JP2021126647A - ウルトラファインバブル生成装置及びウルトラファインバブル生成ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能なUFB生成装置を提供する。【解決手段】オゾン水に膜沸騰を生じさせることにより、オゾンを含有するUFBを生成することが可能なUFB生成装置1000において、オゾン水に接触する接液部は、オゾン水に対し耐腐食性を有する材料で形成されている。【選択図】図13

Description

本発明は、直径が1.0μm未満のウルトラファインバブルを生成するウルトラファインバブル生成装置及びウルトラファインバブル生成ヘッドに関する。
近年、直径がマイクロメートルサイズのマイクロバブル、及び直径がナノメートルサイズのナノバブル等の微細なバブルの特性を応用する技術が開発されてきている。中でも、直径が1.0μm未満のウルトラファインバブル(Ultra Fine Bubble;以下、「UFB」ともいう)については、その有用性が様々な分野において確認されている。特に、オゾンのUFBを含むオゾンUFB含有水は、表面改質や殺菌、消毒などの用途に有用であり需要が高まりつつある。
特許文献1には、オゾンガスを溶解させた液体(以下、「オゾン水」ともいう)中に膜沸騰を生じさせることにより、安定性に優れたオゾンUFBを効率的に生成する方法および装置が開示されている。
特開2019−42732号公報
しかしながら、オゾン水を用いたUFB生成装置においては、オゾン水に接触する流路や基板などを構成する金属や有機物が腐食したり劣化したりするおそれがある。そして、腐食、劣化した材料が部材から離れ、UFB含有液中に不純物として混入してしまうと、生成されたオゾンUFB含有液の純度を下げ、品質を低下させてしまうことになる。
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能なUFB生成装置を提供することである。
そのために本発明は、
本発明によれば、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能なUFB生成装置を提供することができる。
UFB生成装置の一例を示す図である。 前処理ユニットの概略構成図である。 溶解ユニットの概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。 T−UFB生成ユニットの概略構成図である。 発熱素子の詳細を説明するための図である。 発熱素子における膜沸騰の様子を説明するための図である。 膜沸騰泡の膨張に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。 膜沸騰泡の収縮に伴ってUFBが生成される様子を示す図である。 液体の再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。 膜沸騰で生成される泡の消泡時の衝撃波によってUFBが生成される様子を示す図である。 飽和溶解度の変化によってUFBが生成される様子を示す図である。 後処理ユニットの構成例を示す図である。 オゾンUFB生成装置のユニット構成を示す図である。 第1の実施形態のUFB生成ヘッドの分解斜視図である。 第1の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。 第2の実施形態のUFB生成ヘッドの分解斜視図である。 第2の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。 第3の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。 第4の実施形態のUFB生成ヘッドの分解斜視図である。 第4の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。 第4の実施形態の流路部材の作製方法を説明するための図である。 材料の腐食劣化の程度を比較した結果を示す図である。 第5の実施形態のUFB生成ヘッドの分解斜視図である。 第5の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。 第6の実施形態のUFB生成ヘッドの分解斜視図である。 第6の実施形態のUFB生成ヘッドの断面図である。
<<UFB生成方法の概略>>
以下、膜沸騰現象を利用するUFB生成装置の概略について説明する。
図1は、本発明に適用可能なUFB生成装置の一例を示す図である。UFB生成装置1は、前処理ユニット100、溶解ユニット200、T−UFB生成ユニット300、後処理ユニット400、及び回収ユニット500を含む。前処理ユニット100に供給された水道水などの液体Wは、上記の順番で各ユニット固有の処理が施され、T−UFB含有液として回収ユニット500で回収される。以下、各ユニットの機能及び構成について説明する。詳細は後述するが、本明細書では急激な発熱に伴う膜沸騰を利用して生成したUFBをT−UFB(Thermal−Ultra Fine Bubble)と称す。
図2は、前処理ユニット100の概略構成図である。前処理ユニット100は、供給された液体Wに対し脱気処理を行う。前処理ユニット100は、主に、脱気容器101、シャワーヘッド102、減圧ポンプ103、液体導入路104、液体循環路105、液体導出路106を有する。例えば水道水のような液体Wは、バルブ109を介して、液体導入路104から脱気容器101に供給される。この際、脱気容器101に設けられたシャワーヘッド102が、液体Wを霧状にして脱気容器101内に噴霧する。シャワーヘッド102は、液体Wの気化を促すためのものであるが、気化促進効果を生み出す機構としては、遠心分離器なども代替可能である。
ある程度の液体Wが脱気容器101に貯留された後、全てのバルブを閉じた状態で減圧ポンプ103を作動させると、既に気化している気体成分が排出されるとともに、液体Wに溶解している気体成分の気化と排出も促される。この際、脱気容器101の内圧は、圧力計108を確認しながら数百〜数千Pa(1.0Torr〜10.0Torr)程度に減圧されればよい。脱気ユニット100によって脱気される気体としては、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などが含まれる。
以上説明した脱気処理は、液体循環路105を利用することにより、同じ液体Wに対して繰り返し行うことができる。具体的には、液体導入路104のバルブ109と液体導出路106のバルブ110を閉塞し、液体循環路105のバルブ107を開放した状態で、シャワーヘッド102を作動させる。これにより、脱気容器101に貯留され、脱気処理が一度行われた液体Wは、再びシャワーヘッド102を介して脱気容器101に噴霧される。更に、減圧ポンプ103を作動させることにより、シャワーヘッド102による気化処理と減圧ポンプ103による脱気処理が、同じ液体Wに対し重ねて行われることになる。そして、液体循環路105を利用した上記繰り返し処理を行う度に、液体Wに含まれる気体成分を段階的に減少させていくことができる。所望の純度に脱気された液体Wが得られると、バルブ110を開放することにより、液体Wは液体導出路106を経て溶解ユニット200に送液される。
なお、図2では、気体部を低圧にして溶解物を気化させる脱気ユニット100を示したが、溶解した液体を脱気させる方法はこれに限らない。例えば、液体Wを煮沸して溶解物を気化させる加熱煮沸法を採用してもよいし、中空糸を用いて液体と気体の界面を増大させる膜脱気方法を採用してもよい。中空糸を用いた脱気モジュールとしては、SEPARELシリーズ(大日本インキ社製)が市販されている。これは、中空糸膜の原料にポリ4−メチルペンテン−1(PMP)を用いて、主にピエゾヘッド向けに供給するインクなどから気泡を脱気する目的で使用されている。更に、真空脱気法、加熱煮沸法、及び膜脱気方法の2つ以上を併用してもよい。
図3(a)及び(b)は、溶解ユニット200の概略構成図及び液体の溶解状態を説明するための図である。溶解ユニット200は、前処理ユニット100より供給された液体Wに対し所望の気体を溶解させるユニットである。溶解ユニット200は、主に、溶解容器201、回転板202が取り付けられた回転シャフト203、液体導入路204、気体導入路205、液体導出路206、及び加圧ポンプ207を有する。
前処理ユニット100より供給された液体Wは、液体導入路204より、溶解容器201に供給され貯留される。一方、気体Gは気体導入路205より溶解容器201に供給される。
所定量の液体Wと気体Gが溶解容器201に貯留されると、加圧ポンプ207を作動し溶解容器201の内圧を0.5Mpa程度まで上昇させる。加圧ポンプ207と溶解容器201の間には安全弁208が配されている。また、回転シャフト203を介して液中の回転板202を回転させることにより、溶解容器201に供給された気体Gを気泡化し、液体Wとの接触面積を大きくし、液体W中への溶解を促進する。そしてこのような作業を、気体Gの溶解度がほぼ最大飽和溶解度に達するまで継続する。この際、可能な限り多くの気体を溶解させるために、液体の温度を低下させる手段を配してもよい。また、難溶解性の気体の場合は、溶解容器201の内圧を0.5MPa以上に上げる事も可能である。その場合は、安全面から容器の材料などを最適にする必要がある。
気体Gの成分が所望の濃度で溶解された液体Wが得られると、液体Wは液体導出路206を経由して排出され、T−UFB生成ユニット300に供給される。この際、背圧弁209は、供給時の圧力が必要以上に高くならないように液体Wの流圧を調整する。
図3(b)は、溶解容器201で混入された気体Gが溶解していく様子を模式的に示す図である。液体W中に混入された気体Gの成分を含む気泡2は、液体Wに接触している部分から溶解する。このため、気泡2は徐々に収縮し、気泡2の周囲には気体溶解液体3が存在する状態となる。気泡2には浮力が作用するため、気泡2は気体溶解液体3の中心から外れた位置に移動したり、気体溶解液体3から分離して残存気泡4となったりする。すなわち、液体導出路206を介してT−UFB生成ユニット300に供給される液体Wには、気体溶解液体3が気泡2を囲った状態のものや、気体溶解液体3と気泡2が互いに分離した状態のものが混在している。
なお、図において気体溶解液体3とは、「液体W中において、混入された気体Gの溶解濃度が比較的高い領域」を意味している。実際に液体Wに溶解している気体成分においては、気泡2の周囲や、気泡2と分離した状態であっても領域の中心で濃度が最も高く、その位置から離れるほど気体成分の濃度は連続的に低くなる。すなわち、図3(b)では説明のために気体溶解液体3の領域を破線で囲っているが、実際にはこのような明確な境界が存在するわけではない。また、本発明においては、完全に溶解しない気体が、気泡の状態で液体中に存在しても許容される。
図4は、T−UFB生成ユニット300の概略構成図である。T−UFB生成ユニット300は、主に、チャンバー301、液体導入路302、液体導出路303を備え、液体導入路302からチャンバー301内を経て液体導出路303に向かう流れが、不図示の流動ポンプによって形成されている。流動ポンプとしては、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプなど各種ポンプを採用することができる。液体導入路302から導入される液体Wには、溶解ユニット200によって混入された気体Gの気体溶解液体3が混在している。
チャンバー301の底面には発熱素子10が設けられた素子基板12が配されている。発熱素子10に所定の電圧パルスが印加されることにより、発熱素子10に接触する領域に膜沸騰により生じる泡13(以下、膜沸騰泡13ともいう)が発生する。そして、膜沸騰泡13の膨張や収縮に伴って気体Gを含有するウルトラファインバブル(UFB11)が生成される。その結果、液体導出路303からは多数のUFB11が含まれたUFB含有液Wが導出される。
図5(a)及び(b)は、発熱素子10の詳細構造を示す図である。図5(a)は発熱素子10の近傍、同図(b)は発熱素子10を含むより広い領域の素子基板12の断面図をそれぞれ示している。
図5(a)に示すように、素子基板12は、シリコン基板304の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜305と、蓄熱層を兼ねる層間膜306と、が積層されている。層間膜306としては、SiO2膜、または、SiN膜を用いることができる。層間膜306の表面には抵抗層307が形成され、その抵抗層307の表面に、配線308が部分的に形成されている。配線308としては、Al、Al−Si、またはAl−CuなどのAl合金配線を用いることができる。これらの配線308、抵抗層307、及び、層間膜306の表面には、SiO2膜、またはSi34膜から成る保護層309が形成されている。
保護層309の表面において、結果的に発熱素子10となる熱作用部311に対応する部分、及び、その周囲には、抵抗層307の発熱に伴う化学的、及び物理的な衝撃から保護層309を保護するための耐キャビテーション膜310が形成されている。抵抗層307の表面において、配線308が形成されていない領域は、抵抗層307が発熱する熱作用部311である。配線308が形成されていない抵抗層307の発熱部分は、発熱素子(ヒータ)10として機能する。このように素子基板12における層は、半導体の製造技術によってシリコン基板304の表面に順次に形成され、これにより、シリコン基板304に熱作用部311が備えられる。
なお、図に示す構成は一例であり、その他の各種構成が適用可能である。例えば、抵抗層307と配線308との積層順が逆の構成、及び抵抗層307の下面に電極を接続させる構成(所謂プラグ電極構成)が適用可能である。つまり、後述するように、熱作用部311により液体を加熱して、液体中に膜沸騰を生じさせることができる構成であればよい。
図5(b)は、素子基板12において、配線308に接続される回路を含む領域の断面図の一例である。P型導電体であるシリコン基板304の表層には、N型ウェル領域322、及び、P型ウェル領域323が部分的に備えられている。一般的なMOSプロセスによるイオンインプランテーションなどの不純物の導入、及び拡散によって、N型ウェル領域322にP−MOS320が形成され、P型ウェル領域323にN−MOS321が形成される。
P−MOS320は、N型ウェル領域322の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くN型ウェル領域322の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
N−MOS321は、P型ウェル領域323の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域325及びドレイン領域326と、ゲート配線335などから構成されている。ゲート配線335は、ソース領域325及びドレイン領域326を除くP型ウェル領域323の部分の表面に、厚さ数百Åのゲート絶縁膜328を介して堆積されている。ゲート配線335は、CVD法により堆積された厚さ3000Å〜5000Åのポリシリコンからなる。これらのP−MOS320及びN−MOS321によって、C−MOSロジックが構成される。
P型ウェル領域323において、N−MOS321と異なる部分には、電気熱変換素子(発熱抵抗素子)の駆動用のN−MOSトランジスタ330が形成されている。N−MOSトランジスタ330は、不純物の導入及び拡散などの工程によりP型ウェル領域323の表層に部分的に形成されたソース領域332及びドレイン領域331と、ゲート配線333などから構成されている。ゲート配線333は、P型ウェル領域323におけるソース領域332及びドレイン領域331を除く部分の表面に、ゲート絶縁膜328を介して堆積されている。
本例においては、電気熱変換素子の駆動用トランジスタとして、N−MOSトランジスタ330を用いた。しかし、その駆動用トランジスタは、複数の電気熱変換素子を個別に駆動する能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであればよく、N−MOSトランジスタ330には限定されない。また本例においては、電気熱変換素子と、その駆動用トランジスタと、が同一基板上に形成されているが、これらは、別々の基板に形成してもよい。
P−MOS320とN−MOS321との間、及びN−MOS321とN−MOSトランジスタ330との間等の各素子間には、5000Å〜10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域324が形成されている。この酸化膜分離領域324によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域324において、熱作用部311に対応する部分は、シリコン基板304上の一層目の蓄熱層334として機能する。
P−MOS320、N−MOS321、及びN−MOSトランジスタ330の各素子の表面には、CVD法により、厚さ約7000ÅのPSG膜、またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜336が形成されている。層間絶縁膜336を熱処理により平坦にした後に、層間絶縁膜336及びゲート絶縁膜328を貫通するコンタクトホールを介して、第1の配線層となるAl電極337が形成される。層間絶縁膜336及びAl電極337の表面には、プラズマCVD法により、厚さ10000Å〜15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜338が形成される。層間絶縁膜338の表面において、熱作用部311及びN−MOSトランジスタ330に対応する部分には、コスパッタ法により、厚さ約500ÅのTaSiN膜から成る抵抗層307が形成される。抵抗層307は、層間絶縁膜338に形成されたスルーホールを介して、ドレイン領域331の近傍のAl電極337と電気的に接続される。抵抗層307の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としてのAlの配線308が形成される。配線308、抵抗層307、及び層間絶縁膜338の表面の保護層309は、プラズマCVD法により形成された厚さ3000ÅのSiN膜から成る。保護層309の表面に堆積された耐キャビテーション膜310は、Ta、Fe,Ni,Cr,Ge,Ru,Zr,Ir等から選択される少なくとも1つ以上の金属であり、厚さ約2000Åの薄膜から成る。抵抗層307としては、上述したTaSiN以外のTaN0.8、CrSiN、TaAl、WSiN等、液体中に膜沸騰を生じさせることができるものであれば各種材料が適用可能である。
図6(a)及び(b)は、発熱素子10に所定の電圧パルスを印加した場合の膜沸騰の様子を示す図である。ここでは、大気圧のもとでの膜沸騰を生じさせた場合を示している。図6(a)において、横軸は時間を示す。また、下段のグラフの縦軸は発熱素子10に印加される電圧を示し、上段のグラフの縦軸は膜沸騰により発生した膜沸騰泡13の体積と内圧を示す。一方、図6(b)は、膜沸騰泡13の様子を、図6(a)に示すタイミング1〜3に対応づけて示している。以下、時間に沿って各状態を説明する。尚、後述するように膜沸騰によって発生したUFB11は主として膜沸騰泡13の表面近傍に発生する。図6(b)に示す状態は、図1で示したように、生成ユニット300で発生したUFB11から循環経路を介して溶解ユニット200に再度供給され、その液体が生成ユニット300の液路に再度供給された状態を示す。
発熱素子10に電圧が印加される前、チャンバー301内はほぼ大気圧が保たれている。発熱素子10に電圧が印加されると、発熱素子10に接する液体に膜沸騰が生じ、発生した気泡(以下、膜沸騰泡13と称す)は内側から作用する高い圧力によって膨張する(タイミング1)。このときの発泡圧力は約8〜10MPaとみなされ、これは水の飽和蒸気圧に近い値である。
電圧の印加時間(パルス幅)は0.5μsec〜10.0μsec程度であるが、電圧が印加されなくなった後も、膜沸騰泡13はタイミング1で得られた圧力の慣性によって膨張する。但し、膜沸騰泡13の内部では膨張に伴って発生した負圧力が徐々に大きくなり、膜沸騰泡13を収縮する方向に作用する。やがて慣性力と負圧力が釣り合ったタイミング2で膜沸騰泡13の体積は最大となり、その後は負圧力によって急速に収縮する。
膜沸騰泡13が消滅する際、膜沸騰泡13は発熱素子10の全面ではなく、1箇所以上の極めて小さな領域で消滅する。このため、発熱素子10においては、膜沸騰泡13が消滅する極めて小さな領域に、タイミング1で示す発泡時よりも更に大きな力が発生する(タイミング3)。
以上説明したような膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅は、発熱素子10に電圧パルスが印加されるたびに繰り返され、そのたびに新たなUFB11が生成される。
次に図7〜図10を用いて、膜沸騰泡13の発生、膨張、収縮及び消滅の各過程において、UFB11が生成される様子を更に詳しく説明する。
図7(a)〜(d)は、膜沸騰泡13の発生及び膨張に伴ってUFB11が生成される様子を模式的に示す図である。図7(a)は、発熱素子10に電圧パルスが印加される前の状態を示している。チャンバー301の内部には、気体溶解液体3が混在した液体Wが流れている。
図7(b)は、発熱素子10に電圧が印加され、液体Wに接している発熱素子10のほぼ全域で膜沸騰泡13が一様に発生した様子を示している。電圧が印加されたとき、発熱素子10の表面温度は10℃/μsec以上の速度で急激に上昇し、ほぼ300℃に達した時点で膜沸騰が起こり、膜沸騰泡13が生成される。
発熱素子10の表面温度は、その後もパルスの印加中に600〜800℃程度まで上昇し、膜沸騰泡13の周辺の液体も急激に加熱される。図では、膜沸騰泡13の周辺に位置し、急激に(100μS以下)加熱される液体の領域を未発泡高温領域14として示している。未発泡高温領域14に含まれる気体溶解液体3は熱的溶解限界を超えてほぼ同時に析出しUFBとなる。析出した気泡の直径は10nm〜100nm程度であり、高い気液界面エネルギを有している。また、気泡同士の間には液体が介在する。そのため、短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。このように膜沸騰泡13の発生から膨張時に熱的作用によって生成される気泡を第1のUFB11Aと称す。
図7(c)は、膜沸騰泡13が膨張する過程を示している。発熱素子10への電圧パルスの印加が終了しても、膜沸騰泡13は発生したときに得た力の慣性によって膨張を続け、未発泡高温領域14も慣性によって移動及び拡散する。すなわち、膜沸騰泡13が膨張する過程において、未発泡高温領域14に含まれた気体溶解液体3が新たに気泡となって析出し、第1のUFB11Aとなる。
図7(d)は、膜沸騰泡13が最大体積となった状態を示している。膜沸騰泡13は慣性によって膨張するが、膨張に伴って膜沸騰泡13の内部の負圧は徐々に高まり、膜沸騰泡13を収縮しようとする負圧力として作用する。そして、この負圧力が慣性力と釣り合った時点で、膜沸騰泡13の体積は最大となり、以後収縮に転じる。
膜沸騰泡13の収縮段階においては、図8(a)〜(c)に示す過程により発生するUFB(第2のUFB11B)と、図9(a)〜(c)に示す過程により発生するUFB(第3のUFB)とがある。これら2つの過程は併存しておきていると考えられる。
図8(a)〜(c)は、膜沸騰泡13の収縮に伴ってUFB11が生成される様子を示す図である。図8(a)は、膜沸騰泡13が収縮を開始した状態を示している。膜沸騰泡13が収縮を開始しても、周囲の液体Wには膨張する方向の慣性力が残っている。よって、膜沸騰泡13の極周囲には、発熱素子10から離れる方向に作用する慣性力と、膜沸騰泡13の収縮に伴って発熱素子10に向かう力とが作用し、減圧された領域となる。図では、そのような領域を未発泡負圧領域15として示している。
未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、圧的溶解限界を超え、気泡として析出する。析出した気泡の直径は100nm程度であり、その後短時間で消滅することもなく液体W内で独立を保ながら浮遊する。このように膜沸騰泡13が収縮する際の圧力的作用によって析出する気泡を、第2のUFB11Bと称す。
図8(b)は、膜沸騰泡13が収縮する過程を示している。膜沸騰泡13が収縮する速度は負圧力によって加速し、未発泡負圧領域15も膜沸騰泡13の収縮に伴って移動する。すなわち、膜沸騰泡13が収縮する過程において、未発泡負圧領域15が通過する箇所の気体溶解液体3が次々に析出し、第2のUFB11Bとなる。
図8(c)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13の加速度的な収縮により、周囲の液体Wの移動速度も増大するが、チャンバー301内の流路抵抗によって圧力損失が生じる。その結果、未発泡負圧領域15が占める領域は更に大きくなり、多数の第2のUFB11Bが生成される。
図9(a)〜(c)は、膜沸騰泡13の収縮時において、液体Wの再加熱によってUFBが生成される様子を示す図である。図9(a)は、発熱素子10の表面が収縮する膜沸騰泡13に被覆されている状態を示している。
図9(b)は、膜沸騰泡13の収縮が進み、発熱素子10の表面の一部が液体Wに接触した状態を示している。このとき発熱素子10の表面には、液体Wが接しても膜沸騰には到らないほどの熱が残っている。図では、発熱素子10の表面に接することにより加熱される液体の領域を未発泡再加熱領域16として示している。膜沸騰には到らないものの、未発泡再加熱領域16に含まれる気体溶解液体3は、熱的溶解限界を超えて析出する。このように膜沸騰泡13が収縮する際の液体Wの再加熱によって生成される気泡を第3のUFB11Cと称す。
図9(c)は、膜沸騰泡13の収縮が更に進んだ状態を示している。膜沸騰泡13が小さくなるほど、液体Wに接する発熱素子10の領域が大きくなるため、第3のUFB11Cは、膜沸騰泡13が消滅するまで生成される。
図10(a)および(b)は、膜沸騰で生成された膜沸騰泡13の消泡時の衝撃(所謂、キャビテーションの一種)によって、UFBが生成される様子を示す図である。図10(a)は、膜沸騰泡13が消滅する直前の様子を示している。膜沸騰泡13は内部の負圧力によって急激に収縮し、その周囲を未発泡負圧領域15が覆う状態となっている。
図10(b)は、膜沸騰泡13が点Pで消滅した直後の様子を示している。膜沸騰泡13が消泡するとき、その衝撃により音響波が点Pを起点として同心円状に広がる。音響波とは、気体、液体、固体を問わず伝播する弾性波の総称であり、液体Wの粗密、すなわち液体Wの高圧面17Aと低圧面17B、とが交互に伝播される。
この場合、未発泡負圧領域15に含まれる気体溶解液体3は、膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波によって共振され、低圧面17Bが通過するタイミングで圧的溶解限界を超えて相転移する。すなわち、膜沸騰泡13の消滅と同時に、未発泡負圧領域15内には多数の気泡が析出する。このような膜沸騰泡13が消泡する時の衝撃波によって生成される気泡を第4のUFB11Dと称す。
膜沸騰泡13の消泡時の衝撃波よって生成される第4のUFB11Dは、極めて狭い薄膜的領域に極めて短時間(1μS以下)で突発的に出現する。直径は第1〜第3のUFBよりも十分小さく、第1〜第3のUFBよりも気液界面エネルギが高い。このため、第4のUFB11Dは、第1〜第3のUFB11A〜11Cとは異なる性質を有し異なる効果を生み出すものと考えられる。
また、第4のUFB11Dは、衝撃波が伝播する同心球状の領域のいたる所で一様に発生するため、生成された時点からチャンバー301内に一様に存在することになる。第4のUFB11Dが生成されるタイミングでは、第1〜第3のUFBが既に多数存在しているが、これら第1〜第3のUFBの存在が第4のUFB11Dの生成に大きく影響することはない。また、第4のUFB11Dの発生によって第1〜第3のUFBが消滅することもないと考えられる。
図11(a)および(b)は、液体Wの飽和溶解度の変化によってUFBが生成される様子を示す図である。図11(a)は、膜沸騰泡13が生成された状態を示している。膜沸騰泡13の生成に伴い周囲の液体Wも加熱され、膜沸騰泡13の周囲には他の領域よりも温度が高い高温領域19が形成される。液体Wの飽和溶解度は、液体の温度が高くなるほど低くなるため、高温領域19の飽和溶解度は他の領域よりも低くなり、気体に相転移しやすい過飽和状態となる。そして、このような過飽和状態にある気体溶解液体3が、膜沸騰泡13に接触することによって相転移し、UFBとなって析出する。図において、矢印は気体溶解液体3が析出する方向を示す。このように膜沸騰泡13の周辺の飽和溶解度の変化によって生成される気泡を第5のUFB11Eと称す。
図11(b)は、膜沸騰泡13が消泡した状態を示している。膜沸騰泡13に接触することによって生成された第5のUFB11Eは、膜沸騰泡13の消泡と共に発熱素子10の方向に引き寄せられ、膜沸騰泡13が占有していた領域13´には液体Wが満たされる。析出したUFBのうち液体Wに再溶解しなかったものが、第5のUFB11Eとして残存する。
以上説明したように発熱素子10の発熱により膜沸騰泡13が発生し消泡するまでの複数の段階においてUFB11が発生すると想定される。第1のUFB11A、第2のUFB11B、第3のUFB11C及び第5のUFB11Eは、膜沸騰により発生する膜沸騰泡の表面の近傍に発生する。ここで近傍とは膜沸騰泡の表面から約20μm以内の領域である。第4のUFB11Dは、気泡が消泡(消滅)する際に発生する衝撃波が伝搬する領域に発生する。上述した例では膜沸騰泡13が消泡するまでの例を示したがUFBを発生させるためにはこれに限られない。例えば、発生した膜沸騰泡13が消泡する前に大気と連通することで、膜沸騰泡13が消耗まで至らない場合においてもUFBの生成が可能である。
次にUFBの残存特性について説明する。液体の温度が高いほど気体成分の溶解特性は低くなり、温度が低いほど気体成分の溶解特性は高くなる。すなわち、液体の温度が高いほど、溶解している気体成分の相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の温度と気体の溶解度は反比例の関係にあり、液体の温度上昇により、飽和溶解度を超えた気体が気泡になって液体中に析出される。
このため、液体の温度が常温から急激に上昇すると溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、温度が上がるほど熱的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の温度が常温から下降すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような温度は、常温よりも十分に低い。更に、液体の温度が下がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
以上において、図7(a)〜(c)で説明した第1のUFB11A、図9(a)〜(c)で説明した第3のUFB11C、及び図11(a)〜(b)で説明した第5のUFB11Eは、このような気体の熱的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
一方、液体の圧力と溶解特性の関係においては、液体の圧力が高いほど気体の溶解特性は高くなり、圧力が低いほど溶解特性は低くなる。すなわち液体の圧力が低いほど、液体に溶解している気体溶解液体の気体への相転移が促され、UFBが生成されやすくなる。液体の圧力が常圧から下がると、溶解特性が一気に下がり、UFBが生成され始める。そして、圧力が下がるほど圧的溶解特性は下がり、多くのUFBが生成される状況となる。
反対に液体の圧力が常圧から上昇すると、気体の溶解特性は上昇し、生成されたUFBは液化しやすくなる。しかしながら、このような圧力は、大気圧よりも十分に高く、更に、液体の圧力が上がっても、一度発生したUFBは高い内圧と高い気液界面エネルギを有するため、この気液界面を破壊するほどの高い圧力が作用する可能性は極めて低い。すなわち、一度生成されたUFBは、液体を常温常圧で保存する限り、簡単に消滅することはない。
以上において、図8(a)〜(c)で説明した第2のUFB11B、及び図10(a)〜(c)で説明した第4のUFB11Dは、このような気体の圧力的溶解特性を利用して生成されたUFBと言える。
以上では、生成される要因の異なる第1〜第4のUFBを個別に説明してきたが、上述した生成要因は、膜沸騰という事象に伴って同時多発的に起こるものである。このため、第1〜第4のUFBのうち少なくとも2種類以上のUFBが同時に生成されることもあり、これら生成要因が互いに協働してUFBを生成することもある。但し、いずれの生成要因も、膜沸騰現象で生成される膜沸騰泡の体積変化に伴って招致されることは共通している。本明細書では、このように急激な発熱に伴う膜沸騰を利用してUFBを生成する方法を、T−UFB(Thermal−Ultra Fine Bubble)生成方法と称す。また、T−UFB生成方法によって生成したUFBをT−UFB、T−UFB生成方法によって生成されたT−UFBを含有する液体をT−UFB含有液と称す。
T−UFB生成方法によって生成される気泡はその殆どが1.0μm以下であり、ミリバブルやマイクロバブルは生成され難い。すなわち、T−UFB生成方法によれば、UFBが支配的に、かつ、効率的に生成されることになる。また、T−UFB生成方法によって生成されたT−UFBは、従来法によって生成されたUFBよりも高い気液界面エネルギを有し、常温常圧で保存する限り簡単に消滅することはない。更に、新たな膜沸騰によって新たなT−UFBが生成されても、先行して生成されていたT−UFBがその衝撃によって消滅することも抑制される。つまり、T−UFB含有液に含まれるT−UFBの数や濃度は、T−UFB含有液における膜沸騰の発生回数に対しヒステリシス特性を有すると言える。言い替えると、T−UFB生成ユニット300に配する発熱素子の数や発熱素子に対する電圧パルスの印加回数を制御することにより、T−UFB含有液に含まれるT−UFBの濃度を調整することができる。
再び図1を参照する。T−UFB生成ユニット300において、所望のUFB濃度を有するT−UFB含有液Wが生成されると、当該UFB含有液Wは、後処理ユニット400に供給される。
図12(a)〜(c)は、後処理ユニット400の構成例を示す図である。後処理ユニット400は、UFB含有液Wに含まれる不純物を、無機物イオン、有機物、不溶固形物、の順に段階に除去する。
図12(a)は、無機物イオンを除去するための第1の後処理機構410を示す。第1の後処理機構410は、交換容器411、陽イオン交換樹脂412、液体導入路413、集水管414及び液体導出路415を備えている。交換容器411には、陽イオン交換樹脂412が収容されている。T−UFB生成ユニット300で生成されたUFB含有液Wは、液体導入路413を経由して交換容器411に注入され、陽イオン交換樹脂412に吸収され、ここで不純物としての陽イオンが除去される。このような不純物には、T−UFB生成ユニット300の素子基板12より剥離した金属材料などが含まれ、例えばSiO2、SiN、SiC、Ta、Al23、Ta25、Irが挙げられる。
陽イオン交換樹脂412は、三次元的な網目構造を持った高分子母体に官能基(イオン交換基)を導入した合成樹脂であり、合成樹脂は0.4〜0.7mm程度の球状粒子を呈している。高分子母体としては、スチレン−ジビニルベンゼンの共重合体が一般的であり、官能基としては例えばメタクリル酸系とアクリル酸系のものを用いることができる。但し、上記材料は一例である。所望の無機イオンを効果的に除去することができれば、上記材料は様々に変更可能である。陽イオン交換樹脂412に吸収され、無機イオンが除去されたUFB含有液Wは、集水管414によって集水され、液体導出路415を介して次の工程に送液される。尚、本工程おいて、液体導入路413から供給されるUFB含有液W内に含まれる全ての無機イオンが除去される必要はなく、少なくとも一部の無機イオンが除去されれば良い。
図12(b)は、有機物を除去するための第2の後処理機構420を示す。第2の後処理機構420は、収容容器421、ろ過フィルタ422、真空ポンプ423、バルブ424、液体導入路425、液体導出路426、及びエア吸引路427を備えている。収容容器421の内部は、ろ過フィルタ422によって上下2つの領域に分割されている。液体導入路425は、上下2つの領域のうち上方の領域に接続し、エア吸引路427及び液体導出路426は下方の領域に接続する。バルブ424を閉じた状態で真空ポンプ423を駆動すると、収容容器421内の空気がエア吸引路427を介して排出され、収容容器421の内部が負圧になり、液体導入路425よりUFB含有液Wが導入される。そして、ろ過フィルタ422によって不純物が除去された状態のUFB含有液Wが収容容器421に貯留される。
ろ過フィルタ422によって除去される不純物には、チューブや各ユニットで混合され得る有機材料が含まれ、例えばシリコンを含む有機化合物、シロキサン、エポキシなどが挙げられる。ろ過フィルタ422に使用可能なフィルタ膜としては、細菌系まで除去できるサブμmメッシュのフィルタ(1μm以下のメッシュ径を備えるフィルタ)や、ウィルスまで除去できるnmメッシュのフィルタが挙げられる。このような微細な開口径を備えるろ過フィルタにおいては、フィルタの開口径よりも大きな気泡も除去対象となり得る。特に微細な気泡はフィルタの開口(メッシュ)に吸着するとフィルタの目詰まりとなり、ろ過速度が低減する場合がある。しかしながら上述したように、上記T−UFB生成方法によって生成される気泡はその殆どが1.0μm以下の径を備える大きさであり、1.0μmより大きい、ミリバブルやマイクロバブルは生成され難い。つまりミリバブルやマイクロバブルの生成率が非常に小さいため、フィルタに気泡が吸着することによるろ過速度の低下を抑制できる。よって、T−UFB生成方法を備えるシステムに、1μm以下のメッシュ径を備えるフィルタを備えるろ過フィルタ422を好適に適用することができる。
本実施形態に適用可能なろ過方式の一例として、所謂、デッドエンドろ過方式と、クロスフローろ過方式がある。デッドエンドろ過方式は、供給液の流れ方向とフィルタ開口を通過するろ過液の流れ方向とが同じ方向、つまり互い沿った方向に流れるものである。それに対してクロスフローろ過方式は、供給液の流れがフィルタ面に沿った方向に流れる、つまり供給液の流れとフィルタ開口を通過するろ過液の流れが交差する方向に流れる。フィルタ開口に対する気泡の吸着を抑制するためにはクロスフローろ過方式の適用が好ましい。
収容容器421にUFB含有液Wがある程度貯留された後、真空ポンプ423を停止してバルブ424を開放すると、収容容器421のT−UFB含有液は液体導出路426を介して次の工程に送液される。なお、ここでは、有機物の不純物を除去する方法として真空ろ過法を採用したが、フィルタを用いたろ過方法としては、例えば重力ろ過法や加圧ろ過を採用することもできる。
図12(c)は、不溶の固形物を除去するための第3の後処理機構430を示す。第3の後処理機構430は、沈殿容器431、液体導入路432、バルブ433及び液体導出路434を備えている。
まず、バルブ433を閉じた状態で沈殿容器431に所定量のUFB含有液Wを液体導入路432より貯留し、しばらく放置する。この間、UFB含有液Wに含まれている固形物は、重力によって沈殿容器431の底部に沈降する。また、UFB含有液に含まれるバブルのうち、マイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルも浮力によって液面に浮上し、UFB含有液から除去される。十分な時間が経過した後バルブ433を開放すると、固形物や大きなサイズのバブルが除去されたUFB含有液Wが液体導出路434を介して、回収ユニット500に送液される。以上では3つの後処理機構を順に適用する例を示したが、これに限られず、3つの後処理機構の順序を変更してもよく、また、必要に応じた後処理機構を少なくとも1つ採用しても良い。
再度図1を参照する。後処理ユニット400で不純物が除去されたT−UFB含有液Wは、そのまま回収ユニット500に送液してもよいが、再び溶解ユニット200に戻すこともできる。後者の場合、T−UFBの生成によって低下したT−UFB含有液Wの気体溶解濃度を、溶解ユニット200において再び飽和状態まで補填することができる。その上で新たなT−UFBをT−UFB生成ユニット300で生成すれば、上述した特性のもと、T−UFB含有液のUFB含有濃度を更に上昇させることができる。すなわち、溶解ユニット200、T−UFB生成ユニット300、後処理ユニット400を巡る循環回数の分だけ、UFB含有濃度を高めることができ、所望のUFB含有濃度が得られた後に、当該UFB含有液Wを回収ユニット500に送液することができる。以上では、後処理ユニット400で処理したUFB含有液を溶解ユニット200に戻して循環する形態を示した。しかし、これに限られず、例えばT−UFB生成ユニットを経由した後に後処理ユニット400に供給する前に、再度溶解ユニット200に液体を戻し複数回の循環を行いT−UFB濃度を高めた後に、後処理ユニット400で後処理を行ってもよい。
回収ユニット500は、後処理ユニット400より送液されて来たUFB含有液Wを回収及び保存する。回収ユニット500で回収されたT−UFB含有液は、様々な不純物が除去された純度の高いUFB含有液となる。
回収ユニット500においては、何段階かのフィルタリング処理を行い、UFB含有液WをT−UFBのサイズごと分類してもよい。また、T−UFB方式により得られるT−UFB含有液Wは、常温よりも高温であることが予想されるため、回収ユニット500には冷却手段を設けてもよい。なお、このような冷却手段は、後処理ユニット400の一部に設けられていてもよい。
以上が、UFB生成装置1の概略であるが、図示したような複数のユニットは無論変更可能であり、全てを用意する必要は無い。使用する液体Wや気体Gの種類、また生成するT−UFB含有液の使用目的に応じて、上述したユニットの一部を省略してもよいし、上述したユニット以外に更に別のユニットを追加してもよい。
例えば、UFBに含有させる気体が大気である場合は、前処理ユニットとしての脱気ユニット100や溶解ユニット200を省略することができる。反対に、UFBに複数種類の気体を含ませたい場合は、溶解ユニット200を更に追加してもよい。
また、図12(a)〜(c)で示すような不純物を除去するためのユニットは、T−UFB生成ユニット300よりも上流に設けてもよいし、上流と下流の両方に設けてもよい。UFB生成装置に供給される液体が水道水や雨水、また汚染水などの場合は、液体中に有機系や無機系の不純物が含まれている事がある。そのような不純物を含んだ液体WをT−UFB生成ユニット300に供給すると、発熱素子10を変質させたり、塩析現象を招致したりするおそれが生じる。図11(a)〜(c)で示すような機構をT−UFB生成ユニット300よりも上流に設けておくことにより、上記のような不純物を事前に除去することができる。
<<T−UFB含有液に使用可能な液体および気体>>
ここで、T−UFB含有液を生成するために使用可能な液体Wについて説明する。使用可能な液体Wとしては、例えば、純水、イオン交換水、蒸留水、生理活性水、磁気活性水、化粧水、水道水、海水、川水、上下水、湖水、地下水、雨水などが挙げられる。また、これらの液体等を含む混合液体も使用可能である。また、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒も使用できる。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては特に限定されないが、具体例として、以下のものを挙げることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール。1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンなどのトリオール類。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
溶解ユニット200で導入可能な気体成分としては、例えば、水素、ヘリウム、酸素、窒素、メタン、フッ素、ネオン、二酸化炭素、オゾン、アルゴン、塩素、エタン、プロパン、空気、などが挙げられる。また、上記のいくつかを含む混合気体であってもよい。さらに、溶解ユニット200では必ずしも気体状態にある物質を溶解させなくてもよく、所望の成分で構成される液体や固を液体Wに融解させてもよい。この場合の溶解としては、自然溶解のほか、圧力付与による溶解であってもよいし、電離による水和、イオン化、化学反応を伴う溶解であってもよい。
<<T−UFB生成方法の効果>>
次に、以上説明したT−UFB生成方法の特徴と効果を、従来のUFB生成方法と比較して説明する。例えばベンチュリー方式に代表される従来の気泡生成装置においては、流路の一部に減圧ノズルのようなメカ的な減圧構造を設け、この減圧構造を通過するように所定の圧力で液体を流すことにより、減圧構造の下流の領域に様々なサイズの気泡を生成している。
この場合、生成された気泡のうち、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルには浮力が作用するため、やがて液面に浮上して消滅してしまう。また、浮力が作用しないUFBについても、然程大きな気液界面エネルギを有していないので、ミリバブルやマイクロバブルとともに消滅してしまう場合もある。加えて、上記減圧構造を直列に配置し、同じ液体を繰り返し減圧構造に流したとしても、その繰り返し回数に応じた数のUFBを、長期間保存することはできない。すなわち、従来のUFB生成方法によって生成されたUFB含有液では、UFB含有濃度を所定の値で長期間維持することは困難であった。
これに対し、膜沸騰を利用するT−UFB生成方法では、常温から300℃程度への急激な温度変化や、常圧から数メガパスカル程度への急激な圧力変化を、発熱素子の極近傍に局所的に生じさせている。当該発熱素子は、一辺が数十μm〜数百μm程度の四辺形をしている。従来のUFB発生器の大きさに比べると、1/10〜1/1000程度である。且つ、膜沸騰泡表面の極薄い膜領域に存在する気体溶解液体が、熱的溶解限界または圧力的溶解限界を瞬間的に(マイクロ秒以下の超短時間で)超えることにより、相転移が起こりUFBとなって析出する。この場合、ミリバブルやマイクロバブルのような比較的大きなサイズのバブルは殆ど発生せず、液体には直径が100nm程度のUFBが極めて高い純度で含有される。更に、このように生成されたT−UFBは、十分に高い気液界面エネルギを有しているため、通常の環境下において破壊されにくく、長期間の保存が可能である。
特に、液体に対し局所的に気体界面を形成できる膜沸騰現象を用いた本発明であれば、液体領域全体に影響を与えることなく発熱素子の近傍に存在する液体の一部に界面形成し、それに伴う熱的、圧力的に作用する領域を極めて局所的な範囲とすることができる。その結果、安定的に所望のUFBを生成することができる。また、液体を循環して生成液体に対し更にUFBの生成条件を付与することで、既存のUFBへの影響を少なく新たなUFBを追加生成することができる。その結果、比較的容易に、所望のサイズ、濃度のUFB液体を製造することができる。
更に、T−UFB生成方法においては、上述したヒステリシス特性を有するため、高い純度のまま所望の濃度まで含有濃度を高めていくことができる。すなわち、T−UFB生成方法よれば、高純度、高濃度で且つ長期間保存可能なUFB含有液を、効率的に生成することができる。
<<T−UFB含有液の具体的用途>>
一般に、ウルトラファインバブル含有液は、内包される気体の種類によって用途が区別される。なお、液体にPPM〜BPM程度の量を液体中に溶解できる気体であれば、いずれの気体においてもUFB化させることが可能である。1例としては、下記のような用途に応用する事ができる。
・空気を内包させたUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄や、植物・農水産物の育成にも好適に用いることができる。
・オゾンを内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排水や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
・窒素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用など洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途や、排水や汚染土壌の環境浄化などにも好適に用いることができる。
・酸素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用など洗浄用途に加え、植物・農水産物の育成にも好適に用いることができる。
・二酸化炭素を内包したUFB含有液は、工業的・農水産業・医療用などの洗浄用途に加え、殺菌、滅菌及び除菌を目的とした用途などに好適に用いることができる。
・医療用ガスであるパーフロロカーボンを内包したUFB含有液は、超音波診断や治療に好適に用いることができる。このように、UFB含有液は、医療・薬品・歯科・食品・工業・農水産業などの多岐に亘って、効果を発揮することができる。
そして、それぞれの用途において、UFB含有液の効果を迅速に且つ確実に発揮するためには、UFB含有液に含まれるUFBの純度と濃度が重要となる。すなわち、高純度で所望の濃度のUFB含有液を生成することが可能なT−UFB生成方法を利用すれば、様々な分野でこれまで以上の効果を期待することができる。以下、T−UFB生成方法及びT−UFB含有液を好適に適用可能と想定される用途を列挙する。
(A)液体の精製的用途
・浄水器に対し、T−UFB生成ユニットを配することにより、浄水効果やPH調製液の精製効果を高めることが期待できる。また、炭酸水サーバなどにT−UFB生成ユニットを配することもできる。
・加湿器、アロマディヒューザー、コーヒーメーカー等にT−UFB生成ユニットを配することにより、室内の加湿効果や消臭効果及び香りの拡散効果を向上させることが期待できる。
・溶解ユニットにおいてオゾンガスを溶解させたUFB含有液を生成し、これを歯科治療、火傷の治療、内視鏡使用時の傷の手当てなどで用いることにより、医療的な洗浄効果や消毒効果を向上させることが期待できる。
・集合住宅の貯水槽にT−UFB生成ユニットを配することにより、長期間保存される飲料水の浄水効果や塩素の除去効果を向上させることが期待できる。
・日本酒、焼酎、ワインなど、高温の殺菌処理を行うことができない酒造工程において、オゾンや二酸化炭素を含有するT−UFB含有液を用いることにより、従来よりも効率的に低温殺菌処理を行うことが期待できる。
・特定保健食品や機能表示食品の製造過程で、原料にUFB含有液を混合させることで低温殺菌処理が可能になり、風味を落とさずに、安心かつ機能性を有する食品を提供することができる。
・魚や真珠などの魚介類の養殖場所において、養殖用の海水や淡水の供給経路にT−UFB生成ユニットを配することにより、魚介類の産卵や発育を促進させることが期待できる。
・食材保存水の精製工程にT−UFB生成ユニットを配することにより、食材の保存状態を向上させることが期待できる。
・プール用水や地下水などを脱色するための脱色器にT−UFB生成ユニットを配することにより、より高い脱色効果を期待することができる。
・コンクリート部材のひび割れ修復のためにT−UFB含有液を用いることにより、ひび割れ修復の効果向上を期待することができる。
・液体燃料を用いる機器(自動車、船舶、飛行機)等の液体燃料に、T−UFBを含有させることにより、燃料のエネルギ効率を向上させることが期待できる。
(B)洗浄的用途
近年、衣類に付着した汚れなどを除去するための洗浄水として、UFB含有液が注目されている。上記実施形態で説明したT−UFB生成ユニットを洗濯機に配し、従来よりも純度が高く浸透性に優れたUFB含有液を洗濯層に供給することにより、更に洗浄力を向上させることが期待できる。
・浴用シャワーや便器洗浄機にT−UFB生成ユニットを配することにより、人体等、生物全般の洗浄効果のほか、浴室又は便器の水垢やカビなどの汚染除去を促す効果を期待できる。
・自動車などのウィンドウォッシャー、壁材などを洗浄するための高圧洗浄機、洗車機、食器洗浄機、食材洗浄機等においてT−UFB生成ユニットを配することにより、それぞれの洗浄効果を更に向上させることが期待できる。
・プレス加工後のバリ取り工程など工場で製造した部品を洗浄・整備する際に、T−UFB含有液を用いることにより、洗浄効果を向上させることが期待できる。
・半導体素子製造時、ウェハの研磨水としてT−UFB含有液を用いることにより、研磨効果を向上させることが期待できる。また、レジスト除去工程においては、T−UFB含有液を用いることにより、剥離が困難なレジストの剥離を促すことが期待できる。
・医療ロボット、歯科治療器、臓器の保存容器などの医療機器の、洗浄や消毒を行うための器機に、T−UFB生成ユニットを配することにより、これら器機の洗浄効果や消毒効果の向上を期待することができる。また、生物の治療などにも適用可能である。
(C)医薬品用途
・化粧品などにT−UFB含有液を含有させることで、皮下細胞への浸透を促進するとともに防腐剤や界面活性剤などの皮膚に悪影響を与える添加剤を大幅に低下させることができる。その結果、より安心で、且つ、機能性のある化粧品を提供する事ができる。
・CTやMRIなどの医療検査装置の造影剤に、T−UFBを含有する高濃度ナノバブル製剤を活用することで、X線や超音波による反射光を効率的に活用でき、より詳細な撮影画像を得る事ができ、悪性腫瘍の初期診断などに活用できる。
・HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)と呼ばれている超音波治療器で、T−UFBを含有する高濃度ナノバブル水を用いることで、超音波の照射パワーを低下でき、より非侵襲的に治療をすることができる。特に、正常な組織へのダメージを低減することが可能になる。
・T−UFBを含有する高濃度ナノバブルを種にして、気泡周囲のマイナス電荷領域にリポソームを形成するリン脂質を修飾させ、そのリン脂質を介して、各種医療性物質(DNAや、RNAなど)を付与したナノバブル製剤を作製することができる。
・歯髄や象牙質再生治療として、T−UFB生成による高濃度ナノバブル水を含む薬剤を歯管内に送液すると、ナノバブル水の浸透作用により薬剤が象牙細管内に深く入り込み除菌効果を促進し、歯髄の感染根管治療を短時間かつ安全に行う事が可能である。
(第1の実施形態)
図13は、本実施形態で使用するオゾンウルトラファインバブル生成装置(以下、UFB生成装置と呼ぶ)1000のユニット構成を示す図である。純水供給容器609に貯留された純水は、純水送液ポンプ613によって純水供給配管622を介して脱気モジュール610に送液される。脱気モジュール610では、純水中に混入している気体が、脱気ポンプ614によって除去される。脱気された後の純水は、三方弁620を介してオゾン水生成器603に供給される。図13における脱気モジュール610は、図1の前処理ユニット100に相当する。
オゾン水生成器603は、オゾン生成器607とオゾン溶解槽608とを有している。オゾン生成器607は、酸素濃縮器606より供給された酸素O2に対しプラズマ放電等の処理を施してオゾンO3を生成する。オゾン溶解槽608は、三方弁620から流入される純水にオゾン生成器607より供給されるオゾンを溶解させ、オゾン水を生成する。
オゾン水生成器603で生成されたオゾン水は、第1のオゾン水供給配管623を介してオゾン水貯留容器605に貯留される。オゾン水貯留容器605には、オゾン水のオゾン濃度を測定するためのオゾン水濃度センサ617が配され、オゾン水濃度センサ617の検出濃度はオゾン水濃度制御部611に送信される。検出濃度が所定値に満たないとき、オゾン水濃度制御部611は、循環ポンプ615を駆動し、三方弁620を切り替え、オゾン水貯留容器605に貯留されたオゾン水を、オゾン水循環配管626を介して再びオゾン水生成器603に供給する。
このように、オゾン水濃度制御部611は、オゾン水濃度センサ617の検出濃度を確認しながら、純水送液ポンプ613、三方弁620、循環ポンプ615を制御する。つまり、オゾン水濃度制御部611は、純水供給容器609からオゾン溶解槽608に所定量の純水を供給し、その後、所望の検出濃度が確認されるまで、オゾン水貯留容器605とオゾン水生成器との間で、オゾン水を循環させる。本発明者らの検討によれば、約20リットルの純水から濃度が40ppmのオゾン水を約15分で生成することができた。図13における、オゾン水生成器603及びオゾン水貯留容器605の機能は、図1の溶解ユニット200に相当する。
なお、図のように、オゾン水貯留容器605を冷却ジャケット619でカバーして、オゾン水を10℃〜15℃に保つようにすれば、オゾンの気化が抑えられ、所望の濃度のオゾン水を更に短時間に生成することができる。
所望の濃度のオゾン水が得られると、オゾン水貯留容器に貯留されたオゾン水は、オゾン水送液ポンプ616によって第2のオゾン水供給配管624を介してウルトラファインバブル生成ヘッド(以下、UFB生成ヘッドと呼ぶ)601に供給される。UFB生成ヘッド601は、図4で説明したチャンバー301に相当し、複数の発熱素子が配列された素子基板を有している。UFB生成ヘッド601は、ヘッドドライバ602によって駆動され、図7〜図11で説明したメカニズムに従って、供給されたオゾン水中にオゾンUFBを生成する。UFB生成ヘッド601から流出され、オゾンUFBを含有するUFB含有液は、UFB含有液回収容器604に貯留される。
UFB含有液回収容器604には、UFB含有液のオゾンUFB濃度を測定するためのUFB濃度センサ618が配され、UFB濃度センサ618の検出濃度はUFB濃度制御部612に送信される。検出濃度が所定値に満たないとき、UFB濃度制御部612は、UFB含有液循環配管625にオゾン水送液ポンプ616が流体的に接続されるように三方弁621を切り替え、オゾン水送液ポンプ616駆動する。これにより、UFB含有液回収容器604とUFB生成ヘッド601とを循環する循環流路が形成され、UFB含有液回収容器604に貯留されるUFB含有液のオゾンUFBの濃度を、徐々に高めて行くことができる。
つまり、UFB濃度制御部612は、UFB濃度センサ618の検出濃度を確認しながら、オゾン水送液ポンプ616および三方弁621を制御する。そして、所望のUFB濃度が確認されるまで、UFB含有液回収容器604とUFB生成ヘッド601との間で、オゾン水を循環させる。
UFB含有液回収容器604は冷却ジャケット619にカバーされており、貯留されたオゾン水の温度は低温に保たれている。UFB含有液回収容器604のオゾンUFB含有液を低温に保つことにより、オゾンの気化を抑え、オゾンUFBの濃度を安定させることができる。以上説明した、UFB生成ヘッド601及びUFB含有液回収容器604の機能は、図1のT−UFB生成ユニット300に相当する。
ところで、本実施形態のように、オゾン水を循環させるシステムにおいては、酸化力の強いオゾン水に接触する配管などの部材において、材料の腐食が懸念される。そして、材料が腐食してしまうと、装置の連続稼働が困難になり、メンテナンスの頻度が増し、ランニングコストが増大する。更に、腐食、劣化した材料がUFB含有液中に溶解したり、不純物として混入したりして、生成されたオゾンUFB含有液の純度を下げ、品質を低下させてしまうおそれが生じる。
よって、本実施形態のUFB生成装置1000においては、特に酸化による腐食が発生し難い材料(耐腐食性を有する材料)を選択し、各部材を組み立てている。例えば、オゾン水循環配管626、UFB含有液循環配管625には、ステンレス鋼(SUS316)やフッ素樹脂であるPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)製のチューブを用いている。また、ユニットと配管を接続するジョイントや三方弁620、621には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いている。また、循環ポンプ615及びオゾン水送液ポンプ616は、PTFEのダイヤフラムポンプ(スムーズフローポンプ;タクミナ社製)を用いている。更に、オゾン水貯留容器605及びUFB含有液回収容器604については、PFA製のものを用いている。このように、本実施形態では、耐酸化性が強い材料を各ユニットを構成する材料として用いている。
次に、本実施形態で用いる、耐酸化性に優れたUFB生成ヘッド601の構成について詳しく説明する。
図14は、本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための分解斜視図である。また、図15(a)は図14の断面図であり、図15(b)はUFB生成ヘッド601の断面図である。
本実施形態のUFB生成ヘッド601は、放熱板711、支持基板706、素子基板701、シール部材712、流路部材702がこの順に積層されて構成される。素子基板701の素子配列エリア714には、電圧を印加することによって発熱する複数の発熱素子700が配されている。箱形状の流路部材702が、素子配列エリア714に対向した状態で素子基板701上に接着されることにより、流路部材702と素子配列エリア714との間に液体流路713となる空間が形成され、液体流路713となる。
流路部材702の長手方向の端部には、内部に貫通する貫通口708が形成され、これら貫通口708には、チューブ718(図14では不図示)と接続可能なジョイント717が嵌め込まれる。このような構成の下、一方のジョイント717から液体流路713を経て、もう一方のジョイント717に接続する流路が形成される。
以下、本実施形態のUFB生成ヘッド601の製造方法を簡単に説明する。まず、8インチのシリコン基板に所定の半導体プロセスを施し、22mm×17mmの素子基板構造をシリコン基板上に60個形成する。個々の素子基板構造には、複数の発熱素子700や、各発熱素子700に駆動信号を受信するための基板側電極715などが含まれている。素子基板構造の表面には、発熱素子700の発熱に伴う化学的及び物理的な衝撃の他、オゾン水との接触も配慮した耐腐食性の高い耐キャビテーション膜310が形成される(図5参照)。本実施形態のように、特にオゾン水に対する耐腐食性を強化する場合、耐キャビテーション膜310には、タンタル、イリジウム、チタン(Ti、TiO2)などを含有させることが好ましい。このような素子基板構造が形成された後、シリコン基板をダイシング装置で切断分離して、60個の素子基板701を取り出す。
次に、作製した素子基板701の1つを、アルミナセラミックスの支持基板706上に接着する。また、素子基板701の両側に配された基板側電極715と、フレキシブルな配線基板703の端部に配された配線基板側電極716とを、直径25ミクロンの金ワイヤーを用いたワイヤーボンディング707で接続する。素子基板701やフレキシブル配線基板703は、アルミナセラミックスの支持基板706に熱硬化性のエポキシ接着剤(ヘンケル社製;E3210)等を用いて接着する。
次に、素子基板701上に、厚さ0.05mmのPTFE製のシール部材712を介して、ステンレス鋼(SUS316)の流路部材702を搭載する。流路部材702には液体流路713が機械加工により彫り込まれており、また、液体の入口と出口となる部分には貫通口708が形成されている。この際、流路部材702は、素子配列エリア714を含み基板側電極715を含まない位置に搭載される。すなわち、基板側電極715は流路部材702の外側に配された状態となる。そして、流路部材702の外周に常温硬化型シリコーン封止剤719(モメンティブ社製;TSE399)を塗布し、流路部材702を支持基板706に固定する。
本実施形態では流路部材にステンレス鋼(SUS316)を用いたが、オゾン水に対して耐腐食性があればこれに限るものではなく、PTFEやガラスなどでもよい。特にガラスは流路内部の状況が観察できるため、液体の流れやUFBの生成を阻害する大きな気泡の存在を確認でき、回復操作のタイミングを見計らうことができる。ガラスでは硼珪酸ガラス(パイレックス(登録商標)など)はオゾン水に対する耐腐食性が高く、流路部材に適する。その他には石英を用いてもよい。
また、素子基板の接着には熱硬化性エポキシ接着剤を、周囲を封止する封止剤にシリコーン樹脂を用いたが、よりオゾン水に対する耐腐食性の高い液状フッ素系エラストマー(信越化学社製;SIFEL2000シリーズ)の硬化物(フッ素樹脂)を用いればより信頼性が高まる。
シール部材712は、SUS316製の流路部材702が素子基板701に接触することによって、素子基板701の表面が傷つくのを抑え、且つシリコーン封止剤719が液体流路713に露出するのを抑える保護層としての役割を担っている。通常、素子基板701を半導体プロセスによって製造する場合、このような保護層は、フォトリソグラフィ技術を用い感光性樹脂で形成するのが一般である。しかしながら、本実施形態のように、液体流路713にオゾン水が流れる場合、感光性樹脂はオゾン水の強い酸化力によって腐食し劣化する懸念が高い。このため、本実施形態では、耐酸化性(オゾン水に対する耐腐食性)の高いPTFE製のシートから型抜きしたシール部材712をこのような保護層として利用している。
次に、流路部材702の2つの貫通口708に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成されたジョイント717を嵌め込み、このジョイント717にPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)製のチューブ718を接続する(図15(c)参照)。一方のチューブ718はオゾン水送液ポンプ616と接続され、もう一方のチューブ718はUFB含有液回収容器604に接続される(図13参照)。
支持基板706の背面には、アルミ製の放熱板711を熱伝導性接着剤で貼り付ける。この際、放熱板711の代わりに、ペルチェ素子や水冷部材などを配してもよい。以上により、本実施形態のUFB生成ヘッド601が完成する。
UFB生成ヘッド601において、流路部材702と素子基板701の間には、2つのチューブ718と接続する液体流路713が形成される。そして、一方のチューブ718より供給されたオゾン水は、ジョイント717を介して液体流路713に流入し、もう一方のジョイント717を介して流出する。液体流路713には複数の発熱素子700が配されており、個々の発熱素子700には、所定のタイミングで電圧が印加される。これにより、個々の発熱素子700が接触するオゾン水に膜沸騰が生じ、膜沸騰泡の生成、膨張、収縮及び消泡に伴い、図7〜図11で説明したメカニズムに従ってオゾンUFBが生成される。
図22は、上述したオゾン水を循環させるシステムにおいて、本発明者らが各ユニットの材料を選定するにあたり、オゾン水との接触に伴う腐食劣化の程度を比較した結果を示す図である。図中、A群は、腐食劣化がほとんど確認されなかった材料を示す。B群は、腐食劣化は確認されるものの、所定の条件下では使用可能と判断した材料を示す。C群は、腐食劣化によって材料が脱落し、オゾンUFB含有液に不純物として混入してしまう材料を示す。
本実施形態の液体流路713は、タンタル、イリジウム、チタンなどの耐キャビテーション膜によって被覆された領域の素子基板701と、ステンレス鋼(SUS316)で形成された流路部材702と、PTFE製のシール部材712とによって囲まれている。配線基板703と電気的に接続する基板側電極715は、液体流路713から外れたオゾン水に接触しない位置に配されている。また、液体流路713に接続するチューブ718はPFA製であり、チューブ718と接続するジョイント717はPTFE製である。このように、本実施形態のUFB生成装置1000において、オゾン水に接触する接液部の材料は、いずれも、図22中A群に含まれる材料で構成されている。すなわち、本実施形態のUFB生成装置1000を用いれば、連続稼働が可能となり、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態においても、図13で説明したUFB生成装置1000を用いる。
図16は、本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための分解斜視図である。また、図17(a)は図16の断面図であり、図17(b)はUFB生成ヘッド601の断面図である。
本実施形態において第1の実施形態と異なる点は、シール部材712がO−リング723に変更されている点である。O−リング723は、フッ素ゴムであるフッ化ビニリデン系ゴム(FKM; 商品名:バイトン;ケマーズ社製)で形成されており、この材料も図22中A群に含まれる材料である。
流路部材702においては、その形成時に、O−リング723をはめ込むための溝724を予め形成しておく。そして、UFB生成ヘッド601の製造時には、流路部材702の溝724にO−リング723をはめ込んだ後、支持基板706に流路部材702を搭載する。更に、不図示のクランプ治具を用いて、支持基板706と流路部材702とを固定した状態で、流路部材702の外周に常温硬化型シリコーン封止剤719を塗布する。その後、流路部材702の接着が確認された後、クランプ治具を外す。
このような本実施形態のUFB生成ヘッド601においても、液体流路713は、オゾン水に対し耐腐食性に優れた材料で囲まれたものとなる。また、UFB生成ヘッド601以外の各ユニットも、第1の実施形態と同様、耐酸化性に優れた材料で構成されている。よって、本実施形態のUFB生成装置1000においても、連続稼働が可能となり、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能となる。
(第3の実施形態)
本実施形態においても、図13で説明したUFB生成装置1000を用いる。
図18(a)および(b)は、本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための図である。図18(a)はUFB生成ヘッド601の分解断面図であり、同図(b)はUFB生成ヘッド601の断面図である。
本実施形態において、上記実施形態と異なる点は、シール部材712やO−リング723を用いず、液体流路713の内壁をフッ素樹脂でコーティングすることである。
本実施形態では、ステンレス鋼(SUS316)を用いて流路部材702を加工する際、ステンレス鋼(SUS316)の表面をサンドブラストで粗面化し、更にプライマー処理を施す。その後、処理された表面にフッ素樹脂(PTFE)をスプレー塗布し、更に焼成することによって樹脂膜725を形成する。樹脂膜725の厚さは0.05mm〜0.3mmとする。この際、樹脂膜725の表面の凹凸は、稜線の液だまりによる皮膜厚さの不均一性を最小限にするために、0.05mmから0.1mmの範囲とすることが好ましい。但し、このような厚みや凹凸は、素子基板701と液体流路713の流路体積に応じて適宜設定されればよい。そして、このような樹脂膜725が形成されたステンレス鋼を更に加工して、流路部材702を成形する。
次に、流路部材702を素子基板701に搭載する。そして、不図示のクランプ治具を用いて、素子基板701と支持基板706と流路部材702とを固定した状態で、流路部材702の外周に常温硬化型シリコーン封止剤719を塗布する。その後、流路部材702の接着が確認された後、クランプ治具を外す。
このように、液体流路713の内壁をフッ素樹脂でコーティングすることによっても、素子基板701の表面が傷つくのを抑え、シリコン封止剤719が液体流路713に露出するのを抑えることができる。そして、このような液体流路713も、オゾン水に対し耐腐食性に優れた材料で囲まれたものとなる。よって、本実施形態のUFB生成装置1000においても、連続稼働が可能となり、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能となる。
なお、本実施形態のように、液体流路713の内壁をフッ素樹脂でコーティングする場合、流路部材702の非コーティング面はオゾン水中に露出することがない。よって、流路部材702は、必ずしもオゾン水に対する耐腐食性が備わった材料で構成されていなくてもよいことになる。すなわち、本実施形態によれば、例えば、図22のB群やC群に含まれるような、耐腐食性が多少劣る材料も、本実施形態の流路部材702に使用する材料の候補として挙げることができるようになる。
(第4の実施形態)
本実施形態においても、図13で説明したUFB生成装置1000を用いる。本実施形態では、UFB生成ヘッド601に、第1の実施形態で説明した素子基板701を複数配列させるものとする。
図19は、本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための分解斜視図である。また、図20(a)及び(b)は、UFB生成ヘッド601の長手方向の断面図と短手方向の断面図である。本実施形態のUFB生成ヘッド601を製造する際、アルミナの支持基板706には、2枚の素子基板701を並べて接着し、それぞれの素子基板701に配線基板703を接続する。次に、支持基板706上において、2つの素子基板701の両側に、高さ調整基板704を接着し、素子基板701に連続する平滑な面を形成する。高さ調整基板704はシリコン基板であり、表面にシリコン酸化膜が成膜されている。高さ調整基板704が配される位置は、オゾン水の流入口や流出口と成る貫通口708に対応する位置である。貫通口708に対応する位置に発熱素子を持たない基板を配することにより、液体流路713内での、UFBを生成する際の膜沸騰泡の発泡や収縮を安定させることができる。
本実施形態のように複数の基板を配列させる場合、各基板の境界には、図20(a)に示すような数μmから数十μmの隙間722が、発生することがある。そして、このような隙間722が発生する状態で、これら複数の基板を支持基板706に接着すると、接着剤(熱硬化型エポキシ接着剤)が隙間722に入り込むおそれが生じる。更にその状態で、液体流路713にオゾン水が流入すると、接着剤が腐食または分解し、オゾンUFB含有液の純度を下げてしまう。
このため、本実施形態においては、上記隙間722に対応する位置に、シール部材桟720が予め配されたシール部材712を用意する。また、流路部材702の内壁においても、上記隙間722に対応する位置に、流路部材桟721を予め設けておく。そして、支持基板706に対し、シール部材桟720が隙間722を覆うようにシール部材712を位置決めした状態で、このシール部材712を介して、流路部材702を搭載する。更に、不図示のクランプ治具を用いて、素子基板701と支持基板706と流路部材702とを固定した状態で、流路部材702の外周に常温硬化型シリコーン封止剤719を塗布する。このようにすれば、流路部材桟721に押さえつけられたシール部材桟720が隙間722をシールした状態で、素子基板701と流路部材702とが固定される。結果、成形された液体流路713は、オゾン水に対し耐腐食性に優れた材料で囲まれたものとなる。
図21(a)〜(d)は、流路部材桟721を備えた流路部材702の作製方法を説明するための図である。本実施形態の流路部材702は、第1の層702Aと、第2の層702Bと、第3の層702Cとをこの順に積層して作製する。
図21(a)は、流路部材702の天板部分に相当する第1の層702Aの側面図と上面図である。第1の層702Aは、平滑な平板であり、長手方向の両端にオゾン水の流入口及び流出口となる2つの貫通口708が形成されている。
図21(b)は、第2の層702Bの側面図と上面図である。第2の層702Bは、流路部材702の第1の層702Aを支持する外枠に相当する。
図21(c)は、第3の層702Cの側面図と上面図である。第3の層702Cは、第2の層202Bを支持する枠部と、隙間722に対応する位置に配された流路部材桟721を備えている。
本実施形態では、厚みが0.1mm〜1mmのSUS316の板材に対し、レーザー加工、ワイヤー切断加工、エッチング加工などを施すことにより、第1の層702A、第2の層702B及び第3の層702Cを、ねじれや反りが生じないように形成する。
図21(d)は、第1の層702A、第2の層702B及び第3の層702Cを貼り合わせることによって作製された流路部材702の断面図である。貼り合わせについては、流路部材702の素子基板701側が平坦であること、積層した隙間から液体が漏れないこと、貼り合せに使った接着剤がオゾン水に触れないことを考慮し、拡散接合で部材同士を接合する方式を採用した。
このような本実施形態のUFB生成ヘッド601においても、液体流路713は、オゾン水に対し耐腐食性に優れた材料で囲まれたものとなる。また、UFB生成ヘッド601以外の各ユニットのオゾン水に接触する接液部も、第1の実施形態と同様、耐酸化性に優れた材料で構成されている。よって、本実施形態のUFB生成装置1000においても、連続稼働が可能となり、高純度で高品質のオゾンUFB含有液を製造することが可能となる。
更に本実施形態によれば、第1の実施形態で示したUFB生成ヘッド601に比べ、単位時間当たりに生成されるオゾンUFBの数も配列した素子基板の数に応じて増大させることができる。
以下、本発明者らが図13で説明したUFB生成装置1000を用いて行った検証結果を簡単に説明する。本検証では、22mm×17mmの大きさを有する、12,288個の発熱素子が配列された素子基板701を用意した。そしてこの素子基板を、直列に6個配列させ、第4の実施形態の方法でUFB生成ヘッドを製造した。このようなUFB生成ヘッドには、合計73,728個の発生素子が配されることになる。
そして、UFB生成ヘッドの液体流路に、180〜200ml/分の速度でオゾン水を流動させながら、73,728個の発生素子のそれぞれを、7.5KHzの駆動周波数で駆動した。その結果、1ml当たり約10億個のオゾンUFBを確認することができた。更に、UFB生成ヘッドにおける上記駆動を継続しながら、オゾンUFB含有液を循環させることにより、1ml当たり40乃至50億個のオゾンUFBを含む、高濃度のオゾンUFB含有液を生成することができた。
(第5の実施形態)
本実施形態においても、図13で説明したUFB生成装置1000を用いる。本実施形態では、UFB生成ヘッド601に、第1の実施形態で説明した素子基板701を複数配列させるものとする。
図23は、本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための分解斜視図である。また図24(a)及び(b)は、UFB生成ヘッド601の長手方向の断面図と短手方向の断面図である。本実施形態は第4の実施形態と同様にUFB生成ヘッド601を製造する際、アルミナの支持基板706上には、2枚の素子基板701を並べて接着し、それぞれの素子基板701に配線基板703を接続する。次に、支持基板706上において、2つの素子基板701の両側に、高さ調整基板704を接着し、素子基板701に連続する平滑な面を形成する。高さ調整基板704はシリコン基板であり、表面にシリコン酸化膜が成膜されている。高さ調整基板704が配される位置は、オゾン水の流入口や流出口と成る貫通口708に対応する位置である。貫通口708に対応する位置に発熱素子を持たない基板を配することにより、液体流路713内での、UFBを生成する際の膜沸騰泡の発泡や収縮を安定させることができる。
本実施形態では複数の基板と高さ調整基板をアルミナの支持基板706に接着する際に液状フッ素エラストマー(信越化学製;SIFEL2000)の硬化物(フッ素樹脂)を用いて接着する。該接着剤を用いると、素子基板間に生じる隙間722にオゾン水が流入しても接着剤は腐食または分解することはないため、オゾンUFB含有液の純度の低下を抑制することができる。このため、上記実施形態で用いた桟を配した配列隙間を塞ぐシール部材は必要がなくなる。さらに、流路部材702および素子基板701の電極715とフレキシブル配線基板703とを繋いだ金ワイヤー707部を液状フッ素エラストマー719の硬化物で覆うことで流路部材からの液の漏れと金ワイヤーの保護を行う。特に、前述した素子基板間の隙間722に流路部材周囲に塗布した液状フッ素エラストマー719が毛管力で流れ込み、隙間を充填することができるため、シール部材を配さなくてもよくなり、極めて簡素な構造となる。
(第6の実施形態)
本実施形態は、第5の実施形態で流路部材702を直接素子基板701上に配した場合の不具合を回避するため、PTFE製のシール部材712を組み込んだ形態である。図25は本実施形態で使用するUFB生成ヘッド601の構成を説明するための分解斜視図である。また図26(a)及び(b)は、UFB生成ヘッド601の長手方向の断面図と短手方向の断面図である。
本実施形態においても素子基板間の隙間722には液状フッ素エラストマーのが充填されるのでシール部材の桟720が不要となる。このため、桟720を押える流路部材側の桟721も付与となるため構造が簡素になる。
(その他の実施形態)
第1〜第6の実施形態では、それぞれのユニットで使用可能な材料を具体的に説明したが、図22のA群に含まれる材料であれば、他の材料に変更することも可能である。例えば、支持基板706を形成するための材料としては、アルミナセラミックスの代わりに硼珪酸ガラス(パイレックス(登録商標))を用いることもできる。無論、耐酸化性に優れオゾン水に接触しても腐食が発生しにくい材料であれば、図22のA群に記載されていない材料であっても代替えは可能である。
例えば、本発明者らの検討によれば、B群に含まれるオーステナイト系ステンレス鋼であっても、0.08%以下の炭素、16〜18%のクロム、10〜15%のニッケル、2〜3%のモリブデンを含有させることにより、耐腐食性を強化することができた。その結果、上記材料を流路部材などUFB生成装置のユニットの一部に好適に用いることが可能となった。
以上の実施形態では、素子配列エリア714と素子配列エリア714に電力を供給するための基板側電極715とを、素子基板701の同じ側の面に形成したが、基板側電極715は素子基板701の裏側に形成してもよい。この場合、配線基板703は素子基板701の裏側にワイヤーボンディングされる形態となる。このようにすることにより、基板側電極715と配線基板側電極716との接続部分がオゾン水に触れる可能性を更に抑え、電極をより確実にオゾン水から防御することができる。
601 UFB生成ヘッド(ウルトラファインバブル生成ヘッド)
1000 UFB生成装置(ウルトラファインバブル生成装置)

Claims (18)

  1. オゾン水中に膜沸騰を生じさせることにより、オゾンを含有するウルトラファインバブルを生成することが可能なウルトラファインバブル生成装置であって、
    オゾン水に接触する接液部は、オゾン水に対し耐腐食性を有する材料で形成されていることを特徴とするウルトラファインバブル生成装置。
  2. 前記接液部は、フッ素樹脂、フッ素ゴム、チタン、タンタル、イリジウム、ステンレス鋼、アルミナセラミックス、硼珪酸ガラスのいずれか又はこれらの組み合わせで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  3. 電圧が印加されることにより発熱し前記オゾン水に膜沸騰を生じさせる発熱素子が配された素子基板と、前記素子基板と対向してオゾン水を収容する液体流路を形成する流路部材と、を備えるウルトラファインバブル生成ヘッドを有することを特徴とする請求項1または2に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  4. 前記素子基板は、オゾン水に接触する面に耐腐食性を強化するための処理が施されたシリコン基板であり、前記流路部材はステンレス鋼または硼珪酸ガラスで形成されていることを特徴とする請求項3に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  5. 前記耐腐食性を強化するための処理は、前記シリコン基板の表面をタンタル、イリジウム、チタン、又はこれらの組み合わせた材料で被覆する処理であることを特徴とする請求項4に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  6. 前記流路部材はSUS316で形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  7. 前記流路部材は、炭素、クロム、ニッケル及びモリブデンを含有するオーステナイト系のステンレス鋼で形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  8. 前記素子基板と前記流路部材は、フッ素樹脂のシール部材を介して接着されていることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  9. 前記ウルトラファインバブル生成ヘッドには、複数の前記素子基板が配列されており、
    前記シール部材には、前記複数の素子基板の境界に対応する位置に、当該境界をシールするための第1の桟が設けられ、
    前記流路部材には、前記複数の素子基板の境界に対応する位置に、前記第1の桟を前記境界に向けて押さえるための第2の桟が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  10. 前記素子基板と前記流路部材は、フッ素ゴムのO−リングを介して接着されていることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  11. 前記流路部材の内壁は、フッ素樹脂でコーティングされていることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  12. 前記流路部材は、前記液体流路にオゾン水を流入するための流入口と前記液体流路からオゾン水を流出させるための流出口とを備え、
    前記流入口および前記流出口は、前記素子基板の前記発熱素子が配されている領域に対向しない位置に形成されていることを特徴とする請求項3から10のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  13. 前記流入口および前記流出口にはフッ素ゴムで形成されたジョイントが接続されていることを特徴とする請求項12に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  14. 前記素子基板は、前記液体流路に収容されたオゾン水に接触しない位置に、前記発熱素子の駆動信号を受信するための電極を備えることを特徴とする請求項3から13のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  15. 前記電極は、前記素子基板において、前記流路部材が接着される面の前記流路部材の外側に配されていることを特徴とする請求項14に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  16. 前記電極は、前記素子基板において、前記流路部材が接着される面の裏側の面に配されていることを特徴とする請求項14に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  17. 前記ウルトラファインバブル生成ヘッドと、少なくとも1つのユニットとの間でオゾン水を循環させることが可能な循環流路を有することを特徴とする請求項3から16のいずれか1項に記載のウルトラファインバブル生成装置。
  18. 電圧が印加されることにより発熱しオゾン水中に膜沸騰を生じさせる発熱素子が配された素子基板と、前記素子基板と対向してオゾン水を収容する液体流路を形成する流路部材と、を備えるウルトラファインバブル生成ヘッドであって、
    前記素子基板はオゾン水に接触する面に耐腐食性を強化するための処理が施されたシリコン基板であり、前記流路部材はステンレス鋼または硼珪酸ガラスで形成されていることを特徴とするウルトラファインバブル生成ヘッド。
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