JP2021059531A - 化粧品用組成物及び塗布方法 - Google Patents

化粧品用組成物及び塗布方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ソフトフォーカス効果を有しながら、明度が良好な化粧品用組成物を提供する。【解決手段】化粧品用組成物は、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間T1が、5秒以上である、板状アルミナ粒子を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、化粧品用組成物及び塗布方法に関する。
本願は、2019年10月9日に、米国に仮出願されたUS62/912,648に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
スキンケア用又はメイクアップ用の化粧品用組成物は、一般に有機化合物及び無機化合物のうち少なくともいずれか一方からなる充填材を含む。充填材としては、例えば、ポリメチルメタクリレートメチルメタクリレート架橋ポリマー、マイカ、ナイロン粒子、未充填又は充填材メラミン樹脂、タルク、SiO、カオリン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛の酸化物又は水酸化物、BiOcl、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルカリ土類塩基性炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)等が挙げられる。これらを1種単独で、又は2種以上組み合わせて、化粧品用組成物に使用される。
一方で、化粧品用組成物は、毛穴、傷、小じわ等の肌の欠陥を隠す効果が望まれている。これら肌の欠陥を隠す効果としては、ソフトフォーカス効果が知られている。ソフトフォーカス効果とは、光拡散粒子を用いて、肌表面の光を散乱させ、肌の影を見えづらくさせることで、肌の欠陥を目立ちにくくする効果である。ソフトフォーカス効果を達成し得る光拡散粒子としては、例えば、窒化ホウ素粒子、ナイロン粒子、ポリマー若しくは他の材料で被覆されたフレーク状若しくは板状アルミナ粒子、球状シリカ粒子等が挙げられる。
特許文献1には、比較的大きな、不規則に形成された一次凝集粒子に融合若しくは一次凝集された実質的に球状の一次粒子からなるアルミナ粒子(フュームドアルミナ粒子)を組成物の総質量に対して3質量%以上含む、ソフトフォーカス化粧品用組成物が開示されている。
特表2007−507550号公報
しかし、化粧品用組成物におけるソフトフォーカス効果を達成するための、さらなる組成物に対する要求は継続して存在する。また、肌の欠陥をソフトフォーカス効果で隠すことが望まれる一方で、肌の明るさを得ることも求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ソフトフォーカス効果を有しながら、明度が良好な化粧品用組成物及び前記化粧品用組成物を用いた肌への塗布方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上である、板状アルミナ粒子を含有する、化粧品用組成物。
(2) 前記板状アルミナ粒子がケイ素及び/又はゲルマニウムを含む、(1)に記載の化粧品用組成物。
(3) 前記板状アルミナ粒子が表層にムライトを含む、(2)に記載の化粧品用組成物。
(4) 前記板状アルミナ粒子がモリブデンを含む、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物。
(5) 前記板状アルミナ粒子100質量%に対するモリブデンの含有量が、三酸化モリブデン換算で、0.1質量%以上1質量%以下である、(4)に記載の化粧品用組成物。
(6) 前記板状アルミナ粒子の固形分1gあたりの吸油量が0.6g以上5.0g以下である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物。
(7) スキンケア用又はメイクアップ用である、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物。
(8) さらに着色剤を含有する、(1)〜(7)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物。
(9) ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、口紅、ネイルエナメル、ボディー化粧品、及び日焼け止めからなる群より選ばれる化粧品である、(1)〜(8)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物。
(10) (1)〜(9)のいずれか一つに記載の化粧品用組成物を皮膚に塗布することを含む、塗布方法。
本発明に係る化粧品用組成物によれば、ソフトフォーカス効果を有しながら、明度が良好な化粧品用組成物を提供することができる。本発明に係る塗布方法は、前記化粧品用組成物を用いた方法であり、肌の欠陥をソフトフォーカス効果で隠しながら、肌に明るさを与えることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る化粧品用組成物及び塗布方法について詳細に説明する。
<化粧品用組成物>
本発明の一実施形態に係る化粧品用組成物(以下、「本実施形態の化粧品用組成物」と称する場合がある)は、板状アルミナ粒子を含有する。板状アルミナ粒子は、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上である。板状アルミナ粒子は、アスペクト比が5〜500であり、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上であるものが好ましい。
本実施形態の化粧品用組成物に含まれる板状アルミナ粒子は上記構成を有し、緻密な結晶構造であることから、板状アルミナ粒子の屈折率が大きくなり、光散乱しやすい。そのため、本実施形態の化粧品用組成物はソフトフォーカス効果を発揮することができ、明度が良好なものとなる。また、本実施形態の化粧品用組成物に含まれる板状アルミナ粒子は、緻密な結晶構造であることから割れにくく、微粉が生じにくい。そのため、本実施形態の化粧品用組成物は、肌への負担が抑えられたものである。
次いで、本実施形態の化粧品用組成物に含まれる各構成成分について、以下に詳細を説明する。
<板状アルミナ粒子>
本実施形態のアルミナ粒子は板状形状を有しており、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上のものである。本実施形態のアルミナ粒子を、「板状アルミナ粒子」、「板状アルミナ」或いは単に「アルミナ粒子」とも称する。
本明細書において「板状」は、アルミナ粒子の平均粒子径を厚みで除したアスペクト比が2以上であることを指す。なお、本明細書において、「アルミナ粒子の厚み」は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージから、無作為に選出された少なくとも50個の板状アルミナ粒子について測定された厚みの算術平均値とする。また、「アルミナ粒子の平均粒子径」は、レーザー回折粒子径測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メジアン径D50として算出された値とする。
アルミナ粒子においては、以下に示す、厚み、粒子径、及びアスペクト比の条件は、それが板状である範囲で、どの様に組み合わせることもできる。また、これら条件で例示する数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。
板状アルミナ粒子は、厚みが0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.03μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
さらに大粒径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、厚みが3μm以上であることが好ましく、厚みが5μm以上60μm以下であることがより好ましい。
上記の厚みを有するアルミナ粒子は、アスペクト比が高く且つ機械的強度に優れることから好ましい。
板状アルミナ粒子は、平均粒子径(D50)が0.1μm以上500μm以下であることが好ましく、0.5μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
より大粒径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、平均粒子径(D50)が10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、22μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましく、31μm以上であることが特に好ましい。上記の平均粒子径の上限値は特に限定されるものではないが、一例として、実施形態の板状アルミナ粒子の平均粒子径(D50)は、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上300μm以下であることが好ましく、22μm以上100μm以下であることがより好ましく、25μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、31μm以上50μm以下であることが特に好ましい。
上記の下限値以上の平均粒子径(D50)を有するアルミナ粒子は、光の反射面の面積が大きいことから、特に光輝性に優れ、化粧品用組成物の明度及びソフトフォーカス効果が良好となる。また、上記上限値以下の平均粒子径(D50)を有するアルミナ粒子は、化粧品用組成物への配合に好適である。
また、板状アルミナ粒子は粒子径が揃っており、粒度分布が狭いことで、顔料の発色性への影響が少なく、化粧品用組成物の明度や彩度がより良好なものとなる。
板状アルミナ粒子は、厚みに対する平均粒子径の比率であるアスペクト比が2以上500以下であることが好ましく、5以上500以下であることが好ましく、10以上500以下であることが好ましく、13以上300以下であることがより好ましく、15以上300であることがより好ましく、20以上100以下であることがさらに好ましい。板状アルミナ粒子のアスペクト比が2以上であると、2次元の配合特性を有し得ることから好ましく、板状アルミナ粒子のアスペクト比が500以下であると、機械的強度に優れることから好ましい。アスペクト比が15以上であると、顔料とした際に高輝度となるため、好ましい。
さらに大粒径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、厚みに対する平均粒子径の比率であるアスペクト比が2以上50以下であることが好ましく、3以上30以下であることがより好ましい。
板状アルミナ粒子は、円形板状や楕円形板状であってもよいが、粒子形状は、例えば、多角板状であることが、取り扱い性や製造のし易さの点から好ましい。
板状アルミナ粒子は、どの様な製造方法に基づいて得られたものであってもよいが、よりアスペクト比が高く、より分散性に優れ、より生産性に優れる点で、モリブデン化合物(好ましくはさらにカリウム化合物)と形状制御剤の存在下でアルミニウム化合物を焼成する事により得ることが好ましい。形状制御剤は、珪素、珪素化合物、及びゲルマニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を使用するのがよい。形状制御剤は後述のムライトのSiの供給元となることから、珪素又は珪素元素を含む珪素化合物を使用するのがより好ましい。
上記製造方法において、モリブデン化合物はフラックス剤として用いられる。本明細書中では、以下、フラックス剤としてモリブデン化合物を用いたこの製造方法を単に「フラックス法」ということがある。フラックス法については、後に詳記する。なお、かかる焼成により、モリブデン化合物がアルミニウム化合物と高温で反応し、モリブデン酸アルミニウムを形成した後、このモリブデン酸アルミニウムが、さらに、より高温でアルミナと酸化モリブデンに分解する際に、モリブデン化合物が板状アルミナ粒子内に取り込まれるものと考えられる。酸化モリブデンが昇華し、回収して、再利用することもできる。
なお、板状アルミナ粒子がムライトを表層に含む場合には、この過程で、形状制御剤として配合された珪素又は珪素原子を含む化合物とアルミニウム化合物が、モリブデンを介し反応することにより、ムライトが板状アルミナ粒子の表層に形成されるものと考えられる。ムライトの生成機構について、より詳しくは、アルミナの板表面にて、モリブデンとSi原子の反応によるMo−O−Siの形成、並びにモリブデンとAl原子の反応によるMo−O−Alの形成が起こり、高温焼成することでMoが脱離するとともにSi−O−Al結合を有するムライトが形成するものと考えられる。
板状アルミナ粒子に取り込まれない酸化モリブデンは、昇華させることにより回収して、再利用することが好ましい。こうすることで、板状アルミナ表面に付着する酸化モリブデン量を低減でき、樹脂の様な有機バインダーやガラスの様な無機バインダーなどの被分散媒体に分散させる際に、酸化モリブデンがバインダーに混入することがなく、板状アルミナ本来の性質を最大限に付与することが可能となる。
尚、本明細書においては、後記する製造方法において昇華しうる性質を有するものをフラックス剤、昇華し得ないものを形状制御剤と称するものとする。
前記板状アルミナ粒子の製造において、モリブデン及び形状制御剤を活用することにより、アルミナ粒子は高い結晶性および高いα結晶率を有し、自形を持つことから、優れた分散性と機械強度、化学安定性を実現することができる。
板状アルミナ粒子がムライトを表層に含む場合には、板状アルミナ粒子の表層に生成されるムライトの量は、モリブデン化合物及び形状制御剤の使用割合によって制御可能であるが、特に形状制御剤として使用される珪素又は珪素元素を含む珪素化合物の使用割合によって制御可能である。板状アルミナ粒子の表層に生成されるムライトの量の好ましい値と、原料の好ましい使用割合については、後に詳記する。
板状アルミナ粒子は、光輝性向上の観点から、アスペクト比が5〜500である板状アルミナ粒子であり、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上であることが好ましい。
上記縦緩和時間Tが5秒以上であるということは、板状アルミナ粒子の結晶性が高いことを意味するものである。固体状態における縦緩和時間が大きいと結晶の対称性がよく、結晶性が高いという知見が報告されている(既報:北川進ら著「錯体化学会選書4 多核種の溶液および固体NMR」、三共出版株式会社、p80−82)。
板状アルミナ粒子において、上記縦緩和時間Tは、5秒以上が好ましく、6秒以上がより好ましく、7秒以上がさらに好ましい。
実施形態の板状アルミナ粒子において、上記縦緩和時間Tの上限値は、特に制限されるものではないが、例えば、22秒以下であってもよく、15秒以下であってもよく、12秒以下であってもよい。
上記に例示した上記縦緩和時間Tの数値範囲の一例としては、5秒以上22秒以下であってもよく、6秒以上15秒以下であってもよく、7秒以上12秒以下であってもよい。
板状アルミナ粒子は、固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける60〜90ppmの4配位アルミニウムのピークが不検出であることが好ましい。かかる板状アルミナ粒子は、異なる配位数の結晶が含まれることに起因した、結晶の対称性の歪みを起点とした破損・脱落が起こり難いものと考えられ、形状安定性により優れる傾向にある。
従来、無機物の結晶性の程度は、XRD分析等の結果により評価されることが、一般的である。しかし、本発明者らの検討により、アルミナ粒子に対する結晶性の評価について、上記縦緩和時間Tを指標とすることで、従来のXRD分析よりも精度の良い解析結果が得られることを見出だした。実施形態に係る板状アルミナ粒子は、上記縦緩和時間Tが5秒以上と大きく、アルミナ粒子の結晶性が高いといえる。すなわち、実施形態に係る板状アルミナ粒子は、おそらく結晶性が高いために、光反射が向上し、光輝性に優れ、化粧品用組成物の明度及びソフトフォーカス効果が良好となるものと考えられる。このことは、アルミナ粒子の結晶性が高いために、化粧品用組成物においてアルミナ粒子が割れ難いことも要因の一つであるとも考えられる。アルミナ粒子が割れ難いことで、化粧品用組成物に配合した際、良好なテクスチャーを保つことができる。
板状のアルミナ粒子は、球状のアルミナ粒子と比べ、従来、結晶性の高いアルミナ粒子を得ることは難しかった。このことは、板状アルミナ粒子では、球状のアルミナ粒子とは異なり、その製造過程において結晶成長の方向に偏りを生じさせる必要があるためと考えられる。
対して、上記縦緩和時間Tの値を満たす上記のような板状アルミナ粒子は、板状形状でありながら結晶性が高いものである。そのため、優れた化学安定性を示し、さらに塗膜安定性や機械強度が高められた、非常に有用なものである。
また、板状形状の指標として、実施形態の板状アルミナ粒子は、Cu−Kα線を用いたX線回折測定で得られる回折ピークの、(006)面に対応する2θ=41.6±0.3度のピーク強度I(006)と、(113)面に対応する2θ=43.3±0.3度のピーク強度I(113)と、の比I(006)/I(113)(以下、I(006)/I(113)を、(006/113)比と略す。)が、好ましくは0.2以上30以下、より好ましくは1以上20以下であってよく、更に好ましくは3以上10以下、特に好ましくは7.5以上10以下である。この場合の板状アルミナ粒子は、例えば、平均粒子径(D50)が10μm以上、厚みが0.1μm以上である。
上記(006/113)比の値が大きいことは、(113)面に対し(006)面の比率が大きいことを意味し、(006)面の方位の結晶に対応する面が顕著に発達した平板状のアルミナ粒子であることを意味していると理解される。かかる平板状のアルミナ粒子は、板状アルミナの板形状の表面において発達した上面又は下面の面積が大きく、そこに反射する反射光の視認性が高まるとともに、(113)面の方位の結晶に対応する面の形成が抑制されているので、一粒あたりの質量が小さくとも、高い光輝性を発揮する。
板状アルミナ粒子の等電点のpHは、例えば2〜6の範囲であり、2.5〜5の範囲であることが好ましく、3〜4の範囲であることがより好ましい。等電点のpHが上記範囲内にある板状アルミナ粒子は、静電反発力が高く、それ自体で上記した様な被分散媒体へ配合した際の分散安定性を高めることができ、更なる性能向上を意図したカップリング処理剤等の表面処理による改質がより容易となる。
等電点のpHの値は、ゼータ電位測定をゼータ電位測定装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZSP)にて、試料20mgと10mM KCl水溶液10mLを泡取り錬太郎(シンキー社製、ARE−310)にて攪拌・脱泡モードで3分間攪拌し、5分静置した上澄みを測定用試料とし、自動滴定装置により、試料に0.1N HClを加え、pH=2までの範囲でゼータ電位測定を行い(印加電圧100V、Monomodlモード)、電位ゼロとなる等電点のpHを評価することで得られる。
板状アルミナ粒子は、例えば密度が3.70g/cm以上4.10g/cm以下であり、密度が3.72g/cm以上4.10g/cm以下であることが好ましく、密度が3.80g/cm以上4.10g/cm以下であることがより好ましい。
密度は、300℃3時間の条件で板状アルミナ粒子の前処理を行った後、マイクロメリティックス社製 乾式自動密度計アキュピックII1330を用いて、測定温度25℃、ヘリウムをキャリアガスとして使用した条件で測定できる。
板状アルミナ粒子は、例えば比表面積が、0.01m/g以上50m/g以下であることが好ましく、0.1m/g以上20m/g以下であることがより好ましく、0.5m/g以上10m/g以下であることがさらに好ましく、1.3m/g以上10m/g以下であることが特に好ましい。
比表面積は、BET法による窒素ガス吸着/脱着法から測定された板状アルミナ粒子1g当たりの表面積として求めることができる。
なお、この比表面積は、JIS Z 8830:BET1点法(吸着ガス:窒素)等で測定することができる。
[アルミナ]
板状アルミナ粒子に含まれる「アルミナ」は、酸化アルミニウムであり、例えば、γ、δ、θ、κ、等の各種の結晶形の遷移アルミナであっても、または遷移アルミナ中にアルミナ水和物を含んでいてもよいが、より機械的な強度または化学安定性に優れる点で、基本的にα結晶形(α型)であることが好ましい。α結晶形がアルミナの緻密な結晶構造であり、板状アルミナの機械強度または化学安定性が高められ光輝性の向上に有利となる。
α結晶化率は、100%にできるだけ近いほうが、α結晶形本来の性質を発揮しやすくなるので好ましい。板状アルミナ粒子のα結晶化率は、例えば90%以上であり、95%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
[珪素・ゲルマニウム]
実施形態の板状アルミナ粒子は、珪素及び/又はゲルマニウムを含んでいてもよい。
当該珪素又はゲルマニウムは、形状制御剤として用いることのできる珪素、珪素化合物、及び/又はゲルマニウム化合物に由来するものであってよい。これらを活用することにより、後述する製造方法において、上記縦緩和時間Tの値を満たす板状アルミナ粒子を容易に製造することができる。
(珪素)
実施形態の板状アルミナ粒子は、珪素を含んでいてもよい。実施形態に係る板状アルミナ粒子は、珪素を表層に含んでいてもよい。
ここで「表層」とは実施形態に係る板状アルミナ粒子の表面から10nm以内のことをいう。この距離は、実施例において計測に用いたXPSの検出深さに対応する。
板状アルミナ粒子は、珪素が表層に偏在していてもよい。ここで「表層に偏在」するとは、前記表層における単位体積あたりの珪素の質量が、前記表層以外における単位体積あたりの珪素の質量よりも多い状態をいう。珪素が表層に偏在していることは、XPSによる表面分析と、XRFによる全体分析の結果を比較することで判別できる。
板状アルミナ粒子が含む珪素は、珪素単体であってもよく、珪素化合物中の珪素であってもよい。板状アルミナ粒子は、珪素又は珪素化合物として、ムライト、Si、SiO、SiO、及びアルミナと反応して生成したケイ酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよく、上記物質を表層に含んでいてもよい。ムライトについては、後述する。
板状アルミナ粒子は、形状制御剤として珪素又は珪素元素を含む珪素化合物を使用した場合、XRF分析によってSiが検出され得る。板状アルミナ粒子は、XRF分析によって取得された、Alに対するSiのモル比[Si]/[Al]が例えば0.04以下であり、0.035以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。
また、前記モル比[Si]/[Al]の値は、特に限定されるものではないが、例えば0.003以上であり、0.004以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましい。
板状アルミナ粒子は、XRF分析によって取得された、Alに対するSiのモル比[Si]/[Al]が例えば0.003以上0.04以下であり、0.004以上0.035以下であることが好ましく、0.005以上0.02以下であることがより好ましい。
前記XRF分析により取得された前記モル比[Si]/[Al]の値が、上記範囲内である板状アルミナ粒子は、板状形状が良好に形成される。また、付着物が板状アルミナ粒子の表面に付着し難く、品質に優れる。この付着物とは、SiO粒とみられ、板状アルミナ粒子表層でのムライトの生成が飽和状態となり、過剰となったSiに由来して生成されるものと考えられる。
より大粒子径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、板状アルミナ粒子は、XRF分析によって取得された、Alに対するSiのモル比[Si]/[Al]が、0.0003以上0.01以下であることが好ましく、0.0005以上0.0025以下であることが好ましく、0.0006以上0.001以下であることがより好ましい。
板状アルミナ粒子は、その製造方法で用いた珪素又は珪素元素を含む珪素化合物に対応した、珪素を含み得るものである。板状アルミナ粒子100質量%に対する珪素の含有量は、二酸化珪素換算で、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0.001〜5質量%であり、さらに好ましくは0.01〜4質量%であり、さらに好ましくは0.3〜2.5質量%であり、特に好ましくは0.6〜2.5質量%である。
珪素の含有量が上記範囲内であると、板状形状が良好に形成さる。また、SiO粒とみられる付着物が板状アルミナ粒子の表面に付着し難く、品質に優れる。
より大粒子径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、板状アルミナ粒子100質量%に対する珪素の含有量は、二酸化珪素換算で、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは、0.001〜3質量%であり、さらに好ましくは、0.01〜1質量%であり、特に好ましくは、0.03〜0.3質量%である。
上記の珪素の含有量は、XRF分析により求めることができる。XRF分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
(ムライト)
実施形態の板状アルミナ粒子は、ムライトを含んでいてもよい。板状アルミナ粒子は、ムライトを表層に含むことで、テクスチャーがより良好になり、また、肌への密着性がより高まることで、化粧持ちがよく、化粧崩れしにくい化粧品用組成物を提供できる。また、板状アルミナ粒子は、ムライトを表層に含むことで、より一層ソフトフォーカス効果に優れた化粧品用組成物を提供できる。
ムライトは、板状アルミナ粒子の表層に含まれることで、顕著なソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果が発現する。板状アルミナ粒子が表層に含んでもよい「ムライト」は、AlとSiとの複合酸化物でありAlSizと表わされるが、x、y、zの値に特に制限はない。より好ましい範囲はAlSi〜AlSi13である。なお、後述の実施例でXRDピーク強度を確認しているのはAl2.85Si6.3、AlSi6.5、Al3.67Si7.5、AlSi、又はAlSi13を含むものである。板状アルミナ粒子は、Al2.85Si6.3、AlSi6.5、Al3.67Si7.5、AlSi、およびAlSi13からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を表層に含んでいてもよい。ここで「表層」とは板状アルミナ粒子の表面から10nm以内のことをいう。この距離は、XPSの検出深さに対応する。尚、このムライト表層は、10nm以内の非常に薄い層になり、表面及び界面におけるムライト結晶の欠陥等が多くなれば、肌とのなじみがさらに良好になり、結晶欠陥の無い或いは少ないムライトに比べて、更に、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を顕著に発揮することができる。
板状アルミナ粒子は、ムライトが表層に偏在していることが好ましい。ここで「表層に偏在」するとは、前記表層における単位体積あたりのムライトの質量が、前記表層以外における単位体積あたりのムライトの質量よりも多い状態をいう。ムライトが表層に偏在していることは、XPSによる表面分析と、XRFによる全体分析の結果を比較することで判別できる。ムライトは表層に偏在させることで、表層だけでなく表層以外(内層)にもムライトを存在させる場合に比べて、より少量で、同様水準でムライトに基づく優れたソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を発揮することができる。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、形状制御剤として珪素又は珪素元素を含む珪素化合物を使用し、表層にムライトを含む場合、XPS分析によってSiが検出される。実施形態に係る板状アルミナ粒子がムライトを含む場合、XPS分析において取得された、Alに対するSiのモル比[Si]/[Al]の値が、0.15以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.25以上であることがさらに好ましい。XPSの結果によれば、原料のSiOの仕込み量を増やしていくことで、[Si]/[Al]の値が上昇していくが、値はある程度までで頭打ちとなる場合がある。これは、板状アルミナ粒子上のSi量が飽和状態となったことを意味するものと考えられる。したがって、前記モル比[Si]/[Al]の値が、0.20以上のもの、特に0.25以上の板状アルミナ粒子は、表面がムライトで被覆された状態にあると考えられる。上記被覆された状態とは、板状アルミナ粒子の表面の全部がムライトで被覆されていてもよく、板状アルミナ粒子の表面の少なくとも一部がムライトで被覆されていてもよい。
前記XPS分析のモル比[Si]/[Al]の値の上限は特に限定されるものではないが、0.4以下であることが好ましく、0.35以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XPS分析において取得された、Alに対するSiのモル比[Si]/[Al]の値が、0.15以上0.4以下であることが好ましく、0.20以上0.35以下であることがより好ましく、0.25以上0.3以下であることがさらに好ましい。
前記XPS分析において取得された、前記モル比[Si]/[Al]の値が、上記範囲である板状アルミナ粒子は、表層に含まれるムライト量が適当であり、品質に優れ、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れる。
XPS分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
本実施形態においては、後記する板状アルミナの製造方法において、仕込んだSiO等の、珪素又は珪素元素を含む珪素化合物が高効率でムライトに変換されることにより、優れた品質の板状アルミナが得られる。
ムライトを含む実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRD分析によってムライト由来の回折ピークが検出される。このムライト由来の回折ピークは、珪素又は珪素元素を含む珪素化合物、例えば、SiO等の回折ピークとは明確に区別することが可能である。実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRD分析によって取得された、2θが35.1±0.2°に認められるα−アルミナの(104)面のピーク強度に対する、2θが26.2±0.2°に認められるムライトのピーク強度の比が、例えば0.02以上であってもよく、0.05以上であってもよく、0.1以上であってもよい。
前記ピーク強度の比の値の上限は、特に限定されるものではないが、例えば0.3以下であり、0.2以下であることが好ましく、0.12未満であることがより好ましい。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRD分析によって取得された、2θが35.1±0.2°に認められるα−アルミナの(104)面のピーク強度に対する、2θが26.2±0.2°に認められるムライトのピーク強度の比が、例えば0.02以上0.3以下であってもよく、0.05以上0.2以下であってもよく、0.1以上0.12未満であってもよい。
板状アルミナ粒子表面のムライトの有無の分析は、リガク社製、Ultima IV等の広角X線回折(XRD)装置を用いて行うことができる。
例えば、試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになるように充填し、それを上記広角X線回折(XRD)装置にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2度/分、走査範囲10〜70度の条件で測定を行う。
2θ=26.2±0.2度に認められるムライトのピーク高さをA、2θ=35.1±0.2度に認められる(104)面のα−アルミナのピーク高さをBとし、2θ=30±0.2度のベースラインの値をCとして、下記の式よりムライトの有無を判定することができる。Rの値は、例えば0.02以上であってよく、0.02以上0.3以下であってもよく、0.05以上0.2以下であってもよく、0.1以上0.12未満であってもよい。
R=(A−C)/(B−C)
(R:α−アルミナの(104)面のピーク高さBに対するムライトのピークの高さAの比)
前記ピーク強度の比の値が、上記範囲内である板状アルミナ粒子は、ムライト量が適当であり、品質に優れ、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れる。
XRD分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
ムライトを含む実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRF分析によってSiが検出される。
前記XRF分析により取得された前記モル比[Si]/[Al]の値は上記に例示したものであってよく、上記範囲内である板状アルミナ粒子は、ムライト量が適当であり、品質に優れ、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れる。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、その製造方法で用いた珪素又は珪素元素を含む珪素化合物に基づくムライトに対応した、珪素を含むものである。実施形態に係る板状アルミナ粒子100質量%に対する珪素の含有量は上記に例示したものであってよく、珪素の含有量が上記範囲内であると、ムライト量が適当であることから好ましい。上記珪素の含有量はXRF分析により求めることができる。
XRF分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
また、前記表層のムライトは、ムライト層を形成していてもよく、ムライトとアルミナとが混在した状態であってもよい。表層のムライトとアルミナとの界面は、ムライトとアルミナとが物理的に接触した状態であってもよく、ムライトとアルミナとがSi−O−Alなどの化学結合を形成していてもよい。アルミナとSiOとの組み合わせに対して、アルミナとムライトとを必須成分とする組み合わせは、構成原子組成の類似性の高さや、フラックス法を採用した場合には、それに基づく上記Si−O−Alなどの化学結合の形成し易さの観点から、よりアルミナとムライトとが強固に結着し剥がれ難いものとすることが出来る。このことから、Si量が同等水準であれば、アルミナとムライトとを必須成分とする組み合わせは、より長期間に亘ってソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を発揮出来るため、より好ましい。アルミナとムライトとを必須成分とする組み合わせでの技術的効果は、アルミナとムライトのみでも、アルミナとムライトとシリカでも期待はできるが、どちらかと言えば、前者の二者組み合わせが技術的効果の水準はより高くなる。
(ゲルマニウム)
実施形態の板状アルミナ粒子は、ゲルマニウムを含んでいてもよい。また、板状アルミナ粒子は、ゲルマニウムを表層に含んでいてもよい。板状アルミナ粒子がゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を含むことにより、例えば、テクスチャーがより良好になり、また、肌への密着性がより高まることで、化粧持ちがよく、化粧崩れしにくい化粧品用組成物を提供できる。また、板状アルミナ粒子の表層にモース硬度の低いゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を含むことにより、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れたものとすることができる。
使用する原料によっても異なるが、板状アルミナ粒子は、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物として、例えば、Ge、GeO、GeO、GeCl、GeBr、GeI、GeS、AlGe、GeTe、GeTe3、As、GeSe、GeSAs、SiGe、LiGe、FeGe、SrGe、GaGe等の化合物、及びこれらの酸化物等からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいてもよく、上記物質を表層に含んでいてもよい。
なお、板状アルミナ粒子が含む「ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物」と、原料の形状制御剤として用いる「原料ゲルマニウム化合物」とは同じ種類のゲルマニウム化合物であってもよい。例えば、原料のGeOの添加により製造された板状アルミナ粒子にGeOが検出されてよい。
ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物は、板状アルミナ粒子の表層に含まれることで、顕著なソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果が発現する。ここで「表層」とは板状アルミナ粒子の表面から10nm以内のことをいう。
板状アルミナ粒子は、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物が表層に偏在していることが好ましい。ここで「表層に偏在」するとは、前記表層における単位体積あたりのゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の質量が、前記表層以外における単位体積あたりのゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の質量よりも多い状態をいう。ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物が表層に偏在していることは、XPSによる表面分析と、XRFによる全体分析の結果を比較することで判別できる。ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物は表層に偏在させることで、表層だけでなく表層以外(内層)にもゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を存在させる場合に比べて、より少量で、同様水準でゲルマニウム又はゲルマニウム化合物に基づくソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を発揮することができる。
ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物は、板状アルミナ粒子の表層に含まれることで、顕著なソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果が発現する。ここで「表層」とは実施形態に係る板状アルミナ粒子の表面から10nm以内のことをいう。尚、このゲルマニウムを含む表層は、10nm以内の非常に薄い層になり、例えば二酸化ゲルマニウムであった場合、表面及び界面における二酸化ゲルマニウム構造の欠陥等が多くなれば、肌とのなじみがさらに良好になり、構造欠陥の無い或いは少ない二酸化ゲルマニウムに比べて、更に、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を顕著に発揮することができる。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物が表層に偏在していることが好ましい。ここで「表層に偏在」するとは、前記表層における単位体積あたりのゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の質量が、前記表層以外における単位体積あたりのゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の質量よりも多い状態をいう。ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物が表層に偏在していることは、XPSによる表面分析と、XRFによる全体分析の結果を比較することで判別できる。ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物は表層に偏在させることで、表層だけでなく表層以外(内層)にもゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を存在させる場合に比べて、より少量で、同様水準でゲルマニウム又はゲルマニウム化合物に基づくソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果を発揮することができる。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、表層にゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を含むことで、XPS分析によってGeが検出される。実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XPS分析において取得された、Alに対するGeのモル比[Ge]/[Al]の値が、0.005以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましく、0.03以上であることが特に好ましい。原料のGeOの仕込み量を増やしていくことで、[Ge]/[Al]の値が上昇していくが、値はある程度までで頭打ちとなる場合がある。これは、板状アルミナ粒子上のGe量が飽和状態となったことを意味するものと考えられる。板状アルミナ粒子の表面の全部がゲルマニウム又はゲルマニウム化合物で被覆されていてもよく、板状アルミナ粒子の表面の少なくとも一部がゲルマニウム又はゲルマニウム化合物で被覆されていてもよい。
前記XPS分析のモル比[Ge]/[Al]の値の上限は特に限定されるものではないが、0.3以下であってもよく、0.25以下であってもよく、0.2以下であってもよく、0.17以下あってもよく、0.1以下であってもよい。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XPS分析において取得された、Alに対するGeのモル比[Ge]/[Al]の値が、0.005以上0.3以下であってもよく、0.005以上0.25以下であってもよく0.01以上0.2以下であってもよく、0.02以上0.17以下であってもよく、0.03以上0.1以下であってもよい。
前記XPS分析において取得された、前記モル比[Ge]/[Al]の値が、上記範囲である板状アルミナ粒子は、表層に含まれるゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の量が適当であり、板状形状が良好に形成され、品質に優れ、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れる。
XPS分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
本実施形態においては、後記する板状アルミナの製造方法において、形状制御剤として仕込んだGeO等の原料ゲルマニウム化合物が、高効率で板状アルミナの表層でゲルマニウムを含む層として形成されることにより、優れた品質の板状アルミナが得られる。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、形状制御剤としてゲルマニウム化合物を使用した場合、XRF分析によってGeが検出され得る。実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRF分析によって取得された、Alに対するGeのモル比[Ge]/[Al]が例えば0.08以下であり、0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましい。
また、前記モル比[Ge]/[Al]の値は、特に限定されるものではないが、例えば0.0005以上であり、0.001以上であることが好ましく、0.0015以上であることがより好ましい。
実施形態に係る板状アルミナ粒子は、XRF分析によって取得された、Alに対するGeのモル比[Ge]/[Al]が例えば0.0005以上0.08以下であり、0.003)1以上0.05以下であることが好ましく、0.0015以上0.03以下であることがより好ましい。
前記XRF分析により取得された前記モル比[Ge]/[Al]の値が、上記範囲内である板状アルミナ粒子は、含まれるゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の量が適当であり、板状形状が良好に形成され、品質に優れ、ソフトフォーカス効果及びテクスチャー向上効果により優れる。
板状アルミナ粒子は、その製造方法で用いた原料ゲルマニウム化合物に対応した、ゲルマニウムを含むものである。板状アルミナ粒子100質量%に対するゲルマニウムの含有量は、二酸化ゲルマニウム換算で、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは、0.001〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.01〜4質量%であり、特に好ましくは、0.1〜3.0質量%である。ゲルマニウムの含有量が上記範囲内であると、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の量が適当であり、板状形状が良好に形成されることから好ましい。上記ゲルマニウムの含有量はXRF分析により求めることができる。
XRF分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
また、前記表層のゲルマニウム又はゲルマニウム化合物は、層を形成していてもよく、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物とアルミナとが混在した状態であってもよい。表層のゲルマニウム又はゲルマニウム化合物とアルミナとの界面は、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物とアルミナとが物理的に接触した状態であってもよく、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物とアルミナとがGe−O−Alなどの化学結合を形成していてもよい。
[モリブデン]
実施形態の板状アルミナ粒子は、モリブデンを含有していてもよい。また、板状アルミナ粒子は、その表層にモリブデンを含んでいるのが好ましい。
当該モリブデンは、後述するアルミナ粒子の製造方法において、フラックス剤として用いたモリブデン化合物に由来するものであってよい。
モリブデンは触媒機能、光学的機能を有する。また、モリブデンを活用することにより、後述する製造方法において、板状形状でありながら結晶性が高い、優れた光輝性を有する板状アルミナ粒子を製造することができる。
モリブデンの使用量を多くすることで、粒子サイズ及び上記の(006/113)比の値を満たし、得られたアルミナ粒子の光輝性がさらに優れたものとなる傾向がある。さらには、モリブデンを活用することにより、ムライトの形成が促進され、高アスペクト比と優れた光輝性を有する板状アルミナ粒子を製造することができる。
当該モリブデンとしては、特に制限されないが、モリブデン金属の他、酸化モリブデンや一部が還元されたモリブデン化合物、モリブデン酸塩等が含まれる。
モリブデン化合物のとりうる多形のいずれか、または組み合わせで板状アルミナ粒子に含まれてよく、α-MoO、β-MoO、MoO、MoO、モリブデンクラスター構造等として板状アルミナ粒子に含まれてもよい。
モリブデンの含有形態は、特に制限されず、板状アルミナ粒子の表面に付着する形態で含まれていても、アルミナの結晶構造のアルミニウムの一部に置換された形態で含まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
XRF分析において取得された、板状アルミナ粒子100質量%に対するモリブデンの含有量は、三酸化モリブデン換算で、好ましくは、10質量%以下であり、焼成温度、焼成時間、モリブデン化合物の昇華速度を調整する事で、より好ましくは0.001〜5質量%であり、さらに好ましくは0.01〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.1〜1質量%である。モリブデンの含有量が10質量%以下であると、アルミナのα単結晶品質を向上させることから好ましい。
より大粒子径の板状アルミナ粒子を用いる場合には、実施形態に係る板状アルミナ粒子100質量%に対するモリブデンの含有量は、三酸化モリブデン換算で、好ましくは、10質量%以下であり、焼成温度、焼成時間、モリブデン化合物の昇華速度を調整する事で、より好ましくは、0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは、0.3〜1質量%である。
上記モリブデンの含有量はXRF分析により求めることができる。XRF分析は、後述する実施例に記載の測定条件と同一の条件、又は同一の測定結果が得られる互換性のある条件のもと実施されるものとする。
また、アルミナ粒子表面のMo量の分析は、上記のX線光電子分光(XPS)装置を用いて行うことができる。
[カリウム]
板状アルミナ粒子は、更にカリウムを含有していてもよい。
カリウムは後述のアルミナ粒子の製造方法においてフラックス剤として使用可能なカリウムに由来するものであってよい。
カリウムを活用することにより、後述するアルミナ粒子の製造方法において、アルミナ粒子の粒子径を適度に向上させることができる。
当該カリウムとしては、特に制限されないが、カリウム金属の他、酸化カリウムや一部が還元されたカリウム化合物等が含まれる。
カリウムの含有形態は、特に制限されず、板状アルミナ粒子の平板状アルミナの表面に付着する形態で含まれていても、アルミナの結晶構造のアルミニウムの一部に置換された形態で含まれていてもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
XRF分析において取得された、前記アルミナ粒子100質量%に対するカリウムの含有量が、酸化カリウム(KO)換算で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.01〜1.0質量%であることがより好ましく、0.03〜0.5質量%であることがさらに好ましく、0.05〜0.3質量%であることが特に好ましい。カリウムの含有量が上記範囲内であるアルミナ粒子は、板状形状を有し、平均粒径等の値が好適なものとなるため好ましい。
(他の原子)
他の原子は、本発明の効果を阻害しない範囲において、機械強度または電気や磁性機能付与を目的として意図的にアルミナ粒子に添加されるものを意味する。
他の原子としては、特に制限されないが、亜鉛、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、イットリウム等が挙げられる。これらの他の原子は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
アルミナ粒子中の他の原子の含有量は、アルミナ粒子の質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
[不可避不純物]
アルミナ粒子は不可避不純物を含みうる。
不可避不純物は、製造で使用する金属化合物に由来したり、原料中に存在したり、製造工程において不可避的にアルミナ粒子に混入するものであり、本来は不要なものであるが、微量であり、アルミナ粒子の特性に影響を及ぼさない不純物を意味する。
不可避不純物としては、特に制限されないが、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ナトリウム、等が挙げられる。これらの不可避不純物は単独で含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
アルミナ粒子中の不可避不純物の含有量は、アルミナ粒子の質量に対して、10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、10〜500ppmであることがさらに好ましい。
[有機化合物]
一実施形態において、板状アルミナ粒子は有機化合物を含んでいてもよい。当該有機化合物は、板状アルミナ粒子の表面に存在し、板状アルミナ粒子の表面物性を調節する機能を有する。例えば、表面に有機化合物を有する板状アルミナ粒子は肌との密着性が向上することから、化粧品用組成物として板状アルミナ粒子の機能を最大限に発現することができる。
有機化合物としては、特に制限されないが、有機シラン、アルキルホスホン酸、およびポリマーが挙げられる。
前記有機シランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のアルキル基の炭素数が1〜22までのアルキルトリメトキシシランまたはアルキルトリクロロシラン類、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン類、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン類等が挙げられる。
前記ホスホン酸としては、例えばメチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2_エチルヘキシルホスホン酸、シクロヘキシルメチルホスホン酸、シクロヘキシルエチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ドデシルベンゼンホスホン酸が挙げられる。
前記ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート類を好適に用いることができる。具体的には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリt−ブチル(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート等であり、また、汎用のポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニル酢酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等ポリマーを挙げることができる。
なお、上記有機化合物は、単独で含まれていても、2種以上を含んでいてもよい。
有機化合物の含有形態としては、特に制限されず、アルミナと共有結合により連結されていてもよいし、アルミナを被覆していてもよい。
有機化合物の含有率は、アルミナ粒子の質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以上0.01質量%以下であることがさらに好ましい。有機化合物の含有率が20質量%以下であると、板状アルミナ粒子由来の物性発現が容易にできることから好ましい。
[板状アルミナ粒子の吸油量]
板状アルミナ粒子の固形分1gあたりの吸油量は0.6g以上5.0g以下が好ましく、0.8g以上4.5g以下がより好ましく、1.0g以上4.0g以下がさらに好ましい。本実施形態の化粧品用組成物に用いられる板状アルミナ粒子は、上記の縦緩和時間Tが、5秒以上という緻密な結晶構造を有し、且つ、従来の球状アルミナ粒子よりも表面積が大きいため、吸油量を上記範囲とすることができる。また、吸油量が上記範囲であることで、本実施形態の化粧品用組成物は、より化粧持ちがよく、化粧崩れがしにくい傾向がある。吸油量は、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
[板状アルミナ粒子の含有量]
本実施形態の化粧品用組成物中の板状アルミナ粒子の含有量は、組成物の総質量に対して0.01質量%以上95質量%以下とすることができ、0.1質量%以上50質量%以下とすることができ、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
<板状アルミナ粒子の製造方法>
板状アルミナ粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の技術が適宜適用されうるが、相対的に低温で高α結晶化率を有するアルミナを好適に制御することができる観点から、好ましくはモリブデン化合物を利用したフラックス法での製造方法が適用されうる。
より詳細には、板状アルミナ粒子の好ましい製造方法は、モリブデン化合物および形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する工程(焼成工程)を含む。焼成工程は焼成対象の混合物を得る工程(混合工程)で得られた混合物を焼成する工程であってもよい。
[混合工程]
混合工程は、アルミニウム化合物と、モリブデン化合物と、形状制御剤と、を混合して混合物とする工程である。前記混合物は、さらにカリウム化合物を含むことが好ましい。以下、混合物の内容について説明する。
(アルミニウム化合物)
アルミニウム化合物は、本実施形態の板状アルミナ粒子の原料であり、熱処理によりアルミナになるものであれば特に限定されず、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移アルミナ(γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナなど)、α−アルミナ、二種以上の結晶相を有する混合アルミナなどが使用でき、これら前駆体としてのアルミニウム化合物の形状、粒子径、比表面積等の物理形態については、特に限定されるものではない。
下で詳記するフラックス法によれば、アルミニウム化合物の形状は、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどのいずれであっても好適に用いることができる。
同様に、アルミニウム化合物の粒子径は、下で詳記するフラックス法によれば、数nmから数百μmまでのアルミニウム化合物の固体を好適に用いることができる。
アルミニウム化合物の比表面積も特に限定されるものではない。モリブデン化合物が効果的に作用するため、比表面積が大きい方が好ましいが、焼成条件やモリブデン化合物の使用量を調整する事で、いずれの比表面積のものでも原料として使用することができる。
また、アルミニウム化合物は、アルミニウム化合物のみからなるものであっても、アルミニウム化合物と有機化合物との複合体であってもよい。例えば、有機シランを用いて、アルミニウム化合物を修飾して得られる有機/無機複合体、ポリマーを吸着したアルミニウム化合物複合体などであっても好適に用いることができる。これらの複合体を用いる場合、有機化合物の含有率としては、特に制限はないが、板状アルミナ粒子を効率的に製造できる観点より、当該含有率は60質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
(形状制御剤)
実施形態に係る板状アルミナ粒子を形成するために、形状制御剤を用いることできる。形状制御剤はモリブデン化合物の存在下でアルミナ化合物を焼成によるアルミナの板状結晶成長に重要な役割を果たす。
形状制御剤の存在状態は、特に制限されず、例えば、形状制御剤とアルミニウム化合物と物理混合物、形状制御剤がアルミニウム化合物の表面または内部に均一または局在に存在した複合体などが好適に用いることができる。
また、形状制御剤をアルミニウム化合物に添加しても良いが、アルミニウム化合物中に不純物として含んでも良い。
形状制御剤は板状結晶成長に重要な役割を果たす。酸化モリブデンフラックス法では、酸化モリブデンがアルミニウム化合物と反応することでモリブデン酸アルミニウムを形成させ、次いで、このモリブデン酸アルミニウムが分解する過程における化学ポテンシャルの変化が結晶化の駆動力となっているため、自形面(113)の発達した六角両錘型の多面体粒子が形成する。実施形態の製造方法においては、形状制御剤が、α−アルミナ成長過程において粒子表面近傍に局在化することで、自形面(113)の生長が著しく阻害される結果、相対的に面方向の結晶方位の生長が速くなり、(001)面又は(006)面が成長し、板状形態を形成することができると考えられる。モリブデン化合物をフラックス剤として用いることで、α結晶化率が高い、モリブデンを含む板状アルミナ粒子をより容易に形成できる。
なお、上記メカニズムはあくまで推測のものであり、上記メカニズムと異なるメカニズムによって本発明の効果が得られる場合であっても本発明の技術的範囲に含まれる。
形状制御剤の種類については、よりアスペクト比が高く、より分散性に優れ、より生産性に優れる板状アルミナ粒子を製造可能な点からも、珪素、珪素化合物、及びゲルマニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。珪素又は珪素化合物と、ゲルマニウム化合物とは、併用することができる。ムライトのSiの供給元となりムライトを効率よく生産可能な観点からは、形状制御剤として珪素又は珪素元素を含む珪素化合物を用いることが好ましい。また、珪素又は珪素化合物を使用した場合よりも、よりアスペクト比が高くより粒子径の大きな板状アルミナ粒子を製造可能な点からは、形状制御剤としてゲルマニウム化合物を用いることが好ましい。
形状制御剤として、珪素又は珪素化合物を用いた上記フラックス法により、ムライトを表層に含む板状アルミナ粒子を容易に製造することができる。
形状制御剤として、原料ゲルマニウム化合物を用いた上記フラックス法により、ゲルマニウム又はゲルマニウム化合物を含む板状アルミナ粒子を容易に製造することができる。
・珪素又は珪素化合物
珪素又は珪素元素を含む珪素化合物としては、特に制限されず、公知のものが使用されうる。珪素又は珪素元素を含む珪素化合物の具体例としては、金属シリコン、有機シラン、シリコン樹脂、シリカ微粒子、シリカゲル、メソポーラスシリカ、SiC、ムライト等の人工合成シリコン化合物;バイオシリカ等の天然シリコン化合物等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム化合物との複合、混合がより均一的に形成できる観点から、有機シラン、シリコン樹脂、シリカ微粒子を用いることが好ましい。なお、シリコン又は珪素元素を含む珪素化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明における効果を損なわない限りにおいて、他の形状制御剤と併用して使用してもよい。
珪素又は珪素元素を含む珪素化合物の形状は、特に制限されず、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどを好適に用いることができる。
・ゲルマニウム化合物
形状制御剤として用いる原料ゲルマニウム化合物としては、特に制限されず、公知のものが使用されうる。原料ゲルマニウム化合物の具体例としては、ゲルマニウム金属、二酸化ゲルマニウム、一酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、Ge−C結合を有する有機ゲルマニウム化合物等が挙げられる。なお、原料ゲルマニウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明における効果を損なわない限りにおいて、他の形状制御剤と併用して使用してもよい。
原料ゲルマニウム化合物の形状は、特に制限されず、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤ、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどを好適に用いることができる。
(モリブデン化合物)
モリブデン化合物は、モリブデン元素を含むものであり、後述するように、アルミナのα結晶成長においてフラックス剤として機能する。
モリブデン化合物としては、特に制限されないが、酸化モリブデン、モリブデン金属が酸素との結合からなる酸根アニオン(MoOx n-)を含有する化合物が挙げられる。
前記酸根アニオン(MoOx n-)を含有する化合物としては、特に制限されないが、モリブデン酸、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸リチウム、H3PMo1240、H3SiMo1240、NH4Mo712、二硫化モリブデン等が挙げられる。
モリブデン化合物に珪素を含むことも可能であり、その場合、珪素を含むモリブデン化合物がフラックス剤と形状制御剤と両方の役割を果たす。
上述のモリブデン化合物のうち、昇華し易く、かつコストの観点から、酸化モリブデンを用いることが好ましい。また、上述のモリブデン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、モリブデン酸カリウム(KMo3n+1、n=1〜3)は、カリウムを含むため、後述するカリウム化合物としての機能も有しうる。実施形態の製造方法において、モリブデン酸カリウムをフラックス剤として用いることは、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いることと同義である。
(カリウム化合物)
形状制御剤とともに、さらにカリウム化合物を併用してもよい。
カリウム化合物としては、特に制限されないが、塩化カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、酸化カリウム、臭化カリウム、臭素酸カリウム、水酸化カリウム、珪酸カリウム、燐酸カリウム、燐酸水素カリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、モリブデン酸カリウム、タングステン酸カリウム等が挙げられる。この際、前記カリウム化合物は、モリブデン化合物の場合と同様に、異性体を含む。これらのうち、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酸化カリウム、水酸化カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることが好ましく、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、モリブデン酸カリウムを用いることがより好ましい。
上述のカリウム化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カリウム化合物は、ムライトがアルミナ表層に効率良く形成されることに寄与する。また、カリウム化合物は、ゲルマニウムを含む層がアルミナ表層に効率良く形成されることに寄与する。
また、カリウム化合物は、モリブデン化合物とともにフラックス剤として用いることも好ましい。
上記のうち、モリブデン酸カリウムは、モリブデンを含むため、上述のモリブデン化合物としての機能も有しうる。モリブデン酸カリウムをフラックス剤として用いた場合、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いた場合と同様の作用を奏することができる。
原料仕込み時に用いる又は焼成に当たって昇温過程の反応で生じるカリウム化合物として、水溶性のカリウム化合物、例えばモリブデン酸カリウムは、焼成温度域でも気化することなく、焼成後に洗浄で、容易に回収できるため、モリブデン化合物が焼成炉外へ放出される量も低減され、生産コストとしても大幅に低減することができる。
モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、カリウム化合物のカリウム元素に対するモリブデン化合物のモリブデン元素のモル比(モリブデン元素/カリウム元素)は、5以下であることが好ましく、0.01〜3であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが、生産コストをより低減することができるため、さらに好ましい。前記モル比(モリブデン元素/カリウム元素)が上記範囲内にあると、粒子サイズの大きい板状アルミナ粒子が得られうることから好ましい。
(金属化合物)
金属化合物は、後述するように、アルミナの結晶成長を促進する機能を有しうる。当該金属化合物は所望により焼成時に使用されうる。なお、金属化合物は、α−アルミナの結晶成長を促進する機能を有するものであるため、本発明に係る板状アルミナ粒子の製造に必須ではない。
金属化合物としては、特に制限されないが、第II族の金属化合物、第III族の金属化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
前記第II族の金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物等が挙げられる。
前記第III族の金属化合物としては、スカンジウム化合物、イットリウム化合物、ランタン化合物、セリウム化合物等が挙げられる。
なお上述の金属化合物は、金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸化物、塩化物を意味する。例えば、イットリウム化合物であれば、酸化イットリウム(Y)、水酸化イットリウム、炭酸化イットリウムが挙げられる。これらのうち、金属化合物は金属元素の酸化物であることが好ましい。なお、これらの金属化合物は異性体を含む。
これらのうち、第3周期元素の金属化合物、第4周期元素の金属化合物、第5周期元素の金属化合物、第6周期元素の金属化合物であることが好ましく、第4周期元素の金属化合物、第5周期元素の金属化合物であることがより好ましく、第5周期元素の金属化合物であることがさらに好ましい。具体的には、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、イットリウム化合物、ランタン化合物、を用いることが好ましく、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、イットリウム化合物を用いることがより好ましく、イットリウム化合物を用いることが特に好ましい。
金属化合物の添加率は、アルミニウム化合物中のアルミニウム原子の質量換算値に対して、0.02〜20質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。金属化合物の添加率が0.02質量%以上であると、モリブデンを含むα−アルミナの結晶成長が好適に進行しうることから好ましい。一方、金属化合物の添加率が20質量%以下であると、金属化合物由来の不純物の含有量の低い板状アルミナ粒子を得ることができることから好ましい。
・イットリウム
金属化合物として、イットリウム化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成した場合には、この焼成工程において、結晶成長がより好適に進行し、α−アルミナと水溶性イットリウム化合物が生成する。この際に、板状アルミナ粒子であるα−アルミナの表面に、当該水溶性イットリウム化合物が局在化しやすいことから、必要ならば、水、アルカリ水、これらを温めた液体等にて洗浄を行うことで、イットリウム化合物を板状アルミナ粒子から除去することができる。
上記のアルミニウム化合物、モリブデン化合物、珪素又は珪素化合物、ゲルマニウム化合物、カリウム化合物等の使用量は特に限定されないが、例えば、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、以下の混合物を焼成することが挙げられる。
1)Al換算で、好ましくは50質量%以上のアルミニウム化合物、より好ましくは70質量%以上99質量%以下のアルミニウム化合物、さらに好ましくは80質量%以上94.5質量%以下のアルミニウム化合物と、
MoO換算で、好ましくは40質量%以下のモリブデン化合物、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下のモリブデン化合物、さらに好ましくは1質量%以上7質量%以下のモリブデン化合物と、
SiO換算又はGeO換算で、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下の珪素、珪素化合物若しくはゲルマニウム化合物、より好ましくは0.5質量%以上7質量%未満の珪素、珪素化合物若しくはゲルマニウム化合物、さらに好ましくは0.8質量%以上4質量%以下の珪素、珪素化合物若しくはゲルマニウム化合物と、
を、混合した混合物。
より粒子径の大きな板状アルミナ粒子を得るとの観点からは、上記混合物において、MoO換算で、好ましくは7質量%以上40質量%以下のモリブデン化合物、より好ましくは9質量%以上30質量%以下のモリブデン化合物、さらに好ましくは10質量%以上17質量%以下のモリブデン化合物を使用することが好ましい。
より粒子径の大きな板状アルミナ粒子を得るとの観点からは、上記混合物において、SiO換算及び/又はGeO換算で、好ましくは0.4質量%以上10質量%未満、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、特に好ましくは1質量%以上3質量%以下の珪素、珪素化合物及び/又はゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。
上記の形状制御剤の珪素、珪素化合物及び/又はゲルマニウム化合物としては、珪素又は珪素化合物であってよく、ゲルマニウム化合物であってよい。
上記の形状制御剤としては、珪素又は珪素化合物のみを用いてもよく、ゲルマニウム化合物のみを用いてもよく、珪素又は珪素化合物とゲルマニウム化合物とのみを組み合わせて用いてもよい。
形状制御剤としてゲルマニウム化合物を用いる場合には、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、GeO換算で、好ましくは0.4質量%以上1.5質量%未満、より好ましくは0.7質量%以上1.2質量%以下のゲルマニウム化合物を混合物に配合してもよい。
上記の原料配合(質量%)の条件は原料ごとに自由に組み合わせてよく、各原料配合(質量%)における下限値と上限値についても自由に組み合わせることができる。
上記の範囲で各種化合物を使用することで、上記の縦緩和時間Tの値を満たし、光輝性に優れた板状アルミナ粒子を容易に製造できる。
前記混合物が、さらに上記のカリウム化合物を含む場合、カリウム化合物の使用量は、特に限定されないが、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、好ましくはKO換算で5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上1質量%以下のカリウム化合物を混合することができる。
カリウム化合物の使用により、モリブデン化合物との反応により形成されるモリブデン酸カリウムは、Si拡散の効果を及ぼし板状アルミナ粒子表面のムライト形成の促進に寄与すると考えられる。
同様に、カリウム化合物の使用により、モリブデン化合物との反応により形成されるモリブデン酸カリウムは、原料ゲルマニウム拡散の効果を及ぼし板状アルミナ粒子表面のゲルマニウム又はゲルマニウム化合物の形成の促進に寄与すると考えられる。
原料仕込み時に用いる又は焼成に当たって昇温過程の反応で生じるカリウム化合物として、水溶性のカリウム化合物、例えばモリブデン酸カリウムは、焼成温度域でも気化することなく、焼成後に洗浄で、容易に回収できるため、モリブデン化合物が焼成炉外へ放出される量も低減され、生産コストとしても大幅に低減することができる。
フラックス法においては、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いることも好ましい。
なお、フラックス剤としての、モリブデンとカリウムとを含有する化合物は、例えば、より安価かつ入手が容易な、モリブデン化合物及びカリウム化合物を原料として焼成の過程で生じさせることができる。ここでは、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、モリブデンとカリウムとを含有する化合物をフラックス剤として用いる場合、の両者を合わせて、モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合を例に説明する。
さらに粒子サイズの大きな板状アルミナ粒子を得るとの観点からは、上記のアルミニウム化合物、モリブデン化合物、カリウム化合物、及び珪素又は珪素化合物の使用量は、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、好ましくは以下とすることができる。
2)Al換算で10質量%以上のアルミニウム化合物と、MoO換算で20質量%以上のモリブデン化合物と、KO換算で1質量%以上カリウム化合物と、SiO換算で1質量%未満の珪素又は珪素化合物と、を混合した混合物。
高品質な六角板状のアルミナの含有率をより高めることができる点では、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、より好ましくは以下の混合物を使用することができる。
3)Al換算で20質量%以上70質量%以下のアルミニウム化合物と、MoO換算で30質量%以上80質量%以下のモリブデン化合物と、KO換算で5質量%以上30質量%以下のカリウム化合物と、SiO換算で0.001質量%以上0.3質量%以下の珪素又は珪素化合物と、を混合した混合物。
六角板状のアルミナの含有率をより高めることができる点では、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、更に好ましくは以下の混合物を使用することができる。
4)Al換算で25質量%以上40質量%以下のアルミニウム化合物と、MoO換算で45質量%以上70質量%以下のモリブデン化合物と、KO換算で10質量%以上20質量%以下のカリウム化合物と、SiO換算で0.01質量%以上0.1質量%以下の珪素又は珪素化合物と、を混合した混合物。
六角板状のアルミナの含有率を最も高めることができ、結晶成長をより好適に進行させるために、特に好ましくは以下の混合物を使用することができる。
5)酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、Al換算で35質量%以上40質量%以下のアルミニウム化合物と、MoO換算で45質量%以上65質量%以下のモリブデン化合物と、KO換算で10質量%以上20質量%以下のカリウム化合物と、SiO換算で0.02質量%以上0.08質量%以下の珪素又は珪素化合物と、を混合した混合物。
上記の範囲で各種化合物を配合することで、板状で且つ粒子サイズが大きく、より光輝性に優れた板状アルミナ粒子を製造することができる。特に、モリブデンの使用量を多くする傾向とし、珪素の使用量をある程度少なくする傾向とすることで、より粒子サイズ及び結晶子径を大きくでき、且つ六角板状のアルミナ粒子が得られやすくなり、上記のさらに好ましい範囲で各種化合物を配合することで、六角板状のアルミナ粒子が得られやすく、それの含有率をより高めることができ、得られたアルミナ粒子の光輝性がさらに優れたものとなる傾向がある。
前記混合物が、さらに上記のイットリウム化合物を含む場合、イットリウム化合物の使用量は、特に限定されないが、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、好ましくはY換算で5質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上3質量%以下のイットリウム化合物を混合することができる。結晶成長をより好適に進行させるために、さらに好ましくは、酸化物換算した原料全量を100質量%とした際に、Y換算で0.1質量%以上1質量%以下のイットリウム化合物を混合することができる。
上記の各原料の使用量の数値範囲は、それらの合計含有量が100質量%を超えない範囲において、適宜組み合わせることができる。
[焼成工程]
焼成工程は、モリブデン化合物及び形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する工程である。焼成工程は、前記混合工程で得られた混合物を焼成する工程であってもよい。
板状アルミナ粒子は、例えば、モリブデン化合物および形状制御剤の存在下で、アルミニウム化合物を焼成することで得られる。上記した通り、この製造方法はフラックス法と呼ばれる。
フラックス法は、溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶−フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。フラックス法のメカニズムとしては、以下の通りであると推測される。すなわち、溶質およびフラックスの混合物を加熱していくと、溶質およびフラックスは液相となる。この際、フラックスは融剤であるため、換言すれば、溶質−フラックス2成分系状態図が共晶型を示すため、溶質は、その融点よりも低い温度で溶融し、液相を構成することとなる。この状態で、フラックスを蒸発させると、フラックスの濃度は低下し、換言すれば、フラックスによる前記溶質の融点低下効果が低減し、フラックスの蒸発が駆動力となって溶質の結晶成長が起こる(フラックス蒸発法)。なお、溶質およびフラックスは液相を冷却することによっても溶質の結晶成長を起こすことができる(徐冷法)。
フラックス法は、融点よりもはるかに低い温度で結晶成長をさせることができる、結晶構造を精密に制御できる、自形をもつ結晶体を形成できる等のメリットを有する。
フラックスとしてモリブデン化合物を用いたフラックス法によるα−アルミナ粒子の製造では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、以下のようなメカニズムによるものと推測される。すなわち、モリブデン化合物の存在下でアルミニウム化合物を焼成すると、まず、モリブデン酸アルミニウムが形成される。この際、当該モリブデン酸アルミニウムは、上述の説明からも理解されるように、アルミナの融点よりも低温でα−アルミナ結晶を成長する。そして、例えば、モリブデン酸アルミニウムの分解、フラックスの蒸発等を経て、結晶成長が加速されることでアルミナ粒子を得ることができる。すなわち、モリブデン化合物がフラックスとして機能し、モリブデン酸アルミニウムという中間体を経由してα−アルミナ粒子が製造されるのである。
フラックス剤として、さらにカリウム化合物を用いた場合の、フラックス法によるα−アルミナ粒子の製造では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、以下のようなメカニズムによるものと推測される。まず、モリブデン化合物とアルミニウム化合物が反応してモリブデン酸アルミニウムを形成する。そして、例えば、モリブデン酸アルミニウムが分解して酸化モリブデンとアルミナとなり、同時に、分解によって得られた酸化モリブデンを含むモリブデン化合物は、カリウム化合物と反応してモリブデン酸カリウムを形成する。当該モリブデン酸カリウムを含むモリブデン化合物の存在下でアルミナが結晶成長することで、実施形態に係る板状アルミナ粒子を得ることができる。
上記フラックス法により、上記の縦緩和時間Tの値を満たし、光輝性に優れた板状アルミナ粒子を製造することができる。
焼成の方法は、特に限定はなく、公知慣用の方法で行う事ができる。焼成温度が700℃を超えると、アルミニウム化合物と、モリブデン化合物が反応して、モリブデン酸アルミニウムを形成する。さらに、焼成温度が900℃以上になると、モリブデン酸アルミニウムが分解し、形状制御剤の作用で板状アルミナ粒子を形成する。また、板状アルミナ粒子では、モリブデン酸アルミニウムが分解することで、アルミナと酸化モリブデンになる際に、モリブデン化合物が酸化アルミニウム粒子内に取り込まれるものと考えられる。
また、焼成温度が900℃以上になると、モリブデン酸アルミニウムの分解により得られるモリブデン化合物(例えば三酸化モリブデン)がカリウム化合物と反応し、モリブデン酸カリウムを形成するものと考えられる。
さらに、焼成温度が1000℃以上となると、モリブデンの存在下、板状アルミナ粒子の結晶成長とともに、板状アルミナ粒子表面のAlとSiOが反応し、高効率にムライトを形成するものと考えられる。
同様に、焼成温度が1000℃以上となると、モリブデンの存在下、板状アルミナ粒子の結晶成長とともに、板状アルミナ粒子表面のAlとGe化合物が反応し、高効率に二酸化ゲルマニウムやGe−O−Alを有する化合物等を形成するものと考えられる。
また、焼成する時に、アルミニウム化合物と、形状制御剤と、モリブデン化合物の状態は特に限定されず、モリブデン化合物および形状制御剤がアルミニウム化合物に作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、モリブデン化合物と形状制御剤とアルミニウム化合物との粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。
焼成温度の条件に特に限定は無く、目的とする板状アルミナ粒子の、上記縦緩和時間Tの値、(006/113)比の値、平均粒子径、アスペクト比、ムライトの形成、分散性等により、適宜、決定される。通常、焼成の温度については、最高温度がモリブデン酸アルミニウム(Al2(MoO43)の分解温度である900℃以上が好ましく、ムライトやゲルマニウム化合物が高効率に形成される1000℃以上がより好ましく、上記縦緩和時間Tが5秒以上(高結晶性)の板状アルミナ粒子を容易に得ることができる1200℃以上がより好ましい。
一般的に、焼成後に得られるα−アルミナの形状を制御しようとすると、α−アルミナの融点に近い2000℃以上の高温焼成を行う必要があるが、焼成炉へ負担や燃料コストの点から、産業上利用する為には大きな課題がある。
実施形態の製造方法は、2000℃を超えるような高温であっても実施可能であるが、1600℃以下というα−アルミナの融点よりかなり低い温度であっても、前駆体の形状にかかわりなくα結晶化率が高くアスペクト比の高い板状形状となるα−アルミナを形成することができる。
本発明の一実施形態によれば、最高焼成温度が900〜1600℃の条件であっても、アスペクト比が高く、α結晶化率が90%以上である板状アルミナ粒子の形成を低コストで効率的に行うことができ、最高温度が950〜1500℃での焼成がより好ましく、最高温度が1000〜1400℃の範囲の焼成がさらに好ましく、最高温度が1200〜1400℃での焼成が最も好ましい。
焼成の時間については、所定最高温度への昇温時間を15分〜10時間の範囲で行い、且つ焼成最高温度における保持時間を5分〜30時間の範囲で行うことが好ましい。板状アルミナ粒子の形成を効率的に行うには、10分〜15時間程度の時間の焼成保持時間であることがより好ましい。
最高温度1000〜1400℃かつ10分〜15時間の焼成保持時間の条件を選択することで、緻密なα結晶形の多角板状アルミナ粒子が凝集し難く、容易に得られる。
最高温度1200〜1400℃かつ10分〜15時間の焼成保持時間の条件を選択することで、上記縦緩和時間Tが5秒以上(高結晶性)の板状アルミナ粒子が、容易に得られる。
焼成の雰囲気としては、本発明の効果が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、空気や酸素といった含酸素雰囲気や、窒素やアルゴン、または二酸化炭素といった不活性雰囲気が好ましく、コストの面を考慮した場合は空気雰囲気がより好ましい。
焼成するための装置としても必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は昇華した酸化モリブデンと反応しない材質で構成されていることが好ましく、さらに酸化モリブデンを効率的に利用するように、密閉性の高い焼成炉を用いる事が好ましい。
上記アルミナ粒子を得るに当たっては、モリブデン化合物及び形状制御剤の存在下、又は、モリブデン化合物、形状制御剤、カリウム化合物及び金属酸化物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する事により得ることが好ましい。
すなわち、アルミナ粒子の好ましい製造方法は、モリブデン化合物及び形状制御剤の存在下、又は、モリブデン化合物、形状制御剤及びカリウム化合物の存在下で、アルミニウム化合物を焼成する工程(焼成工程)を含む。前記混合物は、さらに上記の金属化合物を含むことが好ましい。金属化合物としては、イットリウム化合物が好ましい。
[冷却工程]
モリブデン化合物及びカリウム化合物をフラックス剤として用いる場合、アルミナ粒子の製造方法は、冷却工程を含んでいてもよい。当該冷却工程は、焼成工程において結晶成長したアルミナを冷却する工程である。より具体的には、焼成工程により得られたアルミナ及び液相のフラックス剤を含む組成物を冷却する工程であってよい。
冷却速度は、特に制限されないが、1〜1000℃/時間であることが好ましく、5〜500℃/時間であることがより好ましく、50〜100℃/時間であることがさらに好ましい。冷却速度が1℃/時間以上であると、製造時間が短縮されうることから好ましい。一方、冷却速度が1000℃/時間以下であると、焼成容器がヒートショックで割れることが少なく、長く使用できることから好ましい。
冷却方法は特に制限されず、自然放冷であっても、冷却装置を使用してもよい。
[後処理工程]
実施形態に係る板状アルミナ粒子の製造方法は、後処理工程を含んでいてもよい。当該後処理工程は、板状アルミナ粒子に対する後処理工程であり、フラックス剤を除去する工程である。後処理工程は、上述の焼成工程の後に行ってもよいし、上述の冷却工程の後に行ってもよいし、焼成工程および冷却工程の後に行ってもよい。また、必要に応じて、2度以上繰り返し行ってもよい。
後処理の方法としては、洗浄および高温処理が挙げられる。これらは組み合わせて行うことができる。
前記洗浄方法としては、特に制限されないが、水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液で洗浄することにより除去することができる。
この際、使用する水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液の濃度、使用量、および洗浄部位、洗浄時間等を適宜変更することで、モリブデン含有量を制御することができる。
また、高温処理の方法としては、フラックスの昇華点または沸点以上に昇温する方法が挙げられる。
[粉砕工程]
焼成物は板状アルミナ粒子が凝集して、好適な粒子径の範囲を満たさない場合がある。そのため、板状アルミナ粒子は、必要に応じて、好適な粒子径の範囲を満たすように粉砕してもよい。
焼成物の粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、ディスクミル、スペクトロミル、グラインダー、ミキサーミル等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
[分級工程]
板状アルミナ粒子は、平均粒子径を調整し、粉体の流動性を向上するため、またはマトリックスを形成するためのバインダーに配合したときの粘度上昇を抑制するために、好ましくは分級処理される。「分級処理」とは、粒子の大きさによって粒子をグループ分けする操作をいう。
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、生産性の観点からは、乾式の分級が好ましい。乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、コアンダ効果を利用した気流分級機、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。
上記した粉砕工程や分級工程は、後述する有機化合物層形成工程の前後を含めて、必要な段階において行うことができる。これら粉砕や分級の有無やそれらの条件選定により、例えば、得られる板状アルミナ粒子の平均粒子径を調整することができる。
実施形態の板状アルミナ粒子、或いは実施形態の製造方法で得る板状アルミナ粒子は、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが、本来の性質を発揮しやすく、それ自体の取扱性により優れており、また被分散媒体に分散させて用いる場合において、より分散性に優れる観点から、好ましい。板状アルミナ粒子の製造方法においては、上記した粉砕工程や分級工程は行わずに、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが得られれば、左記工程を行う必要もなく、目的の優れた性質を有する板状アルミナを、生産性高く製造することが出来るので好ましい。
[有機化合物層形成工程]
一実施形態において、板状アルミナ粒子の製造方法は、有機化合物層形成工程をさらに含んでいてもよい。当該有機化合物層形成工程は、通常、焼成工程の後、または後処理工程の後に行われる。
有機化合物層を形成する方法としては、特に制限されず、公知の方法が適宜採用されうる。例えば、有機化合物を含む液をモリブデンを含む板状アルミナ粒子に接触させ、乾燥する方法が挙げられる。
なお、有機化合物層の形成に使用されうる有機化合物としては、例えば上述したものが用いられうる。
<その他成分>
本実施形態の化粧品用組成物は、上記板状アルミナ粒子に加えて、化粧品に許容される各種成分を含有することができる。当該各種成分としては、例えば、活性成分、着色剤、担体、増粘剤、界面活性剤、結合剤、保存剤、ポリマー、芳香剤、収斂剤、精油、固化防止剤、消泡剤、緩衝剤、充填剤、変性剤、pH調整剤、噴射剤、還元剤、隔離剤、化粧用殺生物剤、防腐剤等が挙げられる。
[活性成分]
活性成分としては、例えば、UV保護剤、保湿剤、老化防止活性成分、ビタミン類、セルフタンニング剤、ビサボロール(bisabolol)、ラクトパーオキシダーゼ(LPO)、エクトイン(ectoine)及びその誘導体 、エンブリカ(emblica)、アラントイン(allantoin)、バイオフラボノイド(bioflavonoid)及びその誘導体、植物エキス、リポ酸、レチノキシトリメチルシラン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、セラミド類及び擬似セラミド、クレアチン、レスベラトロール、ヒアルロン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
UV保護剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイル−メタン、2−ヒドロキシ−4− トキシベンゾ−フェノン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、オクトクリレン、2−エチルヘキシルN,N−ジメチル−p−アミノベンゾエート、p−アミノ安息香酸、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オクトクリレン、オキシベンゾン、ホモメンチルサリチラート、オクチルサリチラート、4,4−メトキシ−t−ブチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、3−ベンジリデンカンファー、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー等が挙げられる。これらのUV保護剤は、所望の太陽光線保護指数(SPF)を提供するように選択されることができる。SPFは、通常使用されている、紅斑に対する日焼け止め剤の光防護の測度である。
保湿剤は、一般に多価アルコールである。多価アルコールは、グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、エトキシル化グリセロール、プロポキシル化グリセロール等が挙げられる。保湿剤の含有量は組成物の総質量に対して、0.5質量%以上50質量%以下とすることができ、1質量%以上15質量%以下が好ましい。
ビタミン類としては、水溶性ビタミンであってもよく、水不溶性ビタミンであってもよい。水溶性ビタミンとしては、例えば、ナイアシンアミド、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビオチン等が挙げられる。水不溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンAパルミテート、アスコルビルテトライソパルミテート、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンEアセテート、DL−パンテノール等が挙げられる。ビタミン類の含有量は、組成物の総質量に対して0.001質量%以上10質量%以下とすることができ、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
セルフタンニング剤としては、例えば、特に、ジヒドロキシアセトン(DHA)、エリトルロース等が挙げられる。
植物エキスは水溶性であってもよく、水不溶性であってもよく、親水性又は疎水性の溶媒に担持されることができる。植物エキスとしては、例えば、緑茶、カモミール、ローズ、カンゾウ、アロエベラ、グレープシード、温州ミカン、レモン、レモングラス、ヤナギ樹皮、セージ、タイム及びローズマリー等のエキスが挙げられる。
セラミド類としては、例えば、セラミド1、セラミド3、セラミド3B、セラミド6等が挙げられる。
[着色剤]
着色剤としては、上記板状アルミナ粒子に該当しないその他顔料も併せて用いることができる。その他顔料としては、着色顔料、体質顔料等の各種顔料が挙げられる。
前記着色顔料としては、求める色相や性能にあわせて従来公知の顔料を適宜使用することができ、例えば、アゾ系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン・イソインドリン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、ペリレン・ペリノン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、スレン系、等の有機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、等の無機顔料が挙げられる。また、着色剤としては、複数層顔料又は干渉顔料を含めたエフェクト顔料を用いることもでき、具体的には、例えば、真珠光沢顔料等が挙げられる。真珠光沢顔料としては、例えば、フィロシリケート、例えば、天然又は合成マイカ、タルク、セリサイト、カオリン又はその他のシリケート材料を含む、フレーク形態の、透明又は半透明物質を基にした顔料である。真珠光沢顔料は、着色又は無色金属酸化物、例えば、TiO、チタニウムサブオキシド、チタニウムオキシナイトライド、Fe、Fe、FeOOH、SnO、Cr、ZnO、CuO、NiO及びその他の金属酸化物により、単独で又は混合物として、単一層において又は連続層において被覆されている。
真珠光沢顔料は、表面上に、ベルリンブルー又はカルミンレッドの層を更に有してもよい。
複数層顔料は、マイカ(合成又は天然)、SiOフレーク、ガラスフレーク、Alフレーク、ポリマーフレークからなる、フレーク形態の、透明、着色又は無色マトリックスを基体とし、一般的に、0.3μm以上5μm以下、好ましくは0.4μm以上2.0μm以下の厚さを有する。幅及び奥行のサイズは、通常、1μm以上250μm以下、好ましくは、2μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上40μm以下である。複数層顔料は、金属酸化物(少なくと2つ)で被覆されたマトリックス(基体)からなる。複数の層での基体フレーク、マイカ、SiOフレーク、ガラスフレーク、Alフレークのコーティングは、好ましくは、交互に、高い及び低い屈折率層からなる層構造が形成される様な方法において行われる。複数層顔料は、好ましくは、2、3、4、5、6又は7層、より好ましくは、3、4又は5層を含む。適当な高屈折率金属酸化物は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、鉄/チタン酸化物(チタン酸鉄)、酸化クロム等が挙げられる、中でも、TiO又はFeが好ましい。使用される低屈折率酸化物は、SiO及びAlである。また、複数層顔料において、MgF又は有機ポリマー(例えば、アクリルポリマー)を目的に応じて使用することができる。なお、ここでいう「コーティング」とは、基体が、1つ又は複数の層で完全に被覆されることを意味する。
干渉顔料は、好ましくは、天然及び合成マイカ、ガラスフレーク、SiOフレーク、Alフレークを基にした顔料であり、着色又は無色金属酸化物、例えば、TiO、チタニウムサブオキシド、チタニウムオキシナイトライド、Fe、Fe、SnO、Cr、ZnO、CuO、NiO及びその他の金属酸化物で、単独で又は混合物として、単一層において又は連続層において被覆されている。
適当なフレーク形態着色剤は、特に真珠光沢顔料、特に、天然又は合成マイカ、SiOフレーク、Feフレーク、ガラスフレーク又はAlフレークを基にした顔料であり、金属酸化物層でのみ被覆されている顔料、金属−エフェクト顔料(Alフレーク、ブロンズ)、光学的に可変の顔料(OVP)、液晶ポリマー顔料(LCP)又はホログラフ顔料である。
球状着色剤としては、例えば、TiO、着色SiO、CaSO、酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、有機着色顔料等が挙げられる。球状着色剤である有機着色顔料としては、例えば、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、イソインドリン顔料が挙げられる。
針状顔料は、BiOCl、着色ガラス繊維、α−FeOOH、有機着色顔料等が挙げられる。針状顔料である有機着色顔料としては、例えば、アゾ顔料、β−フタロシアニンCIBlue15.3、クロモフタールイエロー(Cromophtal Yellow)8GN(Ciba−Geigy)、イルガリスブルー(Irgalith Blue)PD56(Ciba−Geigy)、アゾメチン/銅錯体 CI Yellow 129、イルガジンイエロー(Irgazine Yellow)5GT(Ciba−Geigy)等が挙げられる。
適当な無機着色顔料及び染料としては、天然又は合成のもので、例えば、酸化クロム及びウルトラマリン等が挙げられる。
[担体]
担体としては、例えば、水、皮膚緩和剤、脂肪酸、脂肪族アルコール等が挙げられる。これら担体は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。担体は、水性であってもよく、無水物であってもよく、エマルションであってもよい。
皮膚緩和剤としては、例えば、シリコーン油、天然又は合成のエステル、炭化水素等が挙げられる。シリコーン油は揮発性品種及び不揮発性品種に分類される。なお、ここでいう「揮発性」とは、周囲温度で測定可能な蒸気圧を有している材料を表す。揮発性シリコーン油は3個以上9個以下、好ましくは4個又は5個のケイ素原子を有する環状(シクロメチコーン)又は直鎖状のポリジメチルシロキサンから選択される。不揮発性シリコーン油は、例えば、ポリアルキルシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン等)、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー、乳化性及び非乳化性のシリコーンエラストマー、シリコーンワックス等が挙げられる。乳化性及び非乳化性のシリコーンエラストマーとしては、例えば、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。
エステルとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
(a)10個以上24個以下の炭素原子を有する飽和脂肪酸のアルキルエステル。当該アルキルエステルとしては、例えば、ベヘニルネオペンタノエート、イソノニルイソナノノエート、イソプロピルミリステート、オクチルステアレート等が挙げられる;
(b)エトキシル化飽和脂肪アルコールの脂肪酸エステルのようなエーテル−エステル;
(c)多価アルコールエステル。多価アルコールエステルとしては、例えば、エチレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200−6000)モノ−及びジ−脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ−及びジ−脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシル化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ−及びジ−脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ−脂肪エステル、エトキシル化グリセリルモノ−ステアレート、1,3−ブチレングリコールモノステアレート、1,3−ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、1個以上30個以下の炭素原子を有するアルコールのネオペンチルグリコールエステル等が挙げられる;
(d)蜜蝋、鯨蝋及びトリベヘニンワックスのようなワックスエステル;
(e)スクロースポリベヘネート及びスクロースポリコットンシーデートのような脂肪酸の糖エステル。
天然のエステルとしては、モノ−、ジ−及びトリ−グリセリドを基剤とする。グリセリドとしては、例えば、ヒマワリ種油、綿実油、ルリヂサ油、ルリヂサ種油、サクラソウ油、ヒマシ油、水添ヒマシ油、米ヌカ油、ダイズ油、オリーブ油、ベニバナ油、シアバター、ホホバ油等が挙げられる。動物由来のエステルとしては、例えば、ラノリン油、ラノリン誘導体等が挙げられる。
炭化水素としては、例えば、ペトロラタム、鉱油、11個以上13個以下の炭素原子を有するイソパラフィン、ポリブテン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
脂肪酸としては、10個以上30個以下の炭素原子を有する脂肪酸であり、具体的には、例えば、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、10個以上30個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールであり、具体的には、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。
担体の含有量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上99.9質量%以下とすることができ、70質量%以上95質量%以下が好ましく、80質量%以上90質量%以下がより好ましい。
[増粘剤]
増粘剤としては、例えば、架橋アクリレート、疎水性に改質されたアクリレート、ポリアクリルアミド、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸/塩ポリマー及びコポリマー、セルロース誘導体、天然ガム等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等が挙げられる。天然ガムとしては、例えば、グアー、キサンタン、スクレロチウム、カラゲナン、ペクチン等が挙げられる。無機物、特にベントナイト及びヘクトライトのようなクレー、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、シリケート(例えば、マグネシウムアルミニウムシリケート)も増粘剤として使用できる。
増粘剤の含有量は、組成物の総質量に対して、0.0001質量%以上10質量%以下とすることができ、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
[界面活性剤]
界面活性剤としては、アニオン性であってもよく、非イオン性であってもよく、カチオン性であってもよく、両性であってもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、セッケン、アルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルホスクシネート、ジアルキルスルホスクシネート、8個以上20個以下の炭素原子を有するアシルイセチオネート、8個以上20個以下の炭素原子を有するアルキルエーテルホスフェート、8個以上20個以下の炭素原子を有するサルコシネート、8個以上20個以下の炭素原子を有するアシルラクチレート、スルホアセテート等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、疎水性基1モルあたり2モル以上100モル以下のエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと縮合した10個以上20個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコール又は酸疎水性基をもつ界面活性剤、2モル以上20モル以下のアルキレンオキシドと縮合した2個以上10個以下の炭素原子を有するアルキルフェノール、エチレングリコールのモノ−及びジ−脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ソルビタン、8個以上20個以下の炭素原子を有するモノ−及びジ−脂肪酸、ポリオキシエチレンソルビタン、アルキルポリグリコシド、糖脂肪アミド(例えば、メチルグリコンアミド)、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ココアミドプロピルベタイン、12個以上20個以下の炭素原子を有するトリアルキルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロジアンホ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下とすることができ、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
[結合剤]
結合剤は粉末状であってもよく、液体状であってもよい。
粉末結合剤としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
液体結合剤としては、例えば、シリコーンオイル、鉱油類等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。鉱油類は、石油から得られる炭化水素類の液体混合物である。炭化水素類としては、例えば、パラフィン油、鉱油、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、エイコサン、イソエイコサン、トリデカン、テトラデカン、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられる。
その他有用な結合剤としては、例えば、イソノナン酸トリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル(isodecyl isonoanoate)、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ネオペンチルグリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、ジイソプロピルジメレート、トコフェロール、酢酸トコフェロール、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカダミアナッツ油、コーン油、ミンク油、オリーブ油、菜種油、卵黄油、ごま油、パーシック油、麦芽油、サザンカ油(pasanqua oil)、ヒマシ油、亜麻仁油、サフラワー油、綿実油、ペリリック油(perillic oil)、大豆油、ピーナッツ油、茶実油、カヤ油、米糠油、シナ桐油、日本桐油、ホホバ油、米芽油、グリセロールトリオクタノエート(glycerol trioctanate)、グリセロールトリイソパルミテート、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸イソプロピル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ラノリン、ラノリン液、パラフィン液、スクワラン、ワセリン、コレステリル誘導体(12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル等)、コハク酸コポリマー(PPG−7コハク酸ポリプロピレングリコールオリゴエステル(35P.O.)等)等が挙げられる。
<使用用途>
本実施形態の化粧品用組成物の形態は、例えば、溶液、懸濁液、エマルション、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、粉末、スティック、ムース、エアロゾルスプレー、ノンエアロゾルスプレー、布(不織布等)に塗布した配合物等が挙げられる。
本実施形態の化粧品用組成物は、スキンケア用製品やメイクアップ用製品として配合することができる。
スキンケア用製品としては、例えば、ローション、昼用クリーム、ナイトクリーム、フェイスマスク、クレンジング製品、洗顔料、整髪剤、ヘアマスク、ヘアリンス、ヘアシャンプー、シャワーゲル、シャワーオイル、バスオイル、ボディー化粧品、日焼け止め等が挙げられ、これらに限定されない。
メイクアップ用製品としては、例えば、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、口紅、ネイルエナメル等が挙げられ、これらに限定されない。
<使用方法>
本実施形態の化粧品用組成物は、皮膚に塗布して用いられる。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記化粧品用組成物を皮膚に塗布することを含む、塗布方法を提供する。本実施形態の塗布方法によれば、肌の欠陥をソフトフォーカス効果で隠しながら、肌に明るさを与えることができる。
上述のとおり、本実施形態の化粧品用組成物は、しわ、傷、毛穴等の肌の欠陥を隠すのに有用である。すなわち、一実施形態において、本発明は、上記化粧品用組成物を皮膚に塗布することを含む、肌の欠陥を隠す方法と言い換えることができる。上記化粧品用組成物を肌に塗布することで、肌からの反射光を散乱させることで、観察者から肌の欠陥が見えにくくすることができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<板状アルミナ粒子の合成>
[合成例1]板状アルミナ粒子ex1の合成
水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、平均粒子径2μm)142.3gと、二酸化珪素(関東化学株式会社製、特級)2.8gと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製)4.7gと、を乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて5℃/分の条件で1200℃まで昇温し、1200℃で10時間保持し焼成を行なった。その後5℃/分の条件で室温まで降温後、坩堝を取り出し、95gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で、106μm篩を通るまで解砕した。
続いて、得られた前記薄青色粉末の50gを0.5%アンモニア水の150mLに分散し、分散溶液を室温(25〜30℃)で0.5時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、47gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末はSEM観察により形状が多角板状であり、凝集体が極めて少なく、優れた取り扱い性を有する板状形状の粒子であることが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α−アルミナに由来する鋭いピーク散乱が現れ、α結晶構造以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなく、緻密な結晶構造を有する板状アルミナであることを確認した。また、α化率は99%以上(ほぼ100%)であった。さらに、蛍光X線定量分析の結果から、得られた粒子は、モリブデンを三酸化モリブデン換算で0.3質量%含むものであり、ケイ素を二酸化ケイ素換算で、2.2質量%含むものであることを確認した。XPS分析結果により求められるAlに対するSiのモル比[Si]/[Al]は、0.28であった。XRF分析結果により求められるAlに対するSiのモル比[Si]/[Al]は、0.02であった。NMRによる6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tは7.5秒であった。
[合成例2]板状アルミナ粒子ce1の合成
硫酸アルミニウム(関東化学株式会社製、Al(SO,14〜18結晶水)7.0gと、硫酸カリウム(関東化学株式会社製、KSO)10gを均一に混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて5℃/分の条件で950〜1100℃まで昇温し、950〜1100℃で5時間保持し焼成を行なった。その後5℃/分の条件で室温まで降温後、坩堝を取り出し、11.5gの白色の粉末を得た。続いて、得られた前記薄青色粉末を水洗浄し、乾燥を行う事で、板状アルミナを得た。
<合成例で得られた板状アルミナ粒子の評価>
[粒子径Lの計測]
合成例で得られた板状アルミナ粒子について、レーザー回折式粒度分布計HELOS(H3355)&RODOS(株式会社日本レーザー製)を用い、分散圧3bar、引圧90mbarの条件でメジアン径D50(μm)を求め、粒子径Lとした。
[厚みDの計測]
作製した試料について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、50個の厚みを測定した平均値を採用し、厚みD(μm)とした。
[アスペクト比L/D]
板状アルミナ粒子のアスペクト比は下記の式を用いて求めた。
アスペクト比 = 板状アルミナ粒子の平均粒子径L/板状アルミナ粒子の厚みD
[比表面積の計測]
作製した試料を300℃3時間の条件で前処理を行った後、マイクロメリティックス社製、TriStar3000を用いて前処理後の試料の比表面積を測定した。
[XRDピーク強度比・ムライトの有無の分析]
作製した試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになるように充填し、それを広角X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製 Ultima IV)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2度/分、走査範囲10〜70度の条件で測定を行った。
2θ=26.2±0.2度に認められるムライトのピーク高さをA、2θ=35.1±0.2度に認められる(104)面のα−アルミナのピーク高さをBとし、2θ=30±0.2度のベースラインの値をCとして下記の式よりムライトの有無を判定した。
値が0.02以上はムライトが「有」とし、0.02未満はムライトが「無」と判定した。
α−アルミナの(104)面のピーク高さに対するムライトのピーク高さの比
=(A−C)/(B−C)
[α化率の分析]
作製した試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになる様充填し、それを広角X線回折装置(株式会社リガク製 Ultima IV)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2度/分、走査範囲10〜70度の条件で測定を行った。α−アルミナと遷移アルミナの最強ピーク高さの比よりα化率を求めた。
[板状アルミナ粒子表層のSi量]
X線光電子分光(XPS)装置Quantera SXM(アルバックファイ社)を用い、作製した試料を両面テープ上にプレス固定し、以下の条件で組成分析を行った。
(測定条件)
・X線源:単色化AlKα、ビーム径100μmφ、出力25W・測定:エリア測定(1000μm四方)、n=3
・帯電補正:C1s=284.8eV
XPS分析結果により求められる[Si]/[Al]を板状アルミナ粒子表層のSi量とした。
[板状アルミナ粒子内に含まれるSi量の分析]
蛍光X線(XRF)分析装置Primus IV(株式会社リガク製)を用い、作製した試料約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて組成分析を行った。
XRF分析結果により求められる[Si]/[Al]を板状アルミナ粒子内のSi量とした。
XRF分析結果により求められるケイ素量を、板状アルミナ粒子100質量%に対する二酸化ケイ素換算(質量%)により求めた。
[板状アルミナ内に含まれるMo量の分析]
蛍光X線分析装置PrimusIV(株式会社リガク製)を用い、作製した試料約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて組成分析を行った。
XRF分析結果により求められるモリブデン量を、板状アルミナ粒子100質量%に対する三酸化モリブデン換算(質量%)により求めた。
[NMRによる配位数の測定]
JEOL RESONANCE製、JNM−ECA600を用いて、静磁場強度14.1Tにて、固体27Al NMR分析を行った。各試料を、φ 4mm固体NMR試料管に採取し、測定を行った。試料ごと、90度パルス幅を測定した後、飽和回復法による緩和時間測定、シングルパルス測定を実施した。
市販試薬のγ−アルミナ(関東化学)の6配位アルミニウムのピークトップを14.6ppmとした場合の10〜30ppmに検出されたピークを6配位アルミニウムのピーク、60〜90ppmに検出されたピークを4配位アルミニウムのピークと推定した。
条件は下記のとおりである。
・MAS rate:15kHz
・プローブ:SH60T4(JEOL RESONANCE製)
14.1Tにおけるシングルパルス測定の測定条件は下記のとおりである。
・パルス延滞時間(秒):(緩和回復法により求められたT(秒)×3)
・パルス幅(μ秒):各試料の6配位アルミニウムの90度パルス幅(μ秒)/3
・積算回数:8回
・温度:46℃
[NMRによる縦緩和時間Tの測定]
14.1Tにおける緩和回復法により、10〜30ppmに検出された6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tを求めた。
条件は下記のとおりである。
・パルス延滞時間(秒):0.5
・飽和後待ち時間(秒):0.5〜100、Exponetial 間隔 16点
・積算回数 :1回
・温度:46℃
[吸油量]
板状アルミナ粒子1gをガラス表面に置き、ひまし油(Sigma Aldrich社製、18722)を板状アルミナ粒子に滴下して、スパチュラで板状アルミナ粒子に練りこんだ。板状アルミナ粒子を飽和させるのに必要なひまし油の量を記録した。この操作を各サンプルについて合計3回繰り返し、記録されたひまし油の量の平均値を用いた。
原料化合物の酸化物換算の配合(全体を100質量%とする)と、上記の評価結果を表1に示す。なお、表1中、「N.D.」はnot detectedの略であり、不検出であることを表す。
Figure 2021059531
<ファンデーションの作製>
[実施例1]
表2に示す組成のファンデーションを作製した。具体的には、まず、タルク、酸化鉄及び二酸化チタンをそれぞれ秤量してhauschild社製の大きい混合用カップに入れ、2000rpmで60秒間、遠心混合機(FlackTek Inc.社製、SpeedMixer DAC 105 FVZ−K)で混合した。次いで、マイカ、板状アルミナ粒子及びステアリン酸ナトリウムを混合用カップに追加し、2000rpmで60秒間、遠心混合機で混合した。次いで、水添ポリイソブテン(商品名「Sophim MC30」)を混合用カップに追加し、2000rpmで60秒間、遠心混合機で混合した。次いで、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(商品名「Crodamol GTCC」)を混合用カップに追加し、2000rpmで60秒間、遠心混合機で混合した。次いで、トリシロキサンジメチコン(商品名「KF 90 20cts」)を混合用カップに追加し、2000rpmで60秒間、遠心混合機で混合した。
Figure 2021059531
次いで、得られた混合物から分析天秤で4gの試料を計量した。4gの試料を圧縮成形機(Carver Model C S/N41000−208)を用いて、圧力を徐々に5トンまで増やし、20秒間圧力を保持して、ファンデーションを作製した。
[比較例1]
板状アルミナ粒子としてAP05の代わりにce1を用いた以外は、実施例1と同様の方法を用いてファンデーションを作製した。
<ファンデーションの評価>
[明度、彩度及び色相の計測]
作製されたファンデーションについて、分光光度計(Datacolor SF600 PLUS)及び多角度測色計(BYK Mac I Cat.No:7030)を用いて、明度、彩度及び色相を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2021059531
表3から、実施例1のファンデーションは、比較例1のファンデーションよりも、明度及び彩度が良好であることが確かめられた。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本実施形態の化粧品用組成物によれば、ソフトフォーカス効果を有しながら、明度が良好な化粧品用組成物を提供することができる。

Claims (10)

  1. 固体27Al NMR分析にて、静磁場強度14.1Tにおける10〜30ppmの6配位アルミニウムのピークに対する縦緩和時間Tが、5秒以上である、板状アルミナ粒子を含有する、化粧品用組成物。
  2. 前記板状アルミナ粒子がケイ素及び/又はゲルマニウムを含む、請求項1に記載の化粧品用組成物。
  3. 前記板状アルミナ粒子が表層にムライトを含む、請求項2に記載の化粧品用組成物。
  4. 前記板状アルミナ粒子がモリブデンを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧品用組成物。
  5. 前記板状アルミナ粒子100質量%に対するモリブデンの含有量が、三酸化モリブデン換算で、0.1質量%以上1質量%以下である、請求項4に記載の化粧品用組成物。
  6. 前記板状アルミナ粒子の固形分1gあたりの吸油量が0.6g以上5.0g以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧品用組成物。
  7. スキンケア用又はメイクアップ用である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化粧品用組成物。
  8. さらに着色剤を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧品用組成物。
  9. ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、口紅、ネイルエナメル、ボディー化粧品、及び日焼け止めからなる群より選ばれる化粧品である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化粧品用組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の化粧品用組成物を皮膚に塗布することを含む、塗布方法。
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