JP2021052682A - 糖を含む濃縮液、濃縮システム及び濃縮方法 - Google Patents

糖を含む濃縮液、濃縮システム及び濃縮方法 Download PDF

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Abstract

【課題】食料品原料液が本来有する外観及び風味を保持した、糖を高濃度で含む濃縮液、並びにこのような高品位の濃縮液を製造できるとともに長期間の運転が可能な原料液濃縮システム及び原料液濃縮方法を提供する。【解決手段】一態様において、糖を含む原料液の濃縮液である食料品であって、該濃縮液が、Brix値50以上、及び紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.1以上1.0以下を有する食料品が提供される。一態様において、該食料品を製造するための原料液濃縮システムであって、正浸透膜、並びに前記正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを備えるシステムが提供される。一態様において、該食料品の製造方法であって、原料液を正浸透膜に通すことによって該原料液を濃縮する正浸透工程を含む方法が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、糖を含む原料液を濃縮して得られる濃縮液、並びに、糖を含む原料液を濃縮するに際し、原料液中の成分の変質、減少等による外観劣化及び風味低下を抑え、効率よく原料液を濃縮することが可能な原料液濃縮システム及び原料液濃縮方法に関する。
近年の消費者の健康指向により、天然から収穫され、抽出又は濃縮された食料品に対して消費者の関心が寄せられている。例えば、糖を含む食料品原料液においては、当該原料液を蒸発機に入れて水分を加熱蒸発させることにより濃縮して得られる濃縮液を、各種料理及び菓子類への天然甘味料として添加することが行われている。しかし、糖を含む原料液を高温で加熱すると、原料液に含まれる多くの成分が変質又は消失するため、得られる食料品(すなわち原料液の濃縮液の形態である食料品)の外観劣化及び風味の大幅な低下が生じるという課題があった。
そこで、加熱を必要とせずに原料液を濃縮できる方法として、逆浸透膜法が一般的に行われている。例えば、特許文献1では、メープルシロップを逆浸透膜法で濃縮する方法が記載されている。また、特許文献2では、メープルシロップを逆浸透法で、比較的高濃度まで濃縮する方法が記載されている。
特開2003−70448号公報 米国特許第9622505号明細書
しかし、逆浸透膜法では、濃縮液の浸透圧よりも高い圧力をかける必要があるため、濃縮濃度に限界があり、高濃度への濃縮には加熱が必要である。加熱によって、食料品原料液に含まれる有用成分が変質又は消失するため、食料品の外観が劣化する。さらに、逆浸透膜法は高圧をかけるため、有用成分が膜に吸着し、風味成分が低下したり、長期的な運転ができないという課題があった。
本発明は、上記の課題を解決し、食料品原料液が本来有する外観及び風味を保持した、糖を高濃度で含む濃縮液、並びにこのような高品位の濃縮液を製造できるとともに長期間の運転が可能な原料液濃縮システム及び原料液濃縮方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液の濃縮液である食料品であって、
前記濃縮液が、Brix値50以上、及び紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.1以上1.0以下を有する、食料品。
[2] 前記濃縮液が、前記紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.2以上0.8以下を有する、上記態様1に記載の食料品。
[3] 前記原料液が、メープル樹液及びココナッツ液体胚乳からなる群から選択される、上記態様1又は2に記載の食料品。
[4] 上記態様1〜3のいずれかに記載の食料品を製造するための原料液濃縮システムであって、正浸透膜、並びに前記正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを備える、原料液濃縮システム。
[5] 前記原料液濃縮システムが、
糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を前記原料液側空間に供給する原料液流路と、
誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を前記誘導溶液側空間に供給する誘導溶液流路と、
前記正浸透膜ユニットから、原料液の濃縮液を取り出す濃縮液流路と、
前記正浸透膜ユニットから、希釈された誘導溶液を取り出す希釈誘導溶液流路と、
を更に備え、
前記正浸透膜は、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に拡散させるとともに、誘導溶液中の誘導物質を原料液中に逆拡散させることによって、原料液を濃縮するとともに誘導溶液を希釈し、
誘導溶液から原料液中に逆拡散する前記誘導物質の透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に拡散する前記液体媒体の透過流束Fに対する割合である逆拡散/フラックス比(F’/F比)が、0.01g/L以上、3g/L以下である、上記態様4に記載の食料品濃縮システム。
[6] 前記逆拡散/フラックス比(F’/F比)が0.015g/L以上1g/L以下である、上記態様5に記載の原料液濃縮システム。
[7] 前記希釈された誘導溶液から前記液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成する再生機構を更に有し、前記再生誘導溶液が前記誘導溶液流路に再循環される、上記態様5又は6に記載の原料液濃縮システム。
[8] 前記再生機構が、液体媒体蒸発機構である、上記態様7に記載の食料品濃縮システム。
[9] 前記誘導物質が無機塩である、上記態様5〜8のいずれかに記載の食料品濃縮システム。
[10] クロスフローろ過方式である、上記態様4〜9のいずれかに記載の原料液濃縮システム。
[11] 前記原料液の温度を5℃以上50℃以下の範囲に調整する温度制御機構を更に備える、上記態様4〜10のいずれかに記載の原料液濃縮システム。
[12] 前記正浸透膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする薄膜層を有する、上記態様4〜11のいずれかに記載の原料液濃縮システム。
[13] 前記正浸透膜が中空糸膜である、上記態様4〜12のいずれかに記載の原料液濃縮システム。
[14] 前記濃縮液流路の下流に、濃縮液を加熱濃縮する加熱濃縮ユニットを更に備える、上記態様4〜13のいずれかに記載の原料液濃縮システム。
[15] 上記態様1〜3のいずれかに記載の食料品の製造方法であって、
糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を正浸透膜に通すことによって前記原料液を濃縮する正浸透工程を含む、方法。
[16] 前記正浸透工程を、正浸透膜、並びに前記正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを用いて行い、
前記正浸透工程において、前記原料液を前記原料液側空間に供給し、誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を前記誘導溶液側空間に供給し、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に拡散させるとともに誘導溶液中の誘導物質を原料液中に逆拡散させることによって、原料液を濃縮するとともに誘導溶液を希釈し、
前記正浸透工程において、誘導溶液から原料液中に逆拡散する前記誘導物質の透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に拡散する前記液体媒体の透過流束Fに対する割合である逆拡散/フラックス比(F’/F比)が、0.01g/L以上、3g/L以下である、上記態様15に記載の方法。
[17] 前記逆拡散/フラックス比(F’/F比)が0.015g/L以上1g/L以下である、上記態様15又は16に記載の方法。
[18] 前記希釈された誘導溶液から前記液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成し、前記再生誘導溶液を前記誘導溶液として再利用する誘導溶液再生工程を更に含む、上記態様15〜17のいずれかに記載の方法。
[19] 前記誘導溶液再生工程が、液体媒体蒸発工程である、上記態様15〜18のいずれかに記載の方法。
[20] 前記誘導物質が無機塩である、上記態様15〜19のいずれかに記載の方法。
[21] 前記正浸透工程をクロスフローろ過方式で行う、上記態様15〜20のいずれかに記載の方法。
[22] 前記原料液の温度を5℃以上50℃以下の範囲に維持する、上記態様15〜21のいずれかに記載の方法。
[23] 前記正浸透膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする薄膜層を有する、上記態様15〜22のいずれかに記載の方法。
[24] 前記正浸透膜が中空糸膜である、上記態様15〜23のいずれかに記載の方法。
[25] 前記正浸透工程の後に、原料液の濃縮液を更に加熱濃縮する加熱濃縮工程を更に含む、上記態様15〜24のいずれかに記載の方法。
本発明の一態様によれば、食料品原料液が本来有する外観及び風味を保持した、糖を高濃度で含む濃縮液、並びにこのような高品位の濃縮液を製造できるとともに長期間の運転が可能な原料液濃縮システム及び原料液濃縮方法が提供され得る。
図1は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の一例を説明するための概念図である。 図2は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の別の一例を説明するための概念図である。 図3は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。 図4は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。 図5は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態ともいう)を、非限定的な例として具体的に詳細に説明する。なお本開示の図面において同一の符号が付された要素は互いに同様の構成又は機能を有することが意図される。
≪糖を含む原料液の濃縮液≫
本発明の一態様は、糖を含む原料液の濃縮液である食料品を提供する。一態様において、当該濃縮液は、Brix(ブリックス)値50以上を有する。また一態様において、当該濃縮液は、紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.1以上1.0以下を有する。
一態様において、原料液は、糖を含む溶質と、液体媒体とを含む。糖としては、例えば、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、デオキシリボース等)、二糖類(例えば、マルトース、スクロース、ラクトース等)、糖鎖(例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、グルクロン酸、イズロン酸等の他;N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸等の、糖類誘導体等)等を挙げることができる。
本開示の原料液は、糖を含む溶質と、水性媒体とを含む原料液全般を包含する。原料液としては、栄養性が高く、天然で採取された水含有物品が挙げられ、例えば、メープル樹液、ハチミツ、ココナッツ液体胚乳、サトウキビ糖液、羅漢果搾汁が挙げられる。好ましい態様において、原料液は、メープル樹液及びココナッツ液体胚乳から成る群から選択される。
メープル樹液は、一般に、1年のうち糖度が最も高く、昼と夜との温度差が大きい時期(北半球においては例えば3〜4月)にカエデの樹から採取される。樹液は、木の成長に必要であることから、その採取には、木に穴を開ける段階から種々の厳しい基準が設けられている。通常、樹液には2〜4質量%しか糖分が含まれておらず、1Lのシロップを作るために約40Lの樹液が必要になる。液体媒体は、原料液中の溶質を溶解又は分散させている。典型的な態様において、液体媒体は水である。原料液は、流体であればよく、例えば乳化物等である場合もある。
一態様においては、原料液としてメープル樹液を用い、濃縮液としてメープルシロップを得る。メープルシロップの品質はグレード分けされており、一般的には、樹液の採取時期がシーズン初めに近いほど樹液の色が薄く、得られるメープルシロップの味が繊細で、光の透過率も高い。光の透過率が高いメープルシロップはエクストラライトと称される一方、光の透過率が低いものはダークと称され、光の透過率が高いものほど良質とされている。
メープルシロップのBrix値は、一般に66.5%であり、グラニュー糖及び上白糖と遜色ない値である。一方、メープルシロップは、例えば上白糖及びはちみつと比較してカロリーが低く、また、カルシウム、カリウムなどのミネラルの含有量が他の甘味料に比べて多い傾向がある。
ココナッツ液体胚乳とは、未成熟なココナッツ果実の中に含まれている半透明の液体胚乳のことをいう。ココナッツ液体胚乳はミネラルを豊富に含むことから栄養豊富であり、また人体とほぼ同じ浸透圧で体液に近いミネラル組成であることから天然の水分補給素材であり得る。ココナッツ液体胚乳が豊富に含むミネラルのうち、特にマグネシウム及びカリウムは、むくみ解消、代謝酵素の活性化等に有効であることが知られている。ココナッツ液体胚乳においても、光の透過率が高いほど味が繊細であり良質である。
一態様において、濃縮液のBrix(ブリックス)値(すなわち、Brix計で測定される糖度の値)は、50以上である。濃縮前の(すなわち原料液の)Brix値は概ね1から5程度である。このような原料液がBrix値50の濃縮液に濃縮された場合の濃縮率は、約10倍から約50倍である。すなわち、濃縮液のBrix値が50以上であることは高濃縮率の濃縮液であることの指標となる。一態様において、本開示の濃縮液は、Brix値50以上の高い濃縮率であっても、高い光透過率を有する。この高い光透過率は、濃縮前の原料液の透過度が良好に維持されていることの指標となる。濃縮液のBrix値は、高濃縮率の濃縮液を得る観点から、好ましくは、50以上、又は60以上である。濃縮液のBrix値の上限は特に限定されないが、濃縮液の製造容易性の観点から、例えば、75以下、又は70以下であってよい。
濃縮液の、紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度は、濃縮液に、むくみ解消、代謝酵素の活性化等、健康に良好な成分が多く含まれている観点から、0.1以上であり、好ましくは0.2以上であってよい。また上記吸光度は、1.0以下であり、濃縮液が高品質である(特に風味が繊細である)観点から、好ましくは、0.8以下であってよい。本開示の濃縮液の光透過度は、濃縮前の(すなわち原料液中の)透過度及び風味が良好に維持されたものである。このような濃縮液は従来知られていない。
≪原料液濃縮システム≫
本発明の一態様は、上記の濃縮液である食料品を製造するための原料液濃縮システムであって、正浸透膜ユニットを備えるシステムを提供する。正浸透膜ユニットは、正浸透膜と、該正浸透膜で互いに隔てられた、原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する。一態様において、原料液濃縮システムは、原料液と、誘導物質を含有する誘導溶液とを、正浸透膜を介して接触させ、原料液中の液体媒体(典型的には水)を誘導溶液中に移動(すなわち拡散)させ、かつ、誘導溶液中の誘導物質を原料液中に移動(すなわち逆拡散)させることにより、原料液の濃縮及び誘導溶液の希釈が行われるように構成されている。正浸透膜には原料液中の有用成分が吸着しにくいため、正浸透膜を用いたシステムは、原料液中の風味成分が良好に維持された濃縮液を製造できるとともに、長期的な運転が可能である点で有利である。
一態様において、原料液濃縮システムは、上記の正浸透膜ユニットと、
糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を原料液側空間に供給する原料液流路と、
誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を誘導溶液側空間に供給する誘導溶液流路と、
正浸透膜ユニットから、原料液の濃縮液を取り出す濃縮液流路と、
正浸透膜ユニットから、希釈された誘導溶液を取り出す希釈誘導溶液流路と、
を備える。
原料液濃縮システムにおいて、濃縮に際し、誘導溶液中の誘導物質を原料液中へ移動(逆拡散)させる誘導物質の透過速束の、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に移動(拡散)させる液体媒体の透過流束に対する割合(誘導物質の透過速束/液体媒体の透過流束)は、好ましくは0.01g/L以上3g/L以下、より好ましくは0.015g/L以上1g/L以下である。
以下に、本実施形態の原料液濃縮システム及びこれを用いた原料液濃縮方法の概要について、必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお以下では、原料液濃縮システムの正浸透膜ユニットで行われる工程を原料液濃縮方法の「第一の工程」と称する。すなわち、本開示において、原料液濃縮方法における「第一の工程」は本開示のシステムにおける「正浸透膜ユニット」に置き換えることができ、また逆に、「正浸透膜ユニット」は「第一の工程」に置き換えることができる。
図1は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の一例を説明するための概念図である。図1を参照し、原料液濃縮システム10の正浸透膜ユニット11は、正浸透膜oを備える。正浸透膜ユニットの内部空間は、正浸透膜oによって、原料液側空間R及び誘導溶液側空間Dの2つに分割されている。正浸透膜ユニットの原料液側空間Rに、濃縮対象物である原料液aが導入される。一方、正浸透膜ユニットの誘導溶液側空間Dには、誘導溶液dが導入される。原料液aは、溶質及び液体媒体bを含有する。誘導溶液dは、誘導物質を含有し、一態様においては溶媒を更に含有する。誘導溶液dの浸透圧は原料液aよりも高くなるように設定されている。正浸透膜ユニットにおいて、原料液aと、誘導溶液dとを、正浸透膜oを介して接触させると、両溶液の浸透圧差を駆動力として、原料液a中の液体媒体bが、正浸透膜oを通過して誘導溶液d側に移動(すなわち拡散)する。これにより、濃縮された原料液である濃縮原料液cと、希釈された誘導溶液である希釈誘導溶液eとが得られる。図1における正浸透膜ユニットでは、原料液aと誘導溶液dとを向流させているが、これらを並流させてもよい。正浸透膜ユニットにおける正浸透処理は、全量ろ過方式によってもクロスフローろ過方式によってもよいが、クロスフローろ過方式によることが、高いろ過流速及び膜汚染抑制の観点から好ましい。
<正浸透膜o>
正浸透膜oは、原料液中の液体媒体bは透過させるが溶質は透過させない又は透過させ難い機能を有する膜である。一態様において、正浸透膜oは、誘導溶液d中の誘導物質が濃縮原料液c中へ逆拡散する機能を有してよい。すなわち、正浸透膜oは、逆浸透膜としての機能も有する膜であってよい。しかしながら、圧力によって液体媒体を除去する逆浸透プロセスと、原料液と誘導溶液との浸透圧の差を利用する正浸透プロセスとは、液体媒体除去に活用される駆動力の違いに起因して、適切な膜構造が異なる。本実施形態の原料液濃縮システムにおいては、原料液中の有用成分の維持等、正浸透プロセスによる利点を良好に得る観点から、正浸透膜oとしては、正浸透機能がより高い膜を使用することが好ましい。
正浸透膜oの形状としては、例えば、中空糸膜、平膜、スパイラル膜等が挙げられる。正浸透膜oは、膜面積が大きくなるため脱水量が増える点より、好ましくは中空糸膜である。正浸透膜oとしては、支持層(支持膜)上に分離活性層を有する複合型の膜が好ましい。上記支持膜は、平膜であっても中空糸膜であってもよい。平膜を支持膜とする場合、支持膜の片面又は両面に分離活性層が配置されてよい。また、中空糸膜を支持膜とする場合、中空糸膜の外表面若しくは内表面、又はこれらの双方の面上に分離活性層が配置されてよい。支持膜は、分離活性層を支持するための膜であり、これ自体は分離対象物に対して実質的に分離性能を示さないことが好ましい。
支持膜としては、公知の微細孔性支持膜、不織布等を包含する任意の膜を使用できる。本実施形態において好ましい支持膜は、微細孔性中空糸支持膜である。この微細孔性中空糸支持膜は、その内表面に、孔径が好ましくは0.001μm以上0.1μm以下、より好ましくは0.005μm以上0.05μm以下の微細孔を有する。一方、微細孔性中空糸支持膜の内表面から膜の深さ方向に外表面までの構造については、透過する流体の透過抵抗を小さくするために、強度を保ち得る限りでできるだけ疎な構造であることが好ましい。この部分の疎な構造は、例えば網状、指状ボイド等、又はそれらの混合構造のいずれかであることが好ましい。
正浸透膜oは、誘導物質の阻止率の点から、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする薄膜層を有することが好ましい。本開示で、主成分とは、全体の50質量%超を占める成分を意味する。正浸透膜が、上記例示の材質の、平膜又は中空糸膜であることが特に好ましい。上記の薄膜層は、一態様において、溶媒は透過させるが、溶質は透過させない、又は透過させ難い機能を有する、分離活性層である。
ポリアミドは、多官能性芳香族酸ハライド及び多官能性芳香族アミンの界面重合により形成されることができる。界面重合は定法に従って実施できる。
多官能性芳香族酸ハライドとは、一分子中に2個以上の酸ハライド基を有する芳香族酸ハライド化合物である。具体的には、例えば、トリメシン酸ハライド、トリメリット酸ハライド、イソフタル酸ハライド、テレフタル酸ハライド、ピロメリット酸ハライド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ハライド、ビフェニルジカルボン酸ハライド、ナフタレンジカルボン酸ハライド、ピリジンジカルボン酸ハライド、ベンゼンジスルホン酸ハライド等を挙げることができ、これらを単独で、又はこれらの混合物を用いることができる。これらの芳香族酸ハライド化合物におけるハロゲン化物イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等を挙げることができる。本実施形態においては、特にトリメシン酸クロリド単独、又はトリメシン酸クロリドとイソフタル酸クロリドとの混合物、若しくはトリメシン酸クロリドとテレフタル酸クロリドとの混合物が好ましく用いられる。
多官能性芳香族アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミノ化合物である。具体的には、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン等を挙げることができ、これらを単独で、又はこれらの混合物を用いることができる。本実施形態においては、特に、m−フェニレンジアミン及びp−フェニレンジアミンから選ばれる1種以上が好適に用いられる。
パーフルオロスルホン酸重合体は、一般に、水素の一部又は全部がフッ素で置換された主鎖骨格に、スルホン酸を有する側鎖を持つ重合体をいう。パーフルオロスルホン酸重合体としては、化学的に安定なカチオン交換樹脂及び化学的に安定なイオン選択透過膜として公知のものを例示でき、例えば、食塩電解、固体高分子型燃料電池、水電解又は各種センサーに用いられている重合体(例えば、ナフィオン(登録商標)(DuPont社製)、アシプレックス(登録商標)(旭化成ケミカルズ社製)、フレミオン(登録商標)(旭硝子社製)などの商標のもと、膜又は溶液の形態で市販されているもの)が挙げられる。
パーフルオロスルホン酸重合体の化学構造としては、特に制限されないが、代表的には下記一般式(1);
Figure 2021052682
{式中、Yは−(CF2−CF(CF3)−O−)m−(CF2n−SO3Hであり、xは0.06〜0.5の数であり、mは0〜2の整数であり、そしてnは1〜6の整数である。}で表される構造を例示できる。なお、式中、−(CF2−CF2)−単位及び−(CF2−CF(OY))−単位の配列は、便宜上連続して記載しているが、ブロックであってもよく、ランダムであってもよく、又はこれらの組合せであってもよい。
正浸透膜としては、中空糸膜が好ましく、特に中空糸膜である多孔性支持膜の内表面に重合体薄膜から成る分離活性層を有する複合型中空糸膜が好ましい。
中空糸膜の外径は、例えば、300μm以上5,000μm以下、好ましくは1,000μm以上4,000μm以下であり、中空糸膜の内径は、例えば、200μm以上4,000μm以下、好ましくは700μm以上1,500μm以下である。理由は定かではないが、中空糸膜の内径が200μm以上であれば、循環運転時の中空糸における圧力が比較的小さくなり、かつ原料成分の接触面積が小さくなる。そのため、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着を防止し易くなる。このような効果は、中空糸膜の内径が700μm以上であると、更に得られ易い。他方、中空糸膜の内径が4,000μm以下、特に1,500μm以下であれば、原料成分の接触面積が適度に大きいため、液体媒体bの分離効率が損なわれ難くなる。
正浸透膜ユニットは、複数の正浸透膜の糸束が好ましくは適当なハウジング内に収納されて構成される、正浸透膜モジュールの形態であることが好ましい。一態様においては、正浸透膜が、複数の中空糸で構成される中空糸糸束を有する膜モジュールであって、中空糸膜が、微細孔性支持膜と、当該微細孔性支持膜の内表面に設けられた、重合体薄膜の分離活性層とを備え、中空糸糸束を有する中空糸膜の膜面積が0.01m2以上であり、そして分離活性層の厚み方向の断面を撮影した走査型電子顕微鏡画像における分離活性層部分の質量を測定する方法により算出された、中空糸糸束の半径方向及び長さ方向における分離活性層の厚みの変動係数が0〜60%であることが好ましい。なお上記変動係数は、具体的には、複合中空糸膜モジュール内の中空糸のモジュール内各箇所における分離活性層の平均厚みのばらつきを表す。変動係数とは各測定箇所の値の標準偏差を平均値で除した値であり、百分率(%)で示される。各測定箇所はモジュールの半径方向の外周部、中間部及び中心部の3か所についてそれぞれモジュールの各両端と中央部を取った計9か所それぞれにつき、n数(すなわち測定回数)は1以上(各箇所のn数は同一にする)である。
各測定箇所における厚みは、長さ5〜100μm程度の測定範囲における平均厚みとして表される。この測定範囲の長さは、一態様において13μmである。本実施形態の複合中空糸膜モジュールにおける分離活性層は、後述するように、好ましくはその表面に微細な凹凸形状を有する。従って、該分離活性層の厚みを評価する際には、各測定箇所において上記測定範囲の平均厚みによって評価することが適切である。本実施形態の複合中空糸膜モジュールにおける分離活性層は、複数の測定箇所において測定された平均値厚みを比較した時に、そのばらつきが小さいものである。平均厚みの評価における上記測定範囲の長さの方向は、中空糸の長さ方向、中空糸の円周方向、又は中空糸の長さ方向に対して斜めの方向とする。平均値の算出に用いる複数の走査型電子顕微鏡画像における測定範囲の長さの方向は、それぞれ同一方向又は異なる方向である。
本発明における複合中空糸膜モジュール内の中空糸の最外周部から中心部にわたる分離活性層の平均厚みの変動率と、モジュール内の中空糸の片末端からもう一方の片末端にわたる分離活性層の平均厚みの変動係数は0〜60%が好ましい。本実施形態の複合中空糸膜モジュールにおける分離活性層の表面が、このような微細凹形状を有し得る機構につき、本発明者らは以下のように推察している。ただし本発明は、以下の理論に拘束されるものではない。すなわち、本実施形態の複合中空糸膜モジュールにおける分離活性層は、好ましくは界面重合によって形成される。界面重合においては、中空糸表面に形成された第1モノマー溶液の液膜が、第2モノマー溶液と接触した際、両者が相溶せずに界面において重合が進行して重合層を形成すると考えられる。その結果、形成された分離活性層は、表面に微細凹凸の多い形状となるものと考えられる。分離活性層の形成を界面重合以外の手法によると、表面微細凹凸の多い形状の分離活性層は通常形成されない。中空糸糸束を有する中空糸膜の膜面積は、より好ましくは1m2以上である。当該膜面積は、安定的に製造できる観点から、例えば30m2以下であってよい。
正浸透膜oの、液体媒体bについての透過流束は、第一の工程開始時における初期透過流束として、0.1L/(m2×hr)以上50L/(m2×hr)以下であることが好ましい。理由は定かではないが、この初期透過流束が0.1L/(m2×hr)以上であれば、液体媒体bの分離効率が損なわれ難く、50L/(m2×hr)以下であれば、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着を防止し易くなる。
本開示における液体媒体bについての透過流束とは、正浸透膜oを通過する液体媒体bの量を、正浸透膜oの単位面積当たり、及び単位時間当たりに割り付けた量を意味しており、下記数式(1)により定義される。
F=L/(M×H) (1)
ここで、Fは液体媒体bについての透過流束(L/(m2×hr))であり、Lは正浸透膜oを透過した液体媒体bの量(単位:L)であり、Mは正浸透膜oの表面積(単位:m2)であり、Hは時間(単位:hr)である。
液体媒体bが水である場合の透過流束は、一般に「透水量」と呼ばれる。
本開示における誘導溶液に含まれる誘導物質の透過流束は、正浸透膜oを通過する誘導溶液中の誘導物質量を、正浸透膜oの単位面積当たり、及び単位時間当たりに割り付けた量を意味しており、下記数式(2)により定義される。
F’=L’/(M×H) (2)
ここで、F’は誘導溶液中の誘導物質についての透過流束[g/(m2×hr)]、L’は正浸透膜oを透過した誘導物質の量(単位:g)、Mは正浸透膜oの表面積(単位:gm2)、Hは時間(単位:ghr)である。
正浸透膜ユニットにおける、誘導溶液中の誘導物質を原料液中へ移動(逆拡散)させる透過流束と、原料液中から誘導溶液中に移動(拡散)する液体媒体の透過流束との割合(誘導物質の透過速束/液体媒体の透過流束)(本開示で、逆拡散/フラックス比ともいう。)は、下記数式(3)により定義される。
R=F’/F (3)
ここで、Rは誘導溶液中の誘導物質を原料液中へ移動(すなわち逆拡散)させる透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に移動(すなわち拡散)する液体媒体の透過流束Fに対する割合[単位:g/L]である。
正浸透膜ユニットにおいて、上記逆拡散/フラックス比は、好ましくは、0.01g/L以上、3g/L以下である。理由は定かではないが、この比が、0.01g/L以上であれば、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が防止される。3g/L以下であれば、原料液中へ移動する誘導溶液中の誘導物質量が比較的小さいため、原料液の純度を確保でき、原料液の風味低下を防止できる。上記の比は、より好ましくは、0.015g/L以上1g/L以下である。
なお、原料液濃縮システム10は、濃縮液流路の下流に、正浸透膜ユニット11で得られた濃縮原料液cを加熱して、更に濃縮された加熱濃縮物fを得る加熱濃縮ユニット12を備えてよい。一態様において、加熱濃縮ユニット12は加熱蒸留ユニットである。加熱蒸留は従来公知の任意の技術に従ってよい。上記の濃縮原料液c又は加熱濃縮物fを、本開示の濃縮液として回収できる。
図2は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の別の一例を説明するための概念図である。図2を参照し、原料液濃縮システム20は、正浸透膜ユニット11で得られた濃縮原料液cを、正浸透膜ユニット11に原料液aとして再使用する循環機構rを有している他は図1に示す原料液濃縮システム10と同様である。この場合、原料液aを正浸透膜ユニット11に通す回数(すなわち、正浸透膜ユニットで得られた濃縮原料液cを、正浸透膜ユニットにおける原料液aとして再使用する回数)は任意である。所定の再使用回数の後、濃縮原料液cをそのまま、又は前述の加熱濃縮ユニット12を介して、濃縮液として回収する。
図3は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。図3を参照し、原料液濃縮システム30は、誘導溶液再生ユニット33を更に有している他は図1に示す原料液濃縮システム10と同様である。誘導溶液再生ユニット33においては、正浸透膜ユニット11で得られた希釈誘導溶液eから液体媒体bを除去して濃縮し、再生誘導溶液gを得る。システムは、得られた再生誘導溶液gが誘導溶液再生ユニット33から再び誘導溶液dとして循環されるように構成されていてよい。誘導溶液再生ユニット33は、希釈誘導溶液eからの液体媒体bの除去のための、公知の濃縮機構、例えば蒸発機構等であってよい。なお、再生誘導溶液gに液体媒体bの一部が含まれてもよい。例えば、液体媒体bが水を含む多成分系であり、かつ多成分が共沸成分である場合は、液体媒体bの除去は困難となるため、再生誘導溶液gに液体媒体bの一部が含まれるが、システム上問題にはならない。
図4は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。図4を参照し、原料液濃縮システム40は、図3に示す原料液濃縮システム30とは別の態様の誘導溶液再生ユニット43を有している他は図1に示す原料液濃縮システム10と同様である。誘導溶液再生ユニット43では、先ず、誘導溶液dから溶媒を除去して濃縮誘導溶液hを得る。システムは、誘導溶液再生ユニット43で得られた濃縮誘導溶液hと、正浸透膜ユニット11で得られた希釈誘導溶液eとを混合して混合物(再生誘導溶液g)を生成する混合機構44を更に有してよく、この再生誘導溶液gを誘導溶液dとして使用してよい。誘導溶液再生ユニット43は、誘導溶液dからの溶媒の除去のための、公知の濃縮機構、例えば蒸発機構等であってよい。混合機構44は、例えばバッファタンクであってよい。
なお、濃縮誘導溶液hに溶媒の一部が含まれてもよい。例えば、溶媒が水を含む多成分系であり、多成分が共沸成分である場合は、溶媒の除去は困難となるため、濃縮誘導溶液hに溶媒の一部が含まれるが、システム上問題にはならない。
図5は、本発明の原料液濃縮システムの実施態様の更に別の一例を説明するための概念図である。図5を参照し、原料液濃縮システム50は、図2に示した循環機構rと、図4に示した誘導溶液再生ユニット43及び任意の混合機構44とを共に有する他は図1に示す原料液濃縮システム10と同様である。又は、図5に示す原料液濃縮システム50において、誘導溶液再生ユニット43及び任意の混合機構44に代えて、図3に示した誘導溶液再生ユニット33を採用してもよい。
≪原料液濃縮システムの各要素≫
次に、本実施形態の原料液濃縮システムを構成する各要素について、以下に詳説する。
<原料液a>
原料液aとしては、≪濃縮液≫の項において説明した原料液を使用できる。原料液は、溶質及び液体媒体bを含有する流体であって、本実施形態の原料液濃縮システムによって濃縮されることが予定されているものである。本実施形態の原料液濃縮システムでは、原料液aの溶質組成がほぼそのまま維持されつつ液体媒体が除去された濃縮液が得られる。そのため、本実施形態の原料液濃縮システムを食料品又はその原料の濃縮に適用すると、食料品又はその原料の品質を維持した状態でこれらを濃縮することが可能となる。
<液体媒体b>
原料液aに含まれる液体媒体bは、典型的には水であるが、一態様において、エタノール等を含む場合がある。
<誘導溶液d>
誘導溶液dは、誘導物質を含有する。誘導溶液dは、原料液aよりも高い浸透圧を持ち、かつ、正浸透膜oを著しく変性させない流体である。
(誘導物質)
誘導物質は、原料液の組成との対比において当該原料液よりも高い浸透圧を誘導溶液にもたらし得る物質であればよく、特に、水に対する溶解性が高い物質が、浸透圧調整の簡便さの点で好ましい。本実施形態で使用可能な誘導物質としては、例えば塩、糖、アルコール、重合体等を挙げることができる。一態様において、誘導溶液は、塩、糖、アルコール、及び重合体からなる群から選択される1種以上を含む溶液であってよい。なかでも、誘導溶液は、高い浸透圧を持つ点で、塩として無機塩を含むことが好ましい。
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等を;
糖としては、例えば、ショ糖,果糖,ブドウ糖等の一般的な糖類、及びオリゴ糖,希少糖等の特殊な糖類を;
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のモノアルコール;エチレングルコール、プロピレングリコール等のグリコール等を挙げることができる。
重合体としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等の重合体、及びこれらの共重合体等を挙げることができる。
誘導溶液dにおける誘導物質の濃度は、誘導溶液dの浸透圧が原料液aの浸透圧よりも高くなるように設定される。誘導溶液dの浸透圧は、原料液aの浸透圧よりも高ければ、その範囲内で変動しても構わない。
二つの液体間の浸透圧差を判断する方法としては、例えば、以下のいずれかの方法が挙げられる。
(1)二つの液体を混合後、二相分離する場合:二相分離後に、体積が増えた方の液体の浸透圧が高いと判断する、又は、
(2)二つの液体を混合後、二相分離しない場合:正浸透膜oを介して二つの液体を接触させ、一定時間の経過後に体積が大きくなった液体の浸透圧が高いと判断する。このときの一定時間とは、その浸透圧差に依存するが、一般的には数分から数時間の範囲である。
(誘導溶液dの溶媒)
誘導溶液dに含まれてよい溶媒は、水、エタノール等であってよいが、原料液aから分離すべき液体媒体と同種であることが好ましく、この観点で好ましくは水である。
<濃縮原料液c>
正浸透膜ユニットにおいて濃縮されて得られる濃縮原料液cは、原料液a中の液体媒体以外の成分が良好に維持されつつ液体媒体bの少なくとも一部が選択的に分離されることにより得られる。本実施形態の原料液濃縮システムでは、原料液aから分離される液体媒体bの量又は割合を任意に制御することができる。
本実施形態の正浸透膜ユニットによると、原料液aの浸透圧が誘導溶液dの浸透圧を超えない限り、原料液aを当該原料液中の溶質の飽和濃度付近まで濃縮することが可能である。また、原料液aを、正浸透膜ユニットに導入する前に逆浸透膜で濃縮することにより、正浸透膜ユニットの滞留時間(すなわち第一の工程の濃縮時間)を短縮することができる。また、正浸透膜ユニットでの濃縮(第一の工程)後に後述の加熱濃縮ユニットでの加熱濃縮(第二の工程)を経ることにより、原料液aの量が多い場合であっても、加熱蒸留の時間を短縮することができる。このように、原料液aの浸透圧が十分に高くなるまで逆浸透膜による濃縮及び正浸透膜ユニットの正浸透膜による濃縮を行うことにより、加熱濃縮ユニットにおける加熱蒸留工程を効率化でき、加熱蒸留における時間的及びエネルギー的な負荷を低減することができる。
正浸透膜を用いた濃縮によれば、原料液の液体媒体以外の成分を高度に維持しつつ高い濃縮倍率を得ることが可能であり、また誘導溶液の組成(誘導物質の種類及び量)を変更することにより原料液の濃縮倍率を任意に設計できる。したがって、本実施形態の原料液濃縮システムが適用可能な原料液の種類は多様であり、実質的にあらゆる液体の濃縮が可能である。すなわち、本実施形態によると、従来技術を適用することが不可能な又は困難な場合でも、高品質の濃縮液を高効率に得ることができる。
<正浸透膜ユニットへの原料液a及び誘導溶液dの導入>
正浸透膜ユニットの原料液側空間Rには濃縮対象物である原料液aが導入され、誘導溶液側空間Dには誘導溶液dが導入される。これらの流れの方向は、向流でも並流でもよい。原料液側空間Rに導入される原料液aの線速は、0.03cm/s以上15cm/s以下とすることが好ましい。理由は定かではないが、0.03cm/s以上であれば、原料液が膜に接触する時間が長すぎず、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が起こり難い。線速が15cm/s以下であれば、膜への押し付け圧力が大きくなりすぎず、原料液に含まれる溶質の膜表面への固着が起こり難い。
<原料液a及び誘導溶液dの温度>
正浸透膜ユニットの原料液側空間Rに導入される原料液aの温度は、好ましくは5℃以上50℃以下である。理由は定かではないが、原料液aの温度が5℃以上であれば運転中の透過流速の低下を回避し易く長期運転が可能であり、50℃以下であれば原料液a中の成分の一部が変性することを回避し易く、風味の低下を抑制できる。原料液aの温度は、より好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、40℃以下である。一態様において、原料液濃縮システムは、原料液の温度を上記範囲に調整する温度制御機構を更に備える。
正浸透膜ユニットの誘導溶液側空間Dに導入される誘導溶液dの温度は、好ましくは5℃以上60℃以下であり、より好ましくは10℃以上50℃以下である。理由は定かではないが、誘導溶液dの温度が5℃以上又は60℃以下である場合、正浸透膜oを介して誘導溶液dから原料液aへ過剰量の誘導物質が移動することを回避し易い。
<誘導溶液再生ユニット>
一態様において、原料液濃縮システムは、希釈された誘導溶液から液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成する再生機構を更に有する。一態様において、再生誘導溶液は、誘導溶液流路に再循環される。再生機構としては、
(1)図3に示す誘導溶液再生ユニット33、すなわち、希釈誘導溶液eから液体媒体bを除去して、希釈誘導溶液eの濃縮物である再生誘導溶液gを得て、得られた再生誘導溶液gを誘導溶液dとして使用するように構成されたユニット、又は
(2)図4に示す誘導溶液再生ユニット43、すなわち、誘導溶液dから溶媒を除去して、誘導溶液dの濃縮物である濃縮誘導溶液hを得て、得られた濃縮誘導溶液hと希釈誘導溶液eとを混合して混合物(再生誘導溶液g)を得て、得られた再生誘導溶液gを誘導溶液dとして使用するように構成されたユニット、
が挙げられる。
一態様において、再生機構は、液体媒体蒸発機構、例えば、蒸留塔、正浸透膜、又は膜蒸留ユニットであってよい。
蒸留塔(すなわち蒸留プロセス)を用いる場合、希釈誘導溶液e又は誘導溶液dを所定の温度に調整した後、蒸留塔に送入し、塔頂部から液体媒体bを得るとともに、塔底部からは、希釈誘導溶液から液体媒体bが除去されて生成した再生誘導溶液g、又は誘導溶液dから溶媒が除去されて生成した濃縮誘導溶液hを得ることができる。
膜蒸留ユニットは、半透膜によって液相部と気相部とに分割された分離室を有する。膜蒸留ユニットの液相部に希釈誘導溶液e又は誘導溶液dを導入し、気相部を減圧とすることにより、希釈誘導溶液eに含有される液体媒体b又は誘導溶液dに含有される溶媒が、液相部から半透膜を通過して減圧の気相部に移動する。これによって希釈誘導溶液eから液体媒体bを除去し、又は誘導溶液dから溶媒を除去して、再生誘導溶液g又は濃縮誘導溶液hを得ることができる。
膜蒸留ユニットが有する半透膜の形状としては、例えば、中空糸膜、平膜、スパイラル膜等が挙げられる。平膜は、単一の層から構成されるものであってもよいし、支持層と、該支持層上の分離活性層とを有するものであってもよい。中空糸膜は、例えば、単一の層から構成される中空糸であってもよいし、中空糸状の支持層と、該支持層の外表面若しくは内表面、又はこれらの双方の面上の分離活性層とを有するものであってもよい。半透膜における支持層及び分離活性層の素材は、それぞれ、正浸透膜ユニットにおける正浸透膜oについて上記に例示した素材から選択される任意のものであってよい。
半透膜の、液体媒体bについての透過流束は、1kg/(m2×hr)以上200kg/(m2×hr)以下であることが好ましい。この透過流束が1kg/(m2×hr)以上であれば、液体媒体bの効率的な分離が損なわれ難く、200kg/(m2×hr)以下であれば、誘導溶液dから半透膜を通過して液体媒体bへ過剰量の誘導物質が移動することを回避し易い。なおこの透過流束は、正浸透膜ユニットにおける正浸透膜oの、液体媒体bについての透過流束と同様に定義される。
再生機構としては、設備サイズが小さい点で、正浸透膜、又は半透膜を用いる膜蒸留ユニットが好ましく、希釈誘導溶液eから液体媒体bへ、又は誘導溶液dから溶媒への誘導物質の移動を抑制できる点で、半透膜を用いる膜蒸留ユニットがより好ましい。
<膜蒸留ユニットに導入される希釈誘導溶液e又は誘導溶液dの温度>
希釈誘導溶液e又は誘導溶液dは、液相部に導入される前に、20℃以上90℃以下の範囲に温度調整されていることが好ましい。この温度が20℃以上であれば、膜蒸留による液体媒体b又は溶媒の分離の効率が損なわれ難く、90℃以下であれば、希釈誘導溶液e又は誘導溶液dに含まれる誘導物質が、半透膜を通過して液体媒体b又は溶媒へ移動する量の増大を回避し易い。
希釈誘導溶液e又は誘導溶液dの温度制御のためには、熱源として、例えば熱交換器、又は産業プロセス等の排熱を用いることができる。熱源として排熱を利用すると、液体媒体b又は溶媒の分離のために新たに消費されるエネルギー量を削減できるため、好ましい。
<膜蒸留ユニットにおける気相部>
膜蒸留ユニットの気相部は、所定の圧力まで減圧されていることが好ましい。気相部の圧力は、装置のスケール、誘導溶液dの濃度、所望の液体媒体bの生成速度等に応じて適宜に設定されてよいが、例えば、0.1kPa以上80kPa以下とすることが好ましく、1kPa以上50kPa以下とすることがより好ましい。膜蒸留ユニットの気相部を減圧するための減圧装置としては、例えば、ダイアフラム真空ポンプ、ドライポンプ、油回転真空ポンプ、エジェクタ、アスピレーター等が挙げられる。
<誘導溶液再生ユニットで得られる生成物>
図3に示す誘導溶液再生ユニットとして膜蒸留ユニットを用いる場合、希釈誘導溶液eから液体媒体bが分離されて、濃縮された希釈誘導溶液である再生誘導溶液gが生成し、膜蒸留ユニットから排出される。得られた再生誘導溶液gは、必要に応じて希釈誘導溶液eと混合されて所定の濃度に調整されたうえで、誘導溶液dとして再利用することができる。再生誘導溶液gの再利用の際、冷却装置を用いて再生誘導溶液gの温度を調整してもよい。
図4に示す誘導溶液再生ユニットとして膜蒸留ユニットを用いる場合、誘導溶液dから溶媒が分離されて、濃縮された誘導溶液である濃縮誘導溶液hが生成し、膜蒸留ユニットから排出される。得られた濃縮誘導溶液hは、希釈誘導溶液eと混合されて所定の濃度に調整されて再生誘導溶液gとなる。再生誘導溶液gをそのまま誘導溶液dとして、又は再生誘導溶液gを誘導溶液に混合した混合物を誘導溶液dとして再利用することができる。濃縮誘導溶液hの再利用の際、冷却装置を用いて濃縮誘導溶液hの温度を調整してもよい。
上記における冷却装置としては、例えば、チラー、熱交換器等を用いることができる。
これらの誘導溶液再生ユニットにおいて誘導溶液dから分離された溶媒は、必要に応じて再利用してよい。
≪原料液の濃縮方法(食料品の製造方法)≫
本発明の一態様は、前述したような原料液の濃縮方法(すなわち、原料液の濃縮液である食料品の製造方法)を提供する。該方法は、糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を正浸透膜に通すことによって原料液を濃縮する正浸透工程を含む。
一態様においては、正浸透工程を、正浸透膜、並びに該正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを用いて行う。一態様においては、正浸透工程において、原料液を原料液側空間に供給し、誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を誘導溶液側空間に供給し、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に拡散させるとともに誘導溶液中の誘導物質を原料液中に逆拡散させることによって、原料液を濃縮するとともに誘導溶液を希釈する。正浸透工程で用いる正浸透膜ユニットの構成、誘導溶液、逆拡散/フラックス比(F’/F比)等の好適例は、≪原料液濃縮システム≫で例示したのと同様である。一態様において、正浸透工程はクロスフローろ過方式で行ってよい。一態様に係る方法において、原料液の温度は、好ましくは、少なくとも正浸透工程において、より好ましくは全工程を通じて、≪原料液濃縮システム≫で例示した範囲(例えば5℃以上50℃以下)に維持される。
一態様に係る方法は、正浸透工程で希釈された誘導溶液から液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成し、再生誘導溶液を誘導溶液として再利用する再生工程(例えば液体媒体蒸発工程)を更に含む。また一態様に係る方法は、正浸透工程(第一の工程)の後に、原料液の濃縮液を更に加熱濃縮する加熱濃縮工程(第二の工程)を更に含む。再生誘導溶液の生成、及び加熱濃縮には、≪原料液濃縮システム≫で例示したような再生機構(例えば液体媒体蒸発機構)及び加熱濃縮ユニットをそれぞれ使用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。各物性は、以下の方法により測定した。
(1)誘導物質の逆拡散速度(g/m2/hr)
誘導溶液中の誘導物質を原料液中へ移動させる、誘導物質の逆拡散速度は、以下の方法により測定した。運転終了後、濃縮原料液に含まれる誘導物質の量と、誘導溶液に含まれる誘導物質の量とを、Thermo Fishier Scientific社製のICP−MS、形式「iCAP Q」を用いて測定した。下記数式(3)に従って、運転により移動した誘導物質の透過流束を計算した。
R=F’/F (3)
ここで、Rは誘導溶液中の誘導物質を原料液中へ移動(すなわち逆拡散)させる透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に移動(すなわち拡散)する液体媒体の透過流束Fに対する割合[g/L]である。
(2)循環線速度(cm/s)
循環機構における、濃縮原料液の線速度を、下記数式に従って計算した。
X=Y/Z
ここで、Xは濃縮原料液の線速度[cm/s]、Yは濃縮原料液の流速[cm3/s]、Zは総中空糸内断面積[cm2]である。濃縮原料液の流速は、株式会社キーエンス社製の形式「FD−X」を用いて測定した。
[実施例1]
以下の実施例は、図5に示す構成の原料液濃縮システムを使用して実施した。
≪原料液濃縮システムの作製≫
<正浸透膜oを有する正浸透膜ユニットの作製>
(1)中空糸状支持膜モジュールの作製
ポリエーテルスルホン(PES:BASF社製、商品名「Ultrason」)をN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬(株)製)に溶解して20質量%の中空糸紡糸原液を調製した。二重紡口を装備した湿式中空糸紡糸機に上記の原液を充填し、水を満たした凝固槽中に押し出し、相分離により中空糸を形成した。得られた中空糸は巻き取り機に巻き取った。得られた中空糸の外径は1.0mm、内径は0.7mm、内表面の微細孔の径は0.05μmであった。この中空糸を支持層として用いた。
上記中空糸支持層130本を、2cm径、10cm長の円筒状プラスチックハウジングに充填し、両端部を接着剤で固定することにより、有効膜内表面積0.023m2の中空糸支持層モジュールを作製した。
(2)正浸透膜ユニットの作製
0.5L容器に、m−フェニレンジアミン10g及びラウリル硫酸ナトリウム0.8gを入れ、さらに純水489.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第1溶液を0.5kg調製した。
別の0.5L容器に、トリメシン酸クロリド0.8gを入れ、n−ヘキサン399.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第2溶液0.4kgを調製した。
微細孔性中空糸支持膜モジュールのコア側(中空糸の内側)に第1溶液を充填し、30
分静置した後に液を抜いて、中空糸の内側に第1溶液の薄い液膜を形成した。
次に、コア側圧力調整装置によりコア側圧力を常圧に設定し、シェル側圧力調整装置によりシェル側圧力を絶対圧として10kPaの減圧に設定した。この状態で30分静置した後、この圧力を維持したまま、第2溶液送液ポンプにより第2溶液をコア側に1.5L/分の流量で3分送液し、界面重合を行った。重合温度は25℃とした。
次いで、中空糸膜モジュールを装置から外して、コア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを飛ばした。さらに、シェル側及びコア側の双方を純水により洗浄することにより、正浸透複合中空糸膜モジュールを作製した。
次いで、中空糸支持層モジュールのコア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを蒸散除去した。さらに、シェル側及びコア側の双方を純水により洗浄することにより、中空糸支持層の内面にポリアミドから成る分離活性層を有する中空糸状正浸透膜oのモジュールである正浸透膜ユニットを作製した。
<誘導溶液再生ユニットの作製>
平均一次粒径0.016μm、比表面積110m2/gの疎水性シリカ(日本アエロジル社製、品名「AEROSIL−R972」)23質量部、フタル酸ジオクチル(DOP)31質量部、及びフタル酸ジブチル(DBP)6質量部をヘンシェルミキサーで混合した後、さらに重量平均分子量が310,000のポリフッ化ビニリデン(SOLVAY社製、品名「Solef6010」)40質量部を添加し、再度ヘンシェルミキサーで混合して混合物を得た。この混合物を2軸混練押し出し機によりペレット化した。
得られたペレットを、2軸混練押出機により240℃にて溶融混練し、中空糸状に押出して中空繊維を得た。このとき、押出機先端のヘッド内の押出口に、中空糸成形用紡口を装着し、溶融物押出用円環穴から混練溶融物を押し出し、同時に、溶融物押出用円環穴の内側にある中空部形成流体吐出用の円形穴から窒素ガスを吐出させることにより、中空糸状に押出しを行った。
中空糸状物は、空走距離20cmにて水浴(40℃)中に導入し、20m/分の速度で巻き取った。
得られた中空糸状物を、連続的に一対の第一の無限軌道式ベルト引取機で20m/分の速度で引き取り、空間温度40℃に制御した第一の加熱槽(0.8m長)を経由させた後に、第二の無限軌道式ベルト引き取り機で40m/分の速度で引き取り、長さ方向に2.0倍に延伸した。次いで、空間温度80℃に制御した第二の加熱槽(0.8m長)を経由させた後に、20℃の冷却水槽の水面にて周期的に折り曲げつつ冷却し、その後、第三の無限軌道式ベルト引取機で30m/分の速度で引き取り、延伸糸を長さ方向に1.5倍まで収縮(緩和)させた後、周長約3mの綛(カセ)で巻き取った。冷却水槽の水面における周期的な折り曲げは、一対の周長が約0.20mであり、かつ4山の凹凸ロールを用い、170rpmの回転速度で中空糸状物を連続的に挟むことにより行った。
上記処理後の中空糸状物を塩化メチレン中に浸漬して、DOP及びDBPを抽出除去した後、乾燥させた。次いで、中空糸状物を、50質量%エチルアルコール水溶液中に浸漬した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃にて1時間浸漬して、シリカを抽出除去した。その後、水洗し、乾燥して中空糸膜を得た。得られた中空糸の外径は1.25mm、内径は0.70mm、内表面の微細孔の径は0.1μm、であった。この中空糸を多孔質膜として用いた。
上記中空糸から成る多孔質膜70本を、2cm径、10cm長の円筒状プラスチックハウジングに充填し、両端部を接着剤で固定することにより、有効膜内表面積0.012m2の中空糸状多孔質膜のモジュールである誘導溶液再生ユニットを作製した。
処理液として純水を用い、誘導溶液として3.5質量%食塩水を用いて測定したこのユニットの水についての透過流束(透水量)は、20.02L/(m2×hr)であった。
実施例1では、Brix値が2.0であるメープル樹液の濃縮は、循環機構を用いて実施した。
(1)正浸透工程
実施例1では、図5に示した構成の原料液濃縮システムを使用して上記のメープル樹液の濃縮を行った。図5に示した原料液濃縮システムの正浸透膜ユニットに、原料液a(メープル樹液)を線速3.3cm/sで、誘導溶液dを線速1.9cm/sで、それぞれ流した。このとき、原料液aの温度が25℃に保たれ、クロスフロー方式でろ過が行われるように設定した。誘導溶液dとしては、誘導物質として塩化マグネシウム20質量%を含有する水溶液を使用した。第一の工程の実施時間は、原料液aを、循環機構で循環させながらBrix値70まで濃縮した。
(2)誘導溶液再生工程
誘導溶液の誘導物質濃度を一定に保つために、上記で作製した誘導溶液再生ユニットを用いて誘導溶液再生工程を行った。誘導溶液再生ユニットに、誘導溶液dを流速600ml/分にて流し、誘導溶液再生ユニットの気相部の圧力が絶対圧で10kPaになるように真空ポンプで調節して、膜蒸留を行い、濃縮誘導溶液hを得た。
正浸透工程で得られた希釈誘導溶液eと、膜蒸留で得られた濃縮誘導溶液hとを、バッファタンク(混合機構として)中で混合して誘導溶液dを調製(再生)し、正浸透工程に循環させて使用した。
<評価>
(濃度の分析)
原料液、及び得られた濃縮液の濃度を、(株)アタゴ製の糖度計「PAL−S」によるBrix値として測定した。
(原料液aから誘導溶液dへ移動した液体媒体bの初期透過流束の測定)
運転開始1分後、運転中に移動した原料液aから誘導溶液dへ透過した液体媒体bの量(L)をエー・アンド・デイ社製電子天秤(GX−12K)にて測定した。下記数式(1)に従って、運転により移動した液体媒体の初期透過流束を計算した。
F=L/(M×H) (1)
ここで、Fは液体媒体bについての透過流束(L/(m2×hr))であり、Lは正浸透膜oを透過した液体媒体bの量(単位:L)であり、Mは正浸透膜oの表面積(単位:m2)であり、Hは時間(単位:hr)である。
(原料液aから誘導溶液dへ移動した液体媒体bの透過流束の測定)
運転終了直後、運転中に移動した原料液aから誘導溶液dへ透過した液体媒体bの量(L)をエー・アンド・デイ社製電子天秤(GX−12K)にて測定した。上記数式(1)に従って、運転により移動した液体媒体の透過流束を計算した。
(原料液aへ移動した誘導溶液dに含まれる誘導物質の透過流束の測定)
運転終了後、濃縮原料液に含まれる誘導物質の量と、誘導溶液に含まれる誘導物質の量とを、Thermo Fishier Scientific社製のICP−MS、形式「iCAP Q」を用いて測定した。下記数式(2)に従って、運転により移動した誘導物質の透過流束を計算した。
F’=L’/(M×H) (2)
ここで、F’は誘導溶液中の誘導物質についての透過流束[g/(m2×hr)]、L’は透過した誘導物質の量(単位:g)、Mは正浸透膜の表面積(単位:gm2)、Hは時間(単位:ghr)である。
上記の計算結果を用いて、上記数式(3)に従って、誘導溶液から原料液へ透過した誘導物質の透過流束の、原料液から誘導溶液中に透過した液体媒体の透過流束に対する割合を計算した。計算結果を表1に示す。
(濃縮液の吸光度)
糖度計(アタゴ社 PAL−1)を蒸留水で0%に補正した後に、試料を蒸留水(富士フィルム和光純薬、046−16971)で適宜希釈し、糖度計により目的の糖度に調整した。調整した試料について限外ろ過フィルター(アミコンウルトラ−0.5、PLGCウルトラセル−10メンブレン、10kDa、UFC501008)を用いろ過した後、ろ液について分光光度計用のスクリューキャップ付き二面透明石英セル(ジーエルサイエンス株式会社 S15−UV−10、光路長10mm、光路幅10mm)に試料を十分量入れ、UV/visスペクトルの測定を行った。ブランクは前述の蒸留水を用いた。UV/visの分析条件は、下記のとおりである。
−UV/vis条件−
UV/vis装置:日本分光 JASCO V−770
測定モード:Abs
測定波長 : 800〜200nm
データ取込間隔:0.5nm
光源:D2、WI
光源切換:340nm
補正:ベースライン
(風味の官能評価)
得られた濃縮液を純水で希釈して濃縮前の濃度に調整した濃縮液還元液をパネラー5人の賞味に供し、以下の基準により風味を評価した。
A:パネラー5人全員が原料本来の風味が強いと判断した。
B:原料本来の風味が強いと判断したパネラーが1人以上4人以下であった。
C:原料本来の風味が強いと判断したパネラーが1人もいなかった。
(長期運転性)
以下の基準により評価した濃縮システムの長期運転性を、表1に示した。
A:1,000時間問題なく運転できた。
B:500時間以上1,000時間未満の範囲では、問題なく運転できた。
C:500時間の運転ができなかった。
[実施例2]
原料液aをBrix値が2.0のココナッツ液体胚乳とし、Brix値50まで濃縮した他は実施例1と同様に実施した。
[実施例3]
界面重合を以下のように行った以外は、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
0.5L容器に、m−フェニレンジアミン10g及びラウリル硫酸ナトリウム0.8gを入れ、さらに純水489.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第1溶液を0.5kg調製した。別の0.5L容器に、トリメシン酸クロリド0.8gを入れ、n−ヘキサン399.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第2溶液0.4kgを調製した。
上記で製造した中空糸支持層モジュールのコア側(中空糸の内側)に第1溶液を充填し、30分静置した後に液を抜いて、中空糸の内側に第1溶液の薄い液膜を形成した。この状態で、第2溶液をコア側に0.15L/分の流量で30分送液し、界面重合を行った。重合温度は25℃とした。次いで、中空糸支持層モジュールのコア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを蒸散除去した。さらに、この正浸透膜ユニットの内部に80℃の温水を流入させ、攪拌容器の中で10時間浸漬させた。10時間経過後、温水を取り除き、正浸透膜ユニットを作製した。結果を表1に示す。
[実施例4]
界面重合を以下のように行った以外は、実施例1と同一条件で、濃縮、評価を実施した。
0.5LL容器に、m−フェニレンジアミン10g及びラウリル硫酸ナトリウム0.8gを入れ、さらに純水489.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第1溶液を0.5kg調製した。別の0.5L容器に、トリメシン酸クロリド0.8gを入れ、n−ヘキサン399.2gを加えて溶解し、界面重合に用いる第2溶液0.4kgを調製した。
微細孔性中空糸支持膜モジュールのコア側(中空糸の内側)に第1溶液を充填し、30
分静置した後に液を抜いて、中空糸の内側に第1溶液の薄い液膜を形成した。次に、コア側圧力調整装置によりコア側圧力を常圧に設定し、シェル側圧力調整装置によりシェル側圧力を絶対圧として10kPaの減圧に設定した。この状態で30分静置した後、この圧力を維持したまま、第2溶液送液ポンプにより第2溶液をコア側に1.5L/分の流量で0.5分送液し、界面重合を行った。重合温度は25℃とした。
次いで、中空糸膜モジュールを装置から外して、コア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを飛ばした。さらに、シェル側及びコア側の双方を純水により洗浄することにより、正浸透複合中空糸膜モジュールを作製した。
次いで、中空糸支持層モジュールのコア側に50℃の窒素を30分流してn−ヘキサンを蒸散除去した。さらに、シェル側及びコア側の双方を純水により洗浄することにより、中空糸支持層の内面にポリアミドから成る分離活性層を有する中空糸状の正浸透膜oのモジュールである正浸透膜ユニットを作製した。結果を表1に示す。
[実施例5]
正浸透工程の前に逆浸透工程を行った。逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で作製した正浸透膜ユニットを用いてBrix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例6]
正浸透工程の前に逆浸透工程を行った。逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次に、実施例3と同一条件で作製した正浸透膜ユニットを用いてBrix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例7]
正浸透工程の前に逆浸透工程を用いた。逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次に、実施例4と同一条件で作製した正浸透膜ユニットを用いてBrix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例8]
原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値60まで正浸透工程で濃縮した他は実施例1と同様に実施した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例9]
原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値50まで正浸透工程で濃縮した他は実施例1と同様に実施した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例10]
正浸透工程の前に逆浸透工程を行った。逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次にBrix値60まで正浸透工程で濃縮した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例11]
正浸透工程の前に逆浸透工程を行った。逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次にBrix値50まで正浸透工程で濃縮した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[実施例12及び13]
原料液aの温度を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例5と同一条件で、評価を実施した。
[比較例1]
正浸透工程の代わりに、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行った以外は、実施例1と同一条件で、濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[比較例2]
逆浸透膜としては日東電工(株)製の品番「NTR−759HR」)を用い、2.0MPaの操作圧力にて原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで濃縮した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
[比較例3]
原料液aであるBrix値が2.0のメープル樹液をBrix値20まで正浸透工程で濃縮した他は実施例1と同様に実施した。次に、常圧蒸留装置を用い、110℃にて蒸留を行い、Brix値70まで濃縮した。次に、実施例1と同一条件で、評価を実施した。
尚、表中における、プロセス欄中の略称は、それぞれ以下の意味である。
FO:正浸透工程
RO:逆浸透工程
蒸留:常圧蒸留工程
Figure 2021052682
本開示の原料液濃縮システム及び原料液濃縮方法は、糖を含む食料品の製造に好適に適用され得る。
10,20,30,40,50 原料液濃縮システム
11 正浸透膜ユニット
12 加熱濃縮ユニット
33,43 誘導溶液再生ユニット
44 混合機構
r 循環機構

Claims (25)

  1. 糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液の濃縮液である食料品であって、
    前記濃縮液が、Brix値50以上、及び紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.1以上1.0以下を有する、食料品。
  2. 前記濃縮液が、前記紫外可視分光光度計測定における450nmでの吸光度0.2以上0.8以下を有する、請求項1に記載の食料品。
  3. 前記原料液が、メープル樹液及びココナッツ液体胚乳からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の食料品。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の食料品を製造するための原料液濃縮システムであって、正浸透膜、並びに前記正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを備える、原料液濃縮システム。
  5. 前記原料液濃縮システムが、
    糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を前記原料液側空間に供給する原料液流路と、
    誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を前記誘導溶液側空間に供給する誘導溶液流路と、
    前記正浸透膜ユニットから、原料液の濃縮液を取り出す濃縮液流路と、
    前記正浸透膜ユニットから、希釈された誘導溶液を取り出す希釈誘導溶液流路と、
    を更に備え、
    前記正浸透膜は、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に拡散させるとともに、誘導溶液中の誘導物質を原料液中に逆拡散させることによって、原料液を濃縮するとともに誘導溶液を希釈し、
    誘導溶液から原料液中に逆拡散する前記誘導物質の透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に拡散する前記液体媒体の透過流束Fに対する割合である逆拡散/フラックス比(F’/F比)が、0.01g/L以上、3g/L以下である、請求項4に記載の食料品濃縮システム。
  6. 前記逆拡散/フラックス比(F’/F比)が0.015g/L以上1g/L以下である、請求項5に記載の原料液濃縮システム。
  7. 前記希釈された誘導溶液から前記液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成する再生機構を更に有し、前記再生誘導溶液が前記誘導溶液流路に再循環される、請求項5又は6に記載の原料液濃縮システム。
  8. 前記再生機構が、液体媒体蒸発機構である、請求項7に記載の食料品濃縮システム。
  9. 前記誘導物質が無機塩である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の食料品濃縮システム。
  10. クロスフローろ過方式である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  11. 前記原料液の温度を5℃以上50℃以下の範囲に調整する温度制御機構を更に備える、請求項4〜10のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  12. 前記正浸透膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする薄膜層を有する、請求項4〜11のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  13. 前記正浸透膜が中空糸膜である、請求項4〜12のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  14. 前記濃縮液流路の下流に、濃縮液を加熱濃縮する加熱濃縮ユニットを更に備える、請求項4〜13のいずれか一項に記載の原料液濃縮システム。
  15. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の食料品の製造方法であって、
    糖を含む溶質と、液体媒体とを含む原料液を正浸透膜に通すことによって前記原料液を濃縮する正浸透工程を含む、方法。
  16. 前記正浸透工程を、正浸透膜、並びに前記正浸透膜で互いに隔てられた原料液側空間及び誘導溶液側空間を有する正浸透膜ユニットを用いて行い、
    前記正浸透工程において、前記原料液を前記原料液側空間に供給し、誘導物質と溶媒とを含む誘導溶液を前記誘導溶液側空間に供給し、原料液中の液体媒体を誘導溶液中に拡散させるとともに誘導溶液中の誘導物質を原料液中に逆拡散させることによって、原料液を濃縮するとともに誘導溶液を希釈し、
    前記正浸透工程において、誘導溶液から原料液中に逆拡散する前記誘導物質の透過流束F’の、原料液から誘導溶液中に拡散する前記液体媒体の透過流束Fに対する割合である逆拡散/フラックス比(F’/F比)が、0.01g/L以上、3g/L以下である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記逆拡散/フラックス比(F’/F比)が0.015g/L以上1g/L以下である、請求項15又は16に記載の方法。
  18. 前記希釈された誘導溶液から前記液体媒体を除去して再生誘導溶液を生成し、前記再生誘導溶液を前記誘導溶液として再利用する誘導溶液再生工程を更に含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記誘導溶液再生工程が、液体媒体蒸発工程である、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記誘導物質が無機塩である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記正浸透工程をクロスフローろ過方式で行う、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記原料液の温度を5℃以上50℃以下の範囲に維持する、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記正浸透膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化テトラフルオロエチレン、及びポリアミドから成る群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする薄膜層を有する、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記正浸透膜が中空糸膜である、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記正浸透工程の後に、原料液の濃縮液を更に加熱濃縮する加熱濃縮工程を更に含む、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
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