JP2021074927A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Junichi Sakai
淳一 酒井
明子 富永
Akiko Tominaga
明子 富永
今井 貴志
Takashi Imai
貴志 今井
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Abstract

【課題】転写促進液の吐出安定性に優れるとともに、記録媒体への中間画像の転写性に優れ、高品位な画像を記録媒体に安定して記録することが可能な転写型のインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】水性インクを用いて記録媒体108に画像を記録するインクジェット記録方法である。水性の反応液を転写体101に付与する工程と、水性インクを付与する工程と、水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する工程と、中間画像を加熱する加熱工程と、中間画像を記録媒体に接触させて転写する転写工程とをこの順に有し、転写促進液が、ポリエーテル、ロジンエステル樹脂、及び炭素数3又は4のアルカンジオールを含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、インクが浸透しやすい記録媒体に画像を直接記録する方法として有用である。また、インクジェット記録方法は、近年、コート紙のなかでも、印刷本紙などのインクが浸透しにくい記録媒体に画像を直接記録する方法としても用途展開されている。さらに、シリコーンゴムなどのインク非浸透性の転写体に形成した中間画像を記録媒体に転写する、いわゆる転写型の記録方法にも応用されている。
転写型のインクジェット記録装置を使用して高品位な画像を記録媒体に記録するには、転写体から記録媒体への中間画像の転写性が良好であることが要求される。例えば、転写体上の中間画像の一部が転写されない転写抜けや、中間画像が内部で分離して転写体と記録媒体のそれぞれに分かれて、画像の一部のみが転写される転写不良などが生ずると、得られる画像の品位が低下してしまう。
特許文献1には、インクを付与する前に界面活性剤を転写体に付与しておくことで、転写体からの画像の剥離性が向上することが記載されている。特許文献2には、インクの付与後、かつ、転写前に、アクリル樹脂を含有する補助液を転写体に付与することで、記録媒体への画像の接着性を高めて、画像の転写性を向上することが記載されている。
特開平07−089067号公報 特開2015−221560号公報
転写型のインクジェット記録装置を用いて高品位な画像を記録媒体に安定して記録するには、記録媒体への画像の転写性を向上させることが重要である。しかし、本発明者らが検討した結果、特許文献1で提案された方法であっても画像の転写性はさほど十分であるとは言えず、さらなる改良の余地があることが判明した。さらに、転写を促進するための液体を用いると、画像の転写性はある程度向上するが、組成によっては液体の保存安定性が低下することが判明した。また、特許文献2で提案された方法であっても、画像の転写性はさほど十分であるとは言えないとともに、転写を促進するための補助液の吐出安定性が不十分であるといった問題もあった。
したがって、本発明の目的は、転写促進液の吐出安定性に優れるとともに、記録媒体への中間画像の転写性に優れ、高品位な画像を記録媒体に安定して記録することが可能な転写型のインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する反応液付与工程と、前記転写体の前記反応液が付与された領域に前記水性インクを付与するインク付与工程と、前記転写体の前記水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する転写促進液付与工程と、前記転写体に形成された前記中間画像を加熱する加熱工程と、加熱された前記中間画像を前記記録媒体に接触させて転写する転写工程と、をこの順に有し、前記転写促進液が、下記一般式(1)で表される化合物、ロジンエステル樹脂、及び炭素数3又は4のアルカンジオールを含有することを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
Figure 2021074927
(前記一般式(1)中、l+nは3.0以上45.0以下であり、mは16.0以上57.0以下である)
本発明によれば、転写促進液の吐出安定性に優れるとともに、記録媒体への中間画像の転写性に優れ、高品位な画像を記録媒体に安定して記録することが可能な転写型のインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性のインク及び反応液のことを、単に「インク」及び「反応液」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を意味する。
本発明者らは、特許文献1及び2で提案されたインクジェット記録方法について検討した。その結果、転写体に形成した中間画像の凝集が進行しにくいために、記録媒体への転写性が不十分となることが判明した。そこで、粘着性付与樹脂(タッキファイヤー)として知られるロジンエステル樹脂、及び特定の構造を有するノニオン性の化合物を含有させた転写促進液を用いた。その結果、記録媒体への中間画像の接着性が向上し、中間画像の転写性がある程度高まることがわかった。しかし、このような転写促進液を用いただけでは中間画像の転写性は十分に向上せず、また、転写促進液の吐出安定性が低下することもわかった。
さらなる検討の結果、本発明者らは、炭素数3又は4のアルカンジオールをさらに含有する転写促進液を用いることで、転写性をより向上させることが可能になるとともに、転写促進液の吐出安定性を向上させることが可能となることを見出した。中間画像の記録媒体との接触面は、転写促進液に含有させる成分によって形成される。ロジンエステル樹脂とともに、一般式(1)で表される化合物を転写促進液に含有させることで、ロジンエステル樹脂の粘着性を高めることができる。また、一般式(1)で表される化合物のヒドロキシ基が、ロジンエステル樹脂のエステル基などと水素結合することで、一般式(1)で表される化合物とロジンエステル樹脂が相互作用する。これにより、インクの凝集によって形成される転写体上の中間画像の強度が高まり、中間画像の一部が記録媒体に転写されずに転写体に残存する現象が発生しにくくなって、中間画像の転写性が向上すると考えられる。
一般式(1)で表される化合物は、ノニオン性の化合物である。このようなノニオン性の化合物は、記録ヘッドから吐出させる液体に一般的に用いられる水やグリセリンなどの水溶性有機溶剤への溶解性が低い。このため、一般式(1)で表される化合物を転写促進液に含有させる場合、適切な水溶性有機溶剤を選択しないと、液体の性状として曇点を示すようになり、転写促進液を構成する成分の一部が不溶化する。構成成分の一部が不溶化などした転写促進液を用いると、一般式(1)で表される化合物が液中に不均一に存在しているため、形成される中間画像においても一般式(1)で表される化合物が不均一に存在することになると考えられる。これにより、中間画像の強度が低下し、中間画像の転写性が低下すると考えられる。
これに対し、炭素数3又は4のアルカンジオールを転写促進液に含有させると、一般式(1)で表される化合物が溶解しやすくなり、一般式(1)で表される化合物が液体組成物中に均一に存在するようになる。このため、形成される中間画像においても一般式(1)で表される化合物が均一に存在することとなり、中間画像の強度が均等に向上するので、中間画像の転写性が向上する。さらに、炭素数3又は4のアルカンジオールを含有させることで、一般式(1)で表される化合物が溶解しやすくなるので、転写促進液の吐出安定性が向上する。水溶性有機溶剤は一般式(1)で表される化合物と溶媒和しやすいので、中間画像において、一般式(1)で表される化合物とロジンエステル樹脂との相互作用を抑制し、可塑剤的に作用すると考えられる。このため、中間画像を加熱して水溶性有機溶剤が減少すると可塑剤効果が弱まり、転写性を向上させることができる。
炭素数5以上のアルカンジオールを用いると、一般式(1)で表される化合物の溶解性が低下するので、一般式(1)で表される化合物を系内に均一に存在させることが困難になり、中間画像の転写性が低下する。また、炭素数5以上のアルカンジオールは、炭素数3又は4のアルカンジオールと比べて揮発性が低いため、中間画像に残留する水溶性有機溶剤の量が多くなりやすく、転写性が低下する。
炭素数2以下のアルカンジオールを用いると、一般式(1)で表される化合物の一部が不溶化したり、液体の性状として曇点を示したりするなど、転写促進液の状態が不安定となり、吐出安定性が低下する。また、炭素数2以下のアルカンジオールは揮発性が高いので、記録ヘッドの吐出口から水とともに揮発しやすい。このため、転写促進液が過度に増粘したり、吐出口に固着したりするなどして、転写促進液の吐出安定性が低下する。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法(以下、単に「記録方法」とも記す)は、水性インクを用いて記録媒体に画像を記録する方法である。本発明の記録方法は、反応液付与工程、インク付与工程、転写促進液付与工程、加熱工程、及び転写工程をこの順に有する。すなわち、本発明の記録方法は、転写型のインクジェット記録方法である。反応液付与工程は、水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する工程である。インク付与工程は、転写体の反応液が付与された領域に水性インクを付与する工程である。転写促進液付与工程は、転写体の水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する工程である。加熱工程は、転写体に形成された中間画像を加熱する工程である。転写工程は、加熱された中間画像を記録媒体に接触させて転写する工程である。本発明の記録方法は、必要に応じて、転写体に形成した中間画像から液体成分を吸収する液吸収工程や、転写工程後の転写体を洗浄する洗浄工程などをさらに有してもよい。
また、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」とも記す)は、水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するために用いる装置である。本発明の記録装置は、反応液付与手段、インク付与手段、転写促進液付与手段、加熱手段、及び転写手段を備える。すなわち、本発明の記録装置は、いわゆる転写型インクジェット記録装置である。反応液付与手段は、水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する手段である。インク付与手段は、水性インクをインクジェット方式で吐出して、転写体の反応液が付与された領域に水性インクを付与する手段である。転写促進液付与手段は、転写体の水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する手段である。加熱手段は、転写体に形成された中間画像を加熱する手段である。転写手段は、加熱された中間画像を記録媒体に接触させて転写する手段である。本発明の記録装置は、必要に応じて、転写体に形成した中間画像から液体成分を吸収する液吸収手段や、転写後の転写体を洗浄する洗浄手段などをさらに備えてもよい。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示す転写型インクジェット記録装置100は、転写体101を介して記録媒体108に中間画像を転写して記録物を製造する、枚葉式のインクジェット記録装置である。X方向、Y方向、及びZ方向が、それぞれ、転写型インクジェット記録装置100の幅方向(全長方向)、奥行き方向、及び高さ方向を示す。記録媒体は、X方向に搬送される。
転写型インクジェット記録装置100は、転写体101、反応液付与装置103、インク及び転写促進液の付与装置104、液吸収装置105、及び押圧部材106を有する。転写体101は、支持部材102によって支持されている。反応液付与装置103は、インクと反応する反応剤を含有する反応液を転写体101に付与する装置である。インク及び転写促進液の付与装置104は、反応液が付与された転写体101にインク及び転写促進液をそれぞれ付与して中間画像を形成する記録ヘッドを備える。液吸収装置105は、中間画像から液体成分を吸収する装置である。押圧部材106は、液体成分を除去した中間画像を紙などのシート状の記録媒体108に転写するための部材である。さらに、転写型インクジェット記録装置100は、転写後の転写体101の表面をクリーニングする転写体クリーニング部材109を有する。転写体101、反応液付与装置103、インク及び転写促進液の付与装置104の記録ヘッド、液吸収装置105、及び転写体クリーニング部材109は、それぞれ、Y方向において用いられる記録媒体108に対応するだけの長さを有する。
転写体101は、支持部材102の回転軸102aを中心として矢印Aの方向に回転する。回転する転写体101に反応液付与装置103から反応液が付与された後、インク及び転写促進液の付与装置104からインクが付与されることで、転写体101に中間画像が形成される。転写体101に形成された中間画像は、転写体101の回転により、液吸収装置105の液吸収部材105aと接触する位置まで移動する。
液吸収装置105を構成する液吸収部材105aは、転写体101の回転に同期して矢印Bの方向に移動(回転)する。転写体101に形成された中間画像は、移動する液吸収部材105aと接触する。その間に、液吸収部材105aは中間画像から液体成分を吸収して除去する。中間画像の液体成分を効率よく吸収する観点から、液吸収部材105aは、所定の押圧力をもって転写体101に押圧されることが好ましい。中間画像は、反応液、インク、及び転写促進液で形成されている。このため、中間画像の液体成分を吸収することは、反応液、インク、及び転写促進液の液体成分を吸収することを意味する。中間画像から液体成分を吸収することは、インクなどを濃縮することであるとも言える。インクなどの濃縮により、色材や樹脂などの固形分の液体成分に対する比率が上昇する。
液体成分が除去され、インクが濃縮された状態となった中間画像は、転写体101の回転により、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108と接触する転写部111へと移動する。中間画像と記録媒体108は、転写体101と押圧部材106とに挟まれた状態で、押圧部材106側から押圧されて接触する。ローラ状の転写体101と円柱状の押圧部材106とを用いる場合、中間画像と記録媒体108はY方向に沿って線状に接触する。弾性材料で構成された転写体101を用いると、押圧により転写体101が凹むため、中間画像と記録媒体108が面で接触する。このため、中間画像と記録媒体108が接触する線又は面を「領域」とし、この領域を含む部分を転写部111とする。中間画像が記録媒体108と接触している間に、押圧部材106が転写体101を押圧することによって記録媒体108に中間画像が転写され、所望とする画像が記録媒体108に記録される。転写後の画像は、転写前の中間画像の反転画像である。
ローラ状の反応液付与部材103cを用いて転写体に反応液を付与すると、転写体の全体にわたって反応液が付与される。反応液が付与された転写体にインクを付与して中間画像を形成するため、転写体におけるインクが付与されていない領域には、インクと反応していない反応液が残っている。液吸収部材105aは中間画像からだけでなく、未反応の反応液の液体成分も併せて除去することが可能である。インクや転写促進液に含まれる液体成分は一定の形を持たずに流動性を有するとともに、ほぼ一定の体積で存在する。インクや転写促進液に含まれる液体成分は、具体的には水性媒体などである。
以下、転写型インクジェット記録装置の主要な部分について説明する。具体的には、[1]転写体、[2]支持部材、[3]反応液付与装置、[4]インク及び転写促進液の付与装置、[5]液吸収装置、[6]加熱装置、[7]押圧部材、[8]記録媒体、[9]記録媒体搬送装置、及び[10]洗浄装置について説明する。
[1]転写体
転写体101は、中間画像が形成される面を含む表面層を有する。表面層を構成する材料としては、樹脂、セラミックなどを挙げることができる。耐久性などの観点から、圧縮弾性率の高い材料が好ましい。インク及び転写促進液の濡れ性などを向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。
転写体は、表面層と支持部材との間に、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層は、局所的な圧力変動を分散し、表面層の変形を吸収する。このため、圧縮層を設けることで、高速記録する場合であっても良好な転写性を維持することができる。圧縮層を構成する材料としては、ゴム材料などの弾性材料を挙げることができる。なかでも、加硫剤及び加硫促進剤とともに、発泡剤、中空微粒子、及び塩などの充填剤を原料ゴムに配合して成形した多孔質構造を有するゴム材料が好ましい。このような弾性材料は、圧力が変動すると空隙部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さい。このため、転写性及び耐久性を向上させることができる。多孔質構造としては、空隙が相互に連結した連続空隙構造や、空隙が各々独立した独立空隙構造などを挙げることができる。
転写体は、表面層と圧縮層との間に、さらに弾性層を有することが好ましい。弾性層を構成する材料としては、樹脂材料、セラミック材料などを挙げることができる。なかでも、加工しやすいとともに、温度による弾性率の変化が小さく、転写性に優れるため、ゴム材料などの弾性材料が好ましい。
転写体を構成する各層(表面層、弾性層、圧縮層)は、接着剤や両面テープを用いて相互に接着することができる。装置に装着する際の横伸びを抑制してコシを保つために、圧縮弾性率の高い補強層を設けてもよい。補強層としては、織布などを用いることができる。転写体を構成する層のうち、表面層以外の層については、弾性層や圧縮層を任意に組み合わせることができる。転写体の大きさは、記録速度や画像のサイズに合わせて自由に選択することができる。転写体の形状としては、例えば、シート状、ローラ状、ベルト状、無端ウェブ状などを挙げることができる。
[2]支持部材
転写体101は、支持部材102上に支持されている。転写体は、例えば、接着剤や両面テープなどを用いて支持体上に配設することができる。金属、セラミック、樹脂などの材料で構成される設置用部材を用いて転写体101を支持部材102に配設してもよい。支持部材102は、搬送精度や耐久性の観点から、ある程度の構造強度を有することが要求される。支持部材の材質としては、金属、セラミック、樹脂などを挙げることができる。なかでも、アルミニウムなどの金属材料を用いることが好ましい。金属材料を用いることで、転写時の応力に耐えうる剛性及び寸法精度の他、動作時の慣性を軽減して制御の応答性を向上させることができる。
[3]反応液付与装置
本発明の記録方法は、インク付与工程の前に、反応液を転写体に付与する反応液付与工程を有する。反応液は、インクと接触することでインクと反応し、インク中の樹脂や自己分散顔料などのアニオン性基を有する成分を凝集させる反応剤を含有する。インクの付与後、インクを付与した領域と少なくとも一部が重なるように反応液をさらに付与してもよい。
図1に示す転写型インクジェット記録装置100は、転写体101に反応液を付与する反応液付与手段である反応液付与装置103を有する。この反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103a中の反応液を転写体101に付与する反応液付与部材103b、103cを有するグラビアオフセットローラである。反応液付与装置としては、グラビアオフセットローラ、インクジェット方式の記録ヘッドなどを挙げることができる。なかでも、ローラを使用して転写体に反応液を付与することが好ましい。
[4]インク及び転写促進液の付与装置
図1に示す転写型インクジェット記録装置100は、転写体101にインク及び転写促進液を付与する付与手段であるインク及び転写促進液の付与装置104を有する。インク付与装置としてインクジェット方式の記録ヘッドを用い、インクを吐出して付与することが好ましい。また、インクと同様にインクジェット方式の記録ヘッドを用い、転写促進液を吐出して付与する。記録ヘッドとしては、例えば、電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態;電気−機械変換体によってインクを吐出する形態;静電気を利用してインクを吐出する形態などを挙げることができる。なかでも、電気−熱変換体を利用する形態の記録ヘッドが、より高速で高密度の画像を記録することができるために好ましい。
中間転写体に転写促進液を付与する領域は、インクを付与する領域を少なくとも含むことが好ましい。すなわち、インクと転写促進液とを重ねて付与することが好ましい。勿論、中間転写体のインクが付与されていない領域にも転写促進液を付与しても構わない。インクと転写促進液とを付与する領域における、単位面積当たりの付与量比は、インクの付与量が、転写促進液の付与量に対する質量比率で、0.1倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
記録ヘッドは、Y方向に延設されたフルラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲に吐出口が配列されている。記録ヘッドは、その下面(転写体101側)に吐出口が開口した吐出口面を有する。吐出口面は、微小な隙間(数ミリ程度)を空けて転写体101の表面と対向している。
インク及び転写促進液の付与装置104は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)などの各色のインク、並びに転写促進液を転写体101に付与するために、複数の記録ヘッドを有してもよい。例えば、CMYKの4種のインク、及び転写促進液を用いて中間画像を形成する場合、インク付与装置は、CMYKの4種のインク、及び転写促進液をそれぞれ吐出する5つの記録ヘッドを有する。これらの記録ヘッドは、X方向に沿って配置される。
[5]液吸収装置
液吸収装置105は、液吸収部材105aと、液吸収部材105aを転写体101の中間画像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bとを有する。円柱状の押圧部材105bと、ベルト状の液吸収部材105aで構成する場合、押圧部材105bで液吸収部材105aを転写体101に押し当てることで、中間画像から液体成分を吸収することができる。また、その外周表面に液吸収部材を貼りつけた円柱状の押圧部材を転写体に押し当てることでも、中間画像から液体成分を吸収することができる。記録装置内でのスペースなどを考慮すると、液吸収部材105aの形状はベルト状であることが好ましい。ベルト状の液吸収部材105aを有する液吸収装置105は、液吸収部材105aを張架する、張架ローラ105cなどの張架部材を有していてもよい。
押圧部材105bを用いて多孔質層を含む液吸収部材105aを中間画像に接触させることで、中間画像に含まれる液体成分を液吸収部材105aに吸収させることができる。中間画像に含まれる液体成分を吸収する方法として、液吸収部材を接触させる方法に加えて、加熱する方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法などを組み合わせてもよい。また、液体成分を吸収させる前後の中間画像にこれらの方法を適用してもよい。
液吸収部材105aは、転写体101の回転と連動して回転する。このため、液吸収部材105aの形状は、繰り返し液吸収できる形状であることが好ましく、具体的には無端ベルト状やドラム状などの形状を挙げることができる。多孔質層を含む液吸収部材105aに吸収された液体成分は、多孔質層の裏面から吸収する方法や、多孔質部材を圧縮することにより絞る部材を利用する方法などにより、液吸収部材105aから除去することができる。液体成分を除去した後、液吸収部材105aを回転させて新たな中間画像に接触させることで、中間画像に含まれる液体成分を効率よく吸収することができる。
[6]加熱装置
本発明の記録方法は、転写体に形成された中間画像を加熱する加熱工程を有する。転写体上の中間画像を加熱することで、中間画像に含まれる水溶性有機溶剤などの液体成分を揮発させて中間画像の強度を高め、記録媒体への転写性を向上させることができる。加熱工程における、記録媒体と接触させて転写する際の中間画像の温度は、転写促進液中のロジンエステル樹脂のガラス転移温度以上であることが好ましく、具体的には40℃以上であることが好ましい。ロジンエステル樹脂のガラス転移温度以上に加熱された中間画像を記録媒体に接触させると、記録媒体の凹凸への中間画像の追従性が高まり、転写性をさらに向上させることができる。
加熱方式としては、中間画像の表面方向から加熱する方式;中間画像の裏面方向から加熱する方式;及びこれらの方式を組み合わせた方式;などを挙げることができる。加熱手段は、接触式及び非接触のいずれであってもよい。加熱手段としては、ドライヤーなどによる温風加熱機構、ハロゲンヒータや赤外線ヒータを利用する放射による加熱機構、電磁誘導による加熱機構などの非接触式の加熱機構;アイロンプレスによる熱圧加熱機構などの接触式の加熱機構;を挙げることができる。なかでも、加熱効率の観点で、赤外線ヒータなどを利用する放射による加熱機構が好ましい。
[7]押圧部材
本発明の記録装置は、中間画像を記録媒体に接触させて転写する転写手段を備える。具体的には、図1に示すように、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108に、転写体101上の液除去後の中間画像を押圧部材106により転写部111において接触させて転写する。液体成分を除去後の中間画像を記録媒体108に転写することで、記録媒体108のカールやコックリングなどを抑制することができる。
押圧部材106は、記録媒体108の搬送精度や耐久性の観点から、適度な構造強度を有することが好ましい。押圧部材106の材質としては、金属、セラミック、樹脂などを挙げることができる。なかでも、転写の際の応力に耐えうる剛性や寸法精度を有するだけでなく、動作時の慣性を軽減して制御の応答性を向上させる観点から、アルミニウムなどの金属が好ましい。
中間画像を記録媒体108に転写する際に、押圧部材106が転写体101を押圧する時間(押圧時間)は、5ミリ秒以上100ミリ秒以下とすることが好ましい。上記の押圧時間とすることで、良好に転写できるとともに、転写体101の損傷を抑制することができる。押圧時間は、記録媒体108と転写体101が接触している時間である。押圧時間は、圧力分布測定システムを使用して面圧を測定し、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割ることで算出することができる。具体的には、面圧分布測定システム(商品名「I−SCAN」、ニッタ製)などを使用することができる。
中間画像を記録媒体108に転写する際に、押圧部材106が転写体101を押圧する圧力(押圧力)は、9.8N/cm(1kg/cm)以上294.2N/cm(30kg/cm)以下とすることが好ましい。上記の押圧力とすることで、良好に転写できるとともに、転写体101の損傷を抑制することができる。押圧力は、記録媒体108と転写体101のニップ圧である。押圧力は、圧力分布測定システムを用いて面圧を測定し、加圧領域における加重を面積で割ることで算出することができる。具体的には、面圧分布測定システム(商品名「I−SCAN」、ニッタ製)などを使用することができる。
押圧部材106が転写体101を押圧して転写するときの温度は、転写促進液中のロジンエステル樹脂のガラス転移点以上の温度とすることが好ましい。なかでも、押圧して転写するときの温度は、25℃以上140℃以下であることが好ましく、40℃以上140℃以下であることが好ましい。温度を制御するために、記録装置は、転写体101上の中間画像、転写体101、及び記録媒体108を加熱する加熱手段を備えることが好ましい。押圧部材106の形状としては、例えば、ローラ状などの形状を挙げることができる。
[8]記録媒体
記録媒体108としては、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状に巻回された長尺物;所定の寸法に裁断された枚葉のものなどを挙げることができる。記録媒体の構成材料としては、コート紙や普通紙などの紙;プラスチックや金属などのフィルム;木板;段ボールなどを挙げることができる。
[9]記録媒体搬送装置
記録媒体108を搬送する記録媒体搬送装置107は、記録媒体108を矢印Cの方向に搬送する。記録媒体搬送装置107は、記録媒体繰り出しローラ107a及び記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されている。記録媒体108の搬送速度は、各工程において要する速度を考慮して決定することが好ましい。
[9]洗浄装置
本発明の記録装置は、図1に示すように、転写体101に水性の洗浄液を付与して洗浄する洗浄手段である洗浄装置を有することが好ましい。洗浄装置は、例えば、転写体101に洗浄液を付与して洗浄する転写体クリーニング部材109を備える。転写体クリーニング部材109により転写体101をクリーニングすることで、画像品位の低下を抑制することができる。転写体クリーニング部材109としては、ローラ、ウェブなどの形状を有するものを用いることができる。洗浄装置には、転写体クリーニング部材109に洗浄液を供給する洗浄液供給ユニットを設けることができる。
さらに、洗浄装置は、クリーニング後の転写体101に残った洗浄液や残留物を除去する洗浄液除去部材110を備えることが好ましい。洗浄液除去部材110によって転写体101に残った洗浄液などを除去することで、画像品位の低下をより有効に抑制することができる。転写体101に残った洗浄液を除去する方法としては、ブレード除去、ブラシ除去、吸収体による液吸収などを挙げることができる。なかでも、吸収体による液吸収によって転写体101に残った洗浄液を除去することが好ましい。洗浄液除去部材110としては、液吸収部材として用いられる多孔質体などを用いることができる。
(反応液)
本発明の記録方法は、水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する反応液付与工程を有する。記録媒体に転写される画像に影響を及ぼさないことが好ましいため、反応液は色材を含有しなくてもよい。以下、反応液に用いる各成分などについて詳細に説明する。
[反応剤]
反応液は、インクと接触することでインクと反応し、インク中の成分(樹脂、自己分散顔料などのアニオン性基を有する成分)を凝集させるものであり、反応剤を含有する。反応剤としては、例えば、多価金属イオン、カチオン性樹脂などのカチオン性成分や、有機酸など挙げることができる。なかでも、反応剤は有機酸であることが好ましく、2価以上の多価カルボン酸(塩や水素塩であってもよい)がさらに好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+、及びZn2+などの2価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+、及びAl3+などの3価の金属イオンを挙げることができる。反応液に多価金属イオンを含有させるためには、多価金属イオンとアニオンとが結合して構成される多価金属塩(水和物であってもよい)を用いることができる。アニオンとしては、例えば、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2−、CO 2−、HCO 、PO 3−、HPO 2−、及びHPO などの無機アニオン;HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、及びCHSO などの有機アニオンを挙げることができる。反応剤として多価金属イオンを用いる場合、反応液中の多価金属塩換算の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
有機酸を含有する反応液は、酸性領域(pH7.0未満、好ましくはpH2.0〜5.0)に緩衝能を有することによって、インク中に存在する成分のアニオン性基を効率よく酸型にして凝集させるものである。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、チオフェンカルボン酸、レブリン酸、クマリン酸などのモノカルボン酸及びその塩;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸、及びその塩や水素塩;クエン酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸及びその塩や水素塩;ピロメリット酸などのテトラカルボン酸及びその塩や水素塩などを挙げることができる。反応液中の有機酸の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
カチオン性樹脂としては、例えば、1〜3級アミンの構造を有する樹脂、4級アンモニウム塩の構造を有する樹脂などを挙げることができる。具体的には、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチレンイミン、グアニジンなどの構造を有する樹脂を挙げることができる。反応液中での溶解性を高めるために、カチオン性樹脂と酸性化合物とを併用したり、カチオン性樹脂の4級化処理を施したりすることもできる。反応剤としてカチオン性樹脂を用いる場合、反応液中のカチオン性樹脂の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
[その他の成分]
反応液は、必要に応じて、各種その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、インクに含有させることが可能な後述の水性媒体やその他添加剤などと同様のものを挙げることができる。
(インク)
本発明の記録方法で用いるインクは、インクジェット用の水性インクである。以下、インクに用いる各成分などについて詳細に説明する。
[色材]
インクには色材を含有させることができる。色材としては、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。なかでも、樹脂結合型顔料やマイクロカプセル顔料ではなく、分散剤としての樹脂を顔料の粒子表面に物理吸着させた樹脂分散顔料を用いることが好ましい。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、後述するような樹脂、なかでも水溶性樹脂を用いることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(−R−)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
染料としては、アニオン性基を有するものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどの染料を挙げることができる。インクに含有させる色材は、顔料であることが好ましく、樹脂分散顔料であることがさらに好ましい。
[樹脂]
インクには、樹脂を含有させることができる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA−EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。動的光散乱法により測定される樹脂粒子の体積分布基準の累積50%粒子径(D50)は、50nm以上500nm以下であることが好ましい。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα−メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。
ウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができる。
[水性媒体]
本発明の記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
[その他添加剤]
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を含有させてもよい。但し、インクには、上記したような反応液に用いる反応剤は含有させないことが好ましい。反応剤をインクに含有させる場合、インク中の反応剤の含有量はごく少量(例えば、0.05質量%以下程度)とすることが好ましい。
[インクの物性]
上記で説明したインクは、インクジェット方式に適用する水性インクである。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
(転写促進液)
本発明の記録方法は、転写体の水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する転写促進液付与工程を有する。転写促進液は水性の液体であり、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出されることで、転写体の所定の領域に付与される。記録される画像に影響を及ぼさないことが好ましいため、転写促進液は色材を含有しなくてもよい。また、本発明の記録方法は反応液付与工程を有するため、転写促進液には、反応性を持たせることを期待して反応液に含有させる「反応剤」や、インクに含有させる「色材」を含有させる必要がない。
転写促進液は、一般式(1)で表される化合物、ロジンエステル樹脂、及び炭素数3又は4のアルカンジオールを含有する。以下、転写促進液に含有させる各成分などについて詳細に説明する。
[一般式(1)で表される化合物]
下記一般式(1)で表される化合物は、エチレンオキサイド構造とプロピレンオキサイド構造を有するブロック共重合体であり、ノニオン性の化合物である。
Figure 2021074927
(前記一般式(1)中、l+nは3.0以上45.0以下であり、mは16.0以上57.0以下である)
l+nが3.0未満であると、水溶性が大きく低下するので、そもそも転写促進液を調製することが困難になったり、転写促進液を調製できたとしてもその吐出が不安定となったりする。一方、l+nが45.0超であると、水溶性は高まるが、ロジンエステル樹脂との相互作用が小さくなるので、転写性が低下する。また、粘度が高くなるので、転写促進液の吐出安定性が低下する。mが16.0未満であると、ロジンエステル樹脂との相互作用が小さくなるので、転写性が低下する。一方、mが57.0超であると、水溶性が大きく低下するので、そもそも転写促進液を調製することが困難になったり、転写促進液を調製できたとしてもその吐出が不安定となったりする。
転写促進液中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、転写促進液の全質量を基準として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
[ロジンエステル樹脂]
ロジンエステル樹脂は、アニオン性乳化剤及びノニオン性乳化剤によって乳化され、粒子の形態(ロジン粒子)で転写促進液中に存在しうるものが好ましい。
ロジンエステル樹脂は、ロジン類をアルコール類やグリコール類でエステル化した化合物である。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジンなどの原料ロジン;これらの原料ロジンの不均化物;これらの原料ロジンの水素化物;重合ロジンなどを挙げることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの1価アルコール;1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの4価超の多価アルコールなどを挙げることができる。なかでも、2価以上の多価アルコールが好ましい。グリコール類としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどを挙げることができる。
アニオン性乳化剤としては、アニオン性界面活性剤;アクリル系樹脂などのアニオン性基を有する樹脂などを挙げることができる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩などを挙げることができる。アニオン性基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有するアクリル系樹脂を挙げることができる。アクリル系樹脂の具体例としては、インクに含有させることができるアクリル系樹脂と同様のものを挙げることができる。乳化剤としての機能を考慮すると、アニオン性基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gであることが好ましい。アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましい。ロジン粒子に占めるアニオン性乳化剤の割合(質量%)は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
ノニオン性乳化剤としては、ノニオン性界面活性剤などのエチレンオキサイド構造を有する化合物などを挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。ノニオン性界面活性剤のグリフィン法によるHLB値は、5.0〜10.0であることが好ましい。ロジン粒子に占めるノニオン性乳化剤の割合(質量%)は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
ロジンエステル樹脂のガラス転移温度は、40℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。ロジンエステル樹脂のガラス転移温度は、−50℃以上であることが好ましい。ロジンエステル樹脂のガラス転移温度(Tg(℃))は、例えば、JIS K 6240:2011にしたがい、示差走査熱量計(DSC)などの熱分析装置を使用する通常の方法によって測定することができる。
動的光散乱法により測定されるロジン粒子の体積分布基準の累積50%粒子径(D50)は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。
転写促進液中のロジンエステル樹脂の含有量(質量%)は、転写促進液の全質量を基準として、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。ロジンエステル樹脂の含有量が1.0質量%未満であると、インクによって形成されるインク層と、転写促進液によって形成される転写促進液層との接着性があまり高まらず、転写性の向上効果が不十分になることがある。一方、ロジンエステル樹脂の含有量が5.0質量%超であると、形成される転写促進液層の柔軟性が過度に高くなるため、記録媒体の凹凸への中間画像の追従性が低下し、転写性の向上効果が不十分になることがある。
転写促進液中、ロジンエステル樹脂の含有量(質量%)は、一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.5倍以上5.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.5倍未満であると、ロジンエステル樹脂と、一般式(1)で表される化合物との相互作用が低下する傾向にあるため、それに伴って転写性も低下しやすくなることがある。一方、上記の質量比率が5.0倍超であると、ロジンエステル樹脂との相互作用に寄与しない、一般式(1)で表される化合物が過剰に存在することになる。そして、過剰に存在する一般式(1)で表される化合物が可塑剤的に作用することがあり、転写性の向上効果が低くなることがある。
[炭素数3又は4のアルカンジオール]
転写促進液は、炭素数3又は4のアルカンジオールを含有する。アルカンジオールの炭素数が3未満であると、分子量が小さいために沸点・引火点が低く、取り扱いがやや困難になることがある。アルカンジオールの炭素数が5以上であると、分子量が大きく沸点が高くなるため、転写時に残存しやすくなり、転写性が不十分となる。炭素数3又は4の1価のアルコールは、沸点・引火点が低いために、取り扱いがやや困難になることがある。炭素数3又は4の3価以上のアルコールは、分子量が大きいとともに水素結合の数が多く、沸点も高いため、転写時に残存しやすくなり、転写性が不十分となる。
炭素数3又は4のアルカンジオールとしては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどを挙げることができる。なかでも、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールが好ましい。
転写促進液中の炭素数3又は4のアルカンジオールの含有量(質量%)は、転写促進液の全質量を基準として、0.1質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
転写促進液中、炭素数3又は4のアルカンジオールの含有量(質量%)は、一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上15.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が1.0倍未満であると、一般式(1)で表される化合物の溶解性が低下する場合がある。このため、転写促進液によって形成される転写促進液層の強度が低下したり、転写促進液の吐出安定性が低下したりする場合がある。一方、上記の質量比率が15.0倍超であると、転写促進液層中に残留する水溶性有機溶剤の量が多くなりやすいので、転写性の向上効果がやや低くになる場合がある。
[25℃で固体の化合物]
転写促進液には、さらに、25℃で固体の化合物を含有させることができる。25℃で固体の化合物を含有させた転写促進液を用いることで、加熱工程により転写促進液層の温度が上昇しても、粘度の低下が抑制されて、転写促進液層の強度が低下しにくくなるため、転写性をさらに向上することができる。25℃で固体の化合物は、水溶性の化合物であることが好ましい。25℃で固体の化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、数平均分子量1000以上のポリエチレングリコール、エチレン尿素、尿素などを挙げることができる。なかでも、ポリエチレングリコール類及び多価アルコール類の少なくともいずれかを転写促進液に含有させることが好ましい。転写促進液中の25℃で固体の化合物の含有量(質量%)は、転写促進液全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
[その他の成分]
転写促進液には、必要に応じて、各種その他の成分をさらに含有させることができる。その他の成分としては、インクに含有させることができる成分として列挙した、樹脂、水性媒体、その他の添加剤などと同様のものから選択することができる。なかでも、転写促進液には、ロジンエステル樹脂以外の樹脂をさらに含有させることが好ましい。ロジンエステル樹脂以外の樹脂としては、インクに含有させることができる樹脂として列挙した、水溶性樹脂や樹脂粒子を挙げることができる。樹脂を含有する転写促進液を用いることで、インク層と転写促進液層との接着性がより高まるので、中間画像の転写性をさらに向上させることができる。
[転写促進液の物性]
転写促進液は、インクジェット方式に適用される水性の液体である。このため、信頼性の観点から物性値を適切に制御することが好ましい。25℃における転写促進液の表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。転写促進液の表面張力は、インクの表面張力よりも低いことが好ましい。その表面張力がインクの表面張力よりも低い転写促進液は、インク層上で広がりやすいため、インク層と転写促進液層との接着性がより高まりやすく、転写性をさらに向上させることができる。
25℃における転写促進液の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃における転写促進液のpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<各種物性値の測定方法>
各種の物性値は、温度25℃、相対湿度50%、1気圧の環境下、以下に示す方法で測定した。
(体積分布基準の50%粒子径(D50))
測定対象の材料を含む液体にイオン交換水を添加して、固形分の含有量が約1.0%である試料を調製した。調製した試料について、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA−EX150」、日機装製)を使用し、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5の測定条件で各種粒子の粒子径を測定した。この方法で粒子径が測定されなかった樹脂は、「水溶性」の樹脂であると判断する。
(ガラス転移温度)
樹脂を含む液体(水分散液)を乾燥させて得た樹脂を試料とし、示差走査熱量計(商品名「Q200」、ティー・エイ・インスツルメント製)を使用して樹脂のガラス転移温度を測定した。具体的には、−70℃から180℃まで、10℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度を測定するサイクルを2回行うことにより、ガラス転移温度を測定した。ロジンエステル樹脂は、ロジン粒子に含まれる乳化剤の影響を除外して、ロジンエステル樹脂そのもののガラス転移温度を測定する必要がある。このため、乳化する前のロジンエステル樹脂のガラス転移温度を測定した。
<樹脂の用意>
(樹脂1)
酸価150mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体(樹脂1)を用意した。樹脂1 20.0部を酸価と等モルの水酸化カリウムで中和した後、適量の純水を加え、樹脂の含有量が20.0%である樹脂1の水溶液を調製した。
(樹脂粒子1)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、過硫酸カリウム0.2部及びイオン交換水74.0部を入れ、窒素ガスを導入した。また、メタクリル酸エチル24.0部、メタクリル酸1.5部、及び反応性界面活性剤(商品名「アクアロンKH−05」、第一工業製薬製)0.3部を混合し、乳化して混合物を得た。得られた混合物を四つ口フラスコ内に、撹拌下、1時間かけて滴下した後、80℃で2時間反応させた。内容物を室温まで冷却した後、樹脂の酸価と等モルの水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加え、樹脂(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子1の水分散液(pH8.5)を調製した。樹脂粒子1の体積分布基準の累積50%粒子径(D50)は、210nmであった。
<反応液の調製>
表1に示す各成分(単位:%)を撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各反応液を調製した。
Figure 2021074927
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
顔料(カーボンブラック)10.0部、樹脂1の水溶液15.0部、及び純水75.0部を混合して混合物を得た。得られた混合物及び0.3mm径のジルコニアビーズ200部をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、水冷しながら5時間分散させた。遠心分離して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液1を調製した。
(顔料分散液2)
顔料をC.I.ピグメントレッド122に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が3.0%の顔料分散液2を調製した。
(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が3.0%の顔料分散液3を調製した。
(顔料分散液4)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更したこと以外は、前述の顔料分散液1の場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が3.0%の顔料分散液4を調製した。
<インクの調製>
表2に示す各成分(単位:%)を撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。
Figure 2021074927
<ロジン粒子の水分散液の調製>
表3の上段に示す各成分(単位:部)の混合物を加熱して90℃に保ちながら、超音波照射機(商品名「S−150Dデジタルソニファイアー」、ブランソン製)を使用して混合物に超音波を照射した。ロジンエステル樹脂としては、「エステルガムAT」、「ペンセルGA100」(いずれも商品名、荒川化学工業製)を用いた。ポリオキシエチレンラウリルエーテルのグリフィン法によるHLB値は、8.3であった。超音波の照射時間は約1時間を目安とし、後述するD50の範囲内となるように適宜調整した。混合物を冷却し、ロジン粒子(固形分)の含有量が25.0%である、ロジン粒子の水分散液を得た。得られた各水分散液中のロジン粒子1〜4のD50は、いずれも250nm±10%の範囲内であった。表3の下段には各種の特性を示した。「ガラス転移温度Tg」は、前述の方法にしたがって測定したロジンエステル樹脂のガラス転移温度である。ロジンエステル樹脂、アニオン性乳化剤、及びノニオン性乳化剤の割合は、ロジン粒子に占める値である。
Figure 2021074927
<一般式(1)で表される化合物の用意>
表4に示す種類の一般式(1)で表される化合物を用意した。
Figure 2021074927
<転写促進液の調製>
表5−1〜5−3の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、各転写促進液を調製した。表5−1〜5−3中、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物)の商品名である。ポリエチレングリコールに付した数値は数平均分子量を表す。
Figure 2021074927
Figure 2021074927
Figure 2021074927
<評価>
本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価条件及び評価結果を表6に示す。
(転写性)
反応液、インク、及び転写促進液を表6の左側に示す組み合わせとした。そして、図1に示す構成を有する転写型インクジェット記録装置100の、反応液収容部に反応液を充填するとともに、インク及び転写促進液の付与装置104に、転写体101への付与順序がインク、転写促進液の順序となるように充填した。使用した転写型インクジェット記録装置100の構成を以下に示す。
支持部材102として、アルミニウム合金からなる円筒形のドラムを用いた。転写体101の表層部材としては、厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレートのフィルムに、ゴム硬度(デュロメータ・タイプA)40°のシリコーンゴム(商品名「KE12」、信越化学工業製)を0.2mmの厚さにコーティングしたものを用いた。この表層部材に、常圧プラズマ処理装置(商品名「ST−7000」、キーエンス製)を使用して、処理距離:5mm、プラズマモード:High、処理速度:100mm/secの条件でプラズマ表面処理を施した。さらに、表層部材の表面を、市販の中性洗剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の濃度が3%となるように純水で希釈して調製した界面活性剤水溶液に10秒間浸漬した後、乾燥させて転写体101の表層部材とした。両面粘着テープを用いて転写体101を支持部材102に固定した。転写体101には加熱ヒータを内蔵させ、転写体を表6に示す温度となるように加熱することで、中間画像の温度を調整した。
反応液付与装置103を使用して、転写体101上に反応液を1.0g/mとなるように付与した。電気−熱変換素子を備えたオンデマンド方式にてインク及び転写促進液を吐出するタイプの記録ヘッドをインク及び転写促進液の付与装置104として使用し、転写体101のインクが付与された領域に転写促進液を付与できるようにした。転写体101の移動速度と同等の速度となるように、記録媒体繰り出しローラ107a及び記録媒体巻き取りローラ107bを駆動させて記録媒体108を搬送した。転写体101と押圧部材106の間で記録媒体108と中間画像を接触させ、中間画像を転写体101から記録媒体108へと転写してベタ画像を記録した。記録媒体108としては、コート紙(商品名「ヴァンヌーボV」、ダイオーペーパープロダクツ製、坪量157g/m)を用いた。転写体101と押圧部材106の間のニップ圧は、3kg/cmに調整した。
上記の構成を有する転写型インクジェット記録装置100を使用して、インク及び転写促進液の記録デューティがそれぞれ20%である5cm×5cmの中間画像を転写体101に形成した。この転写型インクジェット記録装置100では、1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に3.0ngの液滴を1滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。転写体に形成された中間画像の面積、及び転写後の転写体に残った中間画像の面積を、光学顕微鏡を利用しながらそれぞれ測定した。そして、転写率=[1−(転写後の転写体に残った中間画像の面積)/(転写体に形成された中間画像の面積)}]×100(%)の式から転写率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって転写性を評価した。
A:転写率が70%以上であった。
B:転写率が40%以上70%未満であった。
C:転写率が20%以上40%未満であった。
(吐出安定性)
上記の転写性の評価の場合と同様の条件で、A4サイズの記録媒体(商品名「GF−500」、キヤノン製)の全面に、記録デューティが50%であるベタ画像を連続して20枚分記録した。20枚目の画像の乱れの状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって転写促進液の吐出安定性を評価した。
A:20枚分の記録が可能であり、20枚目の画像が乱れていなかった。
B:20枚分の記録が可能であったが、20枚目の画像に乱れがあった。
C:20枚分の記録ができなかった。
Figure 2021074927

Claims (7)

  1. 水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する反応液付与工程と、
    前記転写体の前記反応液が付与された領域に前記水性インクを付与するインク付与工程と、
    前記転写体の前記水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する転写促進液付与工程と、
    前記転写体に形成された前記中間画像を加熱する加熱工程と、
    加熱された前記中間画像を前記記録媒体に接触させて転写する転写工程と、をこの順に有し、
    前記転写促進液が、下記一般式(1)で表される化合物、ロジンエステル樹脂、及び炭素数3又は4のアルカンジオールを含有することを特徴とするインクジェット記録方法。
    Figure 2021074927
    (前記一般式(1)中、l+nは3.0以上45.0以下であり、mは16.0以上57.0以下である)
  2. 前記転写促進液中、前記ロジンエステル樹脂の含有量(質量%)が、前記一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.5倍以上5.0倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記転写促進液中、前記炭素数3又は4のアルカンジオールの含有量(質量%)が、前記一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上15.0倍以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記炭素数3又は4のアルカンジオールが、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、及び2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記転写促進液が、さらに、ポリエチレングリコール類及び多価アルコール類の少なくともいずれかの、25℃で固体の化合物を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記加熱工程において、前記記録媒体と接触させて転写する際の前記中間画像の温度が、前記ロジンエステル樹脂のガラス転移温度以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 水性インクを用いて記録媒体に画像を記録するために用いるインクジェット記録装置であって、
    前記水性インクと反応する反応剤を含有する水性の反応液を転写体に付与する反応液付与手段と、
    前記水性インクをインクジェット方式で吐出して、前記転写体の前記反応液が付与された領域に前記水性インクを付与するインク付与手段と、
    前記転写体の前記水性インクが付与された領域に水性の転写促進液を付与して中間画像を形成する転写促進液付与手段と、
    前記転写体に形成された前記中間画像を加熱する加熱手段と、
    加熱された前記中間画像を前記記録媒体に接触させて転写する転写手段と、を備え、
    前記転写促進液が、下記一般式(1)で表される化合物、ロジンエステル樹脂、及び炭素数3又は4のアルカンジオールを含有することを特徴とするインクジェット記録装置。
    Figure 2021074927
    (前記一般式(1)中、l+nは3.0以上45.0以下であり、mは16.0以上57.0以下である)
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