JP2021072306A - 筒状コアの製作法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の高電流値通電においても磁気飽和しない特性、及び、所望のインダクタンス値を得られる、筒状コアを提供する。【解決手段】筒状コア10は、リング状、矩形、或は方形状磁性体環状コアの一部にエアギャップ31が施された同一サイズの複数個の環状コアを重ねて形成されている。これら複数個の環状コアは、リングコア使用の場合は、その中心軸32を同一にして端面33同士を突き合わせた状態に配置され、かつ、各コアのエアギャップ31の位置がリングコア21,22,…,2nの円周方向34に回転変化可能な状態とし、矩形或は方形状コアの場合は、夫々180度、90度回転操作によるその実効透磁率μeを可変可能としている。【選択図】図1

Description

本発明は、インダクタ素子などに用いられる高電流値対応円筒、矩形或は方形筒状コア、及び、その製作法に関する。
従来から電子回路機器の分野では、各種の回路や用途に応じてインダクタ素子が使われている。インダクタ素子は、例えばコンデンサと組み合わせることによって、共振回路、フィルタ回路、又はインピーダンス整合回路などに使用されている。一般にインダクタ素子が用いられる電子回路においては、低損失で所望のインダクタンス値が容易に得られることが要求されている。更にまた、インダクタ素子では、使用されるコアの磁性材が磁気飽和しない範囲で用いられていることが常識となっており、通常はコアの耐磁気飽和特性については殆ど留意されずに使われている。換言すれば、当然のこととして、使用対象電子回路ではコア磁性材が非磁気飽和領域内で作動するものと決めつけて使われ、実際にも非飽和領域内での電流値で使われている場合が殆どである。
インダクタ素子に用いられるフェライトなどの高透磁率磁性材からなるリングコアでは、コアに導線を巻回した形のものが良く知られている。しかしながら、該リングコアにおいては、その高透磁率性ゆえに容易に高インダクタンス値が得られるものの、巻き線のターン数を増やすと小電流値でも磁気飽和に達してしまうという欠点があった。そのため、数アンペア以上の高電流値で所望のインダクタンスを得るためには、リングコアを大型化する必要があった。特に焼結製作されるフェライト材コアでは、製造用金型及び焼結炉の大型化が必要となるため、その製作コストが大幅に上昇し、コスト面で不可能ではないものの産業上の実現が困難と言う難点があった。
特許第5888871号公報「可変インダクタ」 特許第5872458号公報「ノイズ減衰器」
一方、コア材の大型化を伴わずに耐磁気飽和性を得るための技術として、リングコアの一部にエアギャプを加工形成した、いわゆるエアギャップコア技術は良く知られている。しかし、このエアギャプコア技術でも、コアのサイズ及びギャップ長並びにコアの磁性材における本来の透磁率によって、漏洩磁束量及び磁束の巻き線に対する鎖交数が変化する。そのため、製作段階での耐高電流値性と所望のインダクタンス値とを得るための設計手段は皆無であった。更に、該コアにおけるエアギャップの存在はコアの実効的透磁率(以下、実効透磁率)を大幅に低下させてしまうため、磁性材の非磁気飽和領域内で高インダクタンス値を得るのが困難であった。
なお、インダクタンス値を広範囲にわたって可変設定することを可能とした可変インダクタが、本発明者によって上記特許文献1、2に開示されている。しかし、これらの特許文献では、コア磁性材の非磁気飽和領域内でのコア巻き線の電流値に対応する巻線数については全く言及されていない。
よって、本発明の目的は、所望の高電流値でもコア材の非磁気飽和領域内で作動可能、かつ所望のインダクタンス値が得られる磁性材コアを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る円筒状、矩形或は方形筒状コアは、リング形状、矩形或は方形環状コアの一部にエアギャップ加工が施されたコアを複数個積層した、筒形状となっている。前記複数個の各環状コアで、リング形状のコア使用の場合では、内径中心軸を同一にして各リングコアの端面同士が突き合わされた状態に配置され、かつ、前記各個リングコアのギャップ位置が夫々異なった位置に回転調整された後、互いに接着固定された状態となっている。本明細書における「リング」の形状には、円状に限らず、閉磁路を形成する環状、正三角形状、正四角形状、及び、それ以上の正多角形状も含むものとする。
前記各環状コアのギャップ位置の調整法は、接着固定前の円筒状、矩形或は方形筒状コアに巻き線数Nの絶縁被覆導線を巻き、該巻き線の形態は間隔のない所謂密巻の形態としてインピーダンス計測器に接続され、インダクタンス計測に供される。
前記インダクタンス値計測時においては、前記個々の環状コアのギャップ位置を回転変化させ、そのエアギャップ位置におけるインダクタンス値の計測を行う。次に、周知の環状磁性材コアに対する前記インダクタンス値算出式から該筒状コア材の実効透磁率μeを算出する。
前記実効透磁率μeの算出には、平均磁路長l、断面積Sの磁性材環状コアに導線をNターン巻回したときのインダクタンス値Lを示した周知の式(1)を用い、コア材本来の透磁率μに代えて、計測により得たインダクタンス値Lから算出した透磁率を実効透磁率μeと表示している。なお、「l」はLの小文字である。
L=μSN/l・・・(1)
さらに、コア材のB−H特性はコア磁性材メーカーから与えられるから、B−H特性における、非磁気飽和領域の最大値Bmaxは容易に把握でき、また前記算出実効透磁率μeの値を用いて、該筒状コアに対する任意の巻き線数Nと該巻き線Nでの通電電流値Iとの積(I・N)の値につき、該筒状コア使用時のインダクタにおける非磁気飽和領域内作動に対する最大の(I・N)値を得ることができる。つまり、既知である該筒状コアの平均磁路長l及び断面積の値を用いて、該円筒状コアにおける巻き線数N及び該巻き線への通電電流Iによるコア内起磁力Hは、H=I・N/lの関係式で与えられるから、電気磁気学理論で周知のB=μHの関係式でBmax=μe・Hとおくことにより、(H・I)maxを規定することができるという手段を用いている。
本発明に係る筒状コアによれば、フェライト等の高透磁率磁性材環状コアによるインダクタ素子の製作に際し、高通電電流値かつ所望のインダクタンス値を得たい場合における特別な大型リングコア採用の必要性を解消できるという産業上の大きな利点が生じる。また、本来の磁性材環状コアでは必然的に固定値であった透磁率を変化調整可能とせしめるという効果が実現でき、この効果によってインダクタの非磁気飽和領域内作動の指標となる(I・N)max値を得ることが可能となる。
図1[A]は本発明による実施形態の一例を示す円筒状コアの場合の斜視図、また、図1[B]は図1[A]におけるIb−Ib線断面図である。 実施形態の円筒状コアの製作法において、エアギャップの位置を調整する工程を示す正面図である。 本発明を角筒形状を呈するコアに適用した場合の外形図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について円筒状コアを一実施例として説明する。
図1[A]は、本実施形態における円筒状コアで、円筒形状を構成する各エアギャップ付きリングコアのギャップ位置を回転操作調整前の姿を示す外形図、図1[B]は図1[A]におけるIb−Ib線断面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
本実施形態による円筒状コア10は、リング状磁性体コアの一部にエアギャップ31が施された同一サイズの複数個のリングコア21,22,…,2nを積層して形成されている。これら複数個のリングコア21,22,…,2nは、その中心軸32を同一にして端面33同士を突き合わせた状態に配置され、かつ、エアギャップ31の位置がリングコアの周方向34に回転変化可能な状態となっている。
そして、該円筒状コア10に、数ターンの絶縁外皮導線43が巻き線間隔のない所謂密巻状態で巻回され、該巻き線のインダクタンスを計測すべく、インピーダンス計測器に接続される。該状態において前記エアギャップの位置を回転操作により変化させながら、前記密巻巻き線のインダクタンス値を計測する。回転操作による各リングコアのギャップ位置で計測されたインダクタンス値から、様々なギャップ位置での該円筒状コアの実効透磁率μeを算出する。
リングコアに使われている磁性材のB−H特性は一般に既知であるから、B−H特性データから、非磁気飽和領域についての最大磁束密度の値Bmaxが設定できる。そして、前記様々なギャップ位置での該円筒状コアの実効透磁率μeの値に対する、該円筒状コアの非磁気飽和領域内で作動可能なインダクタの巻き線数Nと通電電流値Iとの積(I・N)の最大値、(I・N)maxが定まる。
様々なギャップ位置における該円筒状コアの実効透磁率μeに対する(H・I)maxの値が得られる。この段階で、様々なギャップ位置でのリングコア21,22、….2nを接着固定し、該円筒状コアにおける様々な(I・N)maxの値が明示されることとなる。
なお、図面について付言すると、円周方向34は図2[A]に示されており、インダクタ用導線43は図1[B]に仮想線で示されている。エアギャップ31及び端面33については、多数あるうちの一つのみに符号を付けてある。
リングコア21,22,…,2nの個数すなわちnは、3以上であれば何個でもよく、矩形、方形コアについても同様である。リングコア21,22,…,2n及び他の矩形、方形状の磁性材料は、例えばフェライト、アモーファス合金又は積層珪素鋼などの高透磁率磁性材料である。
リングコア21,22,…,2n及び矩形、方形コアのサイズは、全て同一であることが必要不可欠である。何故なら、インダクタンス値の計測に供する前記数ターンの導線巻き線が円筒状形状コア表面に近接した状態でまかれることが、バラツキの無い計測値を得るに必要だからである。
また、前記円筒状コアを形成するエアギャップ付きリングコアの中に、エアギャップの無い同一サイズリングコアを入れてもよい。リングコア21,22,…,2nは、エアギャップ31の位置の変化を回転調整後に、接着剤などで互いに固定されて、円筒状を形成し、複数のリングコア全体20となっている。この場合、エアギャップ31には樹脂や非磁性金属などでコアの機械的強度補正加工がなされている必要がある。
円筒状コア10によれば、インダクタ用巻き線導線43の通電電流値Iと巻線数Nとの積(I・H)について、使用コア磁性材の非磁気飽和領域内で一定インダクタンス値を保つインダクタとして作動可能な(I・N)maxの値が明示され、所望の高電流値対応かつ所望のインダクタンス値が実現可能となる。
つまり、エアギャップ31の位置をリングコア21,22,…,2nを円周方向34に示したように回転変化させることにより、該円筒状コアの実効透磁率μeの値を変化させ、コアに使われている磁性材のB−H特性から非磁気飽和磁束密度の最大値Bmaxが定まり、該円筒状コアの実効透磁率μeにおける(I・N)の最大値を明示することが可能となる。
図2[A]は、本実施形態における円筒状コアの製作法において、エアギャップの位置を回転変化調整する工程を示す正面図である。以下、この図面に基づき、円筒状コア10の製作法(以下「本実施形態の製作法」という。)について説明する。
本実施形態の円筒状コアの製作法は以下の工程によって行われる。
複数のエアギャップのあるリングコアで形成された円筒状コア10に円筒の内径、外径を通した数ターンNの導線巻き線を施し、各個リングコアのエアギャップ位置を回転変化させながら、インピーダンス測定器により該導線巻き線のインダクタンス値を計測し、下記(1)式により実効透磁率μeを得る工程。
この時、使用円筒状コアの磁路長l及び断面積S(使用されているリングコアがn個ならば、単一コア断面積のn倍)であることは既知となっていなければならない。また、インピーダンス計測に供する巻き線数Nの巻き線は、各個リングコアのサイズにもよるが、インピーダンス測定器での計測値のバラツキが少ない巻き線数のL値を検討の上、設定する必要がある。
前記インダクタンス計測時の計測値にバラツキが小さいとは、電磁気学における理論でのインダクタンスの定義が、「巻き線に単位電流値を通電した時、コア内に生じる磁束とその磁束が巻き線と鎖交する数の積」となっており、インダクタンス値は、巻き線数と鎖交数が同一で、N に比例するものとなっている。しかし、実際にはコアに漏洩磁束が生じるため、巻き線電流によって生じた磁束が全て巻き線に鎖交することにはならないため、巻き方で導線の間隔を空けた場合と空けない場合では明らかに巻き線のインダクタンス値が異なってくし、また巻き線を間隔なしの所謂蜜巻とした場合でも巻き線数によってその実測インダクタンス値はN に比例していない。
それ故、実際の鎖交数は巻き線数より小さくなる。この現象は巻き線数が大なれば大なるほど巻き線数との鎖交数との差が顕著となる。つまり、周知の磁性材リングコアによる巻き線数N、平均磁路長l、コア断面積Sの値からインダクタンス値を算出するために(1)式を変形した、下記(2)式を用いて実効透磁率を導き出す本実施形態においては、インダクタンスの計測値Lが巻き線数の2乗に比例した値に最も近いとされることが必要である。これが前記L測定において、巻き線数と鎖交数が同一と見做せる最小巻き線数Nとした理由である。
μe=L・l/S・N ・・・(2)
前記インダクタンス値測定の結果得られた円筒状コアの実効透磁率μe及び既知であるコア磁性材の非飽和磁束密度最大値Bmaxにより、下記(3)式を用いて、該円筒状、矩形或は方形筒状コアを用いてなるインダクタにおける巻き線導線43の巻き数Nと通電電流値Iとの積について、(I・N)maxの値を決定する工程。
(I・N)max=l・Bmax/μe ・・・(3)
図2では、エアギャップ31の位置を回転操作で調整する工程を示しているが、円筒状コア10の中心軸は正面を向いている。インピーダンス測定器52は、一般的な市販品でよく、LCRメータでもよい。円筒状コア10の測定用巻き線導線51は数ターン(例えば3〜4ターン)巻きで、巻き線導線51の端末をインピーダンス測定器52に接続して、該円筒状コア10のインダクタンス値Lを測定する。このとき、リングコア21、22、・・・2nの各リングコアのエアギャップ31の位置が回転変化できるよう、巻き線導線51は回転調整操作可能となるよう少し緩めに巻いておく必要がある。
図2の円筒状コア支持用治具60の断面図では、該支持用治具がエアギャップ31の位置を回転変化させる際に使用されることを示した図で、該複数のリングコアで成る円筒状コアの外周面42に当接し、各リングコア21,22,…,2nそれぞれが円筒状保ちながら、各コアのギャップ位置を回転自在に変えられるように支持されていることを示している。
尚、該支持用治具60は、前記円筒状コアとの電気的絶縁性を保つため、樹脂又は非磁性金属で構成されるが、金属材を使用する場合には樹脂材シートなどを用いてコアとの電気的絶縁性を保つようにする。
該支持用治具60の断面は正面から見て凹状であり、この凹部に互いに接着固定前の複数のリングコア全体20を収納し個々のリングコアが手動回転可能となるように支持される。また、該支持用治具60は、基板61、スペーサ62、長穴64付きの抑え板63、抑えねじ65などで構成され、基板61は平板状であり、基板61の両端には収納する円筒状コアのサイズに適合されたスペーサ62が設けられている。
抑え板63は、長穴64を貫通した抑えねじ65によって、スペーサ62と共に基板に固定される。該抑え板63はリングコアのサイズに合わせてスペーサ62に取り付けられ、長穴64により左右方向に摺動可能とされている。
円筒状コアの巻き線、巻き線数Nのインダクタンスを測定する際は、基板61上の二つのスペーサ62上に二枚の抑え板63を置き、コアサイズに合わせて該抑え板63を摺動して円筒状コアの外側面に当接し、各コアが回転可能な状態としつつ抑え板63をネジ65によって固定する。また、矩形或は方形コアの場合では、夫々180の度回転操作調整、90度回転操作調整し、63を筒状コア外面に当接する。当接後、ネジ65を固定した後、該矩形或は方形筒状コアに巻き線を施し、巻き線のインダクタンス値計測に供する。
尚、円筒状コア10の実効透磁率μeは、リングコア21,22,…,2nの各エアギャップ31の位置が一直線に並んだときに最小値となり、この状態から各エアギャップ31が互いに離れるにつれて増加し、相隣合うリングコアのギャップ位置が180度異なった位置で該円筒状コア全体のインダクタンスが最大値を呈することとなる。このエアギャップ位置とμeの関係は矩形、方形環状コア使用の場合でも同じである。
本実施形態の工程においては、円筒、矩形或は方形の筒状コアを形成するギャップ付きコアで、本来の磁性材透磁率がμの場合、エアギャップの無い場合は(1)式のμeがμに置き換えられる。一方周知の事柄として、エアギャップ付きの場合の実効透磁率μeはμ≫μeとなるから、(1)式におけるエアギャップ付き環状コア単体の巻き線インダクタンス値Lは、エアギャップの無い場合のインダクタンス値より大きく低下する。
そこで、本実施形態においては、エアギャップ付きリングコアをn個重ねた筒状コアにより、断面積が単独コアのn倍になることを利用して、実効透磁率が低下した値となっても積層によりコア断面積が増加している分、単独エアギャップコアの巻き線数によるインダクタンス値より少ない巻き線数で同じインダクタンス値が得られるという技術的思考が利用されている。
尚、本発明実施形態の製作法工程においては、
前記各リングコアのエアギャップ位置を回転操作により変えることで、各コアのギャップ位置が同一線上に揃う時と相隣るコアにおけるエアギャップ位置が互いに180度異なる位置とで、筒形コアの実効透磁率μeは夫々最小値と最大値を呈する。
従って、本実施形態の工程においては、該円筒状、矩形或は方形筒状コアの実効透磁率μeを前記最小値と最大値の間に可変設定可能となり、同一筒状コアおいて、様々なエアギャップ位置で環状コアを固定して、異なった(I・N)maxの値を明記した筒状コアの製作ができることとなる。
以上、上記円筒状コアについての実施形態記述により、本発明を説明したが、本発明は前記円筒状コアの実施形態に限定されるものではなく、図3に示したように、矩形或は方形の環状コアで各4辺の任意位置にあらかじめ同一或は異なった長さのエアギャップ加工を施し、エアギャップにコア強度補強加工を施した上、複数個を積層して角筒状となした筒状コアにも適用できる。
図3に示す角筒状コア11は、リング状磁性体コアの一部にエアギャップ81が施された同一サイズの複数個のリングコア71,72,…,7nを積層して形成されている。これら複数個のリングコア71,72,…,7nは、その中心軸82を同一にして端面83同士を突き合わせた状態に配置され、かつ、エアギャップ81の位置がリングコアの周方向84に回転変化可能な状態となっている。
但し、矩形、方形筒状形成の場合は、各矩形環状コアの回転調整操作による実効透磁率μeの値は、矩形環状コアの使用では180度回転調整操作のみの変化値となり、方形環状コア使用の場合には90度回転操作による実効透磁率μeの値となる。
本発明は、次の付記1〜3のように表現することもできる。
[付記1]
環状の磁性体コアの一部にアギャップが形成された複数の環状コアを備え、 前記複数の環状コアで、リング状コア使用の場合は、前記リングコアの中心軸を同一にして前記リングコアの端面同士を突き合わせた状態に配置され、かつ、前記エアギャップの位置が前記リングコアの円周方向に回転調整される状態で互いに当接され、 前記複数のリングコア全体の内側と外側とを交互に通るようにインダクタ用導線が巻回されてインダクタが形成される場合における、前記インダクタ用導線の巻線数と該巻き線への通電電流値との積の値が、コア材が磁気飽和しない範囲おける最大値であることを明示した筒状コア。
[付記2]
付記1記載の筒状コアを製作する方法であって、 前記複数の環状コア全体の内側と外側とを交互に通すように測定用導線をNoターン巻いてインダクタンスLoを測定しながら、既知である実効磁路長l及び実効断面積Sと下記式(2)とに基づき、所望の実効透磁率μeになるように前記エアギャップの位置を回転操作により変化調整する工程と、
μe=(Lo・l)/(S・No) ・・・(2)
前記実効透磁率μ及び既知である飽和磁束密度Bmaxと下記式(2)とに基づき、前記インダクタ用導線に流せる電流Iと前記インダクタ用導線の巻数Nとの積について、磁気飽和しない範囲での最大値(I・N)maxを決定する工程と、
(I・N)max=l・Bmax/μe ・・・(2)
を含む円筒状及び角筒状コアの製造方法。
[付記3]
前記最大値(I・N)maxを満たす前記通電電流値I及び前記巻数Nをそれぞれ最大電流Imax及び最大巻数Nmaxとしたとき、
前記エアギャップの位置を調整する工程に戻って前記エアギャップの位置を前記円周方向にずらして前記実効透磁率μeを1/mにし、
前記最大巻数Nmaxをm倍にする、
付記2記載の円筒状コアの製造方法。
10 円筒状コア
11 角筒状コア
20,70 複数のリングコア全体
21,22,…,2n,71,72,…,7n リングコア
31,81 エアギャップ
32,82 中心軸
33,83 端面
34,84 円周方向
41,91 内側
42,92 外側
43 インダクタ用導線
51 測定用導線
52 インピーダンス測定器
60 支持治具
61 基板
62 スペーサ
63 抑え板
64 長穴
65 抑えねじ
さらに、コア材のB−H特性はコア磁性材メーカーから与えられるから、B−H特性における、非磁気飽和領域の最大値Bmaxは容易に把握でき、また前記算出実効透磁率μeの値を用いて、該筒状コアに対する任意の巻き線数Nと該巻き線Nでの通電電流値Iとの積(I・N)の値につき、該筒状コア使用時のインダクタにおける非磁気飽和領域内作動に対する最大の(I・N)値を得ることができる。つまり、既知である該筒状コアの平均磁路長l及び断面積の値を用いて、該円筒状コアにおける巻き線数N及び該巻き線への通電電流Iによるコア内起磁力Hは、H=I・N/lの関係式で与えられるから、電気磁気学理論で周知のB=μHの関係式でBmax=μe・Hとおくことにより、(I・N)maxを規定することができるという手段を用いている。
様々なギャップ位置における該円筒状コアの実効透磁率μeに対する(I・N)maxの値が得られる。この段階で、様々なギャップ位置でのリングコア21,22、….2nを接着固定し、該円筒状コアにおける様々な(I・N)maxの値が明示されることとなる。
円筒状コア10によれば、インダクタ用巻き線導線43の通電電流値Iと巻線数Nとの積(I・N)について、使用コア磁性材の非磁気飽和領域内で一定インダクタンス値を保つインダクタとして作動可能な(I・N)maxの値が明示され、所望の高電流値対応かつ所望のインダクタンス値が実現可能となる。

Claims (2)

  1. 磁性材からなるリング、矩形或は方形コアにエアギャップ加工が施されたギャップコアを、複数個重ねて筒状とした円筒状、矩形、或は方形の筒状コアにおいて、
    該筒状コアをインダクタ素子として使用するにあたり、磁性材の非磁気飽和領域内で作動する指標を示す、巻き線数Nと使用通電電流値Iとの積(I・N)の最大値を明示した筒状コア。
  2. 請求項1の円筒状コアを製作する方法であって、
    複数個の前記リング状、矩形状或は方形状コアを回転変化自在の治工具に固定し、該筒状コアに数ターンの巻き線導線を施して各個環状コアのギャップ位置を回転変化させてそのインダクタンス値を計測することにより、該円筒状コアの実効透磁率μeを可変として、前記(I・N)の最大値を得る筒状磁性材コアの製作法。
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