光学チョッパを使用して励起光照射から測定開始までの遅れ時間を調整した。サンプルは適切な励起波長で励起しフォトルミネッセンスを測定する。
また、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920−02G)を用いて蛍光量子収率を測定する。
蛍光寿命(遅延蛍光)の評価
蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C11367−01)を用いて300Kで蛍光寿命を測定する。適切な励起波長で測定される極大発光波長において蛍光寿命の早い成分と遅い成分を観測する。蛍光を発光する一般的な有機EL材料の室温における蛍光寿命測定では、熱による3重項成分の失活により、燐光に由来する3重項成分が関与する遅い成分が観測されることはほとんどない。評価対象の化合物において遅い成分が観測された場合は、励起寿命の長い3重項エネルギーが熱活性化により1重項エネルギーに移動して遅延蛍光として観測されたことを示すことになる。
エネルギーギャップ(Eg)の算出
前述の方法で得られた吸収スペクトルの長波長末端A(nm)からEg=1240/Aで算出される。
S 、E T およびΔESTの算出
一重項励起エネルギー(ES)は、蛍光スペクトルの極大発光波長B(nm)からES=1240/Bで算出される。また、三重項励起エネルギー(ET)は、燐光スペクトルの極大発光波長C(nm)からET=1240/Cで算出される。
ΔESTはESとETのエネルギー差であるΔEST=ES−ETで定義される。また、ΔESTは、例えば、"Purely organic electroluminescent material realizing 100% conversion from electricity to light", H. Kaji, H. Suzuki, T. Fukushima, K. Shizu, K. Katsuaki, S. Kubo,T. Komino, H. Oiwa, F. Suzuki, A. Wakamiya, Y. Murata, C. Adachi, Nat. Commun. 2015, 6, 8476.に記載の方法でも算出することができる。
化合物(1−34)の基礎物性の評価
[吸収特性]
化合物(1−34)を1質量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し吸収スペクトルの測定を行う。
[発光特性]
化合物(1−34)を1質量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長340nmで励起してフォトルミネッセンスを測定することにより行なうする。
燐光スペクトルの測定は、化合物(1−34)を1質量%の濃度でPMMAに分散した薄膜形成基板(石英製)を準備し、励起波長340nmで励起してフォトルミネッセンスを測定することにより行なう。
以上の測定で、化合物(1−34)は、高効率かつ深い青色を達成可能な材料であることを確認できる。
<有機EL素子の評価>
本発明の化合物は、適切なエネルギーギャップ(Eg)、高い三重項励起エネルギー(ET)および小さいΔESTを特徴として有しているため、例えば発光層および電荷輸送層への適用が期待でき、特に発光層への適用が期待できる。
評価項目および評価方法
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
本発明では、新規な多環芳香族化合物を提供することで、有機EL素子用材料の選択肢を増やすことができる。また、新規な多環芳香族化合物を有機電界発光素子用材料として用いることで、優れた有機EL素子、それを備えた表示装置及びそれを備えた照明装置などを提供することができる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極
110 基板
120 電極
130 塗膜
140 塗膜
150 発光層
200 バンク
300 インクジェットヘッド
310 インクの液滴

Claims (17)

  1. 下記式(1)で表される多環芳香族化合物。
    Figure 2021080190
    (式(1)中、
    A環、B環、C環、D環、およびE環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素原子は置換されていてもよく、
    1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合していてもよく、
    および、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  2. A環、B環、C環、D環、およびE環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、またはトリ置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、A環およびB環はB、X1およびX2から構成される式(1)左の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、C環およびD環はB、X3およびX4から構成される式(1)右の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有し、
    1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して>O、>N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、Rにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはトリ置換シリルで置換されていてもよく、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記A環、B環、C環、D環、および/またはE環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素またはアルキルである、
    式(1)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
    請求項1に記載する多環芳香族化合物。
  3. 下記式(2)で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2021080190
    (式(2)中、
    1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、またはトリ置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、R2〜R5、R6〜R9、R10〜R13およびR14〜R16のうちの隣接する基同士が結合してそれぞれ、a環、b環、c環、またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはトリ置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、またはシクロアルキルで置換されていてもよく、
    1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>O、N−R、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)2−または単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合していてもよく、前記−C(−R)2−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  4. 1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜12のアリールオキシ、炭素数6〜12のアリールチオ、炭素数3〜10のシクロアルキル、アリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜12のアリール、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、またはジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
    1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立して、>OまたはN−Rであり、前記>N−RのRは、炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜4のアルキルであり、また、前記>N−RのRは、単結合により前記a環、b環、c環、d環、および/またはe環と結合していてもよく、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
    請求項3に記載の多環芳香族化合物。
  5. 2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して、水素、炭素数6〜10のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数6〜10のアリールオキシ、炭素数3〜10のシクロアルキル、アリールヘテロアリールアミノ(ただし、アリールは炭素数6〜10のアリール、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)、またはジヘテロアリールアミノ(ただし、ヘテロアリールは炭素数2〜12のヘテロアリール)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6〜12のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
    1は、水素であり、
    式(2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい、
    請求項4に記載の多環芳香族化合物。
  6. 下記いずれかの式で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2021080190
    Figure 2021080190
    (式中のRはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリールであり、R100は、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数6〜10のアリール、カルバゾリル、ジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜10のアリール)、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜10のシクロアルキル、または炭素数6〜10のアリールオキシであり、前記アリールは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、前記カルバゾリルは炭素数6〜10のアリールまたは炭素数1〜6のアルキルで置換されていてもよく、
    上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。)
  7. 下記式で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2021080190
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機デバイス用材料。
  9. 前記有機デバイス用材料は、有機電界発光素子用材料、有機電界効果トランジスタ用材料または有機薄膜太陽電池用材料である、請求項8に記載の有機デバイス用材料。
  10. 前記有機電界発光素子用材料が発光層用材料である、請求項9に記載の有機デバイス用材料。
  11. 有機電界発光素子の発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、
    第1成分として、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物の少なくとも1種と、
    第2成分として、少なくとも1種の有機溶媒と、
    を含む発光層形成用組成物。
  12. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層とを有する、有機電界発光素子であって、
    前記発光層が請求項1〜7のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する前記有機電界発光素子。
  13. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を有する、有機電界発光素子であって、
    前記発光層が請求項11に記載の発光層形成用組成物から形成された層である前記有機電界発光素子。
  14. 前記陰極と該発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリノール系金属錯体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シロール誘導体およびアゾリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項12または13に記載の有機電界発光素子。
  15. 前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項14に記載の有機電界発光素子。
  16. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
  17. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
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