JP2021054673A - 再生無機繊維の製造方法及び無機繊維製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
無機繊維製品は、一般的に、無機繊維にバインダーを付着させ、集積して目的の無機繊維製品の形状の集積体とした後、加熱、成形し、バインダーを硬化することにより製造されている。バインダーとしては、一般にフェノール樹脂等の有機物のバインダーが使用されている。
これらの端材、不良品、回収物等の無機繊維材料(以下「回収無機繊維材料」という場合がある。)は、産業廃棄物として処理される物もあるが、環境保護等の観点から、再利用することが好ましい。
しかし、粉砕しただけの回収無機繊維材料を、多量に使用した無機繊維製品等は製品特性が低下しやすい。
しかし、回収無機繊維材料には、バインダーとして有機物が付着しているため、溶融過程で発泡、色調変化或は溶解エネルギーの変動等の好ましくない影響を及ぼす。このような問題を回避するためには、回収無機繊維材料から予めバインダーを除去することが必要である。
しかし、火炎中に投入するためには、安全対策を厳重に行った燃焼炉を用意する必要があり、無機繊維材料を簡便に処理することができなかった。
また、処理時間を短くしようとして、700℃程度に温度を上げて加熱すると収縮し、収縮した無機繊維材料内部にバインダーが包含されたまま残ってしまう恐れがあることがわかった。
[1]無機繊維が有機物のバインダーで結合された無機繊維材料を過熱水蒸気に晒し、前記バインダーを除去する再生無機繊維の製造方法。
[2]前記無機繊維材料が、グラスウール又はロックウールである、[1]に記載の再生無機繊維の製造方法。
[3]300℃以上、かつ前記無機繊維の溶融温度未満の温度で、前記無機繊維材料を過熱水蒸気に晒す、[1]又は[2]に記載の再生無機繊維の製造方法。
[4]有酸素条件下で、前記無機繊維材料を過熱水蒸気に晒す、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の再生無機繊維の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の再生無機繊維の製造方法で再生無機繊維を製造し、得られた再生無機繊維を原料の一部として使用することを特徴とする無機繊維製品の製造方法。
また、無機繊維製品の製造方法によれば、製品の品質を損なうことなく、再生無機繊維を利用して無機繊維製品を製造することができる。
本発明の再生無機繊維の製造方法において、原料となる無機繊維材料は、無機繊維が有機物のバインダーで結合された無機繊維材料である。なお、本発明における無機繊維に炭素繊維は含まれない。
無機繊維材料としては、グラスウール、ロックウール、セラミック繊維等の無機繊維製品の製造工程において発生する端材や不良品、及び建物、工場、車両等に使用され、これらの解体時に回収される回収無機繊維材料が挙げられる。
いずれも溶融した原料を遠心力で吹き飛ばして空気中で固化させることにより製造される。また、綿状の無機繊維とした後、バインダーが添加されて、マット状などの適宜の形状に成形されて、断熱材、吸音材、その他各種成型品等の製品とされている。
グラスウール、ロックウール等の無機繊維材料において、バインダーは、無機繊維に対して0.5〜20質量%程度付着している。樹脂中に無機繊維が分散している繊維強化プラスチックとは異なる。
配管2には、過熱水蒸気入口2aから過熱水蒸気が導入され、ノズル3から過熱水蒸気が吐出され無機繊維材料4に吹き付けられるようになっている。また、余剰の過熱水蒸気は、過熱水蒸気出口2bから排出されるようになっている。
また、装置本体1には、空気入口1a、空気出口1bが設けられている。
また、無機繊維材料4は、全体が過熱水蒸気に晒されるよう、ブロック状ではなく、薄いマット状として装置本体1に収容して処理することが好ましい。マット状の場合、密度は10〜16kg/m3であることが好ましく、厚さは50〜100mmであることが好ましい。密度が低いほど、また厚さが薄い程、バインダーを除去しやすい。
また、ある程度細かくほぐしたブロー状とすることがより好ましい。
無機繊維材料を過熱水蒸気に晒すと、短時間でバインダーを除去できる。また、内部にバインダーが包含されたまま残ってしまう様な収縮も生じにくい。
過熱水蒸気の温度が好ましい下限値以上であれば、短時間でバインダーを除去できる。
過熱水蒸気の温度が好ましい上限値以下であれば、繊維状を保ったまま無機繊維を残すことができる。また、過剰なエネルギーを使用することなく、再生無機繊維を製造することができる。
酸素は、無機繊維材料を過熱水蒸気に晒している間、連続的又は間欠的に補充されることが好ましい。
酸素が不足するとバインダーが炭化することにより、高い除去効率を得にくい。
無機繊維材料を構成する無機繊維は、酸素濃度が高くても劣化しにくい。
特に、バインダーとしてフェノール樹脂を用いた無機繊維材料を、酸素が連続的に供給される条件下で600℃にて過熱水蒸気に晒した場合は、1分間程度で、ほぼ全量のバインダーを除去できる。
本発明の無機繊維製品の製造方法は、本発明の再生無機繊維の製造方法で再生無機繊維を製造し、得られた再生無機繊維を原料の一部として使用する他は、公知の無機繊維製品の製造方法と同じである。
すなわち、本発明の再生無機繊維の製造方法で得られた再生無機繊維を含む原料を溶融し、遠心力で繊維化する。そして、バインダーとなる樹脂溶液を吹きつけ、乾燥炉で乾燥した後、用途に応じた形状に成形する。
本発明の無機繊維製品の製造方法によれば、簡便に、バインダーを充分に除去した再生無機繊維を使用できるので、低コストで、品質の安定した無機繊維製品を製造することができる。
磁性るつぼに、バインダーとしてフェノール樹脂が種々の付着量で使用されたグラスウールマット製品(密度16kg/m3、厚み100mm)のx(g)を、電気炉を用いて、550℃で所定時間(1分間、5分間、10分間、又は20分間)焼成する1回目の焼成を行った。
所定時間焼成後に室温まで冷却してからの質量y(g)を求めた。
その後、再度電気炉を用いて、さらに550℃で30分間焼成する2回目の焼成を行い、室温まで冷却してからの質量z(g)を求めた。
また、図2に、1回目に20分間焼成し、2回目に30分間焼成した後のグラスウールマット製品の写真を示す。
また、図2に示すように、No.1−4では、2回目に30分間の焼成を行った後も、実質的な収縮は生じておらず、550℃の焼成では、無機繊維材料内部にバインダーが包含されたまま残ってしまう懸念は低いことが確認できた。
したがって、2回目の焼成(550℃で30分間)を行えば、1回目の焼成時に残っていた樹脂も総て除去できることがわかった。
また、Bに対するAの比率(質量%)は、1回目の焼成による樹脂の除去率にあたる。このことから、550℃の焼成で90質量%以上の樹脂を除去するためには、10分間以上の処理時間が必要であることがわかった。
磁性るつぼに、バインダーとしてフェノール樹脂が種々の付着量で使用されたグラスウールマット製品(密度16kg/m3、厚み100mm)のx(g)を、電気炉を用いて、700℃で所定時間(1分間、5分間、10分間、又は20分間)焼成する1回目の焼成を行った。
所定時間焼成後に室温まで冷却してからの質量y(g)を求めた。
その後、再度電気炉を用いて、さらに550℃で30分間焼成する2回目の焼成を行い、室温まで冷却してからの質量z(g)を求めた。
また、図3に、1回目の焼成を行った後のグラスウールマット製品の写真を示す。
また、図3に示すように、No.2−2〜No.2−4では収縮が生じ、700℃の焼成では、時間をかけても無機繊維材料内部にバインダーが包含されたまま残ってしまう懸念は高いことがわかった。
実施例で使用したサンプルについては以下の略称で示す。
PF1:バインダーとしてフェノール樹脂(Mw300程度のレゾール樹脂)を使用したマット状のグラスウール。密度16kg/m3、厚み100mm。
PF2:バインダーにフェノール樹脂を使用したブロー状(マット製品を細かく裁断した状態)のグラスウール。
G:バインダーとして糖由来の原料を主成分としたバインダーを使用したマット状のグラスウール。密度24kg/m3、厚み100mm。
アクリル:バインダーとしてアクリル樹脂を使用したマット状のグラスウール。密度24kg/m3、厚み100mm。
PVA:バインダーとしてポリビニルアルコールを使用したマット状のグラスウール。密度16kg/m3、厚み100mm。
実験例1に基づき、電気炉を用いて550℃で30分間焼成した際の質量減少量を用いて、樹脂量と除去率を求めた。
すなわち、過熱水蒸気による処理前のサンプル中の樹脂量(質量%)は、未処理のサンプルを、550℃で30分間焼成した際の質量減少量を、未処理のサンプルの質量で除し、100倍することにより求めた。
また、過熱水蒸気による処理後のサンプル中の樹脂量(質量%)は、過熱水蒸気による処理後のサンプルを、さらに550℃で30分間焼成した際の質量減少量を、過熱水蒸気による処理前のサンプルの質量で除し、100倍することにより求めた。
また、過熱水蒸気処理による樹脂除去率(質量%)は、過熱水蒸気による処理前後におけるサンプル中の樹脂量(質量%)の差を、過熱水蒸気による処理前のサンプル中の樹脂量(質量%)で除し、100倍することにより求めた。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例では、過熱水蒸気による処理を、(株)トクデン製の過熱蒸気UPSS−W20(以下単に「処理装置」という。)を用いて行った。
また、扉の開閉により、処理装置内への酸素供給の影響を調べた。また、扉の開閉とノズルの加温の有無により、処理装置内の温度を変化させ、サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度の影響を調べた。
サンプルとしてPF1の約15gを、処理装置に入れ、700℃の蒸気を、700℃に加温したノズルから噴き出して30秒間処理した。処理中、処理装置の扉を半開(薄く開けた状態)とし、内部に空気が供給される様にした。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約600℃であった。
処理時間を1分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約600℃であった。
処理時間を2分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約600℃であった。
扉を閉じて、処理中新たな空気が供給されない様にすると共に、処理時間を5分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約600℃であった。
扉を全開とし、処理時間を1分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約500℃であった。
扉を全開とし、処理時間を2分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約500℃であった。
扉を全開とし、処理時間を2分間とし、処理開始1分後に裏返すことにより、過熱水蒸気に晒される面を代えた。その他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約500℃であった。
扉を全開とし、処理時間を5分間とした他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約500℃であった。
ノズルの加温を行なわず、扉を全開とし、処理時間を2分間とし、処理開始1分後に裏返すことにより、過熱水蒸気に晒される面を代えた。その他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
ノズルの加温を行なわず、扉を全開とし、処理時間を10分間とし、処理開始5分後に裏返すことにより、過熱水蒸気に晒される面を代えた。その他は、実施例1と同様にしてPF1の約15gの処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
サンプルとしてPF2の約15gを用いた他は、実施例10と同様にして処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
サンプルとしてGの約15gを用いた他は、実施例3と同様にして処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約600℃であった。
サンプルとしてGの約15gを用いた他は、実施例10と同様にして処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
サンプルとしてアクリルの約15gを用いた他は、実施例10と同様にして処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
サンプルとしてPVAの約15gを用いた他は、実施例10と同様にして処理を行った。サンプルが過熱水蒸気に晒される雰囲気温度を熱電対で測定したところ、約400℃であった。
なお、表3における「ノズル加温」の欄の○は700℃にノズルを加温したことを示し、×はノズルの加温を行わなかったことを示す。
また、表3における「裏返し」の欄の○は処理の途中でサンプルを裏返したことを示し、×はサンプルの裏返しを行わなかったことを示す。
また、実施例2のサンプルの過熱水蒸気による処理前の写真を図4に、過熱水蒸気による処理後の写真を図5に、各々示す。
また、図4、図5に示す様に、処理前後で殆ど収縮は生じておらず、無機繊維材料内部にバインダーが包含されたまま残ってしまう懸念は低いことがわかった。
一方、実施例9〜10に示す様に、雰囲気温度を約400℃に下げた場合は、雰囲気温度が約600℃である実施例1〜3と比較して、多少除去率が低下した。
これらの結果から、サンプル全体を満遍なく過熱水蒸気に晒すことの重要性が確認できた。
また、実施例14、15に示す様に、バインダーがアクリル樹脂やポリビニルアルコールである場合も、過熱水蒸気による処理が有効であることがわかった。
Claims (5)
- 無機繊維が有機物のバインダーで結合された無機繊維材料を過熱水蒸気に晒し、前記バインダーを除去する再生無機繊維の製造方法。
- 前記無機繊維材料が、グラスウール又はロックウールである、請求項1に記載の再生無機繊維の製造方法。
- 300℃以上、かつ前記無機繊維の溶融温度未満の温度で、前記無機繊維材料を過熱水蒸気に晒す、請求項1又は2に記載の再生無機繊維の製造方法。
- 有酸素条件下で、前記無機繊維材料を過熱水蒸気に晒す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の再生無機繊維の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の再生無機繊維の製造方法で再生無機繊維を製造し、得られた再生無機繊維を原料の一部として使用することを特徴とする無機繊維製品の製造方法。
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