JP2021075933A - 車両用ドアハンドル装置 - Google Patents

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拓也 小谷
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瑞弥 坂本
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伸和 荒木
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Abstract

【課題】側突箇所と車両用ドアハンドル装置との相対的な位置関係にかかわらず、ドア開放防止機構10の動作の確実性の向上を図る。【解決手段】車両用ドアハンドル装置1は、アウトサイドドアハンドル12の移動に連動して回転することでドアロック機構6をアンラッチ状態に切り替えるベルクランク13と、衝突時に車両ドア5の開放を防止するドア開放防止機構10を有しており、ドア開放防止機構10は、後端部においてベルクランク13に回転可能に連結されており衝突時には慣性力によって作動位置に移動する慣性レバー15と、衝突時には作動位置に移動した慣性レバー15との相対変位を規制することでベルクランク13の回転を規制するロックピン111と、を有しており、慣性レバー15は、車両の前後方向に関してアウトサイドドアハンドル12の後部寄りの位置に配置され、重心が後端部よりも前側に位置している。【選択図】図2

Description

本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
特許文献1には、側突時に車両ドアの開放を防止するためのドア開放防止機構を備える車両用ドアハンドル装置が開示されている。この車両用ドアハンドル装置は、ベースフレームに対して相対移動可能なアウトサイドドアハンドルと、ベースフレームに対して回転可能であるとともにアウトサイドドアハンドルと係合しているベルクランクを有している。そして、この車両用ドアハンドル装置は、アウトサイドドアハンドルの移動動作によりベルクランクが回転し、ベルクランクの回転動作がドアロック機構に伝達されることで、ドアロック機構がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されている。さらに、この車両用ドアハンドル装置は、ドア開放防止機構を構成する部材として、ベルクランクに対して回転可能に連結されている慣性レバーを有している。この慣性レバーは、ベルクランクに対して回転することでベルクランクの回転を許容する位置と回転を規制する位置とに移動可能であり、側突時には慣性力によってベルクランクの回転を規制する位置に移動(回転)するように構成されている。
特許第6061092号公報
(発明が解決しようとする課題)
ところで、側突が発生してからアウトサイドドアハンドルが慣性力によって移動するまでの時間(すなわち、ベルクランクがアウトサイドドアハンドルの移動動作によって回転するまでの時間)と、側突が発生してから慣性レバーが慣性力によってベルクランクの回転を規制する位置に回転するまでの時間は、側突箇所からアウトサイドドアハンドルと慣性レバーのそれぞれの重心までの距離に応じて相違することがある。具体的には、側突箇所からの重心までの距離が大きくなるにしたがって、側突が発生してからアウトサイドドアハンドルが移動するまでの時間と慣性レバーが回転するまでの時間が長くなることがある。
特許文献1に開示されている車両用ドアハンドル装置においては、慣性レバーがアウトサイドドアハンドルの後側寄りの位置に配置されている。このような構成であると、車両用ドアハンドルよりも前方で側突が発生した場合、慣性レバーの回転のタイミングがアウトサイドドアハンドルの移動のタイミングよりも遅れることがある。そして、この遅れが大きくなると、慣性レバーがベルクランクの回転を規制する位置に回転移動するよりも前に、ベルクランクがアウトサイドドアハンドルの移動によって回転してしまうおそれがある。その結果、側突時に車両用ドアの開放を防止できないおそれがある。そこで、この遅れを小さくすることが好ましい。
また、異なる車種で部品の共通化を図るため、同じ構造の車両用ドアハンドル装置を異なる車種に適用することがある。ただし、車両用ドアハンドルの取付角度は、車種によって異なることがある。例えば、車両用ドアハンドル装置は、アウトサイドドアハンドルの回転軸が上下方向に平行となる向きで車両ドアに取り付けられる場合があるほか、アウトサイドドアハンドルの回転軸が上下方向に対して傾斜する向きで車両ドアに取り付けられる場合がある。
側突時には、慣性レバーには、当該慣性レバーを車幅方向外側に移動させるような慣性力が作用する。この場合、慣性レバーを回転させようとするモーメントは、慣性力の大きさが同じであっても回転中心から重心までの距離(すなわち、モーメントアームの長さ)に応じて相違する。特許文献1に開示されている車両用ドアハンドル装置の慣性レバーは、上下方向に長い形状を有しており、その上端部を中心として前後方向軸回りに回転可能に構成されている。このため、この車両用ドアハンドルが傾斜する(具体的には、アウトサイドドアハンドルの回転中心線が上下方向に対して傾斜する)場合には、傾斜角度に応じて前記モーメントアームの長さが相違することになる。したがって、車両用ドアハンドル装置の向きが相違すると、慣性レバーの応答性が相違し、その結果、ドア開放防止機構の応答性が相違するおそれがある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、側突時に車両ドアの開放を防止するドア開放防止機構を備える車両用ドアハンドル装置において、側突箇所と車両用ドアハンドル装置との相対的な位置関係にかかわらず、ドア開放防止機構の動作の確実性の向上を図ることである。また、本発明の他の目的は、車両用ドアハンドルの取付角度が相違しても、ドア開放防止機構の応答性に差が生じないようにすることである。
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ドアハンドル装置(1)は、車両ドア(5)を構成するドアアウタパネル(53)に取り付けられるベースフレーム(11)と、車両の前後方向に長い長尺形状を有し、ベースフレーム(11)に対して回転可能に連結され、回転することで、初期位置と初期位置から車幅方向外側に向けて回転した解除位置とに移動可能なアウトサイドドアハンドル(12)と、ベースフレーム(11)に対して回転可能に設けられており、アウトサイドドアハンドル(12)の動作を、車両ドア(5)の開放が規制されるラッチ状態と車両ドア(5)の開放が許容されるアンラッチ状態とを切替え可能に構成されるドアロック機構(6)の切替え動作に変換するために、アウトサイドドアハンドル(12)の移動に連動して回転するベルクランク(13)と、車両の衝突時に車両ドア(5)が開放されるのを防止するドア開放防止機構(10)と、を有する。
ドア開放防止機構(10)は、ベルクランク(13)に対して回転可能に連結された連結部(15a)と、連結部(15a)から車両の前方に延設されたレバー部(15b)とを有し、付勢部材(16)の付勢力によって初期位置に向けて付勢されている慣性レバー(15)と、ベースフレーム(11)に設けられており、車両の非衝突時においては付勢部材(16)の付勢力に従って初期位置に位置する慣性レバー(15)との相対変位を許容することでベルクランク(13)の回転を許容し、車両の衝突時に生じる慣性力(F)によって付勢部材(16)の付勢力に抗して初期位置から作動位置に移動した慣性レバーとの相対変位を規制することで、ドアロック機構(6)がラッチ状態からアンラッチ状態に切替らないようにベルクランク(13)の回転を規制するロック部(111)と、を有する。そして、連結部(15a)は、車両の前後方向に関してアウトサイドドアハンドル(12)の前端部よりもアウトサイドドアハンドル(12)の後端部に近い位置に位置しており、慣性レバー(15)の重心(G)は慣性レバー(15)の連結部(15a)よりも前側に位置している。
本発明がこのように構成されると、慣性レバー(15)のレバー部(15b)が連結部(15a)から前方に延びているために、慣性レバー(15)の重心(G)は連結部(回転中心線C2)よりも前側に位置する。このようにしてアウトサイドドアハンドル(12)の後端部に近い位置に連結される慣性レバー(15)の重心を前方に移動させることで、アウトサイドドアハンドル(12)の重心と慣性レバー(15)の重心の前後方向位置が近くなり、衝突時において慣性力が作用して移動するタイミングを近づけることができる。したがって、慣性レバー(15)がベルクランク(13)の回転を規制する位置に移動するタイミングを、ベルクランク(13)が慣性力によって回転開始するタイミングに近づけることができるから、側突箇所にかかわらず、ドア開放防止機構(10)の動作の確実性を向上させることができる。
また、慣性レバー(15)のレバー部(15b)の前端部には、慣性レバー(15)の重心(G)を前端部に近づけるためのウェイト部(156)が設けられている、という構成が適用できる。
このような構成であると、慣性レバー(15)の重心(G)の前後方向位置をさらに前方に位置させることができる。したがって、アウトサイドドアハンドル(12)の重心の前後方向位置と、慣性レバー(15)の重心(G)の前後方向位置とをさらに接近させることができ、慣性力(F)による慣性レバー(15)の移動のタイミングの遅れを少なくできる。このため、ドア開放防止機構(10)の動作の確実性の向上を図ることができる。
また、ウェイト部(156)は、レバー部(15b)の前端部から下方に突出している、という構成が適用できる。
このような構成であると、慣性レバー(15)の重心(G)の上下方向位置を下げることができる。このため、車両用ドアハンドル装置(1)の下方で側突が発生した場合に、慣性力(F)による慣性レバー(15)の移動のタイミングの遅れを少なくできる。このため、車両用ドアハンドル装置(1)の下方で側突が発生した場合に、ドア開放防止機構(10)の動作の確実性の向上を図ることができる。
また、レバー部(15b)は、慣性レバー(15)の回転中心線(C2)の方向視において曲がっている曲部を有しており、この曲部よりも前端部側は慣性レバー(15)が初期位置に位置する状態において車両の前後方向に略平行であり、この曲部よりも後端部側は、後ろ側に向かうにしたがって車幅方向外側に向かうように傾斜している、という構成が適用できる。
このような構成であると、車両用ドアハンドル装置(1)の車幅方向寸法を小さくできる。
また、ロック部は、ベースフレーム(11)に突設されたロックピン(111)であり、レバー部(15b)には、ロックピン(111)が挿通する係合溝(152)が形成され、係合溝(152)は、レバー部(15b)の延在方向に沿って長孔状に形成された第一の部分(153)と、第一の部分(153)の後端に連設された第二の部分(154)を有し、第二の部分(154)の前端には、レバー部(15b)の延在方向に交差する方向に沿って係合辺(155)が形成され、車両の非衝突時においては初期位置に位置する慣性レバー(15)の係合溝(152)の第一の部分(153)をロックピン(111)が移動することによって慣性レバー(15)とロックピン(111)との相対変位が許容され、車両の衝突時においては作動位置に移動した慣性レバー(15)の係合溝(152)の係合辺(155)にロックピン(111)が係合することで、慣性レバー(15)とロックピン(111)との相対変位が規制される、という構成が適用できる。
また、ベルクランク(13)には、車両ドア(5)が開放可能な状態と開放不能な状態に切り替え可能なドアロック機構(6)に連結されている操作ワイヤー(7)の一方の端部が連結されており、アウトサイドドアハンドル(12)の初期位置から解除位置への移動に連動してベルクランク(13)が初期位置から解除位置に回転することで操作ワイヤー(7)が引っ張られて、ドアロック機構(6)を車両ドア(5)が開放不能な状態から開放可能な状態に切り替えるように構成されている、という構成が適用できる。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置が適用された車両ドアの構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車内側から見た斜視図である。 図3は、側突が発生しておらず、かつ、アウトサイドドアハンドルがロック位置に位置する状態を示す図である。 図4は、側突が発生しておらず、かつ、アウトサイドドアハンドルがロック位置に位置する状態を示す図である。 図5は、アウトサイドドアハンドルが初期位置から解除位置に移動した状態を示す図である。 図6は、側突が発生した際のドア開放防止機構の動作を説明する図である。 図7は、側突が発生した際のドア開放防止機構の動作を説明する図である。 図8は、比較例に係る車両用ドアハンドル装置の構成例を模式的に示す図である。 図9は、比較例に係る車両用ドアハンドル装置の構成例を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。説明の便宜上、本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置1を、「本装置」と略して記すことがある。各図においては、本装置1が適用される車両の前方を矢印Frで示し、後方を矢印Rrで示し、車幅方向外側を矢印Oで示し、車幅方向内側を矢印Iで示し、上方を矢印Upで示し、下方を矢印Dwで示す。なお、各図においては、本装置1が車両の後方右側の車両ドア5に適用される例を示す。そして、以下の説明では、本装置1および本装置1に含まれる構成要素の向きや互いの位置関係については、本装置1が車両ドア5に取り付けられており、車両ドア5が閉じられている状態を基準とする。
図1は、本装置1が適用された車両ドア5の構成を示す模式図である。なお、図1は車両ドア5の側面図であり、車幅方向外側から見た図である。車両ドア5は、その下半部を構成するドア本体部51と、その上半部に設けられているドアサッシュ52とを備えている。ドア本体部51は、外側面を構成するドアアウタパネル53と、ドアアウタパネル53の内側面に固定されている図略のドアインナパネルと、ドアインナパネルの内側面に固定され且つドア本体部51の内側面を構成する樹脂製の図略のトリムとを備えている。本装置1は、車両ドア5のドア本体部51の後端部近傍でかつ上端部近傍部に配置されており、ドアアウタパネル53に取り付けられている。そして、本装置1を構成するアウトサイドドアハンドル12はドアアウタパネル53の車幅方向外側に位置しており、ベースフレーム11はドアアウタパネル53の車幅方向内側(すなわち、車両ドア5の内部)に位置している。また、車両ドア5の後端部近傍で、かつ、本装置1の下方には、ドアロック機構6が配置されている。そして、本装置1とドアロック機構6とは、操作ワイヤー7によって連結されており、本装置1のアウトサイドドアハンドル12の動作は操作ワイヤー7を介してドアロック機構6に伝達される。
図2は、本装置1を車内側から見た斜視図である。図2に示すように、本装置1は、車両ドア5を構成するドアアウタパネル53に取り付けできるように構成されている。本装置1は、複数の構成部材が一体的に組付けられたアセンブリ(「アッシー」と称することもある)として構成されている。そして、本装置1には、ベースフレーム11、アウトサイドドアハンドル12、ベルクランク13、およびドア開放防止機構10が含まれている。
ベースフレーム11は、ドアアウタパネル53の車内側に取り付けられる部材であり、全体またはほぼ全体がドアアウタパネル53の車内側(すなわち、車両ドア5の内部)に配置される。ベースフレーム11は、例えば樹脂材料により形成される。ベースフレーム11の前端部またはその近傍には、ヒンジ機構を介してアウトサイドドアハンドル12が相対的に回転可能に連結されている。また、ベースフレーム11の前後方向の中央よりも後ろ側の位置には、ベルクランク13がベースフレーム11に対して相対的に回転可能に支持されている。本実施形態では、アウトサイドドアハンドル12のベースフレーム11に対する回転中心線C3と、ベルクランク13のベースフレーム11に対する回転中心線C1がたがいに平行であり、かつ上下方向に平行である例を示す。ただし、これらの回転中心線C1,C3は上下方向に平行でなくてもよく、上下方向に対して傾斜していてもよい。
ベースフレーム11には、後述する慣性レバー15の移動を規制するためのロック部の例であるロックピン111が設けられている。なお、ロックピン111の構成については後述する。
アウトサイドドアハンドル12は、本実施形態では、グリップタイプのハンドルである。アウトサイドドアハンドル12は、長尺棒状の形状を有しており、その長尺方向が車両前後方向に平行な向きで配置されている。アウトサイドドアハンドル12の前端部またはその近傍には、車幅方向内側に突出するアームが設けられている。そして、アームは、本装置1が車両ドア5に取り付けられている状態で、ドアアウタパネル53に設けられている開口部(貫通孔)を通じてドアアウタパネル53の車内側(すなわち、車両ドア5の内部)に入り込んでいる。
アウトサイドドアハンドル12のアームにはヒンジ機構が設けられており、アウトサイドドアハンドル12は、このヒンジ機構を介してベースフレーム11に対して相対的に回転可能に連結されている。このため、アウトサイドドアハンドル12は、前端部または前端部の近傍を中心として、ベースフレーム11(すなわち、ベースフレーム11が取り付けられた車両ドア5)に対して相対的に回転可能である。そして、アウトサイドドアハンドル12は、ベースフレーム11に対して回転することで、後端部側の部分がドアアウタパネル53に最も近接する位置である初期位置と、初期位置から後端部側の部分が車幅方向外側に所定の距離移動するように回転した解除位置とに移動可能である。そして、アウトサイドドアハンドル12は、図略のハンドル付勢部材によって初期位置に向けて常時付勢されており、車両の使用者は、アウトサイドドアハンドル12をこのハンドル付勢部材の付勢力に抗して車幅方向外側に引くことで、アウトサイドドアハンドル12を初期位置から解除位置に移動させることができる。
アウトサイドドアハンドル12の後端部またはその近傍には、車幅方向内側に突出する係合部121が設けられている。係合部121は、本装置1が車両ドア5に取り付けられている状態で、ドアアウタパネル53に設けられている開口部(貫通孔)を通じてドアアウタパネル53の車内側(すなわち、車両ドア5の内部)に入り込んでいる。アウトサイドドアハンドル12の係合部121は、後述するベルクランク13の第一アーム部131に、車幅方向内側から係合するように構成されている。例えば、係合部121は、上下方向視において略「L」字形状を有しており、係合部121の先端部が後述するベルクランク13の第一アーム部131に車幅方向内側から係合するように構成されている。そして、アウトサイドドアハンドル12の係合部121は、アウトサイドドアハンドル12が初期位置から解除位置に向かって移動した場合に、ベルクランク13の第一アーム部131を車幅方向内側から車幅方向外側に向かって押すように構成されている。
ベルクランク13は、ベースフレーム11に対して回転可能に支持されており、回転することで初期位置と解除位置とに移動可能である。ベルクランク13は、ベルクランク付勢部材14によって初期位置に向かって常時付勢されている。ベルクランク付勢部材14の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、両端部のそれぞれに1本ずつのアームを有するねじりコイルバネが適用できる。この場合、ベルクランク付勢部材14である捩じりコイルバネの一方のアームがベースフレーム11に係合し、他方のアームがベルクランク13に係合することで、ベルクランク13は初期位置に向けて付勢される。なお、図2は、ベルクランク13が初期位置に位置する状態を示している。
ベルクランク13は、軸部135と、第一アーム部131と、第二アーム部132と、第三アーム部133とを有している。軸部135は、例えば円柱形状を有しており、その長尺方向が上下方向に平行となる向きで配置されている。そして、軸部135の長尺方向の両端部は、ベースフレーム11に回転可能に支持されている。このため、ベルクランク13は、軸部135の回転中心線C1を中心として、ベースフレーム11に対して相対的に回転可能である。
第一アーム部131は、アウトサイドドアハンドル12の係合部121と係合可能に構成されている部分である。本実施形態では、第一アーム部131は、ベルクランク13が初期位置に位置する状態で、軸部135から斜め後方車内側に向かって突出するように設けられている。また、本実施形態では、第一アーム部131は、軸部135の上下方向の略中央に設けられる構成を示す。アウトサイドドアハンドル12が初期位置から解除位置に移動する際に、アウトサイドドアハンドル12の係合部121がベルクランク13の第一アーム部131と係合し、第一アーム部131を車幅方向外側に向けて押す。そして、第一アーム部131が車幅方向外側に移動することで、ベルクランク13は回転して初期位置から解除位置に移動する。図2においては、ベルクランク13は、アウトサイドドアハンドル12の初期位置から解除位置への移動に伴って、車両上方から見て反時計回りに回転するように構成される例を示す。なお、第一アーム部131の具体的な構成は特に限定されるものではない。第一アーム部131は、アウトサイドドアハンドル12が初期位置から解除位置に移動する際に、アウトサイドドアハンドル12の係合部121に係合し、この係合部121によって車幅方向内側から外側に向かって押されるように構成されていればよい。
第二アーム部132は、慣性レバー15に相対的に回転可能に連結される部分であり、軸部135から突出している。本実施形態では、第二アーム部132は、ベルクランク13が初期位置に位置する状態で、軸部135から斜め前方車内側に向かって突出するように構成されている。また、本実施形態では、第二アーム部132が、軸部135の上下方向の略中央に設けられる構成を示す。第二アーム部132には、慣性レバー15に設けられている連結ピン15aを挿入可能な連結孔134が設けられている。この連結孔134は、第二アーム部132を貫通する貫通孔であり、その軸線は軸部135の回転中心線C1の方向に平行である。
第三アーム部133は、操作ワイヤー7が連結される部分であり、軸部135から突出している。本実施形態では、第三アーム部133は、ベルクランク13が初期位置に位置する状態で、軸部135から斜め前方車内側に向かって突出するように構成されている。また、本実施形態では、第三アーム部133が、第一アーム部131と第二アーム部132よりも下側に設けられている構成を例に示す。なお、第三アーム部133は、操作ワイヤー7を連結可能に構成されていればよく、具体的な構成は特に限定されるものではない。
操作ワイヤー7の他端はドアロック機構6に連結されている(図1参照)。そして、ベルクランク13が回転して操作ワイヤー7を引くことで、アウトサイドドアハンドル12の動作がドアロック機構6に伝達され、ドアロック機構6は車両ドア5を閉状態に保持する(開放不可能な状態に保持する)ラッチ状態から車両ドア5の開放を許容する(開放可能な状態である)アンラッチ状態に切り替わる。
ここで、ドアロック機構6の構成例について、簡単に説明する。ドアロック機構6は、車両ドア5に組付けられているラッチおよびポールを有している。ラッチは、車体側に固定されているストライカと係合するラッチ位置(フルラッチ位置とハーフラッチ位置)およびストライカと係脱自在なアンラッチ位置とに移動可能に構成されている。ポールは、ラッチをラッチ位置に保持しアンラッチ位置への移動を許容しない位置と、アンラッチ位置への移動を許容する位置とに移動可能に構成されている。そして、操作ワイヤー7が引かれていない状態では、ポールはポールリターンスプリングの付勢力によって、ラッチをラッチ位置に保持する位置に保持されている。このため、操作ワイヤー7が引かれていない状態では、車両ドア5は開放不能な状態に保持される。操作ワイヤー7が引かれると、操作ワイヤー7の動作がポールに伝達される。そして、ポールは、ポールリターンスプリングの付勢力に抗して、ラッチをラッチ位置に保持する位置からラッチがアンラッチ位置へ移動することを許容する位置に移動する。このため、ラッチとストライカは係脱可能な状態となり、車両ドア5は開放可能な状態になる。このように、アウトサイドドアハンドル12が操作されると、アウトサイドドアハンドル12の動作がベルクランク13と操作ワイヤー7を介してドアロック機構6に伝達され、ドアロック機構6はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
なお、ドアロック機構6は、従来公知の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。要は、ドアロック機構は、操作ワイヤー7と連結されており、操作ワイヤー7が引かれるとラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるように構成されていればよい。
ドア開放防止機構10は、車両が側突された場合に車両ドア5が開放されることを防止する機能を有する。ドア開放防止機構10は、その構成要素として、ロックピン111と、慣性レバー15と、慣性レバー付勢部材16とを有している。
ロックピン111は、後述する慣性レバー15の係合溝152に挿通されるとともにこの係合溝152に係合している部分である。ロックピン111は、ベースフレーム11に一体に設けられている。例えば、ベースフレーム11には、車幅方向内側に突出するように構成されているロックピン支持部113が一体に設けられており、ロックピン111はこのロックピン支持部113から上側に突出するようにロックピン支持部113と一体に設けられている。本実施形態では、ロックピン111に抜け止め部112が設けられている。抜け止め部112は、ロックピン111の先端に設けられる部分であり、上下方向視(ロックピン111の突出方向視)において、後述する係合溝152の第一の部分153の幅よりも大きい寸法を有している。このため、ロックピン111が係合溝152の第一の部分153に係合している状態では、ロックピン111と慣性レバー15との上下方向の相対移動が規制され、ロックピン111が係合溝152の第一の部分153から抜け出ない。なお、ロックピン111およびロックピン支持部113の具体的な形状は特に限定されるものではない。
慣性レバー15は、長尺の部材であり、長尺方向が車両前後方向と略平行な向きで配置されている。なお、慣性レバー15の材質は特に限定されるものではなく、例えば樹脂材料が適用できる。ただし、慣性レバー15は金属材料により形成されていてもよい。慣性レバー15は、連結ピン15a及びレバー部15bを有する。連結ピン15aはレバー部15bの後端部に設けられており、ベルクランク13の第二アーム部132に対して相対的に回転可能に連結されている。連結ピン15aは、レバー部15bの後端部から下側に向かって突出する略円柱形状の部材であり、この連結ピン15aがベルクランク13の第二アーム部132に設けられている連結孔134に挿入されている。このため、慣性レバー15は、その後端部の連結ピン15aを回転中心として、ベルクランク13に対して相対的に回転可能である。なお、慣性レバー15のベルクランク13に対する回転中心線C2は、ベルクランク13のベースフレーム11に対する回転中心線C1と平行であり、本実施形態では上下方向に平行である。
慣性レバー15のレバー部15bは、連結ピン15aが設けられている部位から前方に延設され、長尺状に形成される。このレバー部15bの前端部(連結ピン15aが設けられる側とは反対側の端部)には、ウェイト部156が設けられている。ウェイト部156は、慣性レバー15の重心G(図6参照)の位置を調節する機能を有している。レバー部15bの前端部にウェイト部156が設けられる構成であると、ウェイト部156が設けられない構成と比較して、慣性レバー15の重心Gが前側(ウェイト部156が設けられる端部側)に位置する。また、本実施形態では、ウェイト部156は、慣性レバー15の重心Gの位置を下げる機能も有している。慣性レバー15の重心の位置を下げるため、ウェイト部156は、下側に向かって突出するように設けられている。なお、ウェイト部156の具体的な形状は特に限定されるものではない。
また、レバー部15bには、係合溝152が設けられている。係合溝152は、ロックピン111が挿入されるとともに相対的に移動可能に係合している溝である。この係合溝152は、第一の部分153と第二の部分154とを有している。第一の部分153は、レバー部15bの長尺方向(延在方向)と略同じ方向に沿って形成された長孔状の部分である。そして、第一の部分153は、慣性レバー15とロックピン111との相対移動が許容されるように、ロックピン111の外径よりも大きい幅を有する。第二の部分154は、第一の部分153の後端部(連結ピン15aに近い側の端部)に連設され、第一の部分153から車幅方向内側に延伸する部分である。このため、係合溝152は、上下方向視において略「L」字形状を有する。換言すると、係合溝152は、慣性レバー15の長尺方向と略同じ方向に長い長孔状の部分と、この長孔状の部分の後端部に設けられ、この長孔状の部分よりも幅が大きい部分(車幅方向寸法が大きい部分)とを有する。長孔状の部分が第一の部分153を構成し、幅が大きい部分が第二の部分154を構成する。
そして、第二の部分154の前端に、係合辺155が形成される。この係合辺155は、第一の部分153の両側面のうち車幅方向内側の側面の後端から車幅方向内側に向かって、レバー部15bの延在方向に交差するように形成される。この係合辺155は、車両の側突時において慣性レバー15のレバー部15bとロックピン111との前後方向の相対移動(具体的には、慣性レバー15のレバー部15bがロックピン111に対して相対的に車両後方に移動すること)を規制する機能を有する。係合辺155は、係合溝152の内周面のうちのロックピン111の側(後側)を向く部分であり、ベルクランク13が初期位置に位置する状態で、ロックピン111よりも前側に位置するように設けられている。
慣性レバー付勢部材16は、慣性レバー15のレバー部15bを、その前端側が車幅方向内側に移動する向き(すなわち、初期位置)に常時付勢するように構成されている。慣性レバー付勢部材16には、例えば両端部のそれぞれにアームが設けられているねじりコイルバネが適用できる。この場合、ねじりコイルバネのコイル状の部分が慣性レバー15の連結ピン15aの外周を囲むように配置され、一方のアームが慣性レバー15に係合し、他方のアームがベルクランク13に係合するという構成が適用できる。ただし、慣性レバー付勢部材16は前記のようなねじりコイルバネに限定されるものではない。慣性レバー付勢部材16は、慣性レバー15を、そのレバー部15bの前端側が車幅方向内側に移動する向きに付勢するように構成されていればよい。なお、この慣性レバー付勢部材16の付勢力は、車両の側突時において慣性レバー15が受ける力(慣性レバー15に生じる慣性力であって、慣性レバー15を車幅方向外側に移動させるように作用する力)の作用方向に対向する方向に慣性レバー15を付勢し、且つ慣性レバー15が受ける力(慣性力)よりも小さくなるように設定されている。
なお、ベルクランク13は、アウトサイドドアハンドル12の後端部またはその近傍に設けられる係合部121と係合可能に配置されているため、前後方向に関し、アウトサイドドアハンドル12の後端部寄りの位置(アウトサイドドアハンドル12の前端部よりも後端部に近い位置)に位置する。このため、ベルクランク13と連結されている慣性レバー15の連結ピン15aも、ベルクランク13が初期位置に位置する状態において、アウトサイドドアハンドル12の後端部寄りの位置(アウトサイドドアハンドル12の前端部よりも後端部に近い位置)に位置する。ただし、慣性レバー15の前端部(レバー部15bの前端部)は、前後方向に関し、アウトサイドドアハンドル12の後端部よりも前端部に近い位置に位置していてもよい。
(車両用ドアハンドル装置の動作)
次に、本装置1の動作について説明する。図3と図4は、側突が発生しておらず、かつ、アウトサイドドアハンドル12が初期位置に位置する状態を示す図である。なお、図3は上面視図であり、図4は車幅方向内側から見た斜視図である。図3と図4に示すように、この状態では、ベルクランク13はベルクランク付勢部材14の付勢力によって初期位置に保持されている。そして、この状態では、ロックピン111は、慣性レバー15の係合溝152の後端部近傍に位置している。また、慣性レバー15のレバー部15bは、慣性レバー付勢部材16によって図3中反時計回りの方向(すなわち、レバー部15bが車幅方向内側に移動する向き)に付勢されている。このため、慣性レバー15は、慣性レバー付勢部材16の付勢力によって、ロックピン111が係合溝152の内周面のうちの車幅方向外側に位置する側面(車幅方向外側面)に当接する位置に保持される。「ロックピン111が係合溝152の車幅方向外側面に当接する位置」(換言すると、車幅方向に振り子移動可能な範囲のうちで、最も車幅方向内側の位置)が、慣性レバー15の初期位置である。このときレバー部15bは、ほぼ車両前後方向に沿って延在する。
図5は、アウトサイドドアハンドル12が初期位置(図3と図4参照)から解除位置に移動した状態を示す上面視図である。なお、図5においては、アウトサイドドアハンドル12とベルクランク12と慣性レバー15の初期位置を二点鎖線で示す。図5に示すように、アウトサイドドアハンドル12が初期位置から解除位置に移動すると、アウトサイドドアハンドル12の係合部121がベルクランク13の第一アーム部131を車幅方向内側から車幅方向外側に向かって押す。このため、ベルクランク13は図5において反時計回りの方向に回転して初期位置から解除位置に移動し、慣性レバー15はベルクランク13の回転に連動して車両後方側に移動する。なお、慣性レバー15は、ベルクランク13の回転中および回転後においても、慣性レバー付勢部材16によって、初期位置に向けて(すなわち、前端側が車幅方向内側に向けて移動する向きに)付勢されている。このため、ベルクランク13の回転中および回転後も、慣性レバー15は初期位置に保持される。よって、ベルクランク13の回転中、慣性レバー15の係合溝152の車幅方向外側面にロックピン111が係合した状態が維持されたまま、ロックピン111が係合溝152の第一の部分153を車両前方側にスライドする。ここで、係合溝152に形成された係合辺155は係合溝152の第一の部分153よりも車幅方向内側に位置しているから、ロックピン111が係合溝152の内周面のうちの車幅方向外側の側面に接触する状態では、ロックピン111は係合辺155に当接しない。このため、この状態では、慣性レバー15はロックピン111に対して車両後方に相対的に移動できる。したがって、ベルクランク13の回転は規制されない。
ベルクランク13が初期位置から図5に示す解除位置に回転移動すると、ベルクランク13の第三アーム部133に連結されている操作ワイヤー7の一方の端部が車両後方に向かって引っ張られる。この操作ワイヤー7の他方の端部は、前述のとおりドアロック機構6に連結されている。そして、操作ワイヤー7の一方の端部が引っ張られると、ロック機構6はラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。したがって車両ドア5は開放できる状態となる。このように、側突が発生しておらず、慣性レバー15が初期位置に位置している場合には、ベルクランク13の回転が規制されない。したがって、この場合には、使用者は、アウトサイドドアハンドル12を初期位置から解除位置に移動させることで、車両ドア5を開放可能な状態にすることができる。
このように、本装置1においては、ベルクランク13が初期位置から解除位置に移動することで、慣性レバー15が後方に移動するとともに、操作ワイヤー7が引かれる。すなわち、本装置では、慣性レバー15の移動と操作ワイヤー7が引かれる動作とは、ほぼ同時である。
次に、側突が発生した場合のドア開放防止機構10の動作について説明する。図6と図7は、側突が発生した際のドア開放防止機構10の動作を説明する図である。なお、図6は上面視図であり、図7は車幅方向内側から見た斜視図である。
側突が発生すると、本装置1を構成する各部材には、車幅方向外側に向かう慣性力が作用する。このため、アウトサイドドアハンドル12には、初期位置から解除位置に移動させるような慣性力が作用する。また、慣性レバー15には、そのレバー部15bの前端側の部分を初期位置から車幅方向外側に移動させるような慣性力Fが作用する。そして、慣性レバー15のレバー部15bの前端側の部分が慣性力Fによって初期位置から車幅方向外側に移動すると、図6と図7に示すように、ロックピン111が係合溝152の車幅方向外側面から離脱して、第二の部分154の車幅方向内側面に近い位置に移動する。このときロックピン111の前方に係合辺155が位置する状態となる。説明の便宜上、このような状態となる位置を、慣性レバー15の「作動位置」と称する。
この状態でアウトサイドドアハンドル12が慣性力Fにより初期位置から車幅方向外側に移動すると、係合部121がベルクランク13の第一アーム部131を車幅方向外側に向かって押し、ベルクランク13は図6中反時計回りの方向に回転しようとする。しかしながら、慣性レバー15が作動位置に移動しているため、ベルクランク13が回転して慣性レバー15が車両後方に移動しようとすると、ロックピン111の前方に位置する慣性レバー15の係合辺155が矢印Mの方向に移動し、ロックピン111に当接する。そして、係合辺155がロックピン111に当接すると、慣性レバー15はそれ以上車両後方に向かって移動できない。このため、ベルクランク13もそれ以上は解除位置に向かって回転移動できない。したがって、操作ワイヤー7が引っ張られないから、ロック機構6はアンラッチ状態に切り替わらずにラッチ状態に保持される。すなわち、車両ドア5が開放可能な状態になることが防止される。
本実施形態では、慣性レバー15の連結ピン15aがベルクランク13に対して回転可能に連結されており、レバー部15bの長尺方向が前後方向に略平行な向きで配置されている。すなわち、慣性レバー15は、連結ピン15aの回転中心(回転中心線C2)から車両前方に向かって延伸する長尺形状を有している。このような構成であると、慣性レバー15の重心Gは、車両前後方向に関し、連結ピン15a(回転中心線C2)よりも前側に位置する。このため、次に示す理由により、ドア開放防止機構10の動作の確実性を向上させることができる。
本装置1のドア開放防止機構10は、慣性レバー15が側突時の慣性力Fによって初期位置から作動位置へ移動する(すなわち、車幅方向外側に移動する)ことで、側突時にベルクランク13の回転を規制するように構成されている。このため、慣性レバー15が作動位置に移動するよりも前に、ベルクランク13が回転して慣性レバー15が後方に移動し、係合辺155がロックピン111よりも後方に位置する状態となると、ベルクランク13の回転を規制できない。なお、本実施形態では、ベルクランク13が初期位置に位置する状態では、係合辺155はロックピン111に当接しておらず、ロックピン111よりも前方に所定の距離離間している。このため、慣性レバー15が作動位置に移動するよりも先にベルクランク13が回転を始めたとしても、慣性レバー15が前記所定の距離を車両後方に移動するまでの間に作動位置に移動すれば、ロックピン111が係合辺155に係合することができ、これによりベルクランク13のそれ以上の回転を規制して車両ドア5が開放可能な状態になることを防止できる。このように、慣性レバー15の初期位置から作動位置への移動がベルクランク13の回転よりも遅れても、車両ドア5が開放状態になることが規制される。
ところで、側突が発生した場合、アウトサイドドアハンドル12と慣性レバー15に慣性力Fが作用するタイミングは、側突が発生した箇所からそれぞれの部材(アウトサイドドアハンドル12と慣性レバー15)までの距離の影響を受ける。具体的には、慣性力Fが作用するタイミングは、側突が発生した箇所からそれぞれの部材の重心Gまでの距離が短いと早くなり、長いと遅くなる。このため、側突が発生した箇所からアウトサイドドアハンドル12の重心までの距離が、側突が発生した箇所から慣性レバー15の重心Gまでの距離よりも短いと、アウトサイドドアハンドル12が慣性レバー15よりも先に移動を開始する。
したがって、慣性レバーよりも前側において側突が発生すると、側突が発生した箇所からアウトサイドドアハンドルの重心までの距離よりも、側突が発生した箇所から慣性レバーの重心までの距離が長いことにより、慣性レバーの移動がアウトサイドドアハンドルの移動よりも遅れる。そして、この距離の差が大きくなると、この遅れが大きくなる。これにより慣性レバーの作動が遅れて車両ドアが開放する虞がある。
これに対し、本実施形態では、慣性レバー15のレバー部15bを連結ピン15a(回転軸)から前方に延ばすことで、重心Gの車両前後方向の位置を連結ピン15aよりも前側に位置するように構成している。このため、連結ピン15aが接続されるベルクランク13がアウトサイドドアハンドル12の車両後寄りに配置されている構成であっても、図6に示すように、慣性レバー15の重心をアウトサイドドアハンドル12の重心G1に近づけることができる。
このような構成であれば、本装置1よりも前方において側突が発生した場合において、側突の発生箇所からアウトサイドドアハンドル12の重心までの距離と側突の発生箇所から慣性レバー15の重心Gまでの距離との差を小さくできる。したがって、本装置1よりも前方において側突が発生した場合に、アウトサイドドアハンドル12の移動と慣性レバー15の移動のタイミングの差を小さくできる(慣性レバー15の移動の遅れを小さくできる)。したがって、「係合辺155がロックピン111よりも後方に移動するよりも前に慣性レバー15を作動位置に移動させる」という動作の確実性を高めることができる。
また、本実施形態では、慣性レバー15のレバー部15bの前端部またはその近傍にウェイト部156が設けられている。このような構成であると、ウェイト部156が設けられない構成と比較して、慣性レバー15の重心が前側に位置する。したがって、慣性レバー15とベルクランク13がアウトサイドドアハンドル12の車両後寄りに配置されている構成であっても、慣性レバー15の重心を、車両前後方向に関して、アウトサイドドアハンドル12の重心にさらに近づけることができる。したがって、「係合辺155がロックピン111よりも後方に移動するよりも前に慣性レバー15を作動位置に移動させる」という動作の確実性をさらに高めることができる。
なお、慣性レバー15の重心の前後方向位置は、アウトサイドドアハンドル12の重心の前後方向位置と同じ位置であってもよい。このような構成であれば、側突が本装置1の前後いずれの側において発生しても、慣性レバー15とアウトサイドドアハンドル12の移動のタイミングの差を少なくできる。したがって、側突の発生位置にかかわらず、本装置1のドア開放防止機構10の動作の確実性を向上させることができる。
また、本実施形態では、慣性レバー15のウェイト部156は、下側に突出するように設けられている。このような構成によれば、慣性レバー15の重心Gの上下方向位置を下げることができる。本装置1が車両ドア5のドア本体部51の上端部近傍に設けられる構成であると(図1参照)、側突の箇所は本装置1よりも下側になることが多い。そこで、慣性レバー15の重心Gの上下方向位置を下げることにより、本装置1の下方で側突が発生した場合に、慣性レバー15が慣性力によって作動位置に移動するタイミングを早めることができる。このため、ドア開放防止機構10の動作の確実性を高めることができる。
また、本装置1では、慣性レバー15のレバー部15bに曲部Cが設けられている。具体的には、上面視においてレバー部15bは曲部Cを有しており、慣性レバー15およびベルクランク13が初期位置に位置する状態では、曲部Cよりも前側の部分は車両前後方向方向に略平行である。また、曲部Cよりも後方の部分は、後ろ側に向かうにしたがって車幅方向外側に向かうように傾斜している。このような構成によれば、本装置1の車幅方向寸法を小さくして本装置1の小型化を図ることができる。すなわち、慣性レバー15が曲がっていない構成であると(直線棒状であると)、曲がっている構成に比較して、前端部が車幅方向内側に位置することになる。このため車両用ドアハンドル装置の車幅方向寸法が大きくなる。これに対して、本実施形態では、慣性レバー15が曲がっているため、前端部が車幅方向中心側に入り込まないようにできる。
また、本装置1では、慣性レバー15は、連結ピン15aを中心に回転可能に構成されており、連結ピン15aから前方に向かってレバー部15bが延出するように、配置されている。このような構成であれば、本装置1の上下方向に対する傾斜角度が相違しても、慣性レバー15の応答性に差が生じないようにできる。図8は、比較例に係る車両用ドアハンドル装置9の構成例を示す図であり、前後方向に直角な面で切断した断面図である。図8に示すように、比較例に係る車両用ドアハンドル装置9は、本装置1と同様にドアアウタパネル95に取り付けられるように構成されており、アウトサイドドアハンドル90と、ベルクランク91と、慣性レバー92と、ロックピン93とを有している。なお、本装置1とは異なり、ベルクランク91と慣性レバー92とは、前後方向に平行な回転中心線C11,C12を中心に回転可能に構成されている。そして、慣性レバー92のレバー部92bは、回転中心である上端部から下方に延出するように配置されている。側突が生じた場合、慣性力Fは慣性レバー92を車幅方向の外側に移動させるように作用する。この場合、慣性レバー92を初期位置から作動位置に回転移動させるモーメントは、慣性レバー92の回転中心線C12から重心Gまでの上下方向距離Aによって変化する。このため、車両用ドアハンドル装置9の上下方向に対する傾斜角が相違すると、慣性レバー92の回転中心線C12から重心Gまでの上下方向距離(すなわち、モーメントアーム)が相違する。例えば比較例に係る車両用ドアハンドル装置9が図9に示すように傾斜した状態で車両ドアに取り付けられている場合、慣性レバー92の回転中心線C12から重心Gまでの上下方向距離A1は、図8に示す上下方向距離Aよりも短い。したがって、この傾斜角度が相違すると、慣性レバー92の応答性も相違することがある。
これに対して、本装置1では、慣性レバー15は回転中心である連結ピン15aから前方に延出するように配置されている。このため、本装置1が上下方向に対して車幅方向に傾斜しても、回転中心線C2から慣性レバー15の重心までの前後方向の距離は変化しない。このため、本装置1の傾斜角度が相違しても、慣性レバー15にかかるモーメントは相違しない。したがって、本装置1の傾斜角度が相違する場合であっても、慣性レバー15の応答性に差が生じないようにできる。
本実施形態では、ベルクランク13に操作ワイヤー7が連結されており、アウトサイドドアハンドル12の動作は、ベルクランク13と操作ワイヤー7を介してドアロック機構6に伝達される。このような構成であると、本装置1とドアロック機構6との相対的な位置関係の制限が少なくなる。
また、本装置1によれば、ロックピン111は慣性レバー15の係合溝152に常時に係合している。そして、ロックピン111は、抜け止め部112によって第一の部分152から抜け出ないように構成されている。このため、慣性レバー15がロックピン111から外れて予定しない回転動作を起こすのを防止できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、前記実施形態では、操作ワイヤー7によってアウトサイドドアハンドル12の動作をドアロック機構6に伝達する構成を示したが、このような構成に限定されない。例えば、本装置1とドアロック機構6とは、ロッドによって連結される構成であってもよい。要は、アウトサイドドアハンドル12の動作が、所定の部材を介してドアロック機構6に伝達される構成であればよい。
また、前記実施形態では、ロックピン111がベースフレーム11に設けられる構成を示したが、ベースフレーム11以外の部材にロックピン111が設けられる構成であってもよい。ロックピン111は、ベースフレーム11に対して相対的に変位しなければよい。また、ロックピン111がロックピン支持部113から上方に突出する構成を示したが、ロックピン111がロックピン支持部113から下方に突出する構成であってもよい。
また前記実施形態では、側突の際に作動するドア開放防止機構10について記載したが、側突のみならず、車両の前面衝突、背面衝突、オフセット衝突等、種々の衝突形態に対応したドア開放防止機構10に本発明を適用することができる。この場合、慣性レバー15が車両の衝突時に生じる慣性力によって回転移動することで、ベルクランク13の移動をロックする構造を利用して車両ドア5の開放を防止することができる。
また上記の実施形態では、車両右後部の車両ドア5に設けられる車両用ドアハンドル装置について記載したが、本発明では、この車両用ドアハンドル装置1の本質的な構造を車両右後部の車両ドア5以外の別のドアに適用することもできる。例えば、車両左後部のドアは勿論、車両右前部のドアや車両左前部のドア、更には車両後部のドア(バックドア)に、車両用ドアハンドル装置1の本質的な構造を適用することもできる。
1…車両用ドアハンドル装置、10…ドア開放防止機構、11…ベースフレーム、111…ロックピン、12…アウトサイドドアハンドル、121…係合部、13…ベルクランク、131…第一アーム部、132…第二アーム部、133…第三アーム部、135…軸部、14…ベルクランク付勢部材、15…慣性レバー、16…慣性レバー付勢部材、5…車両ドア

Claims (6)

  1. 車両ドアを構成するドアアウタパネルに取り付けられるベースフレームと、
    車両の前後方向に長い長尺形状を有し、前記ベースフレームに対して回転可能に連結され、回転することで、初期位置と前記初期位置から車幅方向外側に向けて回転した解除位置とに移動可能なアウトサイドドアハンドルと、
    前記ベースフレームに対して回転可能に設けられており、前記アウトサイドドアハンドルの動作を、前記車両ドアの開放が規制されるラッチ状態と前記車両ドアの開放が許容されるアンラッチ状態とを切替え可能に構成されるドアロック機構の切替え動作に変換するために、前記アウトサイドドアハンドルの移動に連動して回転するベルクランクと、
    前記車両の衝突時に前記車両ドアが開放されるのを防止するドア開放防止機構と、
    を有しており、
    前記ドア開放防止機構は、
    前記ベルクランクに対して回転可能に連結された連結部と、前記連結部から前方に延設されたレバー部とを有し、付勢部材の付勢力によって初期位置に向けて付勢されている慣性レバーと、
    前記ベースフレームに設けられており、前記車両の非衝突時においては前記付勢部材の付勢力に従って前記初期位置に位置する前記慣性レバーとの相対変位を許容することで、前記ベルクランクの回転を許容し、前記車両の衝突時に生じる慣性力によって前記付勢部材の付勢力に抗して前記初期位置から作動位置に移動した前記慣性レバーとの相対変位を規制することで、前記ドアロック機構が前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態に切替らないように前記ベルクランクの回転を規制するロック部と、
    を有しており、
    前記連結部は、前記車両の前後方向に関して前記アウトサイドドアハンドルの前端部よりも前記アウトサイドドアハンドルの後端部に近い位置に位置しており、前記慣性レバーの重心は前記慣性レバーの前記連結部よりも前側に位置している、
    車両用ドアハンドル装置。
  2. 請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置において、
    前記慣性レバーの前記レバー部の前端部には、前記慣性レバーの重心を前端部に近づけるためのウェイト部が設けられている、
    車両用ドアハンドル装置。
  3. 請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置において、
    前記ウェイト部は、前記レバー部から下方に突出している、
    車両用ドアハンドル装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置であって、
    前記レバー部は、前記慣性レバーの回転中心線の方向視において曲がっている曲部を有しており、前記曲部よりも前端部側は前記慣性レバーが前記初期位置に位置する状態において前記車両の前後方向に略平行であり、前記曲部よりも後端部側は、後方に向かうにしたがって車幅方向外側に向かうように傾斜している、
    車両用ドアハンドル装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置であって、
    前記ロック部は、前記ベースフレームに突設されたロックピンであり、
    前記レバー部には、前記ロックピンが挿通する係合溝が形成され、
    前記係合溝は、
    前記レバー部の延在方向に沿って長孔状に形成された第一の部分と、前記第一の部分の後端に連設された第二の部分を有し、
    前記第二の部分の前端には、前記レバー部の延在方向に交差する方向に沿って係合辺が形成され、
    前記車両の非衝突時においては前記初期位置に位置する前記慣性レバーの前記係合溝の前記第一の部分を前記ロックピンが移動することによって前記慣性レバーと前記ロックピンとの相対変位が許容され、
    前記車両の衝突時においては前記作動位置に移動した前記慣性レバーの前記係合溝の前記係合辺に前記ロックピンが係合することで、前記慣性レバーと前記ロックピンとの相対変位が規制される、
    車両用ドアハンドル装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置であって、
    前記ベルクランクには、前記車両ドアが開放可能な状態と開放不能な状態に切り替え可能な前記ドアロック機構に連結されている操作ワイヤーの一方の端部が連結されており、前記アウトサイドドアハンドルの前記初期位置から前記解除位置への移動に連動して前記ベルクランクが初期位置から解除位置に回転することで前記操作ワイヤーが引っ張られて、前記ドアロック機構を前記車両ドアが開放不能な状態から開放可能な状態に切り替えるように構成されている、
    車両用ドアハンドル装置。
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