JP2021075198A - 路面勾配推定装置、車両制御装置、車両制御方法および車両制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】勾配角の誤推定の回避精度を向上させ、勾配角の推定精度を向上させる。【解決手段】車両制御装置としてのコントローラ11は、路面勾配推定装置を構成する路面勾配演算部11Aと、上下加速度補正演算部11Bと、減衰力指令演算部11Cとを含んで構成されている。路面勾配演算部11Aは、入力した情報に基づいて演算を行うコントロール部としての直進方向勾配算出部15を備えている。直進方向勾配算出部15は、車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定絶対車速Vxabsと、ばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度センサ値αxsensと、車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号と、に基づいて勾配角θを求める。要求信号は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて取得される。【選択図】図2
Description
本開示は、路面勾配推定装置、車両制御装置、車両制御方法および車両制御システムに関する。
一般に、自動車等の車両には、車体と各車輪(車軸側)との間に減衰力調整式緩衝器が設けられ、該緩衝器による減衰力特性を調整する構成とした制御装置が搭載されている。この制御装置は、ばね上加速度センサによって検出されたばね上の上下加速度から緩衝器の目標減衰力を演算し、車両の走行(振動)状態に応じた減衰力を緩衝器で発生させる。これにより、緩衝器で車体の制振を行い、乗り心地および操縦安定性を向上させるようにしている。
しかし、ばね上加速度センサの検出信号は、車両の直進方向の路面傾斜度合い(以下、勾配角という)、即ち、車両の直進方向の車体の傾きによって加速度の検出値が変動することがある。これに伴って、目標減衰力の演算結果も悪影響を受けてしまう。これに対し、特許文献1には、車両重心前後加速度検出値と、入力パラメータとしてスリップ率を含む摩擦特性モデルを有する車輪摩擦力推定部を備える車両モデル演算手段で算出された車両重心前後加速度推定値と、の差に基づいて勾配角を算出する技術が開示されている。
ところで、特許文献1に開示された技術では、スリップ率を考慮して勾配角を推定しているが、過大なスリップが発生した場合、車両重心前後加速度検出値と、車両重心前後加速度推定値と、の差が大きくなり、勾配角を誤推定する(即ち、勾配角の推定精度が良好に確保されない)可能性がある。このため、勾配角の推定精度が良好に確保されない状態のまま、目標減衰力を取得するための演算が実行される可能性がある。このような勾配角によって車両制御をすると、制御精度が低下し、車両の乗り心地が良好に確保されない可能性がある。
本発明の一実施形態の目的は、勾配角の誤推定の回避精度を向上させ、勾配角の推定精度を向上させることができる路面勾配推定装置、車両制御装置、車両制御方法および車両制御システムを提供することにある。
本発明の一実施形態は、入力した情報に基づいて演算を行うコントロール部を備える路面勾配推定装置であって、前記コントロール部は、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を求める。
また、本発明の一実施形態は、入力した情報に基づいて演算を行うコントローラを備える車両制御装置であって、前記コントローラは、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を出力する。
また、本発明の一実施形態は、車両制御方法であって、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を出力する。
また、本発明の一実施形態は、車両の車体と、前記車両の車輪と、の間に設けられた減衰力発生装置と、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、コントローラであって、前記車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を前記減衰力発生装置へ出力する、コントローラと、を備える。
本発明の一実施形態によれば、勾配角の誤推定の回避精度を向上させ、勾配角の推定精度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態による路面勾配推定装置、車両制御装置、車両制御方法および車両制御システムを、4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、実施形態による車両制御システム1を示している。車両制御システム1は、減衰力発生装置を構成するサスペンション装置5と、ばね上前後加速度センサ10(前後加速度センサ)と、車両制御装置を構成するコントローラ11とにより構成されている。ここで、図1において、車両のボディを構成する車体2の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪3という)が設けられている。この車輪3は、タイヤ4を含んで構成されており、タイヤ4は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
サスペンション装置5は、車両の車体2と車両の車輪3との間に介装して設けられている。このサスペンション装置5は、懸架ばね6(以下、スプリング6という)と、スプリング6と並列関係をなして車体2と車輪3との間に設けられた減衰力調整式緩衝器(以下、可変ダンパ7という)とにより構成される。なお、図1中では1組のサスペンション装置5を、車体2と車輪3との間に設けた場合を示している。しかし、サスペンション装置5は、例えば4つの車輪3と車体2との間に個別に独立して合計4組設けられるもので、このうちの1組のみを図1では模式的に示している。
ここで、サスペンション装置5の可変ダンパ7は、車体2と車輪3との間に介装して設けられた減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成される。この可変ダンパ7には、発生減衰力の特性(即ち、減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ等からなる減衰力可変アクチュエータ8が付設されている。なお、減衰力可変アクチュエータ8は、減衰力特性を必ずしも連続的に調整する構成でなくてもよく、例えば2段階以上の複数段階で減衰力を調整可能なものであってもよい。また、可変ダンパ7は、圧力制御タイプでもよく、流量制御タイプであってもよい。
ばね上上下加速度センサ9は、車体2(ばね上)の上下加速度を検出可能に構成され、車体2の任意の位置に設けられている。ばね上上下加速度センサ9は、例えば可変ダンパ7の近傍となる位置で車体2に取付けられている。ばね上上下加速度センサ9は、所謂ばね上側となる車体2側で上下方向の振動加速度を検出し、その検出信号をコントローラ11に出力する。
ばね上前後加速度センサ10は、車体2(ばね上)の前後加速度、即ち、車両の前後方向の加速度を検出可能に構成され、車体2の任意の位置に設けられている。ばね上前後加速度センサ10は、例えば車体2(ばね上)の重心となる位置で車体2に取付けられている。ばね上前後加速度センサ10は、車両の前後方向の加速度を検出し、その検出信号をコントローラ11に出力する。
コントローラ11は、車両制御装置を構成している。コントローラ11は、可変ダンパ7の減衰特性を制御する制御装置(車両制御装置)として、例えばマイクロコンピュータにより構成されている。コントローラ11は、ばね上上下加速度センサ9等からの検出信号に基づいて可変ダンパ7で発生すべき減衰力を可変に制御するものである。コントローラ11は、その入力側がばね上上下加速度センサ9およびCAN12等に接続され、出力側は可変ダンパ7の減衰力可変アクチュエータ8等に接続されている。
コントローラ11は、例えばデータ通信に必要な回線網であるCAN12(Controller Area Network)を介して他のコントローラ(図示せず)に接続されている。これにより、コントローラ11は、他のコントローラとの間で、例えば当該車両の前後加速度センサ値、車速、ヨーレイト、横加速度センサ値、外気温(周囲温度)、日時情報、および積載重量等の荷重情報を含めた種々の車両情報を入力および出力することができる。
ここで、コントローラ11は、図1に示すように、路面勾配推定装置を構成する路面勾配演算部11Aと、上下加速度補正演算部11Bと、減衰力指令演算部11Cとを含んで構成されている。また、コントローラ11は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部11Dを有している。コントローラ11の記憶部11Dには、例えば数1〜4式による演算を行うための情報(車両情報)、データ等が更新可能に格納されている。
次に、コントローラ11の路面勾配演算部11Aについて、図2を参照して説明する。路面勾配推定装置としての路面勾配演算部11Aは、勾配角θを演算するもので、車体前後速度算出部13、推定絶対車速算出部14、コントロール部を構成する直進方向勾配算出部15、制駆動推定前後加速度算出部16、および勾配算出可否判断部17を含んで構成されている。
車体前後速度算出部13は、例えば、CAN12から受け取った車輪3の回転速度AVwheelとタイヤ実効転動半径Rtireとに基づいて、数1式の演算を行うことにより、車両の速度Vxwheelを算出する。車体前後速度算出部13は、算出した車両の速度Vxwheelとして演算信号を推定絶対車速算出部14に出力する。但し、数1式の演算は、タイヤ4の変形および路面に対するスリップ等は発生していない場合を仮定した演算式である。
推定絶対車速算出部14(即ち、コントローラ11)は、駆動輪のスリップやロックを考慮するため、ばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度、即ち、前後加速度センサ値αxsensとして検出信号を取得する。推定絶対車速算出部14は、車体前後速度算出部13からの演算信号、即ち、車両の速度Vxwheelを取得する。推定絶対車速算出部14は、車両の速度Vxwheelから、前後加速度センサ値αxsensに基づいて、車両の推定車速(即ち、推定絶対車速Vxabs)を算出する。このような推定車速の算出に関しては、例えば公知の特開平5−16789号公報等に開示の技術を採用すればよい。ここでは、車両の速度Vxwheelが、駆動輪のスリップにより実際の車体の前後車速よりも速くなること、かつ、車両の速度Vxwheelが、駆動輪のロックにより実際の車体の前後速度よりも遅くなることに着目する。車両の速度Vxwheelの変化率の絶対値が、ばね上前後加速度センサ10の検出値の絶対値よりも大きくなる場合に、車両の速度Vxwheelの変化率をばね上前後加速度センサ10の検出値で制限するレイトリミッタ処理を行うことにより、推定絶対車速Vxabsを算出している。推定絶対車速算出部14は、取得した推定絶対車速Vxabsとして演算信号を直進方向勾配算出部15に出力する。
コントロール部としての直進方向勾配算出部15は、車両が走行する路面(図3では、例えば坂道26)の勾配角θを求めるための要求信号が入力されたときに、勾配角θを求めるための演算を実行する(即ち、演算が許可されている)。直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、入力した情報(例えば、車両の推定絶対車速Vxabs、前後加速度センサ値αxsens、要求信号等)に基づいて演算を行っている。具体的には、直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、推定絶対車速算出部14の演算信号、即ち、車両の車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定絶対車速Vxabsを取得する。直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、ばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度、即ち、前後加速度センサ値αxsensを取得する。そして、直進方向勾配算出部15は、車両の推定絶対車速Vxabsを時間微分して、車両の走行加速度αxwheelを算出し、例えば、前後加速度センサ値αxsensと、推定絶対車速Vxabsの微分値である走行加速度αxwheelと、に基づいて、数2〜4式の演算を行う。これにより、直進方向勾配算出部15は、図3に示す坂道26を車両が登坂走行するときの直進方向での路面傾斜度合い(即ち、勾配角θ)を算出する。但し、数2〜4式の演算は、車両の登坂走行時にタイヤ4の変形および路面に対するスリップ等は発生していない場合を仮定した演算式である。
ここで、車両の走行加速度αxwheelは、数1式の演算により求められた車両の速度Vxwheelを微分して求められる。また、X軸方向とは、登坂路面に平行な方向で車両直進方向である。Y軸方向とは、登坂路面に平行な方向でX軸方向に垂直な方向である。Z軸方向とは、登坂路面に垂直な方向である。このため、Z軸方向は、重力加速度gの方向(即ち、地軸の方向)に対して勾配角θ分だけ傾いた方向となる。
数3式は、勾配角零(θ=0)の平坦な平面路を走行している場合である。この場合に、車両の走行加速度αxwheelは、前後加速度センサ値αxsensと等しい値になる。しかし、車両の登坂走行時には、重力の影響で前後加速度センサ値αxsensが変化するため、数2式の関係が成り立つ。従って、車両直進方向での路面傾斜度合いである勾配角θは、数4式のように三角関数を用いて算出することができる。直進方向勾配算出部15は、算出した勾配角θとして演算信号を上下加速度補正演算部11B(より具体的には、重量加速度影響算出部18および遠心加速度影響算出部19)に出力する。
制駆動推定前後加速度算出部16は、例えばCAN12から車両の慣性に起因する物理量として、エンジントルク検出値と、ブレーキ液圧検出値と、ばね上質量と、空気抵抗検出値等とを受け取る。これらの物理量を用いて車両の慣性に起因した制駆動推定前後加速度、即ち、推定前後加速度を算出する。このとき、車両の慣性に起因する物理量は、車両に発生させる駆動トルク(エンジントルク)、または車輪3に発生させる制動トルク(ブレーキ液圧)、または車両の空気抵抗である。
勾配算出可否判断部17は、車両が走行する路面の勾配角θの演算前に(または、勾配角θの更新前に)、勾配角θの演算を許可するか、勾配角θの演算に制限をかけるかを判定する。具体的には、勾配算出可否判断部17は、勾配角θを算出する直進方向勾配算出部15に対して、勾配角θの演算に制限をかけずに車両の勾配角θを求めるための演算許可要求として要求信号を出力するか、勾配角θの演算に制限をかけるための演算制限要求として要求信号を出力するかを決定する。勾配算出可否判断部17は、例えば、勾配角θの演算を許可する場合、演算許可要求として要求信号を出力する。この場合、直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、勾配算出可否判断部17から演算許可要求として要求信号を取得(入力)することで、勾配角θの演算を実行する(即ち、演算が許可される)。
一方、勾配算出可否判断部17は、勾配角θの演算を制限する場合、演算制限要求として要求信号を出力する。この場合、直進方向勾配算出部15は、勾配算出可否判断部17から演算制限要求を取得(入力)し、勾配角θの演算が制限される。ここで、勾配算出可否判断部17による勾配角算出可否判断結果として演算制限要求が出力されている場合に、直進方向勾配算出部15は、勾配角θを算出しないようにする。このとき、直進方向勾配算出部15は、演算制限要求が出力される直前に取得した勾配角θをデータとして記憶部11Dに保持する。また、直進方向勾配算出部15は、勾配角θの更新を制限する場合があることを想定して、算出した勾配角θに対し、レイトリミッタ処理により急激な変化を抑制するようにする。
また、直進方向勾配算出部15は、勾配角θの演算に制限がかけられる場合に、予め決められた規定値を状況に応じて補正し、この補正値を勾配角θとして出力してもよい。この規定値は、記憶部11Dに予め記録しておく。
勾配算出可否判断部17は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて、勾配角θの演算を許可するか制限するかを判定する。即ち、勾配算出可否判断部17は、制駆動推定前後加速度算出部16から車両の推定前後加速度としての演算信号と、CAN12から車両のスリップに基づく制御信号とを取得し、取得した信号(演算信号または制御信号)に基づいて勾配角θの演算を許可するか制限するかを判定する。
なお、勾配算出可否判断部17は、演算信号と制御信号の両方を取得してもよく、いずれか一方を取得してもよい。勾配算出可否判断部17は、演算信号と制御信号のうち少なくともいずれか一方に基づいて勾配角θの演算を許可するか制限するかを判定する。
ここで、勾配算出可否判断部17は、推定前後加速度(より具体的には、推定前後加速度の絶対値)が所定の閾値より小さい場合は、演算許可要求として要求信号を出力する。ここで、この所定の閾値は、記憶部11Dに予め記録しておく。より具体的には、勾配算出可否判断部17は、例えば、制駆動推定前後加速度算出部16から推定前後加速度として演算信号を取得する。このとき、勾配算出可否判断部17は、推定前後加速度が所定の閾値より小さい場合、演算許可要求として要求信号を直進方向勾配算出部15に出力する。
また、スリップに基づく制御信号は、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)の作動フラグ、またはTCS(トラクション・コントロールシステム)の作動フラグ、である。具体的には、車両には、車輪のロックを防止する安全装置としてのABSと、車輪のスリップを抑制する安全装置としてのTCSとの双方が搭載されている。勾配算出可否判断部17は、CAN12を介して、スリップに基づく制御信号としてABSの作動フラグと、スリップに基づく制御信号としてTCSの作動フラグとを取得する。より具体的には、勾配算出可否判断部17は、例えば、ABSとTCSとの双方が作動していないときに、ABSの作動フラグオフ、およびTCSの作動フラグオフを取得する。このとき、勾配算出可否判断部17は、スリップに基づく制御信号として「作動フラグオフ」、即ち、ABSの作動フラグオフ(ABS−off)およびTCSの作動フラグオフ(TCS−off)を取得する。この場合、勾配算出可否判断部17は、演算許可要求として要求信号を直進方向勾配算出部15に出力する。一方、勾配算出可否判断部17は、ABSまたはTCSが作動したときに、CAN12を介して、スリップに基づく制御信号として「作動フラグオン」、即ち、ABSの作動フラグオン(ABS−on)、またはTCSの作動フラグオン(TCS−on)を取得する。この場合、勾配算出可否判断部17は、演算制限要求として要求信号を直進方向勾配算出部15に出力する。
このように、勾配算出可否判断部17は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて、要求信号を直進方向勾配算出部15に出力する。具体的には、勾配算出可否判断部17は、推定前後加速度(より具体的には、推定前後加速度の絶対値)が所定の閾値より小さい場合、またはスリップに基づく制御信号が「作動フラグオフ」の場合は、演算許可要求として要求信号を出力する。
この場合、直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、勾配算出可否判断部17から演算許可要求として要求信号を取得する。言い換えれば、直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて、要求信号を取得する。具体的には、直進方向勾配算出部15は、推定前後加速度(より具体的には、推定前後加速度の絶対値)が所定の閾値より小さい場合、またはスリップに基づく制御信号が「作動フラグオフ」の場合は、演算許可要求として要求信号を取得する。この場合、直進方向勾配算出部15(即ち、コントローラ11)は、推定絶対車速Vxabsと、ばね上前後加速度センサ値αxsensと、要求信号と、に基づいて勾配角θを求める。
一方、勾配算出可否判断部17は、例えば、推定前後加速度に基づいて、車両の慣性に起因した前後加速度である推定前後加速度(より具体的には、推定前後加速度の絶対値)が、所定の閾値以上である場合には、車両の慣性に起因したピッチレイトが発生してばね上前後加速度センサ10が車両の慣性に起因した誤差を含むと判断する。このとき、勾配算出可否判断部17は、勾配角算出可否判断結果として演算制限要求となる要求信号を出力する。
また、勾配算出可否判断部17は、例えばCAN12から受け取ったABS作動検出によるABSの作動フラグオン、またはTCS作動検出によるTCSの作動フラグオン、に基づいて、車輪回転速度(即ち、回転速度AVwheel)により算出した車体前後速度とばね上前後加速度センサ10の検出値との間に乖離(誤差)があると判断する。この場合、勾配算出可否判断部17は、勾配角算出可否判断結果として演算制限要求となる要求信号を出力する。即ち、ABSの作動フラグオンまたはTCSの作動フラグオンの場合(即ち、車輪3のスリップやロックが発生するような状況)は、勾配角θの演算に制限がかけられる。このように、直進方向勾配算出部15は、推定前後加速度が所定の閾値以上である場合、またはスリップに基づく制御信号が「作動フラグオン」の場合は、勾配角θの演算制限要求として要求信号を取得する。
次に、コントローラ11の上下加速度補正演算部11Bについて、図4を参照して説明する。上下加速度補正演算部11Bは、ばね上上下加速度センサ9で検出した上下加速度の信号を補正演算する。上下加速度補正演算部11Bは、重力加速度影響算出部18、遠心加速度影響算出部19、第1の減算部20、および第2の減算部21を含んで構成されている。
重力加速度影響算出部18は、直進方向勾配算出部15により算出された勾配角θを路面勾配演算部11Aから取得(入力)する。重力加速度影響算出部18は、路面勾配演算部11Aで求めた勾配角θに基づいて、Z軸方向での重力加速度影響分αzgを数5式により算出する。ここで、進行方向に直交する勾配角φを用いて数6式により算出してもよい。なお、勾配角φは、図5に示すバンク路面28を車両が走行するときに走行方向と直交する左右方向(即ち、Y軸方向)の路面傾斜度合いである。勾配角φは、例えばCAN12から受け取った横加速度センサ値αysensと、数10式により算出される旋回横加速度αycとに基づいて、三角関数を用いて算出される。
遠心加速度影響算出部19は、路面勾配演算部11Aで求めた勾配角θと車両の速度Vxwheelとを取得(入力)する。遠心加速度影響算出部19は、路面勾配演算部11Aで求めた勾配角θと車両の速度Vxwheelとに基づいて、図6に示す前後曲線路面27を車両が走行するときに発生する遠心加速度αzsを数7式により算出する。数7式の微分値(dθ/dt)は、車両が前後曲線路面27に沿って走行するときの勾配角の時間的変化である。なお、遠心加速度αzsは、勾配角θが変化しない坂道、即ち微分値(dθ/dt)=0の場合は、αzs=0となる。
第1の減算部20は、ばね上上下加速度センサ9からの検出信号(即ち、上下加速度センサ値αzsens)に対して、重力加速度影響算出部18で算出したZ軸方向での重力加速度影響分αzgを減算し、数8式による上下加速度の第1補正値αzcomp1を算出する。また、第2の減算部21は、遠心加速度影響算出部19で算出した遠心加速度αzsを、第1補正値αzcomp1から減算し、数9式による上下加速度の第2補正値αzcomp2(即ち、補正後ばね上上下加速度αzcomp)を算出する。
ここで、進行方向に直交する勾配角φを用いて、図5に示すバンク路面28を車両が旋回走行するときに発生するZ軸方向での遠心加速度影響分αzcを数11式により算出し、第2補正値αzcomp2から減算し、数12式による上下加速度の第3補正値αzcomp3(即ち、補正後ばね上上下加速度αzcomp)を算出してもよい。なお、数11式中の旋回横加速度αycは、例えばCAN12から受け取った車両の速度Vxwheelとヨーレイトωとから数10式により求められる横加速度である。また、遠心加速度影響分αzcは、進行方向に直交する勾配角φが零(φ=0)の場合は、αzc=0となる。
次に、コントローラ11の減衰力指令演算部11Cについて、図7を参照して説明する。減衰力指令演算部11Cは、可変ダンパ7で発生させるべき目標減衰力を算出するもので、ばね上上下速度推定部22、目標減衰力算出部23、ピストン速度推定部24、および指令値算出部25を含んで構成されている。
ばね上上下速度推定部22は、上下加速度補正演算部11Bから出力される補正後ばね上上下加速度αzcomp(即ち、ばね上上下加速度センサ9より得られる上下加速度センサ値αzsensを補正演算した上下加速度)を積分することにより、車体2の上下方向の変位速度をばね上上下速度として推定演算する。
目標減衰力算出部23は、ばね上上下速度推定部22から出力されるばね上上下速度に基づいて、可変ダンパ7で発生させるべき目標減衰力を算出する。この目標減衰力は、例えばスカイフック制御理論より求めることができる。なお、目標減衰力を算出する制御則としては、スカイフック制御に限らず、例えば最適制御、H∞制御等のフィードバック制御を用いることができる。
ピストン速度推定部24は、上下加速度補正演算部11Bから出力される補正後ばね上上下加速度αzcompに基づいて可変ダンパ7のピストン速度を推定演算により求める。ピストン速度は、ばね上側とばね下側との相対速度に相当する。
指令値算出部25は、目標減衰力算出部23から出力される目標減衰力と、ピストン速度推定部24から出力されるピストン速度とに基づいて、可変ダンパ7の減衰力可変アクチュエータ8に出力すべき制御電流値としての指令値、即ち、制御指令を算出する。
以上のように、コントローラ11は、直進方向勾配算出部15で取得した勾配角θに基づいて、車輪3と車両の車体2との間に設けられたサスペンション装置5の減衰力制御をするための制御指令を求める。コントローラ11は、求められた制御指令をサスペンション装置5(より具体的には、可変ダンパ7の減衰力可変アクチュエータ8)へ出力する。コントローラ11は、求められた制御指令に基づいて、車両の走行状態に応じた減衰力を発生させ、車両制御(より具体的には、車体2の制振)を行うことで、車両の乗り心地を良好に確保している。
実施形態による車両制御システム1は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントローラ11を用いて可変ダンパ7の減衰力特性を可変に制御する処理について説明する。
車体2と車輪3との間に介装して設けられた可変ダンパ7は、コントローラ11からの指令値(制御指令)が指令電流として減衰力可変アクチュエータ8に入力される。これにより、減衰力可変アクチュエータ8は、可変ダンパ7内を流通する油液の流路面積を可変に制御するように駆動される。この結果、可変ダンパ7の減衰力特性は、指令値に従ってハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で可変に制御される。
ところで、特開2006−35928号公報には、車輪速によって算出した前後加速度と前後加速度センサとの差分から勾配角を推定しており、推定した勾配角に基づいて重力式加速度センサの値を零点補正することで傾斜路面走行時の正確な上下加速度を求めることが開示されている。このような従来技術では、勾配角を推定し、ばね上上下加速度センサ9からの検出信号(即ち、上下加速度センサ値αzsens)を補正し、ばね上上下速度の推定演算を行うと共に、ピストン速度の推定演算を行う。しかし、推定した勾配角は、路面の勾配による車輪速の変化と、車両の慣性に起因した車輪速の変化と、の区別ができず、車両が加速したり減速したりする場合に、正確な前後加速度の推定ができない。これに伴って、車両が加速したり減速したりする場合に、目標減衰力の演算結果も悪影響を受けてしまう。
また、従来技術では、車輪がスリップしたりロックしたりする場合に、正確な勾配角を推定できない。これに加え、従来技術は、従動輪の車輪速を用いることが前提となっており、4輪駆動のような従動輪が存在しない車両において適用できないという課題がある。
そこで、本実施形態では、例えば4輪駆動のような従動輪が存在しない車両においても、制御装置(車両制御装置)としてのコントローラ11が、路面勾配演算部11Aと上下加速度補正演算部11Bと減衰力指令演算部11Cとを備え、路面勾配演算部11Aにより、車両の直進方向の路面傾斜度合い(勾配角θ)を車輪のスリップやロックを考慮して補正する。このとき、本実施形態では、加速したり減速したりする場合に、車両の慣性に起因した前後加速度やABS−onや、TCS−onに基づいて勾配角θの演算の可否を判断する。そして、本実施形態では、車体の勾配上下加速度補正演算部11Bにより、路面勾配演算部11Aによる車両直進方向の路面傾斜度合い(勾配角θ)に基づいて、上下加速度センサ値αzsensを補正した補正ばね上上下加速度(補正後ばね上上下加速度αzcomp)を求める。
これにより、減衰力指令演算部11Cは、車両の加速や減速、および車輪のスリップやロックに拘わらず、可変ダンパ7の目標減衰力(指令値)を安定して演算し、重力加速度の影響を減らした状態での指令値を出力することができる。
このような本実施形態による効果を確認するために、実施形態による車両制御システム1について、勾配角等の特性を求めた。その結果を図8ないし図10に示す。図8および図9には、実施形態による車両制御システム1を用いた場合の勾配角等の特性に加えて、比較例による車両制御システムを用いた場合の勾配角等の特性も記載している。なお、比較例による車両制御システムは、路面勾配演算部11Aから勾配算出可否判断部17を省いた構成となっている。このため、比較例では、車両の状態に拘らず、常に勾配角を演算する。
図8は、車両が平坦路面で加速した場合の特性の一例、即ち、「車速」、「勾配角」、「ばね上上下加速度」、「重力加速度補正値」、「遠心加速度補正値」、「補正後ばね上前後加速度」の時間的変化の一例を示している。図9は、車両が平坦路面を減速した場合の特性の一例を示している。図8および図9では、実施形態による車両制御システム1を用いたときの特性を実線で示し、比較例による車両制御システムを用いたときの特性を破線で示している。
図8に示すように、比較例では、車速(特性線29)が増加して、車両が加速した場合には、車両の加速に伴って、ばね上上下加速度(特性線32)が僅かに変動するが、重力加速度補正値(特性線33)はほぼ零に保持される。このとき、比較例では、車両の慣性や車輪3のスリップ等の影響によって、実際の路面(平坦路)に反して、勾配角(特性線31)が増加する。これにより、遠心加速度補正値(特性線35)と補正後ばね上前後加速度(特性線37)が変化し、可変ダンパ7の目標減衰力が不安定になる可能性がある。
これに対し、本実施形態では、車速(特性線29)が増加して、車両が加速した場合には、ばね上上下加速度(特性線32)が僅かに変動するが、重力加速度補正値(特性線33)はほぼ零に保持される。このとき、本実施形態では、車両が加速しても、勾配角(特性線30)はほぼ一定の値(零付近の値)に保持される。これにより、遠心加速度補正値(特性線34)はほぼ変化せず、零に保持される。また、補正後ばね上前後加速度(特性線36)の変化も、比較例に比べて小さくなる。この結果、可変ダンパ7の目標減衰力が安定する。
図9に示すように、比較例では、車速(特性線38)が減少して、車両が減速した場合には、車両の減速に伴って、ばね上上下加速度(特性線41)が変動するが、重力加速度補正値(特性線42)はほぼ零に保持される。このとき、比較例では、車両の慣性や車輪3のロック等の影響によって、実際の路面(平坦路)に反して、勾配角(特性線40)が減少または増加し、勾配角が変動する。これにより、遠心加速度補正値(特性線44)と補正後ばね上前後加速度(特性線46)が変化し、可変ダンパ7の目標減衰力が不安定になる可能性がある。
これに対し、本実施形態では、車速(特性線38)が減少して、車両が減速した場合には、ばね上上下加速度(特性線41)が変動するが、重力加速度補正値(特性線42)はほぼ零に保持される。このとき、本実施形態では、車両が加速しても、勾配角(特性線39)はほぼ一定の値(零付近の値)に保持される。これにより、遠心加速度補正値(特性線43)はほぼ変化せず、零に保持される。また、補正後ばね上前後加速度(特性線45)の変化も、比較例に比べて小さくなる。この結果、可変ダンパ7の目標減衰力が安定する。
このように、実施形態によれば、車両が平坦な路面を加速するとき、および減速するとき、コントローラ11の路面勾配演算部11Aは、車両の慣性や車輪3のスリップやロックに影響されない特性(図8に示す特性線30、および図9に示す特性線39)の勾配角θを出力できる。また、上下加速度補正演算部11Bは、車両の慣性や車輪のスリップやロックに影響されない特性(図8に示す特性線36、および図9に示す特性線45)の補正後ばね上上下加速度を出力できる。
次に、実施形態による車両制御システム1について、車両直進方向での勾配路を登坂走行する場合の特性の一例を図10に示す。図10に示すように、車両が平坦路から勾配路に進入すると、勾配角(特性線47)が上昇する。このとき、路面の勾配変化に伴って、ばね上上下加速度(特性線48)が変動するが、重力加速度補正値(特性線49)はほぼ零に保持される。また、遠心加速度補正値(特性線50)と補正後ばね上前後加速度(特性線51)は、路面の勾配変化に伴って一時的に変動するが、その後は零に保持される。このように、路面勾配演算部11Aは、車両の慣性や車輪3のスリップやロックに影響されずに、勾配角θを出力することができる。また、上下加速度補正演算部11Bは、車両の慣性や車輪3のスリップやロックに影響されずに、補正後ばね上上下加速度を出力することができる。
以上のように、実施形態によれば、直進方向勾配算出部15は、車両の車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定絶対車速Vxabsを取得し、車両の前後方向の加速度を検出するばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)を取得する。直進方向勾配算出部15は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号を取得する。直進方向勾配算出部15は、推定絶対車速Vxabsと、前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)と、要求信号と、に基づいて勾配角θを求める。
この構成によれば、路面勾配演算部11Aは、車両の加速や減速、および車輪3のスリップやロックに拘わらず、サスペンション装置5(可変ダンパ7)の目標減衰力(制御指令)を安定して演算し、重力加速度の影響を減らした状態での制御指令を出力することができる。また、従動輪が存在しない車両においても、車輪3のスリップやロックを考慮して勾配角θを算出することができる。従って、車両が加速または減速する状況や、車輪3のスリップやロックが発生するような状況でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上させ、勾配角θの推定精度を向上させることができる。この結果、路面勾配演算部11Aは、サスペンション装置5(可変ダンパ7)の目標減衰力(制御指令)を安定して演算することができ、重力加速度の影響を減らした状態での制御指令を出力することができる。
実施形態によれば、直進方向勾配算出部15は、推定前後加速度が所定の閾値より小さい場合、またはスリップに基づく制御信号が「作動フラグオフ」の場合は、勾配角θの演算に制限をかけずに求めるための演算許可要求として要求信号を取得する。
この構成によれば、車両の推定前後加速度が所定の閾値以上である場合、またはスリップに基づく制御信号が「作動フラグオン」の場合は、勾配角θの演算に制限がかけられる。即ち、車両の推定前後加速度が比較的大きい場合、またはスリップやロックが発生するような場合は、勾配角θの演算が制限される。このため、車両が加速または減速する状況や、車輪3のスリップやロックが発生するような状況でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上でき、勾配角θの推定精度を向上させることができる。
実施形態によれば、車両の慣性に起因する物理量は、車輪3に発生させる駆動トルク、または車輪3に発生させる制動トルク、または車両の空気抵抗、である。
この構成によれば、車両の慣性に起因する物理量に基づいて車両の推定前後加速度を算出することができる。このため、直進方向勾配算出部15は、車両の慣性に起因する物理量に基づく推定前後加速度に応じて車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号を取得することができる。これにより、車両の慣性に影響されない特性の勾配角θを求めることができる。従って、車両が加速または減速する場合でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上でき、勾配角θの推定精度を向上させることができる。
実施形態によれば、スリップに基づく制御信号は、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)の作動フラグ、またはトラクション・コントロールシステム(TBS)の作動フラグ、である。
この構成によれば、直進方向勾配算出部15は、ABSの作動フラグオンまたはTCSの作動フラグオンの場合は、勾配角θの演算を制限する演算制限要求としての要求信号を取得する。このため、車輪3のスリップやロックが発生するような状況では、勾配角θの誤推定の回避精度を向上することができる。
実施形態によれば、入力した情報に基づいて演算を行うコントローラ11を備える車両制御装置であって、コントローラ11は、車両の車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定車速(推定絶対車速Vxabs)を取得し、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)を取得する。コントローラ11は、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号を取得する。コントローラ11は、推定車速(推定絶対車速Vxabs)と、前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)と、要求信号と、に基づいて勾配角θを取得する。コントローラ11は、勾配角θに基づいて、車輪3と前記車両の車体2との間に設けられたサスペンション装置5の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた制御指令を出力する。
この構成によれば、コントローラ11は、車両の加速や減速、および車輪3のスリップやロックに拘わらず、サスペンション装置5(可変ダンパ7)の目標減衰力(制御指令)を安定して演算し、重力加速度の影響を減らした状態での制御指令を出力することができる。また、コントローラ11は、従動輪が存在しない車両においても、車輪3のスリップやロックを考慮した勾配角とすることで、サスペンション装置5(可変ダンパ7)の目標減衰力(制御指令)を安定して演算し、重力加速度の影響を減らした状態での制御指令を出力することができる。即ち、コントローラ11は、車両が加速または減速する状況や、車輪3のスリップやロックが発生するような状況でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上させ、勾配角θの推定精度を向上させることができる。
実施形態によれば、車両制御方法であって、車両の車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定車速(推定絶対車速Vxabs)を取得し、車両の前後方向の加速度を検出するばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)を取得し、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号を取得し、推定車速(推定絶対車速Vxabs)と、前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)と、要求信号と、に基づいて勾配角θを取得し、勾配角θに基づいて、車輪3と車両の車体2との間に設けられたサスペンション装置5の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた制御指令を出力する。
この構成によれば、車両が加速または減速する状況や、車輪3のスリップやロックが発生するような状況でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上でき、勾配角θの推定精度を向上させることができる。
実施形態によれば、車両制御システム1は、車両の車体2と、車両の車輪3と、の間に設けられたサスペンション装置5と、車両の前後方向の加速度を検出するばね上前後加速度センサ10と、コントローラ11であって、車両の車輪3の回転速度AVwheelに基づく推定車速(推定絶対車速Vxabs)を取得し、ばね上前後加速度センサ10の検出値に基づく前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)を取得し、車両の慣性に起因する物理量に基づく車両の推定前後加速度、または車両のスリップに基づく制御信号に応じて車両が走行する路面の勾配角θを求めるための要求信号を取得し、推定車速(推定絶対車速Vxabs)と、前後加速度(ばね上前後加速度センサ値αxsens)と、要求信号と、に基づいて勾配角θを取得し、勾配角θに基づいて、サスペンション装置5の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた制御指令をサスペンション装置5へ出力する、コントローラ11と、を備える。
この構成によれば、車両が加速または減速する状況や、車輪3のスリップやロックが発生するような状況でも、勾配角θの誤推定の回避精度を向上でき、勾配角θの推定精度を向上させることができる。
なお、実施形態では、コントローラ11は、求められた制御指令をサスペンション装置5へ出力する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、コントローラとしての車両制御装置とサスペンション装置としての減衰力発生装置との間に、この車両制御装置とは別の制御装置(ECU)を設ける構成としてもよい。この場合、車両制御装置は、求められた制御指令を、この別の制御装置(ECU)を介して減衰力発生装置へ出力する。
実施形態では、コントローラ11は、CAN12から車輪3の回転速度AVwheelを取得する場合を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば、車両が電動モータの駆動により車輪に制動力を付与する場合には、電動モータの回転速度により車輪の回転速度を取得する構成としてもよい。
また、実施形態で記載した具体的な数値は、一例を示したものであり、例示した値に限らない。
以上説明した実施形態に基づく路面勾配推定装置、車両制御装置、車両制御方法および車両制御システムとして、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、入力した情報に基づいて演算を行うコントロール部を備える路面勾配推定装置であって、前記コントロール部は、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を求める。
第2の態様としては、第1の態様において、前記コントロール部は、前記推定前後加速度が所定の閾値より小さい場合、または前記スリップに基づく制御信号が作動フラグオフの場合は、前記勾配角の演算に制限をかけずに求めるための演算許可要求として前記要求信号を取得する。
第3の態様としては、第2の態様において、前記車両の慣性に起因する物理量は、前記車輪に発生させる駆動トルク、または前記車輪に発生させる制動トルク、または前記車両の空気抵抗、である。
第4の態様としては、第2の態様において、前記スリップに基づく制御信号は、アンチロック・ブレーキシステムの作動フラグ、またはトラクション・コントロールシステムの作動フラグ、である。
第5の態様としては、入力した情報に基づいて演算を行うコントローラを備える車両制御装置であって、前記コントローラは、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を出力する。
第6の態様としては、車両制御方法であって、車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を出力する。
第7の態様としては、車両の車体と、前記車両の車輪と、の間に設けられた減衰力発生装置と、前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、コントローラであって、前記車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、前記前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、前記勾配角に基づいて、前記減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、求められた前記制御指令を前記減衰力発生装置へ出力する、コントローラと、を備える。
1 車両制御システム
2 車体
3 車輪
5 サスペンション装置(減衰力発生装置)
10 ばね上前後加速度センサ(前後加速度センサ)
11 コントローラ(車両制御装置)
11A 路面勾配演算部(路面勾配推定装置)
15 直進方向勾配算出部(コントロール部)
AVwheel 回転速度
Vxabs 推定絶対車速(推定車速)
αxsens ばね上前後加速度センサ値(前後加速度)
θ 勾配角
2 車体
3 車輪
5 サスペンション装置(減衰力発生装置)
10 ばね上前後加速度センサ(前後加速度センサ)
11 コントローラ(車両制御装置)
11A 路面勾配演算部(路面勾配推定装置)
15 直進方向勾配算出部(コントロール部)
AVwheel 回転速度
Vxabs 推定絶対車速(推定車速)
αxsens ばね上前後加速度センサ値(前後加速度)
θ 勾配角
Claims (7)
- 入力した情報に基づいて演算を行うコントロール部を備える路面勾配推定装置であって、
前記コントロール部は、
車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、
前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、
前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、
前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を求める、路面勾配推定装置。 - 請求項1に記載の路面勾配推定装置であって、
前記コントロール部は、
前記推定前後加速度が所定の閾値より小さい場合、または前記スリップに基づく制御信号が作動フラグオフの場合は、
前記勾配角の演算に制限をかけずに求めるための演算許可要求として前記要求信号を取得する、路面勾配推定装置。 - 請求項2に記載の路面勾配推定装置であって、
前記車両の慣性に起因する物理量は、前記車輪に発生させる駆動トルク、または前記車輪に発生させる制動トルク、または前記車両の空気抵抗、である、路面勾配推定装置。 - 請求項2に記載の路面勾配推定装置であって、
前記スリップに基づく制御信号は、アンチロック・ブレーキシステムの作動フラグ、またはトラクション・コントロールシステムの作動フラグ、である、路面勾配推定装置。 - 入力した情報に基づいて演算を行うコントローラを備える車両制御装置であって、
前記コントローラは、
車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、
前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、
前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、
前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、
前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、
求められた前記制御指令を出力する、車両制御装置。 - 車両制御方法であって、
車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、
前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、
前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、
前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、
前記勾配角に基づいて、前記車輪と前記車両の車体との間に設けられた減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、
求められた前記制御指令を出力する、車両制御方法。 - 車両の車体と、前記車両の車輪と、の間に設けられた減衰力発生装置と、
前記車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、
コントローラであって、
前記車両の車輪の回転速度に基づく推定車速を取得し、
前記前後加速度センサの検出値に基づく前後加速度を取得し、
前記車両の慣性に起因する物理量に基づく前記車両の推定前後加速度、または前記車両のスリップに基づく制御信号に応じて前記車両が走行する路面の勾配角を求めるための要求信号を取得し、
前記推定車速と、前記前後加速度と、前記要求信号と、に基づいて前記勾配角を取得し、
前記勾配角に基づいて、前記減衰力発生装置の減衰力制御をするための制御指令を求め、
求められた前記制御指令を前記減衰力発生装置へ出力する、コントローラと、
を備える車両制御システム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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