JP2021077890A - 有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物 - Google Patents

有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2021077890A
JP2021077890A JP2020185738A JP2020185738A JP2021077890A JP 2021077890 A JP2021077890 A JP 2021077890A JP 2020185738 A JP2020185738 A JP 2020185738A JP 2020185738 A JP2020185738 A JP 2020185738A JP 2021077890 A JP2021077890 A JP 2021077890A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ring
aryl
component
heteroaryl
formula
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020185738A
Other languages
English (en)
Inventor
琢次 畠山
Takuji Hatakeyama
琢次 畠山
靖宏 近藤
Yasuhiro Kondo
靖宏 近藤
亮介 川角
Ryosuke Kawakado
亮介 川角
敬太 田端
Keita Tabata
敬太 田端
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JNC Corp
Kwansei Gakuin Educational Foundation
Original Assignee
JNC Corp
Kwansei Gakuin Educational Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JNC Corp, Kwansei Gakuin Educational Foundation filed Critical JNC Corp
Publication of JP2021077890A publication Critical patent/JP2021077890A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】色純度の高い青色発光が得られるとともに発光効率が高い有機電界発光素子を提供する。【解決手段】陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層が、第1成分として第1のホスト(HH)、第2成分として第2のホスト(EH)、第3成分としてホウ素原子を有する多環芳香族化合物をドーパント(BD)として含み、第1成分のHOMOは第2のホストのHOMOより浅く、第2成分のLUMOは第1のホストのLUMOより深く、第3成分のHOMOは第1のホストのHOMOより浅い、または、第3成分のLUMOは第2成分のLUMOより深い、有機電界発光素子。【選択図】図1

Description

本発明は、2つのホスト化合物およびホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含む有機電界発光素子、およびその有機電界発光素子を備えた表示装置および照明装置に関する。本発明は、また、有機電界発光素子の発光層形成用組成物に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料からなる有機電界発光素子(有機EL素子)は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
有機EL素子の発光機構としては、励起一重項状態からの発光を用いる蛍光発光および励起三重項状態からの発光を用いるりん光発光の主に2つがある。一般的な蛍光発光材料は、励起子利用効率が低く、およそ25%であり、三重項−三重項フュージョン(TTF:Triplet-Triplet Fusion、または、三重項−三重項消滅、TTA:Triplet-Triplet Annihilation)を用いても励起子利用効率は62.5%である。一方、りん光材料は、励起子利用効率が100%に達する場合もあるが、深い青色発光の実現が困難であり、加えて発光スペクトルの幅が広いため色純度が低いという問題がある。
そこで、九州大学安達千波矢教授により熱活性型遅延蛍光(TADF: Thermally Assisting Delayed Fluorescence))機構が提案され(非特許文献1参照)、TADF化合物を利用することで発光の励起子利用効率は100%に達するようになった。
さらに、関西学院大学畠山教授によりTADF材料の色純度を飛躍的に向上させる新たな分子設計が提案されている(非特許文献2参照)。また、特許文献1では、開示された例えば化合物(1−401)では、ホウ素(電子供与性)と窒素(電子吸引性)の多重共鳴効果を利用した堅牢な平面構造により、結果として吸収および発光のピークのストークスシフトが小さい、色純度の高い発光スペクトルを得ることに成功した。また、式(1−422)のような二量体化合物では、2つのホウ素と2つの窒素が中央のベンゼン環に結合することで、中央のベンゼン環においてさらに多重共鳴効果を増強させており、その結果、極めて狭い発光ピーク幅を有する発光が可能となっている。
一方、TADF材料のホスト材料として、電子輸送性ホスト材料と正孔輸送性ホスト材料とを組み合わせて使用することが検討されている(非特許文献3〜5)。
国際公開第2015/102118号
Nature 492, 234-238 Advanced Materials, 28, 14, 2016, 2777 Advanced Functional Materials, 24, 2014, 3970 Advanced Materials, 26, 2014, 5684 Synthetic Metals, 201, 2015, 49
上述するように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、発光特性などの有機EL特性を更に高め、発光層用材料などの有機EL材料の選択肢を増やすために、従来具体的には知られていなかった化合物の組み合わせが望まれている。本発明は、色純度の高い青色発光が得られるとともに発光効率が高い有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特許文献1に記載の分子中にホウ素原子を有する多環芳香族化合物と電子輸送性ホスト材料および正孔輸送性ホスト材料とを含む発光層を用い、深い青色発光が得られるとともに、色純度が高い有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
<1> 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を有する有機電界発光素子であって、
前記発光層が、
第1成分として第1のホスト(HH)、
第2成分として第2のホスト(EH)、および
第3成分としてドーパント(BD)を含み、
前記ドーパント(BD)としてホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含み、
第1成分のHOMOは第2成分のHOMOより浅く、
第2成分のLUMOは第1成分のLUMOより深く、
第3成分のHOMOは第1成分のHOMOより浅い、または、第3成分のLUMOは第2成分のLUMOより深い、有機電界発光素子。
<2> 第3成分が、
下記式(i)で表される単量体または下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物、式(iii)で表される化合物、ならびに下記式(i)で表される単量体もしくは下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される化合物を少なくとも1つ含む、<1>に記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
式(i)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、前記N−RのRおよび>CRのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
Figure 2021077890
式(iii)中、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
、XおよびXは、それぞれ独立して、O、N−R、>CR、SまたはSeであり、前記N−RのRおよび>CRのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
式(iii)で表される化合物における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
式(iii)で表される化合物における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<3> 第3成分が、下記式(1)で表される単量体もしくは、下記式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物、および下記式(1)で表される単量体もしくは、下記式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、<1>または<2>に記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
式(1)中、
〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリルであり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、また、R〜R、R〜RおよびR〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシおよびアリールオキシから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
ただし、XおよびXは、同時に>CRになることはなく、
式(1)で表される構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<4> 第3成分が式(2)で表される化合物である、<1>または<2>に記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
式(2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、
〜R14は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、R〜RおよびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれb環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−Rおよび>CRのRは、それぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRのRは、−O−、−S−、−C(−R)−または単結合により前記a環、b環、c環およびd環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、前記−C(−R)−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
ただし、X、X、X、およびXは、同時に>CRになることはなく、
式(2)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
<5> 第3成分の最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位とのエネルギー差が0.2eV以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
<6> 第1成分が、式(HH−1)で表される化合物であるか、または式(HH−1)で表される部分構造を有する化合物である、<1>〜<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
(式(HH−1)において、
Qは、>O、>S、または、>N−Aであり、
式(HH−1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
Aは、水素原子、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよい。
<7> 第1成分が、下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、<1>〜<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
Figure 2021077890
<8> 第2成分が、式(EH−1)で表される化合物であるか、または式(EH−1)で表される部分構造を有する化合物である、<1>〜<7>のいずれかに記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
式(EH−1)において、
Jは、それぞれ独立して、=C(−A)−または=N−であり、少なくとも3つのJは=C(−A)−であり、
Zは、−O−、−S−、−C(=O)−、−P(=O)(−A)−、−P(=S)(−A)−、−N(−A)−、−B(−A)−または−S(=O)−であり、
Zの結合する炭素原子の隣のJとZの結合するAとは、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
Aは、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよく、
すべてのJが、=C(−A)−であるとき、AまたはZのいずれかひとつがヘテロ原子を有する。
<9> 第2成分が、下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、<1>〜<8>のいずれかに記載の有機電界発光素子;
Figure 2021077890
<10> 第2成分が下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、<1>〜<8>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
Figure 2021077890
<11> 前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびキノリノール系金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<1>〜<10>のいずれかに記載の有機電界発光素子。
<12> 前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、<11>に記載の有機電界発光素子。
<13> <1>〜<12>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
<14> <1>〜<12>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
<15> <1>〜<12>のいずれかに記載の有機電界発光素子の前記発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、
第1成分、第2成分および第3成分に加えて、第4成分として、少なくとも1種の有機溶媒を含む、発光層形成用組成物。
<16> 第4成分における少なくとも1種の有機溶媒の沸点が130℃〜350℃である、<15>に記載の発光層形成用組成物。
<17> 第4成分が、第1成分、第2成分、および第3成分である化合物の少なくとも1種に対する良溶媒と貧溶媒とを含み、前記良溶媒の沸点が前記貧溶媒の沸点よりも低い、<15>または<16>に記載の発光層形成用組成物。
<18> 第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0998質量%〜4.0質量%であり、
第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0001質量%〜2.0質量%であり、
第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0001質量%〜2.0質量%であり、
第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して90.0質量%〜99.9質量%である、
<15>〜<17>のいずれかに記載の発光層形成用組成物。
本発明により、色純度の高い青色発光が得られる有機電界発光素子が提供される。本発明の有機電界発光素子は、さらに、外部量子効率および耐久性が高い。
有機電界発光素子を示す概略断面図である。 バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機電界発光素子を作製する方法を説明する図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
<<有機電界発光素子>>
本発明の有機電界発光素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層とを有する。前記発光層は、第1のホスト、第2のホスト、および分子中にホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含む。有機電界発光素子は、発光層の他に、1以上の有機層を有していてもよい。有機層としては、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層および正孔注入層等を挙げることができ、さらに、その他の有機層を有していてもよい。
図1に、これらの有機層を備えた有機電界発光素子の層構成の一例を示す。図1において、101は基板、102は陽極、103は正孔注入層、104は正孔輸送層、105は発光層、106は電子輸送層、107は電子注入層、108は陰極をそれぞれ示す。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
1.有機電界発光素子における発光層
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光するものである。本発明の有機電界発光素子の発光層は、第1成分として第1のホスト、第2成分として第2のホスト、および第3成分としてのホウ素原子を有する多環芳香族化合物を少なくとも含む。
本明細書中では、第1のホストおよび第2のホストを合わせて「ホスト化合物」、第3成分としての、ホウ素原子を有する多環芳香族化合物を「ドーパント」ということがある。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよい。また、第1成分、第2成分、第3成分は、同一の層内に含まれていてもよく、複数層に少なくとも1成分ずつ含まれていてもよい。発光層が含む第1成分、第2成分、第3成分は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパントは、マトリックスとしてのホスト(第1成分、第2成分)中に、全体的に含まれていてもよいし、部分的に含まれていてもよい。エミッティングドーパントがドープされた発光層は、ホスト化合物とドーパントとを三元共蒸着法によって成膜する方法、ホスト化合物とドーパントを予め混合してから同時に蒸着する方法、ホスト化合物のホストとドーパントを有機溶媒に溶解して調製した塗料を塗布する、湿式成膜法等により形成することができる。
ホスト化合物の使用量はホスト化合物(第1のホストおよび第2のホスト)の種類によって異なり、そのホスト化合物の特性に合わせて決めればよい。ホスト化合物の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の40〜99.999質量%であり、より好ましくは50〜99.99質量%であり、さらに好ましくは60〜99.9質量%である。上記の範囲であれば、例えば、効率的な電荷の輸送と、ドーパントへの効率的なエネルギーの移動の点で好ましい。
第3成分であるホウ素原子を有する多環芳香族化合物の使用量は、そのドーパントとしての特性に合わせて決めればよい。第3成分の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.01〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
ドーパントの使用量は低濃度であることが濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
1−1.ホスト化合物(第1成分および第2成分)
本発明の有機電界発光素子の発光層は、第1成分および第2成分としてホスト化合物を含む。第1成分、第2成分、およびドーパントである後述の第3成分は、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)において以下の関係を満たす。
第1成分である第1のホストのHOMOは第2のホストのHOMOより浅く、
第2成分である第2のホストのLUMOは第1のホストのLUMOより深く、
第3成分のHOMOは第1のホストのHOMOより浅い、または、第3成分のLUMOは第2成分のLUMOより深い。
本明細書において、第1成分を正孔輸送性ホスト材料(HH)、第2成分を電子輸送性ホスト材料(EH)と呼ぶことがある。
本発明の有機電界発光素子では、上記を満たす、第1成分および第2成分を発光層に含むことにより、第3成分のホウ素原子を有する多環芳香族化合物の青色発光の色純度を向上させることができる。具体的には、本発明の有機電界発光素子では、好ましくは450〜480nmに半値幅が10〜50nmであるピーク、より好ましくは460〜470nmに半値幅が10〜35nmであるピークを有する発光スペクトルを得ることができる。また、発光層のホストとして上記の第1成分および第2成分を使用することにより、高い外部量子効率および高い耐久性を有する有機電界発光素子を得ることができる。
1−1−1.第1成分(正孔輸送性ホスト材料(HH))
第1成分は第1のホスト(HH)であり、式(HH−1)で表される化合物であるかまたは式(HH−1)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
式(HH−1)において、
Qは、>O、>S、または、>N−Aであり、
式(HH−1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
Aは、水素原子、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよい。
Aで示される「アリール」としては、単環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香族炭化水素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「アリール」は、例えば、炭素数6〜30のアリールであり、炭素数6〜20のアリールが好ましく、炭素数6〜16のアリールがより好ましく、炭素数6〜12のアリールがさらに好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。
具体的なアリールとしては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリル、p−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
Aで示される「ヘテロアリール」としては、単環であっても、1以上の複素環と1以上の複素環または1以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の複素環が連結した連結環であってもよい。2以上の複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「ヘテロアリール」は、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールであり、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールは、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などである。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、フラザニル、オキサジアゾリル、チアントレニル、カルバゾリル、ジベンゾフラニルおよび、インデロカルバゾールなどが挙げられる。
Aで示される「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルである。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。
Aで示される「シクロアルキル」としては、1つの環からなるシクロアルキル、複数の環からなるシクロアルキル、環内で共役しない二重結合を含むシクロアルキルおよび環外に分岐を含むシクロアルキルのいずれでもよく、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルである。炭素数5〜10のシクロアルキルが好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキルがより好ましい。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、デカヒドロナフチル、アダマンチルなどが挙げられる。
Aで示される「アルコキシ」としては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシである。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。
>C(−A)における2つのAが互いに結合してアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成するときのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルとしては、それぞれ上述の例を参照することができる。
第1成分が式(HH−1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造1を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
第1成分は、トリアリールアミン構造、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、およびジベンゾチオフェン環、およびフェノキサジンもしくはフェノチアジンを含む縮合多環からなる群より選択される1つ以上の部分構造を含む化合物であることが好ましい。第1成分はこのような部分構造1を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
第1成分の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
上記のうち、HH−1−1、HH−1−2、HH−1−4〜HH−1−12、HH−1−17、HH−1−18、HH−1−20〜HH−1−24、HH−1−82、HH−1−84〜HH−1−89、HH−1−91、HH−1−92およびHH−1−106〜HH−1−108が好ましい。
1−1−2.第2成分(電子輸送性ホスト材料(EH))
第2成分は第2のホスト(EH)であり、式(EH−1)で表される化合物であるか、または式(EH−1)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
式(EH−1)において、
Jは、それぞれ独立して、=C(−A)−または=N−であり、少なくとも3つのJは=C(−A)−であり、
Zは、−O−、−S−、−C(=O)−、−P(=O)(−A)−、−P(=S)(−A)−、−N(−A)−、−B(−A)−または−S(=O)−であり、
Zの結合する炭素原子の隣のJとZの結合するAとは、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
Aは、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよく、
すべてのJが、=C(−A)−であるとき、AまたはZのいずれかひとつがヘテロ原子を有する。
式(EH−1)におけるAで示される、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシについては式(HH−1)におけるAの説明を参照することができる。式(EH−1)における2つのAが互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成するときのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルについても式(HH−1)における説明を参照することができる。
第2成分が式(EH−1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
第2成分の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
第2成分(式(EH−1)で表される部分構造を有する化合物)の別の好ましい例として、下記式(EH−1b)で表される多環芳香族化合物、または下記式(EH−1b)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体を挙げることができる。
Figure 2021077890
式(EH−1b)において、
、R、R、RおよびR(以降、「R等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、さらに、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
式(EH−1b)において、XおよびXは、それぞれ独立して、>N−R(アミン性窒素)、>O、>C(−R)、>Sまたは>Seであり、XおよびXが共に>C(−R)になることはなく、
前記>N−Rおよび>C(−R)におけるRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、さらに、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、前記>N−Rおよび>C(−R)のRはそれぞれ独立して連結基または単結合により前記a環、b環およびc環の少なくとも1つの環と結合していてもよい。
、Y、Y、Y、YおよびY(以降、「Y等」ともいう)は、それぞれ独立して、=C(−R)−または=N−(ピリジン性窒素)であり、少なくとも1つは=N−(ピリジン性窒素)であり、
前記=C(−R)−におけるRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)であり、これらにおける少なくとも1つの水素は、さらに、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
前記R、R、R、RおよびR、ならびに、前記Y〜Yとしての=C(−R)−のRのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環およびc環の少なくとも1つの環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
一般式(1)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(EH−1b)において、R、R、R、RおよびRはいずれも水素であるか、または、RおよびRがいずれも水素であり、かつR、RおよびRからなる群より選択されるいずれか1つ以上が水素以外の置換基であり、その他が水素であることが好ましい。置換基としては、アルキル、アルキルもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはアリールで置換されていてもよいヘテロアリール、またはアルキルもしくはアリールで置換されていてもよいジアリールアミノが好ましい。このとき、アルキルとしては、炭素数1〜6のアルキル(メチル、t−ブチルなど)が好ましく、アリールとしてはフェニルまたはビフェニルが好ましく、ヘテロアリールとしては、トリアジニル、カルバゾリル(2−カルバゾリル、3−カルバゾリル、9−カルバゾリルなど)、ピリミジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルまたはジベンゾチエニルが好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニル、ジフェニルトリアジニル、カルバゾリルトリアジニル、モノフェニルピリミジニル、ジフェニルピリミジニル、カルバゾリルトリアジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルおよびジベンゾチエニルが挙げられる。
等は、それぞれ独立して、=C(−R)−または=N−であり、少なくとも1つは=N−である。Y〜Yのいずれが=N−であってもよい。好ましくは、YおよびYが=N−(a環がピリミジン環)、YまたはYが=N−(a環がピリジン環)、YおよびYが=N−(b環およびc環がピリジン環)、YおよびYが=N−(b環およびc環がピリジン環)、Y〜Yが=N−(b環およびc環がピリミジン環)、Y、Y、YおよびYが=N−(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y、Y、YおよびYが=N−(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y〜Yが=N−(a環、b環およびc環がピリミジン環)、YまたはYが=N−(b環またはc環がピリジン環)である。
また、以上の=N−の配置関係に加えて、XおよびXが>Oであることが好ましく、下記式のいずれかで表される部分構造を含む多環芳香族化合物が好ましい。
Figure 2021077890
特に、式(EH−1b−N1)で表される部分構造を含む多環芳香族化合物は、Nがない構造と比べ、高いES1、高いET1、小さいΔES1T1を有する。
式(EH−1b)で表される多環芳香族化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
上記のうち、EH−1−1〜EH−1−4、EH−1−10、EH−1−21〜EH−1−25、EH−1−32、EH−1−33、EH−1−51〜EH−1−59、EH−1−61、EH−1−66、EH−1−68、EH−1−71、EH−1−72、EH−1−90、EH−1−100、EH−1−101、EH−1−104,EH−1−115、EH−1−117、EH−1−120、EH−1−122、EH−1−123、EH−1−127〜EH−1−130が好ましい。
1−1−3.第1成分および第2成分の組み合わせ
第1成分および第2成分の組み合わせは、第1の成分、第2の成分および第3成分のHOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーによって選択される。
HOMOおよびLUMOに関しては、第1のホストのHOMO(HH)が第2のホストのHOMO(EH)より浅く、第2のホストのLUMO(EH)が第1のホストのLUMO(HH)より深い組み合わせを選び、より具体的には、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上深い組み合わせが好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上深い組み合わせがより好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上深い組み合わせがさらに好ましい。
第1成分および第2成分はエキサイプレックス(exciplex)と呼ばれる会合体を形成する組み合わせであってもよい。エキサイプレックスは、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅いHOMO準位をもつ材料間との間で形成しやすいことが一般に知られている。第1成分および第2成分の相互作用、具体的にはエキサイプレックスを形成しているか否かは、第1成分および第2成分のみからなる単層膜を発光層の形成条件と同様にして形成して発光スペクトル(蛍光、りん光スペクトル)を測定し、得られた発光スペクトルを、第1成分および第2成分それぞれが単独で示す発光スペクトルとを比較することで判断できる。第1成分および第2成分を含む混合膜のスペクトルが、第1成分の膜のスペクトル、および第2成分の膜のスペクトルのいずれとも異なる発光波長を示すことにより判断することができる。具体的には、スペクトルのピーク波長が10nm以上異なっていることを指標にすればよい。
エキサイプレックスを形成しない第1成分および第2成分の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせを挙げることができる。前記のHOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーの物性値を満たすために、第1成分においては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、トリアリールアミン、インデロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンを部分構造として有する化合物がより好ましく、カルバゾールを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、第2成分においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、第1成分は、HH−1−1、HH−1−2、HH−1−4〜HH−1−12、HH−1−17、HH−1−18、HH−1−20〜HH−1−24、HH−1−82、HH−1−84〜HH−1−89、HH−1−91、HH−1−92およびHH−1−106〜HH−1−108からなる群より選択されることが好ましく、第2成分は、EH−1−1〜EH−1−4、EH−1−10、EH−1−21〜EH−1−25、EH−1−32、EH−1−33、EH−1−51〜EH−1−59、EH−1−61、EH−1−71、EH−1−72、EH−1−90、EH−1−100、EH−1−101、EH−1−104、EH−1−117、EH−1−120、EH−1−122、EH−1−123、およびEH−1−127〜EH−1−130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH−1−1および化合物EH−1−22、化合物HH−1−1および化合物EH−1−23、化合物HH−1−1および化合物EH−1−24、化合物HH−1−2および化合物EH−1−22、化合物HH−1−2および化合物EH−1−23、化合物HH−1−2および化合物EH−1−24、または化合物HH−1−1および化合物EH−1−128が挙げられる。
エキサイプレックスを形成する第1成分および第2成分の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせを挙げることができる。前記、HOMO、LUMOおよび励起三重項エネルギーの物性値を満たすために、第1成分においては、カルバゾール、トリアリールアミン、インデロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアリールアミン、インデロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアリールアミンを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、第2成分においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシドおよびベンゾフロピリジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、ホスフィンオキシドおよびトリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、第1成分は、HH−1−1、HH−1−2、HH−1−11、HH−1−12、HH−1−17、HH−1−18、HH−1−23およびHH−1−24からなる群より選択されることが好ましく、第2成分は、EH−1−1〜EH−1−4、EH−1−21〜EH−1−25、EH−1−51〜EH−1−57、EH−1−59、EH−1−66、EH−1−68、EH−1−90、EH−1−100、EH−1−101、EH−1−104、EH−1−117、EH−1−120、EH−1−122、EH−1−123、およびEH−1−127〜EH−1−130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH−1−1および化合物EH−1−21、化合物HH−1−2および化合物EH−1−21、化合物HH−1−12および化合物EH−1−117、化合物HH−1−1および化合物EH−1−130、化合物HH−1−33および化合物EH−1−117、化合物HH−1−48および化合物EH−1−117または化合物HH−1−49および化合物EH−1−117が挙げられる。
その他、具体的な第1成分と第2成分との組み合わせについては、Organic Electronics 66 (2019) 227−24、Advanced. Functional Materals 25 (2015) 361−366.、Advanced Materials 26 (2014) 4730−4734.、ACS Applied Materials and Interfaces 8 (2016) 32984−32991.、ACS Applied Materals and Interfaces 2016, 8, 9806−9810、ACS Applied Materials and Interfaces 2016, 8, 32984−32991、Journal of Materials Chemisty C, 2018, 6, 8784−8792、Angewante Chemie International Edition. 2018, 57, 12380−12384、Advanced Functional Materials, 24, 2014, 3970, Advanced Materials, 26, 2014, 5684, および、Synthetic Metals, 201, 2015, 49などの記載を参照することができる。
1−2.ホウ素原子を有する多環芳香族化合物(第3成分)
本発明の有機電界発光素子の発光層は、第3成分としてホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含む。ホウ素原子を有する多環芳香族化合物はドーパント(BD)として含まれている。ホウ素原子を有する多環芳香族化合物は蛍光体であっても、TADF材料(熱活性型遅延蛍光体)であってもよい。ホウ素原子を有する多環芳香族化合物は青色発光化合物が用いられる。
一般に有機電界発光素子用の発光材料としては、蛍光材料、りん光材料、TADF材料の3種類が知られている。
蛍光材料は、発光効率が低く、およそ25〜62.5%程度である。一方、りん光材料とTADF材料は、発光効率が100%に達する場合もあるが、いずれも色純度が低い(発光スペクトルの幅が広い)という問題がある。ディスプレイでは、光の三原色である赤・緑・青色の発光を混合することによりさまざまな色を表現しているが、それぞれの色純度が低いと、再現できない色ができてしまい、ディスプレイの画質が大きく低下する。そこで、市販のディスプレイでは、発光スペクトルから不必要な色を光学フィルターで除去することにより、色純度を高めてから(スペクトル幅を狭くしてから)使用している。したがって、元々のスペクトル幅が広いと除去する割合が増えるために、発光効率が高い場合でも、実質的な効率は大きく低下する。例えば、市販のスマートフォンの青色の発光スペクトルの半値幅は、およそ20〜25nm程度であるが、一般的な蛍光材料の半値幅は40〜60nm程度、りん光材料は60〜90nm程度、TADF材料だと70〜100nm程度である。蛍光材料を用いた場合は半値幅が比較的狭いため不要な色を一部除去するだけで足りるが、りん光材料やTADF材料を用いた場合は半分以上除去する必要がある。
このような観点から、本発明の有機電界発光素子の発光層に含まれるホウ素原子を有する多環芳香族化合物はTADF化合物であることが好ましい。本明細書において、「TADF化合物(熱活性型遅延蛍光体)」とは、熱エネルギーを吸収して励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ただし、「熱活性型遅延蛍光」とは、励起三重項状態から励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)および、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機ELにおける高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)などが挙げられる。例えば、上記佐藤らによる学会発表によれば、ホウ素原子を分子中に有するDABNA2での逆項間交差は高次三重項軌道を用いるFvHT(Fluorescence via Higher Triplet)機構であり、高次三重項軌道から基底状態への遷移が抑えられているために高次三重項軌道より励起一重項軌道への遷移が起きることが示唆されている。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367−01)を用いて行うことができる。
一般にTADF材料は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMOとLUMOを局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされているが、ドナーやアクセプターを用いると励起状態での構造緩和が大きくなり(ある分子においては、基底状態と励起状態では安定構造が異なるため、外部刺激により基底状態から励起状態への変換が起きると、その後、励起状態における安定構造へと構造が変化する)、色純度が低い幅広な発光スペクトルを与えることになる。
そこで、国際公開第2015/102118号では、TADF材料の色純度を飛躍的に向上させる新たな分子設計を提案している。当該文献に開示された例えば化合物(1−401)では、ホウ素(電子吸引性)と窒素(電子供与性)の多重共鳴効果を利用することで、6つの炭素からなるベンゼン環上の3つの炭素(黒丸)にHOMOを、残りの3つの炭素(白丸)にLUMOを局在化させることに成功している。この効率的な逆項間交差により、当該化合物の発光効率は最大で100%に達する。さらに、化合物(1−401)のホウ素と窒素はHOMOとLUMOを局在化させるだけではなく、3つのベンゼン環を縮環させることにより堅牢な平面構造を維持し、励起状態での構造緩和を抑制するという役割も担っており、結果として吸収および発光のピークのストークスシフトが小さい、色純度の高い発光スペクトルを得ることにも成功している。その発光スペクトルの半値幅は28nmであり、実用化されている高色純度の蛍光材料をも凌駕するレベルの色純度を示している。また、式(1−422)のような二量体化合物では、2つのホウ素と2つの窒素が中央のベンゼン環に結合することで、中央のベンゼン環においてさらに多重共鳴効果を増強させており、その結果、極めて狭い発光ピーク幅を有する発光が可能となっている。
Figure 2021077890
我々は鋭意研究の結果、(i)多重共鳴効果を調節する元素を適切な位置に導入する、(ii)分子を歪ませて平面性を減少させるために適切な位置に置換基を導入する、(iii)平面性の高い構造を適切な位置に導入する、という、3つのアプローチを適切に組み合わせることで、化合物において、発光波長および発光スペクトルの半値幅の調整、高い発光効率および小さなΔES1T1を化合物において実現した(国際公開第O2015/102118号、特開2018−43984号公報、国際公開第2018/212169号、国際公開第2019/235402号、国際公開第2019/240080号)。
本発明の有機電界発光素子の発光層においては、上記のようなホウ素原子を有する多環芳香族化合物をドーパントとして利用することで、適切な発光波長および発光スペクトルの半値幅、高い色純度を得ることができる。
本発明で用いられるホウ素原子を有する多環芳香族化合物は、最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)とのエネルギー差(ΔES1T1)が0.2eV以下であることが好ましい(Hiroki Uoyama, Kenichi Goushi, Katsuyuki Shizu, Hiroko Nomura, Chihaya Adachi, Nature, 492, 234-238 (2012))。ΔES1T1は、より好ましくは0.15eV以下であり、さらに好ましくは0.10eV以下であり、特に好ましくは0.08eV以下である。
本発明の有機電界発光素子の発光層は、ホウ素原子を有する多環芳香族化合物として、式(i)で表される単量体または下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物、式(iii)で表される化合物、ならびに下記式(i)で表される単量体もしくは下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい。
Figure 2021077890
本発明の有機電界発光素子の発光層は、第3成分(ホウ素原子を有する多環芳香族化合物)として、下記式(1)、(2)、(3)および(4)のいずれかで表される化合物を少なくとも1つ含むことがより好ましい。
Figure 2021077890
式(1)、(2)、(3)および(4)のいずれかで表される化合物は、式(i)で表される単量体もしくは下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の具体的な化合物例について、さらに検討を行って一般化したものである。
以下において、各式およびその具体例について説明する。
1−2−1.第3成分:式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物
Figure 2021077890
式(i)において、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
A環、B環およびC環におけるアリール環またはヘテロアリール環は、B(ホウ素)ならびにXおよび/またはXと5員環または6員環で結合していることが好ましい。「BならびにXおよび/またはXと5員環または6員環で結合している」とは、この5員環または6員環だけで環が形成されているか、または、この5員環または6員環を含むようにさらに他の環が縮合して環が形成されていることを意味する。言い換えれば、環の全部または一部を構成する5員環または6員環がBならびにXおよび/またはXと結合していることを意味する。A環、B環およびC環におけるアリール環またはヘテロアリール環においては、連続している2つまたは3つの環構成原子(炭素原子)がBならびにXおよび/またはXと直接結合していればよい。すなわち、B環におけるアリール環またはヘテロアリール環においていずれか一組の連続する環構成原子(炭素原子)2つがBおよびXと直接結合しており、C環におけるアリール環またはヘテロアリール環においていずれか一組の連続する環構成原子(炭素原子)2つがBおよびXと直接結合しており、A環におけるアリール環またはヘテロアリール環においていずれか一組の連続する環構成原子(炭素原子)3つがB、XおよびXと直接結合している。
式(i)のA環、B環、またはC環における「アリール環」としては、例えば、炭素数6〜30のアリール環があげられ、炭素数6〜16のアリール環が好ましく、炭素数6〜12のアリール環がより好ましく、炭素数6〜10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、三環系であるテルフェニル環(m−テルフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などが挙げられる。また、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インデン環には、それぞれフルオレン環、ベンゾフルオレン環、シクロペンタン環などがスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環、ベンゾフルオレン環およびインデン環は、メチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置換して、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環およびジメチルインデン環などとなっているものも含まれる。
式(i)のA環、B環、またはC環における「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2〜25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H−インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H−ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラザン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ベンゾベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環、ジオキシン環、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、ジベンゾジオキシン環などが挙げられる。また、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、は、メチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置換して、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環などとなっているものも好ましい。また二環系であるビピリジン環、フェニルピリジン環、ピリジルフェニル環、三環系であるテルピリジル環、ビスピリジルフェニル環、ピリジルビフェニル環も「ヘテロアリール環」として挙げられる。また、「ヘテロアリール環」にはピラン環も含まれるものとする。
上記「アリール環」または「ヘテロアリール環」における少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。このときの置換基としては、後述の式(1)におけるR等の説明を参照できる。
式(i)におけるXおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよい。
>N−RのRおよび>CRのRであるアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキル(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、後述するR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルの説明を引用できる。
上記連結基としては、−O−、−S−または−C(−R)−が好ましい。「−C(−R)−」のRは、水素、アルキルまたはシクロアルキルである。この説明は式(1)、式(2)、式(iii)におけるX、XおよびXおよびXでも同じである。
式(i)におけるXおよびXは、いずれも、Rが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいシクロアルキルである>N−Rであることが好ましく、Rが置換されていてもよいフェニルである>N−Rであることがより好ましい。XおよびXは互いに同一の基であっても異なっていてもよい。
「N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよい」との規定は、下記式(1−a−3−1)で表される、XやXがそれぞれ縮合環B’および縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物で表現できる。すなわち、例えば後述の式(1)におけるb環(またはc環)であるベンゼン環に対してX(またはX)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるB’環(またはC’環)を有する化合物である。形成されてできた縮合環B’(または縮合環C’)は例えばカルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環である。
また、上記規定は、下記式(1−a−3−2)や式(1−a−3−3)で表される、Xおよび/またはXが縮合環A’に取り込まれた環構造を有する化合物でも表現できる。すなわち、例えば後述の式(1)におけるa環であるベンゼン環に対してX(および/またはX)を取り込むようにして他の環が縮合して形成されるA’環を有する化合物である。形成されてできた縮合環A’は例えば、カルバゾール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環またはアクリジン環である。
Figure 2021077890
このような化合物のうち、Xが縮合環C’に取り込まれた環構造を有する化合物として、式(4)で表される化合物が挙げられる。
式(i)で表される単量体または下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよい。この説明は、式(iii)で表される化合物についても、同様に当てはまる。
「シクロアルカン」としては、炭素数3〜24のシクロアルカン、炭素数3〜20のシクロアルカン、炭素数3〜16のシクロアルカン、炭素数3〜14のシクロアルカン、炭素数5〜10のシクロアルカン、炭素数5〜8のシクロアルカン、炭素数5〜6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどが挙げられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロ[1.0.1]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.0.1]ペンタン、ビシクロ[1.2.1]ヘキサン、ビシクロ[3.0.1]ヘキサン、ビシクロ[2.1.2]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などが挙げられる。
これらの中でもシクロアルカンのα位の炭素(アリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルキルにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)における少なくとも1つの水素が置換された構造が好ましく、α位の炭素における2つの水素が置換された構造がより好ましく、2つのα位の炭素における合計4つの水素が置換された構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1〜5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などが挙げられる。特に、アリール環またはヘテロアリール環において隣接する炭素原子に下記式(B10)または式(B11)で表される部分構造が結合した構造となっていることが好ましい。
Figure 2021077890
式(B10)および式(B11)中、Meはメチルを示す。*は結合位置を示し、式(B10)または式(B11)で表される基が結合するアリール環またはヘテロアリール環の環上で隣接する2つの元素にそれぞれ結合する。
式(i)で表される単量体または下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素、シアノ、またはハロゲンであってもよい。例えば、式(i)においては、A環、B環、C環(A〜C環はアリール環またはヘテロアリール環)、A〜C環への置換基、ならびに、XおよびXが>N−RであるときのR(=アルキル、シクロアルキル、アリール)における水素が重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素が重水素、シアノまたはハロゲンで置換された態様が挙げられる。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素、より好ましくはフッ素または塩素である。この説明は、式(iii)で表される化合物についても、同様に当てはまる。
式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物は、式(i)で表される構造を単位構造として複数有する多量体化合物であればよい。式(1)で表される構造を単位構造として複数有する多量体化合物は好ましい1例である。式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物は、2〜6量体が好ましく、2〜3量体がより好ましく、2量体が特に好ましい。多量体は、一つの化合物の中に上記単位構造を複数有する形態であればよく、例えば、上記単位構造が単結合、炭素数1〜3のアルキレン、フェニレン、ナフチレンなどの連結基で複数結合した形態に加えて、上記単位構造に含まれる任意の環(式(i)におけるA環、B環もしくはC環、式(1)におけるa環、b環もしくはc環)を複数の単位構造で共有するようにして結合した形態であってもよく、また、上記単位構造に含まれる任意の環(A環、B環もしくはC環、またはa環、b環もしくはc環)同士が縮合するようにして結合した形態であってもよい。このような多量体のうち2量体の例を以下に示す。下記式(II−1)〜式(II−8)中、A環、B環、C環、D環およびE環の定義については、A環、B環およびC環の記載を参照できる。Xは式(i)中のX、Xと同義である。
Figure 2021077890
式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物の好ましい例として下記式(ii)で表される化合物を挙げることができる。式(ii)で表される化合物は式(II−5)で表される化合物の1例である。
Figure 2021077890
式(ii)において、
A環、B環、C環およびD環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記>N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環、C環およびD環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、
式(ii)で表される化合物における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物の別の好ましい例として下記式(ii−iii)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2021077890
式(ii−iii)において、X11、X12、X21、X22、X31、X32は、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、上記>N−Rおよび>CRのRは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたはアルキルであり、また、上記>N−RのRは、連結基または単結合によりA11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環からなる群より選択される少なくとも1つと結合していてもよい。
式(ii−iii)におけるA11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換基で置換されていてもよい。この置換基は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ(2つのアリールは互いに単結合または連結基で結合していてもよい。)、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ)、置換もしくは無置換のジアリールボリル、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、または置換シリルが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、またはアルキルが挙げられる。上記アリール環またはヘテロアリール環であるA11環、B11環、およびC11環は、B(ホウ素)、X11、およびX12から構成される縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましく、
上記アリール環またはヘテロアリール環であるA21環、B11環、およびB21環は、B、X21、およびX22から構成される縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましく、
上記アリール環またはヘテロアリール環であるA31環、C11環、およびC31環は、B、X31、およびX32から構成される式の縮合2環構造と結合を共有する5員環または6員環を有することが好ましい。
式(ii−iii)中、A11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環(式(ii−iii)で示すように、B、X11、X12、X21、X22、X31、およびX32からなる群より選択される2つまたは3つと結合している、アリール環またはヘテロアリール環)であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよい。すなわち、上記アリール環または上記ヘテロアリール環における、B、X11、X12、X21、X22、X31、およびX32からなる群より選択される2つまたは3つと結合している位置以外において置換基を有していてもよい。
11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環は少なくともいずれかが、少なくとも1つの置換基を有するアリール環または少なくとも1つの置換基を有するヘテロアリール環であることが好ましく、A11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環のいずれも少なくとも1つの置換基を有するアリール環または少なくとも1つの置換基を有するヘテロアリール環であることがより好ましく、A11環、A21環、A31環、B11環、B21環、C11環、およびC31環それぞれが1つの置換基を有するアリール環または1つの置換基を有するヘテロアリール環であることがさらに好ましい。
このときの置換基としては、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールを有するアミノ)、置換もしくは無置換のジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換シリル、またはSFが好ましい。これらの基が置換基を有する場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、ジアリールアミノ、置換シリルが挙げられる。
式(ii−iii)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
1−2−1−1.第3成分:式(1)で表される単量体または式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物
式(i)で表される単量体化合物の好ましい1例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。第3成分としては、式(1)で表される構造を単位構造として複数有する多量体化合物も好ましい。
Figure 2021077890
式(1)において、
〜R11(以降、「R等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリル(以上、第1置換基)であり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つ(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、また、R〜R、R〜RおよびR〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオおよび置換シリルから選択される少なくとも1つ(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つ(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、
およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
ただし、XおよびXは、同時に>CRになることはなく、
式(1)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
等の「アリール」(第1置換基)は、単環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香族炭化水素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「アリール」は、例えば、炭素数6〜30のアリールであり、炭素数6〜20のアリールが好ましく、炭素数6〜16のアリールがより好ましく、炭素数6〜12のアリールがさらに好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。
具体的なアリールとしては、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル、縮合二環系であるナフチル、三環系であるテルフェニリル(m−テルフェニリル、o−テルフェニリル、p−テルフェニリル)、縮合三環系である、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、縮合四環系であるトリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、縮合五環系であるペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
等の「ヘテロアリール」(第1置換基)は、単環であっても、1以上の複素環と1以上の複素環または1以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の複素環が連結した連結環であってもよい。2以上の複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「ヘテロアリール」は、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールであり、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールは、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などである。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、フラザニル、オキサジアゾリル、チアントレニルなどが挙げられる。
等の「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、「アリールヘテロアリールアミノ」、「ヘテロアリールオキシ」、「アリールチオ」および「ヘテロアリールチオ」(第1置換基)中の「アリール」および「ヘテロアリール」としては、上述したアリールおよびヘテロアリールの説明をそれぞれ引用できる。
等の「アリールオキシ」(第1置換基)中の「アリール」としては、上述したアリールの説明を引用できる。
等の「ジアリールボリル」(第1置換基)中の「アリール」としては、上述したアリールの説明を引用できる。
等の「アルキル」(第1置換基)は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルである。炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)が特に好ましい。
具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。
等の「シクロアルキル」(第1置換基)は、1つの環からなるシクロアルキル、複数の環からなるシクロアルキル、環内で共役しない二重結合を含むシクロアルキルおよび環外に分岐を含むシクロアルキルのいずれでもよく、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルである。炭素数5〜10のシクロアルキルが好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキルがより好ましい。
具体的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、デカヒドロナフチル、アダマンチルなどが挙げられる。
等の「アルコキシ」(第1置換基)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えば、炭素数1〜24の直鎖または炭素数3〜24の分岐鎖のアルコキシである。炭素数1〜18のアルコキシ(炭素数3〜18の分岐鎖のアルコキシ)が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ(炭素数3〜12の分岐鎖のアルコキシ)がより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ(炭素数3〜6の分岐鎖のアルコキシ)がさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ(炭素数3〜4の分岐鎖のアルコキシ)が特に好ましい。
具体的なアルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシなどが挙げられる。
等の「置換シリル」としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、およびアリールからなる群より選択される3つの置換基で置換されたシリルが挙げられる。例えば、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、トリアリールシリル、ジアルキルアリールシリル、およびアルキルジアリールシリルが挙げられる。
「トリアルキルシリル」としては、シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してアルキルで置換された基があげられ、このアルキルは上述した第1の置換基における「アルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいアルキルは、炭素数1〜5のアルキルであり、具体的にはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−アミルなどが挙げられる。
具体的なトリアルキルシリルとしては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリi−プロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec−ブチルシリル、トリt−ブチルシリル、トリt−アミルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、i−プロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−アミルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、i−プロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec−ブチルジエチルシリル、t−ブチルジエチルシリル、t−アミルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec−ブチルジプロピルシリル、t−ブチルジプロピルシリル、t−アミルジプロピルシリル、メチルジi−プロピルシリル、エチルジi−プロピルシリル、ブチルジi−プロピルシリル、sec−ブチルジi−プロピルシリル、t−ブチルジi−プロピルシリル、t−アミルジi−プロピルシリルなどが挙げられる。
「トリシクロアルキルシリル」としては、シリルにおける3つの水素がそれぞれ独立してシクロアルキルで置換された基があげられ、このシクロアルキルは上述した第1の置換基における「シクロアルキル」として説明した基を引用することができる。置換するのに好ましいシクロアルキルは、炭素数5〜10のシクロアルキルであり、具体的にはシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.0.1]ペンチル、ビシクロ[1.2.1]ヘキシル、ビシクロ[3.0.1]ヘキシル、ビシクロ[2.1.2]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどが挙げられる。
具体的なトリシクロアルキルシリルとしては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどが挙げられる。
2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびシクロアルキルから選択される基が置換したシリルが挙げられる。
2つのアルキルと1つのアリールが置換したジアルキルアリールシリル、1つのアルキルと2つのアリールが置換したアルキルジアリールシリル、および3つのアリールが置換したトリアリールシリルの具体例としては、上述した具体的なアルキルおよびアリールから選択される基が置換したシリルが挙げられる。トリアリールシリルの具体例としては、特にトリフェニルシリルが挙げられる。
等(第1置換基)にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述した第1置換基としてのアリール、ヘテロアリールまたはアルキルの説明を引用できる。
具体的には、R等(第1置換基)の構造の立体障害性、電子供与性および電子吸引性により発光波長を調整することができ、好ましくは以下の式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t−ブチル、ビシクロオクチル、シクロヘキシル、アダマンチル、フェニル、o−トリル、p−トリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、ジフェニルボリル、ジメシチルボリル、ジベンゾオキサボリニル、フェニルジベンゾジボリニル、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリル、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t−ブチル、フェニル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、ジフェニルアミノ、ジ−p−トリルアミノ、ビス(p−(t−ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t−ブチル、o−トリル、2,6−キシリル、2,4,6−メシチル、3,6−ジメチルカルバゾリルおよび3,6−ジ−t−ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、「Me」はメチル、「tBu」はt−ブチル、「tAm」はt−アミル、「tOct」はt−オクチル、*は結合位置を表す。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
式(1)におけるR〜R、R〜RおよびR〜R11のうちの隣接する基同士は、互いに結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、式(1)で表される多環芳香族化合物は、a環、b環およびc環における置換基の相互の結合形態によって化合物を構成する環構造が変化する。例えば、a環のRとb環のR、b環のRとc環のR、c環のR11とa環のRなどは「隣接する基同士」には該当せず、これらが結合することはない。すなわち、「隣接する基」とは同一環上で隣接する基を意味する。
形成された「アリール環」または「ヘテロアリール環」は、上述した第1置換基としてのアリールまたはヘテロアリールの、無価の環である。ただし、形成された環の炭素数は縮合前の環の炭素数を含む。
形成されたアリール環またはヘテロアリール環に置換する、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述したR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
式(1)におけるXおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、または>CRであり、>Oまたは>N−Rであることが好ましい。式(1)におけるXおよびXは、いずれも>N−Rであることがより好ましい。
>N−RのRおよび>CRのRであるアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキル(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述したR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルの説明を引用できる。
式(1)で表される化合物は、下記部分構造を含む化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
1−2−1−2.第3成分:式(2)または式(2−3)で表される化合物
式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物である式(ii)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。下記式(2)で表される化合物は式(1)で表される構造を単位構造として複数有する2量体に該当する。
Figure 2021077890
式(2)において、
およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、
〜R14は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、また、R〜RおよびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合してb環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRのRは、−O−、−S−、−C(−R)−または単結合により前記a環、b環、c環およびd環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、前記−C(−R)−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
ただし、X、X、X、およびXは、同時に>CRになることはなく、
式(2)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(2)のR〜R14における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述した式(1)のR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキルアルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
式(2)におけるX、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−RのRは、それぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数1〜6のアルキルである。ここでのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルとしては、上述したR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルの説明を引用できる。
式(2)で表される化合物においては、高いTADF性の観点から、R13およびR14が上述のいずれかの置換基であることが好ましい。R13およびR14は、置換基を有してもよいジフェニルアミノまたは置換基を有してもよいN−カルバゾリルであることがより好ましく、置換基を有してもよいジフェニルアミノであることがさらに好ましい。置換基を有してもよいジフェニルアミノとしては、無置換のジフェニルアミノまたは少なくとも一つの炭素数1〜4のアルキルを有するジフェニルアミノであることが好ましく、無置換のジフェニルアミノまたはNに対してm位またはo位に少なくとも一つメチルを有するジフェニルアミノがより好ましい。合成の容易さおよび発光波長の観点から、R〜R12は、水素または炭素数1〜6のアルキルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(2)で表される化合物は下記部分構造を含む化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物である式(ii−iii)で表される化合物は、下記式(2−3)で表される化合物であることが好ましい。下記式(2−3)で表される化合物は式(1)で表される構造を単位構造として複数有する3量体に該当する。
Figure 2021077890
上記式(2−3)中、Ra11、Ra12、Ra13、Ra21、Ra22、Ra23、Ra31、Ra32、Ra33、Rb11、Rb12、Rb21、Rb22、Rb23、Rb24、Rc11、Rc12、Rc31、Rc32、Rc33、Rc34はそれぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに単結合または連結基で結合していてもよい。)、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、または置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、Ra11、Ra12、Ra13のうちの隣接する基同士が結合してa11環と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、Ra21、Ra22、Ra23のうちの隣接する基同士が結合してa21環と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、Ra31、Ra32、Ra33のうちの隣接する基同士が結合してa31環と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、Rb21、Rb22、Rb23、Rb24のうちの隣接する基同士が結合してb21環と共に、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、および/またはRc31、Rc32、Rc33、Rc34のうちの隣接する基同士が結合してc31環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。形成されたアリール環またはヘテロアリール環はいずれも少なくとも1つの水素がアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ(2つのアリールは互いに単結合または連結基で結合していてもよい。)、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、またはアリールオキシで置換されていてもよい。また、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。X11、X12、X21、X22、X31、X32は、それぞれ独立して、>Oまたは>N−R上記>N−RのRは、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数3〜14のシクロアルキルであり、当該アリールまたはヘテロアリールは炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数3〜14のシクロアルキルで置換されていてもよく、また、上記>N−RのRは、−O−、−S−、−C(−R)−、−Si(−R)−、または単結合によりa11環、a21環、a31環、b11環、b21環、c11環、および/またはc31環と結合していてもよい。式(2−3)で表される化合物における少なくとも1つの水素は、重水素、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
式(2)または式(2−3)で表される化合物の具体的な例は後述する。
1−2−1−3.第3成分:式(4)で表される化合物
式(i)で表される単量体化合物の他の好ましい1例として、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
式(4)において、
〜R14(以降、「R等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、また、R〜R、R〜R、R〜R10およびR11〜R14のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環、c環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシおよびアリールオキシから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
Xは、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−Rおよび>CRのRはアリール、ヘテロアリールまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
Lは、単結合、>CR、>O、>Sまたは>N−Rであり、前記>CRおよび>N−RにおけるRは、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
ただし、XおよびLは、同時に>CRになることはなく、
式(4)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(4)における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述した式(1)におけるR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
式(4)においては、Xが>Oまたは>N−Rであることが好ましく、>N−Rであることがより好ましい。
式(4)におけるLは、単結合、>CR、>O、>Sまたは>N−Rであり、単結合、>Oまたは>N−Rが好ましく、単結合がより好ましい。
式(4)においては、Xが>Oまたは>N−Rであり、かつLが単結合であることがさらに好ましく、Xが>N−Rであり、かつLが単結合であることが特に好ましい。
>CRおよび>N−RのRであるアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述した式(1)におけるR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
式(4)で表される化合物は下記部分構造を含む化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
式(4)で表される化合物の具体的な例は後述する。
1−2−1−4.第3成分:式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物の具体例
下記式において、Meはメチルを表し、tBuはt−ブチルを表し、Phはフェニルを表す。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
以下に、式(2)または式(2−3)で表される化合物の具体的な構造を示す。下記式において、Meはメチルを表し、tBuはt−ブチルを表し、Phはフェニルを表す。
Figure 2021077890
上記7つの構造におけるRは、以下のいずれかの基である。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
以下に、式(4)で表される化合物の具体的な構造を示す。下記式において、Meはメチルを表し、tBuはt−ブチルを表す。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
1−2−2. 第3成分:式(iii)で表される化合物
Figure 2021077890
式(iii)において、
A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
、XおよびXは、それぞれ独立して、O、N−R、>CR、SまたはSeであり、前記N−RのRおよび>CRのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
式(iii)で表される化合物における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
式(iii)で表される化合物における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(iii)で表される化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2021077890
式(3)において、
、R、R、R、R、R、R、R10およびR11(以降、「R等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、また、R〜R、R〜RおよびR〜R11のうちの隣接する基同士が結合してそれぞれa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシおよびアリールオキシから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、または>CRであり、前記>N−RのRおよび>CRのRはそれぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
ただし、X、X、およびXは、同時に>CRになることはなく、
式(3)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(3)における、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)、また、当該第1置換基にさらに置換するアリール、ヘテロアリールまたはアルキル(以上、第2置換基)としては、上述した式(1)におけるR等(第1置換基)としてのアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシの説明を引用できる。
以下に、式(3)の具体的な構造を示す。
Figure 2021077890
本発明の第3成分は、高い蛍光量子収率(PLQY)の観点からは、式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物が好ましく、式(ii)で表される化合物がより好ましい。より具体的には、ホウ素原子を含む共役構造の平面性が高いことが好ましく、式(1)で表される単量体もしくは式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物(または式(4)で表される化合物が好ましく、式(2)または式(4)で表される化合物がより好ましい。また、小さなΔES1T1の観点からは、式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物が好ましく、式(ii)で表される化合物がより好ましい。より具体的には、X、X、X、XおよびXが>N−Rであることが好ましく、式(1)で表される単量体もしくは式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(4)で表される化合物が好ましく、式(1)で表される単量体である化合物または式(4)で表される化合物がより好ましい。また、大きなSOC(Spin Orbit Coupling;スピン軌道結合)の観点からは、式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物が好ましい。より具体的には、ホウ素原子を含む共役構造が完全な平面ではなく歪んでいることが好ましく、式(1)で表される単量体もしくは式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(4)で表される化合物が好ましく、式(1)で表される単量体である化合物または式(4)で表される化合物がより好ましく、式(1)で表される単量体である化合物がさらに好ましい。
1−3.高分子化合物
本発明の有機電界発光素子の発光層に含まれる第1成分、第2成分、第3成分は、高分子化合物であってもよい。
すなわち、例えば、第1成分は式(HH−1)で表される部分構造を有する高分子化合物であってもよく、上記で例示したHH−1−1〜HH1−108のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物であってもよい。また、第2成分は式(EH−1)で表される部分構造を有する高分子化合物であってもよく、上記で例示したEH−1−1〜EH−1−90のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物であってもよい。さらに、例えば、第3成分は、式(i)で表される単量体もしくは式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物であってもよい。
いずれの場合も、脱離する2個の水素原子は、化合物中の任意の2原子とすることができる。同一の環構造に結合している2個の水素原子であってもよいし、それ以外であってもよい。
発光層に含まれる第1成分、第2成分、および第3成分のいずれか1つが高分子化合物であってもよく、いずれか2つ(第1成分および第2成分、第2成分および第3成分、または第1成分および第3成分)が高分子化合物であってもよく、いずれも高分子化合物であってもよい。
発光層に含まれる高分子化合物に含まれる、繰り返し単位は2種以上であってもよい。
例えば、1つの高分子化合物が第1成分、第2成分、および第3成分のいずれか2つ(第1成分および第2成分、第2成分および第3成分、または第1成分および第3成分)に該当していてもよく、第1成分、第2成分、および第3成分のいずれにも該当していてもよい。すなわち、例えば、本発明の有機電界発光素子の発光層は、
HH−1−1〜HH1−108のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第1成分)、およびEH−1−1〜EH−1−90のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第2成分)の双方を繰り返し単位として有している高分子化合物;
EH−1−1〜EH−1−90のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第2成分)、および式(i)で表される単量体もしくは式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の水素原子2個が脱離した構造(第3成分)の双方を繰り返し単位として有している高分子化合物:
HH−1−1〜HH1−108のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第1成分)、および式(i)で表される単量体もしくは式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の水素原子2個が脱離した構造(第3成分)の双方を繰り返し単位として有している高分子化合物;
HH−1−1〜HH1−108のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第1成分)、EH−1−1〜EH−1−90のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造(第2成分)、および式(i)で表される単量体もしくは式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の水素原子2個が脱離した構造(第3成分)を繰り返し単位として有している高分子化合物等を含んでいてもよい。
高分子化合物は、上記の繰り返し単位の他に、これらとは異なるその他の繰り返し単位を1種以上含んでいてもよい。そのようなその他の繰り返し単位として、正孔輸送性を示す構造を含む繰り返し単位、電子輸送性を示す構造を含む繰り返し単位、正孔輸送性や電子輸送性を示さない繰り返し単位などを適宜選択して採用することができる。好ましい繰り返し単位として、アリーレン、ヘテロアリーレン、2種以上のアリーレンが結合した基、2種以上のヘテロアリーレンが結合した基、少なくとも1種のアリーレンと少なくとも1種のヘテロアリーレンが結合した基、少なくとも1種のアリーレンと少なくとも1種の−N(R)−で表される基が結合した基、少なくとも1種のヘテロアリーレンと少なくとも1種の−N(R)−で表される基が結合した基、少なくとも1種のアリーレンと少なくとも1種のヘテロアリーレンと少なくとも1種の−N(R)−で表される基が結合した基を例示することができる。ここでいうアリーレン、ヘテロアリーレンは置換されていてもよく、その置換基としては炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜22のアリール、環骨格構成原子数5〜22のヘテロアリールを例示することができる。またRとして、炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜22のアリール、環骨格構成原子数5〜22のヘテロアリールを例示することができる。繰り返し単位の具体例として、以下の構造をあげることができる。以下の構造中*は結合位置を示す。下記の構造に存在する水素原子は、炭素数1〜30のアルキル、炭素数6〜22のアリール、環骨格構成原子数5〜22のヘテロアリール等で置換されていてもよい。
Figure 2021077890
発光層に含まれる高分子化合物を構成する各繰り返し単位のモル比は特に制限されない。例えば、第1成分であるHH−1−1〜HH1−108のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物、第2成分であるEH−1−1〜EH−1−132のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物、および第3成分である式(i)で表される単量体もしくは式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物において、その他の繰り返し単位が含まれるとき、その他の繰り返し単位のモル比は0.00〜99.99モル%の範囲内で選択することができる。
高分子化合物は、公知の重合反応により合成することができる。例えば、公知のカップリング反応を用いて合成することが可能である。すなわち、高分子化合物を構成する第1の繰り返し単位の両末端に塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−O−S(=O)等の反応性基を結合させた化合物と、第2の繰り返し単位の両末端に第1の繰り返し単位の両末端の反応性基とカップリング反応を起こす官能基を結合させた化合物とを反応させることにより、容易に目的とする高分子化合物を合成することができる。ここでRは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリール等である。第1の繰り返し単位の両末端の反応性基とカップリング反応を起こす官能基としては、−B(OR、BF、MgR、ZnR、Sn(Rを例示することができる。ここでRおよびRは、水素原子、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル等であり、2つ以上RまたはRは互いに連結して環状構造を形成してもよい。Rは、Li、Na、K、Rb、Cs等である。RおよびRは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
カップリング反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリス−o−メトキシフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(1,4−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムを用いることができる。カップリング反応を−100〜200℃にて1〜24時間程度行うことにより、目的とする高分子化合物を合成することができる。
2.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することを司る層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環もしくは複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などが挙げられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などが挙げられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などが挙げられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
2−1−1.ボラン誘導体
ボラン誘導体は、例えば下記式(ETM−1)で表される化合物であり、詳細には特開2007−27587号公報に開示されている。
Figure 2021077890
式(ETM−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどが挙げられる。
式(ETM−1)で表される化合物の中でも、下記式(ETM−1−1)で表される化合物や下記式(ETM−1−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2021077890
式(ETM−1−1)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどが挙げられる。
Figure 2021077890
式(ETM−1−2)中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも1つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどが挙げられる。
の具体的な例としては、下記式(X−1)〜式(X−9)のいずれかで表される2価の基が挙げられる。
Figure 2021077890
(各式中、Rは、それぞれ独立してアルキル、シクロアルキルまたは置換されていてもよいフェニル基であり、*は結合位置を表す。)
このボラン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このボラン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−2.ピリジン誘導体
ピリジン誘導体は、例えば下記式(ETM−2)で表される化合物であり、好ましくは式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)で表される化合物である。
Figure 2021077890
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
式(ETM−2−1)において、R11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。
式(ETM−2−2)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、R11およびR12は結合して環を形成していてもよい。
各式において、「ピリジン系置換基」は、下記式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であり、ピリジン系置換基はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキルで置換されていてもよい。また、ピリジン系置換基はフェニレン基やナフチレン基を介して各式におけるφ、アントラセン環またはフルオレン環に結合していてもよい。
Figure 2021077890
ピリジン系置換基は、式(Py−1)〜式(Py−15)のいずれかであるが、これらの中でも、下記式(Py−21)〜式(Py−44)のいずれか(式中の*は、結合位置を表す。)であることが好ましい。
Figure 2021077890
各ピリジン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよく、また、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における2つの「ピリジン系置換基」のうちの一方はアリールで置き換えられていてもよい。
11〜R18における「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24分岐鎖アルキルが挙げられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。
具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、2,6−ジメチル−4−ヘプチル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、1−メチルデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、1−ヘキシルヘプチル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−エイコシルなどが挙げられる。
ピリジン系置換基に置換する炭素数1〜4のアルキルとしては、上記アルキルの説明を引用することができる。
11〜R18における「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルが挙げられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。
具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
11〜R18における「アリール」は、単環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香族炭化水素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的なアリールとしては、例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールであるビフェニリル(2−ビフェニリル,3−ビフェニリル,4−ビフェニリル)、縮合二環系アリールであるナフチル(1−ナフチル,2−ナフチル)、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレニル(アセナフチレン−1−イル,アセナフチレン−3−イル,アセナフチレン−4−イル,アセナフチレン−5−イル)、フルオレニル(フルオレン−1−イル,フルオレン−2−イル,フルオレン−3−イル,フルオレン−4−イル,フルオレン−9−イル)、フェナレニル(フェナレン−1−イル,フェナレン−2−イル)、フェナントリル(1−フェナントリル,2−フェナントリル,3−フェナントリル,4−フェナントリル,9−フェナントリル)、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン(トリフェニレン−1−イル,トリフェニレン−2−イル)、ピレニル(ピレン−1−イル,ピレン−2−イル,ピレン−4−イル)、ナフタセニル(ナフタセン−1−イル,ナフタセン−2−イル,ナフタセン−5−イル)、縮合五環系アリールであるペリレニル(ペリレン−1−イル,ペリレン−2−イル,ペリレン−3−イル)、ペンタセニル(ペンタセン−1−イル,ペンタセン−2−イル,ペンタセン−5−イル,ペンタセン−6−イル)などが挙げられる。
好ましい「炭素数6〜30のアリール」は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、クリセニルまたはトリフェニレニルなどが挙げられ、さらに好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはフェナントリルが挙げられ、特に好ましくはフェニル、1−ナフチルまたは2−ナフチルが挙げられる。
式(ETM−2−2)におけるR11およびR12は結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このピリジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このピリジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−3.フルオランテン誘導体
フルオランテン誘導体は、例えば下記式(ETM−3)で表される化合物であり、詳細には国際公開第2010/134352号に開示されている。
Figure 2021077890
式(ETM−3)中、X12〜X21は水素、ハロゲン、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル、直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールを表す。ここで、置換されている場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルなどが挙げられる。
このフルオランテン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
2−1−4.BO系誘導体
BO系誘導体は、例えば下記式(ETM−4)で表される多環芳香族化合物、または下記式(ETM−4)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体である。
Figure 2021077890
61〜R71は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、R61〜R71のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
また、式(ETM−4)で表される化合物または構造における少なくとも1つの水素がハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(ETM−4)における置換基や環形成の形態の説明については、式(1)または式(2)で表される多環芳香族化合物の説明を引用することができる。
このBO系誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このBO系誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−5.アントラセン誘導体
アントラセン誘導体は、例えば下記式(ETM−5)で表される化合物である。
Figure 2021077890
Arは、それぞれ独立して、単結合、2価のベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、またはフェナレンである。
Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、単環系アリールであるフェニル、(o−,m−,p−)トリル、(2,3−,2,4−,2,5−,2,6−,3,4−,3,5−)キシリル、メシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)、(o−,m−,p−)クメニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アントラセン−(1−,2−,9−)イル、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、テトラセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イルなどが挙げられる。「炭素数6〜10のアリール」の具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどが挙げられる。
〜Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3から6のシクロアルキルまたは炭素数6〜20のアリールである。
〜Rにおける炭素数1〜6のアルキルについては直鎖および分岐鎖のいずれでもよい。すなわち、炭素数1〜6の直鎖アルキルまたは炭素数3〜6の分岐鎖アルキルである。より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、または2−エチルブチルなどがあげられ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルが好ましく、メチル、エチル、またはt−ブチルがより好ましい。
〜Rにおける炭素数3〜6のシクロアルキルの具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
〜Rにおける炭素数6〜20のアリールについては、炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。「炭素数6〜20のアリール」の具体例としては、Arにおける「炭素数6〜20のアリール」の具体例を引用することができる。好ましい「炭素数6〜20のアリール」は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリルまたはナフチルであり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはm−テルフェニル−5’−イルであり、さらに好ましくは、フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルまたは2−ナフチルであり、最も好ましくはフェニルである。
これらのアントラセン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
これらのアントラセン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−6.ベンゾフルオレン誘導体
ベンゾフルオレン誘導体は、例えば下記式(ETM−6)で表される化合物である。
Figure 2021077890
Arは、それぞれ独立して、炭素数6〜20のアリールであり、式(ETM−5−1)における「炭素数6〜20のアリール」と同じ説明を引用することができる。炭素数6〜16のアリールが好ましく、炭素数6〜12のアリールがより好ましく、炭素数6〜10のアリールが特に好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、テルフェニリル、アントラセニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニルなどが挙げられる。
Arは、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)であり、2つのArは結合して環を形成していてもよい。
Arにおける「アルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜24の直鎖アルキルまたは炭素数3〜24の分岐鎖アルキルが挙げられる。好ましい「アルキル」は、炭素数1〜18のアルキル(炭素数3〜18の分岐鎖アルキル)である。より好ましい「アルキル」は、炭素数1〜12のアルキル(炭素数3〜12の分岐鎖アルキル)である。さらに好ましい「アルキル」は、炭素数1〜6のアルキル(炭素数3〜6の分岐鎖アルキル)である。特に好ましい「アルキル」は、炭素数1〜4のアルキル(炭素数3〜4の分岐鎖アルキル)である。具体的な「アルキル」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシルなどが挙げられる。
Arにおける「シクロアルキル」としては、例えば、炭素数3〜12のシクロアルキルが挙げられる。好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜10のシクロアルキルである。より好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜8のシクロアルキルである。さらに好ましい「シクロアルキル」は、炭素数3〜6のシクロアルキルである。具体的な「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチルまたはジメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
Arにおける「アリール」としては、好ましいアリールは炭素数6〜30のアリールであり、より好ましいアリールは炭素数6〜18のアリールであり、さらに好ましくは炭素数6〜14のアリールであり、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「炭素数6〜30のアリール」としては、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
2つのArは結合して環を形成していてもよく、この結果、フルオレン骨格の5員環には、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、フルオレンまたはインデンなどがスピロ結合していてもよい。
このベンゾフルオレン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このベンゾフルオレン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−7.ホスフィンオキサイド誘導体
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2013/079217号および国際公開第2013/079678号にも記載されている。
Figure 2021077890
は、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
は、CN、置換または無置換の、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のヘテロアルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数5〜20のヘテロアリール、炭素数1〜20のアルコキシまたは炭素数6〜20のアリールオキシであり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または無置換の、炭素数6〜20のアリールまたは炭素数5〜20のヘテロアリールであり、
は酸素または硫黄であり、
jは0または1であり、kは0または1であり、rは0〜4の整数であり、qは1〜3の整数である。
ホスフィンオキサイド誘導体は、例えば下記式(ETM−7−2)で表される化合物でもよい。
Figure 2021077890
〜Rは、同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールエーテル(アリールエーテル基)、アリールチオエーテル(アリールチオエーテル基)、アリール、複素環基、ハロゲン、シアノ、ホルミル、カルボニル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、シリル、および隣接置換基との間に形成される縮合環の中から選ばれる。
Arは、同じでも異なっていてもよく、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり、Arは、同じでも異なっていてもよく、アリールまたはヘテロアリールである。ただし、ArおよびArのうち少なくとも一方は置換基を有しているか、または隣接置換基との間に縮合環を形成している。nは0〜3の整数であり、nが0のとき不飽和構造部分は存在せず、nが3のときR1は存在しない。
これらの置換基の内、アルキルとは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。置換されている場合の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル、アリール、複素環基などを挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキルの炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常、1〜20の範囲である。
また、シクロアルキルとは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキル部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。
また、アラルキルとは、例えば、ベンジル、フェニルエチルなどの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素はいずれも無置換でも置換されていてもかまわない。脂肪族部分の炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルケニルとは、例えば、ビニル、アリル、ブタジエニルなどの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルケニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、シクロアルケニルとは、例えば、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニルなどの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。
また、アルキニルとは、例えば、アセチレニルなどの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。アルキニルの炭素数は特に限定されないが、通常、2〜20の範囲である。
また、アルコキシとは、例えば、メトキシなどのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示し、脂肪族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アルコキシの炭素数は特に限定されないが、通常、1〜20の範囲である。
また、アルキルチオとは、アルコキシのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールエーテルとは、例えば、フェノキシなどのエーテル結合を介した芳香族炭化水素基を示し、芳香族炭化水素基は無置換でも置換されていてもかまわない。アリールエーテルの炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、アリールチオエーテルとは、アリールエーテルのエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換された基である。
また、アリールとは、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニリル、フェナントリル、テルフェニリル、ピレニルなどの芳香族炭化水素基を示す。アリールは、無置換でも置換されていてもかまわない。アリールの炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
また、複素環基とは、例えば、フラニル、チエニル、オキサゾリル、ピリジル、キノリニル、カルバゾリルなどの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
ホルミル、カルボニル、アミノには、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環などで置換された基も含むことができる。
また、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環は無置換でも置換されていてもかまわない。
シリルとは、例えば、トリメチルシリルなどのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリルの炭素数は特に限定されないが、通常、3〜20の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1〜6である。
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、例えば、ArとR、ArとR、ArとR、ArとR、RとR、ArとArなどの間で形成された共役または非共役の縮合環である。ここで、nが1の場合、2つのR同士で共役または非共役の縮合環を形成してもよい。これら縮合環は、環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
このホスフィンオキサイド誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このホスフィンオキサイド誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−8.ピリミジン誘導体
ピリミジン誘導体は、例えば下記式(ETM−8)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−8−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2011/021689号にも記載されている。
Figure 2021077890
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」は、単環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香族炭化水素環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香族炭化水素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的なアリールとしては、例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールであるビフェニリル(2−ビフェニリル,3−ビフェニリル,4−ビフェニリル)、縮合二環系アリールであるナフチル(1−ナフチル,2−ナフチル)、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレニル(アセナフチレン−1−イル,アセナフチレン−3−イル,アセナフチレン−4−イル,アセナフチレン−5−イル)、フルオレニル(フルオレン−1−イル,フルオレン−2−イル,フルオレン−3−イル,フルオレン−4−イル,フルオレン−9−イル)、フェナレニル(フェナレン−1−イル,フェナレン−2−イル)、フェナントリル(1−フェナントリル,2−フェナントリル,3−フェナントリル,4−フェナントリル,9−フェナントリル)、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン(トリフェニレン−1−イル,トリフェニレン−2−イル)、ピレニル(ピレン−1−イル,ピレン−2−イル,ピレン−4−イル)、ナフタセニル(ナフタセン−1−イル,ナフタセン−2−イル,ナフタセン−5−イル)、縮合五環系アリールであるペリレニル(ペリレン−1−イル,ペリレン−2−イル,ペリレン−3−イル)、ペンタセニル(ペンタセン−1−イル,ペンタセン−2−イル,ペンタセン−5−イル,ペンタセン−6−イル)などが挙げられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」は、単環であっても、1以上の複素環と1以上の複素環または1以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の複素環が連結した連結環であってもよい。2以上の複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このピリミジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このピリミジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−9.アリールニトリル誘導体
アリールニトリル誘導体は、例えば下記式(ETM−9)で表される化合物、またはそれが単結合などで複数結合した多量体である。詳細は米国出願公開第2014/0197386号明細書に記載されている。
Figure 2021077890
Arniは、速い電子輸送性の観点からは炭素数が多いことが好ましく、高いT1の観点からは炭素数が少ないことが好ましい。Arniは、具体的には、発光層に隣接する層に用いるには高いT1であることが好ましく、炭素数6〜20のアリールであり、好ましくは炭素数6〜14のアリール、より好ましくは炭素数6〜10のアリールである。また、ニトリル基の置換個数nは、高いT1の観点からは多いことが好ましく、高いS1の観点からは少ないことが好ましい。ニトリル基の置換個数nは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2の整数であり、さらに好ましくは1である。
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。高いS1および高いT1の観点からドナー性のヘテロアリールであることが好ましく、電子輸送層として用いるためドナー性のヘテロアリールは少ないことが好ましい。電荷輸送性の観点からは炭素数の多いアリールまたはヘテロアリールが好ましく、置換基を多く有することが好ましい。Arの置換個数mは、具体的には、1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1〜2である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールがあげられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的な「アリール」としては、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールである(2−,3−,4−)ビフェニリル、縮合二環系アリールである(1−,2−)ナフチル、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル、フェナレン−(1−,2−)イル、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン−(1−,2−)イル、ピレン−(1−,2−,4−)イル、ナフタセン−(1−,2−,5−)イル、縮合五環系アリールであるペリレン−(1−,2−,3−)イル、ペンタセン−(1−,2−,5−,6−)イルなどが挙げられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールがあげられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
アリールニトリル誘導体は、式(ETM−9)で表される化合物が単結合などで複数結合した多量体であってもよい。この場合、単結合以外に、アリール環(好ましくは多価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)で結合されていてもよい。
このアリールニトリル誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このアリールニトリル誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−10.トリアジン誘導体
トリアジン誘導体は、例えば下記式(ETM−10)で表される化合物であり、好ましくは下記式(ETM−10−1)で表される化合物である。詳細は米国特許出願公開第2011/0156013号明細書に記載されている。
Figure 2021077890
Arは、それぞれ独立して、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。nは1〜4の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは2または3である。
「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、炭素数6〜30のアリールが挙げられ、好ましくは炭素数6〜24のアリール、より好ましくは炭素数6〜20のアリール、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールである。
具体的なアリールとしては、例えば、単環系アリールであるフェニル、二環系アリールであるビフェニリル(2−ビフェニリル,3−ビフェニリル,4−ビフェニリル)、縮合二環系アリールであるナフチル(1−ナフチル,2−ナフチル)、三環系アリールであるテルフェニリル(m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル)、縮合三環系アリールである、アセナフチレニル(アセナフチレン−1−イル,アセナフチレン−3−イル,アセナフチレン−4−イル,アセナフチレン−5−イル)、フルオレニル(フルオレン−1−イル,フルオレン−2−イル,フルオレン−3−イル,フルオレン−4−イル,フルオレン−9−イル)、フェナレニル(フェナレン−1−イル,フェナレン−2−イル)、フェナントリル(1−フェナントリル,2−フェナントリル,3−フェナントリル,4−フェナントリル,9−フェナントリル)、四環系アリールであるクアテルフェニリル(5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニリル)、縮合四環系アリールであるトリフェニレン(トリフェニレン−1−イル,トリフェニレン−2−イル)、ピレニル(ピレン−1−イル,ピレン−2−イル,ピレン−4−イル)、ナフタセニル(ナフタセン−1−イル,ナフタセン−2−イル,ナフタセン−5−イル)、縮合五環系アリールであるペリレニル(ペリレン−1−イル,ペリレン−2−イル,ペリレン−3−イル)、ペンタセニル(ペンタセン−1−イル,ペンタセン−2−イル,ペンタセン−5−イル,ペンタセン−6−イル)などが挙げられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」は、単環であっても、1以上の複素環と1以上の複素環または1以上の芳香族炭化水素環が縮合した縮合環であっても、2以上の複素環が連結した連結環であってもよい。2以上の複素環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分岐状に連結したものであってもよい。「ヘテロアリール」としては、例えば、炭素数2〜30のヘテロアリールが挙げられ、炭素数2〜25のヘテロアリールが好ましく、炭素数2〜20のヘテロアリールがより好ましく、炭素数2〜15のヘテロアリールがさらに好ましく、炭素数2〜10のヘテロアリールが特に好ましい。また、ヘテロアリールとしては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などが挙げられる。
具体的なヘテロアリールとしては、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニルなどが挙げられる。
また、上記アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、それぞれ例えば上記アリールやヘテロアリールで置換されていてもよい。
このトリアジン誘導体の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
Figure 2021077890
このトリアジン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−11.ベンゾイミダゾール誘導体
ベンゾイミダゾール誘導体は、例えば下記式(ETM−11)で表される化合物である。
Figure 2021077890
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数であり、「ベンゾイミダゾール系置換基」は、式(ETM−2)、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)における「ピリジン系置換基」の中のピリジルがベンゾイミダゾリルに置き換わった置換基であり、ベンゾイミダゾール誘導体における少なくとも1つの水素は重水素で置換されていてもよい。
Figure 2021077890
上記ベンゾイミダゾリルにおけるR11は、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数6〜30のアリールであり、式(ETM−2−1)および式(ETM−2−2)におけるR11の説明を引用することができる。
φは、さらに、アントラセン環またはフルオレン環であることが好ましく、この場合の構造は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができ、各式中のR11〜R18は式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)での説明を引用することができる。また、式(ETM−2−1)または式(ETM−2−2)では2つのピリジン系置換基が結合した形態で説明されているが、これらをベンゾイミダゾール系置換基に置き換えるときには、両方のピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えてもよいし(すなわちn=2)、いずれか1つのピリジン系置換基をベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて他方のピリジン系置換基をR11〜R18で置き換えてもよい(すなわちn=1)。さらに、例えば式(ETM−2−1)におけるR11〜R18の少なくとも1つをベンゾイミダゾール系置換基で置き換えて「ピリジン系置換基」をR11〜R18で置き換えてもよい。
このベンゾイミダゾール誘導体の具体例としては、例えば1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールなどが挙げられる。
Figure 2021077890
このベンゾイミダゾール誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−12.フェナントロリン誘導体
フェナントロリン誘導体は、例えば下記式(ETM−12)または式(ETM−12−1)で表される化合物である。詳細は国際公開第2006/021982号に記載されている。
Figure 2021077890
φは、n価のアリール環(好ましくはn価のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環またはトリフェニレン環)であり、nは1〜4の整数である。
各式のR11〜R18は、それぞれ独立して、水素、アルキル(好ましくは炭素数1〜24のアルキル)、シクロアルキル(好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル)またはアリール(好ましくは炭素数6〜30のアリール)である。また、式(ETM−12−1)においてはR11〜R18のいずれかがアリール環であるφとの結合手となる。
各フェナントロリン誘導体における少なくとも1つの水素が重水素で置換されていてもよい。
11〜R18におけるアルキル、シクロアルキルおよびアリールとしては、式(ETM−2)におけるR11〜R18の説明を引用することができる。また、φは上記した例のほかに、例えば、以下の構造式が挙げられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルであり、*は、結合位置を表す。
Figure 2021077890
このフェナントロリン誘導体の具体例としては、例えば4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオロ−ビス(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロインや1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどが挙げられる。
Figure 2021077890
このフェナントロリン誘導体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−1−13.キノリノール系金属錯体
キノリノール系金属錯体は、例えば下記式(ETM−13)で表される化合物である。
Figure 2021077890
式中、R〜Rは水素または置換基であり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどが挙げられる。
このキノリノール系金属錯体は公知の原料と公知の合成方法を用いて製造することができる。
2−2.還元性物質
電子輸送層または電子注入層は、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
3.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の物質を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率を上げて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
4.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たすものである。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機電界発光素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N4’−ジフェニル−N,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N,N4’,N4’−テトラ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、あるいは、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニンZnPcなど)が知られている(特開2005-167175号公報)。
また、湿式成膜法を用いて正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、上記に記載の蒸着に用いられる正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料に加えて、正孔注入性および正孔輸送性の高分子、正孔注入性および正孔輸送性の架橋性高分子、正孔注入性および正孔輸送性の高分子前駆体、および、重合開始剤などを用いることができる。例えば、PEDOT:PSS、ポリアニリン化合物(特開2005−108828号公報、国際公開第2010/058776号、国際公開第2013/042623号等に記載)、フルオレンポリマー(特開2011−251984号公報、特開2011−501449号公報、特開2012−533661号公報等に記載)、「Xiaohui Yang, David C. Muller, Dieter Neher, Klaus Meerholz,Organic Electronics,12,2253-2257 (2011)」、「Philipp Zacharias, Malte C. Gather, Markus Rojahn, Oskar Nuyken, Klaus Meerholz, Angew. Chem. Int. Ed.,46,4388-4392 (2007)」、「Chei-Yen, Yu-Cheng Lin, Wen-Yi Hung, Ken-Tsung Wong, Raymond C. Kwong, Sean C. Xia, Yu-Hung Chen, Chih-I Wu, J.Mater.Chem., 19,3618-3626(2009)」、「Fei Huang, Yen-Ju Cheng, Yong Zhang, Michelle S. Liu, Alex K.-Y. Jen, J.Mater.Chem., 18,4495-4509(2008)」「Carlos A. Zuniga, Jassem Abdallah, Wojciech Haske, Yadong Zhang, Igor Coropceanu, Stephen Barlow, Bernard Kippelen, Seth R. Marder, Adv.Mater., 25,1739-1744(2013)」、「Wen-Yi Hung, Chi-Yen Lin, Tsang-Lung Cheng, Shih-Wei Yang, Atul Chaskar, Gang-Lun Fan, Ken-Tsung Wong, Teng-Chih Chao, Mei-Rurng Tseng, Organic Electronics,13,2508-2515 (2012)」等に記載の化合物が挙げられる。
5.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たすものである。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物が挙げられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどが挙げられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。その他、有機電界発光素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
有機電界発光素子における陽極にはバンク(隔壁材料)を有していてもよい。湿式成膜法により有機電界発光素子を形成する場合、バンク内に各層形成用組成物または発光層形成用組成物を滴下し乾燥させることで任意の層を得ることができる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、無機系材料、および有機系材料を用いることができ、無機系材料としては例えば、SiNx、SiOxおよびその混合物、有機系材料としては、例えば、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、スパッタリング法、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。また、バンクは多層構造を有していてもよく、異なる種類の材料が用いられていてもよい。
バンクに用いられる有機系材料としては、多糖類およびその誘導体、ヒドロキシルを有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体、生体高分子化合物、ポリアクリロイル化合物、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(ABS)、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム、ポリフルオロビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ化ポリマー、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマー、が挙げられるが、それだけに限定されない。
以下にバンクのフォトリソグラフィ技術での有機系材料を用いた形成方法の例を示す。電極が形成された素子基板に、発光層形成用組成物などの機能層形成用組成物に対して撥液性を示す材料を塗布し、乾燥することにより、樹脂層を形成する。この樹脂層に対して露光用マスクを用いて露光工程および現像工程を行うことにより、電極が形成された素子基板上にバンクが形成できる。この後、必要であれば、機能層形成用組成物をムラなく広げるため、バンクの表面の不純物を取り除くための、溶媒による洗浄・乾燥工程や紫外線処理等の工程を行ってもよい。
6.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機電界発光素子100の支持体となるものであり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
7.有機電界発光素子の作製方法
有機電界発光素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、蒸着用ルツボの加熱温度+50〜+400℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機電界発光素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト化合物、熱活性型遅延蛍光体およびホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含む発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機電界発光素子の作製法について説明する。
7−1.蒸着法
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上に、ホスト化合物およびホウ素原子を有する多環芳香族化合物を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機電界発光素子が得られる。なお、上述の有機電界発光素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
蒸着法で発光層を形成する際には、第3成分として式(ii)で表される化合物や式(2)で表される化合物を選択して用いることが好ましい。特に式(2)のR〜R14の少なくとも1つが置換基である化合物を選択して用いることが好ましい。ここでいう置換基としては、上記の第3成分における好ましい置換基を採用することができる。中でも、炭素数1〜24のアルキル、置換されていてもよいジアリールアミノを特に好ましく採用することができる。これらの置換基を有する化合物を用いて発光層を蒸着法で形成した場合は、置換基を有しない対応化合物、式(i)で表される化合物、式(iii)で表される化合物、あるいは式(4)で表される化合物を用いて蒸着法で形成した場合よりも、有機電界発光素子の外部量子効率が高くて特性が優れている。
また、第3成分として式(i)または式(iii)で表される化合物を用いて蒸着法で発光層を形成する場合は、上記の第3成分における好ましい置換基を採用することが好ましく、炭素数1〜24のアルキル、置換されていてもよいジアリールアミノを有する化合物を用いることが特に好ましい。これらの置換基を有する化合物を用いて発光層を蒸着法で形成した場合は、置換基を有しない対応化合物を用いて蒸着法で形成した場合よりも、有機電界発光素子の外部量子効率が高くて長寿命であり特性が優れている。
7−2.湿式成膜法
発光層形成用組成物を使用する場合は、湿式成膜法を用いることによって成膜される。
湿式成膜法は、一般的には、基板に発光層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された発光層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる手法をスピンコート法、スリットコーターを用いる手法をスリットコート法、版を用いる手法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる手法をインクジェット法、霧状に吹付ける手法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
7−3.真空蒸着法と湿式成膜法の併用
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層の湿式成膜法による成膜
(手順4)発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
7−4.インクジェットによる有機電界発光素子の作製例
図2を参考にして、バンクを有する基板にインクジェット法を用いて有機電界発光素子を作製する方法を説明する。まず、バンク(200)は基板(110)上の電極(120)の上に設けられている。この場合、インクジェットヘッド(300)より、バンク(200)間にインクの液滴(310)を滴下し、乾燥させることで塗膜(130)を作製することができる。これを繰り返し、次の塗膜(140)、さらに発光層(150)まで作製し、真空蒸着法を用い電子輸送層、電子注入層および電極を成膜すれば、バンク材で発光部位が区切られた有機電界発光素子を作製することができる。
このように作製した有機電界発光素子は、水分や酸素から保護するために、封止層(図示省略)によって覆うことが好ましい。例えば、外部から水分や酸素などが浸入すると、発光機能が阻害され、発光効率の低下や、発光しない暗点(ダークスポット)が発生する。また、発光寿命が短くなる可能性がある。封止層としては、例えば、水分や酸素などの透過性が低い、酸窒化シリコン(SiON)などの無機絶縁材料を用いることができる。また、透明なガラスや不透明なセラミックなどの封止基板を、有機電界発光素子が形成された素子基板に接着剤を介して貼り付けることにより、有機電界発光素子を封止してもよい。
8.有機電界発光素子の応用例
また、本発明は、有機電界発光素子を備えた表示装置または有機電界発光素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機電界発光素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどが挙げられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などが挙げられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどが挙げられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
9.発光層形成用組成物
本発明の発光層形成用組成物は、有機電界発光素子の発光層を湿式法により形成するための組成物である。発光層形成用組成物は、第1成分として第1のホスト(HH)と、第2成分として第2のホスト(EH)と、第3成分としてドーパント(BD)と、第4成分として少なくとも1種の有機溶媒を含む組成物である。第1のホスト(HH)、第2のホスト(EH)およびドーパント(BD)については、上記の有機電界発光素子における発光層の説明にて記載した化合物を用いることができる。
9−1.有機溶媒
本発明の発光層形成用組成物は、少なくとも1種の有機溶媒を含むことが好ましい。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該発光層形成用組成物より得られる発光層を有する有機電界発光素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
9−1−1.有機溶媒の物性
発光層形成用組成物に第4成分として含まれる少なくとも1種の有機溶媒の沸点は、130℃〜350℃であり、140℃〜300℃がより好ましく、150℃〜250℃がさらに好ましい。沸点が130℃より高い場合、インクジェットの吐出性の観点から好ましい。また、沸点が350℃より低い場合、塗膜の欠陥、表面粗さ、残留溶媒および平滑性の観点から好ましい。良好なインクジェットの吐出性、成膜性、平滑性および低い残留溶媒の観点から、2種以上の有機溶媒を含む構成がより好ましい。一方で、場合によっては、運搬性などを考慮し、発光層形成用組成物中から溶媒を除去することで固形状態とした組成物であってもよい。
本発明の発光層形成用組成物は、第1成分、第2成分および第3成分である化合物の少なくとも1種に対する良溶媒(GS)と貧溶媒(PS)とを第4成分として含み、良溶媒(GS)の沸点(BPGS)が貧溶媒(PS)の沸点(BPPS)よりも低いことが特に好ましい。
高沸点の貧溶媒を加えることで成膜時に低沸点の良溶媒が先に揮発し、組成物中の含有物の濃度と貧溶媒の濃度が増加し速やかな成膜が促される。これにより、欠陥が少なく、表面粗さが小さい、平滑性の高い塗膜が得られる。
溶解度の差(SGS−SPS)は、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。沸点の差(BPPS−BPGS)は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、第1成分、第2成分および第3成分である化合物のうち最も高いガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、第2成分および第3成分である化合物のうち最も低いガラス転移点(Tg)−30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
9−1−2.有機溶媒の具体例
発光層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などが挙げられ、具体例として、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサン−2−オール、ヘプタン−2−オール、オクタン−2−オール、デカン−2−オール、ドデカン−2−オール、シクロヘキサノール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、テルピネオール(混合物)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾ三フッ化物、クメン、トルエン、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、s−ブチルベンゼン、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、シメン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、3−フルオロベンゾニトリル、デカリン(デカヒドロナフタレン)、ネオペンチルベンゼン、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、安息香酸メチル、イソペンチルベンゼン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、n−アミルベンゼン、ベラトロール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、n−ヘキシルベンゼン、安息香酸プロピル、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、安息香酸ブチル、2−メチルビフェニル、3−フェノキシトルエン、2,2’−ビトリル、ドデシルベンゼン、ジペンチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、トリメトキシトルエン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、1−メチル−4−(プロポキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ブチルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ペンチルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ヘキシルオキシメチル)ベンゼン、1−メチル−4−(ヘプチルオキシメチル)ベンゼンベンジルブチルエーテル、ベンジルペンチルエーテル、ベンジルヘキシルエーテル、ベンジルヘプチルエーテル、ベンジルオクチルエーテル、ニトロベンゼン、ジメチルニトロベンゼン、アミノビフェニル、ジフェニルアミンなどが挙げられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、またはこれらの混合溶媒が好ましい。アルキルベンゼン系溶媒としてはシクロヘキシルベンゼンが好ましく、フェニルエーテル系溶媒としては3−フェノキシトルエンが好ましい。シクロヘキシルベンゼンと3−フェノキシトルエンとの混合溶媒も好ましい。このとき、両者の質量比は特に限定されないが、例えば2:8〜8:2であればよく、5:5〜8:2が好ましい。
9−2.任意成分
発光層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等が挙げられる。
9−2−1.バインダー
発光層形成用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、成膜時には膜を形成するとともに、得られた膜を基板と接合する。また、該発光層形成用組成物中で他の成分を溶解および分散および結着させる役割を果たす。
発光層形成用組成物に用いられるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES)樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、および、上記樹脂およびポリマーの共重合体、が挙げられるが、それだけに限定されない。
発光層形成用組成物に用いられるバインダーは、1種のみであってもよく複数種を混合して用いてもよい。
9−2−2.界面活性剤
発光層形成用組成物は、例えば、発光層形成用組成物の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造からイオン性および非イオン性に分類され、さらに、疎水性基の構造からアルキル系およびシリコン系およびフッ素系に分類される。また、分子の構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。また、組成から、単一系、二種以上の界面活性剤および基材を混合した混合系に分類される。該発光層形成用組成物に用いることのできる界面活性剤としては、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(商品名、共栄社化学工業(株)製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK344、BYK346(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(商品名、信越化学工業(株)製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(商品名、セイミケミカル(株)製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(商品名、(株)ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(商品名、三菱マテリアル(株)製)、メガファックF−470、メガファックF−471、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックF−477、メガファックF−479、メガファックF−553、メガファックF−554(商品名、DIC(株)製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩を挙げることができる。
界面活性剤は1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
9−3.発光層形成用組成物の組成および物性
本発明の発光層形成用組成物では、第1成分、第2成分および第3成分として、優れた溶解性、成膜性、湿式塗布性、熱的安定性、および面内配向性の少なくとも1つを満たす化合物を選択する。また、優れた溶解性、成膜性、湿式塗布性、および面内配向性の観点から、炭素数1〜24のアルキル、ジアリールアミノ、炭素数5〜24のシクロアルキル、炭素数6〜24のアリールおよび炭素数5〜24のヘテロアリールで置換されている化合物を選択することが好ましい。また、特に、組成物中の固形分濃度が2割以上をしめる成分において、優れた溶解性、成膜性、湿式塗布性、熱的安定性、および面内配向性の少なくとも1つを満たす化合物を選択することが好ましい。
第1成分としては、アミン、カルバゾール、ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェンを分子中に有する化合物を選択することが好ましい。第2成分としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィドまたはオキサボリンを分子中に有する化合物を選択することが好ましい。第3成分としては、分子配向性および効率の観点からはオーバリティの高いより棒状の分子が好ましく、例えば式(2)で表される化合物が好ましく、B2N4-0230/S-M1、B2N4-0220/S-M1、B2N4-0211/S-M1、BN2BNO-0230/S-M1、およびB2O2N2-0220/S-M1である化合物を選択することが好ましい。
本発明の発光層形成用組成物における各成分の含有量は、特に限定されないが、第1成分の含有量は、第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、好ましくは40質量%〜98.999質量%であり、より好ましくは50質量%〜97.99質量%であり、さらに好ましくは60質量%〜94.9質量%である。第2成分の含有量は、第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、1質量%〜60質量%であり、より好ましくは2質量%〜50質量%であり、さらに好ましくは5質量%〜30質量%である。第3成分の含有量は、第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、好ましくは0.001質量%〜30質量%であり、より好ましくは0.01〜20質量%であり、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
さらに本発明の発光層形成用組成物が有機溶媒を含むとき、第1成分、第2成分および第3成分の各成分の含有量は、発光層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該発光層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された発光層を有する有機電界発光素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点から、決定すればよい。例えば、上記の観点から、発光層形成用組成物の第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、第1成分が40〜98.999質量%、第2成分が1質量%〜60質量%、第3成分が0.001質量%〜30質量%が好ましい。より好ましくは、発光層形成用組成物の第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、第1成分が50質量%〜97.99質量%、第2成分が2質量%〜50質量%、第3成分が0.01質量%〜20質量%である。さらに好ましくは、発光層形成用組成物の第1成分、第2成分および第3成分の総質量に対して、第1成分が60質量%〜94.9質量%、第2成分が5質量%〜30質量%、第3成分が0.1質量%〜10質量%である。
本発明の発光層形成用組成物における各成分の含有量は、発光層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該発光層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された発光層を有する有機電界発光素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点から、決定すればよい。例えば、上記の観点から、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0998質量%〜4.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0001質量%〜2.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.0001質量%〜2.0質量%、第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、90.0質量%〜99.9質量%が好ましい。
より好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.17質量%〜4.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.03質量%〜1.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.03質量%〜1.0質量%、第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、93.0質量%〜99.77質量%である。さらに好ましくは、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.25質量%〜2.5質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.5質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.5質量%、第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、96.5質量%〜99.7質量%である。他に好ましい態様としては、第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.095質量%〜4.0質量%、第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.003質量%〜1.0質量%、第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、0.002質量%〜1.0質量%、第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して、92.0質量%〜99.9質量%である。
発光層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で撹拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
発光層形成用組成物の粘度としては、高粘度である方が、良好な成膜性とインクジェット法を用いた場合の良好な吐出性が得られる。一方、低粘度である方が薄い膜を作りやすい。このことから、該発光層形成用組成物の粘度は、25℃における粘度が0.3mPa・s〜3mPa・sであることが好ましく、1mPa・s〜3mPa・sであることがより好ましい。本発明において、粘度は円錐平板型回転粘度計(コーンプレートタイプ)を用いて測定した値である。
発光層形成用組成物の表面張力としては、低い方が良好な成膜性および欠陥のない塗膜が得られる。一方、高い方が良好なインクジェット吐出性を得られる。このことから、該発光層形成用組成物の表面張力は、25℃における表面張力が20mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることがより好ましい。本発明において、表面張力は懸滴法を用いて測定した値である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されない。
合成例(1)
化合物(B2N4−0230/S):N,N,N13,N13,5,9,11,15−オクタフェニル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1’,2’,3’−jk]ペンタセン−7,13−ジアミン(上記化合物(B2N4−0230/S)の合成
Figure 2021077890
[第1段]
窒素雰囲気下、1,3−ジブロモベンゼン(25.0g、106mmol)、アニリン(20.3ml、223mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))(971mg、1.06mmol)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP:1.98g、3.18mmol)、NaOtBu(25.5g、265mmol)およびトルエン(400ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、18時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解させた後、適当量を減圧留去し、ヘキサンを加え再沈殿させることで、N,N−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(16.5g、収率60%)を白色固体として得た。
Figure 2021077890
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=5.63(s,2H)、6.60(dd,2H)、6.74(t,1H)、6.90(t,2H)、7.06(d,4H)、7.12(t,1H)、7.24(dt,4H).
[第2段]
窒素雰囲気下、1,3−ジブロモ−5−クロロベンゼン(8.11g、30mmol)、ジフェニルアミン(10.1g、60mmol)、Pd(dba)(550mg、0.6mmol)、2−ジシクロヘキシルフェニルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシジフェニル(SPhos:0.493g、1.2mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド(NaOtBu)(8.60g、90mmol)およびトルエン(300ml)の入ったフラスコを80℃に加熱し、15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエンに溶解させた後、減圧留去することで飽和溶液を調製し、ヘキサンを加え再沈殿させることで、5−クロロ−N,N,N,N−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(5.66g、収率43%)を白色固体として得た。
Figure 2021077890
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=6.56(d,2H)、6.64(t,1H)、7.00(t,4H)、7.05(d,8H)、7.21(dd,8H).
[第3段]
窒素雰囲気下、第1段で合成したN,N−ジフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(1.34g、5.1mmol)、第2段で合成した5−クロロ−N,N,N,N−テトラフェニルベンゼン−1,3−ジアミン(4.80g、11mmol)、Pd(dba)(0.140g、0.15mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン(60.7mg、0.30mmol)、NaOtBu(1.47g、15mmol)およびトルエン(200ml)の入ったフラスコを110℃に加熱し、8時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、シリカゲルを用いて濾過し(溶離液:トルエン)、溶媒を減圧留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサン、メタノールの順に洗浄することで、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(N,N,N,N,N−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(4.80g、収率87%)を白色固体として得た。
Figure 2021077890
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=6.38(d,4H)、6.41(t,2H)、6.58(dd,2H)、6.70(t,1H)、6.88−6.90(m,14H)、6.85(t,1H)、6.99(d,16H)、7.08−7.15(m,20H).
[第4段]
,N’−(1,3−フェニレン)ビス(N,N,N,N,N−ペンタフェニルベンゼン−1,3,5−トリアミン(3.24g、3.0mmol)およびオルトジクロロベンゼン(400ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、室温で、三臭化ホウ素(1.13ml、12mmol)を加えた。滴下終了後、180℃まで昇温して20時間撹拌した。その後、再び室温まで冷却して、N−ジイソプロピルエチルアミン(7.70ml、45mmol)を加え、発熱が収まるまで撹拌した。その後、60℃で減圧下、反応溶液を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をアセトニトリル、メタノール、トルエンの順に洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)で精製後粗体をo−ジクロロベンゼンで2回再結晶を行い、その後1×10−4mmHgの減圧下、440℃にて昇華精製を行うことで、化合物((B2N4−0230/S))を1.17g得た。
Figure 2021077890
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=5.72(s,2H)、5.74(s,2H)、5.86(s,1H)、6.83(d,2H)、6.88−6.93(m,12H)、7.05(t,8H)、7.12−7.19(m,6H)、7.24−7.26(m,4H)、7.05(d,4H)、7.12(dd,8H)、7.12−7.19(m,6H)、7.32(d,4H)、7.38(dd,2H)、7.42(t,2H)、7.46(dd,2H)、7.47(dd,4H)、9.30(d,2H)、10.5(s,1H).
13C−NMR(101MHz,CDCl):99.5(2C+2C)、103.4(1C)、116.8(2C)、120.0(2C)、123.1(4C)、125.3(8C)、127.1(2C)、127.6(2C)、128.5(8C)、129.6(4C)、129.8(4C)、130.2(4C+2C)、130.3(4C)、135.0(2C)、142.1(2C)、142.5(2C)、143.3(1C)、146.8(4C)、147.9(2C+2C)、148.0(2C)、150.1(2C)、151.1(2C).
合成例(2):化合物(EH−1−126)の合成
Figure 2021077890
窒素雰囲気下、3−ブロモ−2,4−ジ(3−クロロフェノキシ)ピリジン(3.29mg、8.0mmol)、およびメシチレン(40ml)の入ったフラスコを−30℃に冷却し、n−ブチルリチウム(5.61ml、1.57M、8.8mmol)を10分かけて滴下し、−30℃で30分間撹拌した。−30℃で三臭化ホウ素(817μl、8.8mmol)を滴下し、反応溶液を室温まで昇温した後に2時間撹拌した。その後、減圧下で反応液中の低沸成分を留去した。室温で2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(970μl、4.4mmol)を加え後に、170℃に昇温し、6時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体をアセトニトリルで加熱洗浄した後にメタノールで加熱洗浄することによって、3,11−ジクロロ−5,9−ジオキサ−6−アザ−13b−ボラナフト[3,2,1−de]アントラセンである化合物(EH−1−126)を白色固体として得た(515mg、収率19%)。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,DMSO−d6):δ=7.00(d,J=5.7Hz,1H),7.25(dd,J=2.3,8.0Hz,1H),7.27(dd,J=2.3,8.0Hz,1H),7.31(d,J=2.3Hz,1H),7.32(d,J=2.3Hz,1H),8.09(d,J=8.0,1H),8.12(d,J=8.0,1H),8.17(d,J=5.7,1H).
13C−NMR(126MHz,DMSO−d6):δ=107.3(1C),117.0(1C),117.1(1C),123.3(1C),123.7(1C),132.6(1C),132.7(1C),134.4(1C),134.7(1C),148.1(1C),157.7(1C),158.6(1C),163.7(1C),164.2(1C),The NMR signal of carbon to the boron was not obserbd..
11B−NMR(160MHz,DMSO−d6):δ=−5.6.
合成例(3):化合物(EH−1−117)の合成
Figure 2021077890
窒素雰囲気下、化合物(EH−1−126)(102mg、0.30mmol)、カルバゾール(110mg、0.66mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(3−メチルブタ−2−エン−1−イル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(10.9mg、0.018mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(63.4mg、0.66mmol)、およびメシチレン(1.5ml)の入ったフラスコを140℃に加熱し、6時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をアセトニトリルで加熱洗浄後、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=1/1(容量比))で精製した。さらに、酢酸エチルで加熱洗浄、ジクロロエタンで加熱洗浄することによって、3,11−ジ(9H−カルバゾ―9−イル)−5,9−ジオキサ−6−アザ−13b−ボラナフト[3,2,1−de]アントラセンである化合物(EH−1−117)を黄色固体として得た(94.8mg、収率53%)。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ=7.31(d,J=5.7Hz,1H)、7.37(dt,J=3.4,7.5Hz,4H)、7.47−7.52(m,4H)、7.70(t,J=8.6Hz,4H)、7.80(dt,J=2.3,8.0Hz,2H)、7.94(d,J=2.3Hz,1H)、8.04(d,J=2.3Hz,1H)、8.20(dd,J=3.4,7.5Hz,4H),8.76(d,J=5.7Hz,1H),8.96(d,J=8.0Hz,1H),8.98(d,J=8.0Hz,1H).
合成例(4):化合物(EH−1−104)の合成
Figure 2021077890
窒素雰囲気下、化合物(EH−1−126)(67.9mg、0.20mmol)、3−ビフェニルボロン酸(95.1mg、0.48mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)((AMPhos)PdCl)(8.5mg、0.012mmol)、リン酸三カリウム(204mg、0.96mmol)、および1,4−ジオキサン(2.0ml)の入ったフラスコを加熱還流下で4時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルショートパスカラム(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル=1/1(容量比))で精製した。さらに,アセトニトリルで加熱洗浄することによって、3,11−ジ([1,1’−ビフェニル]−3−イル)−5,9−ジオキサ−6−アザ−13b−ボラナフト[3,2,1−de]アントラセンである化合物(EH−1−104)を白色固体として得た(91.7mg、収率80%)。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ=7.25(d,J=5.7Hz,1H),7.39−7.44(m,2H),7.51(t,J=8.2Hz,4H),7.62(t,7.5Hz,2H),7.67−7.72(m,6H),7.76(d,7.5Hz,2H),7.80(dt,1.7,8.0Hz,2H),7.93(d,J=1.7Hz,1H),7.99(d,J=1.7Hz,2H),8.02(d,1.7Hz,1H),8.71(d,J=5.7Hz,1H),8.80(d,J=8.0Hz,1H),8.82(d,J=8.0Hz,1H).
合成例(5):化合物(EH−1−128)の合成
Figure 2021077890
窒素雰囲気下、化合物(EH−1−126)(33.4 mg,0.10 mmol)、3,6−ジフェニルカルバゾール(72.3 mg,0.22 mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(3−メチルブタ−2−エン−1−イル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(3.64 mg,0.006 mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(23.1 mg,0.24 mmol)、およびメシチレン(1.0 mL)の入ったシュレンク管を140℃に加熱し、8時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層をシリカゲルショートパス(展開溶媒:ジクロロメタン:酢酸エチル=1:1)で精製した。さらに、酢酸エチル加熱洗浄、トルエン加熱洗浄で精製することによって、化合物(EH−1−128)(32.3 mg;36%)を黄色固体として得た。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ=7.34(d,J=5.7Hz,1H),7.36−7.41(m,4H),7.49−7.54(m,8H),7.74−7.82(m,16H),7.84−7.89(m,2H),8.00(d,J=1.7Hz,1H),8.09(d,J=1.7Hz,1H),8.43−8.47(m,4H),8.78(d,J=5.7Hz,1H),9.00(d,J=8.6Hz,1H),9.03(d,J=8.0Hz,1H).
合成例(6):化合物(EH−1−130)の合成
Figure 2021077890
窒素雰囲気下、3−ブロモ−2,4−ビス(3−クロロフェノキシ)−6−フェニルピリジン(146mg、0.30mmol)、およびテトラリン(3.0mL)の入ったシュレンク管を−30℃に冷却し、n−ブチルリチウム(210μL、1.57mol/L、0.33mmol)を10分かけて滴下し、−30℃で30分間撹拌した。−30℃で三臭化ホウ素(27.8μL、0.30mmol)を滴下し、反応溶液を室温まで昇温した後に2時間撹拌した。その後、減圧下で反応液中の低沸成分を留去し、210℃に昇温し,6時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体をアセトニトリル加熱洗浄した後にメタノール加熱洗浄することによって化合物(Int−EH−1−130)(7.5mg、収率6%)を白色固体として得た。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ=7.37−7.42(m,2H),7.49−7.59(m,5H),7.69(d,J=1.7Hz,1H),8.14−8.19(m,2H),8.45(t,J=8.6,2H).
窒素雰囲気下、化合物(Int−EH−1−130)(208mg、0.50mmol)、カルバゾール(184mg、1.1mmol)、ビス(ジ−tert−ブチル(3−メチルブタ−2−エン−1−イル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(18.2mg、0.030mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド(115mg、1.2mmol)、およびメシチレン(5.0mL)の入ったシュレンク管を140℃に加熱し、4時間撹拌した。反応溶液を室温まで放冷した後、水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。得られた有機層をシリカゲルショートパス(展開溶媒:ジクロロメタン:酢酸エチル=1:1)で精製した。さらに、酢酸エチル加熱洗浄で精製することによって、化合物(EH−1−130)(143mg;42%)を黄色固体として得た。
Figure 2021077890
NMR測定により得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(500MHz,CDCl):δ=7.35−7.40(m,4H),7.46−7.59(m,7H),7.70(d,J=8.6Hz,2H),7.73(d,J=8.0Hz,2H),7.75(s,1H),7.80(t,J=1.2Hz,1H),7.81(t,J=1.2Hz,1H),7.95(d,J=2.3Hz,1H),8.19(d,J=8.0Hz,2H),8.20(d,J=8.0Hz,2H),8.24−8.28(m,2H),8.95(d,J=8.6Hz,1H),8.97(d,J=8.6Hz,1H).
<有機EL素子の評価>
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(EQE)(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)などがある。これらの評価項目は、適切な発光輝度時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、電圧を印加することにより素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
Figure 2021077890
表1において、「NPD」はN,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニルであり、「TcTa」は4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミンであり、化合物(HH−1−2)(一般には、「mCP」と呼ばれる)は1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼンであり、化合物(B2N4−0230/S)はN,N,N13,N13,5,9,11,15−オクタフェニル−5,9,11,15−テトラヒドロ−5,9,11,15−テトラアザ−19b,20b−ジボラジナフト[3,2,1−de:1’,2’,3’−jk]ペンタセン−7,13−ジアミン、化合物(EH−1−23)(一般には、「TSPO1」と呼ばれる)はジフェニル(4−トリフェニルシリル)フェニル)ホスフィンオキサイドである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021077890
<実施例1>
<第1のホストにmCP、第2のホストにTSPO1を用いた素子>
スパッタリングにより成膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、化合物(HH−1−2)、化合物(B2N4−0230/S)、化合物(EH−1−23)をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、LiFおよびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を2.0×10−4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次いで、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、次いで、化合物(HH−1−2)を加熱して15nmになるように蒸着することで3層からなる正孔輸送層を形成した。次に、化合物(HH−1−2)、化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(HH−1−2)、化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比がおよそ49.5:49.5:1になるように蒸着速度を調節した。次に、化合物(EH−1−23)を加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得た。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長472nmであり、CIEyが0.12の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は4.6Vであり、外部量子効率は22.8%であった。1000cd/m発光時の電圧は7.0Vであり、外部量子効率は15.3%だった。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動させたとき、輝度が50cd/mになる時間(LT50)は5.5時間だった。
<比較例1>
<ホストに化合物(HH−1−2)のみを用いた素子>
ホストを化合物(HH−1−2)のみ用いて、蒸着時の化合物(HH−1−2)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例1と同様の手順で有機EL素子を作製した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長472nmであり、CIEyが0.12の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は5.2Vであり実施例1と比べて高く、外部量子効率は16.6%であり実施例1と比べて低かった。1000cd/m発光時の電圧は7.6Vであり、外部量子効率は13.7%であり実施例1と比べて低かった。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動を行ったところ、通電開始直後30分以内に点灯しなくなった(LT50<0.5時間)ため、連続駆動での耐久性が低いと判明した。
<比較例2>
<ホストに化合物(EH−1−23)のみを用いた素子>
ホストを化合物(EH−1−23)のみ用いて、蒸着時の化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例1と同様の手順で有機EL素子を作製した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長471nmであり、CIEyが0.11の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は4.4Vであり実施例1より低く、外部量子効率は23.7%であり実施例1より高かった。一方、10Vまで電圧を上げたが、輝度は300cd/m程度で頭打ちになり1000cd/mで点灯しなかったため、実施例1と比べて高輝度駆動での耐久性が低いと判明した。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動を行ったところ、通電開始直後30分以内に点灯しなくなった(LT50<0.5時間)ため、連続駆動での耐久性が低いと判明した。
実施例1、比較例1、および比較例2の素子の構成を表1に、評価結果を表2にまとめた。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
表3において、「2CzBN」は3,4−ジ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゾニトリル、「TPBi」は2,2’,2’’−(1,3,5−ベンジネトリル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンジイミダゾール)である。以下に化学構造を示す。
Figure 2021077890
<実施例2>
<第1のホストに化合物(HH−1−2)、第2のホストに化合物(EH−1−23)を用いた素子>
スパッタリングにより成膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、化合物(HH−1−2)、化合物(B2N4−0230/S)、化合物(EH−1−23)、2CzBNおよびTPBiをそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、LiFおよびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を2.0×10−4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次いで、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、次いで、化合物(HH−1−2)を加熱して15nmになるように蒸着することで3層からなる正孔輸送層を形成した。次に、化合物(HH−1−2)、化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(HH−1−2)、化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比がおよそ49.5:49.5:1になるように蒸着速度を調節した。次に、2CzBNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、次いでTPBiを加熱して膜厚20nmに成るように蒸着して、2層からなる電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得た。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度、色度および外部量子効率を測定した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長472nmであり、CIEyが0.12の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は5.3Vであり、外部量子効率は18.5%であった。1000cd/m発光時の電圧は6.9Vであり、外部量子効率は12.9%だった。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動させたとき、輝度が50cd/mになる時間(LT50)は7.2時間だった。
<比較例3>
<ホストに化合物(HH−1−2)のみを用いた素子>
ホストとして化合物(HH−1−2)のみを用いて、蒸着時の化合物(HH−1−2)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例1と同様の手順で有機EL素子を作製した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長471nmであり、CIEyが0.11の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は6.4Vであり実施例1と比べて高く、外部量子効率は9.8%であり実施例1と比べて低かった。1000cd/m発光時の電圧は8.5Vであり、外部量子効率は7.2%であり実施例1と比べて低かった。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動を行ったところ、通電開始直後30分以内に点灯しなくなった(LT50<0.5時間)ため、連続駆動での耐久性が低いと判明した。
<比較例4>
<ホストに化合物(EH−1−23)のみを用いた素子>
ホストとして化合物(EH−1−23)のみを用いて、蒸着時の化合物(EH−1−23)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例1と同様の手順で有機EL素子を作製した。100cd/m発光時の発光スペクトルはピーク波長471nmであり、CIEyが0.11の青色発光が見られた。また、100cd/m発光時の電圧は5.6Vであり実施例1より高く、外部量子効率は13.5%であり実施例1より低かった。一方、10Vまで電圧を上げたが、輝度は200cd/m程度で頭打ちになり1000cd/mで点灯しなかったため、実施例1と比べて高輝度駆動での耐久性が低いと判明した。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動を行ったところ、通電開始直後30分以内に点灯しなくなった(LT50<0.5時間)ため、連続駆動での耐久性が低いと判明した。
実施例2、比較例3、および比較例4の素子の構成を表3に、評価結果を表4にまとめた。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
Figure 2021077890
表5において、「BPy−TP2」は2,7−ジ([2,2’−ビピリジン]−5−イル)トリフェニレンである。以下に化学構造を示す。
Figure 2021077890
<実施例4>
<第1のホストに化合物(HH−1−1)、第2のホストに化合物(EH−1−16)を用いた素子>
スパッタリングにより成膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置((株)長州産業)の基板ホルダーに固定し、NPD、TcTa、化合物(HH−1−1)、化合物(B2N4−0230/S)、化合物(EH−1−16)、2CzBNおよびBPy−TP2をそれぞれ入れたタンタル製蒸着用ルツボ、LiFおよびアルミニウムを入れた窒化アルミニウム製蒸着用ルツボを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を2.0×10−4Paまで減圧し、まず、NPDを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次いで、TcTaを加熱して膜厚15nmになるように蒸着し、次いで、化合物(HH−1−1)を加熱して15nmになるように蒸着することで3層からなる正孔輸送層を形成した。次に、化合物(HH−1−1)、化合物(EH−1−16)および化合物(B2N4−0230/S)を同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。化合物(HH−1−1)、化合物(EH−1−16)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比がおよそ49.5:49.5:1になるように蒸着速度を調節した。次に、2CzBNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、次いでBPy−TP2を加熱して膜厚20nmに成るように蒸着して、2層からなる電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒である。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように0.1〜2nm/秒の蒸着速度で蒸着して陰極を形成することで、有機EL素子を得た。
ITO電極を陽極、アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、輝度1000cd/mにおける、色度および外部量子効率を測定した。また、輝度100cd/mにおける電流で連続駆動させたとき、輝度が50cd/mになる時間を測定した。
<実施例5〜実施例34>
実施例4に記載の第1のホストおよび第2のホストを表5に従い変更し、有機EL素子を得た。
<比較例5>
<ホストに化合物(HH−1−12)のみを用いた素子>
ホストとして化合物(HH−1−12)のみを用いて、蒸着時の化合物(HH−1−12)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例4と同様の手順で有機EL素子を作製した。
<比較例6>
<ホストに化合物(EH−1−16)のみを用いた素子>
ホストとして化合物(EH−1−16)のみを用いて、蒸着時の化合物(EH−1−16)および化合物(B2N4−0230/S)の質量比を99:1にした以外は実施例4と同様の手順で有機EL素子を作製した。
実施例4〜実施例34および比較例5および比較例6の素子の構成を表5に、評価結果を表6にまとめた。なお、表6中、LT50は輝度100cd/mにおける電流で連続駆動させたとき、輝度が50cd/mになるまでの時間である。
Figure 2021077890
Figure 2021077890
本発明は、実施例に記載の第1のホスト、第2のホストおよびドーパントに限らず、例えば、第1のホストおよび第2のホストについては、Organic Electronics 66 (2019) 227−24、Advanced. Functional Materals 25 (2015) 361−366.、Advanced Materials 26 (2014) 4730−4734.、ACS Applied Materials and Interfaces 8 (2016) 32984−32991.、ACS Applied Materals and Interfaces 2016, 8, 9806−9810、ACS Applied Materials and Interfaces 2016, 8, 32984−32991、Journal of Materials Chemisty C, 2018, 6, 8784−8792、および、Angewante Chemie International Edition. 2018, 57, 1238012384などに記載の組合せを用いてもよい。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極
110 基板
120 電極
130 塗膜
140 塗膜
150 発光層
200 バンク
300 インクジェットヘッド
310 インクの液滴

Claims (18)

  1. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層を有する有機電界発光素子であって、
    前記発光層が、
    第1成分として第1のホスト(HH)、
    第2成分として第2のホスト(EH)、および
    第3成分としてドーパント(BD)を含み、
    前記ドーパント(BD)としてホウ素原子を有する多環芳香族化合物を含み、
    第1成分のHOMOは第2成分のHOMOより浅く、
    第2成分のLUMOは第1成分のLUMOより深く、
    第3成分のHOMOは第1成分のHOMOより浅い、または、第3成分のLUMOは第2成分のLUMOより深い、有機電界発光素子。
  2. 第3成分が、
    下記式(i)で表される単量体または下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物、式(iii)で表される化合物、ならびに下記式(i)で表される単量体もしくは下記式(i)で表される構造を複数有する多量体である化合物または式(iii)で表される化合物のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される化合物を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
    式(i)中、
    A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−R、>CR、>Sまたは>Seであり、前記N−RのRおよび>CRのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
    式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
    式(i)で表される単量体または式(i)で表される構造を複数有する多量体における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよく、
    Figure 2021077890
    式(iii)中、
    A環、B環およびC環は、それぞれ独立して、アリール環またはヘテロアリール環であり、これらの環における少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、
    、XおよびXは、それぞれ独立して、O、N−R、>CR、SまたはSeであり、前記N−RのRおよび>CRのRは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいシクロアルキルまたは置換されていてもよいアルキルであり、また、前記N−RのRは連結基または単結合により前記A環、B環およびC環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、
    式(iii)で表される化合物における、アリール環またはヘテロアリール環の少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの−CH−は−O−で置換されていてもよく、
    式(iii)で表される化合物における少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
  3. 第3成分が、下記式(1)で表される単量体もしくは、下記式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物、および下記式(1)で表される単量体もしくは、下記式(1)で表される構造を複数有する多量体である化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1または2に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
    式(1)中、
    〜R11は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリルであり、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、また、R〜R、R〜RおよびR〜R11のうちの隣接する基同士が結合してa環、b環またはc環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環はアリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシおよびアリールオキシから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、これらはさらにアリール、ヘテロアリールおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
    およびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−RのRおよび>CRのRは、それぞれ独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはアルキルであり、これらはアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびアルキルから選択される少なくとも1つで置換されていてもよく、
    ただし、XおよびXは、同時に>CRになることはなく、
    式(1)で表される構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
  4. 第3成分が式(2)で表される化合物である、請求項1または2に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
    式(2)中、
    およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリールまたはジアリールアミノ(ただしアリールは炭素数6〜12のアリール)であり、
    〜R14は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたは置換シリルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、R〜RおよびR10〜R12のうちの隣接する基同士が結合して、それぞれb環またはd環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジアリールボリル、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールチオまたはアルキル置換シリルで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルで置換されていてもよく、
    、X、XおよびXは、それぞれ独立して、>O、>N−Rまたは>CRであり、前記>N−Rおよび>CRのRは、それぞれ独立して、炭素数6〜12のアリール、炭素数2〜15のヘテロアリール、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数1〜6のアルキルであり、また、前記>N−RのRのRは、−O−、−S−、−C(−R)−または単結合により前記a環、b環、c環およびd環から選択される少なくとも1つと結合していてもよく、前記−C(−R)−のRは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
    ただし、X、X、X、およびXは、同時に>CRになることはなく、
    式(2)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素はシアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
  5. 第3成分の最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位とのエネルギー差が0.2eV以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  6. 第1成分が、式(HH−1)で表される化合物であるか、または式(HH−1)で表される部分構造を有する化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
    (式(HH−1)において、
    Qは、>O、>S、または、>N−Aであり、
    式(HH−1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
    Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
    Aは、水素原子、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよい。
  7. 第1成分が、下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
    Figure 2021077890
  8. 第2成分が、式(EH−1)で表される化合物であるか、または式(EH−1)で表される部分構造を有する化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
    式(EH−1)において、
    Jは、それぞれ独立して、=C(−A)−または=N−であり、少なくとも3つのJは=C(−A)−であり、
    Zは、−O−、−S−、−C(=O)−、−P(=O)(−A)−、−P(=S)(−A)−、−N(−A)−、−B(−A)−または−S(=O)−であり、
    Zの結合する炭素原子の隣のJとZの結合するAとは、互いに、Lで結合していてもよく、
    Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(−A)であり、
    Aは、水素、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、トリアリールシリル、アルコキシまたはアリールオキシであり、>C(−A)における2つのAは互いに結合して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルを形成してよく、
    すべてのJが、=C(−A)−であるとき、AまたはZのいずれかひとつがヘテロ原子を有する。
  9. 第2成分が、下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子;
    Figure 2021077890
  10. 第2成分が下記のいずれかの化合物および下記のいずれかの化合物の水素原子2個が脱離した構造を繰り返し単位とする高分子化合物からなる群より選択される1つ以上の化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
    Figure 2021077890
  11. 前記陰極と前記発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体およびキノリノール系金属錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
  12. 前記電子輸送層および/または電子注入層が、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項11に記載の有機電界発光素子。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置。
  14. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を備えた照明装置。
  15. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機電界発光素子の前記発光層を塗布形成するための発光層形成用組成物であって、
    第1成分、第2成分および第3成分に加えて、第4成分として、少なくとも1種の有機溶媒を含む、発光層形成用組成物。
  16. 第4成分における少なくとも1種の有機溶媒の沸点が130℃〜350℃である、請求項15に記載の発光層形成用組成物。
  17. 第4成分が、第1成分、第2成分、および第3成分である化合物の少なくとも1種に対する良溶媒と貧溶媒とを含み、前記良溶媒の沸点が前記貧溶媒の沸点よりも低い、請求項15または16に記載の発光層形成用組成物。
  18. 第1成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0998質量%〜4.0質量%であり、
    第2成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0001質量%〜2.0質量%であり、
    第3成分が発光層形成用組成物の全質量に対して0.0001質量%〜2.0質量%であり、
    第4成分が発光層形成用組成物の全質量に対して90.0質量%〜99.9質量%である、
    請求項15〜17のいずれか一項に記載の発光層形成用組成物。
JP2020185738A 2019-11-12 2020-11-06 有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物 Pending JP2021077890A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019204462 2019-11-12
JP2019204462 2019-11-12

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021077890A true JP2021077890A (ja) 2021-05-20

Family

ID=75898238

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020185738A Pending JP2021077890A (ja) 2019-11-12 2020-11-06 有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021077890A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116218283A (zh) * 2023-04-13 2023-06-06 义乌清越光电技术研究院有限公司 一种用于tfb空穴传输层的量子点墨水及其应用
WO2023224400A1 (ko) * 2022-05-20 2023-11-23 경상국립대학교산학협력단 신규한 헤테로고리 화합물 및 이를 이용한 유기 발광 소자

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023224400A1 (ko) * 2022-05-20 2023-11-23 경상국립대학교산학협력단 신규한 헤테로고리 화합물 및 이를 이용한 유기 발광 소자
CN116218283A (zh) * 2023-04-13 2023-06-06 义乌清越光电技术研究院有限公司 一种用于tfb空穴传输层的量子点墨水及其应用
CN116218283B (zh) * 2023-04-13 2024-04-05 义乌清越光电技术研究院有限公司 一种用于tfb空穴传输层的量子点墨水及其应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7388658B2 (ja) 有機電界発光素子、表示装置、照明装置、発光層形成用組成物、および化合物
US11637250B2 (en) Polycyclic aromatic compound and light emitting layer-forming composition
JP7202572B2 (ja) 多環芳香族化合物
WO2020162600A1 (ja) 多環芳香族化合物
JPWO2019235452A1 (ja) ターシャリーアルキル置換多環芳香族化合物
JP2021038206A (ja) 多環芳香族化合物
JP7445927B2 (ja) 多環芳香族化合物
WO2020218558A1 (ja) 化合物、有機デバイス用材料、発光層形成用組成物、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、有機電界発光素子、表示装置、および照明装置
JP2021077890A (ja) 有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物
JP2022074041A (ja) 多環芳香族化合物
JP2020026426A (ja) 多環芳香族化合物およびその多量体
JP7376892B2 (ja) 多環芳香族化合物
JP2021063067A (ja) 多環芳香族化合物、有機デバイス用材料、有機電界発光素子、表示装置および照明装置
JP2021077889A (ja) 有機電界発光素子、表示装置、および照明装置、ならびに発光層形成用組成物
CN115368392A (zh) 多环芳香族化合物、反应性化合物、有机器件用材料、油墨组合物、及有机电致发光元件
KR20230049656A (ko) 다환 방향족 화합물
JP2021063074A (ja) シアノ置換多環芳香族化合物
WO2022185897A1 (ja) 多環芳香族化合物
WO2022185896A1 (ja) 多環芳香族化合物および有機電界発光素子
KR102661359B1 (ko) 다환 방향족 화합물
JP2022032441A (ja) 多環芳香族化合物
JP2022020144A (ja) 多環芳香族化合物
CN116997557A (zh) 多环芳香族化合物及有机电致发光元件
CN115477662A (zh) 多环芳香族化合物及其应用
KR20240055908A (ko) 다환 방향족 화합물

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20210426

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20210609

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20231012