JPWO2013141126A1 - ポリ乳酸系樹脂組成物およびそれを成形してなるポリ乳酸系フィルム - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂組成物およびそれを成形してなるポリ乳酸系フィルム Download PDF

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Abstract

ポリ乳酸系樹脂と無機粒子とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物であって、ポリ乳酸系樹脂のD体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であり、樹脂組成物における無機粒子の含有量が0.001〜10質量%であり、樹脂組成物における無機粒子のうち、粒子径が1μm以下であるものの割合が50%以上であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。

Description

本発明は、寸法安定性、透明性、スリップ性、操業性に優れたポリ乳酸系フィルム、およびその成形を可能とするポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
近年、プラスチック廃棄物による環境汚染などの問題に注目が集まっており、環境保全の見地から、生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの樹脂は、大量生産可能なためコストが安く、有用性が高い。特に、ポリ乳酸樹脂は、既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として工業生産が可能となっており、また使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
このような背景のもと、ポリ乳酸系樹脂を用いて、ポリ乳酸系フィルムの開発が進められている。しかしながら、ポリ乳酸系フィルムは、剛性には優れているが、寸法安定性が低く、また成形工程あるいは製品自体を取り扱う際に、スリップ性が良好でないため、操業性の低下あるいは製品価値の低下といったトラブルが生じることが知られている。
このような問題に対して、樹脂中に微粒子を配合せしめて成形品の表面に適度の凹凸を付与し、スリップ性を向上させる方法が提案され、微粒子として、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、カオリナイトなどの無機粒子が使用されている。
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸系樹脂に、シリカ、カオリナイトのような無機粒子の添加により、硬度、強度、温度抵抗性の性質を変えることが記載されている。しかし、得られるフィルムは、スリップ性が十分向上しておらず、フィルム同士がブロッキングして、操業性が低いものであった。
また、無機粒子は、粒子表面が親水性であり、また粒子形状や粒径が不揃いであるなどの理由から、粒子凝集しやすく、樹脂への分散が良好なものではなく、樹脂中に無機粒子を配合しても、十分な性能を発揮しなかったり、また、濡れ性不良および樹脂の劣化を引き起こすこともあった。したがって、得られた成形品中においては、気泡のような空隙が生じたり、特に高温高速加工されたフィルムにおいては、発泡やボイド、無機粒子の凝集物や粒子脱落等が生じるため、現状では、外観に優れたものが得られていなかった。
無機粒子を樹脂に配合する際には、無機粒子の分散性を向上させる目的で、分散剤を添加することが一般的に行われている。特許文献2には、グリセリンエステル化合物で表面処理した無機粒子を、ポリ乳酸樹脂等に配合してなる樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この樹脂組成物は、フィルムに成形すると、延伸時にフィルムが白化してしまい、透明性に優れたフィルムを得ることができないものであった。また、得られたフィルムは、スリップ性不良により、操業性に劣るものであった。さらに、この樹脂組成物は、無機粒子の表面を処理したり、マスターバッチを作製するためのコンパウンド工程を別途必要とするため、コスト的にも不利なものであった。
国際公開第90/01521号 特開2007−238855号公報
本発明の目的は、上記問題を解決し、寸法安定性、透明性、スリップ性、操業性に優れたポリ乳酸系フィルムを成形することができるポリ乳酸系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸系樹脂を、特定のD体含有量のラクチドを用いて重合し、そして重合段階において無機粒子を特定量存在させることで、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)ポリ乳酸系樹脂と無機粒子とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物であって、
ポリ乳酸系樹脂のD体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であり、
樹脂組成物における無機粒子の含有量が0.001〜10質量%であり、
樹脂組成物における無機粒子のうち、粒子径が1μm以下であるものの割合が50%以上であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2)無機粒子がシリカであることを特徴とする(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3)上記(1)または(2)記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
(4)ヘイズが4%以下であることを特徴とする(3)記載のポリ乳酸系フィルム。
(5)上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリ乳酸系樹脂の重合工程において、
D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるラクチドと、
樹脂組成物における含有量が0.001〜10質量%となる量の無機粒子とを用いて、
無機粒子の存在下で、ラクチドの重合をおこなうことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
(6)ラクチド重合工程の後に、別途重合されたポリ乳酸系樹脂を混合して無機粒子を希釈する工程を含むことを特徴とする(5)記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物によれば、寸法安定性、透明性、スリップ性、操業性に優れたポリ乳酸系フィルムを製造することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、無機粒子の分散性が良好であるため、これを用いて得られたフィルムは、従来問題となっていた無機粒子の分散不良による発泡や凝集物、ボイド、粒子脱落等の問題が解決され、透明性に優れている。また、フィルム同士の耐ブロッキング性も向上し、スリップ性に優れ、延伸時にフィルムが破れたりすることなく操業性にも優れている。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂が特定のD体含有量を有するため、これを用いて得られたフィルムは、耐熱性を有するものであり、寸法安定性に優れる。
加えて、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、これまでに必要であったブレンダーでの分散剤混合やコンパウンド工程を省いて製造することができ、コスト的にも有利なものである。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と無機粒子とを含有する。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、D−乳酸および/またはL−乳酸の重合体であり、D−乳酸やL−乳酸の二量体であるラクチドを原料として重合することができる。
本発明で用いるポリ乳酸系樹脂のD体含有量は、2.0モル%以下であるか、または、98.0モル%以上であることが必要である。中でも、耐熱性の観点から、D体含有量が1.0モル%以下であるか、または、99.0モル%以上であることが好ましく、0.6モル%以下であるか、または、99.4モル%以上であることがより好ましい。D体含有量は、0モル%であるか、または、100モル%であることがさらに好ましいが、そのようなD体含有量を有するポリ乳酸系樹脂を作製することは非常に困難であり、またコストがかかるものである。D体含有量が2.0モル%を超え、98.0モル未満の範囲である場合、得られるフィルムは、耐熱性が低いため、寸法安定性に劣るものとなる。なお、ポリ乳酸系樹脂のD体含有量とは、ポリ乳酸系樹脂を構成する総乳酸単位のうち、D−乳酸単位が占める割合(モル%)である。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、その成形性、及び成形品物性の両立の観点から、7万〜50万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が7万未満であると、得られる成形品は、機械的強度、靭性が低いことがある。またポリ乳酸系樹脂は、重量平均分子量が50万を超えると、溶融粘度が高く、溶融成形が困難となることがある。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記ポリ乳酸系樹脂とともに、無機粒子を含有する。
本発明で用いる無機粒子の種類は、特に限定されるものではなく、たとえば、シリカ、ゼオライト、タルク、アルミナなどが挙げられ、これらの中でも、得られるフィルムの透明性やスリップ性の点において、シリカが好適である。
無機粒子の形状も、特に限定されるものではないが、球状であることが好ましい。本発明において球状とは、電子顕微鏡観察などにより測定されるアスペクト比(短径/長径)が0.5〜1であるものをいう。スリップ性等が良好なフィルムを得るためには、無機粒子の形状が真球状(アスペクト比=1)であることが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂組成物における無機粒子の含有量は0.001〜10質量%であることが必要であり、0.003〜7質量%であることがより好ましく、0.005〜5質量%であることがさらに好ましい。無機粒子の含有量が0.001質量%未満の場合、無機粒子添加の効果が十分に発揮されず、フィルム成形時に、溶融フィルムの加工ロールへの粘着およびフィルム同士のブロッキングを充分に抑えることができない。無機粒子の含有量が10質量%を超えると、無機粒子の分散性が低くなり、フィルム成形時に、押出機内の先端に装着したフィルターの目詰まりに伴い、押出機内での樹脂圧上昇を引き起こし、生産性が著しく低下する場合がある。また、ポリ乳酸系樹脂組成物の透明性や成形性の低下などを引き起こす。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中に含有される無機粒子のうち、粒子径が1μm以下の無機粒子の割合は50%以上であることが必要であり、60%以上であることが好ましい。粒子径が1μm以下の無機粒子の割合が50%未満であると、無機粒子は分散性に劣り、得られるフィルムなどの薄膜は、ヘイズが高くなる。
樹脂組成物中における、粒子径が1μm以下の無機粒子の割合を50%以上とする方法として、後述するように、ポリ乳酸系樹脂組成物の製造を、無機粒子の存在下でラクチドを重合しておこなう方法が挙げられる。ラクチド重合時に添加された無機粒子の平均粒子径が1μm以上であっても、ラクチド重合段階では反応系の粘度が低いために、重合時におこなわれる攪拌などにより、無機粒子は効率よく分散されるので、得られるポリ乳酸系樹脂組成物においては、上記のように、粒子径が1μm以下の無機粒子の割合が50%以上となるまで分散させることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中に含有される無機粒子の平均粒子径は、0.03〜1μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.5〜1μmであることがさらに好ましい。無機粒子の平均粒子径が0.03μm未満である場合は、粒子凝集し、耐ブロッキング効果を奏さず、得られるフィルムは、走行性や耐摩耗性が不十分であり、操業性に劣ることがある。平均粒子径が1μmを超える場合は、フィルムの表面粗さが大きくなりすぎ、透明性が低下し、フィッシュアイの発生によりフィルムの外観が不良となる。
本発明のポリ乳酸系重合組成物は、用途に応じて、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、耐衝撃剤、末端封鎖剤などの添加剤を含有してもよい。
結晶核剤としては、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩などが挙げられる。これらの中でも透明性の観点から、有機アミド化合物が好ましい。熱安定剤や酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。可塑剤としては、脂肪族エステル誘導体、脂肪族ポリエーテル誘導体などが挙げられ、具体的な化合物として、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレートなどが挙げられる。滑剤としては、カルボン酸系化合物等が挙げられ、中でも、脂肪酸金属塩が好ましく、具体的な化合物として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。離型剤としては、カルボン酸系化合物等が挙げられる。耐衝撃剤としては、特に限定されず、コアシェル型構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤等が挙げられ、市販品として、三菱レイヨン社製「メタブレン」シリーズ等が挙げられる。末端封鎖剤としては、特に限定されず、カルボジイミド、エポキシ、イソシアネート、オキサゾリン等が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と無機粒子とを含有するものであり、無機粒子の存在下で、ラクチドの重合をおこなうことによって製造することができる。
ポリ乳酸系樹脂の重合原料であるラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド、およびD−ラクチドとL−ラクチドの混合物であるDL−ラクチドがあり、これらのうち一種以上から選ばれてポリ乳酸系樹脂重合原料として使用される。
本発明において、D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるポリ乳酸系樹脂を得るために、D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるラクチドを原料として使用することが必要であり、ラクチドのD体含有量は、1.0モル%以下であるか、または、99.0モル%以上であることが好ましく、0.6モル%以下であるか、または、99.4モル%以上であることがより好ましく、0モル%であるか、または、100モル%であることがさらに好ましい。なお、原料として使用するラクチドのD体含有量とは、L−ラクチド、D−ラクチド、メソ−ラクチド、DL−ラクチドから選ばれる一種以上で構成される原料ラクチドにおける総乳酸単位のうち、D−乳酸単位が占める割合(モル%)である。
高分子量のポリ乳酸系樹脂を重合するためには、原料ラクチド中に含まれる遊離酸量が30meq/kg以下であることが好ましく、20meq/kg以下であることがより好ましく、10meq/kg以下であることがさらに好ましく、5meq/kg以下であることが最も好ましい。原料ラクチド中に含まれる遊離酸が30meq/kgを超える場合、重合中に、触媒や重合体を分解して、高分子量のポリ乳酸系樹脂が得られないことがある。また、得られたポリ乳酸系樹脂は、耐久性が低下することがある。
本発明において、ラクチドの重合をおこなう際に存在させる無機粒子の量は、得られる樹脂組成物における含有量が0.001〜10質量%となる量であることが必要である。
本発明で原料として用いる無機粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましい。平均粒子径が1μm以下の無機粒子は水分率が高いために、このような無機粒子用いることによって重合系内の水分率が高くなると、重合中にポリ乳酸系樹脂の分解が生じるなど、加工性に悪影響を及ぼすことがある。
本発明において、無機粒子の存在下でラクチドの重合をおこなう反応系の水分率は、120ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。反応系の水分率が120ppmを超えると、反応系に存在する無機粒子は分散性に劣るものとなり、得られるポリ乳酸系樹脂組成物中において、粒子径が1μm以下の無機粒子の割合が50%以上とならないことがある。またポリ乳酸系樹脂は、重合中に分解が生じて所定の分子量まであがりにくく、加工性に悪影響をおよぼすことがあり、また、分解によって着色することで、得られる成形品は、外観が劣るなどの問題がある。したがって、本発明で原料として用いるラクチドの水分率は低いほど好ましく、20ppmであることが好ましく、15ppmであることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましく、5ppm以下であることが最も好ましい。また、無機粒子の水分率も、低いほど好ましく、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることがさらに好ましく、1000ppm以下であることが最も好ましい。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、通常のラクチドの重合を、無機粒子の存在下でおこなって製造すればよく、これ以外の製造条件は、公知のポリ乳酸系樹脂製造方法の条件を適用することができる。すなわち、ラクチドを、重合触媒の存在下、加熱し溶融開環重合させる方法の条件や、触媒を含有する低分子量のポリ乳酸重合体を結晶化させた後、減圧下または不活性ガス気流下で加熱し固相重合する方法の条件を適用して、ポリ乳酸系樹脂を製造することができる。
重合触媒の種類は、特に限定されず、従来から使用されている、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属類、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどの脂肪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート等を触媒として使用することができる。
本発明においては、重合活性の高さから、スズ、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、チタン、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウム及び稀土類元素より選択される少なくとも一種の金属を含有する化合物を使用することが好ましい。
これらの中でも、触媒活性、副反応の少なさを考慮すると、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第二スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、テトラフェニルスズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズプロポキシド、スズブトキシド、ジノニルオキシスズなどのスズ含有化合物、およびアルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウム−イミン錯体などのアルミニウム含有化合物が好ましい。
さらに好ましい化合物としては、塩化第一スズ、ミリスチン酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、スズメトキシド、スズエトキシド、スズプロポキシド、スズブトキシド、ジノニルオキシスズ、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシドなどが例示される。
これらのうちII価スズの化合物、中でもII価スズの炭素数4〜22のアルコキシド、脂肪酸の塩が好適な例として例示される。これらの中でも、オクチル酸スズ(II)は、安全性の点及び触媒活性の点より、最も好適なものとして例示される。
重合触媒の添加量は、ラクチドと無機粒子の合計100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.003〜0.1質量部であることがより好ましく、0.003〜0.02質量部であることがさらに好ましい。重合触媒の添加量が0.001質量部未満の場合、重合速度が遅いため、重合に時間がかかりすぎることがある。重合触媒の添加量が1質量部を超えると、重合速度は速いが、重合体の分解による着色も大きくなり、また分解によるカルボン酸末端の増加により、得られたポリ乳酸系樹脂の耐久性が低下することがある。
重合反応容器としては、例えば、ヘリカルリボン翼、アンカー翼等の高粘度用攪拌翼を備えた縦型反応器あるいは横型反応器を、単独または並列して使用することができる。また、重合は、回分式あるいは連続式あるいは半回分式のいずれでおこなってもよく、これらを組み合わせてもよい。連続式の場合は、攪拌翼が必要でないこともある。
溶融重合の重合温度は、170〜230℃であることが好ましく、170〜210℃であることがより好ましく、180〜200℃であることがさらに好ましい。重合速度は重合温度に依存するため、重合温度が170℃未満であると、重合に長時間要することになり、また分子量の向上により融点が高くなると、攪拌ができなくなることがある。重合温度が230℃を超えると、反応系に存在する無機粒子は分散性に劣るものとなり、得られるポリ乳酸系樹脂組成物中において、粒子径が1μm以下の無機粒子の割合が50%以上とならないことがある。またポリ乳酸系樹脂中に含まれるモノマー含有量が多くなるために、コスト的に不利になり、また分解速度も大きくなるので着色も大きくなり、さらに重合中に光学純度が低下することがある。
固相重合法では、前述した開環重合法によって得られた比較的低分子量のポリ乳酸系樹脂をプレポリマーとして使用する。プレポリマーは、そのガラス転移温度(Tg)以上、融点(Tm)未満の温度範囲にて、予め結晶化させておくことが、融着防止の面から好ましい。結晶化させたプレポリマーは、固定された縦型もしくは横型反応容器、またはタンブラーやロータリーキルンのように容器自体が回転する反応容器中に充填され、プレポリマーのガラス転移温度(Tg)以上、融点(Tm)未満の温度範囲に加熱される。重合温度は、重合の進行に伴い段階的に昇温させてもよい。また、固相重合中に生成する水を効率的に除去する目的で、前記反応容器類の内部を減圧することや、加熱された不活性ガス気流を流通する方法も好適に併用される。
本発明において、重合開始剤として、水またはアルコールを用いることができる。アルコールは、ポリ乳酸系樹脂の重合を阻害せず不揮発性であることが好ましく、例えば、モノアルコールとしては、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール等の脂肪族多価アルコール等、あるいはビスフェノールにエチレンオキシドが付加させたものなどの芳香族多価アルコール等などを好適に用いることができる。
重合開始剤の添加量は、ラクチド100質量部に対して、0.05〜0.5質量部であることが好ましく、0.07〜0.3質量部であることがより好ましく、0.1〜0.25質量部であることがさらに好ましい。重合開始剤の添加量が0.05質量部未満である場合、得られるポリ乳酸系樹脂の分子量が高くなりすぎ、溶融押出しが困難となることがある。一方、0.5質量部を超えて添加した場合、得られる樹脂組成物は機械特性に劣るものとなることがある。
溶融開環重合されたポリ乳酸系樹脂は、通常1質量%以上のラクチドを含有するが、ポリ乳酸系樹脂中のラクチドは、公知のラクチド減量法、たとえば、一軸あるいは多軸押出機での真空脱揮法や、重合装置内での高真空処理法等によって、減量することが可能である。
ポリ乳酸系樹脂は、ラクチド含有量が少ないほど、溶融安定性、湿熱安定性が向上するが、溶融粘度も上昇するため、所望の目的に合致した含有量にするのが合理的、経済的である。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物のラクチド含有量は、0〜5000ppmであることが好ましく、0〜3000ppmであることがより好ましく、0〜2000ppmであることがさらに好ましく、0〜1000ppmであることが特に好ましい。ラクチド含有量が5000ppmを超えると、成形加工時に発煙が生じて操業性が低下するだけでなく、得られる成形品の耐久性が低下することがある。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法においては、上記ラクチドを重合する工程の後に、別途重合されたポリ乳酸系樹脂を混合して、無機粒子を希釈する工程を含ませてもよい。別途重合されたポリ乳酸系樹脂は、無機粒子を希釈するために混合されるものであるため、無機粒子の含有量がより低いものであることが好ましく、無機粒子を実質的に含まないものであることがより好ましい。
別途重合されたポリ乳酸系樹脂(以下、希釈用ポリ乳酸系樹脂ともいう)の重量平均分子量は、成形性及び成形品物性の両立の観点から、10万〜50万であることが好ましく、15万〜30万であることがより好ましい。
希釈用ポリ乳酸系樹脂のD体含有量は、混合後の樹脂組成物において、ポリ乳酸系樹脂のD体含有量が2.0モル%以下となるか、または98.0モル%以上となる量であればよく、また、希釈用ポリ乳酸系樹脂の混合量は、混合後の樹脂組成物において、無機粒子の含有量が0.001〜10質量%となる量であればよい。
希釈用ポリ乳酸系樹脂の混合には、公知の混合方法を適用することができ、例えば、リボンブレンダー法、押出溶融ブレンド法、バンバリーブレンド法などの方法を適用することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、上記方法によって製造され、通常、ペレット、棒状等の形状に造粒され、無機粒子の含有量が低い場合は、そのまま成形に用いることができ、無機粒子の含有量が高い場合は、マスターバッチとして用いることができる。マスターバッチとして用いる場合、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、特に限定されないが、10〜100倍程度に希釈して、成形に用いることができる。
本発明のポリ乳酸系重合体組成物は、無機粒子の分散性に優れているため、外観が重視される用途や、フィルムやシート等の薄膜に用いるのに好適である。特に、フィルムやシートに用いた場合、ヘイズが低下するという顕著な効果を奏する。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、上記のように無機粒子の分散性に優れたポリ乳酸系樹脂組成物を成形したものであるため、透明性に優れており、そのヘイズは、4%以下であることが好ましく、実用上、3%以下であることがより好ましい。ヘイズが4%を超えると、外見的に透明感が低く、包装材料などの用途において商品価値が低下する傾向がある。
本発明のポリ乳酸系フィルムの厚みは、10〜50μmであることが好ましい。厚みが10μm未満であると、包装袋として用いた場合、コシがないものとなり、厚みが50μmより厚いと、コスト的に不利になることがある。
本発明のポリ乳酸系フィルムの融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。融点が150℃未満であると、耐熱性に劣ることがある。
次に、ポリ乳酸系フィルムを製造する方法について説明する。
本発明のポリ乳酸系フィルムの成形方法は、特に限定されず、公知の成形方法を適用することができる。例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等が例示でき、中でもTダイ法が好ましい。
Tダイ法では、本発明のポリ乳酸系重合組成物を、押出機ホッパーに供給し、溶融混練して押し出し、キャストロールで冷却することにより、厚み100〜600μmの未延伸シートが得られる。この方法においては、シリンダー温度が160〜250℃、Tダイ温度が200〜250℃、キャストロールが30〜60℃であることが好ましい。キャストロール温度が30℃より低い場合、ポリ乳酸系樹脂のモノマーがキャストロールに付着し、シートの汚れとなることがある。また、キャストロール温度が60℃を超える場合、ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度以上になるため、冷却が不十分となり、安定した形態のシートが得られないことがある。
得られた未延伸シートは、必要に応じて延伸することにより、延伸フィルムを得ることができる。延伸方向は一軸でも二軸でもよいが、二軸方向に延伸することが好ましい。
延伸方法としては、ロール法、テンター法等が挙げられ、逐次二軸延伸法あるいは同時二軸延伸法のどちらを採用してもよい。
二軸延伸での面倍率は6〜16倍であることが好ましい。面倍率が6倍未満であると、得られるフィルムの機械物性、特に引張強度が低く、実用に耐えないことがある。また、面倍率が16倍を超えると、フィルムは、延伸途中で延伸応力に耐えきれず、破断してしまうことがある。
延伸温度は、50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。延伸温度が50℃未満であると、延伸のための熱量不足により、フィルムが延伸初期で破断することがある。また延伸温度が90℃を超えると、フィルムに熱が加わりすぎて、ドロー延伸となり、延伸斑を多発する傾向がある。
延伸工程前の未延伸シートに対して、必要に応じてコート剤をコーティングしてもよい。コーティング方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
また、延伸フィルムに寸法安定性を付与する目的で、延伸後、熱弛緩処理を実施してもよい。熱弛緩処理の方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等が挙げられ、均一に精度良く加熱できる点で、熱風を吹き付ける方法が好ましい。熱弛緩処理は、80〜160℃の範囲で1秒以上の条件で、かつリラックス率2〜8%の条件で実施することが好ましい。
なお、製膜時の溶融張力の低下を抑制する目的で、必要に応じて有機過酸化物などの架橋剤および架橋助剤を併用して、予めポリ乳酸系樹脂組成物に軽度の架橋を施してもよい。
本発明のポリ乳酸系フィルムは、単層であっても、良好な包装体を得ることができるが、内容物や保存方法、製袋方法に適応できるように、他の層を積層してもよい。積層方法として、コーティング、ドライラミネート、押出ラミネート等が挙げられ、適宜選択することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
1.原料
(1)ラクチド
・L−ラクチド:東京化成社製、D体含有量0.06%、遊離酸量3meq/kg、水分率5ppm
・DL−ラクチド:東京化成社製、D体含有量50%、遊離酸量3meq/kg、水分率5ppm
(2)無機粒子
・SO−C5:アドマテック社製シリカ、平均粒子径1.5μm、粒子径が1μm以下の粒子の割合15%、水分率500ppm
・HPS−1000:東亜合成社製シリカ、平均粒子径2μm、粒子径が1μm以下の粒子の割合5%、水分率1900ppm
・SY−310P:富士シリシア化学社製シリカ、平均粒子径3μm、粒子径が1μm以下の粒子の割合1%、水分率43000ppm
・MW−HST:林化成社製タルク、平均粒子径2.5μm、粒子径が1μm以下の粒子の割合7%、水分率5000ppm
(3)重合触媒
・オクチル酸スズ:吉富ファインケミカル社製、スタノクト
(4)希釈用ポリ乳酸系樹脂
・S−6:トヨタ自動車社製、D体含有量0.1モル%、ラクチド含有量1000ppm、水分率100ppm、重量平均分子量17万、融点176℃
・4032D:ネイチャーワークス社製、D体含有量1.4モル%、ラクチド含有量2200ppm、水分率100ppm、重量平均分子量18万、融点166℃
・4042D:ネイチャーワークス社製、D体含有量4.0モル%、ラクチド含有量2100ppm、水分率100ppm、重量平均分子量18万、融点150℃
(5)結晶核剤
・T−530SF:伊藤製油社製、N,N′−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド
2.測定方法
実施例及び比較例における各種特性値の測定法、評価法は次の通りである。
(1)水分率
カールフィッシャー法によって、無機粒子、ラクチドおよび希釈用ポリ乳酸系樹脂中の水分量を測定した。測定には、三菱化学社製水分気化装置「VA−07」および三菱化学社製微量水分測定装置「CA−07」を用い、水分気化は、150℃、3分の条件でおこなった。
(2)無機粒子の粒度分布
無機粒子または無機粒子を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を、フェノール/テトラクロロエタン等質量混合溶媒に加えて、無機粒子を分散、ポリ乳酸系樹脂を溶解して、無機粒子濃度が0.25質量%の試料液を得た。島津製作所社製レーザー光回折/散乱型粒度分布測定装置「SALD−7100」を用いて、試料液中の無機粒子の粒度分布を測定し、分散度、平均粒子径、および粒子径が1μm以下のものの割合を求めた。なお、屈折率パラメータはシリカの文献値を基に決定した。
(3)ポリ乳酸系樹脂のD体含有量
ポリ乳酸系樹脂組成物0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸系樹脂を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過後、HewletPackard社製HP−6890Series GCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(モル%)とした。
(4)ポリ乳酸系樹脂中のラクチド含有量
ポリ乳酸系樹脂の含有量が0.1gとなるようにポリ乳酸系樹脂組成物を秤取し、これに、塩化メチレン9mL、内部標準液1mL(2,6−ジメチル−γ−ピロンの5000ppm溶液)を加え、ポリ乳酸系樹脂を溶解させた。この溶解液にシクロヘキサン40mLを添加し、ポリ乳酸系樹脂を析出させた。無機粒子と析出したポリ乳酸系樹脂とをHPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾別後、濾液をAgilent Technologies社製7890A GCSystemでGC測定し、ラクチド含有量を算出した。
(5)ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフランもしくはクロロホルムを溶出液として、40℃、標準ポリスチレン換算で求めた。なお、ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂を少量のクロロホルムに溶解後、テトラヒドロフランを加え、無機粒子を濾別したものを試料とした。
(6)ポリ乳酸系樹脂の融点
DSC(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、25℃から200℃に10℃/分で昇温し、その温度を10分間維持した。その後−55℃まで10℃/分で降温し、再び200℃まで10℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた吸熱ピークのトップをその樹脂組成物の融点(Tm)とした。
(7)押出および延伸操業性
目視により以下の基準に従い評価した。
○:押出機内の樹脂圧変動がなく、延伸時の切断も無い。また、延伸シートを巻く際に、巻き皺あるいは変形がみられない。
△:押出機内の樹脂圧変動がなく、延伸時の切断も無いが、延伸シートを巻く際、巻き皺あるいは変形がみられる。
×:押出機内の樹脂圧変動がある。もしくは延伸時に切断する。
(8)ヘイズ(透明性)
JIS−K7105に準じて、厚み25μmあるいは50μmのフィルムを試料とし、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH2000を用いて、ヘイズを測定した。本発明においては、4%以下を合格と評価した。
(9)スリップ性
JIS−K7125に準じて、フィルムの動摩擦係数を測定した。本発明においては、0.4以下を合格と評価した。
(10)光沢度
村上色彩技術研究所社製(GROSS METER GM−26 PRO)を用い、JIS−K7105に準じて、入射角20°で、厚み25μmのフィルムの光沢度測定を行った。
(11)収縮率
ASTM D1204−94に準拠し、処理温度を100℃として、フィルムの収縮率の測定を行った。本発明においては2%以下を合格と評価した。
実施例1
(無機粒子の存在下でのラクチドの重合)
ガラス管に、L−ラクチド95質量部と、無機粒子としてシリカ(SO−C5)5質量部とを仕込み、系内を窒素置換した。次いで、重合触媒としてオクチル酸スズ0.01質量部を投入後、窒素雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が融解した時点で、攪拌を開始し、内温をさらに190℃に昇温して、2時間重合反応させた後、重合反応物を取り出した。得られた重合反応物を、130℃、30時間真空乾燥処理することで、重合反応物に残存するラクチド除去し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
実施例2
(ラクチド重合後の無機粒子希釈)
実施例1で得られたポリ乳酸系樹脂組成物と、無機粒子の希釈倍率が100倍となる量の希釈用ポリ乳酸系樹脂(S−6)とを混合し、スクリュー径25mmφ、230℃の単軸押出機に供給して、溶融押出しし、無機粒子が希釈されたポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
(フィルム成形)
また、上記単軸押出機から、無機粒子が希釈されたポリ乳酸系樹脂組成物を、Tダイ温度230℃で溶融押出しし、35℃に温度制御されたキャストロールに密着冷却し、厚さ250μmの未延伸シートを得た。次いで、未延伸フィルムの端部を同時二軸延伸機のクリップで把持し、70℃で予熱した後、70℃で、MDに3.0倍、TDに3.3倍の延伸倍率になるように、同時二軸延伸した。その後、TDの弛緩率5%として、温度140℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却し、厚さ25μmの二軸延伸されたポリ乳酸系フィルムを得た。
また、上記と同様の方法により、厚さ500μmの未延伸シートを得てから、厚さ50μmの二軸延伸されたポリ乳酸系フィルムを得た。
実施例3〜20、比較例2〜4、6
原料ラクチドや無機粒子の種類、混合/重合条件、希釈用樹脂の種類や希釈倍率を、表1〜3に記載されたように変更した以外は、実施例1と同様の方法でラクチドの重合をおこない、また実施例2と同様の方法で希釈とフィルム成形をおこなった。
なお、実施例18においては、原料の無機粒子として、シリカ(SY−310P)に乾燥処理を行い、水分率を2000ppmとしたものを使用し、比較例2においては、原料の無機粒子として、シリカ(SO−C5)に乾燥処理を行い、水分率を80ppmとしたものを使用した。また、実施例20においては、ラクチドの重合時に結晶核剤の添加を行った。
比較例1
希釈用ポリ乳酸系樹脂(S−6)を単体で用いて、実施例2と同様の方法でフィルム成形した。
比較例5
希釈用ポリ乳酸系樹脂(S−6)95質量部と、シリカ(SO−C5)5質量部とをドライブレンドしたのち、池貝社製PCM−30型2軸押出機(スクリュー径30mmφ、平均溝深さ2.5mm)を用いて、190℃、スクリュー回転数200rpm、滞留時間1.6分、吐出250g/分の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例2と同様の方法で希釈とフィルム成形をおこなった。
実施例、比較例で得られたポリ乳酸系樹脂組成物について、重合後の特性と希釈後の特性を、また得られたポリ乳酸系フィルムの特性を表1〜3に示す。
Figure 2013141126
Figure 2013141126
Figure 2013141126
実施例1〜20で得られた、無機粒子の存在下でラクチドの重合がおこなわれたポリ乳酸系樹脂組成物は、無機粒子の分散性が良好であるため、そのままでフィルム成形しても、また無機粒子を希釈用ポリ乳酸系樹脂で希釈してからフィルム成形しても、押出製膜時や延伸時の操業性に優れており、得られたポリ乳酸系フィルムは、透明性、スリップ性、寸法安定性に優れるものであった。
比較例1に示すように、無機粒子を添加していないポリ乳酸系樹脂から成形されたフィルムは、スリップ性に劣るものであり、フィルムを巻き取る際に、フィルム同士がブロッキングしやすく、巻き皺がみられた。
比較例2では、ラクチドの重合をおこなう際に存在させる無機粒子の含有量が多すぎたため、重合中に無機粒子同士が凝集し、得られた樹脂組成物において、粒子径が1μm以下である無機粒子の割合は、50%に満たないものであった。この樹脂組成物は、無機粒子を希釈用ポリ乳酸系樹脂で希釈しても、フィルム成形時に、凝集した無機粒子がフィルターに詰まったり、分散性が低いため延伸時にフィルムが切断するなど、操業性に劣るものであった。また、得られたフィルムは、透明性に劣っており、また無機粒子が均一に分散していないため、スリップ性も劣っていた。
比較例3〜4で得られた樹脂組成物も、粒子径が1μm以下である無機粒子の割合が、50%に満たないものであったため、比較例2と同様の問題があった。
比較例5の樹脂組成物は、予め重合されたポリ乳酸系樹脂に無機粒子を混合して溶融混練して得たものであったため、無機粒子の分散性が劣り、粒子径が1μm以下である無機粒子の割合が50%に満たないものであった。この樹脂組成物は、押出操業性や延伸操業性に優れるものの、得られたフィルムは、透明性やスリップ性に劣るものであった。
比較例6の樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂のD体含有量が本発明で規定する範囲から外れるため、融点が低く、耐熱性に劣るものであった。そのため、延伸フィルムを巻く際に巻き皺がみられ、得られたフィルムは寸法安定性に劣るものであった。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸系樹脂と無機粒子とを含有するポリ乳酸系樹脂組成物であって、
    ポリ乳酸系樹脂のD体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であり、
    樹脂組成物における無機粒子の含有量が0.001〜10質量%であり、
    樹脂組成物における無機粒子のうち、粒子径が1μm以下であるものの割合が50%以上であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 無機粒子がシリカであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2記載のポリ乳酸系樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
  4. ヘイズが4%以下であることを特徴とする請求項3記載のポリ乳酸系フィルム。
  5. 請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物を製造するための方法であって、ポリ乳酸系樹脂の重合工程において、
    D体含有量が2.0モル%以下であるか、または98.0モル%以上であるラクチドと、
    樹脂組成物における含有量が0.001〜10質量%となる量の無機粒子とを用いて、
    無機粒子の存在下で、ラクチドの重合をおこなうことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。
  6. ラクチド重合工程の後に、別途重合されたポリ乳酸系樹脂を混合して無機粒子を希釈する工程を含むことを特徴とする請求項5記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法。

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