JP2021075248A - 虚像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学部材が円滑に回動可能な虚像表示装置、又は弾性部材の塑性変形の抑制効果の長期的な維持が可能な虚像表示装置を提供する。【解決手段】虚像表示装置としてのHUDは、回転軸44のまわりに回動することにより、表示光による光路を変更可能に形成された可動鏡41と、可動鏡41を回動可能に支持する軸受台51Rと、軸受台51Rに対して固定される固定部63と、弾性変形により変位可能な弾性変位部64と、を有し、弾性変位部64が可動鏡41を軸方向に弾性的に付勢する弾性部材62と、を備える。可動鏡41は、可動鏡41側から軸受台51Rへ向かって軸方向に沿って突出する突起部45を有する。HUDは、弾性変位部64を塑性変形領域へ達せしめる可動鏡41の移動を規制するような突起部45の軸受台51Rとの当接状態と、突起部45が軸受台51Rとは間隔を空けた弾性変位部64の平衡状態とを、遷移可能に形成されている。【選択図】図7

Description

この明細書による開示は、車両における虚像の表示に関する。
車両に搭載されるように構成され、表示虚像として結像される表示光を投射する虚像表示装置が知られている。特許文献1に開示の装置は、光学部材、支持部材、及び弾性部材を備えている。光学部材は、回転軸のまわりに回動する。弾性部材は、支持部材に対して固定される固定部と、弾性変形により変位可能な変位部と、を有し、変位部が光学部材を軸方向に弾性的に付勢する。
ここで、光学部材側の回転軸から突設された突起部が、支持部材側の軸受に溝状に設けられた受部に嵌合することで、弾性部材の塑性変形は規制されている。
特許第6505280号公報
しかしながら、突起部と受部との嵌合構造では、常時突起部が受部の一部に当接した状態となる。このため、光学部材を回動させる場合に、突起部と受部との間に摩擦が生じ、光学部材の回動のための駆動トルクが大きくなってしまい、光学部材の回動の円滑性が阻害される。また、回動時、車両の振動時の摩擦等によって、徐々に突起部及び受部が削れて損傷し、弾性部材の塑性変形の抑制効果を、長期的に維持することが困難となる。
この明細書の開示による目的のひとつは、光学部材を円滑に回動させること可能な虚像表示装置を提供することにある。また、目的の他のひとつは、弾性部材の塑性変形の抑制効果を長期的に維持することが可能な虚像表示装置を提供することにある。
ここに開示された態様のひとつは、車両(1)に搭載されるように構成され、表示虚像(VRI)として結像される表示光を投射する虚像表示装置であって、
回転軸(44)のまわりに回動することにより、表示光による光路を変更可能に形成された光学部材(41)と、
光学部材を回動可能に支持する支持部材(51R)と、
支持部材に対して固定される固定部(63)と、弾性変形により変位可能な弾性変位部(64)と、を有し、弾性変位部が光学部材を軸方向に弾性的に付勢する弾性部材(62)と、を備え、
光学部材及び支持部材のうち一方は、一方から光学部材及び支持部材のうち他方へ向かって軸方向に沿って突出する突起部(45,257)を有し、
弾性変位部を塑性変形領域へ達せしめる光学部材の移動を規制するような突起部の他方との当接状態と、突起部が他方とは間隔を空けた弾性変位部の平衡状態とを、遷移可能に形成されている。
このような態様によると、光学部材及び支持部材のうち一方に設けられる突起部は、光学部材及び支持部材のうち他方へ向かって軸方向に突出する。軸方向への突出によって、弾性変位部により軸方向に弾性的に付勢された光学部材が、使用状態での振動又は輸送時の衝撃により、支持部材に対して軸方向に相対的に移動した場合に、突起部と他方の部材との軸方向の距離を変化させられる。こうした距離の変化により、振動又は衝撃を受けた状況での当接状態と振動又は衝撃を受けていない状況での平衡状態とが遷移可能となるように形成されている。当接状態では、突起部が他方の部材と当接することにより、弾性変位部を塑性変形領域へ達せしめる光学部材の移動は、規制される。一方、平衡状態では、弾性変位部が平衡状態を保つと共に、突起部と他方の部材とが間隔を空けている。所定の振動又は衝撃を受けていない状況にて突起部と他方の部材とが非接触状態となることで、突起部が他方の部材に常時接触することが回避されている。
常時接触の回避によれば、光学部材を回動させる場合の光学部材と支持部材との間の摩擦を少なくすることができる。故に、光学部材を円滑に回動させることが可能となる。
また、常時接触の回避によれば、回動時、車両振動時の摩擦によって、突起部が徐々に削れて損傷することが抑制される。故に、弾性部材の塑性変形の抑制効果を長期的に維持することが可能となる。
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
HUDの車両への搭載状態を示す図である。 可動鏡の回動について説明する図である。 可動鏡ユニットを示す正面図である。 図3のIV部において、可動鏡のみを示す拡大図である。 図3のV部において、支持部のみを示す拡大斜視図である。 図3のVI部において、支持部及び板ばねを示す拡大斜視図である。 図3のVII部の拡大図である。 平衡状態と当接状態との遷移を説明するための図である。 第2実施形態における図6に対応する図である。
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態による虚像表示装置は、図1に示すように、車両1に搭載されるように構成され、当該車両1のインストルメントパネル2内に収容されているヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)100である。ここで車両1とは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、移動しないゲーム筐体等の各種乗り物を含むように広義に解される。特に本実施形態の車両1は、四輪の自動車となっている。
HUD100は、車両1のウインドシールド3に設定された投影部3aへ向けて、表示虚像VRIとして結像されることとなる表示光を投射する。投影部3aにて反射される表示光が、車両1の室内に設定された視認領域EBに到達する。そして、インストルメントパネル2とは対向して配置される座席4に着座し、視認領域EBにアイポイントEPが位置する乗員は、当該表示光を表示虚像VRIとして知覚する。そして、乗員は、虚像表示される各種情報を認識することができる。虚像表示される各種情報としては、例えば車速、燃料残量等の車両1の状態を示す情報、又は視界補助情報、道路情報等のナビゲーション情報が挙げられる。
以下において、特に断り書きが無い限り、前、後、上、下、左及び右が示す各方向は、水平面HP上の車両1を基準として表記される。
車両1のウインドシールド3は、例えばガラスないし合成樹脂により透光性の板状に形成され、インストルメントパネル2よりも上方に配置されている。ウインドシールド3は、前方から後方へ向かう程、インストルメントパネルに対して離れるように傾斜して配置されている。ウインドシールド3は、画像の表示光が投影される投影部3aを、滑らかな凹面状又は平面状に形成している。なお、投影部3aは、ウインドシールド3に設けられていなくてもよい。例えば車両1と別体となっているコンバイナを車両1内に設置して、当該コンバイナに投影部3aが設けられていてもよい。
視認領域EBは、HUD100による表示虚像VRIが所定の規格を満たすように(例えば表示虚像VRI全体が所定の輝度以上となるように)視認可能となる空間領域であって、アイボックスとも称される。視認領域EBは、典型的には、車両1に設定されたアイリプスと重なるように設定される。アイリプスは、乗員のアイポイントEPの空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、仮想の楕円体状に設定されている。
このようなHUD100の具体的構成を、図2も用いて、以下に説明する。HUD100は、ハウジング10、表示器20、固定鏡30、可動鏡ユニット40、及び制御ユニット70を含む構成である。
ハウジング10は、HUD100の他の要素を収容する中空箱状を呈しており、インストルメントパネル2内に設置されている。ハウジング10は、投影部3aと対向する上方に、窓部11を有している。窓部11は、物理的に開口していてもよく、表示光を透過可能な防塵シートで覆われていてもよい。
表示器20は、例えば透過型の液晶式の表示デバイスである。表示器20は、液晶パネル及びバックライトをケーシングに収容して形成されている。表示器は、バックライトにより液晶パネルの画面21を透過照明することで、表示光を射出するようになっている。なお、表示器20として、反射型の液晶式の表示器、自発光するマイクロLEDを配列したマイクロLED式の表示器、レーザスキャナ方式の表示器、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing;登録商標)方式の表示器等を採用することもできる。表示器20における画面21は、例えばおよそ上方を向き、表示光が上方へ向けて発せられる。
固定鏡30は、ハウジング10に対して固定され、例えば合成樹脂ないしガラスにより、矩形板状に形成されている。固定鏡30は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面31を有している。固定鏡30としては、反射面31が滑らかな平面状に形成された平面鏡、反射面31が滑らかな凸面状に形成された凸面鏡等が採用され得る。固定鏡30は、表示器20に対しておよそ上方に位置し、その反射面31は、前方かつ下方の斜め方向を向いている。表示器20から固定鏡30に入射した表示光は、反射面31により可動鏡41へ向けて反射される。
可動鏡ユニット40は、固定鏡30からの表示光を投影部3aへ向けて反射するユニットであって、表示虚像VRI及び視認領域EBの位置を変更する機能を有する。可動鏡ユニット40は、図3にも示すように、可動鏡41、駆動出力部48、支持部50、板ばね62、引張ばね68等を含む構成である。
可動鏡41は、回転軸44のまわりに回動することにより、表示光による光路を変更可能に形成された光学部材である。可動鏡41は、例えば合成樹脂ないしガラス等により、矩形板状に形成されている。可動鏡41は、その表面にアルミニウム等の金属膜を蒸着させること等により形成された反射面43を有している。可動鏡41としては、例えば反射面43が滑らかな凹面状に形成された凹面鏡が採用され得る。可動鏡41は、表示器20及び固定鏡30に対しておよそ前方に位置し、その反射面43は、後方かつ上方の斜め方向を向いている。
固定鏡30から可動鏡41に入射した表示光は、反射面43により上方の投影部3aへ向けて反射される。中央部が凹む凹面状の反射面43での反射によって、表示虚像VRIは拡大される。さらには、反射面43が自由曲面状に形成されることで、拡大された表示虚像VRIの歪みを低減することができる。
こうして可動鏡41の反射面43に反射された表示光は、窓部11を透過することでHUD100の外部へ射出され、ウインドシールド3の投影部3aに入射する。投影部3aに反射された表示光が乗員のアイポイントEPに到達すると、当該乗員は表示虚像VRIを視認可能となるのである。
可動鏡41には、反射面43が形成された可動本体部42を水平面HPに沿った水平方向(左右)に挟む配置で、一対の回転軸端部44R,44Lが可動本体部42と一体的に形成されている。各回転軸端部44R,44Lは、可動本体部42からもう一つの回転軸端部44L,44Rに対して遠ざかる左方又は右方に、円柱状に突出して設けられている。一対の回転軸端部44R,44Lがそれぞれ支持部50に支持されることで、可動鏡41は回転軸44のまわりに回動可能となっている。すなわち、一対の回転軸端部44R,44L間を結ぶように、可動鏡41の回転中心をなす回転軸44が構成されている。
図2に示すように、可動鏡41の回動に伴って、反射面43の向きと共に、表示光の光路は変更される。反射面43がより上向きになる(すなわち可動鏡41が寝る)角度姿勢では、投影部3aにおける投影位置がより前方へずれ、表示虚像VRIの位置が上方へ移動する。これと共に、視認領域EBの位置は下方へ移動する。一方、反射面43がより下向きになる(すなわち可動鏡41が起立する)角度姿勢では、投影部3aにおける投影位置がより後方へずれ、表示虚像VRIの位置が下方へ移動する。これと共に、視認領域EBの位置は上方へ移動する。したがって、可動鏡41の向きの変更に伴って、表示虚像VRIの空間的表示条件が変更されるようになっている。
また可動鏡41には、図4に示すように、回転軸44の軸外、より詳細には一対の回転軸端部44R,44Lのうち片方の(本実施形態では右側の)回転軸端部44Rよりも下方における可動本体部42の下隅部42bから、軸方向に沿って突出する突起部45が、可動本体部42と一体的に形成されている。突起部45は、図5に示すように角柱状を呈し、その先端46を平面状に形成している。この突起部45は、可動鏡41の回転に伴って、回転軸44を曲率中心とした円弧状の回動軌跡RT1(図6の破線参照)に沿って移動する。
図3に示す駆動出力部48は、一対の回転軸端部44R,44Lのうちもう片方の(本実施形態では左側の)回転軸端部44Lに結合されている。駆動出力部48は、ステッピングモータ及び減速ギヤ機構を、ケーシングに収容して形成されている。ステッピングモータは、クローポール構造の永久磁石型モータであり、制御ユニット70からの駆動信号に応じて、モータ軸を回転させる。減速ギヤ機構は、複数の伝達ギヤを直列に噛合させてなる。減速ギヤ機構は、モータ軸の回転を減速して回転軸44に伝達する。回転軸44は、可動本体部42及びその反射面43と共に、所定の角度範囲にて回動する。所定の角度範囲は、減速ギヤ機構の内部に機械的にストッパが設けられること、制御ユニット70が制御的にステッピングモータの駆動を制限すること、又はこれらの組み合わせにより、規定される。こうした角度範囲の規定により、突起部45の軌跡としての回動軌跡RT1は、回転軸44に対して下方かつ後方となる斜め方向の所定範囲に規定される。
支持部50は、一対の回転軸端部44R,44Lに個別に対応する軸受台51R,51Lを一対有する構成である。軸受台51R,51Lは、対応する回転軸端部44R,44Lを軸受するように、可動鏡41の可動本体部42を水平方向(左右)に挟んで一対設けられている。各軸受台51R,51Lは、一体的に形成されて1つの支持部材を構成していてもよく、互いの位置関係が固定された状態にて、別々に形成されて2つの支持部材を構成していてもよい。本実施形態では、可動本体部42を挟んで反射面43とは反対側の可動鏡41の背面空間において、一対の軸受台51R,51Lを結合する結合部59が配置されていることで、一対の軸受台51R,51L及び結合部59が一体的に形成された1つの支持部材を構成している。支持部材は、例えば金属からなる板であって、可動鏡41を支持可能な強度を備えるように、所定の厚さ以上に形成された板に、折曲加工及び打抜加工等を施すことにより、形成されている。
各軸受台51R,51Lは、図5,6に示すように、取付部58及び軸受本体部52を有している。取付部58は、軸受本体部52の下端に接続され、軸受本体部52に対して垂直に折り曲げられて形成され、ハウジング10の底部に沿うような平板状に形成されている。取付部58がハウジング10に対してビスにより締結されることによって、各軸受台51R,51Lは、ハウジング10に対して取付固定されている。
軸受本体部52は、直立する板状に形成されている。軸受本体部52のうち上側部位53には、当該軸受本体部52の上端から前方かつ下方となる斜め下方へ向かって直線状に延伸する軸受溝54が形成されている。軸受溝54の底部には、丸穴状の軸受穴55が形成されている。回転軸端部44R,44Lは、軸受溝54を挿通され、軸受穴55に配置されることで軸受されている。図3に示すように、一対の軸受台51R,51L同士の間隔は、回転軸端部44Rの先端から回転軸端部44Lの先端までの軸方向寸法よりも小さくされると共に、可動本体部42の軸方向寸法よりも大きくされる。したがって、一対の軸受台51R,51Lは、回転軸44を安定的に2点支持することが可能となると同時に、可動本体部42との間に隙間を空けることが可能である。さらに一対の軸受台51R,51L同士の間隔は、可動本体部42の駆動出力部48側の側部から突起部45の先端46までの軸方向寸法よりも大きくされている。
図5,6に示すように、駆動出力部48とは可動本体部42を挟んだ反対側の軸受台51Rにおいて、軸受本体部52は、可動本体部42の側部42aと軸方向に対向する平面状の対向壁面57を形成している。対向壁面57は、所定の角度範囲での可動鏡の回動に伴う突起部45の回動軌跡RT1の全域を包含すべく、当該回動軌跡RT1の全域と軸方向に対向するような幅を確保した態様にて、延設されている。
こうした対向壁面57を実現するために、軸受台51Rは、軸受穴55と取付部58の中心部とが、前後方向にずれたずらし構造をなしている。上側部位53と取付部58とを接続する軸受本体部52の下側部位56は、取付部58へ向かって下方へ延伸している。ここで、下側部位56において前後方向に幅を定義した場合に、当該幅の中心をなし、水平面HPに対して垂直な上下方向に延伸するように中心軸線CCが規定され得る。この中心軸線CCに対して、軸受穴55は後方へ偏心し、水平方向にずれた配置となっている。こうした中心軸線CCに対する軸受穴55の偏心配置により、下側部位56は、軸受穴55に対して後方かつ下方となる斜め下方の範囲、換言すると突起部45との当接が想定される範囲に、対向壁面57を形成している。
また、上述した結合部59は、上側部位53から下側部位56と二股に分岐されるように下方かつ前方の斜め方向に延伸し、可動鏡41との干渉を避けた折曲位置から軸方向に延伸するように曲げられて、他方の軸受台51Lと接続されている。
板ばね62は、図6,7に示すように、例えば金属により形成され、軸受台51Rにクリップ状に取り付けられている弾性部材である。板ばね62は、固定部63及び弾性変位部64を一体的に有している。固定部63は、例えば回転軸44から上方に離れた軸受溝54の入り口部と係合し、軸受台51Rを軸方向に沿った板厚方向に挟む態様にて、軸受台51Rに対して固定されている。
弾性変位部64は、固定部63から回転軸44と交差するように延出され、V字状に形成されている。弾性変位部64は、回転軸44に至る直前にて二股に分岐することで、回転軸44との接触を避けつつ回転軸44をおよそ水平方向に挟んだ配置となっている。弾性変位部64は、回転軸44との交差箇所65にて軸受台51Rからの軸方向への突出量が極大となり、交差箇所65から直線状に延伸したばね先端部66にて、軸受台51Rと当接するように、折れ曲がる形状を呈している。
これにより弾性変位部64は、弾性変形により軸方向に沿って変位すること(突出量を変化させること)が可能となっている。弾性変位部64は、交差箇所65を介して可動本体部42の側部42aを軸上にて押圧することで、可動鏡41を軸方向のうち駆動出力部48が配置された軸受台51L側へ、弾性的に付勢している。
こうして可動鏡ユニット40は、外力を受けていない状態において、弾性変位部64の平衡状態(図8に示す状態)を保つ。平衡状態において突起部45が軸受台51Rの対向壁面57とは間隔を空けた配置となるように、突起部45の軸方向への突出寸法Lp、並びに弾性変位部64のばね定数が設定されている。
なお、ここでいう外力とは、製品使用時(又は工場出荷等に伴う車両での製品輸送時)の車両1の振動に伴って車両1側から可動鏡ユニット40に及ぼされる力である。車両1の振動には、車両1の走行時に路面から受ける振動、車両1のエンジンの駆動に伴う振動等が含まれる。また、平衡状態は、弾性変位部64が軸方向の両側に変位可能であって、弾性変位部64が可動鏡41に及ぼす力と可動鏡41が弾性変位部64に及ぼす力とが釣り合い、弾性変位部64が実質的に振動していない状態を意味する。平衡状態は、製品使用時に想定されている重力方向(例えば軸方向と垂直な下方への重力方向)にて実現される。
一方、可動鏡ユニット40は、所定以上の外力を受けている状態において、当接状態(図8において突起部45が矢印方向へ移動した状態)に遷移し得る。当接状態は、可動鏡41が軸方向のうち外力により軸受台51R側に移動した場合に遷移し得る状態であって、突起部45と対向壁面57が当接した状態である。
可動鏡41は、近年、表示虚像VRIの表示サイズの大型化に伴って反射面43のサイズが大きくなり、その重量が増加する傾向にある。したがって、本実施形態の可動鏡ユニット40において、車両1の振動から想定される可動鏡41の荷重は、板ばね62が耐えうる荷重より大きい。したがって、可動鏡41が軸受台51R側に移動した場合に、当接状態となることによって、弾性変位部64を塑性変形領域へ達せしめる可動鏡41の移動が規制されている。
こうした可動鏡41の移動を規制すべく、突起部45の軸方向への突出寸法Lpは、可動鏡41の移動によって圧縮される弾性変位部64が塑性変形領域に達する臨界点となる臨界寸法Lcよりも、大きく設定されている。軸受台51Rと可動本体部42との間に挟まれる板ばね62に、塑性変形が与えられることを回避するような隙間が確保されている。
本実施形態のような板ばね62の塑性変形を抑制する機構では、板ばね62が配置される回転軸44の軸上及び近傍となる位置に複雑な構造を設ける必要が抑制されているので、可動鏡41、軸受台51Rを含む支持部材等の部品の製造コストの増加も抑制できている。なお、本実施形態において回転軸44の軸上及び近傍となる位置とは、回転軸44から所定距離未満となる位置であり、回転軸44の軸外とは、回転軸44から所定距離以上となる位置である。例えば所定距離は、回転軸44から、板ばね62において回転軸44から最も離れた位置までの距離として、規定され得る。
引張ばね68は、可動鏡41を回動方向に弾性的に付勢し、駆動出力部48の減速ギヤ機構で発生する可能性があるバックラッシによる表示虚像VRIの位置ずれを抑制する。引張ばね68は、その一端を、可動本体部42のうち、突起部45とは反対側の下隅部42cに対して固定される。引張ばね68は、その他端を、一対の軸受台51R,51Lのうち、板ばね62が固定された軸受台51Rとは反対側の軸受台51Lの下端から、軸受台51Rに向かって軸方向に延出して形成された引張ばね保持部60に対して固定される。なお、回動方向とは、回転軸44のまわりを回る方向である。
制御ユニット70は、図2に示すように、調整スイッチ71及び制御回路部73等を含む構成である。調整スイッチ71は、ハウジング10の外部の、例えば車両1のステアリングハンドル等に設置され、乗員により操作可能となっている。調整スイッチ71は、例えばプッシュ式の2種類の操作部材72U,72Dを有している。具体的に、アップ操作部材72Uは、表示虚像VRIの位置を上方に移動させるための操作部材である。ダウン操作部材72Dは、表示虚像VRIの位置を下方に移動させるための操作部材である。制御回路部73は、操作部材72U,72Dが操作されることに応じて調整スイッチ71から入力された電気信号に基づいて、駆動出力部48のステッピングモータに駆動信号を出力し、モータ軸を回動させる。このとき、平衡状態が保たれていれば、突起部45と軸受台51Rとが非接触状態であるので、小さな駆動トルクで可動鏡41を回動させることができる。
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
第1実施形態によると、光学部材としての可動鏡41に設けられる突起部45は、支持部材の一部を構成する軸受台51Rへ向かって軸方向に突出する。軸方向への突出によって、弾性変位部64により軸方向に弾性的に付勢された可動鏡41が、使用状態での振動又は輸送時の衝撃により、軸受台51Rに対して軸方向に相対的に移動した場合に、突起部45と軸受台51Rとの軸方向の距離を変化させられる。こうした距離の変化により、振動又は衝撃を受けた状況での当接状態と振動又は衝撃を受けていない状況での平衡状態とが遷移可能となるように形成されている。当接状態では、突起部45が軸受台51Rと当接することにより、弾性変位部64を塑性変形領域へ達せしめる可動鏡41の移動は、規制される。一方、平衡状態では、弾性変位部64が平衡状態を保つと共に、突起部45と軸受台51Rとが間隔を空けている。所定の振動又は衝撃を受けていない状況にて突起部45と軸受台51Rとが非接触状態となることで、突起部45が軸受台51Rに常時接触することが回避されている。
常時接触の回避によれば、可動鏡41を回動させる場合の可動鏡41と軸受台51Rとの間の摩擦を少なくすることができる。故に、可動鏡41を円滑に回動させることが可能となる。
また、常時接触の回避によれば、回動時、車両振動時の摩擦によって、突起部45が徐々に削れて損傷することが抑制される。故に、弾性部材としての板ばね62の塑性変形の抑制効果を長期的に維持することが可能となる。
また、第1実施形態によると、板ばね62は、弾性変位部64を、回転軸44の軸上又はその近傍となる位置において、可動鏡41と軸受台51Rとの間に挟まれるように配置される。こうした板ばね62に対して、突起部45は、板ばね62との干渉を避けるように、回転軸44の軸外に配置されている。突起部45と板ばね62と干渉を避けた構造により、突起部45が平衡状態から当接状態に遷移する際に、又は、可動鏡41と共に突起部45が回動する際に、突起部45が板ばね62に衝突し、突起部45及び板ばね62が損傷することを抑制することができる。
また、第1実施形態によると、軸受台51Rにおける取付部58と上側部位53とを接続する下側部位56にて、突起部45と軸方向に対向し当接状態にて突起部45との当接対象となる対向壁面57は、回動軌跡RT1の全域と軸方向に対向する範囲に形成されている。故に、可動鏡41が取り得る任意の角度姿勢に対して、平衡状態と当接状態との円滑な遷移が実現される。したがって、板ばね62の塑性変形の抑制における確実性を、高めることができる。
(第2実施形態)
図9に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
第2実施形態の突起部257は、可動鏡ではなく、軸受台51Rに設けられている。具体的に、突起部45は、軸受本体部52の下側部位56から可動本体部42へ向かって軸方向に突出している。
突起部45の当接対象は、可動本体部42の側部のうち、板ばね62と対向する部位から外周側にずれた軸外となる部位であって、下側部位56と軸方向に対向している部位である。当接対象は、第1実施形態と同様の角度範囲での可動鏡41の回転に伴って、回転軸44を中心とした扇形状の回動軌跡RT2に沿って移動する。
軸受本体部52の下側部位56に設けられた突起部257は、例えば金属からなる板状の軸受本体部52にプレス加工を施すこと等により、下側部位56の平面状の壁面部に対して可動本体部42側に盛り上がる細長の突条となっている。突起部257は、可動本体部42の側部42aによる回動軌跡RT2の全域と軸方向に対応する範囲を、可動鏡41の回動方向に横断するように延伸して形成されている。特に本実施形態の突起部257は、回転軸44を曲率中心とした円弧状に延伸している。
こうした第2実施形態の可動鏡ユニット40も、第1実施形態と同様に、平衡状態と当接状態とを遷移可能に形成されている。
以上説明した第2実施形態によると、支持部材の一部を構成する軸受台51Rに設けられる突起部257は、光学部材としての可動鏡41へ向かって軸方向に突出する。軸方向への突出によって、弾性変位部64により軸方向に弾性的に付勢された可動鏡41が、使用状態での振動又は輸送時の衝撃により、軸受台51Rに対して軸方向に相対的に移動した場合に、突起部257と可動鏡41との軸方向の距離を変化させられる。こうした距離の変化により、振動又は衝撃を受けた状況での当接状態と振動又は衝撃を受けていない状況での平衡状態とが遷移可能となるように形成されている。当接状態では、突起部257が可動鏡41と当接することにより、弾性変位部64を塑性変形領域へ達せしめる可動鏡41の移動は、規制される。一方、平衡状態では、弾性変位部64が平衡状態を保つと共に、突起部257と可動鏡41とが間隔を空けている。所定の振動又は衝撃を受けていない状況にて突起部257と可動鏡41とが非接触状態となることで、突起部257が可動鏡41に常時接触することが回避されている。
常時接触の回避によれば、可動鏡41を回動させる場合の可動鏡41と軸受台51Rとの間の摩擦を少なくすることができる。故に、可動鏡41を円滑に回動させることが可能となる。
また、常時接触の回避によれば、回動時、車両振動時の摩擦によって、突起部257が徐々に削れて損傷することが抑制される。故に、板ばね62の塑性変形の抑制効果を長期的に維持することが可能となる。
また、第2実施形態によると、軸受台51Rにおける取付部58と上側部位53とを接続する下側部位56にて、突起部257は、回動軌跡RT2の全域と軸方向に対向する範囲を横断するように形成されている。故に、可動鏡41が取り得る任意の角度姿勢に対して、平衡状態と当接状態との円滑な遷移が実現される。したがって、板ばね62の塑性変形の抑制における確実性を、高めることができる。
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
具体的に変形例1としては、板ばね62に代えて、回転軸端部44Rに挿通されたコイルばねが弾性部材として採用されてもよい。コイルばねは、可動鏡41を軸方向に弾性的に付勢するものであれば、押圧力でなく、引張力によって可動鏡41を付勢していてもよい。
さらにコイルばねが両端に固定部を有し、一端が軸受台51Rに対して固定され、他端が可動鏡41に対して固定されている場合には、突起部45の当接状態において、コイルばねの圧縮側のみならず、伸長側における塑性変形領域への到達が規制されていてもよい。
変形例2としては、板ばね62に代えて、合成ゴム、スポンジ等が弾性部材として採用されていてもよい。
変形例3としては、HUD100は、反射面43を有する可動鏡41に代えて、レンズ、プリズム、回折光学素子等を、表示光による光路を変更可能に形成された光学部材として採用した構成であってもよい。
変形例4としては、制御ユニット70は、調整スイッチ71の操作に代えて、車両1に設置されたカメラ等で乗員のアイポイントEPを検出し、当該検出結果に基づいて、当該アイポイントEPから表示虚像VRIが視認可能となるように、駆動出力部48を作動させるものであってもよい。
第2実施形態に関する変形例5としては、突起部257は、可動本体部42の側部42aによる回動軌跡RT2の全域と軸方向に対応する範囲を横断するように形成されていれば、種々の形状であってよい。突起部257は、直線状に延伸する突条、ジグザグに延伸する突条であってもよい。また、突起部257は、板ばね62が固定された上側部位53に対して可動本体部42側に突出していれば、突条でなくてもよい。例えば、下側部位56の全体が、上側部位53に対して可動本体部42側に突出した構成であってもよい。
1:車両、41:可動鏡(光学部材)、44:回転軸、45,257:突起部、51R:軸受台(支持部材の一部)、62:板ばね(弾性部材)、63:固定部、64:弾性変位部、VRI:表示虚像

Claims (4)

  1. 車両(1)に搭載されるように構成され、表示虚像(VRI)として結像される表示光を投射する虚像表示装置であって、
    回転軸(44)のまわりに回動することにより、前記表示光による光路を変更可能に形成された光学部材(41)と、
    前記光学部材を回動可能に支持する支持部材(51R)と、
    前記支持部材に対して固定される固定部(63)と、弾性変形により変位可能な弾性変位部(64)と、を有し、前記弾性変位部が前記光学部材を軸方向に弾性的に付勢する弾性部材(62)と、を備え、
    前記光学部材及び前記支持部材のうち一方は、前記一方から前記光学部材及び前記支持部材のうち他方へ向かって前記軸方向に沿って突出する突起部(45,257)を有し、
    前記弾性変位部を塑性変形領域へ達せしめる前記光学部材の移動を規制するような前記突起部の前記他方との当接状態と、前記突起部が前記他方とは間隔を空けた前記弾性変位部の平衡状態とを、遷移可能に形成されている虚像表示装置。
  2. 前記弾性部材は、前記弾性変位部を、前記回転軸の軸上又はその近傍となる位置において、前記光学部材と前記支持部材との間に挟まれるように配置され、
    前記突起部は、前記弾性部材との干渉を避けるように、前記回転軸の軸外に配置されている請求項1に記載の虚像表示装置。
  3. 前記突起部は、前記光学部材に設けられ、
    前記光学部材の所定の角度範囲での回動に伴って規定される前記突起部の軌跡として、前記回転軸に対して斜め下方となる位置に、円弧状の回動軌跡(RT1)が規定され、
    前記支持部材は、
    ハウジング(10)に対して取り付けられる取付部(58)と、
    前記回転軸を軸受する軸受本体部(52)の上側部位(53)と、
    前記上側部位から前記取付部に向かって延伸し、前記上側部位と前記取付部とを接続する前記軸受本体部の下側部位であって、前記突起部と前記軸方向に対向して前記当接状態にて前記突起部との当接対象となる対向壁面(57)を、前記回動軌跡の全域と前記軸方向に対向する範囲に形成している下側部位(56)と、を有する請求項2に記載の虚像表示装置。
  4. 前記光学部材は、前記支持部材と前記軸方向に対向する側部(42a)を、前記当接状態での前記突起部との当接対象として有し、
    前記光学部材の所定の角度範囲での回動に伴って規定される前記側部の軌跡として、前記回転軸に対して斜め下方となる位置に、扇形状の回動軌跡(RT2)が規定され、
    前記支持部材は、
    ハウジング(10)に対して取り付けられる取付部(58)と、
    前記回転軸を軸受する軸受本体部(52)の上側部位(53)と、
    前記上側部位から斜め下方の前記取付部に向かって延伸し、前記上側部位と前記取付部とを接続する前記軸受本体部の下側部位であって、前記突起部を、前記回動軌跡の全域と前記軸方向に対向する範囲を横断するように形成している下側部位(56)と、を有する請求項2に記載の虚像表示装置。
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