JP2021054751A - 構造タンパク質成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】目的物質を製造する際に発生した宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを含むタンパク質成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のタンパク質成形体は、構造タンパク質を主成分とするタンパク質成形体であって、該タンパク質成形体は、細胞残渣を含み、上記細胞は、目的物質を産生する宿主細胞であり、上記細胞残渣は前記目的物質を上記宿主細胞から回収した後の細胞残渣であり、かつ、上記宿主細胞由来の、50kDa以下の分子量を有するタンパク質を含む宿主細胞残渣である。【選択図】なし

Description

本発明は、構造タンパク質成形体の製造方法に関する。
目的タンパク質を得るために、遺伝子工学的手法を用いて、目的タンパク質をコードする核酸を宿主細胞に導入し、目的タンパク質を発現させたのちに、回収・精製することは一般的に行われている。その際、目的物でない宿主細胞由来の残渣が大量に発生する。この残渣は適切に処理し不活化したのち、ほとんど再利用されずに廃棄されてしまう。
宿主細胞由来の残渣の有効利用について、大腸菌の残渣を用いて、組換え大腸菌を培養し、トレオニンを生産する方法が報告されている。この有効利用は、大腸菌の生育に必要な窒素源と炭素源に着目している。
Blaesen,M., Friehs, K., &Flaschel, E. (2007). Recycling of bacterial biomass in aprocess of L−threonineproductionby means of a recombinant strain of Escherichia coli. Journalofbiotechnology, 132(4), 431−437.
本発明者らは、宿主細胞由来のタンパク質に着目し、宿主細胞由来の残渣を有効利用し、構造タンパク質とともにタンパク質成形体とすることを検討してきた。すなわち、本発明は、目的物質を製造する際に発生した宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを含むタンパク質成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[20]を提供する。
[1] 構造タンパク質を主成分とするタンパク質成形体であって、該タンパク質成形体は、細胞残渣を含み、
上記細胞は、目的物質を産生する宿主細胞であり、
上記細胞残渣は上記目的物質を上記宿主細胞から回収した後の細胞残渣であり、かつ、上記宿主細胞由来の、50kDa以下の分子量を有するタンパク質を含む宿主細胞残渣、タンパク質成形体。
[2] 構造タンパク質の含有量が、タンパク質成形体の総質量に対して、50質量%〜95質量%である、[1]のタンパク質成形体。
[3] 上記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、4kDa〜50kDaの分子量を有する宿主細胞由来のタンパク質を、50質量%以上含む、[1]又は[2]のタンパク質成形体。
[4] 上記宿主細胞残渣は、上記宿主細胞の膜タンパク質を主成分として含む、[1]〜[3]のいずれかのタンパク質成形体。
[5] 上記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、上記宿主細胞の膜タンパク質を20質量%以上含む、[1]〜[4]のいずれかのタンパク質成形体。
[6] 上記目的物質が組換えタンパク質であり、上記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、50質量%〜90質量%の総タンパク質含み、かつ、上記組換えタンパク質を10質量%以下含む、[1]〜[5]のいずれかのタンパク質成形体。
[7] 上記宿主細胞残渣は、さらに上記宿主細胞由来のリボソームタンパク質、脂質、糖類、塩類又は核酸を含む、[1]〜[6]のいずれかのタンパク質成形体。
[8] 上記宿主細胞は、大腸菌、酵母、バチルス属微生物、コリネバクテリウム属微生物、糸状真菌、及び動物細胞からなる群より選択される、[1]〜[7]のいずれかのタンパク質成形体。
[9] 樹脂、フィルム、繊維又は糸である、[1]〜[8]のいずれかのタンパク質成形体。
[10] 目的物質を産生する宿主細胞を粉砕し、目的物質と宿主細胞残渣とを分離し、宿主細胞残渣を回収する工程と、
上記回収された宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを有機溶媒に溶解し、溶液を調製する工程と、
上記溶液をタンパク質成形体に成形する工程と
を含み、上記宿主細胞残渣は上記宿主細胞由来の、50kDa以下の平均重量分子量を有するタンパク質を含む、タンパク質成形体の製造方法。
[11] 上記タンパク質成形体における構造タンパク質の含有量が、タンパク質成形体の総質量に対して、50質量%〜95質量%である、[10]の製造方法。
[12] 上記宿主細胞残渣は、上記宿主細胞の膜タンパク質を主成分として含む、[10]又は[11]の製造方法。
[13] 上記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、上記宿主細胞の膜タンパク質を20質量%含む、[10]〜[12]のいずれかの製造方法。
[14] 上記目的物質が組換えタンパク質であり、上記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、30質量%〜90質量%の総タンパク質含み、かつ、上記組換えタンパク質を10質量%以下含む、[10]〜[13]のいずれかの製造方法。
[15] 上記宿主細胞残渣は、さらに上記宿主細胞由来のリボソームタンパク質、脂質、糖類、塩類又は核酸を含む、[10]〜[14]のいずれかの製造方法。
[16] 上記宿主細胞は、大腸菌、酵母、バチルス属微生物、コリネバクテリウム属微生物、糸状真菌、及び動物細胞からなる群より選択される、[10]〜[15]のいずれかの製造方法。
[17] 上記タンパク質成形体が樹脂、フィルム、繊維又は糸である、[10]〜[16]のいずれかの製造方法。
[18] 上記宿主細胞残渣を沈殿画分として回収する、[10]〜[17]のいずれかの製造方法。
[19] 回収工程は、熱処理、酸凝集又はエタノール類凝集によって、上記宿主細胞残渣を沈殿させることを含む、[10]〜[18]のいずれかの製造方法。
[20] 膜タンパク質を含む、構造タンパク質繊維のための可塑剤。
本発明によれば、目的物質を製造する際に発生した宿主細胞残渣を有効利用することができる。本発明のタンパク質成形体は、宿主細胞由来のタンパク質を主成分とする宿主細胞残渣を含むことで、適宜な強度を有するとともに、生分解性もあるため、日用品から工業製品、ないし医薬分野など幅広い分野において利用され得る。また、従来廃棄される宿主細胞残渣の有効利用により、宿主細胞残渣を廃棄するための不活化等の処理も必要がなくなり、処理コストを低減でき、かつ、排水処理負担の低減による環境保護効果をもたらすこともできる。
紡糸装置の一例を概略的に示す説明図である。 実施例1の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末に対してSDS−PAGE電気泳動を行った結果を示す写真である。 実施例2の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末に対してSDS−PAGE電気泳動を行った結果を示す写真である。 実施例1及び2の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末のSDS−PAGE電気泳動結果を解析ソフ卜Image Labを用いて解析を行った結果を示すグラフである。 引張試験により直径(μm)を測定した結果を示すグラフである。 引張試験により最大点応力(MPa)を測定した結果を示すグラフである。 引張試験により破裂点変位(ひずみ)(%)を測定した結果を示すグラフである。 引張試験によりタフネス(MJ/m)を測定した結果を示すグラフである。
〔タンパク質成形体〕
本発明に係るタンパク質成形体は、構造タンパク質を主成分とするタンパク質成形体であって、該タンパク質成形体は細胞残渣を含み、上記細胞は、目的物質を産生する宿主細胞であり、上記細胞残渣は上記目的物質を上記宿主細胞から回収した後の細胞残渣であり、かつ、上記宿主細胞由来の、50kDa以下の分子量を有するタンパク質を含む宿主細胞残渣である。
本発明に係るタンパク質成形体は、構造タンパク質を主成分とするため、本明細書において場合によって構造タンパク質成形体という。本発明に係るタンパク質成形体は、構造タンパク質及び宿主細胞残渣を用いて成形することによって得られたタンパク質成形体であり、タンパク質成形体の形態は、成形できれば特に限定されないが、樹脂、繊維、又は糸等が挙げられる。タンパク質成形体は、後述の製造方法によって得ることができる。
(構造タンパク質)
本発明における「構造タンパク質」とは、生体構造を構築するタンパク質である。構造タンパク質としては、例えば天然に存在するフィブロイン、コラーゲン、レシリン、エラスチン及びケラチン等の天然型構造タンパク質を挙げることができる。天然に存在するフィブロインとして、昆虫及びクモ類が産生するフィブロインが知られている。本実施形態において、構造タンパク質は、天然クモ糸タンパク質及び天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチドからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、スズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
クモには最大7種類の絹糸腺が存在し、それぞれ性質の異なるフィブロイン(スパイダーシルクタンパク質)を産生する。スパイダーシルクタンパク質は、その源泉の器官にしたがって、高い靭性を有する大瓶状スパイダータンパク質(major ampullate spider protein、MaSp)、高度な伸長力を有する小瓶状スパイダータンパク質(minor ampullate spider protein、MiSp)、並びに鞭状(flagelliform(Flag))、管状(tubuliform)、集合(aggregate)、ブドウ状(aciniform)及びナシ状(pyriform)の各スパイダーシルクタンパク質と命名されている。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
構造タンパク質は、上記天然型構造タンパク質に由来するポリペプチド、すなわち組換えポリペプチドであってもよい。例えば、組換えフィブロインは、いくつかの異種タンパク質生産系で産生されており、その製造方法として、トランスジェニック・ヤギ、トランスジェニック・カイコ、又は組換え植物若しくは哺乳類細胞が利用されている(Science,2002年,295巻,pp.472−476参照)。
組換えフィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
大吐糸管しおり糸タンパク質の組換えポリペプチドは、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式1中、(A)モチーフは4〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)として表すことができる。
コラーゲンの組換えポリペプチドとして、例えば、式2:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式2中、oは5〜300の整数を示す。REP2は、Gly−X−Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP2は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
レシリンの組換えポリペプチドとして、例えば、式3:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、pは4〜300の整数を示す。REP3はSer−J−J−Tyr−Gly−U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
エラスチンの組換えポリペプチドとして、例えば、NCBIのGenbankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。
ケラチンの組換えポリペプチドとして、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。
酵素としては、例えばポリメラーゼ、グルタミナーゼ等が挙げられ、ホルモンとしては、例えばインシュリン、メラトニンが等挙げられ、抗体としては、例えば免疫グロブリンG、免疫グロブリンM等が挙げられる。
例えば、後述の方法によって、組換えタンパク質をコードする核酸(「組換えタンパク質遺伝子」という場合もある)を宿主細胞に導入することによって、宿主細胞において組換えタンパク質を発現させることができる。
構造タンパク質成形体における構造タンパク質の含有量が、タンパク質成形体の総質量に対して、50質量%〜95質量%であることが好ましく、60質量%〜95質量%であることがより好ましく、65質量%〜95質量%であることがより好ましく、70質量%〜95質量%であることがより好ましく、75質量%〜95質量%であることが特に好ましい。
タンパク質成形体における構造タンパク質の含有量は、成形体を形成する原料中における構造タンパク質の含有量に等しいため、原料が溶液である場合、タンパク質成形体における構造タンパク質の含有量は、溶媒を除いた総質量に対する構造タンパク質の質量%を意味する。溶液におけるタンパク質の質量の測定は、当業者にとって一般的な方法であればよく、例えば、吸光光度法、蛍光法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法等を挙げることができる。吸光光度法としては、紫外吸光光度法、トリフェニルメタン系色素を用いたBradford法、水溶性テトラゾリウム塩(WST−8)を用いたWST法、Biuret法、Lowry法、BCA法等を挙げられ、そのうち、検出感度が高く操作が簡便という観点から、BCAが好ましい。蛍光光度法としては、Fluorescamine法、o Phthalaldehyde(OPA)法、CBQCA法、NanoOrange法等を挙げられる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動法としては、CBBによるタンパク質染色法、蛍光色素によるタンパク質染色法等を挙げられる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、タンパク質の総質量だけでなく、それぞれのタンパク質バンドの質量を測定することもできる。
(目的物質)
宿主細胞が生産する「目的物質」とは、細胞が産生する化合物であれば特に限定はない。有機物でも無機物でもよく、細胞中に保持される物でも細胞外に分泌される物でもよく、合成による物、分解による物の別を問わない。例えば、核酸、アミノ酸、糖、糖タンパク質、脂肪酸、ビタミン、ペプチド、抗体、ホルモン等が挙げられる。目的物質は、組換えタンパク質であってもよく、組換えタンパク質が可溶性であっても、不溶性であってもよい。
(宿主細胞)
本発明における「細胞」は、目的物質を産生する宿主細胞をいい、「目的物質を産生する」こととは、細胞を培地で培養した際、目的物質を細胞又は培地から回収できる程度に生産する能力を有することをいう。好ましくは、細胞が遺伝子工学的に改変された宿主細胞であり、当該細胞の野生株又は非改変株よりも、多量の目的物質を生産する能力を有することをいう。
目的物質が組換えタンパク質である場合、宿主細胞は組換えタンパク質の発現機構を備えていることが好ましい。組換えタンパク質の発現機構とは、組換えタンパク質(目的タンパク質)を選択的に発現させるための機構で、周知の組換えタンパク質発現機構を用いることができる。組換えタンパク質発現機構を備えることで、目的タンパク質を大量に発現させることができる。組換えタンパク質発現機構を備える物質生産細胞は、例えば、目的のタンパク質をコードするDNAを有する発現ベクターを細胞に導入することにより得ることができる。
本実施形態の宿主細胞は、外来タンパク質である組換えタンパク質を発現できる細胞であり、遺伝子工学的手法によって、組換えタンパク質遺伝子が宿主細胞に導入することによって得られる。なお、本明細書において、宿主細胞は組換えタンパク質遺伝子によって組み換えられた組換え細胞を指すが、明らかに混同しない場合に限って、組換えタンパク質遺伝子によって組み換えられる前の細胞も宿主細胞という場合がある。
組換えタンパク質をコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、改変フィブロインをコードする核酸の場合、天然のフィブロインをコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングし、遺伝子工学的手法により改変する方法、又は、化学的に合成する方法によって、所望の核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手したタンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製及び/又は確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸を合成してもよい。
調節配列は、宿主細胞における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、組換えタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主細胞の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主細胞の染色体中への組込みが可能で、タンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
遺伝子組換えに用いられる宿主細胞の種類は、遺伝子組換えに用いられるものであれば、特に限定されないが、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。例えば、大腸菌、酵母、バチルス属微生物、コリネバクテリウム属微生物、糸状真菌、及び動物細胞からなる群より選択されてもよい。
原核生物の宿主細胞の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主細胞とする場合、タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主細胞としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主細胞とする場合、組換えタンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主細胞による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
組換えタンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養培地中で培養し、培養培地中に当該タンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主細胞を培養培地中で培養する方法は、宿主細胞の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主細胞が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主細胞が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主細胞の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させた組換えタンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該タンパク質が、宿主細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、酵素処理法、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
また、タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてタンパク質の不溶体を回収する。回収したタンパク質の不溶体はタンパク質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法によりタンパク質の精製標品を得ることができる。当該タンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該タンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
(宿主細胞残渣)
本発明における宿主細胞残渣は、目的物質を宿主細胞から回収した後の細胞残渣であり、かつ、宿主細胞由来の、50kDa以下の分子量を有するタンパク質を含む宿主細胞残渣である。目的物質の回収の際、上述のように、目的物質の状態(溶解状態か不溶体か)によって、その単離・精製方法が異なる場合があるものの、通常宿主細胞由来の成分、特に宿主細胞由来のタンパク質が不純物として混入されないように、目的物質と宿主細胞由来のタンパク質とを分離する工程を含む。したがって、目的物質を回収した後に残った細胞残渣は、宿主細胞由来成分を主成分とし、特に宿主細胞由来の膜タンパク質、リボソームタンパク質等を含む。
宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、50kDa以下の分子量を有する宿主細胞由来のタンパク質、例えば、4kDa〜50kDaの分子量を有する宿主細胞由来のタンパク質を、50質量%以上含み、例えば、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上含み、また、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下含むものである。
宿主細胞由来の膜タンパク質は、特に限定されないがOmpA、OmpC、OmpF、OmpT、LamB、などが挙げられる。宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、前記宿主細胞の膜タンパク質を20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
宿主細胞残渣は、宿主細胞由来のタンパク質を含み、その主成分が宿主細胞由来の膜タンパク質である。宿主細胞の種類や分離工程によって異なるものの、宿主細胞残渣は、宿主細胞残渣の乾燥物の総質量に対し、宿主細胞の膜タンパク質を50質量%以上含み、例えば、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上含み、また、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下含むものである。
宿主細胞残渣は、宿主細胞残渣の乾燥物の総質量に対し、50質量%〜90質量%の総タンパク質を含み、例えば、55質量%〜85質量%、60質量%〜80質量%、60質量%〜70質量%、又は70質量%〜90質量%の総タンパク質を含む。総タンパク質において、宿主細胞由来の膜タンパク質の他に、宿主細胞由来の構造タンパク質等の膜タンパク質以外の宿主細胞由来のタンパク質、少量に残っている組換えタンパク質を含み得る。
目的物質が組換えタンパク質である場合、宿主細胞残渣は、宿主細胞残渣の乾燥物の総質量に対し、組換えタンパク質を10質量%以下、5質量%以下含み、例えば、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下又は0.5質量%以下含む。宿主細胞残渣は、組換えタンパク質を0質量%超含み、その含有量が検出限界よりも少ない量であり得る。
宿主細胞残渣は、タンパク質の他に、様々細胞由来成分を含み得る。例えば、宿主細胞由来の脂質、糖類又は核酸を含み得る。脂質としては、細胞膜由来のリン脂質を主成分として、そのほかに飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸も含み得る。糖類としては、グルコース、フルクトース、リボース、グリセルアルデヒドなどを含み得る。核酸としては、デオキシリボ核酸、リボ核酸を含み得る。宿主細胞残渣は、例えば5質量%〜20質量%の脂質、0.1質量%〜5質量%の糖類、0.1質量%〜5質量%の核酸、0.1質量%〜5質量%の塩類を含み得る。
〔タンパク質成形体の製造方法〕
本実施形態の宿主細胞残渣成形体の製造方法は、目的物質を産生する宿主細胞を粉砕し、目的物質と宿主細胞残渣とを分離し、宿主細胞残渣を回収する工程(回収工程)と、回収された宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを有機溶媒に溶解し、溶液を調製する工程(調製工程)、溶液をタンパク質成形体に成形する工程とを含む。
(回収工程)
宿主細胞の作製及び培養については、上述のとおりである。組換えタンパク質を発現させるための宿主細胞培養が終了した後、宿主細胞を遠心分離等により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、粉砕する。粉砕方法は特に限定されないが、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等が挙げられるが、例えば高圧ホモジナイザーが用いてもよい。
目的物質と宿主細胞残渣とを分離する方法は、目的物質の性質によって異なる。目的物質が組換えタンパク質である場合、当該組換えタンパク質が宿主細胞内に溶解状態した状態で発現される場合は、宿主細胞を破砕した後に得られた無細胞抽出液を遠心分離することによって、組換えタンパク質を含む上清画分と、宿主細胞残渣を含む沈殿画分とに分離する。一方、組換えタンパク質が宿主細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕した後、遠心分離を行うことにより、組換えタンパク質の不溶体を含む沈殿画分と、宿主細胞残渣を含む上清画分とに分離する。
目的物質がアミノ酸等の代謝産物若しくは核酸である場合、宿主細胞を破砕した後に得られた無細胞抽出液を遠心分離することによって、代謝産物若しくは核酸を含む上清画分と、宿主細胞残渣を含む沈殿画分とに分離する。
宿主細胞残渣は、遠心分離によって組換えタンパク質と分離された上清画分又は沈殿画分として回収する。宿主細胞残渣が上清画分として、沈殿画分の組換えタンパク質と分離された場合、当該上清画分を熱処理、酸凝集、又はエタノール類凝集によって、宿主細胞残渣を沈殿させて、沈殿画分として回収してもよい。回収した宿主細胞残渣は、成形する前にさらに精製してもよい。精製としては、アルカリ又は酸で洗浄等によって行うことが可能です。
(調製工程)
調製工程において、回収工程で回収された宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを有機溶媒に溶解し、溶液を調製する。
回収又は精製された宿主細胞残渣は、溶液にする前に、乾燥させてもよい。乾燥方法としては、凍結乾燥、凍結真空乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。凍結乾燥は、例えば、凍結乾燥機 FDU−1200型(EYELA 東京理化器械株式会社)を用いて行うことが可能である。宿主細胞残渣におけるタンパク質の総質量は、上述の方法で測定することができる。
有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ギ酸、又はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等が挙げられる。有機溶媒に所望の量の構造タンパク質及び宿主細胞残渣を添加して、溶解させることで溶液を得ることができる。構造タンパク質及び宿主細胞残渣の総質量に対して、構造タンパク質が50質量%〜95質量%であることが好ましく、60質量%〜95質量%であることが好ましく、65質量%〜95質量%であることが好ましく、70質量%〜95質量%であることが好ましく、75質量%〜95質量%であることがより好ましく、80質量%〜95質量%であることが好ましく、85質量%〜95質量%であることが好ましく、90質量%〜95質量%であることが特に好ましい。溶液における総タンパク質の濃度は、成形体に応じて異なるが、例えば、繊維及び糸に成形する場合、5質量%〜40質量%であることが好ましく、8質量%〜38質量%であることが好ましく、10質量%〜36質量%であることが好ましく、12質量%〜32質量%であることが好ましく、14質量%〜30質量%であることが好ましく16質量%〜28質量%であることが好ましく、18質量%〜28質量%であることがより好ましく、24質量%〜28質量%であることが特に好ましい。
溶液には必要に応じて、溶解促進剤としての無機塩と共に添加してもよい。構造タンパク質成形体がタンパク質繊維である場合、得られる溶液はそのまま紡糸のためのドープ液として使用できる。
調製工程で得られた溶液は、そのままで成形してもよく、また乾燥粉末、顆粒、ペレット、フィルム等にしてから成形してもよい。乾燥方法としては、凍結乾燥、凍結真空乾燥、熱風乾燥などが挙げられる。凍結乾燥は、例えば、凍結乾燥機 FDU−1200型(EYELA 東京理化器械株式会社)を用いて行うことが可能である。
(成形工程)
樹脂に成形する場合は、例えば国際公開WO/2017/047504号等の方法によって成形することができる。
繊維及び糸に成形する場合は、調製工程で得られた溶液をそのままドープ液として紡糸してもよく、タンパク質の濃度を調整してから防止してもよい。構造タンパク質繊維は、公知の紡糸方法によって製造することができる。すなわち、例えば、まず上述しようにドープ液を作製する。次いで、このドープ液を用いて、湿式紡糸、乾式紡糸、乾湿式紡糸又は溶融紡糸等の公知の紡糸方法により紡糸して、宿主残渣繊維を得ることができる。好ましい紡糸方法としては、湿式紡糸又は乾湿式紡糸を挙げることができる。
図1は、宿主残渣繊維を製造するための紡糸装置の一例を概略的に示す説明図である。図1に示す紡糸装置10は、乾湿式紡糸用の紡糸装置の一例であり、押出し装置1と、未延伸糸製造装置2と、湿熱延伸装置3と、乾燥装置4とを有している。
紡糸装置10を使用した紡糸方法を説明する。まず、貯槽7に貯蔵されたドープ液6が、ギアポンプ8により口金9から押し出される。ラボスケールにおいては、ドープ液をシリンダーに充填し、シリンジポンプを用いてノズルから押し出してもよい。次いで、押し出されたドープ液6は、エアギャップ19を経て、凝固液槽20の凝固液11内に供給され、溶媒が除去されて、改変フィブロインが凝固し、繊維状凝固体が形成される。次いで、繊維状凝固体が、延伸浴槽21内の温水12中に供給されて、延伸される。延伸倍率は供給ニップローラ13と引き取りニップローラ14との速度比によって決まる。その後、延伸された繊維状凝固体が、乾燥装置4に供給され、糸道22内で乾燥されて、宿主残渣繊維36が、巻糸体5として得られる。18a〜18gは糸ガイドである。
凝固液11としては、脱溶媒できる溶液であればよく、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール、並びにアセトン等を挙げることができる。凝固液11は、適宜水を含んでいてもよい。凝固液11の温度は、0〜30℃であることが好ましい。口金9として、直径0.1〜0.6mmのノズルを有するシリンジポンプを使用する場合、押出し速度は1ホール当たり、0.2〜6.0ml/時間が好ましく、1.4〜4.0ml/時間であることがより好ましい。凝固した改変フィブロインが凝固液11中を通過する距離(実質的には、糸ガイド18aから糸ガイド18bまでの距離)は、脱溶媒が効率的に行える長さがあればよく、例えば、200〜500mmである。未延伸糸の引き取り速度は、例えば、1〜20m/分であってよく、1〜3m/分であることが好ましい。凝固液11中での滞留時間は、例えば、0.01〜3分であってよく、0.05〜0.15分であることが好ましい。また、凝固液11中で延伸(前延伸)をしてもよい。凝固液槽20は多段設けてもよく、また延伸は必要に応じて、各段 、又は特定の段で行ってもよい。
なお、宿主残渣繊維を得る際に実施される延伸は、例えば、上記した凝固液槽 20内で行う前延伸、及び延伸浴槽21内で行う湿熱延伸の他、乾熱延伸も採用される。
湿熱延伸は、温水中、温水に有機溶剤等を加えた溶液中、スチーム加熱中で行うことができる。温度としては、例えば、50〜90℃であってよく、75〜85℃が好ましい。湿熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、1〜10倍延伸することができ、2〜8倍延伸することが好ましい。
乾熱延伸は、電気管状炉、乾熱板等を使用して行うことができる。温度としては、例えば、140℃〜270℃であってよく、160℃〜230℃が好ましい。乾熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、0.5〜8倍延伸することができ、1〜4倍延伸することが好ましい。
湿熱延伸及び乾熱延伸はそれぞれ単独で行ってもよく、またこれらを多段で、又は組み合わせて行ってもよい。すなわち、一段目延伸を湿熱延伸で行い、二段目延伸を乾熱延伸で行う、又は一段目延伸を湿熱延伸行い、二段目延伸を湿熱延伸行い、更に三段目延伸を乾熱延伸で行う等、湿熱延伸及び乾熱延伸を適宜組み合わせて行うことができる。
最終的な延伸倍率は、その下限値が、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、好ましくは、1倍超、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上のうちのいずれかであり、上限値が、好ましくは40倍以下、30倍以下、20倍以下、15倍以下、14倍以下、13倍以下、12倍以下、11倍以下、10倍以下である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
(1)構造タンパク質発現株の作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列をGenBankのウェブデータベースより取得した後、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施し、さらにN末端に配列番号2で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加して、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する組換えフィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
次に、PRT799をコードする遺伝子を合成委託した。その結果、遺伝子の5’末端直上流にNdeIサイト、及び3’末端直下流にEcoRIサイトを付加した遺伝子を得た。当該遺伝子をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした後、NdeI及びEcoRIで制限酵素処理し、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組み換えた。
(2)構造タンパク質の発現
上記で得られたPRT799をコードする遺伝子を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。形質転換された大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養後、同培養液を、表1に示すシード培養用培地100mLに、OD600が0.005となるように添加した。培養液の温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコにて、さらに約15時間培養を行い、シード培養液を得た。
Figure 2021054751
得られたシード培養液を、表2に示す生産培地500mLを添加したジャーファーメンターに、OD600が0.05となるように添加した。培養液の温度を37℃に保ち、pH6.9で一定になるように制御し、培養液中の溶存酸素濃度を溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにして培養した。なお、消泡剤として、アデカノールLG−295S((株)ADEKA製)を使用した。
Figure 2021054751
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.7で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)水溶液を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするタンパク質サイズのバンドの出現により、目的とするタンパク質の発現を確認した。
(3)構造タンパク質の精製
IPTGを添加してから24時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Saovi社製の「Panda Plus 2000」)を用いて菌体を繰り返し3回破砕した。破砕した細胞を遠心分離機(クボタ社製の「Model7000」)で遠心分離(11,000g、10分、室温)し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tri s−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。
洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8Mグアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、構造タンパク質PRT799の凍結乾燥粉末を回収した。
(4)目的タンパク質を発現する宿主細胞
分子量の向上を目的として、PRT799の一部を繰り返し、さらにN末端に配列番号2で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加して、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する組換えフィブロイン(以下、「PRT643」ともいう。)を設計した。また、ヒト由来のインターフェロンγ(GenBankアクセッション番号:AAP20100.1)のアミノ酸配列をGenBankのウェブデータベースより取得し、N末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列)を付加して、配列番号3で示されるアミノ酸配列を有する組換えヒトインターフェロンγ(以下、「PRT662」ともいう。)を設計した。上記と同様な方法で、PRT643又はPRT662を発現する宿主細胞を作製し、PRT643又はPRT662をそれぞれ発現した。
(4)目的タンパク質を発現した宿主細胞残渣の抽出と再精製
(a)洗浄廃液から得られた宿主細胞残渣
PRT643について、上記の破砕した細胞沈殿物を洗浄する際、3%SDS緩衝液(pH3.0)を利用した。洗浄した細胞を遠心分離機で遠心分離(11,000g、10分、室温)により、廃棄遠心上清を得られた。このSDS緩衝液の洗浄廃棄遠心上清を80℃で2時間不活化処理し、さらにクリンソルブP−7(日本アルコール販売(株))一対一を加えて、一日放置し、タンパク質を含めた沈殿物を得られた。その後遠心分離機を用いて、室温で11,000g、10分遠心分離し、凝集タンパク質を含む沈殿物を回収した。次にイオン交換水を用いて沈殿物を洗浄し、遠心分離し沈殿物を回収する洗浄工程を3回繰り返した後、凍結乾燥機で水分を除き、実施例1の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末を得た。
(b)遠心上清から得られた宿主細胞残渣
PRT662について、上記の高圧ホモジナイザー(GEA Niro Saovi社製の「Panda Plus 2000」)で細胞を破砕し、目的タンパク質が沈殿するよう、遠心分離機(クボタ製の「Model7000」)を用いて、室温で11,000g、10分遠心分離し、宿主細胞残渣を含む遠心上清を回収した。得られた遠心上清を80℃で2時間不活化処理し、宿主細胞残渣が固形分として沈殿した。固形分を、室温で11,000g、10分で遠心分離によって回収し、イオン交換水に再懸濁し、5N水酸化ナトリウムを用いてpHが7前後となるように中和し、室温で2時間スターラーで撹拌した。その後遠心分離し、固形分をイオン交換水に再懸濁し、3Mクエン酸を用いて、pH3.5に調整し、固形分中のタンパク質を凝集させ、遠心分離機を用いて、室温で11,000g、10分遠心分離し、凝集タンパク質を含む沈殿物を回収した。次にイオン交換水を用いて沈殿物を洗浄し、遠心分離し沈殿物を回収する洗浄工程を3回繰り返した後、凍結乾燥機で水分を除き、実施例2の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末を得た。
(5)宿主細胞残渣のタンパク質関連成分の定性分析及び定量分析
得られた実施例1及び実施例2の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末におけるタンパク質の濃度をBCA法にて測定した。なお、BCA法によるタンパク質の測定には、タカラバイオ社製のPierce(登録商標)BCA Protein Assay Kitを用いた。測定した結果、宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末が、実施例1の宿主細胞残渣は約61.5±1.5質量%のタンパク質を含んでいた。一方で実施例2の宿主細胞残渣は約57.2±5.0質量%のタンパク質を含んでいた。
同時に、凍結乾燥粉末に対してSDS−PAGE電気泳動を行った。Oriole染色によりタンパク質の存在を確認し、解析ソフ卜Image Lab(Bio−RAD Laboratories Inc.)を用いて画像解析することにより、実施例1の宿主細胞残渣において、30〜40kDaの間及び20〜30kDaの間に、主要なタンパク質バンドが検出された(図2)。実施例2の宿主細胞残渣において、30〜40kDaの間に、主要なタンパク質バンドが検出された(図3)。文献(例えば、Meuskens, I.ら、A new strain collection for improved expression of outer membrane proteins. Frontiers in cellular and infection microbiology,7,464(2017))によれば、宿主細胞残渣の主成分である約39kDaのタンパク質は、分子量約39kDaのOmpF(Outer Membrane Protein F)及びOmpC(Outer Membrane Protein C)の膜タンパク質であると推測される。他の可能の膜タンパク質、例えばLamB(<49kDa)、OmpA(<35kDa)なども推測される。一方で、宿主細胞残渣の他の成分である、分子量約4kDa〜30kDaのタンパク質は、宿主細胞のリボソームタンパク質であると推測される。
宿主細胞残渣に含まれるタンパク質の組成と分布を確認するため、解析ソフ卜Image Labを用いて分子量分布の解析を行った。その結果を図4に示す。図4の(a)のグラフは実施例1、(b)のグラフは実施例2の宿主細胞残渣の分子量分布百分率と発光強度の結果を示す。その結果を計算した凍結乾燥粉末の組成を表3に示す。
図4及び表3から、実施例1の宿主細胞残渣の中、約39kDaのタンパク質(OmpF/OmpC)は、宿主細胞残渣における全タンパク質の約38質量%を占める一方で、分子量約4〜30kDaのタンパク質(リボソームタンパク質)は、宿主細胞残渣における全タンパク質の約56質量%であったことが確認された。目的タンパク質は宿主細胞残渣における全タンパク質の2質量%以下であったことが確認された。
一方、実施例2の宿主細胞残渣の中、約39kDaのタンパク質(OmpF/OmpC)は、宿主細胞残渣における全タンパク質の約75質量%を占める一方で、分子量約4〜30kDaのタンパク質(リボソームタンパク質)は、宿主細胞残渣における全タンパク質の約19質量%であったことが確認された。目的タンパク質は宿主細胞残渣における全タンパク質の1質量%以下であったことが確認された。
Figure 2021054751
(6)宿主細胞残渣の溶解試験
上記で得られた実施例1及び実施例2宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末を用いて、いくつかの濃度のドープ液を作成した。それぞれの濃度のドープ液における溶解程度をそれぞれ表4及び表5に示す。ドープ液に膜タンパク質の含有率が3%以下の場合、溶解しやすくなることが確認された。また、ドープ液にリボソームタンパク質のような分子量が小さいタンパク質の含有率が0.5%以上に含まれる場合、溶解しやすくなることが確認された。
<溶解程度>
○:透明、雑質ない
△:濁り、雑質あり
×:固まり、残留の粉状物
Figure 2021054751

Figure 2021054751
(7)混合組換えフィブロイン繊維の作製(宿主細胞残渣添加)
上記で得られた実施例2の宿主細胞残渣の凍結乾燥粉末を用いて、繊維の延伸倍率向上剤として、紡糸液(ドープ液)に添加し、作成した。凍結乾燥粉末の濃度が24質量%になるように、24質量%の乾燥タンパク質粉末を76質量%の99%純ギ酸溶液に添加した。ローテーターで14時間溶解した後、ゴミと泡を取り除いた。これを紡糸液(ドープ液)とした。表6に示すように、実施例2由来の宿主細胞残渣を添加しない紡糸液(比較例)と、添加した紡糸液(実施例3、実施例4)を調製した。表6は、添加した実施例2由来の宿主細胞残渣の量及びそれに含まれている膜タンパク質及びリボソームタンパク質の量を示す。
Figure 2021054751
公知の図1に示す紡糸装置を使用し、窒素エアポンプでドープ液(ドープ液中の粉末の濃度:24質量%)を、凝固液(メタノール)へ吐出させた。湿式紡糸の条件は下記に示すとおりとした。これにより、宿主細胞残渣を添加した混合組換えフィブロイン繊維を得られた。
<湿式紡糸条件>
ドープ液温度:25℃
凝固液(メタノール)1温度:5℃
凝固液(メタノール)2温度:25℃
水浴延伸槽温度:25℃
ホットローラー(HR)温度:60℃
(8)宿主細胞残渣添加した混合組換えフィブロイン繊維の評価
上記得られた宿主細胞残渣を添加した混合組換えフィブロイン繊維を用い、島津製作所社製引張試験装置により、引張試験を実施した。引張試験は、25℃、相対湿度60%の条件で実施した。引張試験により、直径(μm)、最大点応力(MPa)、破裂点変位(ひずみ)(%)、及びタフネス(MJ/m)を測定した。
測定した直径(μm)と延伸倍率の比較は表7にまとめた。比較例に対して、宿主細胞残渣を添加した組換えフィブロイン繊維の直径は細くなることを確認された。単位時間当たりの生産速度(a.u.任意単位)向上と繊維の直径を細くなることも確認された(図5)。
Figure 2021054751
相対最大点応力(a.u.任意単位)の比較試験結果は表8に示す。比較例に対し、同じ程度(比較例延伸倍率5、相対最大点応力〜1)の状況で、実施例3及び4の延伸倍率は比較例より優れることを示し、単位時間当たりの繊維生産性も優れること、あるいは単位時間当たりの繊維の長さを示し、さらに同じ相対最大点応力の状況で、繊維の直径も約2倍細くなることも確認された(比較例:5倍、43.5μm;実施例3:11倍、30.9μm;実施例4:13倍、24.2μm)。その単位時間当たりの繊維生産速度(a.u.任意単位)と相対最大点応力の比較は図6に示す。
Figure 2021054751
相対破裂点変位(ひずみ)(a.u.任意単位)の比較試験結果は表9に示す。比較例に対し、同じ程度の延伸倍率の状況で(延伸倍率5)、実施例3、4の相対破裂点変位(ひずみ)は比較例より優れることを示し、同じ相対破裂点変位(ひずみ)の程度(〜0.5)、単位時間当たりの繊維生産性も優れることも確認され、あるいは単位時間当たりの繊維の長さを示した。その単位時間当たりの繊維生産速度(a.u.任意単位)と相対破裂点変位(ひずみ)の比較は図7に示す。
Figure 2021054751
相対タフネス(a.u.任意単位)の比較試験結果は表10に示す。比較例に対し、同じ程度の延伸倍率の状況で(延伸倍率5)、実施例3、4の相対タフネスは比較例より優れることを示した。単位時間当たりの繊維生産速度(a.u.任意単位)と相対タフネスの比較は図8にまとめた。
Figure 2021054751
以上より、宿主細胞残渣に含まれる膜タンパク質とリボソームタンパク質は、構造タンパク質繊維の可塑剤又は生産機能向上剤として用いられることができる。
1…押出し装置、2…未延伸糸製造装置、3…湿熱延伸装置、4…乾燥装置、6…紡糸原液、10…紡糸装置、20…凝固浴槽、21…洗浄浴槽、36…タンパク質繊維。

Claims (20)

  1. 構造タンパク質を主成分とするタンパク質成形体であって、該タンパク質成形体は、細胞残渣を含み、
    前記細胞は、目的物質を産生する宿主細胞であり、
    前記細胞残渣は前記目的物質を前記宿主細胞から回収した後の細胞残渣であり、かつ、前記宿主細胞由来の、50kDa以下の分子量を有するタンパク質を含む宿主細胞残渣である、タンパク質成形体。
  2. 構造タンパク質の含有量が、タンパク質成形体の総質量に対して、50質量%〜95質量%である、請求項1に記載のタンパク質成形体。
  3. 前記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、4kDa〜50kDaの分子量を有する宿主細胞由来のタンパク質を、50質量%以上含む、請求項1又は2に記載のタンパク質成形体。
  4. 前記宿主細胞残渣は、前記宿主細胞の膜タンパク質を主成分として含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  5. 前記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、前記宿主細胞の膜タンパク質を20質量%以上含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  6. 前記目的物質が組換えタンパク質であり、前記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、50質量%〜90質量%の総タンパク質含み、かつ、前記組換えタンパク質を10質量%以下含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  7. 前記宿主細胞残渣は、さらに前記宿主細胞由来のリボソームタンパク質、脂質、糖類、塩類又は核酸を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  8. 前記宿主細胞は、大腸菌、酵母、バチルス属微生物、コリネバクテリウム属微生物、糸状真菌、及び動物細胞からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  9. 樹脂、フィルム、繊維又は糸である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のタンパク質成形体。
  10. 目的物質を産生する宿主細胞を粉砕し、目的物質と宿主細胞残渣とを分離し、宿主細胞残渣を回収する工程と、
    前記回収された宿主細胞残渣と、構造タンパク質とを有機溶媒に溶解し、溶液を調製する工程と、
    前記溶液をタンパク質成形体に成形する工程と
    を含み、前記宿主細胞残渣は前記宿主細胞由来の、50kDa以下の平均重量分子量を有するタンパク質を含む、タンパク質成形体の製造方法。
  11. 前記タンパク質成形体における構造タンパク質の含有量が、タンパク質成形体の総質量に対して、50質量%〜95質量%である、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記宿主細胞残渣は、前記宿主細胞の膜タンパク質を主成分として含む、請求項10又は11に記載の製造方法。
  13. 前記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、前記宿主細胞の膜タンパク質を20質量%含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. 前記目的物質が組換えタンパク質であり、前記宿主細胞残渣は、その乾燥物の総質量に対し、30質量%〜90質量%の総タンパク質含み、かつ、前記組換えタンパク質を10質量%以下含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
  15. 前記宿主細胞残渣は、さらに前記宿主細胞由来のリボソームタンパク質、脂質、糖類、塩類又は核酸を含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. 前記宿主細胞は、大腸菌、酵母、バチルス属微生物、コリネバクテリウム属微生物、糸状真菌、及び動物細胞からなる群より選択される、請求項10〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
  17. 前記タンパク質成形体が樹脂、フィルム、繊維又は糸である、請求項10〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
  18. 前記宿主細胞残渣を沈殿画分として回収する、請求項10〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
  19. 回収工程は、熱処理、酸凝集又はエタノール類凝集によって、前記宿主細胞残渣を沈殿させることを含む、請求項10〜18のいずれか一項に記載の製造方法。
  20. 膜タンパク質を含む、構造タンパク質繊維のための可塑剤。
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