JP2021054813A - 光重合型歯科用表面被覆材組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】光照射器の種類に関わらず優れた表面硬化性を示すことで適用部位を短時間で滑沢に仕上げることができ、また歯科充填用グラスアイオノマーセメントを含む様々な修復物や歯質に対して優れた接着性を示すことで修復物を摩耗や着色から長期間保護することが可能であり、さらに性状及び特性を長期間維持することが可能な優れた保存安定性を有する光重合型歯科用表面被覆材を提供する。【解決手段】(a)多官能重合性単量体、(b)揮発性単官能重合性単量体、(c)酸性基含有重合性単量体、(d)α−ジケトン化合物、(e)アミン化合物として(e−1)芳香族第三級アミン、及び(e−2)脂肪族第三級アミン、を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物であって、(e−1)と(e−2)の配合比率が質量で1.0:99.0〜70.0:30.0であることを特徴とする光重合型歯科用表面被覆材組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、修復物表面にレジンコーティング層を形成させるための光重合型歯科用表面被覆材に関する。より詳細には該レジンコーティング層の形成により、修復物表面を滑沢な面に仕上げ、且つ修復物を摩耗や着色から保護することが可能な光重合型歯科用表面被覆材に関する。
口腔内で使用される修復物には、充填修復材料、インレー、アンレー、クラウン、ブリッジ等の歯冠用補綴装置、人工歯、義歯床、暫間修復材料等がある。これらの修復物にはセラミックス材料、樹脂材料、又は無機フィラーと樹脂材料を組み合わせた有機−無機複合材料等が用いられている。
これらの修復物は、口腔内に露出する表面が可能な限り滑沢であることが望まれている。その理由は修復物の表面性状が審美性、舌感、プラーク付着及び対合歯の摩耗等に影響を及ぼすためである。このことから、修復物の表面を研磨する作業が一般的に行われる。
修復物の研磨は一般的に砥粒の粗さが異なる複数の研磨材を用いて粗研磨、中研磨、及び仕上げ研磨の順に研磨する手順で行われる。しかしこのように複数のステップで行う研磨作業は非常に煩雑で、修復物表面を滑沢な面にするには時間を要する。
一方で、修復物の表面を粗研磨した後、重合性単量体を主成分とする光重合型歯科用表面被覆材を塗布し、光照射することにより、薄いレジンコーティング層を形成させ、短時間で滑沢な面を得る方法が提案されている。
例えば特許文献1には、4官能以上のジペンタエリスリトールアクリレート系重合性単量体、揮発性溶剤及び光重合開始剤を主成分とする光重合型歯科用表面被覆材組成物が提案されている。
特許文献2には、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの1分子中、3つ以上の水酸基をアクリル酸エステル基にて修飾した多官能アクリレート架橋剤、揮発性(メタ)アクレート化合物、及び光重合開始剤を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物において、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイドを用いることで光重合開始剤に基因するレジンコーティング層の黄色味を低減させる技術が開示されている。
特許文献3には、(メタ)アクリレート系重合性単量体に不飽和二重結合を有するアルコキシシランによって表面が修飾された平均粒子径1〜100nmの無機微粒子を単分散状態で配合することで耐摩耗性を向上させた光重合型歯科用表面被覆材組成物が提案されている。また本特許文献の中で、(メタ)アクリレート系重合性単量体中に酸性基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体を含ませることで、歯科充填用グラスアイオノマーセメントや歯質に対する接着性が向上することが示されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、レジン系材料に対しては接着性を有しているものの、レジン成分を含まない歯科充填用グラスアイオノマーセメントに対しては接着性を有していないため、そのような修復物に適用した場合は短期間でレジンコーティング層の剥離が生じていた。また、これら組成物は歯質に対しても接着性を有していないため、たとえ接着性を有する修復物に対して適用した場合であっても、レジンコーティング層が修復物と歯質との界面を超えて歯質上にも形成されると、そこが基点となって剥離やチッピングを生じさせていた。
さらに特許文献2の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、ハロゲンランプを光源とする歯科重合用光照射器(以下、ハロゲン照射器)を用いて光照射した場合は、優れた表面硬化性を示し、高い滑沢性及び機械的特性を発現するものの、実際の臨床で多く使用されているLEDランプを光源とする歯科重合用光照射器(以下、LED照射器)を用いて光照射した場合は、表面硬化性が不充分で表面に未重合の重合性単量体が多く残存し、硬化物の滑沢性及び材料強度が著しく劣っていた。
また特許文献3の光重合型歯科用表面被覆材組成物について本発明者等が検討した結果、該組成物において光重合開始剤の還元剤として芳香族第三級アミンのみを含ませた場合は、保管中にゲル化が生じることが判明した。さらに光重合開始剤の還元剤として脂肪族第三級アミンのみを含ませた場合は、表面硬化性、並びに歯科充填用グラスアイオノマーセメント及び歯質に対する接着性が経時的に低下することが判明した。
以上に示した通り、従来の光重合型歯科用表面被覆材組成物は表面硬化性、接着性又は保存安定性のいずれかに課題を残していた。そのため、それら特性をバランス良く有する光重合型歯科用表面被覆材組成物が求められていた。
そこで本発明は、上記した従来技術の課題を解消し、光照射器の種類に関わらず優れた表面硬化性を示すことで適用部位を短時間で滑沢に仕上げることができ、また歯科充填用グラスアイオノマーセメントを含む様々な修復物や歯質に対して優れた接着性を示すことで修復物を摩耗や着色から長期間保護することが可能であり、さらに性状及び特性を長期間維持することが可能な優れた保存安定性を有する光重合型歯科用表面被覆材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討の結果、多官能重合性単量体、揮発性単官能重合性単量体、酸性基含有重合性単量体を含む重合性単量体と、α−ジケトン化合物、アミン化合物を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物において、アミン化合物として芳香族第三級アミンと脂肪族第三級アミンを同時に配合し、且つ芳香族第三級アミンと脂肪族第三級アミンの配合比率を特定の範囲内に調整した組成物は、光照射器の種類に関わらず良好な表面硬化性を示し、また形成したレジンコーティング層は歯科充填用グラスアイオノマーセメントを含む様々な修復物及び歯質に対して優れた接着性を示し、さらに長期間保管した場合でも組成物がゲル化することなく安定して特性を発現することを見出した。また上記の組成物において、さらにアシルホスフィンオキサイド化合物、及び/又は多官能アクリレート系重合性単量体を配合することで、表面硬化性がさらに向上し、より表面未重合層が少ない滑沢なレジンコーティング層を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は
(a)多官能重合性単量体、
(b)揮発性単官能重合性単量体、
(c)酸性基含有重合性単量体、
(d)α−ジケトン化合物、
(e)アミン化合物として
(e−1)芳香族第三級アミン、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン
を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物であって、
(e−1)と(e−2)の配合比率が質量比で1.0:99.0〜70.0:30.0であることを特徴とする光重合型歯科用表面被覆材組成物である。
(a)多官能重合性単量体、
(b)揮発性単官能重合性単量体、
(c)酸性基含有重合性単量体、
(d)α−ジケトン化合物、
(e)アミン化合物として
(e−1)芳香族第三級アミン、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン
を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物であって、
(e−1)と(e−2)の配合比率が質量比で1.0:99.0〜70.0:30.0であることを特徴とする光重合型歯科用表面被覆材組成物である。
また、前記光重合型歯科用表面被覆材組成物において、
(a)多官能重合性単量体 20.0〜90.0wt%、
(b)揮発性単官能重合性単量体 5.0〜70.0wt%、
(c)酸性基含有重合性単量体 0.1〜10.0wt%、
(d)α−ジケトン化合物 0.1〜10.0wt%、
(e−1)芳香族第三級アミン 0.1〜7.0wt%、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン 0.1〜10.0wt%、
を含むことが好ましい。
(a)多官能重合性単量体 20.0〜90.0wt%、
(b)揮発性単官能重合性単量体 5.0〜70.0wt%、
(c)酸性基含有重合性単量体 0.1〜10.0wt%、
(d)α−ジケトン化合物 0.1〜10.0wt%、
(e−1)芳香族第三級アミン 0.1〜7.0wt%、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン 0.1〜10.0wt%、
を含むことが好ましい。
また、前記光重合型歯科用表面被覆材組成物において、(f)アシルホスフィンオキサイド化合物を含むことが好ましい。
また、前記光重合型歯科用表面被覆材組成物において、(a)多官能重合性単量体が多官能アクリレート系重合性単量体であることが好ましい。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、光照射器の種類に関わらず優れた表面硬化性を示し、短時間で修復物上に滑沢なレジンコーティング層を形成することができる。また本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、歯科用コンポジットレジン、歯冠用硬質レジン等のレジン系材料から成る修復物に加え、例えば歯科充填用グラスアイオノマーセメント等のレジン成分を含まない修復物や歯質に対しても優れた接着性を発現するため、剥離やチッピングのリスクを低減できると共に、より幅広い症例において修復物を摩耗や着色から長期間保護することができる。さらに本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、保存安定性に優れ、その特性及び性状を長期間維持することが可能である。
以下、本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物における各成分について詳細に説明する。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる(a)多官能重合性単量体は、一分子中に2つ以上のラジカル重合可能な不飽和基、例えばアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有しているものであれば、何ら制限なく用いることができる。すなわち、例えば多官能(メタ)アクリレート系重合性単量体、及び多官能(メタ)アクリルアミド系重合性単量体が挙げられる。以下に重合可能な不飽和基として(メタ)アクリレート基を有する該多官能重合性単量体を代表例として具体的に示す。なお、本発明においては(メタ)アクリロイルをもってアクリロイルとメタクリロイルの両者を、(メタ)アクリレートをもってアクリレートとメタクリレートの両者を包括的に表記する。
芳香族系2官能重合性単量体としては、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(Bis−GMA)、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
脂肪族系2官能重合性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート(GDMA)、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(GDA)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
3官能重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
4官能以上の重合性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ウレタン系重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体とメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される2官能又は3官能以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これら(a)多官能重合性単量体は単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。中でも(a)多官能重合性単量体として、多官能アクリレート系重合性単量体を用いることが好ましい。また、(a)多官能重合性単量体は、酸性基を含有しないことが好ましい。なお、(a)多官能重合性単量体は、(c)酸性基含有重合性単量体と同じものとすることができるが、異なることが好ましい。
これら(a)多官能重合性単量体は単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。中でも(a)多官能重合性単量体として、多官能アクリレート系重合性単量体を用いることが好ましい。また、(a)多官能重合性単量体は、酸性基を含有しないことが好ましい。なお、(a)多官能重合性単量体は、(c)酸性基含有重合性単量体と同じものとすることができるが、異なることが好ましい。
(a)多官能重合性単量体は光重合型歯科用表面被覆材組成物中に20.0〜90.0wt%含まれることが好ましく、30.0〜80.0wt%含まれることが更に好ましい。(a)多官能重合性単量体の含有量が20.0wt%未満になる、又は90.0wt%を超えると表面硬化性が低下する場合がある。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる(b)揮発性単官能重合性単量体は、常圧での沸点が50−120℃の単官能重合性単量体であれば、何ら制限なく用いることができる。(b)揮発性単官能重合性単量体を具体的に例示すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
(b)揮発性単官能重合性単量体は光重合型歯科用表面被覆材組成中に5.0〜70.0wt%含まれることが好ましく、10.0〜60.0wt%含まれることが更に好ましい。(b)揮発性単官能重合性単量体が5.0wt%未満になる、又は70.0wt%を超えると表面硬化性が低下する場合がある。また、(b)揮発性単官能重合性単量体は、酸性基を含有しないことが好ましい。なお、(b)揮発性単官能重合性単量体は、(c)酸性基含有重合性単量体と同じものとすることができるが、異なることが好ましい。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる(c)酸性基含有重合性単量体は、リン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基等の酸性基と、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合可能な不飽和基をそれぞれ一分子中に1つ以上有している重合性単量体であれば、何ら制限なく用いることができる。すなわち、酸性基含有(メタ)アクリレート系重合性単量体、及び酸性基含有(メタ)アクリルアミド系重合性単量体が挙げられる。以下に重合可能な不飽和基として(メタ)アクリレート基を有する該酸性基含有重合性単量体を代表例として具体的に示す。
リン酸基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホスホン酸基を有する重合性単量体としては、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
カルボキシ基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン−1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸及びこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
スルホン酸基を有する重合性単量体としては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ) アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら(c)酸性基含有重合性単量体は単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
(c)酸性基含有重合性単量体は光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.1〜10.0wt%含まれることが好ましく、1.0〜7.0wt%含まれることが更に好ましい。(c)酸性基含有重合性単量体の含有量が0.1wt%未満になると歯科充填用グラスアイオノマーセメント、又は修復物周辺の歯質に対する接着性が低下する場合がある。また、(c)酸性基含有重合性単量体の含有量が10.0wt%を超えると表面硬化性が低下し、さらに保存安定性が悪くなり経時的にゲル化する場合がある。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる(d)α−ジケトン化合物は、光増感材として働くものであり、一般に歯科用硬化性組成物に使用されるものであれば、何ら制限なく用いることができる。α−ジケトン化合物を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p'−ジメトキシベンジル、p,p'−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。中でも(d)α−ジケトン化合物として、カンファーキノンを用いることが好ましい。
(d)α−ジケトン化合物は光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.1〜10.0wt%含まれることが好ましく、0.5〜5.0wt%含まれることが更に好ましい。(d)α−ジケトン化合物の含有量が0.1wt%未満になると表面硬化性が低下する場合がある。また、(d)α−ジケトン化合物の含有量が10.0wt%を超えると硬化体が著しく黄色又は褐色になり、審美性に劣る場合がある。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる(e)アミン化合物は、光重合促進材として働くものであり、一般に歯科用硬化性組成物に使用されるものであれば、何ら制限なく用いることができるが、本発明においては、(e−1)芳香族第三級アミンと、(e−2)脂肪族第三級アミンの二種類を同時に配合しなければならない。以下に(e)アミン化合物を具体的に例示する。
(e−1)芳香族第三級アミンを具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で、又は数種類を組み合わせて用いることができる。中でも(e−1)芳香族第三級アミンとして、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステルを用いることが好ましい。
(e−1)芳香族第三級アミンは光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.1〜7.0wt%含まれることが好ましく、0.5〜5.0wt%含まれることが更に好ましい。(e−1)芳香族第三級アミンの含有量が0.1wt%未満になると経時的に表面硬化性が低下する場合がある。また、(e−1)芳香族第三級アミンの含有量が7.0wt%を超えると保存安定性が悪くなり、経時的にゲル化する場合がある。
(e−2)脂肪族第三級アミンを具体的に例示すると、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−エチルジアリルアミン、N−エチルジベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリ(イソプロパノール)アミン、トリ(2−ヒドロキシブチル)アミン、トリアリルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、2,2'−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。中でも(e−2)脂肪族第三級アミンとして、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドを用いることが好ましい。
(e−2)脂肪族第三級アミンは光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.1〜10.0wt%含まれることが好ましく、1.0〜7.0wt%含まれることが更に好ましい。(e−2)脂肪族第三級アミンの含有量が0.1wt%未満になると表面硬化性が低下し、さらに保存安定性が悪くなり経時的にゲル化する場合がある。また、(e−2)脂肪族第三級アミンの含有量が10.0wt%を超えると組成中に含まれる(c)酸性基含有重合性単量体と塩を形成し、歯科充填用グラスアイオノマーセメント、又は修復物周辺の歯質に対する接着性が低下する場合がある。
本発明において、(e−1)芳香族第三級アミンと、(e−2)脂肪族第三級アミンの質量比は1.0:99.0〜70.0:30.0でなければならない。また(e−1)芳香族第三級アミンと、(e−2)脂肪族第三級アミンの質量比が10.0:90.0〜50.0:50.0であることが更に好ましい。この比率において、1.0:99.0よりも(e−1)芳香族第三級アミンの配合割合が小さい場合、保存安定性が悪くなり、経時的に表面硬化性が低下する。また配合割合が高くなった(e−2)脂肪族第三級アミンが組成中に含まれる(c)酸性基含有重合性単量体と塩を形成し、歯科充填用グラスアイオノマーセメント、又は修復物周辺の歯質に対する接着性が低下する。一方、この比率において、70.0:30.0よりも(e−1)芳香族第三級アミンの配合割合が大きい場合、表面硬化性が低下する。また保存安定性が悪くなり経時的にゲル化する。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物において、(f)アシルホスフィンオキサイド化合物が含ませると、表面硬化性がさらに向上するため好ましい。(f)アシルホスフィンオキサイド化合物は、光増感材として働くものであり、一般に歯科用硬化性組成物に使用されるものであれば、何ら制限なく用いることができる。(f)アシルホスフィンオキサイド化合物を具体的に例示すると、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
(f)アシルホスフィンオキサイド化合物は光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.1〜10.0wt%含まれることが好ましい。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、その性状、操作性、又は機械的特性を調整する目的で、上述した(b)揮発性単官能重合性単量体以外に、揮発性を有さない単官能重合性単量体をさらに含ませることができる。この場合の揮発性を有さない単官能重合性単量体は、酸性基含有重合性単量体を含まないことが好ましい。
該単官能重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物には、上述した以外の光増感材、及び/又は光重合促進材をさらに含ませることができる。
光増感材としては、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン等のクマリン類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕−チタン等のチタノセン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
また光重合促進材としては、第一級アミン、第二級アミン等のアミン化合物、1,3,5−トリメチルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジラウレート等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン等の含イオウ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
さらに本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、その性状、又は操作性を調整する目的で、諸特性に悪影響を与えない範囲で増粘剤を含ませることができる。本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる増粘剤は、無機増粘剤、有機増粘剤のいずれも用いることができる。
無機増粘剤としては、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、さらにサポナイト、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、スメクタイト、ネクタイト及びセピオライト等の粘土鉱物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシポリメチレン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カーヤガム、アラビアガム、カラヤガム、グアガム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら増粘剤は単独で或いは2種類以上を混合して用いることができる。
増粘剤は、光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.001〜10.0質量%の範囲で含まれることが好ましい。
さらに本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、その操作性、機械的特性、又は硬化特性を調整する目的で、諸特性に悪影響を与えない範囲で非酸反応性粉末を含ませることができる。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物に用いることができる非酸反応性粉末は、(c)酸性基含有重合性単量体が有する酸性基と反応する元素を含有しないものであれば特に限定されることなく用いることができる。非酸反応性粉末としては歯科用充填材として公知なもの、例えば、無機充填材、有機充填材及び有機−無機複合充填材等が挙げられ、これらは単独で又は数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。それらの中でも無機充填材を用いることが特に好ましい。また、これら非酸反応性粉末の形状は特に限定されず、球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状のものやそれらの凝集体であってもよく、これらに限定されるものではない。これら非酸反応性粉末の平均粒子径は特に制限はないが、0.001〜30μmの範囲にあることが好ましい。
無機充填材を具体的に例示すると、石英、無定形シリカ、超微粒子シリカ、酸性基と反応する元素を含まない種々のガラス(溶融法によるガラス、ゾル−ゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラス等を含む)、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
非酸反応性粉末は、光重合型歯科用表面被覆材組成物中に0.001〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、防腐剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を必要に応じて任意に含ませることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、及び比較例の光重合型歯科用表面被覆材組成物の調製に用いた成分(a)〜(f)及びそれらの略称は次の通りである。
〔(a)多官能重合性単量体〕
PTA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
UDMA:ジ(メタクリロキシエチル)−2,2,4−トリメチルヘキサンメチレンジウレタン
DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
〔(b)揮発性単官能重合性単量体〕
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
〔(c)酸性基含有重合性単量体〕
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
6−MHPA:6−メタクリロキシヘキシル−3−ホスホノアセテート
〔(d)α−ジケトン化合物〕
CQ:dl−カンファーキノン
〔(e−1)芳香族第三級アミン〕
DMBE:p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル
〔(e−2)脂肪族第三級アミン〕
TEOA:トリエタノールアミン
DMEM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
〔(f)アシルホスフィンオキサイド化合物〕
APO:2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド
PTA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
UDMA:ジ(メタクリロキシエチル)−2,2,4−トリメチルヘキサンメチレンジウレタン
DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
〔(b)揮発性単官能重合性単量体〕
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
〔(c)酸性基含有重合性単量体〕
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
6−MHPA:6−メタクリロキシヘキシル−3−ホスホノアセテート
〔(d)α−ジケトン化合物〕
CQ:dl−カンファーキノン
〔(e−1)芳香族第三級アミン〕
DMBE:p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル
〔(e−2)脂肪族第三級アミン〕
TEOA:トリエタノールアミン
DMEM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
〔(f)アシルホスフィンオキサイド化合物〕
APO:2、4、6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド
表1、表2に示す割合にて各成分を混合することにより実施例1〜34、比較例1〜8の光重合型歯科用表面被覆材組成物を調製した。
これら光重合型歯科用表面被覆材組成物(実施例1〜34、比較例1〜8)について、表面硬化性、接着性、保存安定性を評価した。それらの試験結果を表3、表4に示す。なお、評価方法は以下に示した通りである。
〔表面硬化性〕
23℃湿度50%の環境下において、市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、歯科重合用光照射器を用いて光照射を行い、レジンコーティング層を形成させた。なお、歯科重合用光照射器はハロゲンランプを光源とする松風グリップライトII、又はLEDランプを光源とするペンブライト(いずれも松風社製)の2種類を用い、光照射時間は10秒又は20秒の2条件とした。レジンコーティング層の表面状態を目視、及びインスツルメントにて確認し、表面硬化性を以下の5段階にて評価した。なお、各組成物及び光照射条件につき3回ずつ試験を実施した。
5・・・高い光沢性を示し、表面未重合層が全く認めらない。
4・・・比較的高い光沢性を示すものの、わずかに表面未重合層が認められる。
3・・・光沢性を示すものの、わずかに表面未重合層が認められる。
2・・・やや光沢性に劣り、かつ多くの表面未重合層が認められる。
1・・・光沢がなく、かつ多くの表面未重合層が認められる。
23℃湿度50%の環境下において、市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、歯科重合用光照射器を用いて光照射を行い、レジンコーティング層を形成させた。なお、歯科重合用光照射器はハロゲンランプを光源とする松風グリップライトII、又はLEDランプを光源とするペンブライト(いずれも松風社製)の2種類を用い、光照射時間は10秒又は20秒の2条件とした。レジンコーティング層の表面状態を目視、及びインスツルメントにて確認し、表面硬化性を以下の5段階にて評価した。なお、各組成物及び光照射条件につき3回ずつ試験を実施した。
5・・・高い光沢性を示し、表面未重合層が全く認めらない。
4・・・比較的高い光沢性を示すものの、わずかに表面未重合層が認められる。
3・・・光沢性を示すものの、わずかに表面未重合層が認められる。
2・・・やや光沢性に劣り、かつ多くの表面未重合層が認められる。
1・・・光沢がなく、かつ多くの表面未重合層が認められる。
〔接着性〕
23℃湿度50%の環境下において、#600のシリコンカーバイド研磨紙にて表面を研磨した牛歯エナメル質、又は市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、LEDランプを光源とするペンブライト(松風社製)を用いて20秒間光照射を行い、レジンコーティング層を形成させた。各試験片にサーマルサイクル(5℃⇔60℃、各温度における浸漬時間:1分)5,000回の負荷を与え後、被着体に対するレジンコーティング層の接着状態を目視にて確認し、接着性を以下の5段階にて評価した。なお、各組成物及び被着体につき5回ずつ試験を実施した。
5・・・全試料において、剥離が認められない。
4・・・5個中、1個の試料において、剥離が認められる。
3・・・5個中、2個の試料において、剥離が認められる。
2・・・5個中、3個又は4個の試料において、剥離が認められる。
1・・・全試料において、剥離が認められる。
23℃湿度50%の環境下において、#600のシリコンカーバイド研磨紙にて表面を研磨した牛歯エナメル質、又は市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、LEDランプを光源とするペンブライト(松風社製)を用いて20秒間光照射を行い、レジンコーティング層を形成させた。各試験片にサーマルサイクル(5℃⇔60℃、各温度における浸漬時間:1分)5,000回の負荷を与え後、被着体に対するレジンコーティング層の接着状態を目視にて確認し、接着性を以下の5段階にて評価した。なお、各組成物及び被着体につき5回ずつ試験を実施した。
5・・・全試料において、剥離が認められない。
4・・・5個中、1個の試料において、剥離が認められる。
3・・・5個中、2個の試料において、剥離が認められる。
2・・・5個中、3個又は4個の試料において、剥離が認められる。
1・・・全試料において、剥離が認められる。
〔保存安定性〕
各光重合型歯科用表面被覆材組成物をプラスティック製のボトル容器に充填し、キャップをしっかりと閉めた後、50℃の環境下に3ヶ月間静置した(以下、50℃保存品と称する)。50℃保存品を23℃の環境下に24時間静置した後、表面硬化性を前記した方法にて評価した。なお、歯科重合用光照射器はLEDランプを光源とするペンブライトを使用し、光照射時間は20秒間とした。さらに各50℃保存品の内容物を容器から取り出し、その性状を目視、及びインスツルメントにて確認した。なお、性状の確認は各組成物につき3個のボトル容器について行い、以下の5段階にて評価した。
5・・・全試料において、ゲル化が認められない。
4・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、わずかな粘度上昇が認められる。
3・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、明らかな粘度上昇が認められる。
2・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、部分的な硬化が認められる。
1・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、完全な硬化が認められる。
−・・・試料がゲル化していたため、評価不可能。
各光重合型歯科用表面被覆材組成物をプラスティック製のボトル容器に充填し、キャップをしっかりと閉めた後、50℃の環境下に3ヶ月間静置した(以下、50℃保存品と称する)。50℃保存品を23℃の環境下に24時間静置した後、表面硬化性を前記した方法にて評価した。なお、歯科重合用光照射器はLEDランプを光源とするペンブライトを使用し、光照射時間は20秒間とした。さらに各50℃保存品の内容物を容器から取り出し、その性状を目視、及びインスツルメントにて確認した。なお、性状の確認は各組成物につき3個のボトル容器について行い、以下の5段階にて評価した。
5・・・全試料において、ゲル化が認められない。
4・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、わずかな粘度上昇が認められる。
3・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、明らかな粘度上昇が認められる。
2・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、部分的な硬化が認められる。
1・・・3個中、少なくとも1個以上の試料において、完全な硬化が認められる。
−・・・試料がゲル化していたため、評価不可能。
〔審美性〕
23℃湿度50%の環境下において、市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、歯科重合用光照射器を用いて光照射を行い、厚さ30μm又は10μmのレジンコーティング層を形成させた。なお、歯科重合用光照射器はLEDランプを光源とするペンブライト(松風社製)を用い、光照射時間は10秒とした。作製した試料の色調と、別途作製した光重合型歯科用表面被覆材組成物を塗布しない円盤状試験体の色調とを目視にて比較し、審美性を以下の5段階にて評価した。
5・・・レジンコーティング層の厚さ30μmの場合において、色調差が認められない。
4・・・レジンコーティング層の厚さ30μmの場合において、わずかに色調差が認められるものの、厚さ10μmの場合においては色調差が認められない。
3・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、わずかに色調差が認められる。
2・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、色調差が認められる。
1・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、明らかな色調差が認められる。
23℃湿度50%の環境下において、市販の歯科充填用グラスアイオノマーセメント(グラスアイオノマー FX ウルトラ(色調:A2)/松風社製)の円盤状硬化体(φ15、厚さ=1.0mm)上に、ブラシを用いて各光重合型歯科用表面被覆材組成物を薄く塗布した後、歯科重合用光照射器を用いて光照射を行い、厚さ30μm又は10μmのレジンコーティング層を形成させた。なお、歯科重合用光照射器はLEDランプを光源とするペンブライト(松風社製)を用い、光照射時間は10秒とした。作製した試料の色調と、別途作製した光重合型歯科用表面被覆材組成物を塗布しない円盤状試験体の色調とを目視にて比較し、審美性を以下の5段階にて評価した。
5・・・レジンコーティング層の厚さ30μmの場合において、色調差が認められない。
4・・・レジンコーティング層の厚さ30μmの場合において、わずかに色調差が認められるものの、厚さ10μmの場合においては色調差が認められない。
3・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、わずかに色調差が認められる。
2・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、色調差が認められる。
1・・・レジンコーティング層の厚さ10μmの場合において、明らかな色調差が認められる。
表3に示したとおり、実施例1〜34の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、光照射器の種類に関わらず表面硬化性に優れ、且つ良好な接着性及び保存安定性を示した。一方、表4に示した通り、比較例1〜8の光重合型歯科用表面被覆材組成物は、実施例1〜34と比較して、表面硬化性、接着性、保存安定性のいずれかの特性に劣っていた。
本発明によれば、光照射器の種類に関わらず優れた表面硬化性を示すことで適用部位を短時間で滑沢に仕上げることができ、また歯科充填用グラスアイオノマーセメントを含む様々な修復物や歯質に対して優れた接着性を示すことで修復物を摩耗や着色から長期間保護することが可能であり、さらに性状及び特性を長期間維持することが可能な優れた保存安定性を有する光重合型歯科用表面被覆材組成物を提供することができる。
Claims (4)
- (a)多官能重合性単量体、
(b)揮発性単官能重合性単量体、
(c)酸性基含有重合性単量体、
(d)α−ジケトン化合物、
(e)アミン化合物として
(e−1)芳香族第三級アミン、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン
を含む光重合型歯科用表面被覆材組成物であって、
(e−1)と(e−2)の配合比率が質量比で1.0:99.0〜70.0:30.0であることを特徴とする光重合型歯科用表面被覆材組成物。 - (a)多官能重合性単量体 20.0〜90.0wt%、
(b)揮発性単官能重合性単量体 5.0〜70.0wt%、
(c)酸性基含有重合性単量体 0.1〜10.0wt%、
(d)α−ジケトン化合物 0.1〜10.0wt%、
(e−1)芳香族第三級アミン 0.1〜7.0wt%、及び
(e−2)脂肪族第三級アミン 0.1〜10.0wt%、
を含む請求項1に記載の光重合型歯科用表面被覆材組成物。 - さらに(f)アシルホスフィンオキサイド化合物を含む請求項1、又は2に記載の光重合型歯科用表面被覆材組成物。
- 前記(a)多官能重合性単量体が多官能アクリレート系重合性単量体である請求項1〜3の何れか1項に記載の光重合型歯科用表面被覆材組成物。
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