JP7121690B2 - 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法 - Google Patents

車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7121690B2
JP7121690B2 JP2019092753A JP2019092753A JP7121690B2 JP 7121690 B2 JP7121690 B2 JP 7121690B2 JP 2019092753 A JP2019092753 A JP 2019092753A JP 2019092753 A JP2019092753 A JP 2019092753A JP 7121690 B2 JP7121690 B2 JP 7121690B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vehicle
motion state
estimation
wheel speed
vertical motion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019092753A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020185940A (ja
Inventor
真吾 奈須
信治 瀬戸
修之 一丸
隆介 平尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Astemo Ltd
Original Assignee
Hitachi Astemo Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Astemo Ltd filed Critical Hitachi Astemo Ltd
Priority to JP2019092753A priority Critical patent/JP7121690B2/ja
Publication of JP2020185940A publication Critical patent/JP2020185940A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7121690B2 publication Critical patent/JP7121690B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、車両の上下運動状態量を推定し、推定した上下運動状態量に応じてサスペンションの減衰力の出力範囲を設定する車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法に関する。
車両の上下運動状態量を取得する方法として、車高センサや上下加速度センサなどの専用センサを用いて直接検出する方法の他に、車輪速センサなどの一般的に車載されるセンサから車両ダイナミクスモデルを用いて専用センサを用いずに推定する方法が知られている。
後者の推定方法は、車輪速センサの信号から抽出した上下運動に起因する車輪速に基づいて上下運動状態量を推定しているが、車輪にスリップが生じると抽出した車輪速が、上下運動起因かスリップ起因かを区別できず、上下運動状態量の推定精度が低下する課題がある。
本課題に対して、特許文献1には、ローパスフィルタ処理した各輪の車輪速にばらつきが生じる場合にはスリップによって上下運動状態量の推定確度が低下していると判断する推定確度低下の判断基準に基づき推定確度低下フラグをオンとし、車速とスリップ率に基づいて定めた減衰力制御量に基づいてサスペンションの減衰力を制御することで操縦安定性を確保する方法が記載されている。
特開2015-155214号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、推定確度低下フラグのオンオフでサスペンションの減衰力制御量の生成方法を切り替える方式であるため、推定確度低下の判断基準を少しでも下回れば場合には、それほどスリップが大きくない場合でも制振性が低下するなど所望の減衰力を出力できない可能性があり、またそれを回避するため推定確度低下の判断基準を高くした場合には、推定精度が悪いにも関わらず適切な判断ができないために操縦安定性や制振性が低下する可能性がある。
そこで、本発明では、車輪がスリップするなど上下運動状態量の推定確度が低下する走行状況においても操縦安定性や制振性の低下を抑制可能な、車両運動状態推定装置を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、本発明の車両運動状態推定装置は、車両の車輪と車体を結合するサスペンションの減衰力を設定するものであって、前記車両の走行状態情報に基づいて前記車両の上下運動に起因する車輪速成分を推定する上下運動起因車輪速成分推定部と、前記車輪速成分に基づいて前記車両の上下運動状態量を推定する上下運動推定部と、前記走行状態情報に基づいて前記上下運動状態量の推定確度を演算する推定確度演算部と、前記上下運動状態量と前記推定確度に基づいて、前記サスペンションの減衰力の出力範囲の上限と下限を設定する減衰力制御部と、を具備するものとした。
本発明の車両運動状態推定装置によれば、車輪がスリップするなど上下運動状態量の推定確度が低下する走行状況においても操縦安定性や制振性の低下を抑制することができる。
一実施例に係るサスペンション制御システムを搭載した車両構成例を示す図。 一実施例に係る車両運動状態推定装置50の機能ブロック図。 一実施例に係るサスペンション制御ユニット81の機能ブロック図。 一実施例に係る四輪車平面モデルを示す図。 一実施例に係る四輪フルビークルモデルを示す図。 一実施例に係る車体ピッチングによって生じる車輪速を示す図。 一実施例に係るサスペンションの変位によって生じる車輪速を示す図。 一実施例に係る接地荷重変動によって生じる車輪速を示す図。 一実施例に係る接地荷重とタイヤ有効回転半径の関係を示す図。 一実施例に係る加速度と推定確度の関係の一例を示す図。 一実施例に係る加速度と推定確度の関係の一例を示す図。 一実施例に係る推定確度と制御指令値の関係の一例を示す図。 一実施例に係る推定確度と制御指令値の関係の一例を示す図。 一実施例に係る推定確度と制御指令値の関係の一例を示す図。 一実施例に係る推定確度と制御指令値の関係の一例を示す図。 一実施例に係る車両上下運動量推定装置50とサスペンション制御ユニット81による処理結果の一例を示す図。 一実施例に係る車両上下運動量推定装置50とサスペンション制御ユニット81による処理結果の一例を示す図。
以下、本発明の一実施例に係るサスペンション制御システムについて、図1~図16を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施例の車両運動状態推定装置50を搭載した車両10の構成例図を示したものである。ここに示すように、車両10は、車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、操舵角センサ4、制駆動制御ユニット5、操舵制御ユニット6、車輪7、車体8、車両運動状態推定装置50、サスペンション制御ユニット81、サスペンション装置82を備えている。
本実施例では、本発明を理解しやすくするために、制駆動制御ユニット5、操舵制御ユニット6、車両運動状態推定装置50、サスペンション制御ユニット81が分離した構成を例示しているが、本発明を実車両に採用する際には、上位コントローラであるECU(Electronic Control Unit)でそれらの機能を実現しても良い。なお、ECUは、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えた、車両を統括制御する計算機であり、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、様々な機能を実現するものであるが、以下では、このような周知技術を適宜省略しながら説明する。
サスペンション制御ユニット81の制御対象である、サスペンション装置82は、減衰特性を調整可能な減衰力調整式のショックアブソーバ、あるいは車体と車輪の間の上下方向の減衰力を調整可能なアクティブサスペンションである。
上述の車両10に搭載されるセンサ(車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、操舵角センサ4)は、一般的に搭載されているセンサであり、所謂専用センサというものではない。
車輪速センサ1は、車体8の前後左右四か所の車輪7の回転速度を検出する。加速度センサ2は、車体8の重心に作用する加速度を検出する。ジャイロセンサ3は、車体8の重心周りの回転角速度であるヨーレイトrを検出する。操舵角センサ4は、車両10を運転するドライバの操舵によって生じるステアリングホイールの回転角あるいは車輪7の舵角を検出する。
ここで、車輪速センサ1は、例えば、車軸ハブやブレーキドラムなどに設置された回転部と、ナックルやブレーキキャリアなどに設置された固定部との間の相対回転速度を検出するもので構成され、検出される回転速度は制駆動力に起因するものと車両の上下運動に起因するものがある。
車両10の上下運動は、路面上下変位や、ドライバまたは制御ユニットの操舵や加減速操作によって生じ、この車両10の上下運動に起因する回転速度にタイヤ半径を乗じて算出した値を、上下運動起因車輪速成分と称することにする。
制駆動制御ユニット5は、ドライバの操作や車両運動状態推定装置50の出力などに基づいて内燃機関や電動機、ブレーキキャリパなどで発生させる制駆動力を制御するユニットである。
操舵制御ユニット6は、ドライバの操作や車両運動状態推定装置50の出力などに基づいて車輪7の操舵角を制御するユニットである。
ここで、制駆動制御ユニット5や操舵制御ユニット6には、前述のセンサ(車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、操舵角センサ4)で検出した値を入力として、車輪7の前後方向の車輪スリップであるスリップ率、横方向の車輪スリップである横すべり角、車両の前後方向の速度などの平面運動に起因する状態量を推定、出力する平面運動推定部を備えていても良い。
また、車両10は、制駆動制御ユニット5や操舵制御ユニット6に対して、制御指令や推定値を送信する上位コントローラを備えていても良く、上位コントローラは、車両運動状態推定装置50の出力に基づいて、制御指令や推定値を生成する構成であっても良い。
以降では、前述のセンサ(車輪速センサ1、加速度センサ2、ジャイロセンサ3、操舵角センサ4)で検出された値と、制駆動制御ユニット5あるいは操舵制御ユニット6、またはその両方で推定、出力された値を、走行状態情報と称することにする。
<車両運動状態推定装置50>
次に、図2を用いて、車両運動状態推定装置50の機能ブロック図を概説する。
車両運動状態推定装置50は、前述の走行状態情報を入力として、後述の上下運動状態量xを推定し、さらにその推定確度εを算出し、その結果をサスペンション制御ユニット81などに出力するものであり、上下運動起因車輪速成分yを推定する上下運動起因車輪速成分推定部51と、上下運動状態量xを推定する上下運動推定部52と、推定確度εを算出する推定確度演算部53から構成される。各部の詳細は後述するが、概説すると次の通りである。
上下運動起因車輪速成分推定部51は、走行状態情報を入力として、上下運動起因車輪速成分yを推定し、その推定値を出力する。
上下運動推定部52は、走行状態情報と、上下運動起因車輪速成分yと、後述する減衰力変化分Fcdと、接地荷重変動起因車輪速Vwzcとを併せた入力ベクトルuを入力として、上下運動状態量xを推定し、その推定値を出力する。
ここで、上下運動起因車輪速成分推定部51は、上下運動推定部52で推定した上下運動状態量xの推定値を入力する構成であっても良い。
推定確度演算部53は、走行状態情報を入力として、上下運動推定部52から出力される上下運動状態量xの推定確度εを演算し、出力する。
<サスペンション制御ユニット81>
次に、図3を用いて、サスペンション制御ユニット81の機能ブロック図を概説する。
サスペンション制御ユニット81は、走行状態情報、車両運動状態推定装置50で出力した上下運動状態量xの推定値と、推定確度εに基づいて、サスペンション装置82の減衰特性あるいは上下方向の力を制御する制御指令値を生成するものであり、目標減衰力算出部81aと、減衰力マップ81bと、出力制限部81cから構成される。各部の詳細は後述するが、概説すると次の通りである。
目標減衰力算出部81aは、走行状態情報と、上下運動推定部52で推定した上下運動状態量xを入力として、サスペンション装置82の目標減衰力を算出し、出力する。
減衰力マップ81bは、予め記憶されたサスペンション装置82の特性のマップ情報であり、目標減衰力算出部81aで算出した目標減衰力と、走行状態情報と、上下運動状態量xを入力として、サスペンション装置82を制御する制御指令値の暫定値である暫定制御指令値を導出し、出力する。
出力制限部81cは、減衰力マップ81bで導出した暫定制御指令値と、推定確度演算部53で算出した推定確度εを入力として、推定確度εに基づく出力許可範囲内の制御指令値を導出し、出力する。
<上下運動起因車輪速成分推定部51>
次に、図4を用いて、上下運動起因車輪速成分推定部51における上下運動起因車輪速yの推定方法の具体例を説明する。上下運動起因車輪速成分推定部51における上下運動起因車輪速yの推定方法においては、後述する(式1)から(式8)を用いる。図4は、左旋回中の前輪操舵の四輪車を上から見た四輪車平面モデルを示す図である。
四輪車平面モデルは、車両10に固定したばね上重心9を原点とする座標系を用いており、車両の前後方向をx軸、車両の左右方向をy軸、車両の上下方向をz軸とする。
ここで、車輪7の操舵角である実舵角をδ、車両の進行方向の速度をV、車両の前後方向の速度をVx、車両の左右方向の速度をVy、ジャイロセンサ3で検出したz軸周りの回転角速度であるヨーレイトをr、車両の進行方向と前後方向のなす角を車体横すべり角β、車輪7の進行方向と回転面のなす角を車輪横すべり角βfl、βfr、βrl、βrr、車輪速VwsをVwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrr、前輪軸と後輪軸の距離であるホイールベースをl、前後輪軸からばね上重心までの車両前後方向の距離をlf、lr、前後輪のトレッドをdf、drとする。
なお、上記記号表示における添え字のfは前輪、rは後輪、flは左前輪、frは右後輪、rlは左後輪、rrは右後輪を示している。
また、車輪速Vwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrrは、車輪7の回転速度にタイヤ半径を乗じて算出した車輪の移動速度であり、車輪速センサ1で検出できる値である。
この車輪速Vws(Vwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrr)は、車両の上下運動によって生じる上下運動起因車輪速成分と、操舵や加減速操作に伴う車両の平面運動によって生じる平面運動起因車輪速成分で構成される。
したがって、上下運動起因車輪速成分推定部51で推定される上下運動起因車輪速成分Vwzfl、Vwzfr、Vwzrl、Vwzrrは、車輪速Vwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrrをばね上重心9の位置における車両の前後方向の速度に換算した車輪速であるVwfl、Vwfr、Vwrl、Vwrrから平面運動起因車輪速の前後方向成分である車両の前後方向の速度Vxを減算して求められ、(式1)で表される。
Figure 0007121690000001
ここで、(式1)のVwzfl、Vwzfr、Vwzrl、Vwzrrは、上下運動起因車輪速成分、Vwfl、Vwfr、Vwrl、Vwrrは車輪速Vwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrrをばね上重心9の位置における車両の前後方向の速度に換算した車輪速である。
(式1)のばね上重心9の位置における車両の前後方向の速度に換算した車輪速Vwfl、Vwfr、Vwrl、Vwrrは、車輪速に旋回運動によって生じる実舵角δやヨーレイトrに基づく各輪の速度差を加減算することで求められ、(式2)で表される。
Figure 0007121690000002
また、(式1)の車両の前後方向の速度Vxは、車両の前後方向の加速度Gxを積分して求められ、(式3)で表される。
Figure 0007121690000003
ここで、(式3)の車両の前後方向の加速度Gxは、加速度センサ2で検出した車体8の重心に作用する前後加速度Gxseを用いても良いが、前後加速度Gxseに含まれる車体ピッチングに伴う重力加速度成分を除去することで高精度に求められることから、(式4)を用いて求めても良い。
Figure 0007121690000004
さらに、(式4)の車両の前後方向の加速度Gxは、前後加速度Gxseに含まれる車体横すべりに伴う横加速度成分を除去することでより高精度に求められることから、(式5)を用いて求めても良い。
Figure 0007121690000005
ここで、(式4)と(式5)において、gは重力加速度、θxとθyはロール角とピッチ角であり、例えば、ロール角θxとピッチ角θyは上下運動推定部52で推定した値を用いる。
また、(式5)の車両の横方向の加速度Gyは、加速度センサ2で検出した値をそのまま用いても良いが、横加速度Gyseに含まれる車体ローリングに伴う重力加速度成分を除去することで高精度に求められることから、(式6)を用いて求めても良い。
Figure 0007121690000006
さらに、(式5)の車両の横方向の加速度Gyは、横加速度Gyseに含まれる車体横すべりに伴う前後加速度成分を除去することでより高精度に求められることから、(式7)を用いて求めても良い。
ここで、(式7)の車両の前後方向の加速度Gxは、前述の(式4)を用いて求めた値や、(式5)を用いて求めた値であっても良く、車両の前後方向の加速度Gxの取得方法は限定しない。
Figure 0007121690000007
なお、(式4)~(式7)によれば、車両の前後方向の加速度Gx、車両の横方向の加速度Gyは、上下運動推定部52の出力であるロール角θx、ピッチ角θyに基づいて補正されたものであるということができる。
また、車両が旋回している時に生じる横方向の加速度Gyは、(式8)に示すように旋回している円の接線方向の速度と角速度の積で求められることから、横方向の加速度Gyを検出する加速度センサを用いずに推定することも可能である。(式8)によれば、横方向の加速度Gyは、車両の前後方向の速度Vxとヨーレイトrから推定することができる。
Figure 0007121690000008
なお、(式1)の車両の前後方向の速度Vxは、前述の制駆動制御ユニット5などのコントローラで推定された平面運動状態量や、GPSを用いて検出した位置情報を時間微分して算出した値であっても良く、車両の前後方向の速度Vxの取得方法は限定しない。
また、(式4)~(式7)のロール角θxとピッチ角θyは、前述の制駆動制御ユニット5などのコントローラで推定された値や、カメラなどを用いて検出した値であっても良く、ロール角θxとピッチ角θyの取得方法は限定しない。
また、(式5)と(式7)の車体横すべり角βは、前述の制駆動制御ユニット5などで推定された平面運動状態量や、GPSを用いて検出した値や、車両運動状態推定装置50に図示しないが平面運動推定部を設け、そこで推定された平面運動状態量であっても良く、車体横すべり角βの取得方法は限定しない。
以上から、上下運動起因車輪速成分推定部51では、走行状態情報である車輪速センサ1で検出した車輪速Vwsfl、Vwsfr、Vwsrl、Vwsrrや、ジャイロセンサ3で検出したz軸周りの回転角速度であるヨーレイトrなどを入力として、上下運動起因車輪速成分Vwzfl、Vwzfr、Vwzrl、Vwzrrを推定し、出力する。なお、本明細書中、または図2などでは、推定した上下運動起因車輪速成分Vwzfl、Vwzfr、Vwzrl、Vwzrrを総称して、上下運動起因車輪速成分yと表記することがある。
<上下運動推定部52>
次に、図5から図9を用いて、上下運動推定部52における上下運動状態量xの推定方法の具体例を説明する。上下運動推定部52における上下運動状態量xの推定方法においては、後述する(式9)から(式30)を用いる。なお、これら数式の一部には、代替式を含む。
一般的には観測量をy、制御入力をuとした時、観測量yと制御入力uから状態変数xを推定するのがオブザーバである。
従って、本実施例の上下運動推定部52は、上下運動起因車輪速成分を観測量yとし、後述する減衰力変化分Fcdと、接地荷重変動起因車輪速Vwzcとを併せた入力ベクトルuを入力として、上下運動状態量xを推定するオブザーバということができる。これを導くための状態方程式を以下に示す。
状態方程式に必要な運動方程式と観測方程式について説明する。
まず、図5を用いて、上下運動推定部52での上下運動状態量xの推定に用いている運動方程式を説明する。上下運動推定部52での上下運動状態量xの推定に用いている運動方程式においては、後述する(式9)から(式15)を用いる。
図5は、路面上下変位を伴う車両10を左斜め上から見た図であり、車体8や車輪7などを質点で表し、各質点をばねやショックアブソーバで接続した四輪フルビークルモデルを示す図である。なお、図5での記号表記などは図4の四輪車平面モデルの例に準じて行われている。
その上で更に図5の四輪フルビークルにおいては、ばね上重心9の上下変位をz2cg、各輪上のばね上上下変位をz2fl、z2fr、z2rl、z2rr、ばね下上下変位をz1fl、z1fr、z1rl、z1rr、路面上下変位をz0fl、z0fr、z0rl、z0rr、ばね上重心9のロール角、ピッチ角をそれぞれθx、θy、サスペンションばね定数をksfl、ksfr、ksrl、ksrr、サスペンション減衰係数をcsfl、csfr、csrl、csrr、スタビライザばね定数をkstf、kstr、ばね上重心9の高さをhとして表記している。
この図を基に、(式9)から(式14)の関係が示される。
Figure 0007121690000009
Figure 0007121690000010
Figure 0007121690000011
Figure 0007121690000012
Figure 0007121690000013
Figure 0007121690000014
(式9)はばね上重心9に作用する上下方向の力に関する運動方程式、(式10)はばね下に作用する上下方向の力に関する運動方程式、(式11)はロール軸回りのモーメントIxに関する運動方程式、(式12)はピッチ軸回りのモーメントIyに関する運動方程式、(式13)はばね上とばね下の上下方向の相対変位の関係式、(式14)はばね上とばね下の間に作用する上下方向の力の釣り合い式である。
ここで、サスペンション装置82に車両運動状態推定装置50を適用する場合、サスペンション減衰係数csfl、csfr、csrl、csrrが可変になる。
上下運動推定部52が時不変の定数で構成された線形オブザーバとする場合には、後述する状態方程式の行列Aから行列Dが時不変である必要がある。
そこで、(式14)のサスペンション減衰係数による減衰力の項を、定常減衰係数csf、csrによる減衰力の項と、その差分によって生じる減衰力変化分Fcdfl、Fcdfr、Fcdrl、Fcdrrの項に分離して、(式15)で表す。
Figure 0007121690000015
また、(式11)のhxcは車体8のロール方向の回転中心であるロール軸とばね上重心9の長さ、(式12)のhycは車体8のピッチ方向の回転中心であるピッチ軸とばね上重心9の長さである。
(式9)から(式15)の一連の関係式において、最終的に求められるばね上とばね下の上下方向の相対変位の関係式である(式13)には、(式9)から(式12)および(式14)あるいは(式15)が反映されている。
次に図6から図9を用いて、観測方程式について説明する。観測量は上下運動起因車輪速成分yである。上下運動起因車輪速成分yを構成する車体ピッチング起因車輪速Vwzaと、サスペンション変位起因車輪速Vwzbと、接地荷重変動起因車輪速Vwzcを説明する。なお、図6から図9は、各輪で共通のため、右左輪を示すflなどの添え字は省略する。
<車体ピッチング起因車輪速Vwzaの具体例>
まず、車体ピッチング起因車輪速Vwzaの具体例を説明する。なお、車体ピッチング起因車輪速Vwzaの説明は、図6、並びに(式16)から(式18)を用いて行う。
図6は、車体8のピッチングと車輪7の変位の幾何学的な関係を表したものである。
ここで、Oは車輪7の中心、hはばね上重心9の高さ、Rはタイヤ半径、Lpはばね上重心9から車輪7の中心Oまでの長さ、Lp1は車体8にピッチングが生じている時のばね上重心9から車輪7の中心Oまでの長さ、Φpはばね上重心9と車輪7の中心Oと水平面のなす角、θyは車体ピッチ角、θwは車輪7の回転角である。
車体ピッチ角θyが小さい時、LpとLp1は概ね等しくなるため、車輪7の水平方向の変位Rθwは、ばね上重心9から車輪7の中心Oまでの長さLpと、車体ピッチ角θyと、ばね上重心9と車輪7の中心Oと水平面のなす角Φpに基づいて、(式16)で表される。
Figure 0007121690000016
さらに、(式16)のsinΦpは、ばね上重心9の高さhと、タイヤ半径Rと、ばね上重心9から車輪7の中心Oまでの長さLpに基づいて、(式17)で表される。
Figure 0007121690000017
ここで、車輪速センサ1で検出される回転速度は、図は省略するがナックルやブレーキキャリアなどの車体側に設置された固定部品と、車軸ハブやブレーキドラムなど車輪側に設置された回転部品の相対回転速度であり、車体のピッチングに伴う固定部品の回転速度であるθyの微分値と、車輪自体の回転速度であるθwの微分値の和で表される。したがって車体ピッチング起因車輪速Vwzaは、その回転速度の和にタイヤ半径Rを乗じたものであり、(式18)で表される。ここで、最右辺は(式16)の微分と(式17)を代入することで求められる。
Figure 0007121690000018
<サスペンション変位起因車輪速Vwzbの具体例>
次に、サスペンション変位起因車輪速Vwzbの具体例を説明する。なお、サスペンション変位起因車輪速Vwzbの説明は、図7、並びに(式19)から(式23)を用いて行う。
図7は、サスペンション変位と車輪7の変位の幾何学的関係を表したものである。
ここで、Osはサスペンションの瞬間回転中心、Ogは車輪7と路面の接触点、Oは車輪7の中心、Rはタイヤ半径、Lsはサスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの長さ、Ls1はサスペンション変位が生じている時のサスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの長さ、Lはサスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平方向の長さ、θ0はサスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平面のなす角、θはサスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7と路面の接触点Ogと水平面のなす角、θtは車輪7の固定座標系に対する車輪の回転角、θrはサスペンションの瞬間回転中心Osに対する車輪速センサ1の固定部の回転角である。また、z21はサスペンション変位であり、相対変位と称する。
車輪7のタイヤ半径と固定座標系に対する回転角の積と等しい水平方向の変位Rθtは、相対変位z21と、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平面のなす角θ0に基づいて、(式19)で表される。
Figure 0007121690000019
車輪速センサ1の固定部の回転角θrが小さい時、LsとLs1は概ね等しくなるため、サスペンションの瞬間回転中心Os周りの車輪速センサ1の固定部の回転変位Lsθrは、相対変位z21と、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平面のなす角θ0に基づいて、(式20)で表される。
Figure 0007121690000020
ここで、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの長さLsは、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平方向の長さLと、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平面のなす角θ0に基づいて、(式20)で表される。
Figure 0007121690000021
さらに、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平方向の長さLは、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7と路面の接触点Ogと水平面のなす角θと、サスペンションの瞬間回転中心Osから車輪7の中心Oまでの水平面のなす角θ0と、タイヤ半径Rに基づいて、(式22)で表される。
Figure 0007121690000022
ここで、車輪速センサ1で検出される回転速度は、サスペンションの瞬間回転中心Os周りの車輪速センサ1の固定部品の回転速度であるθrの微分値と、固定座標系周りの車輪速センサ1の回転部品の回転速度θtの微分値の和で表される。したがってサスペンション変位起因車輪速Vwzbは、その回転速度の和にタイヤ半径Rを乗じたものであり、(式23)で表される。
Figure 0007121690000023
<接地荷重変動起因車輪速Vwzcの具体例>
次に、接地荷重変動起因車輪速Vwzcの具体例を説明する。なお、接地荷重変動起因車輪速Vwzcの説明は、図8、図9、並びに(式24)から(式27)を用いて行う。
図8は、接地荷重Fzが作用する速度Vxの回転車輪を示す図であり、車輪7に作用する接地荷重の変動Fzdの減少に伴い、タイヤ有効回転半径Rが増加し、それによって車輪7の回転速度ωzcが減少する様子を模式的に表したものである。
ここで、接地荷重変動起因の車輪回転速度ωzcは、タイヤ有効回転半径の変動量をRdとした場合、タイヤ有効回転半径がRの時の回転速度と、タイヤ有効回転半径がR+Rdの時の回転速度の差から求められる。さらに、タイヤ有効回転半径の変動量Rdが小さいと仮定して整理すると、接地荷重変動起因の車輪回転速度ωzcは、車両の前後方向の速度Vxと、タイヤ有効回転半径Rと、タイヤ有効回転半径の変動量Rdに基づいて、(式24)で表される。
Figure 0007121690000024
図9は、接地荷重Fzとタイヤ有効回転半径Rの関係を表す特性線図である。
接地荷重の変動Fzdが小さい場合、接地荷重の変動Fzdとタイヤ有効回転半径の変動Rdの関係は概ね線形になる。
そのため、接地荷重Fzとタイヤ有効回転半径Rの近似勾配をηとした場合、タイヤ有効回転半径の変動Rdは、タイヤ上下ばね定数ktと、接地荷重の変動Fzdに基づいて、(式25)で表される。
Figure 0007121690000025
ここで、接地荷重の変動Fzdは、タイヤ上下ばね定数ktと、路面上下変位z0と、ばね下上下変位z1、あるいはばね下質量m1と、ばね下上下変位z1の二階微分値と、ばね上とばね下の間に作用する上下方向の力Fsに基づいて、(式26)で表される。
Figure 0007121690000026
したがって接地荷重変動起因車輪速Vwzcは、(式24)に(式25)を代入し、さらに、(式26)を代入してタイヤ半径Rを乗じたものであり、(式27)で表される。
Figure 0007121690000027
以上の(式16)から(式27)で表される車輪速成分を用いて、上下運動起因車輪速成分Vwzfl、Vwzfr、Vwzrl、Vwzrrは、(式28)で表される。
Figure 0007121690000028
ここで、接地荷重変動起因車輪速Vwzcは、(式27)の車両の前後方向の速度Vxが時々刻々変化するため、オブザーバの出力であるばね下上下速度などの上下運動状態量xと車両の前後方向の速度Vxに基づいて求め、前述の減衰力変化分Fcdと併せて入力ベクトルuとしてオブザーバに入力する。
上下運動推定部52では、前述の通り上下運動起因車輪速成分y、入力ベクトルu、上下運動状態量xに基づいて、(式9)から(式28)の方程式を状態方程式化し、その状態方程式に基づくオブザーバによって、上下運動起因車輪速成分yと入力ベクトルuから上下運動状態量xを推定し、出力する。したがって上下運動状態量x、観測量y、入力ベクトルuが(式29)で表されるものとすると、状態方程式は(式30)で表される。
Figure 0007121690000029
Figure 0007121690000030
ここで、(式30)のAは状態行列、Bは入力行列、Cは出力行列、Dは直達行列、Gvはシステム雑音の項、Hwは観測雑音の項である。なお、状態行列Aや入力行列Bなどは、各状態量やu、vなどの係数を並べたもので構成される。
<推定確度演算部53>
次に、図10と図11を用いて、推定確度演算部53における推定確度εの演算方法の具体例を説明する。
まず、推定確度εが低下する要因について説明する。(式1)に示す上下運動起因車輪速成分の算出方法は、車輪速に含まれる車輪のスリップに起因する車輪速成分がゼロと仮定したものである。車輪のスリップは、車両の加減速や旋回によって生じる走行抵抗力に釣り合う前後力や横力を発生するためタイヤと路面の間に生じる。発生する車輪のスリップの大きさは、タイヤ特性や路面摩擦係数μの大きさによって異なるが、前後加速度Gxseや横加速度Gyseが大きいほど大きく、路面摩擦係数μが小さいほど大きくなる傾向がある。
そのため、前後加速度Gxseや横加速度Gyseは大きいほど、また、路面摩擦係数μが小さいほど、車輪速に含まれるスリップ起因車輪速成分が大きくなり、(式1)を用いて算出した上下運動起因車輪速成分の誤差が大きくなる。そこで、推定誤差が小さいと考えられる場合に数値が大きくなり、推定誤差が大きいと考えられる場合に数値が小さくなる推定確度εという指標を導入する。この推定確度εは、たとえば、横軸に前後加速度Gxse、縦軸に推定確度εを表すと、図10に示すような関係で表される。
そこで、前後加速度Gxse、横加速度Gyse、路面摩擦係数μに応じた推定確度εを求めることとする。
前後加速度Gxseと推定確度εの間に線形の関係があると仮定した場合、推定確度εは(式31)で表すことができる。
Figure 0007121690000031
ここで、α1は重み係数であり、あらかじめ車高センサなどの専用センサを搭載した車両を用いて、前後加速度Gxseの大きさと、上下運動状態量xと専用センサを用いずに推定した上下運動状態量xの推定誤差に基づいて決めればよい。例えば、重み係数α1を0.2とした場合、前後加速度Gxseと推定確度εの関係は図11で表される。
次に、横加速度Gyseと推定確度εの間に線形の関係があると仮定した場合、推定確度εを(式32)で表す。
Figure 0007121690000032
ここで、α2は重み係数であり、α1と同様な方法に基づいて決めればよい。
次に、路面摩擦係数μと推定確度εの間に線形の関係があると仮定した場合、推定確度εを(式33)で表す。ここで、α3は重み係数であり、α1と同様な方法で決めればよい。
Figure 0007121690000033
なお、(式33)の路面摩擦係数μは前後加速度Gxseと横加速度Gyseを用いて求められ、(式34)で表される。
Figure 0007121690000034
また、推定確度εは(式31)から(式33)では、複合要因が考慮できないため、たとえば、(31)から(式33)の積で推定確度εを算出するようにしてもよい。また、これらを足し合わせた(式35)を用いて推定確度εを求めても良い。
Figure 0007121690000035
また、推定確度εは線形の関係だけではなく、二次関数や任意の関数としても良く、推定確度εの算出方法は限定しない。
<出力制限部81c>
次に図12から図15を用いて、出力制限部81cの出力である制御指令値を説明する。
図12は、推定確度εと制御指令値の出力許可範囲の関係を表す特性線図の一例である。この例では、出力許可範囲を、図中のハッチングで示す上辺と右辺が直交する直角三角形の領域に設定している。
出力制限部81cは、減衰力マップ81bから入力された暫定制御指令値が、出力許可範囲に収まる場合には暫定制御指令値を制御指令値としてそのまま出力し、出力許可範囲の範囲外となる場合には出力許可範囲の上限値または下限値を制御指令値として出力する。
出力許可範囲は、推定確度εの低下による操縦安定性の低下を抑制するためのものであるので、推定確度εが大きければ範囲が広く、小さければ範囲が狭いものにする必要がある。図12では、この一態様として、推定確度ε=1であれば暫定制御指令値をそのまま出力でき、推定確度ε=0であれば暫定制御指令値に拘わらず最もハードな減衰力をサスペンション装置82に設定する制御指令値を出力するように、減衰力の出力許可範囲をハード側に狭くした。図12の出力許可範囲が設定された場合、入力された推定確度εが例えばεであれば、入力された暫定制御指令値が図中の一点鎖線で示すレベルであったとしても、白丸で示す出力許可範囲外の暫定制御指令値ではなく、黒丸で示す出力許可範囲の下限値を制御指令値として出力する。
また、図13に示すように、推定確度ε=0の制御指令値を図12よりソフト側にした出力許可範囲を設定することで制振性を考慮しつつ操縦安定性を低下させない出力許可範囲を定めても良い。
さらに、図14や図15に示すように、推定確度εが1より小さい場合でも暫定制御指令値をそのまま出力できるようにしたり、図15に示すように、推定確度εが0より大きい場合でも一定の制御指令値を出力したりするようにしても良く、推定確度εに対する制御指令値の出力許可範囲は限定しない。例えば、推定確度εが小さくなるにつれ、出力許可範囲の幅(図12~図15における出力許可範囲の高さ)を段階的(ステップ状に)に狭くすることとしても良い。
以上が本発明における車両の上下運動状態量xの推定方法と制御サスペンション装置を制御する制御指令値の生成方法の一例であり、このような構成の車両運動状態推定装置50と図3に示すサスペンション制御ユニットを用いることで、車輪速センサ1などの一般的に車載されているセンサと車両ダイナミクスモデルを用いて推定した上下運動状態量xと、その上下運動状態量xと推定確度εに基づく制御指令値により、車輪がスリップし、上下運動状態量xの推定確度εが低下する走行状況においても操縦安定性や制振性の低下を抑制できる。
<本実施例の効果>
次に、図16と図17を用いて、以上で説明した車両運動状態推定装置50とサスペンション制御ユニット81により達成される効果の一例を説明する。
図16は、うねり路を一定の速度Vで直進通過した時の本実施例の効果を示すグラフであり、図17は、うねり路を一定の前後加速度Gxseで直進通過した時の本実施例の効果を示すグラフである。両図は、上から順に、(a)前後加速度Gxse、(b1)従来方法により推定したばね上上下速度、(b2)本実施例により推定したばね上上下速度、(c)推定確度、(d)減衰力、(e)上下加速度を示している。
両図の(b1)(b2)に示すばね上上下速度において、破線は真値、従来方法による推定値、実線は本実施例による推定値である。また、両図の(d)(e)に示す減衰力と上下加速度において、一転鎖線は従来方法を用いた場合の減衰力または上下加速度、実線は本発明を用いた場合の減衰力または上下加速度である。
図16は、一定速度で走行中の車両10における本実施例の効果を示すものである。この状況下では、(c)に示すように、推定確度εが上限値1であり、また、(b1)(b2)に示すように、従来方法と本発明のばね上上下速度の推定値は真値と概ね等しい。このため、(e)に示すように、従来方法と本発明の何れを用いても、上下加速度は同等になる。
一方、図17は、一定の前後加速度Gxseで加速中の車両10における本実施例の効果を示すものである。この状況下では、(c)に示すように、推定確度εは上限値1より小さく、また、(b1)(b2)に示すように、従来方法と本実施例の何れによる推定値も、ばね上上下速度の真値よりも振幅が小さくなっている。
この場合、推定確度εを考慮しない従来方法では、真値よりも振幅の小さい推定値の影響を受け、本来必要なものよりも小さな制御指令値が出力され、サスペンション装置82には本来必要なものよりソフト側の減衰力が設定される。その結果、(e)に示すように、車両10には大きな上下加速度が発生してしまう。
これに対し、本実施例では、推定確度εの小ささを考慮して、よりハード側の減衰力を発生させる制御指令値を出力する。その結果、本実施例では、サスペンション装置82の減衰力を本来必要な減衰力に近づけることができるため、(e)に示すように、従来方法に比べ、車両10に発生する上下加速度を小さくし、制振性の低下を抑制することができる。
以上で説明したように、本実施例の車両運動状態推定装置によれば、車輪がスリップするなど上下運動状態量の推定確度が低下する走行状況においても、推定確度εの小ささを考慮してサスペンション装置の減衰力を設定することができるので、操縦安定性や制振性の低下を抑制することができる。
1:車輪速センサ
2:加速度センサ
3:ジャイロセンサ
4:操舵角センサ
5:制駆動制御ユニット
6:操舵制御ユニット
7:車輪
8:車体
9:ばね上重心
10:車両
50:車両運動状態推定装置
51:上下運動起因車輪速成分推定部
52:上下運動推定部
53:推定確度演算部
81:サスペンション制御ユニット
81a:目標減衰力算出部
81b:減衰力マップ
81c:出力制限部
82:サスペンション装置

Claims (11)

  1. 車両の車輪と車体を結合するサスペンションの減衰力を設定する車両運動状態推定装置であって、
    前記車両の走行状態情報に基づいて前記車両の上下運動に起因する車輪速成分を推定する上下運動起因車輪速成分推定部と、
    前記車輪速成分に基づいて前記車両の上下運動状態量を推定する上下運動推定部と、
    前記走行状態情報に基づいて前記上下運動状態量の推定確度を演算する推定確度演算部と、
    前記上下運動状態量と前記推定確度に基づいて、前記サスペンションの減衰力の出力範囲の上限と下限を設定する減衰力制御部と、
    を具備することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  2. 請求項1に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記推定確度演算部は、前記車両の走行状態情報に定数を乗じることで推定確度を算出することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  3. 請求項1に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記推定確度演算部は、前記車両の走行状態情報に基づいて算出した複数の推定確度の和を出力することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  4. 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記推定確度演算部は、前記車両の前後加速度に定数を乗じることで推定確度を算出することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  5. 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記推定確度演算部は、前記車両の横加速度に定数を乗じることで推定確度を算出することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  6. 請求項5に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記車両の横加速度は、車両の前後方向の速度とヨーレイトに基づく演算値であることを特徴とする車両運動状態推定装置。
  7. 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記推定確度演算部は、路面摩擦係数に定数を乗じることで推定確度を算出することを特徴とする車両運動状態推定装置。
  8. 請求項7に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記路面摩擦係数は、車両の前後加速度と横加速度に基づく演算値であることを特徴とする車両運動状態推定装置。
  9. 請求項1から請求項8の何れか一項に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記減衰力制御部は、前記推定確度に基づいて段階的な制御指令値を出力する
    ことを特徴とするに記載の車両運動状態推定装置。
  10. 請求項1から請求項8の何れか一項に記載の車両運動状態推定装置において、
    前記減衰力制御部は、前記推定確度が小さいほど制御指令値の出力範囲を狭くする
    ことを特徴とする車両運動状態推定装置。
  11. 車両の運動状態を推定し、前記車両の車輪と車体を結合するサスペンションの減衰力を設定する車両運動状態推定方法であって、
    前記車両の走行状態情報に基づいて前記車両の上下運動に起因する車輪速成分を推定する車輪速成分推定ステップと、
    前記車輪速成分に基づいて前記車両の上下運動状態量を推定する上下運動推定ステップと、
    前記走行状態情報に基づいて前記上下運動状態量の推定確度を演算する推定確度演算ステップと、
    前記上下運動状態量と前記推定確度に基づいて、前記サスペンションの減衰力の出力範囲の上限と下限を制御する減衰力制御ステップと、
    を有することを特徴とする車両運動状態推定方法。
JP2019092753A 2019-05-16 2019-05-16 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法 Active JP7121690B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019092753A JP7121690B2 (ja) 2019-05-16 2019-05-16 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019092753A JP7121690B2 (ja) 2019-05-16 2019-05-16 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020185940A JP2020185940A (ja) 2020-11-19
JP7121690B2 true JP7121690B2 (ja) 2022-08-18

Family

ID=73222616

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019092753A Active JP7121690B2 (ja) 2019-05-16 2019-05-16 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7121690B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015155214A (ja) 2012-05-14 2015-08-27 日産自動車株式会社 車両の制御装置及び車両の制御方法
JP2015171845A (ja) 2014-03-11 2015-10-01 トヨタ自動車株式会社 車両状態推定装置、車両制御装置及び車両状態推定方法
WO2018105399A1 (ja) 2016-12-09 2018-06-14 日立オートモティブシステムズ株式会社 車両運動状態推定装置
DE102017116733A1 (de) 2017-07-25 2019-01-31 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Kontrolleinrichtung für mindestens einen Radnabenmotor sowie Fahrzeug mit der Kontrolleinrichtung

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3374391B2 (ja) * 1997-09-22 2003-02-04 トヨタ自動車株式会社 車両用減衰力制御装置

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015155214A (ja) 2012-05-14 2015-08-27 日産自動車株式会社 車両の制御装置及び車両の制御方法
JP2015171845A (ja) 2014-03-11 2015-10-01 トヨタ自動車株式会社 車両状態推定装置、車両制御装置及び車両状態推定方法
WO2018105399A1 (ja) 2016-12-09 2018-06-14 日立オートモティブシステムズ株式会社 車両運動状態推定装置
DE102017116733A1 (de) 2017-07-25 2019-01-31 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Kontrolleinrichtung für mindestens einen Radnabenmotor sowie Fahrzeug mit der Kontrolleinrichtung

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020185940A (ja) 2020-11-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4491400B2 (ja) 車両タイヤ状態検出方法および車両タイヤ状態検出装置
JP4161923B2 (ja) 車両安定化制御システム
US6338012B2 (en) Roll over stability control for an automotive vehicle
JP5011866B2 (ja) 横すべり角推定装置、自動車、及び横すべり角推定方法
CN111615480B (zh) 车辆、车辆运动状态推断装置以及车辆运动状态推断方法
GB2382336A (en) Vehicle yaw stability control
JPH1035443A (ja) 車体速および路面摩擦係数推定装置
WO2008021676A2 (en) Vehicle yaw/roll stability control with semi-active suspension
US7031816B2 (en) Active rollover protection
GB2432230A (en) Method for determining axle torque and tyre forces to control a vehicle system
JP6628702B2 (ja) 車両状態量推定装置
JPH06147963A (ja) 接地荷重推定装置、前後加速度算出装置及び横加速度算出装置
KR102533560B1 (ko) 차량 운동 상태 추정 장치, 차량 운동 상태 추정 방법 그리고 차량
JP2020117196A (ja) 車両運動状態推定装置
JP7121690B2 (ja) 車両運動状態推定装置、および、車両運動状態推定方法
Singh et al. Integrated state and parameter estimation for vehicle dynamics control
US20080167777A1 (en) Method for Controlling the Steering Orientation of a Vehicle
JP2019166904A (ja) 車両状態推定装置、制御装置、サスペンション制御装置、サスペンション装置、ステアリング制御装置、及びステアリング装置
JP6553256B1 (ja) ステアリング制御装置及びステアリング装置
KR100863550B1 (ko) 차량 안정성 제어방법
JP5887988B2 (ja) 傾斜角度検出装置
WO2024088508A1 (en) Method for estimating the longitudinal velocity of a vehicle and vehicle control unit
JPS6194864A (ja) 路面摩擦係数検出装置
JP5776374B2 (ja) サスペンション制御装置
CN115946679A (zh) 一种车辆稳定性判断方法及系统

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211126

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220729

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220805

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7121690

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150