JP2021053887A - 粉末床溶融結合方式による3dプリンター用樹脂粉粒体およびその製造方法、および樹脂粉粒体を用いた三次元造形物の製造方法 - Google Patents

粉末床溶融結合方式による3dプリンター用樹脂粉粒体およびその製造方法、および樹脂粉粒体を用いた三次元造形物の製造方法 Download PDF

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啓之 近藤
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寿 御山
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Abstract

【課題】空隙の少ない粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を短時間で効率よく製造することができ、得られる粉粒体は、微粉、粗粉が少なく粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物の製造方法を提供すること。【解決手段】40〜80vol%の発泡率を有し、かつ20〜300μmの平均セル径を有する発泡体が存在する発泡樹脂を、−40℃以下で凍結粉砕することを特徴とする、粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、自動車や航空宇宙、産業・医療用機械、電気・電子用途等などの幅広い用途に適した粉末床溶融結合方式を用いた3Dプリンターの三次元造形物を作製するための材料粉末として好適な樹脂粉粒体、その製造方法、および樹脂粉粒体を用いた三次元造形物の製造方法に関するものである。
近年、三次元造形物(以下、3Dプリンターと記す場合がある)は、射出成形では難しかった立体物形状を自由に造形でき、溶接部品や分割構成部品および複雑部品からなる部品を一体で作製できることから有用であるため、製造イノベーションを起こせる可能性がある技術として注目を浴びている。
これらを造形する方式としては、溶融物堆積法(Fused Deposition Molding)、UV硬化インクジェット法、光造形法(Stereo Lithography)、粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion。以下、PBF方式と記す場合がある)、インクジェットバインダ法などが知られている。中でも、PBF方式は、造形物の高い寸法精度と機械強度を実現できるため、急速な拡大が見込まれでいる。
従来、PBF方式の造形素材としては、主にナイロン12樹脂粉末が使用されてきたが、耐熱性や強度などに課題があり、用途展開には限界があった。また、PBF方式の工程は、粉末床上にレーザー光を走査させ、粉末を溶融凝固させるため、レーザー光が均一に照射できるように粉末を薄く一様に敷き述べた粉末床上にする必要があり、粉末形状は充填に適した中程度の真球度を有する微粉末であることが求められる。
上記のような粉末を得る技術としては、これまで数々の技術的な改良が試みられてきた。例えば、特許文献1では、ポリオール樹脂とポリエステル樹脂、特許文献2にはポリスチレン樹脂を用い、これらを溶融混練した後に超臨界二酸化炭素を注入させ発泡樹脂を作製し、粉砕することにより、均一な粒度分布を有する1〜10μmの微粉末を得る方法が開示されている。特許文献3にはポリエステル樹脂または非晶性ビニル樹脂からなる樹脂を有機溶媒中で溶解、乳化することにより、高い真球度の3〜8μmの微粉末を製造する方法が提案されている。
特開2005−004182号公報 特開2005−284211号公報 特開2015−004972号公報
特許文献1および2の方法で得られた樹脂粉末では、比較的均一な粒度分布であるため嵩密度が小さく、粉末床溶融結合方式を用いた3Dプリンターを造形する際に粉体の充填率は低くなる。その結果、造形物の内部に空隙が生じ、機械特性の低下を招く課題がある。
また、特許文献3の方法で得られた樹脂粉末では、高い真球度の粉末となり、嵩密度が小さく、粉末床溶融結合方式を用いた3Dプリンターを造形する際に粉体の充填率は低くなる。さらに、乳化による粒子化は経済性に劣り、粉末床溶融結合方式を用いた3Dプリンターの造形には不適である。
本発明によれば、空隙の少ない粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を短時間で効率よく製造することができ、得られる粉粒体は、微粉、粗粉が少なく粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を製造する方法が得られる。
本発明は、かかる課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記発明に至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)40〜80vol%の発泡率を有し、かつ20〜300μmの平均セル径を有する発泡体が存在する発泡樹脂を、−40℃以下で凍結粉砕することを特徴とする、粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(2)発泡樹脂の素材が熱可塑性樹脂であることを特徴とする、(1)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(3)熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、(2)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(4)熱可塑性樹脂の融点と結晶化温度の差が、60℃以上であることを特徴とする、(2)または(3)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(5)熱可塑性樹脂が、35eq/t以上50eq/t以下のカルボキシル基量を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する、(2)〜(4)のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(6)熱可塑性樹脂は結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂を含み、結晶性熱可塑性樹脂100重量部として非晶性熱可塑性樹脂を10〜150重量部含む、(2)〜(5)のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(7)熱可塑性樹脂100重量部として、発泡剤を0.5〜5重量部用い、溶融混練し、次いで凍結粉砕することを特徴とする、(2)〜(6)のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(8)熱可塑性樹脂を用いて超臨界二酸化炭素を含浸しながら溶融混練し、冷却時に気化させることで発泡樹脂を得て、次いで凍結粉砕することを特徴とする、(2)〜(6)のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(9)熱可塑性樹脂に無機フィラーを混合した後に溶融混練する、(7)または(8)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
(10)樹脂粉粒体の平均粒径が15μmを超え100μm以下であり、平均粒径の小粒径側からの累積度数が10%となる粒径(d10)、50%となる粒径(d50)と90%となる粒径(d90)について、0<(d50/d10)−(d90/d50)<0.5を満たし、かつ真球度が0.80未満であることを特徴とする、粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
(11)樹脂粉粒体の素材が熱可塑性樹脂である、(10)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
(12)熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする、(11)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
(13)熱可塑性樹脂の融点と結晶化温度の差が60℃以上であることを特徴とする、(11)または(12)に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
(14)熱可塑性樹脂が、35eq/t以上50eq/t以下のカルボキシル基量を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する、(11)〜(13)のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
(15)請求項(10)〜(14)のいずれか記載の樹脂粉粒体を粉末床溶融結合法3Dプリンターに供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
本発明によれば、空隙の少ない粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を短時間で効率よく製造することができ、得られる粉粒体は、微粉、粗粉が少なく粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を製造するのに適している。
以下、粉末床溶融結合方式による3Dプリンター用樹脂粉粒体およびその製造方法、および樹脂粉粒体を用いた三次元造形物の製造方法について詳細に説明する。
[発泡樹脂]
本発明の発泡樹脂は、40〜80vol%の発泡率を有する樹脂である。発泡樹脂の発泡率は、発泡樹脂の外形寸法と重量を測定し、外形寸法から計算される発泡樹脂体積と、重量と樹脂の比重から計算される樹脂占有体積を用いて100−樹脂占有の体積/発泡体の体積[%]として算出した。発泡樹脂の発泡率の好ましい下限は、45%である。発泡樹脂の発泡率の上限は、好ましくは75%であり、さらに好ましくは70%である。発泡樹脂の発泡率が40%より低いと発泡樹脂の粉砕に著しく時間を要し、粉砕した際の微粉量が多くなるため不適である。また、発泡率が80%よりも高い場合も、粉砕した際の微粉量が多くなるため不適である。
また、本発明の発泡樹脂は、20〜300μmの平均セル径を有する発泡体が存在している樹脂である。なお、発泡体とは、発泡樹脂の内部に発生する気泡を意味する。また、ここで、発泡体の平均セル径は、発泡樹脂の断面を走査型電子顕微鏡で観察することでセルの最長径を測定し、100個のセルの最長径の平均セル径として算出した。発泡体の平均セル径の下限は、好ましくは25μmであり、より好ましくは30μmである。発泡体の平均セル径の上限は、好ましくは250μmであり、より好ましくは200μmである。平均セル径が20μmより小さいと、発泡樹脂を粉砕した際の微粉量が多くなるため不適である。また、平均セル径が300μmを超えると、発泡樹脂の粉砕に著しく時間を要するため不適である。
[熱可塑性樹脂]
本発明の発泡樹脂における主な素材としては、溶融時の流動性の観点から熱可塑性樹脂が好適である。かかる熱可塑性樹脂とは、ポリアリーレンスルフィド樹脂、特にポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、特に各種ナイロン、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ポリエステル樹脂、例えばポリブチレンテレフタート樹脂(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー樹脂、アクリロニトリル・スチレンコポリマー樹脂、エチレン・酢酸ビニルコポリマー樹脂(EVA)、エチレン・アクリル酸コポリマー、エチレン・プロピレンコポリマー、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー)が挙げられる。また、本発明における熱可塑性樹脂は2種以上の樹脂の混合物やアロイであってもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。中でも、機械的強度や耐熱性等の観点から、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
中でも、末端カルボキシル基を有するポリブチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。末端カルボキシル基量は35eq/t以上50eq/t以下であることが好ましい。末端カルボキシル基量の好ましい上限は50eq/tであり、より好ましくは48eq/tであり、さらに好ましくは45eq/tである。また、末端カルボキシル基量の好ましい下限は35eq/tであり、より好ましくは37eq/tである。末端カルボキシル基量が50eq/tより多いと3Dプリンターで造形して得た三次元造形物の耐加水分解性が著しく悪化する恐れがある。また、末端カルボキシル基量が35eq/t未満では、熱可塑性樹脂の固相重合の反応速度が速くなる恐れがある。3Dプリンター造形時には、材料である樹脂粉粒体は高温で長時間加熱されるため、熱可塑性樹脂の固相重合の反応速度が速いと造形中に著しく増粘し、造形不良を引き起こす恐れがある。
かかる熱可塑性樹脂の溶融粘度は、150Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましい。溶融粘度が150Pa・s未満であると作製した三次元造形物の強度が低くなり、溶融粘度が500Pa・sより高いとレーザー光を照射して樹脂粉末を溶融させた際、溶融樹脂が下の層に浸透しないため、層間の密着が弱くなり高さ方向の強度が著しく低下する恐れがある。ここで溶融粘度は、東洋精機製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用いた。熱可塑性樹脂の融点よりも20℃高い温度に設定したシリンダーにサンプル約20gを投入し、5分保持した後、剪断速度1216sec−1で溶融粘度は測定を行った値である。溶融粘度の好ましい下限は150Pa・sであり、より好ましくは160Pa・sであり、さらに好ましくは170Pa・sであり、特に好ましくは180Pa・sである。溶融粘度の好ましい上限は500Pa・sであり、より好ましくは450Pa・sであり、さらに好ましくは400Pa・sであり、特に好ましくは350Pa・sである。
さらに、熱可塑性樹脂の融点と再結晶化温度の差は、60℃以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点と再結晶化温度の差が60℃未満であるとレーザー光照射により溶融した樹脂が結晶化することで収縮・反りが発生する恐れがある。粉末焼結法においては、溶融樹脂に反りが発生すると、溶融樹脂の上部に粉末層を積層する際に反った溶融樹脂が引き摺られ、所望の形状の三次元造形物を得ることができない場合がある。ここで再結晶化温度は、熱可塑性樹脂を窒素雰囲気中、示差走査熱量計を用いて、50℃から融点よりも40℃高い温度まで20℃/minで昇温後、5分間保持し、50℃まで20℃/minで降温した際の結晶化時の発熱ピークの頂点温度を指す。ここで、熱可塑性樹脂として、2種以上の樹脂の混合物を用いる場合は、混合した状態での融点、再結晶化温度を意味する。複数のピークを有する場合は最も高温側のピークの頂点を融点および結晶化温度とした。
本発明における熱可塑性樹脂としては、結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑樹脂を配合することが好ましい。これにより、非晶性樹脂を溶融混練することで、熱可塑性樹脂の結晶化速度を遅くすることができ、3Dプリンター造形時に反りが発生しにくくなる傾向にある。また、非晶性熱可塑性樹脂の混合比率の好ましい上限は結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して150重量部であることが好ましい。非晶性熱可塑性樹脂の混合比率の好ましい下限は結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して10重量部である。非晶性樹脂の混合比率が結晶性樹脂100重量部に対して60重量部を超えると、溶融混練後にダイから押し出す工程において、固化速度が著しく遅くなり、ペレット形状にカットすることが困難になる場合がある。また、非晶性樹脂の混合比率が結晶性樹脂100重量部に対して10重量部未満では、結晶化速度を遅くする効果が小さい傾向にある。
[樹脂粉粒体]
本発明の樹脂粉粒体の平均粒径は、15μmを超え100μm以下である。かかる樹脂粉粒体の平均粒径の下限は20μmであることが好ましく、より好ましくは25μmである。また、好ましい平均粒径の上限は95μmであり、より好ましくは、90μmであり、さらに好ましくは85μmである。樹脂粉粒体の平均粒径が100μmを超えると、粉末床溶融結合法3Dプリンターでの粉末積層時に均一な粉面を形成することができない。また、樹脂粉粒体の平均粒径が15μm未満である場合にも、粉粒体の凝集が発生し、同様に均一な粉面を形成することができない。
本発明における樹脂粉粒体の平均粒径とは、フラウンホーファの散乱・回折理論に基づくレーザー回折式粒径分布計にて測定される粒径分布の小粒径側からの累積度数が50%となる粒径(d50)である。
本発明で得られる樹脂粉粒体は、微粉量と粗粉量が適切な比率で存在するため、3Dプリンターでの積層時に充填率が高くなり、三次元造形物中の空隙を低減することができる。微粉量と粗粉量の比率は、樹脂粉粒体の平均粒径と同様の方法で粒度分布を測定し、小粒径側からの累積度数が10%となる粒径(d10)および90%となる粒径(d90)から、(d50/d10)−(d90/d50)の式で計算される。
微粉量と粗粉量の比率の上限は0.50であり、好ましくは0.48であり、より好ましくは0.45である。また、微粉量と粗粉量の比率の下限は0であり、好ましくは0.10であり、より好ましくは0.15である。微粉量と粗粉量の比率が0.50を超えると、粉末床溶融結合法3Dプリンターでの粉末積層時にローラーへの微粉付着量が増加し、積層面にスジが発生する。また、微粉量と粗粉量の比率が0以下である場合には、3Dプリンターでの積層時に充填率が低くなり、三次元造形物中に空隙が増加する。
樹脂粉粒体の真球度は0.80未満である。樹脂粉粒体の真球度は、走査型電子顕微鏡にて粒子を観察し、粒子の占める面積(画素数)をS、周囲長をLとしたときに、無作為に選んだ30個の粒子について円形度=4πS/Lの平均値を真球度として算出した。真球度の好ましい上限は0.78であり、より好ましくは0.75である。真球度が0.80以上であると、3Dプリンターでの積層時に充填率が低くなり、三次元造形物の内部に空隙が増加し、機械特性が低下する。
[発泡樹脂の製造方法]
本発明における発泡体を有する発泡樹脂の製造方法としては、溶融混練時に超臨界二酸化炭素を含浸させて冷却時に気化させる物理的発泡方法や熱可塑性樹脂もに発泡剤を添加し、溶融混練時に発泡剤が不揮発性ガスを放出させる化学的発泡方法が挙げられる。中でも、溶融混練時に超臨界二酸化炭素を含浸させて冷却時に気化させる物理的発泡方法が好適である。超臨界二酸化炭素を含浸させる方法においては、第一押出成形機と第二押出成形機を具備するタンデム型押出成形機を使用して成形を行い、超臨界二酸化炭素の含浸圧力や、溶融混練時の樹脂温度、スクリュー回転数によって発泡体のセル径および発泡率を調整することができる。超臨界二酸化炭素の含浸圧力は4MPa以上20MPa以下が好ましい。溶融混練時の樹脂温度は樹脂の融点よりも20〜60℃高い温度の範囲が好ましい。第一成型機のスクリュー回転数は5〜500rpm、第二成型機のスクリュー回転数は1〜20rpmの範囲が好ましい。発泡剤を添加する方法においては、発泡剤の添加量や、溶融混練時の樹脂温度、スクリュー回転数によって発泡体のセル径および発泡率を調整することができる。発泡剤の添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
[熱可塑性樹脂粉粒体の製造方法]
本発明においては、発泡樹脂を−40℃以下で粉砕することが必要となる。かかる製法で製造することにより、結晶構造に占める非晶部分の割合が多く、低弾性率な熱可塑性樹脂などを粉砕する場合であっても、低温脆性を利用した脆性破壊による粉砕を行うことが可能となる。これにより、空隙の少ない粉末床溶融結合方式を用いた三次元形状造形物を得るために最適な樹脂粉粒体を得ることができる。粉砕処理の方法に特に制限は無く、ジェットミル、ビーズミル、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ターボミル、ピンミルが挙げられる。好ましくは、ターボミル、ジェットミルなどの乾式粉砕である。−40℃以下に冷却する方法としては、粉砕前に液体窒素やドライアイスで発泡樹脂を冷却する方法や、原料投入口から粉砕機までを液体窒素やドライアイスで冷却する方法などが挙げられる。
[発泡剤]
本発明で使用する発泡剤としては、特に制限はなく、例えば分解されて窒素ガスを発生する熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)など)、分解されて炭酸ガスを発生する熱分解型無機発泡剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなど)など公知の熱分解型発泡性化合物等が挙げられる。
[無機フィラー]
本発明では、発泡樹脂を製造する際の無機フィラーを添加することができる。溶融混練時に最長寸法が1μm以下でありアスペクト比が10以上の無機フィラーを添加することが好ましい。無機フィラーの最長寸法が1μm以下、粉砕工程において熱可塑性樹脂と無機フィラーが分離することが多い傾向にある。また、無機フィラーのアスペクト比が10未満であると、粉末床溶融結合法3Dプリンターを使用して造形した造形物の強度向上効果が小さくなる場合がある。
無機強化材が繊維状の場合は繊維長が最長寸法であり、最長寸法の平均値は、繊維長の平均値であり、アスペクト比とは繊維長/繊維径の値の平均値である。ここで、繊維長および繊維径とは、電子顕微鏡を用いて1000倍に拡大した画像から、無作為に任意の100個の繊維を選び、長さを計測した値の平均値である。
無機フィラーとしては、特に制限されるのもではないが、アルミナ(酸化アルミニウム)、アルミナコロイド(アルミナゾル)、アルミナホワイト、硫酸アルミニウムなどのアルミナ含有化合物;ガラスファイバー、ガラスフレークなどのガラス系フィラー;単結晶チタン酸カリウム、炭素繊維、カーボンナノチューブ、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられるが、さらに好ましくはチタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムが挙げられる。これらの無機強化材は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
以下、本発明の方法を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、各種測定法は以下の通りである。
[樹脂粉粒体の平均粒径]
樹脂粉粒体の平均粒径はMicrotracBEL製スプレー粒径分布測定装置Aerotrac3500A型を用い、レーザー光を分散した測定試料に照射し、回折散乱光を検出、フラウンホーファ回折理論に基づき解析し、体積基準の粒径分布を演算。解析して得られる微粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒径(メジアン径:d50)を樹脂粉粒体の平均粒径とした。
[微粉量と粗粉量の比率]
樹脂粉粒体の微粉量と粗粉量の比率は、平均粒径と同様の方法で粒度分布を測定し、小粒径側からの累積度数が10%となる粒径(d10)、50%となる粒径(d50)および90%となる粒径(d90)から、(d50/d10)−(d90/d50)の式で計算した。
[真球度]
樹脂粉粒体の真球度は、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)にて粒子を観察し、粒子の占める面積(画素数)をS、周囲長をLとしたときに、無作為に選んだ30個の粒子について円形度=4πS/Lの平均値を真球度として算出した。
[溶融粘度]
熱可塑性樹脂の溶融粘度は、東洋精機製キャピログラフ1Cを用い、孔長10.00mm、孔直径0.50mmのダイスを用いた。融点よりも20℃高い温度に設定したシリンダーにサンプル約20gを投入し、5分保持した後、剪断速度1216sec−1で測定を行った。
[融点、再結晶化温度]
熱可塑性樹脂の再結晶化温度は、パーキンエルマー製DSC7を用いて粉粒体約5mgを、窒素雰囲気中、下記測定条件を用いて測定した。
・50℃×1分間保持
・50℃から融点より40℃高い温度まで昇温、昇温速度20℃/min
・5分間保持
・融点より40℃高い温度から50℃まで降温、降温速度20℃/min
昇温時の溶融に伴う吸熱ピークの頂点を融点、降温時の結晶化に伴う発熱ピークの頂点を再結晶化温度とした。
[ポリブチルテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量]
末端カルボキシル基量は、ポリブチルテレフタレート樹脂2.0gをo−クレゾール/クロロホルム溶媒(重量比2:1)50mlに加熱溶解し、冷却後、クロロホルム30mlを加え、さらに、12%メタノール性塩化リチウム溶液を5ml添加し、得られた溶液をエタノール性水酸化カリウムで電位差滴定を行って測定した。
[無機フィラーの最長寸法]
無機フィラーの最長寸法の測定には、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)を用いて1000倍に拡大した画像から、無作為に任意の100個を選び、それぞれについて最大長さを測長し、その数平均値を最長寸法とした。
[無機フィラーのアスペクト比]
無機フィラーのアスペクト比の測定には、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)を用いて1000倍に拡大した画像から、無作為に任意の100個を選び、それぞれについて最大長さと最小長さを測長し、最長長さ/最短長さの数平均値をアスペクト比とした。
[発泡体の平均セル径]
発泡体の平均セル径は、発泡樹脂の断面を日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)で観察することでセルの最長径を測定し、100個のセルの最長径の平均セル径として算出した。
[発泡率]
発泡樹脂の発泡率は、発泡樹脂の外形寸法と重量を測定し、外形寸法から計算される発泡樹脂体積と、重量と樹脂の比重から計算される樹脂占有体積を用いて100−樹脂占有体積/発泡体体積[%]として算出した。
[三次元造形物の断面観察]
上記で作製した粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター(アスペクト製Rafael300)によって三次元造形物を作製した。三次元形状造形物の内部の空隙量が1%未満と、空隙が実質的に存在しないものを“無し”、三次元形状造形物の内部の空隙量が1%以上であるものを“有り”とした。
なお、三次元形状造形物の内部の空隙量は、平滑に研磨した三次元形状造形物断面を日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡(JSM−6700F)を用い200倍で観察し、三次元形状造形物の内部の空隙の面積率を算出することで得られる値である。
[ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の製造]
撹拌機付きの1リットルオートクレーブに、47重量%水硫化ナトリウム1.00モル、46重量%水酸化ナトリウム1.05モル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1.65モル、酢酸ナトリウム0.45モル、及びイオン交換水5.55モルを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約2時間かけて徐々に加熱し、水11.70モルおよびNMP0.02モルを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。また、硫化水素の飛散量は0.01モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)1.02モル、NMP1.32モルを加え、反応容器を窒素ガス下に密封した。その後、400rpmで撹拌しながら、200℃から240℃まで90分、240℃から270℃まで30分かけて二段階で昇温した。270℃到達10分経過後に水0.75モルを15分かけて系内に注入した。270℃で120分経過後、200℃まで1.0℃/分の速度で冷却し、その後室温近傍まで急冷して内容物を取り出した。
内容物を取り出し、0.5リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を1リットルの温水で数回洗浄した後、PASに対して0.45重量%の酢酸カルシウム・1水和物800gを加えて洗浄し、さらに1リットルの温水で洗浄、濾別してケークを得た。
得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、PAS−1を得た。得られたPAS−1の平均粒径は1600μm、均一度は4.1、溶融粘度は210Pa・s、再結晶化温度は168℃であった。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造]
スラリー化槽、スラリー貯槽、エステル化反応槽1基、予備重合槽2基、最終重合機1基、ペレタイザーを直列に配した製造装置を用い、まず、テレフタル酸754重量部に対して1,4―ブタンジオール692重量部の割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行い、スラリーを調整した後、50℃の定温にしたスラリー貯槽に移し、スラリー貯槽からスラリーをポンプにより1446重量部/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽(第1のエステル化反応槽) に供給し、併せて10%濃度テトラ−n − ブチルチタネート(TBT)の1,4―ブタンジオール溶液を4 重量部/ 時でエステル化反応槽に連続的に供給した([OHin]=7.72モル部/ 時、[THFin]=0モル部/時、[COOH]=4 .54モル部/ 時)。上記の第1のエステル化反応槽に供給されたテレフタル酸に対する1,4―ブタンジオールの仕込みモル比( P ’)は1.7、TBTの添加量はTi原子換算でポリマー総重量に対して56ppmである。尚、THFとは、テトラヒドロフランのことを指す。
このエステル化反応槽の反応条件は温度230 ℃ 、圧力90kPaに維持し、滞留時間1.8hrとし、精留塔塔頂からはTHF及び水を留出させ、1,4―ブタンジオールについては精留塔塔底から還流させた。このとき精留塔塔頂から留出したTHFは68重量部/時であり、このエステル化反応槽における実質モル比(P) は1.49であった([THFout]=0.94モル部/ 時、[O Hout]=0モル部/時)。また、このエステル化反応槽においてジカルボン酸成分の反応率95%のオリゴマーを得た。
引き続いてこのオリゴマーをギヤポンプにて完全混合槽型の第1 予備重合槽に供給し、温度255℃ 、圧力5kPaで維持し、滞留時間1.5hrで反応させた。
次にこのオリゴマーをギヤポンプにて完全混合槽型の第2予備重合槽に供給し、さらに第2予備重合槽への配管途中から10%濃度TBTの1,4―ブタンジオール溶液を4 重量部/時で添加した(T BTの添加量はTi原子換算でポリマー総重量に対して56ppm)。第2予備重合槽は温度245 ℃ 、圧力3.3kPaで維持し、滞留時間1hrで反応させてオリゴマーを得た。
このオリゴマーは最終重合機(横型2軸反応機) に供給され、温度240℃ 、圧力200Pa、滞留時間1.5時間反応させ、ポリマーを得た。このポリマーはギヤポンプによりダイを経て系外にストランド状に吐出され、冷却水により冷却され、ペレタイザーによりペレット化することでPBT−1を得た。PBT−1の末端カルボキシル基量は0.37eq/tであった。
[実施例1]
PAS−1を原料として、超臨界二酸化炭素定量供給設備を具備したφ40二軸(第一成型機)−φ65単軸(第二成型機)タンデム式発泡押出装置を用い、第一成型機のスクリュー回転数300rpm、シリンダー内圧力12MPa、樹脂温度340℃以下、第二成型機のスクリュー回転数10rpm、シリンダー内圧力8MPa、ダイ出樹脂温度320℃以下となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化することでPAS発泡樹脂を得た。得られたPAS発泡体の平均セル径は80μm、発泡率は55vol%、融点は280℃、結晶化温度は165℃であった。PAS発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径50μm、d10=19μm、d90=122μm、真球度0.71のPAS樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.19であった。このPAS樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかった。
[実施例2]
PAS−1を100重量部に対して非晶性熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス製ULTEM1010)を15重量部、シランカップリング剤(信越化学工業製KBM303)を1重量部混合したものを原料としたこと以外は実施例1と同様にしてPAS発泡樹脂を得た。得られたPAS発泡体の平均セル径は100μm、発泡率は45vol%、融点は280℃、結晶化温度は160℃であった。PAS発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径70μm、d10=29μm、d90=161μm、真球度0.73のPAS樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.11であった。このPAS樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかった。
[実施例3]
PAS−1を100重量部に対して無機フィラーとして最長寸法5μm、アスペクト比19の酸化チタン(石原産業株式会社製FTL300)を11重量部混合したものを原料としたこと以外は実施例1と同様にしてPAS発泡樹脂を得た。得られたPAS発泡体の平均セル径は30μm、発泡率は50vol%、融点は280℃、結晶化温度は160℃であった。PAS発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径70μm、d10=26μm、d90=154μm、真球度0.69のPAS樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.49であった。のPAS樹脂粉粒体を得た。このPAS樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかった。
[実施例4]
PAS−1の代わりにPBT−1を原料としたこと、第一成型機の樹脂温度280℃以下、第二成型機のダイ出樹脂温度260℃以下と以外は実施例1と同様にしてPBT発泡樹脂を得た。得られたPBT発泡樹脂の平均セル径は100μm、発泡率は70vol%、融点は223℃、結晶化温度は190℃であった。PBT発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径50μm、d10=23μm、d90=104μm、真球度0.74のPBT樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.09であった。このPBT樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかったが、三次元造形物にはわずかに反りが発生した。
[実施例5]
PBT−1を100重量部に対して非晶性熱可塑性樹脂としてポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック製ユーピロンH4000)を150重量部混合したものを原料としたこと以外は実施例4と同様にしてPBT/PC発泡樹脂を得た。得られたPBT/PC発泡体の平均セル径は150μm、発泡率は50vol%、融点は223℃、結晶化温度は162℃であった。PBT/PC発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径69μm、d10=27μm、d90=171μm、真球度0.69のPBT/PC樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.08であった。このPBT/PC樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかった。
[比較例1]
第二成型機の回転数を40rpmにしたこと以外は実施例4と同様にしてPBT/PC発泡樹脂を得た。得られたPBT/PC発泡樹脂の平均セル径は10μm、発泡率は60vol%、融点は223℃、結晶化温度は162℃であった。PBT/PC発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径93μm、d10=35μm、d90=196μm、真球度0.71のPBT/PC樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.55であった。このPBT/PC樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面には多数の空隙が観察された。
[実施例6]
PBT−1を100重量部に対してポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”S2000)を150重量部、発泡剤(大塚化学製ユニフォームAZ P−3)を1重量部添加して押出温度250℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した2軸スクリュー押出機に供給し、ダイから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化しPBT/PC発泡樹脂を得た。得られたPBT/PC発泡樹脂の平均セル径は25μm、発泡率は40vol%、融点は223℃、結晶化温度は163℃であった。PBT/PC発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで60分間粉砕して平均粒径72μm、d10=33μm、d90=123μm、真球度0.71のPBT/PC樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.47であった。このPBT/PC樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面に空隙は観察されなかった。
[比較例2]
発泡剤を添加しなかったこと以外は実施例5と同様にしてPBT/PC樹脂を得た。PBT/PC樹脂は発泡しておらず、得られたPBT/PC樹脂の融点は223℃、結晶化温度は162℃であった。このPBT/PC樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで120分粉砕して平均粒径70μm、d10=25μm、d90=121μm、真球度0.71のPBT/PC樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は1.07であった。このPBT/PC樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面には多数の空隙が観察された。
[比較例3]
液体窒素で冷却せず、常温で300分粉砕を行ったこと以外は実施例4と同様にしてPBT/PC樹脂粉粒体を得た。得られたPBT/PC樹脂粉粒体の平均粒径69μm、d10=30μm、d90=171μm、真球度0.82のPBT/PC樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は−0.18であった。このPBT/PC樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れが発生し、良好な三次元造形物が得られなかった。
[比較例4]
PBT−1を98.5重量部に対してフェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA製AO−80)0.5kg、リン系酸化防止剤(株式会社ADEKA製PEP−36)1kg添加して押出温度250℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した2軸スクリュー押出機に供給し、ダイから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化しPBT樹脂を得た。得られたPBT樹脂は発泡しておらず、融点は223℃、結晶化温度は185℃であった。PBT/PC発泡樹脂を液体窒素で−192℃に冷却し、ターボミルで120分間粉砕して平均粒径62μm、d10=22μm、d90=118μm、真球度0.76のPBT樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は0.91であった。このPBT樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時の粉面荒れは発生せず良好な三次元造形物が得られた。三次元造形物の断面には多数の空隙が観察された。
[比較例5]
1mの圧力容器にPBT−1を9kg、N−メチルピロリドン(三菱化学株式会社製)を291kg投入し、窒素を封入した後、攪拌しながら160℃まで加熱してPBT−1を完全に溶解させPBT溶液を作製した。160℃の前記溶液を100℃まで冷却した後、予め25℃の水300kgを投入していた別の1mの圧力容器中へ添加し、PBTスラリーを得た。遠心分離機を用いてPBTスラリーを固液分離、水洗し、含水ケークを得た。そのケークを乾燥させ、融点223℃、結晶化温度190℃、平均粒径10μm、d10=6μm、d90=17μm、真球度0.95のPBT樹脂粉粒体を得た。微粉量と粗粉量の比率は−0.03であった。このPBT樹脂粉粒体を使用して粉末焼結法3Dプリンター((株)アスペクト製RafaelII300HT)によって三次元造形物を作製した。粉末積層時に粉末の凝集による粉面荒れが発生し、良好な三次元造形物が得られなかった。
本発明の樹脂粉粒体は、粉末床溶融結合方式を用いた3Dプリンターの三次元造形物を作製するための材料粉末として好適な樹脂粉粒体であり、その製造方法、および樹脂粉粒体を用いた三次元造形物の製造方法に関するものである。これにより、特に自動車や航空宇宙、産業・医療用機械、電気・電子用途等などの幅広い用途に適した樹脂粉粒体の適用が進み、用途拡大への貢献が期待できる。

Claims (15)

  1. 40〜80vol%の発泡率を有し、かつ20〜300μmの平均セル径を有する発泡体が存在する発泡樹脂を、−40℃以下で凍結粉砕することを特徴とする、粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  2. 発泡樹脂の素材が熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  3. 熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  4. 熱可塑性樹脂の融点と結晶化温度の差が、60℃以上であることを特徴とする、請求項2または3に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  5. 熱可塑性樹脂が、35eq/t以上50eq/t以下のカルボキシル基量を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する、請求項2〜4のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂は結晶性熱可塑性樹脂と非晶性熱可塑性樹脂を含み、結晶性熱可塑性樹脂100重量部として非晶性熱可塑性樹脂を10〜150重量部含む、請求項2〜5のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂100重量部に、発泡剤を0.5〜5重量部添加し、溶融混練して発泡樹脂を得て、次いで前記発泡樹脂を凍結粉砕することを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  8. 熱可塑性樹脂に超臨界二酸化炭素を含浸しながら溶融混練し、冷却時に気化させることで発泡樹脂を得て、次いで前記発泡樹脂を凍結粉砕することを特徴とする、請求項2〜6のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  9. 熱可塑性樹脂に無機フィラーを混合した後に溶融混練する、請求項7または8に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体の製造方法。
  10. 樹脂粉粒体の平均粒径が15μmを超え100μm以下であり、平均粒径の小粒径側からの累積度数が10%となる粒径(d10)、50%となる粒径(d50)と90%となる粒径(d90)について、0<(d50/d10)−(d90/d50)<0.5を満たし、かつ真球度が0.80未満であることを特徴とする、粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
  11. 樹脂粉粒体の素材が熱可塑性樹脂である、請求項10に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
  12. 熱可塑性樹脂が、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする、請求項11に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
  13. 熱可塑性樹脂の融点と結晶化温度の差が60℃以上であることを特徴とする、請求項11または12に記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
  14. 熱可塑性樹脂が、35eq/t以上50eq/t以下のカルボキシル基量を有するポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する、請求項11〜13のいずれかに記載の粉末床溶融結合法3Dプリンター用樹脂粉粒体。
  15. 請求項10〜14のいずれか記載の樹脂粉粒体を粉末床溶融結合法3Dプリンターに供給することを特徴とする三次元造形物の製造方法。
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