JP2021073989A - 細胞の培養方法、培養液の製造方法、培養液及び培養装置 - Google Patents

細胞の培養方法、培養液の製造方法、培養液及び培養装置 Download PDF

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Abstract

【課題】3次元細胞を効率的に且つ多量に生産すること。【解決手段】発熱素子10を発熱させて液体Wと発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより生成されたウルトラファインバブル11を含む培養液602を用い、細胞603を培養する。【選択図】図12

Description

本発明は、画像処理方法及び画像処理装置に関する。
再生医療分野においては、ヒト細胞を培養することで作製されたスフェロイドやオルガノイドのような3次元細胞が有望視されている。3次元細胞の移植は、既定部位に移植した際に細胞同士が足場構造を形成するため、単細胞や2次元細胞の移植に比べてアポトーシスが起こりにくく、移植後の細胞生存率が高いことが利点となっている。
近年では、分化万能性を有するES細胞や多能性幹細胞であるips細胞などを、未分化の状態から3次元浮遊培養し更に分化誘導する過程において、スフェロイドやオルガノイドが有用されている。そして、このようなスフェロイドやオルガノイドにおいては、長期に安定可能で所望のサイズを有するものを、確実に且つ多量に生産することが、求められている。非特許文献1には、細胞スフェロイドの有用性および様々な作製方法が開示されている。
特許第6118544号公報 特許第4456176号公報
「細胞スフェロイド化技術の開発と細胞治療への応用」Drug Delivery System 28-1, P45-53, 2013
しかしながら、3次元培養の過程においては、3次元細胞がある程度の大きさになると、内側の細胞に酸素が十分に供給されず、壊死(ネクローシス)してしまう傾向がある。このため、様々な培養方法が考案されてはいるものの、このような壊死がボトルネックとなり、3次元細胞を効率的に且つ多量に生産することは困難な状況であった。また、3次元細胞だけではなく、2次元細胞についても更に効率的にかつ多量に生産することが求められていた。
本発明は上記問題点を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、2次元細胞または3次元細胞を効率的に且つ多量に生産することが可能な培養方法、培養液の製造方法、培養液及び培養装置を提供することである。
そのために本発明は、発熱素子を発熱させて液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより生成されたウルトラファインバブルを含む培養液を用い、細胞を培養すること特徴とする。
本発明によれば、2次元細胞または3次元細胞を効率的に且つ多量に生産することが可能となる。
UFB生成装置の一例を示す図である。 前処理ユニットの概略構成図である。 溶解ユニットの概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。 T−UFB生成ユニットの概略構成図である。 発熱素子の詳細を説明するための図である。 発熱素子における膜沸騰の様子を説明するための図である。 膜沸騰泡の膨張に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。 膜沸騰泡の収縮に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。 液体の再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。 膜沸騰で生成される泡の消泡時の衝撃波によってUFBが生成される様子を示す図である。 後処理ユニットの構成例を示す図である。 第1の実施形態の第1の実施例を比較例と共に示す図である。 T−UFBの凝集と分散の様子を説明するための模式図である。 スフェロイドとオルガノイドの違いを説明するための模式図である。 第1の実施形態の第2の実施例を示す図である。 第1の実施形態の第3の実施例を示す図である。 第2の実施形態で用いる培養装置の概略構成図である。 第2の実施形態で用いる培養装置の変形例を示す図である。
[第1の実施形態]
近年、直径がマイクロメートルサイズのマイクロバブル、及び直径がナノメートルサイズのナノバブル等の微細なバブルの特性を応用する技術が開発されてきている。特に、直径が1.0μm未満のウルトラファインバブル(Ultra Fine Bubble;以下、「UFB」ともいう)については、その有用性が様々な分野において確認されている。
特許文献1には、気体が加圧溶解された加圧液を減圧ノズルから噴出させることによって、微細なバブルを生成する微細気泡生成装置が開示されている。また、特許文献2には、混合ユニットを用いて気体混合液体の分流と合流を繰り返すことによって、微細なバブルを生成する装置が開示されている。
このようなUFBは、再生医療の分野でもその活用が期待される。しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1や特許文献2に開示される方法で生成されたUFBは、長期間の保存が困難であることが確認された。
<<UFB生成装置の構成>>
図1は、本実施形態に適用可能なUFB生成装置の一例を示す図である。本実施形態のUFB生成装置1は、前処理ユニット100、溶解ユニット200、T−UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び回収ユニット500を含む。前処理ユニット100に供給された水道水などの液体Wは、上記の順番で各ユニット固有の処理が施され、T−UFB含有液として回収ユニット500で回収される。以下、各ユニットの機能及び構成について説明する。
図2は、前処理ユニット100の概略構成図である。本実施形態の前処理ユニット100は、供給された液体Wに対し脱気処理を行う。前処理ユニット100は、主に、脱気容器101、シャワーヘッド102、減圧ポンプ103、液体導入路104、液体循環路105、液体導出路106を有する。例えば水道水のような液体Wは、バルブ109を介して、液体導入路104から脱気容器101に供給される。この際、脱気容器101に設けられたシャワーヘッド102が、液体Wを霧状にして脱気容器101内に噴霧する。シャワーヘッド102は、液体Wの気化を促すためのものであるが、気化促進効果を生み出す機構としては、遠心分離器なども代替可能である。
ある程度の液体Wが脱気容器101に貯留された後、全てのバルブを閉じた状態で減圧ポンプ103を作動させると、既に気化している気体成分が排出されるとともに、液体Wに溶解している気体成分の気化と排出も促される。この際、脱気容器101の内圧は、圧力計108を確認しながら数百〜数千Pa(1.0Torr〜10.0Torr)程度に減圧されればよい。脱気ユニット100によって脱気される気体としては、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などが含まれる。
以上説明した脱気処理は、液体循環路105を利用することにより、同じ液体Wに対して繰り返し行うことができる。具体的には、液体導入路104のバルブ109と液体導出路106のバルブ110を閉塞し、液体循環路105のバルブ107を開放した状態で、シャワーヘッド102を作動させる。これにより、脱気容器101に貯留され、脱気処理が一度行われた液体Wは、再びシャワーヘッド102を介して脱気容器101に噴霧される。更に、減圧ポンプ103を作動させることにより、シャワーヘッド102による気化処理と減圧ポンプ103による脱気処理が、同じ液体Wに対し重ねて行われることになる。そして、液体循環路105を利用した上記繰り返し処理を行う度に、液体Wに含まれる気体成分を段階的に減少させていくことができる。所望の純度に脱気された液体Wが得られると、バルブ110を開放することにより、液体Wは液体導出路106を経て溶解ユニット200に送液される。
なお、図2では、気体部を低圧にして溶解物を気化させる脱気ユニット100を示したが、溶解した液体を脱気させる方法はこれに限らない。例えば、液体Wを煮沸して溶解物を気化させる加熱煮沸法を採用してもよいし、中空糸を用いて液体と気体の界面を増大させる膜脱気方法を採用してもよい。中空糸を用いた脱気モジュールとしては、SEPARELシリーズ(大日本インキ社製)が市販されている。これは、中空糸膜の原料にポリ4−メチルペンテン−1(PMP)を用いて、主にピエゾヘッド向けに供給するインクなどから気泡を脱気する目的で使用されている。更に、真空脱気法、加熱煮沸法、及び膜脱気方法の2つ以上を併用してもよい。
以上のような脱気処理を前処理として行うことにより、後述する溶解処理では、所望の気体の液体Wに対する純度および溶解度を高めることができる。さらに、後述するT−UFB生成ユニットでは、液体Wに含まれる所望のUFBの純度を高めることができる。すなわち、溶解ユニット200およびT−UFB生成ユニット300の前に前処理ユニット100を設けることにより、純度の高いUFB含有液を効率的に生成することが可能となる。
図3(a)及び(b)は、溶解ユニット200の概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。溶解ユニット200は、前処理ユニット100より供給された液体Wに対し所望の気体を溶解させるユニットである。本実施形態の溶解ユニット200は、主に、溶解容器201、回転板202が取り付けられた回転シャフト203、液体導入路204、気体導入路205、液体導出路206、及び加圧ポンプ207を有する。
前処理ユニット100より供給された液体Wは、液体導入路204より、溶解容器201に供給され貯留される。一方、気体Gは気体導入路205より溶解容器201に供給される。
所定量の液体Wと気体Gが溶解容器201に貯留されると、加圧ポンプ207を作動し溶解容器201の内圧を0.5Mpa程度まで上昇させる。加圧ポンプ207と溶解容器201の間には安全弁208が配されている。また、回転シャフト203を介して液中の回転板202を回転させることにより、溶解容器201に供給された気体Gを気泡化し、液体Wとの接触面積を大きくし、液体W中への溶解を促進する。そしてこのような作業を、気体Gの溶解度がほぼ最大飽和溶解度に達するまで継続する。この際、可能な限り多くの気体を溶解させるために、液体の温度を低下させる手段を配してもよい。また、難溶解性の気体の場合は、溶解容器201の内圧を0.5MPa以上に上げる事も可能である。その場合は、安全面から容器の材料などを最適にする必要がある。
気体Gの成分が所望の濃度で溶解された液体Wが得られると、液体Wは液体導出路206を経由して排出され、T−UFB生成ユニット300に供給される。この際、背圧弁209は、供給時の圧力が必要以上に高くならないように液体Wの流圧を調整する。
図3(b)は、溶解容器201で混入された気体Gが溶解していく様子を模式的に示す図である。液体W中に混入された気体Gの成分を含む気泡2は、液体Wに接触している部分から溶解する。このため、気泡2は徐々に収縮し、気泡2の周囲には気体溶解液体3が存在する状態となる。気泡2には浮力が作用するため、気泡2は気体溶解液体3の中心から外れた位置に移動したり、気体溶解液体3から分離して残存気泡4となったりする。すなわち、液体導出路206を介してT−UFB生成ユニット300に供給される液体Wには、気体溶解液体3が気泡2を囲った状態のものや、気体溶解液体3と気泡2が互いに分離した状態のものが混在している。
なお、図において気体溶解液体3とは、「液体W中において、混入された気体Gの溶解濃度が比較的高い領域」を意味している。実際に液体Wに溶解している気体成分においては、気泡2の周囲や、気泡2と分離した状態であっても領域の中心で濃度が最も高く、その位置から離れるほど気体成分の濃度は連続的に低くなる。すなわち、図3(b)では説明のために気体溶解液体3の領域を破線で囲っているが、実際にはこのような明確な境界が存在するわけではない。また、本実施形態においては、完全に溶解しない気体が、気泡の状態で液体中に存在しても許容される。
図4は、T−UFB生成ユニット300の概略構成図である。T−UFB生成ユニット300は、主に、チャンバー301、液体導入路302、液体導出路303を備え、液体導入路302からチャンバー301内を経て液体導出路303に向かう流れが、不図示の流動ポンプによって形成されている。流動ポンプとしては、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプなど各種ポンプを採用することができる。液体導入路302から導入される液体Wには、溶解ユニット200によって混入された気体Gの気体溶解液体3が混在している。
チャンバー301の底面には発熱素子10が設けられた素子基板12が配されている。発熱素子10に所定の電圧パルスが印加されることにより、発熱素子10に接触する領域に膜沸騰により生じる泡13(以下、膜沸騰泡13ともいう)が発生する。そして、膜沸騰泡13の膨張や収縮に伴って気体Gを含有するウルトラファインバブル(UFB11)が生成される。その結果、液体導出路303からは多数のUFB11が含まれたUFB含有液Wが導出される。
図5(a)及び(b)は、発熱素子10の詳細構造を示す図である。図5(a)は発熱素子10の近傍、同図(b)は発熱素子10を含むより広い領域の素子基板12の断面図をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、本実施形態の素子基板12は、シリコン基板304の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜305と、蓄熱層を兼ねる層間膜306と、が積層されている。層間膜306としては、SiO2膜、または、SiN膜を用いることができる。層間膜306の表面には抵抗層307が形成され、その抵抗層307の表面に、配線308が部分的に形成されている。配線308としては、Al、Al−Si、またはAl−CuなどのAl合金配線を用いることができる。これらの配線308、抵抗層307、及び、層間膜306の表面には、SiO2膜、またはSi34膜から成る保護層309が形成されている。
保護層309の表面において、結果的に発熱素子10となる熱作用部311に対応する部分、及び、その周囲には、抵抗層307の発熱に伴う化学的、及び物理的な衝撃から保護層309を保護するための耐キャビテーション膜310が形成されている。抵抗層307の表面において、配線308が形成されていない領域は、抵抗層307が発熱する熱作用部311である。配線308が形成されていない抵抗層307の発熱部分は、発熱素子(ヒータ)10として機能する。このように素子基板12における層は、半導体の製造技術によってシリコン基板304の表面に順次に形成され、これにより、シリコン基板304に熱作用部311が備えられる。
なお、図に示す構成は一例であり、その他の各種構成が適用可能である。例えば、抵抗層307と配線308との積層順が逆の構成、及び抵抗層307の下面に電極を接続させる構成(所謂プラグ電極構成)が適用可能である。つまり、後述するように、熱作用部311により液体を加熱して、液体中に膜沸騰を生じさせることができる構成であればよい。
図5(b)は、素子基板12において、配線308に接続される回路を含む領域の断面図の一例である。P型導電体であるシリコン基板304の表層には、N型ウェル領域322、及び、P型ウェル領域323が部分的に備えられている。一般的なMOSプロセスによるイオンインプランテーションなどの不純物の導入、及び拡散によって、N型ウェル領域322にP−MOS320が形成され、P型ウェル領域323にN−MOS321が形成される。
P−MOS320は、N型ウェル領域322の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くN型ウェル領域322の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
N−MOS321は、P型ウェル領域323の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くP型ウェル領域323の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。ゲート配線335は、CVD法により堆積された厚さ3000Å〜5000Åのポリシリコンからなる。これらのP−MOS320及びN−MOS321によって、C−MOSロジックが構成される。
P型ウェル領域323において、N−MOS321と異なる部分には、電気熱変換素子(発熱抵抗素子)の駆動用のN−MOSトランジスタ330が形成されている。N−MOSトランジスタ330は、不純物の導入及び拡散などの工程によりP型ウェル領域323の表層に部分的に形成されたソース領域332及びドレイン領域331と、ゲート配線333などから構成されている。ゲート配線333は、P型ウェル領域323におけるソース領域332及びドレイン領域331を除く部分の表面に、ゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
本例においては、電気熱変換素子の駆動用トランジスタとして、N−MOSトランジスタ330を用いた。しかし、その駆動用トランジスタは、複数の電気熱変換素子を個別に駆動する能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであればよく、N−MOSトランジスタ430には限定されない。また本例においては、電気熱変換素子と、その駆動用トランジスタと、が同一基板上に形成されているが、これらは、別々の基板に形成してもよい。
P−MOS320とN−MOS321との間、及びN−MOS321とN−MOSトランジスタ330との間等の各素子間には、5000Å〜10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域324が形成されている。この酸化膜分離領域324によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域324において、熱作用部311に対応する部分は、シリコン基板304上の一層目の蓄熱層334として機能する。
P−MOS320、N−MOS321、及びN−MOSトランジスタ330の各素子の表面には、CVD法により、厚さ約7000ÅのPSG膜、またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜336が形成されている。層間絶縁膜336を熱処理により平坦にした後に、層間絶縁膜336及びゲート絶縁膜328を貫通するコンタクトホールを介して、第1の配線層となるAl電極337が形成される。層間絶縁膜336及びAl電極337の表面には、プラズマCVD法により、厚さ10000Å〜15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜338が形成される。層間絶縁膜338の表面において、熱作用部311及びN−MOSトランジスタ330に対応する部分には、コスパッタ法により、厚さ約500ÅのTaSiN膜から成る抵抗層307が形成される。抵抗層307は、層間絶縁膜338に形成されたスルーホールを介して、ドレイン領域331の近傍のAl電極337と電気的に接続される。抵抗層307の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としてのAlの配線308が形成される。配線308、抵抗層307、及び層間絶縁膜338の表面の保護層309は、プラズマCVD法により形成された厚さ3000ÅのSiN膜から成る。保護層309の表面に堆積された耐キャビテーション膜310は、Ta、Fe,Ni,Cr,Ge,Ru,Zr,Ir等から選択される少なくとも1つ以上の金属であり、厚さ約2000Åの薄膜から成る。抵抗層307としては、上述したTaSiN以外のTaN0.8、CrSiN、TaAl、WSiN等、液体中に膜沸騰を生じさせることができるものであれば各種材料が適用可能である。
図6(a)及び(b)は、発熱素子10に所定の電圧パルスを印加した場合の膜沸騰の様子を示す図である。ここでは、大気圧のもとでの膜沸騰を生じさせた場合を示している。図6(a)において、横軸は時間を示す。また、下段のグラフの縦軸は発熱素子10に印加される電圧を示し、上段のグラフの縦軸は膜沸騰により発生した膜沸騰泡13の体積と内圧を示す。一方、図6(b)は、膜沸騰泡13の様子を、図6(a)に示すタイミング1〜3に対応づけて示している。以下、時間に沿って各状態を説明する。
発熱素子10に電圧が印加される前、チャンバー301内はほぼ大気圧が保たれている。発熱素子10に電圧が印加されると、発熱素子10に接する液体に膜沸騰が生じ、発生した気泡(以下、膜沸騰泡13と称す)は内側から作用する高い圧力によって膨張する(タイミング1)。このときの発泡圧力は約8〜10MPaとみなされ、これは水の飽和蒸気圧に近い値である。
電圧の印加時間(パルス幅)は0.5usec〜10.0usec程度であるが、電圧が印加されなくなった後も、膜沸騰泡13はタイミング1で得られた圧力の慣性によって膨張する。但し、膜沸騰泡13の内部では膨張に伴って発生した負圧力が徐々に大きくなり、膜沸騰泡13を収縮する方向に作用する。やがて慣性力と負圧力が釣り合ったタイミング2で膜沸騰泡13の体積は最大となり、その後は負圧力によって急速に収縮する。
膜沸騰泡13が消滅する際、膜沸騰泡13は発熱素子10の全面ではなく、1箇所以上の極めて小さな領域で消滅する。このため、発熱素子10においては、膜沸騰泡13が消滅する極めて小さな領域に、タイミング1で示す発泡時よりも更に大きな力が発生する(タイミング3)。
以上説明したような膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅は、発熱素子10に電圧パルスが印加されるたびに繰り返され、そのたびに新たなUFB11が生成される。
次に、膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅の各過程において、UFB11が生成される様子を更に詳しく説明する。
図7(a)〜(d)は、膜沸騰泡13の発生及び膨張に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。図7(a)は、発熱素子10に電圧パルスが印加される前の状態を示している。チャンバー301の内部には、気体溶解液体3が混在した液体Wが流れている。
図7(b)は、発熱素子10に電圧が印加され、液体Wに接している発熱素子10のほぼ全域で膜沸騰泡13が一様に発生した様子を示している。電圧が印加されたとき、発熱素子10の表面温度は10℃/μsec以上の速度で急激に上昇し、ほぼ300℃に達した時点で膜沸騰が起こり、膜沸騰泡13が生成される。
発熱素子10の表面温度は、その後もパルスの印加中に600〜800℃程度まで上昇し、膜沸騰泡13の周辺の液体も急激に加熱される。図では、膜沸騰泡13の周辺に位置し、急激に加熱される液体の領域を未発泡高温領域14として示している。未発泡高温領域14に含まれる気体溶解液体3は熱的溶解限界を超えて析出しUFBとなる。析出した気泡の直径は10nm〜100nm程度であり、高い気液界面エネルギを有している。そのため、短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13の膨張時に熱的作用によって生成される気泡を第1のUFB11Aと称す。
図7(c)は、膜沸騰泡13が膨張する過程を示している。発熱素子10への電圧パルスの印加が終了しても、膜沸騰泡13は発生したときに得た力の慣性によって膨張を続け、未発泡高温領域14も慣性によって移動及び拡散する。すなわち、膜沸騰泡13が膨張する過程において、未発泡高温領域14に含まれた気体溶解液体3が新たに気泡となって析出し、第1のUFB11Aとなる。
図7(d)は、膜沸騰泡13が最大体積となった状態を示している。膜沸騰泡13は慣性によって膨張するが、膨張に伴って膜沸騰泡13の内部の負圧は徐々に高まり、膜沸騰泡13を収縮しようとする負圧力として作用する。そして、この負圧力が慣性力と釣り合った時点で、膜沸騰泡13の体積は最大となり、以後収縮に転じる。
図8(a)〜(c)は、膜沸騰泡13の収縮に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。図8(a)は、膜沸騰泡13が収縮を開始した状態を示している。膜沸騰泡13が収縮を開始しても、周囲の液体Wには膨張する方向の慣性力が残っている。よって、膜沸騰泡13の極周囲には、発熱素子10から離れる方向に作用する慣性力と、膜沸騰泡13の収縮に伴って発熱素子10に向かう力とが作用し、減圧された領域となる。図では、そのような領域を未発泡負圧領域15として示している。
未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、圧的溶解限界を超え、気泡として析出する。析出した気泡の直径は100nm程度であり、その後短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の圧力的作用によって析出する気泡を、第2のUFB11Bと称す。
図8(b)は、膜沸騰泡13が収縮する過程を示している。膜沸騰泡13が収縮する速度は負圧力によって加速し、未発泡負圧領域15も膜沸騰泡13の収縮に伴って移動する。すなわち、膜沸騰泡13が収縮する過程において、未発泡負圧領域15が通過する箇所の気体溶解液体3が次々に析出し、第2のUFB11Bとなる。
図8(c)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13の加速度的な収縮により、周囲の液体Wの移動速度も増大するが、チャンバー301内の流路抵抗によって圧力損失が生じる。その結果、未発泡負圧領域15が占める領域は更に大きくなり、多数の第2のUFB11Bが生成される。
図9(a)〜(c)は、膜沸騰泡13の収縮時において、液体Wの再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。図9(a)は、発熱素子10の表面が収縮する膜沸騰泡13に被覆されている状態を示している。
図9(b)は、膜沸騰泡13の収縮が進み、発熱素子10の表面の一部が液体Wに接触した状態を示している。このとき発熱素子10の表面には、液体Wが接しても膜沸騰には到らないほどの熱が残っている。図では、発熱素子10の表面に接することにより加熱される液体の領域を未発泡再加熱領域16として示している。膜沸騰には到らないものの、未発泡再加熱領域16に含まれる気体溶解液体3は、熱的溶解限界を超えて析出する。本実施形態では、このように膜沸騰泡13が収縮する際の液体Wの再加熱によって生成される気泡を第3のUFB11Cと称す。
図9(c)は、膜沸騰泡13の収縮が更に進んだ状態を示している。膜沸騰泡13が小さくなるほど、液体Wに接する発熱素子10の領域が大きくなるため、第3のUFB11Cは、膜沸騰泡13が消滅するまで生成される。
図10(a)および(b)は、膜沸騰で生成された膜沸騰泡13の消泡時の衝撃(所謂、キャビテーションの一種)によって、UFBが生成される様子を示す図である。図10(a)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13は内部の負圧力によって急激に収縮し、その周囲を未発泡負圧領域15が覆う状態となっている。
図10(b)は、膜沸騰泡13が点Pで消滅した直後の様子を示している。膜沸騰泡13が消泡するとき、その衝撃により音響波が点Pを起点として同心円状に広がる。音響波とは、気体、液体、固体を問わず伝播する弾性波の総称であり、本実施形態においては、液体Wの粗密、すなわち液体Wの高圧面17Aと低圧面17B、とが交互に伝播される。
この場合、未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波によって共振され、低圧面17Bが通過するタイミングで圧的溶解限界を超えて相転移する。すなわち、膜沸騰泡13の消滅と同時に、未発泡負圧領域15内には多数の気泡が析出する。本実施形態ではこのような膜沸騰泡13が消泡する時の衝撃波によって生成される気泡を第4のUFB11Dと称す。
膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波よって生成される第4のUFB11Dは、極めて狭い薄膜的領域に極めて短時間(1μS以下)で突発的に出現する。直径は第1〜第3のUFBよりも十分小さく、第1〜第3のUFBよりも気液界面エネルギが高い。このため、第4のUFB11Dは、第1〜第3のUFB11A〜11Cとは異なる性質を有し異なる効果を生み出すものと考えられる。
また、第4のUFB11Dは、衝撃波が伝播する同心球状の領域のいたる所で一様に発生するため、生成された時点からチャンバー301内に一様に存在することになる。第4のUFB11Dが生成されるタイミングでは、第1〜第3のUFBが既に多数存在しているが、これら第1〜第3のUFBの存在が第4のUFB11Dの生成に大きく影響することはない。また、第4のUFB11Dの発生によって第1〜第3のUFBが消滅することもない。
以上説明したように発熱素子10の発熱により膜沸騰泡13が発生し消泡するまでの複数の段階においてUFB11が発生する。上述した例では膜沸騰泡13が消泡するまでの例を示したがUFBを発生させるためにはこれに限られない。例えば、発生した膜沸騰泡13が消泡する前に大気と連通することで、膜沸騰泡13が消耗まで至らない場合においてもUFBの生成が可能である。
次にUFBの残存特性について説明する。液体の温度が高いほど気体成分の溶解特性は低くなり、温度が低いほど気体成分の溶解特性は高くなる。すなわち、液体の温度が高いほど、溶解している気体成分の相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の温度と気体の溶解度は反比例の関係にあり、液体の温度上昇により、飽和溶解度を超えた気体が気泡になって液体中に析出される。
このため、液体の温度が常温から急激に上昇すると溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、温度が上がるほど熱的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の温度が常温から下降すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような温度は、常温よりも十分に低い。更に、液体の温度が下がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
本実施形態において、図7(a)〜(c)で説明した第1のUFB11A、及び図9(a)〜(c)で説明した第3のUFB11Cは、このような気体の熱的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
一方、液体の圧力と溶解特性の関係においては、液体の圧力が高いほど気体の溶解特性は高くなり、圧力が低いほど溶解特性は低くなる。すなわち液体の圧力が低いほど、液体に溶解している気体溶解液体の気体への相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の圧力が常圧から下がると、溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、圧力が下がるほど圧的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の圧力が常圧から上昇すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような圧力は、大気圧よりも十分に高く、更に、液体の圧力が上がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
本実施形態において、図8(a)〜(c)で説明した第2のUFB11B、及び図10(a)〜(c)で説明した第4のUFB11Dは、このような気体の圧力的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
以上では、生成される要因の異なる第1〜第4のUFBを個別に説明してきたが、上述した生成要因は、膜沸騰という事象に伴って同時多発的に起こるものである。このため、第1〜第4のUFBのうち少なくとも2種類以上のUFBが同時に生成されることもあり、これら生成要因が互いに協働してUFBを生成することもある。但し、いずれの生成要因も、膜沸騰現象によって招致されることは共通している。以下、本明細書では、このように急激な発熱に伴う膜沸騰を利用してUFBを生成する方法を、T−UFB(Thermal−Ultra Fine Bubble)生成方法と称す。また、T−UFB生成方法によって生成したUFBをT−UFB、T−UFB生成方法によって生成されたT−UFBを含有する液体をT−UFB含有液と称す。
T−UFB生成方法によって生成される気泡はその殆どが1.0um以下であり、ミリバブルやマイクロバブルは生成され難い。すなわち、T−UFB生成方法によれば、UFBのみが効率的に生成されることになる。また、T−UFB生成方法によって生成されたT−UFBは、従来法によって生成されたUFBよりも高い気液界面エネルギを有し、常温常圧で保存する限り簡単に消滅することはない。更に、新たな膜沸騰によって新たなT−UFBが生成されても、先行して生成されていたT−UFBがその衝撃によって消滅することもない。つまり、T−UFB含有液に含まれるT−UFBの数や濃度は、T−UFB含有液における膜沸騰の発生回数に対しヒステリシス特性を有すると言える。言い替えると、T−UFB生成ユニット300に配する発熱素子の数や発熱素子に対する電圧パルスの印加回数を制御することにより、T−UFB含有液に含まれるT−UFBの濃度を調整することができる。
再び図1を参照する。T−UFB生成ユニット300において、所望のUFB濃度を有するT−UFB含有液Wが生成されると、当該UFB含有液Wは、後処理ユニット400に供給される。
図11(a)〜(c)は、本実施形態の後処理ユニット400の構成例を示す図である。本実施形態の後処理ユニット400は、UFB含有液Wに含まれる不純物を、無機物イオン、有機物、不溶固形物、の順に段階に除去する。
図11(a)は、無機物イオンを除去するための第1の後処理機構410を示す。第1の後処理機構410は、交換容器411、陽イオン交換樹脂412、液体導入路413、集水管414及び液体導出路415を備えている。交換容器411には、陽イオン交換樹脂412が収容されている。T−UFB生成ユニット300で生成されたUFB含有液Wは、液体導入路413を経由して交換容器411に注入され、陽イオン交換樹脂412に吸収され、ここで不純物としての陽イオンが除去される。このような不純物には、T−UFB生成ユニット300の素子基板12より剥離した金属材料などが含まれ、例えばSiO2、SiN、SiC、Ta、Al23、Ta25、Irが挙げられる。
陽イオン交換樹脂412は、三次元的な網目構造を持った高分子母体に官能基(イオン交換基)を導入した合成樹脂であり、合成樹脂は0.4〜0.7mm程度の球状粒子を呈している。高分子母体としては、スチレン−ジビニルベンゼンの共重合体が一般的であり、官能基としては例えばメタクリル酸系とアクリル酸系のものを用いることができる。但し、上記材料は一例である。所望の無機イオンを効果的に除去することができれば、上記材料は様々に変更可能である。陽イオン交換樹脂412に吸収され、無機イオンが除去されたUFB含有液Wは、集水管414によって集水され、液体導出路415を介して次の工程に送液される。
図11(b)は、有機物を除去するための第2の後処理機構420を示す。第2の後処理機構420は、収容容器421、ろ過フィルタ422、真空ポンプ423、バルブ424、液体導入路425、液体導出路426、及びエア吸引路427を備えている。収容容器421の内部は、ろ過フィルタ422によって上下2つの領域に分割されている。液体導入路425は、上下2つの領域のうち上方の領域に接続し、エア吸引路427及び液体導出路426は下方の領域に接続する。バルブ424を閉じた状態で真空ポンプ423を駆動すると、収容容器421内の空気がエア吸引路427を介して排出され、収容容器421の内部が負圧になり、液体導入路425よりUFB含有液Wが導入される。そして、ろ過フィルタ422によって不純物が除去された状態のUFB含有液Wが収容容器421に貯留される。
ろ過フィルタ422によって除去される不純物には、チューブや各ユニットで混合され得る有機材料が含まれ、例えばシリコンを含む有機化合物、シロキサン、エポキシなどが挙げられる。ろ過フィルタ422に使用可能なフィルタ膜としては、細菌系まで除去できるサブμmメッシュのフィルタや、ウィルスまで除去できるnmメッシュのフィルタが挙げられる。
収容容器421にUFB含有液Wがある程度貯留された後、真空ポンプ423を停止してバルブ424を開放すると、収容容器421のT−UFB含有液は液体導出路426を介して次の工程に送液される。なお、ここでは、有機物の不純物を除去する方法として真空ろ過法を採用したが、フィルタを用いたろ過方法としては、例えば重力ろ過法や加圧ろ過を採用することもできる。
図11(c)は、不溶の固形物を除去するための第3の後処理機構430を示す。第3の後処理機構430は、沈殿容器431、液体導入路432、バルブ433及び液体導出路434を備えている。
まず、バルブ433を閉じた状態で沈殿容器431に所定量のUFB含有液Wを液体導入路432より貯留し、しばらく放置する。この間、UFB含有液Wに含まれている固形物は、重力によって沈殿容器431の底部に沈降する。また、UFB含有液に含まれるバブルのうち、マイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルも浮力によって液面に浮上し、UFB含有液から除去される。十分な時間が経過した後バルブ433を開放すると、固形物や大きなサイズのバブルが除去されたUFB含有液Wが液体導出路434を介して、回収ユニット500に送液される。
再度図1を参照する。後処理ユニット400で不純物が除去されたT−UFB含有液Wは、そのまま回収ユニット500に送液してもよいが、再び溶解ユニット200に戻すこともできる。後者の場合、T−UFBの生成によって低下したT−UFB含有液Wの気体溶解濃度を、溶解ユニット200において再び飽和状態まで補填することができる。その上で新たなT−UFBをT−UFB生成ユニット300で生成すれば、上述した特性のもと、T−UFB含有液のUFB含有濃度を更に上昇させることができる。すなわち、溶解ユニット200、T−UFB生成ユニット300、後処理ユニット400を巡る循環回数の分だけ、UFB含有濃度を高めることができ、所望のUFB含有濃度が得られた後に、当該UFB含有液Wを回収ユニット500に送液することができる。
ここで、生成されたT−UFB含有液Wを再び溶解ユニット200に戻すことの効果について、本発明者らが具体的に検証した検証内容に従って簡単に説明する。まず、T−UFB生成ユニット300においては、素子基板12に10000個の発熱素子10を配した。液体Wとしては工業用純水を用い、T−UFB生成ユニット300のチャンバー301の中を、1.0リットル/時の流速で流動させた。この状態で、個々の発熱素子に対し、電圧24V、パルス幅1.0μsの電圧パルスを、10KHzの駆動周波数で印加した。
生成されたT−UFB含有液Wを溶解ユニット200に戻さず回収ユニット500で回収した場合、すなわち循環回数を1回とした場合、回収ユニット500で回収されたT−UFB含有液Wには、1.0mLあたり36億個のUFBが確認された。一方、T−UFB含有液Wを溶解ユニット200に戻す操作を10回行った場合、すなわち循環回数を10回とした場合、回収ユニット500で回収されたT−UFB含有液Wには、1.0mLあたり360億個のUFBが確認された。すなわち、UFB含有濃度は、循環回数に比例して高くなることが確認された。なお、上記のようなUFBの数密度については、島津製作所製の測定器(型番SALD−7500)を用い、所定体積のUFB含有液Wに含まれる直径1.0μm未満のUFB41をカウントすることによって取得した。
回収ユニット500は、後処理ユニット400より送液されて来たUFB含有液Wを回収及び保存する。回収ユニット500で回収されたT−UFB含有液は、様々な不純物が除去された純度の高いUFB含有液となる。
回収ユニット500においては、何段階かのフィルタリング処理を行い、UFB含有液WをT−UFBのサイズごと分類してもよい。また、T−UFB生成方法により得られるT−UFB含有液Wは、常温よりも高温であることが予想されるため、回収ユニット500には冷却手段を設けてもよい。なお、このような冷却手段は、後処理ユニット400の一部に設けられていてもよい。
以上が、UFB生成装置1の概略であるが、図示したような複数のユニットは無論変更可能であり、全てを用意する必要は無い。使用する液体Wや気体Gの種類、また生成するT−UFB含有液の使用目的に応じて、上述したユニットの一部を省略してもよいし、上述したユニット以外に更に別のユニットを追加してもよい。
例えば、UFBに含有させる気体が大気である場合は、脱気ユニット100や溶解ユニット200を省略することができる。反対に、UFBに複数種類の気体を含ませたい場合は、溶解ユニット200を更に追加してもよい。
また、図1に示した幾つかのユニットの機能は、1つのユニットに統合させることもできる。例えば、図3(a)および(b)に示した溶解容器201の中に発熱素子10を配することにより、溶解ユニット200とT−UFB生成ユニット300とを統合させることができる。具体的には、気体溶解容器(高圧チャンバー)内に、電極タイプのT−UFBモジュールを内蔵させて、当該モジュール内に配した複数のヒータを駆動し、膜沸騰を発生させる。このようにすれば、1つのユニットの中で気体を溶解させながらその気体を含有するT−UFBを生成することができる。なお、この場合、T−UFBモジュールを気体溶解容器の底辺に配置しておくことにより、ヒータで生成された熱がマランゴリ対流を起こし、循環・攪拌手段を設けなくても容器内の液体をある程度攪拌することができる。
また、図11(a)〜(c)で示すような不純物を除去するための除去ユニットは、T−UFB生成ユニット300よりも上流に前処理ユニットの一部として設けてもよいし、上流と下流の両方に設けてもよい。UFB生成装置に供給される液体が水道水や雨水、また汚染水などの場合は、液体中に有機系や無機系の不純物が含まれている事がある。そのような不純物を含んだ液体WをT−UFB生成ユニット300に供給すると、発熱素子10を変質させたり、塩析現象を招致したりするおそれが生じる。図11(a)〜(c)で示すような機構をT−UFB生成ユニット300よりも上流に設けておくことにより、上記のような不純物を事前に除去し、より純度の高いUFB含有液をより効率的に生成することが可能となる。
特に、図11(a)で示したイオン交換樹脂による不純物除去ユニットを、前処理ユニットに設ける場合は、陰イオン交換樹脂を配置するとT−UFB水の効率的な生成に寄与する。何故なら、T−UFB生成ユニット300が生成するウルトラファインバブルは、負電荷を持つことが確認されているからである。そのため、前処理ユニットにおいて、同じ負電荷をもつ不純物を除去することで、純度の高いT−UFB水を生成することができる。ここで使用する陰イオン交換樹脂としては、4級アンモニウム基を持つ強塩基性陰イオン交換樹脂や、1〜3級アミン基を持つ弱塩基性陰イオン交換樹脂の双方が適している。どちらが最適かは、使用する液体の種類に依存する。通常、水道水や純水などを液体として使用する場合は、後者の弱塩基性陰イオン交換樹脂のみで十分機能を満たすことができる。
<<T−UFB含有液に使用可能な液体および気体>>
ここで、T−UFB含有液を生成するために使用可能な液体Wについて説明する。本実施形態で使用可能な液体Wとしては、例えば、純水、イオン交換水、蒸留水、生理活性水、磁気活性水、化粧水、水道水、海水、川水、上下水、湖水、地下水、雨水などが挙げられる。また、これらの液体等を含む混合液体も使用可能である。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒も使用できる。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては特に限定されないが、具体例として、以下のものを挙げることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール。1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
溶解ユニット200で導入可能な気体成分としては、例えば、水素、ヘリウム、酸素、窒素、メタン、フッ素、ネオン、二酸化炭素、オゾン、アルゴン、塩素、エタン、プロパン、空気、などが挙げられる。また、上記のいくつかを含む混合気体であってもよい。さらに、溶解ユニット200では必ずしも気体状態にある物質を溶解させなくてもよく、所望の成分で構成される液体や固を液体Wに融解させてもよい。この場合の溶解としては、自然溶解のほか、圧力付与による溶解であってもよいし、電離による水和、イオン化、化学反応を伴う溶解であってもよい。
<<オゾンガスを用いた場合の具体例>>
ここで、一つの具体例として、オゾンガスを気体成分として用いる場合について説明する。まず、オゾンガスの生成方法としては、放電法、電解法、紫外線ランプ法が挙げられる。以下、これらを順番に説明する。
(1)放電法
放電法には無声放電法と沿面放電法がある。無声放電法では、平行平板状もしくは同軸円筒状に配置された一対の電極の間に酸素含有気体を流しつつ、交流高電圧をかける。これにより、酸素含有気体中に放電が生じ、オゾンガスが発生する。この一対の電極の表面は一方、もしくは双方がガラスなどの誘電体で被覆されている必要がある。放電はこの誘電体表面における電荷が正負交互に変動するのに伴って気体(空気もしくは酸素)中で発生する。
一方、沿面放電法は、平面状の電極の表面をセラミックスなどの誘電体で覆い、その誘電体の表面に線状の電極を配置して、平板状電極と線状電極の間に交流高電圧をかける。これにより、誘電体の表面に放電が生じオゾンガスが発生する。
(2)電解法
水中に電解質膜を挟んだ一対の電極を配置し、両極間に直流電圧をかける。これにより水の電気分解が起こり、酸素発生側に酸素と同時にオゾンガスが発生する。実用されているオゾン発生器としては、陰極に白金触媒層を持つ多孔質チタン、陽極にニ酸化鉛触媒層を持つ多孔質チタン、電解質膜にペルフルオルスルフォン酸陽イオン交換膜を用いたものなどがある。本装置によれば、20重量%以上の高濃度オゾンを発生させることができる。
(3)紫外線ランプ法
地球のオゾン層が作られるのと同様の原理を利用し、紫外線を空気などにあててオゾンガスを発生させる。紫外線ランプとしては通常水銀ランプが使用される。
なお、オゾンガスを気体成分として用いる場合、以上説明した(1)〜(3)の方法を採用するオゾンガス生成ユニットは、図1のUFB生成装置1に更に追加してもよい。
次に、生成したオゾンガスの溶解方法について説明する。オゾンガスを液体W中に溶解させるのに適した方法としては、図3(a)および(b)で示した加圧溶解法以外に、「気泡溶解法」、「隔膜溶解法」、「充填層溶解法」が挙げられる。以下に、これら3つの方法を比較しながら順番に説明する。
(i)気泡溶解法
液体W中にオゾンガスを泡として混在させ、液体Wとともに流動させながら溶解する方法である。例えば、液体Wが貯留している容器の下部からオゾンガスを吹き込むバブリング法、液体Wを流動させる配管の一部に狭隘部を設け、狭隘部にオゾンガスを吹きこむエジェクター法、ポンプで液体Wとオゾンガスを攪拌する方法等がある。比較的コンパクトな溶解法であり、浄水場などでも有用されている。
(ii)隔膜溶解法
多孔質のテフロン膜に液体Wを流し、その外側にオゾンガスを流して、液体W中にオゾンガスを吸収および溶解させる方法である。
(iii)充填層溶解法
充填層の上部から液体Wを流し且つ下部からオゾンガスを流すことにより、オゾンガスと液体を向流させ、充填層内でオゾンガスを液体Wに溶解させる方法である。
なお、以上説明した(i)〜(iii)の方法を採用する場合、UFB生成装置1の溶解ユニット200は、図3(a)および(b)で示した構成のものから(i)〜(iii)のいずれかの方法を採用する構成のものに変更すればよい。
特に、純度の高いオゾンガスは、毒性が強いなどの観点から、特殊な環境を準備しない限り、ガスボンベでの購入や使用が制限されている。そのため、気体導入による従来のマイクロバブルやウルトラファインバブルの生成方法(例えば、ベンチュリー方式や旋回流方式、加圧溶解方式など)では、オゾンマイクロ・ウルトラファインバブルの生成が困難である。
一方、オゾン溶解水を生成する方法としては、前述の放電法、電解法や紫外線ランプ法によって供給される酸素からオゾンを生成し、同時に水などに溶解する方法が、安全且つ容易性の点から有用である。
但し、キャビテーション方式などでは、オゾン溶解水を元に、オゾンウルトラファインバブルの生成は可能であるが、装置が大型化し、且、オゾンウルトラファインバブルの濃度が高くできないなどの課題が残っている。
これに対し、T−UFB生成方法は、比較的小型の装置の下で、オゾン溶解水から高濃度なオゾンウルトラファインバブルを生成できる点で、他の方法よりも優れていると言える。
<<T−UFB生成方法の効果>>
次に、以上説明したT−UFB生成方法の特徴と効果を、従来のUFB生成方法と比較して説明する。例えばベンチュリー方式に代表される従来の気泡生成装置においては、流路の一部に減圧ノズルのようなメカ的な減圧構造を設け、この減圧構造を通過するように所定の圧力で液体を流すことにより、減圧構造の下流の領域に様々なサイズの気泡を生成している。
この場合、生成された気泡のうち、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルには浮力が作用するため、やがて液面に浮上して消滅してしまう。また、浮力が作用しないUFBについても、然程大きな気液界面エネルギを有していないので、ミリバブルやマイクロバブルとともに消滅してしまう。加えて、上記減圧構造を直列に配置し、同じ液体を繰り返し減圧構造に流したとしても、その繰り返し回数に応じた数のUFBを、長期間保存することはできない。すなわち、従来のUFB生成方法によって生成されたUFB含有液では、UFB含有濃度を所定の値で長期間維持することは困難であった。
これに対し、膜沸騰を利用する本実施形態のT−UFB生成方法では、常温から300℃程度への急激な温度変化や、常圧から数メガパスカル程度への急激な圧力変化を、発熱素子の極近傍に局所的に生じさせている。当該発熱素子は、一辺が数十μm〜数百μm程度の四辺形をしている。従来のUFB発生器の大きさに比べると、1/10〜1/1000程度である。且つ、膜沸騰泡表面の極薄い膜領域に存在する気体溶解液体が、熱的溶解限界または圧力的溶解限界を瞬間的に(マイクロ秒以下の超短時間で)超えることにより、相転移が起こりUFBとなって析出する。この場合、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルは殆ど発生せず、液体には直径が100nm程度のUFBが極めて高い純度で含有される。更に、このように生成されたT−UFBは、十分に高い気液界面エネルギを有しているため、通常の環境下において破壊されにくく、長期間の保存が可能である。
特に、液体に対し局所的に気体界面を形成できる膜沸騰現象を用いた本実施形態であれば、液体領域全体に影響を与えることなく、液体の一部に界面形成し、それに伴う熱的、圧力的に作用する領域を極めて局所的な範囲とすることができる。その結果、安定的に所望のUFBを生成することができる。また、液体を循環して生成液体に対し更にUFBの生成条件を付与することで、既存のUFBへの影響を少なく新たなUFBを追加生成することができる。その結果、比較的容易に、所望のサイズ、濃度のUFB液体を製造することができる。
更に、T−UFB生成方法においては、上述したヒステリシス特性を有するため、高い純度のまま所望の濃度まで含有濃度を高めていくことができる。すなわち、T−UFB生成方法よれば、高純度、高濃度で且つ長期間保存可能なUFB含有液を、効率的に生成することができる。
本実施形態では、以上の方法で作成したT−UFB含有液を、細胞の培養液として使用する。以下、T−UFB含有液を用いた細胞培養について、いくつかの実施例を挙げて具体的に説明する。
(実施例1)
図12(a)〜(c)は、本実施形態のT−UFB含有液を用いてスフェロイドを培養する様子を、比較例と共に示す図である。図12(a)〜(c)は、いずれもシャーレのような培養容器601に培養液602を貯留し、ヒト細胞の単一細胞603を浸し、所定の温度と湿度の下で一定期間静置した様子を示している。
単一細胞603の径は、約1〜100μmである。培養液602としては、液体培地を含むことが好ましい。また、液体培地は、アミノ酸類、無機塩類、及びビタミン類を含むことが好ましい。液体培地としては、アミノ酸をベースにした「StemFit(登録商標)」AK03培地(味の素社製)やDMEM(富士フィルム和光純薬社製)などが使用可能である。また、培養液602は、動物性血清を含むことが好ましい。さらに、培養液602は、抗生物質を含むことが好ましい。動物性血清及び抗生物質としては、公知のものが使用可能である。培養液が酸素UFBを含む場合、培養液中の溶存酸素は過飽和状態であることが好ましい。また、培養液中の溶存酸素濃度は8.0ppm以上であることが好ましい。なお、培養液中の溶存酸素は、溶存酸素濃度計(光学式溶存酸素濃度計、FDO Multi3510型(WTW(ダブリュ・ティ・ダブリュ社製)))によって測定することが可能である。通常、細胞培養は人間の体温と同じ程度の温度(約37℃)で行う事が多い。培養用のインキュベータ内で、溶存酸素濃度を測るために、少量で測れる携帯型の光学式タイプを選択した。溶存酸素濃度計(DO Meter)には、ガルバニ式(隔膜電極式)なども使用する事ができる。
図12(a)は、一般的な培養容器601と培養液602を用いた場合を示している。単一細胞603は、培養液602より栄養分や酸素を吸収しながら増殖し、3次元細胞であるスフェロイド604を形成する。しかしながら、スフェロイド604がある程度の大きさになると、培養液602に接触し難い内側の細胞には、成長に必要な酸素が十分に供給されず、壊死(ネクローシス)してしまう傾向がある。培養中に培養液602を補充、交換することにより、このような壊死はある程度抑制できるものの、本発明者の観察によれば、培養液602を少なくとも12時間おきに交換しても、一定時間が経過すると壊死細胞605が発生してしまう。
図12(b)は、培養容器601の底部を、酸素透過性の高い材料で形成した例を示している。このような材料としては、例えば、シリコン中空糸分離膜(ナガセップ:永柳工業製)のような気液分離膜や、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。
この場合、図12(a)と比べると、培養液602が大気に曝される面積が増え、各細胞に酸素が供給されやすくなる。しかしながら、スフェロイド604の中心近傍に位置する細胞には、やはり十分な酸素は供給され難く、壊死細胞605が発生してしまう。
図12(c)は、本実施例の培養方法を示している。本実施例では、UFB生成装置1で生成したウルトラファインバブル含有液と上記市販の培養液とを混合させたものを培養液602として用いる。具体的には、図1で説明したUFB生成装置1において、溶解ユニット200で酸素を含む気体を溶解させ、T−UFB生成ユニット300でT−UFBを発生させる。そして作成されたT−UFB含有液を上記市販の培養液に混合させ、出来上がった混合液を本実施例の培養液602として用いる。
T−UFB生成方式で生成したUFB11の大きさは100nm以下であり、1〜100μm程度の単一細胞603よりも十分に小さい。このため、酸素を含むUFB11は、ブラウン運動しながら均一に分散し、スフェロイド604がある程度大きな塊となっても、個々の細胞の間を通り抜けて中心近傍に位置する細胞に近づくことができる。その結果、スフェロイド604を形成するほぼ全て細胞に酸素が安定して供給され、スフェロイド604は壊死細胞605を発生させることなく増殖していくことができる。すなわち、本実施例によれば、市販の培養液にT−UFB生成方法で生成したT−UFB含有液を混合させた液体を培養液として用いることにより、所望の大きさのスフェロイドを、再現性の高い状態で安定して作製することが可能となる。
また、個々の細胞に酸素が供給されやすくなる本実施例によれば、図12(a)、(b)に示した比較例に比べて、培養液を交換する頻度を減らすことができる。よって、マンパワーを削減できるとともに、ピペット作業などに伴う細胞へのストレスを軽減し、その点においても3次元細胞の効率的な生成を促すことになる。
以下、再度図1を参照しながら、本実施例で使用可能なT−UFB含有液の具体的な製造方法を説明する。まず、本実施例では、液体Wとして滅菌した精製水(超純水)を使用する。水道水や一般的な純水では、コンタミネーションなどによって殺菌処理が不十分な場合があり、細胞にダメージを与える大腸菌などの細菌が混入し、細胞培養を阻害するリスクがあるためである。具体的には、メルコ社製の超純水装置(UV滅菌処理とフィルタろ過を含む)によって精製された超純水が好適に使用可能である。
溶解させる気体Gとしては、医療用ガスが好適である。具体的には、少なくとも酸素及び二酸化炭素を含む岩谷産業製の医療ガスが有用できる。気体Gには、酸素及び二酸化炭素のほか、窒素、水素、ネオン、オゾン、アルゴン、パーフロロカーボン系ガスなどが含まれていてもよい。
T−UFB生成ユニット300においては、ユニット全体が滅菌環境下のドラフトチャンバー内に収納されていることが好ましい。具体的には、パナソニック製のバイオハザード対策用キャビネットクラスII(MHE-181AB3)が好適に利用可能である。
以上のように、製造済みの超純水と医療用ガスを用い、ドラフトチャンバーに収納されたT−UFB生成ユニット300でT−UFB含有液を生成する形態とすれば、装置全体を比較的コンパクトにすることができる。そして、生成されたT−UFB含有液を上記市販の培養液に混合させることにより、本実施例で使用可能なコンタミフリーの培養液602を生成することができる。
ところで、本発明者らの検討によれば、T−UFB生成方法で生成したT−UFBは、生成された後に凝集体を形成する傾向があることが確認された。また、このような凝集体は、超音波を付与することによって分散可能であることも確認された。
図13は、T−UFBの凝集と分散の様子を説明するための模式図である。T−UFB生成方法で生成した個々のUFB11は、±0〜−30mVのゼータ電位を有する、直径が100nm以下の微細なバブルであり、互いに凝集する傾向がある。このため、T−UFB生成方法によって生成されたUFB含有液においては、UFB生成後比較的早い段階で凝集体11Gの形成が開始される。
凝集体11Gに含まれるUFB11の数が多くなるほど、凝集体11Gが有する負電荷も大きくなる。そして、凝集体11Gの径が100〜200nm程度になると、凝集体が有するゼータ電位も−60〜−100mV程度となり、凝集体11G同士は静電力によって反発し合うようになる。すなわち、T−UFB生成方法によってUFBを生成してしばらく置いた後のT−UFB含有液は、一定の大きさの複数の凝集体11Gが、ブラウン運動しながら液体中を分散して浮遊する状態となる。
但し、UFB11が凝集体11Gの単位で浮遊する状態は、UFBの数が実際のUFB11の数よりも抑えられた状態となり、スフェロイド604の中心近傍の細胞にまで酸素を供給するという効果が低減されてしまう。よって、本実施例においては、T−UFB生成ユニット300でT−UFBを生成した後の後処理として、超音波ホーンをT−UFB含有液に浸し、150KHzの振動を80Wで30秒間発信する工程を追加した。これにより、凝集体11Gは分散し、UFB11の数を見かけ上増大させることができた。そして、このような後処理を行った後のUFB含有液を、上記市販の培養液に混合させたものを、本実施例の培養液602として使用した。なお、上記振動の振動数は、状態に応じて無論変更可能である。本発明者らの検討によれば、KHz帯からMKHz帯に含まれる超音波であれば、凝集体11Gを個別のUFB11に分散できることが確認できた。
なお、本実施例において、培養したスフェロイドにおける壊死細胞の有無やスフェロイド全体の安定性は、オリンパス社製のFV3000などの3次元イメージング装置を用いて確認した。また、3次元細胞スフェロイドをスライスし、その割断面を染色し、細胞組織の活性化を評価する方法も採用した。
(実施例2)
実施例2では、本実施形態のT−UFB含有液を用いてオルガノイドを培養する場合について説明する。
図14は、スフェロイドとオルガノイドの違いを説明するための模式図である。スフェロイドが単一細胞(1種類の単細胞)を3次元培養することによって形成される3次元細胞であるのに対し、オルガノイドは2種以上の単細胞を3次元で共培養することによって形成される3次元細胞である。スフェロイドは1種類の複数細胞が互いに血管で繋がれた細胞塊となり、オルガノイドは複数種類の複数細胞が互いに血管で繋がれた細胞塊となる。
オルガノイドの培養も、スフェロイドと同様、細胞塊の内側にある細胞への酸素の供給が課題となる。オルガノイドにおいては、目的の臓器のサイズに近づくまで、すなわち比較的大きなサイズに成長するまで3次元培養することが求められるので、上記課題は更に重要となる。
図15は、本実施形態のUFB含有液を培養液に使用して、オルガノイドを培養する状態を示す図である。培養液602としては、実施例1と同様のものを用いている。すなわち、図1で示したUFB生成装置1において、液体Wとして超純水を用い、医療用ガスを気体Gとして溶解させ、ドラフトチャンバー内に収納されているT−UFB生成ユニット300でT−UFBを生成した。そして、得られたUFB含有液に超音波ホーンを挿入し、100KHzの振動を80Wで30秒間発信した後、「StemFit」AK03培地(味の素社製)に混合させたものを、本実施例で使用する培養液602とした。そして、培養容器601に培養液602を貯留し、複数種類のヒト細胞606、607を浸して、所定の温度と湿度が保たれた環境の下、一定期間静置した。
本実施例においても、UFB11は、個々の細胞606、607の間を通り抜け、オルガノイド608の中心近傍に位置する細胞にも近づくことができる。その結果、オルガノイド608を形成するほぼ全て細胞に酸素が安定して供給され、オルガノイド608は壊死細胞を発生させることなく成長していくことができる。本発明者らの観察によれば、オルガノイドを200μm〜1.0mmのサイズまで成長させても、壊死細胞は確認されなかった。
すなわち、本実施例によれば、市販の培養液にT−UFB生成方法で生成したUFB含有液を混合させた液体を、培養液として用いることにより、所望のサイズのオルガノイドを、再現性の高い状態で安定して作製することが可能となる。
(実施例3)
実施例3では、本実施形態のT−UFB含有液を用いて、一度に複数のスフェロイドを培養する場合について説明する。
図16は、本実施例の培養方法を示す図である。実施例1で説明した図12(c)と異なる点は、培養容器601の底部に、複数の凹部が形成されたマイクロプレート610を設置する点である。培養液602としては、実施例1、2と同様のものを用いる。凹部のそれぞれに単一細胞を一つずつ配することにより、凹部のそれぞれでスフェロイドを形成することができる。
本実施例においても、酸素を含むUFB11は、培養容器601内において一様に分散し浮遊する。このため、スフェロイド604がある程度大きな塊となっても、UFB11は個々の細胞の間を通り抜けて中心近傍の細胞まで近づくことができる。その結果、それぞれのスフェロイド609を形成するほぼ全て細胞に酸素が安定して供給され、いずれのスフェロイド609も壊死細胞605を含むことなく正常かつ均等に成長していくことができる。すなわち、本実施例によれば、市販の培養液にT−UFB生成方法で生成したT−UFB含有液を混合させた液体を培養液として用いることにより、所望の大きさの複数のスフェロイドを、効率的に且つ多量に作製することが可能となった。
なお、以上説明した第1〜3の実施例では、市販の培養液にT−UFB生成ユニットで生成したT−UFB含有液を混合させることで、スフェロイド或いはオルガノイドの培養に用いる培養液としたが、培養液602の生成方法はこれに限定されない。図1で説明したUFB生成装置1において、前処理ユニット100或いは溶解ユニット200に供給する液体Wを、市販の培養液としてもよい。この場合、T−UFB生成ユニット300では、市販の培養液中に膜沸騰を生じさせT−UFBを生成させることになる。いずれにせよ、細胞の培養に必要な栄養分と、T−UFB生成方式によって生成されたT−UFBとを含む液体であれば、本実施形態の培養液とみなすことができる。
また、培養過程においては、単細胞から所望の大きさの3次元細胞に成長するまで、常にT−UFBを含有する本実施形態の培養液を使用する必要はない。所定の培養過程のうち、特に酸素を必要とする期間のみ本実施形態の培養液を用い、3次元細胞がある程度成長した段階で従来の培養液に切り替えるようにしてもよい。
[第2の実施形態]
図17は本実施形態で用いる培養装置2000の概略構成図である。本実施形態の培養装置2000は、主に、液体供給部700、気体溶解部800、収容室900、ウルトラファインバブル生成部(UFB生成部)1000、及び培養部600を含む。液体供給部700、気体溶解部800及びUFB生成部1000は、第1の実施形態で説明した、図1の前処理ユニット100、溶解ユニット200及びT−UFB生成ユニット300にそれぞれ対応する。各部は配管1006によって互いに接続され、配管1006の途中に配されたポンプ1002によって、液体Wが循環する。図17において、実線矢印は液体の流れを示し、破線矢印は気体の流れを示す。
液体供給部700は、液体貯留部701、ポンプ702、703、及び脱気部704を備えている。液体貯留部701には市販の培養液が貯留される。この培養液としては例えば「StemFit」AK03培地(味の素社製)を好適に用いることができる。液体貯留部701に貯留された液体Wは、ポンプ702、703により、脱気部704を経由して、収容室900に送液される。脱気部704の内部には、気体が通過でき液体が通過できない膜が配備されている。ポンプ702、703の圧力によって気体のみが膜を通過することにより、気体と液体とが分離され、液体Wは収容室900に向かい、気体は外部に排出される。
気体溶解部800は、気体供給部804、前処理部801、合流部802、気液分離室803を備えている。気体供給部804は、第1の実施形態で用いた医療用ガスのボンベであってもよいが、酸素を含む気体Gを連続的に発生可能な装置であってもよい。例えば、大気を取り込み、窒素を除去し、酸素濃度が高められた気体を連続的にポンプで送り込む装置とすることができる。
気体供給部804より供給された気体Gは、前処理部801によって放電等の処理がなされた後、合流部802において、収容室900から流出された液体Wと合流する。この際、気体Gの一部は液体Wに溶解する。合流した気体Gと液体Wは気液分離室803によって再び分離され、液体Wに溶解されなかった気体Gのみが外部に排出される。気体Gが溶解された液体Wは、その後ポンプ1002によってUFB生成部1000に送られる。気液分離室803の下流には、液体W中の気体Gの溶解度を検知するための溶解度センサ805が設けられている。
UFB生成部1000は、流入された液体W中にUFBを生成する。UFBの生成方式としては、図4〜図10を用いて説明したT−UFB生成方法を採用する。UFB生成部1000の上流にはフィルタ1001が配され、不純物やごみなどがUFB生成部1000に流入するのを防いでいる。不純物やごみなどを除去することにより、UFB生成部1000におけるUFBの生成効率を向上させることができる。UFB生成部1000で生成されたUFB含有液Wは、配管1006を通って収容室900に収容される。
収容室900は、液体供給部700から供給された液体Wと、気体溶解部800で所望の気体Gが溶解された液体Wと、UFB生成部1000でT−UFBが生成されたUFB含有液との混合液を収容する。
温度センサ905は、収容室900に収容されている液体の温度を検知する。液面センサ902は、収容室900の所定の高さに配置され、収容室900における液体Wの液面を検出する。UFB濃度センサ906は、収容室900に収容された液体WのUFB濃度を検出する。バルブ904は、収容室900に収容されている液体Wを培養容器601に供給する際に開放される。
温度調整部903は、収容室900に収容されている液体Wの温度を管理する。気体溶解部800で所望の気体Gを溶解させるとき、気体溶解部800に供給する液体Wの温度はなるべく低温であるほうが効率的である。一方、収容室900に貯留された液体Wを培養容器601に供給するとき、液体Wは培養に適した温度に調整されることが好ましい。本実施形態では、温度センサ905で液体の温度を検出しながら、温度調整部903を用いて、気体溶解部800に供給する際の液体Wの温度や、培養容器601に供給する際の液体の温度を場面に応じて適切に調整している。
図17には示していないが、収容室900の内部には、第1の実施形態で説明したような超音波ホーンを配し、収容室900から培養容器601に送る前の液体に振動を付与してもよい。更に、収容室900には、液体Wの温度やUFBの分布を一様にするための攪拌手段を設けてもよい。
培養部600は、主に、培養容器601、流入管1004及び流出管1005を有している。培養容器601には、第1の実施形態の実施例3で説明したマイクロプレート610がセットされ、それぞれの凹部でスフェロイド或いはオルガノイドが培養される。図では3つの凹部を示しているが、マイクロプレート610には更に多数の凹部が形成されており、多数のスフェロイドが同時に培養可能となっている。収容室900に収容されているUBB含有液は、流入管1004を介して継続的に又は必要に応じて培養容器601に供給され、流出管1003を介して継続的に又は必要に応じて培養容器601より排出される。
培養容器601に収容されているUBB含有液(培養液)は、細胞の呼吸や増殖に伴って酸素が消費されるが、本実施形態の培養装置であれば、適切なUFB濃度のUFB含有液を、継続的に培養容器601に供給することができる。つまり、人の手による培養液の交換の必要がなくなり、スフェロイドが所望の大きさに成長するまで、所定の環境下で静置しておくことが可能となる。
なお、本実施形態において、培養容器601に対する培養液602の流入や流出の方法は特に限定されない。ポンプを利用してもよいし、水頭差などを利用してもよい。いずれにしても、培養容器601に配された細胞を傷つけることがない程度の緩やかな流速に調整することが好ましい。
配管1006、ポンプ1002、フィルタ1001、収容室900、UFB生成部1000の接液部のように、培養液となる液体Wと接触する部材については、耐腐食性の強い材料で形成されていることが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)などのフッ素系樹脂、SUS316Lなどの金属やその他の無機材料が好適に使用可能である。
図17に示した本実施形態の循環経路において、所望の気体Gを溶解させる工程とUFBを生成する工程とは、同時に行ってもよいし別々に行ってもよい。同時に行う場合は、気体溶解部800とUFB生成部1000とを共に動作させながら液体を循環させる。この際、バルブ904は循環中に開放されていてもよいが、複数回の循環の後、UFB濃度センサが適切なUFB濃度を検出した際に開かれ、適量のUFB含有液を培養部600に送液する形態としてもよい。
一方、気体Gを溶解させる工程とUFBを生成する工程を別々に行う場合は、気体溶解部800のみを動作させる循環を行った後に、UFB生成部1000のみを動作させる循環を行えばよい。この場合、気体溶解部800のみを動作させる循環において、溶解度センサ805が適切な溶解度を検出したら、気体溶解部800を停止してUFB生成部1000の動作を開始すればよい。そして、UFB濃度センサ906が適切なUFB濃度を検出したら、バルブ904を開放して培養部600に液体を供給すればよい。
また、図17では、液体貯留部701に市販の培養液を貯留させ、この培養液中にT−UFBを生成する形態としたが、培養容器601に供給する培養液は、第1の実施形態で説明した方法で作成してもよい。具体的には、液体貯留部701には超純水を貯留し、収容室900と培養部600との間に市販の培養液とUFB含有液Wとを混合させるための混合部を設けてもよい。また、このような混合部は、気体溶解部800とUFB生成部1000の間や、UFB生成部1000と収容室900の間に設けてもよい。
図18は、培養装置の変形例を示す図である。図17で示した培養装置2000と異なる点は、培養部600を、循環経路の途中、具体的にはUFB生成部1000と収容室900との間に配していることである。本変形例の場合、収容室900に収容された液体Wは、気体溶解部800、UFB生成部1000、培養部600を経由して、再び収容室900に戻る。
培養部600では培養中のスフェロイドが酸素を消費するため、培養部600から送出される液体WのUFB濃度は、培養部600に供給される液体WのUFB濃度よりも減少していることが想定される。このような液体Wを、気体溶解部800及びUFB生成部1000を含む経路で再び循環させることにより、液体W中の酸素UFBの濃度を再び向上させることができる。その結果、培養部600に対しては、常に適切なUFB濃度の培養液を供給することが可能となる。
以上説明したように、気体溶解部800、UFB生成部1000、及び培養部600の間で液体を送液させる本実施形態の培養装置によれば、所望の大きさの3次元細胞を効率的に且つ多量に生産することが可能となる。
[第3の実施形態]
前述の第1及び第2の実施形態で示した3次元細胞の培養の他に、2次元細胞の培養においてもT−UFB含有液を用いることで、2次元細胞を効率的に且つ多量に生産することができる。UFB生成装置及びT−UFB生成方法については、前述の第1及び第2の実施形態と同様のものを用いることができる。
以下に、T−UFB含有液を用いた2次元細胞培養について、いくつかの実施例を挙げて具体的に説明する。
(実施例4)
皮膚の真皮内に含まれる繊維芽細胞の2次元培養について、以下に説明する。まず、フェノールレッド(PR)が含まれている液体培地であるDMEM(富士フィルム和光純薬社製)に動物血清(FBS:BioWest社製)をDMEMの含有量を基準として10質量%と、ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(抗生物質:富士フィルム和光純薬社製)をDMEMの含有量を基準として1質量%添加して培養液(培地)を作製する。この培養液を汎用のT型フラスコに入れて、次に、線維芽細胞を1,000個投入し、二酸化炭素インキュベーターで生細胞数を増加させた(継代工程)。二酸化炭素インキュベーター内は、細胞培養に適した温度である37℃とし、培地の蒸発を防ぐために湿度を90〜100%とし、pH調整のために二酸化炭素5%雰囲気下にしている。このような細胞培養を行うことによって、約1週間で細胞数が10,000個程に増加する。
次に、T型フラスコ内の細胞をかき集めて、1,000個ずつをマルチウェルプレート内に入れて、前記二酸化炭素インキュベーターにいれて、上記と同じ条件で約1週間細胞の2次元培養を実施した。
前述のような2次元細胞を実施すると、シート状の細胞が形成される。細胞数は、約10,000個程度であった。
次に、本発明の酸素UFBを含有した培養液を以下の方法で別途作製した。
前記培養液(DMEM、FBS10質量%、ペニシリン−ストレプトマイシン溶液1質量%)に酸素UFB(UFB濃度:10.0億個/ml)を含有させた。そして、前述のように二酸化炭素インキュベーターで線維芽細胞を増加させた。その結果、約2日間で10,000個に達した。培養液中の溶存酸素濃度が、過飽和な状態(10ppm)を2日間維持しており、二酸化炭素インキュベーター内での細胞に対して、常に酸素を供給し続けた結果と推察される。
(実施例5)
前述のように、T型フラスコ内の細胞をかき集めて、1,000個ずつの線維芽細胞をマルチウェルプレートに入れて、前記二酸化炭素インキュベーターで2次元細胞培養を実施した。その際に、培養液には、酸素UFB(UFB濃度:10億個/ml)を含有させた。その結果、2日間で10,000個のシート状の細胞が形成できた。前述と同様に、培養液中の溶存酸素濃度が、過飽和な状態(10ppm)を2日間維持しており、二酸化炭素インキュベーター内での細胞に対して、常に酸素を供給し続けた結果と推察される。
10 発熱素子
11 ウルトラファインバブル(UFB)
602 培養液
603 細胞(単細胞)

Claims (27)

  1. 発熱素子を発熱させて液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより生成されたウルトラファインバブルを含む培養液を用い、細胞を培養すること特徴とする培養方法。
  2. 前記ウルトラファインバブルには、酸素が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の培養方法。
  3. 前記ウルトラファインバブルには、二酸化炭素が更に含まれていることを特徴とする請求項2に記載の培養方法。
  4. 前記細胞は、スフェロイド及びオルガノイドの少なくとも一方の3次元細胞であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の培養方法。
  5. 前記細胞の培養に使用する前に、前記培養液に対しKHz帯からMKHz帯に含まれる超音波を与えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の培養方法。
  6. 細胞を培養するために用いられる培養液の製造方法であって、
    発熱素子を発熱させて液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより、前記液体中にウルトラファインバブルを生成するウルトラファインバブル生成工程と、
    前記ウルトラファインバブル生成工程で生成されたウルトラファインバブルを含有するウルトラファインバブル含有液と、所定の栄養分を含む液体とを混合させて前記培養液を生成する混合工程と
    を有することを特徴とする培養液の製造方法。
  7. 前記ウルトラファインバブル生成工程で使用される前記液体は、滅菌処理をした精製水であることを特徴とする請求項6に記載の培養液の製造方法。
  8. 細胞を培養するために用いられる培養液の製造方法であって、
    発熱素子を発熱させて、所定の栄養分を含む液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより、前記液体中にウルトラファインバブルを発生させてウルトラファインバブル含有液を生成するウルトラファインバブル生成工程を有することを特徴とする培養液の製造方法。
  9. 前記ウルトラファインバブル生成工程の前に、前記液体に所定の気体を溶解させる気体溶解工程を更に有することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の培養液の製造方法。
  10. 前記所定の気体は医療用ガスであることを特徴とする請求項9に記載の培養液の製造方法。
  11. 前記ウルトラファインバブル生成工程の後に、前記ウルトラファインバブル含有液に振動を与える振動工程を更に有することを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の培養液の製造方法。
  12. 前記振動は、KHz帯からMKHz帯に含まれる超音波であることを特徴とする請求項11に記載の培養液の製造方法。
  13. 細胞を培養するための培養液であって、
    発熱素子を発熱させて液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより生成されたウルトラファインバブルと、所定の栄養分とを含む培養液。
  14. 前記ウルトラファインバブルは、±0〜−30mVのゼータ電位を有することを特徴とする請求項13に記載の培養液。
  15. 前記ウルトラファインバブルが、複数の前記ウルトラファインバブルで構成される凝集体の単位で浮遊していることを特徴とする請求項14に記載の培養液。
  16. 前記凝集体は−60〜−100mVのゼータ電位を有することを特徴とする請求項15に記載の培養液。
  17. 前記培養液は、栄養分として液体培地を含むことを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の培養液。
  18. 前記液体培地は、アミノ酸類、無機塩類、及びビタミン類を含むことを特徴とする請求項17に記載の培養液。
  19. 前記ウルトラファインバブルには、酸素が含まれていることを特徴とする請求項13から18のいずれか1項に記載の培養液。
  20. 前記培養液中の溶存酸素が過飽和状態であることを特徴とする請求項19に記載の培養液。
  21. 前記培養液中の溶存酸素濃度が、8.0ppm以上であることを特徴とする請求項20に記載の培養液。
  22. 液体に所定の気体を溶解させる気体溶解手段と、
    発熱素子を発熱させて前記液体と前記発熱素子の界面に膜沸騰を生じさせることにより、前記液体中にウルトラファインバブルを生成させるウルトラファインバブル生成手段と、
    前記ウルトラファインバブルを含む液体を用いて細胞を培養する培養手段と、
    を備えることを特徴とする培養装置。
  23. 前記気体溶解手段で前記所定の気体が溶解され、前記ウルトラファインバブル生成手段で前記ウルトラファインバブルが生成された液体を、前記培養手段に供給するように、前記気体溶解手段、前記ウルトラファインバブル生成手段、及び前記培養手段の間で液体を送液する送液手段を更に備えることを特徴とする請求項22に記載の培養装置。
  24. 前記送液手段は、前記培養手段で使用された後の液体を外部に排出することを特徴とする請求項23に記載の培養装置。
  25. 前記送液手段は、前記培養手段で使用された後の液体を前記気体溶解手段に戻し、前記気体溶解手段、前記ウルトラファインバブル生成手段、及び前記培養手段の間で、液体を循環させることを特徴とする請求項23に記載の培養装置。
  26. 前記液体は培養に必要な所定の栄養分を含む液体であることを特徴とする請求項22から25のいずれか1項に記載の培養装置。
  27. 前記液体は滅菌処理をした精製水であり、
    前記液体に培養に必要な所定の栄養分を含む液体を混合させる混合手段を更に備えることを特徴とする請求項22から25のいずれか1項に記載の培養装置。
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