JP2021052653A - 構造タンパク質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の構造タンパク質をより容易に製造可能な、構造タンパク質の製造方法を提供すること【解決手段】本開示は、酵素、溶媒、及び上記溶媒に不溶な構造タンパク質をコードするDNAを有する核酸を含む溶液中で無細胞合成によって上記構造タンパク質を合成し、上記構造タンパク質を含む沈殿物を得る工程を有する、構造タンパク質の製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、構造タンパク質の製造方法に関する。
構造タンパク質を人工合成する場合、遺伝子組み換え技術によって組み換えを施した細胞に目的の構造タンパク質を産生させる方法が一般的に使用される(例えば、特許文献1等)。しかし、細胞の組み換え等を含む製造方法は工程が多段階におよぶこと、また目的の構造タンパク質の精製が困難となる場合があること等の事情によって、新規な構造タンパク質の設計から評価までを行い、工業規模でのタンパク質製造に乗せるか否かのスクリーニング技術としては採用し難い場合がある。
細胞由来の抽出物を用いるインビトロでタンパク質を合成する方法として、無細胞タンパク質合成方法が知られている(例えば、特許文献2等)。当該方法は、例えば、細胞毒性を示すタンパク質の合成が可能な技術であり、タンパク質の合成条件の調整が容易であり、また細胞破砕物等の混入が無いことから、目的のタンパク質の精製も容易となる傾向にある。しかし、無細胞タンパク質合成方法は一般にタンパク質の生産性が低く、目的タンパク質の製造コストが非常に高くなる。無細胞タンパク質合成方法は、少量でも付加価値の高い、医薬品、試薬等として用いられる酵素タンパク質を製造するために用いられるのが実情である。
特開平04−144686号公報 特表2010−516251号公報
Geoffrey Zubay、"Annual Review of Genetics、"1973年、第7巻、p.267−287
新規に設計された構造タンパク質を評価し、工業規模でのタンパク質製造に乗せるか否かの判断を行うにあたっては、より簡易に構造タンパク質を得られる技術があれば有用である。このような要求に応え得る技術として無細胞タンパク質合成方法が考えられるものの、当該技術を構造タンパク質の合成に応用する研究は十分に検討されているとはいえない。
本開示は、種々の構造タンパク質をより容易に製造可能な、構造タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]酵素、溶媒、及び上記溶媒に不溶な構造タンパク質をコードするDNAを有する核酸、を含む溶液中で無細胞合成によって上記構造タンパク質を合成し、上記構造タンパク質を含む沈殿物を得る工程を有する、構造タンパク質の製造方法。
[2]上記溶液から上記沈殿物を分離する工程を更に有する、上記[1]に記載の構造タンパク質の製造方法。
[3]上記酵素が大腸菌由来の酵素及び小麦由来の酵素からなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記[1]又は[2]に記載の構造タンパク質の製造方法。
[4]上記酵素が大腸菌由来の酵素を含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の構造タンパク質の製造方法。
[5]上記構造タンパク質が改変構造タンパク質を含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の構造タンパク質の製造方法。
[6]上記構造タンパク質が、フィブロイン、サッケリン、コラーゲン、レシリン、エラスチン及びケラチンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、上記[1]〜[5]に記載の構造タンパク質の製造方法。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の構造タンパク質の製造方法によって得られる、構造タンパク質。
本開示によれば、構造タンパク質をより容易に製造可能な、構造タンパク質の製造方法を提供することができる。
図1は、実施例1で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図2は、実施例2で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図3は、実施例3で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図4は、実施例4で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図5は、実施例5で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図6は、実施例6で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図7は、実施例7で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図8は、構造タンパク質を合成する前の溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。 図9は、実施例における発現量の評価基準を説明するための図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
構造タンパク質の製造方法の一実施形態は、酵素、溶媒、及び上記溶媒に不溶な構造タンパク質をコードするDNAを有する核酸、を含む溶液中で無細胞合成によって上記構造タンパク質を合成し、上記構造タンパク質を含む沈殿物を得る工程を有する。上記構造タンパク質は、上記溶液から上記沈殿物を分離する工程を更に有してもよい。
上記構造タンパク質の製造方法においては、上記溶媒に不溶な構造タンパク質を合成させる。上記構造タンパク質の製造方法によれば、目的の構造タンパク質を溶液中で沈殿させることが可能であり、例えば、反応溶液から固液分離すること等によって簡易に構造タンパク質を回収することができる。また反応系の他の成分(例えば、上記酵素等)は溶液中に溶解しているため上記分離の際に容易に除去可能であり、得られる構造タンパク質の精製は極めて容易となる。
[酵素]
上記酵素は、インビトロで転写及び翻訳の反応系を再構成してタンパク質を合成させる酵素である。無細胞タンパク質合成に寄与するものであることから、無細胞合成酵素ともいう。上記酵素は、例えば、アミノアシル化tRNA合成酵素、T7RNAポリメラーゼ、及びクレアチンキナーゼ等が挙げられる。
上記酵素は、例えば、大腸菌由来の酵素及び小麦由来の酵素からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよく、好ましくは大腸菌由来の酵素を含む。ここで、大腸菌由来の酵素は、例えば、大腸菌を破砕して得られ、酵素を含む固体、液体又はこれらの混合物である細胞抽出物に含まれるものであってよい。大腸菌由来の細胞抽出物には、大腸菌細胞内に含まれていた、DNAを鋳型としたRNAの転写に必要な因子、並びにタンパク質の翻訳に必要な因子が含まれる。上記因子としては、例えば、リボソーム、アミノアシル化tRNA合成酵素、翻訳開始因子及び翻訳終結因子が挙げられる。
なお、細胞抽出物を使用する場合、細胞破片及びゲノムDNA等が混入し得る。そこで、これらを予め除去することが好ましい。細胞破片及びゲノムDNA等を除去する手段としては、例えば、遠心分離法、濾過法を挙げることができる。具体的には、例えば、10000〜30000gの細胞抽出物を4℃の条件下で、20〜50分間遠心分離し、上清を取得する工程で細胞破片及びゲノムDNA等を除去してよく、当該工程を、例えば、2〜3回繰り返すことによって細胞破片及びゲノムDNA等をより十分に除去することができる。
細胞抽出物を使用する場合、上記溶液における細胞抽出物の含有量(固形物量基準)は、溶液全量を基準として、適宜調整することができる。
(細胞抽出物の調製方法)
細胞抽出物は、既に用意されたものを用いることもできるが、別途調製することもできる。換言すれば、上述の構造タンパク質の製造方法は、大腸菌由来の細胞抽出物又は小麦由来の細胞抽出物を調製する工程、又は、培地(例えば、グリセロールを炭素源とした培地等)で大腸菌を培養する工程、培養した大腸菌を回収し、回収した大腸菌から細胞抽出物を得る工程等を更に備えていてもよい。細胞抽出物は、−80℃で保存することができる。細胞抽出物を−80℃に凍結させる際は、好ましくは、液体窒素等を用いた急冷による方法を用いることができる。
大腸菌としては、エシェリヒア・コリに属する微生物であればいずれも用いることができ、例えば、エシェリヒア・コリ A19、BL21(ノバジェン社)、BL21(DE3)(ライフテクノロジーズ社)、BLR(DE3)(メルクミリポア社)、DH1、GI698、HB101、JM109、K5(ATCC23506)、K−12、KY3276、MC1000、MG1655(ATCC47076)、NMR2、No.49、Rosetta(DE3)(ノバジェン社)、TB1、Tuner(ノバジェン社)、Tuner(DE3)(ノバジェン社)、W1485、W3110(ATCC27325)、XL1−Blue、XL2−Blue等の株を挙げることができる。
大腸菌を培養するための培地としては、大腸菌が資化し得る窒素源及び無機塩類等を含有する液体培地であり、炭素源としてグリセロールを含んでもよく、培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。例えば、窒素源として、ペプトン及び酵母エキスを用いることができる。窒素源の含有量は、例えば、培地全体の容量を基準として5〜60g/Lであってよく、10〜40g/Lであってよく、20〜30g/Lであってよい。
無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。例えば、無機塩として、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム及び塩化ナトリウムを用いることができる。無機塩の含有量は、例えば、培地全体の容量を基準として1〜50g/Lであってよく、5〜40/Lであってよく、10〜20g/Lであってよい。
また、T7 RNAポリメラーゼ等の発現が可能な大腸菌を用いた場合には、T7 RNAポリメラーゼ等をあらかじめ含んだ細胞抽出物が得られる。T7 RNAポリメラーゼ等の発現がIPTGのような誘導剤により惹起される場合には培地にIPTG等の誘導剤を加えればよい。
培養は、好ましくは振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は、例えば、15〜40℃で行うことができる。培養中の培養培地のpHは、好ましくは3.0〜9.0に保持する。培養中のpHの調整は、例えば、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
培養時間は、タンパク質合成効率の良い細胞抽出物を得るために、対数増殖初期〜後期、好ましくは対数増殖中期に達する時点までの培養時間をあげることができる。改変2×YTPG培地を用いる場合には、培養温度36℃で、4〜6時間培養することで通常対数増殖中期に達する。
高濃度の菌体培養液を得るために、培養時間の経過に応じて連続的または断続的に培地(フィード液)を培養液中へ流加する流加培養を行ってもよい。流加培養は大腸菌において公知の方法に準じて行えばよい。
大腸菌を回収し、回収した大腸菌から細胞抽出物を得る工程は、無細胞タンパク質合成の目的のために当該分野において既知の方法によって行うことができる。細胞抽出物を得るための具体的な方法としては、例えば以下のような、大腸菌の菌体を回収し、回収した大腸菌の菌体を破壊する方法等をあげることができる。
大腸菌を回収し、回収した大腸菌から細胞抽出物を得る工程において、好ましくは、培養液から菌体を回収し、細胞抽出物を得るまでは低温に保って行う。当該工程は、例えば、0〜15℃、好ましくは2〜10℃の低温に保って行うことができる。
大腸菌培養液から大腸菌の菌体を回収する方法としては、遠心分離法、濾過法をあげることができる。例えば、4℃、7,000〜14,000gの条件で20〜50分間、遠心分離することにより大腸菌の菌体を回収することができる。
細胞抽出物を調製する工程は、回収後に、培地成分等を除去するため、好ましくは、回収した大腸菌の菌体を洗浄する工程を含む。洗浄溶液としては、無機塩及び緩衝作用を示す化合物を含んだ溶液、例えば、S30緩衝液等が用いられる。S30緩衝液は以下のように調製することができる。2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール6.06g、酢酸マグネシウム四水和物15.0g及び酢酸カリウム29.4gを約450mlの純水、好ましくはmili−Q等の超純水に溶解する。溶解後、酢酸でpH8.2に調整し、500mlにメスアップし、0.22μmのフィルターで滅菌する。S30緩衝液は4℃で保存することができ、使用直前に超純水で10倍に希釈し、最終濃度が2mMになるよう1M DTT水溶液を加えたものを使用する。
無機塩及び緩衝作用を示す化合物を含んだ溶液(例えばS30緩衝液)を用いて大腸菌の菌体を洗浄する工程は、例えば、回収した菌体を、当該溶液に懸濁し、遠心分離で回収する工程を例えば2〜3回繰り返すことにより行うことができる。懸濁はホモジナイザー等を用いることによって効率的に均質化できる。均質化した懸濁液からの菌体の回収は、例えば4℃、9000〜14000gの条件で10〜50分間遠心分離することによって行うことができる。当該洗浄菌体は−80℃で保存することができる。−80℃での凍結は、好ましくは液体窒素等を用いた急冷による。
大腸菌の菌体を破壊する手段としては、例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、高圧ホモジナイザー、ダイノミル、乳鉢、ガラスビーズ及びリゾチーム等の溶菌酵素を用いる手段をあげることができる。例えば、高圧ホモジナイザーを用いて菌体を破砕する場合には、600〜1700barの圧力で、約1mL/分の流速の条件で行えばよい。実用的な観点では、600〜1000barの圧力で数回破砕を繰り返すことが好ましい。破壊前後の液を粒度分布計で分析することにより破壊の状況を確認することができる。菌体破壊液にはDTTを最終濃度1mMになるように添加することが好ましい。
大腸菌の菌体を破壊する方法においては、無機塩及び緩衝作用を示す化合物を含んだ溶液(例えばS30緩衝液)に、回収した菌体を再懸濁した、菌体懸濁液を用いることが好ましい。菌体懸濁液としては、例えば、回収菌体1gあたり1〜2mLのS30緩衝液等の溶液を添加した菌体懸濁液をあげることができる。−80℃で保存した回収菌体を用いる場合、好ましくは氷上で融解させて懸濁液を作製する。
[溶媒]
上記溶媒は上記酵素及び上記核酸を含む無細胞タンパク質合成に寄与する成分を溶解させ、合成された構造タンパク質の少なくとも一部が不溶となる溶媒である。上記溶媒としては、例えば、水等が挙げられる。上記溶媒はそれぞれを単独で、又は2以上を組み合わせて用いることができる。溶媒は、目的とする構造タンパク質の種類及び合成に必要な成分の溶解性等に応じて選択することができる。
[核酸]
上記核酸は、上記溶媒に不溶な構造タンパク質をコードするDNAを有するであり、鋳型となる核酸である。上記核酸は、適当な発現調節領域となる配列を含んでもよい。上記核酸としては、直鎖状及び環状の何れの形態であってもよい。上記発現調節領域としては、例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、エンハンサー配列、ポリA付加シグナル、及びリボソーム結合配列等を上げることができる。上記核酸は、好ましくは、少なくとも1つのプロモーター及び目的タンパク質をコードするDNAを含む。上記溶液中における核酸の含有量は、溶液全体の容量を基準として、例えば、0.1〜50μg/mL、又は1〜20μg/mLであってよい。
上記核酸は、構造タンパク質の検出又は精製がより容易となるように、タグ配列を組み込んだ融合タンパク質が合成できるように設計されたものであってよい。タグ配列としては、例えば、ヒスチジンタグ(Hisタグ)等のアフィニティタグ、並びに、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、及びマルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)などのタグ配列が挙げられる。ここで、アフィニティタグとは、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用して検出又は精製を容易にするためのタグ配列のことをいう。また、抗原抗体反応を利用するエピトープタグを組み込むように核酸を設計することもできる。エピトープタグとしては、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、及びFLAGタグ等が挙げられる。さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも利用できる。
(構造タンパク質)
構造タンパク質とは、生体構造を構築する役割を有するタンパク質であり、酵素、ホルモン、及び抗体等の機能タンパク質とは異なる。上述の構造タンパク質の製造方法においては、上記溶媒に不溶な構造タンパク質が調製される。本明細書において溶媒に不溶とは、水等に不溶であることをいう。
構造タンパク質は、天然由来の構造タンパク質及び改変構造タンパク質の両方が含まれるものとする。本明細書において「天然由来の構造タンパク質」は、天然由来の構造タンパク質と同一のアミノ酸配列を有する構造タンパク質を意味し、「改変構造タンパク質」とは、天然由来の構造タンパク質とは異なるアミノ酸配列を有する構造タンパク質を意味する。すなわち、構造タンパク質は、天然由来の構造タンパク質を再現したものであってよく、人為的に製造されたタンパク質(改変構造タンパク質)であってもよい。
構造タンパク質としては、例えば、フィブロイン、サッケリン、コラーゲン、レシリン、エラスチン及びケラチン等の天然由来の構造タンパク質を挙げることができる。天然に存在するフィブロインとして、昆虫及びクモ類が産生するフィブロインが知られている。改変構造タンパク質としては、例えば、上記溶媒への溶解性の低い天然由来の構造タンパク質を使用することができ、また、天然由来の構造タンパク質の上記溶媒への溶解性を低下させるような改変を行ったものを使用することもできる。改変構造タンパク質は、例えば、上述の構造タンパク質の改変体(例えば、改変フィブロイン等)を含んでもよい。
フィブロインは、例えば、式1:[(A)nモチーフ−REP]m、又は式2:[(A)nモチーフ−REP]m−(A)nモチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質であってもよい。本実施形態に係るフィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)nモチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)nモチーフ−REP]m、又は式2:[(A)nモチーフ−REP]m−(A)nモチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)nモチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)nモチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)nモチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)nモチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
天然由来のフィブロインとしては、例えば、式1:[(A)nモチーフ−REP]m、又は式2:[(A)nモチーフ−REP]m−(A)nモチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質を挙げることができる。天然由来のフィブロインの具体例としては、例えば、昆虫又はクモ類が産生するフィブロインが挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、オオミノガ(Eumeta variegata)が産生する絹タンパク質、及びスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、及びAAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
改変フィブロインの具体的な例として、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変フィブロイン(第1の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第2の改変フィブロイン)、(A)モチーフの含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第3の改変フィブロイン)、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変フィブロイン(第4の改変フィブロイン)、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変フィブロイン(第5の改変フィブロイン)、並びにグルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変フィブロイン(第6の改変フィブロイン)が挙げられる。
第1の改変フィブロインとしては、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。第1の改変フィブロインにおいて、(A)モチーフのアミノ酸残基数は、3〜20の整数が好ましく、4〜20の整数がより好ましく、8〜20の整数が更に好ましく、10〜20の整数が更により好ましく、4〜16の整数が更によりまた好ましく、8〜16の整数が特に好ましく、10〜16の整数が最も好ましい。第1の改変フィブロインは、式1中、REPを構成するアミノ酸残基の数は、10〜200残基であることが好ましく、10〜150残基であることがより好ましく、20〜100残基であることが更に好ましく、20〜75残基であることが更により好ましい。第1の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列中に含まれるグリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数がアミノ酸残基数全体に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
第1の改変フィブロインとしては、例えば、配列番号1(PRT201_cf)若しくは配列番号2(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号1(PRT201_cf)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号2(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってもよい。
第2の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(但し、Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。例えば、配列番号4(PRT410_cf)が挙げられる。
第3の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第3の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第3の改変フィブロインは、例えば、配列番号3(PRT399_cf)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号3(PRT399_cf)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相動性を有するアミノ酸配列を含むペプチドであってもよい。
第4の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。第4の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のフィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。すなわち、第4の改変フィブロインは、上述した第2の改変フィブロインと、第3の改変フィブロインの特徴を併せ持つ改変フィブロインである。具体的な態様等は、第2の改変フィブロイン、及び第3の改変フィブロインで説明したとおりである。
第4の改変フィブロインは、例えば、配列番号4(PRT410_cf)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは配列番号5(PRT564_cf)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は配列番号4(PRT410_cf)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相動性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは配列番号5(PRT564_cf)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相動性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよもよい。
第5の改変フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のフィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有するものであってよい。
第6の改変フィブロインは、天然由来のフィブロインと比較して、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。
ケラチン由来のタンパク質としては、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。ケラチン由来のタンパク質は、例えば、配列番号6(PRT798_cf)で示されるアミノ酸配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含む構造タンパク質、又は、配列番号6(PRT798_cf)と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む構造タンパク質であってよい。
サッケリン由来のタンパク質としては、例えば、プロテインデータバンクのアクセッション番号 AGY36220のアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。サッケリン由来のタンパク質は、例えば、配列番号7(PRT940_cf1)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは配列番号8(PRT940_cf2)で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は具体的には、配列番号7(PRT940_cf1)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相動性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、若しくは配列番号8(PRT940_cf2)で示されるアミノ酸配列と90%以上の相動性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってよい。
コラーゲン由来のタンパク質としては、例えば、式3:[REP2]pで表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、pは5〜300の整数を示す。REP2は、Gly−X−Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP2は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
エラスチン由来のタンパク質としては、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。
レシリン由来のタンパク質としては、例えば、式4:[REP3]qで表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式4中、qは4〜300の整数を示す。REP3はSer−J−J−Tyr−Gly−U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意アミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。
[その他の成分等]
上記溶液には、上述の酵素、溶媒及び核酸に加えて、その他の成分を更に含んでもよい。その他の成分としては、例えば、RNAポリメラーゼ、エネルギー源、構造タンパク質を構成することとなる基質(目的の構造タンパク質を合成するための基質)、ポリアミン類、塩、酸化/還元剤、及び各種添加剤等が挙げられる。
(RNAポリメラーゼ)
上記核酸がDNAである場合には、RNAポリメラーゼを含むことができる。RNAポリメラーゼとしては、上記核酸を対象とする1つ又は複数の転写因子を認識するRNAポリメラーゼを用いることができる。上記溶液は、構造タンパク質の生産効率を向上させる観点から、好ましくはT7 RNAポリメラーゼを含む。T7 RNAポリメラーゼは、上記溶液を調製する際に添加してもよく、上記核酸を上述の細胞抽出液として供給する場合には、T7 RNAポリメラーゼ等の発現が可能なBL21(DE3)等の株を用いて予め細胞抽出物にT7 RNAポリメラーゼが含まれるようにしてもよい。
(エネルギー源)
上記溶液に構造タンパク質の合成に必要なエネルギーが不足している場合には、上記溶液にエネルギー源となる化合物を配合してもよい。エネルギー源の配合は、構造タンパク質の合成反応の間に添加又は補充することもできる。エネルギー源としては、例えば、ATP、GTP、グルコース、ピルベート、ホスホエノールピルベート(PEP)、カルバモイルホスフェート、アセチルホスフェート、クレアチンホスフェート、ホスホピルベート、グリセルアルデヒド−3−ホスフェート、3−ホスホグリセレート、グルコース−6−ホスフェート、クエン酸、cis−アコニット酸、イソクエン酸、α−ケトグルタル酸、スクシニルCoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、グリオキシル酸及びグルタミン酸等が挙げられる。
(構造タンパク質を構成することとなる基質)
構造タンパク質を構成することとなる基質として、上記溶液は、構造タンパク質を合成するために必要なアミノ酸を含んでよい。アミノ酸としては、構造タンパク質を構成する20種類の全てのアミノ酸を用いてもよく、構造タンパク質及び用いる試薬等を考慮して20種類から適宜選択して用いて用いてもよい。
上記核酸がDNAである場合には、上記溶液は構造タンパク質を構成することとなる基質として、RNA合成のための基質を含むことができる。RNA合成のための基質としては、例えば、リボヌクレオチド三リン酸(rNTP)、及びリボヌクレオチド一リン酸(rNMP)等のリボヌクレオチドが挙げられる。
(ポリアミン類)
上記溶液はポリアミン類を含んでよい。ポリアミン類としては、例えば、スペルミン、スペルミジン及びプトレシン等が挙げられる。
(塩)
上位溶液は塩を含んでよい。塩としては、例えば、酢酸、グルタミン酸、又は硫酸のカリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、及びマンガン塩が挙げられる。
(酸化/還元調整剤)
上記溶液は酸化/還元調整剤を含むことができる。酸化/還元調整剤としては、例えば、DTT、アスコルビン酸、グルタチオン、及びこれらの酸化物等が挙げられる。
(その他の添加物)
上記溶液は、リボソーム、転移RNA(tRNA)、任意選択の翻訳因子(例えば、翻訳開始因子、伸長因子終結因子、リボソームリサイクリング因子等)及びその補因子、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)、メチオニルtRNAホルミル転移酵素(MTF)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、四級アミノエチル及びアミノエチルデキストラン等)、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ阻害剤、タンパク質安定剤、シャペロン、可溶化剤、並びに非変性界面活性物質(例えば、トリトンX100)等を必要に応じて含んでもよい。
[構造タンパク質の製造]
上記構造タンパク質の製造方法は、透析法及びバッチ法いずれとしても利用することができる。透析法とは、上記溶液を含む内液と、透析膜(例えば、限外濾過膜等)によって隔離された、タンパク質を合成するための基質及びエネルギー源等を含む外液と、からなる閉鎖系でタンパク質の合成を行う方法である。透析法では、透析膜を介して、目的タンパク質合成のための基質及びエネルギー源等が外液から反応混合物に供給されるとともに、内液中の余計な副産物を外液中に拡散させることができるため、より長時間(例えば、18時間以上)、反応を持続させることができる。また、バッチ法とは、目的の構造タンパク質を合成するための成分をすべて混合し、反応系中に均一に含ませタンパク質の合成を行う方法である。バッチ法は、透析法と比較すると反応持続時間は短いものの結果がすぐに得られる点で有益である。無細胞合成の際の温度(溶液の温度)は、例えば、20〜40℃、又は25〜35℃であってよい。バッチ法における反応は、例えば、2〜8時間であってよい。なお、上記構造タンパク質の製造方法においては、溶液の組成等を調整する工程を備えてよく、溶液の組成等の調整は上記構造タンパク質の合成前に行ってもよく、合成の後に行ってもよい。溶液の組成等を調整することによって構造タンパク質を含む沈殿物の収率を向上させることもできる。
以下、実施例等に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、大腸菌BL21(DE3)株を通常の液体培地を用いて一晩培養し、種培養を行った。この種培養液を7Lの2xYT培地(16g/Lのバクトトリプトン、10g/Lの酵母エキス、及び5g/LのNaClを含む培地)を含むファーメンターに接種し、十分な通気を行いながら400rpmの攪拌速度にて30℃で培養を行った。培養液の濁度(600nmの吸光度)を指標として菌体数を推定し、対数増殖期後期(600nmの吸光度が約3、菌体数では約109個/mLのとき)に細胞を回収してズベイら(非特許文献1)の方法に従って細胞抽出物の水溶液(大腸菌S30抽出液)を調製した。
配列番号1(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインを設計した。当該改変フィブロインをコードする直鎖状のDNA(核酸)をPCR法によって合成した。合成したDNA及び上述の細胞抽出物を用いて構造タンパク質の無細胞タンパク質合成を行った。具体的には、上記DNA及び上述の細胞抽出物の水溶液を含む30μLの溶液を調製し、反応温度30℃の条件下で、微量透析法によって1日間合成反応を行った。
反応後の溶液及び遠心分離後の上澄み液の双方について、SDS−PAGEを行い、目的とする改変フィブロインの発現を確認した。結果を図1に示す。図1は、実施例1で得られた構造タンパク質を含む溶液のSDS−PAGEによる分析結果を示す写真である。図中、「T」は構造タンパク質を含む溶液全量を評価対象として得られたSDS−PAGEによる分析結果であることを意味し、「S」は構造タンパク質を含む溶液を遠心分離して得られる上清を評価対象として得られたSDS−PAGEによる分析結果であることを意味する。上記「T」において目的の構造タンパク質に対応するバンドが確認され、且つ上記「S」において目的の構造タンパク質に対応するバンドが確認されない場合、目的の構造タンパク質は、溶液中で溶解せずに沈殿するものといえる。なお、構造タンパク質を合成する前の溶液についてSDS−PAGEによる分析を行い、ブランクとした。結果を図8に示す。
また、SDS−PAGEの結果に対する目視観察から、図9の(a)に示す基準にしたがって、上記「T」及び「S」におけるバンドサイズをそれぞれ決定し、図9の(b)に示す基準にしたがって上記「T」における発現量、及び構造タンパク質の溶液に対する溶解性を決定した。なお、溶解性については、図9の(b)における、Soluble(可溶)、Partially Soluble(一部可溶)、Insoluble(不溶)の三段階評価とした。評価結果を表1に示す。なお、当該改変フィブロインは、組み換え細胞を用いて産生することができなかった。無細胞タンパク質合成によって得られた改変フィブロインは、水に対して不溶であることを確認した。
(実施例2〜4)
配列番号1(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸に代えて、配列番号2(PRT399_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸(実施例2)、配列番号3(PRT410_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸(実施例3)、及び配列番号4(PRT564_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸(実施例4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして改変フィブロインを含む溶液を調製した。得られた改変フィブロインを含む溶液について、実施例1と同様にしてSDS−PAGEによる分析を行い、それぞれ上記「T」における発現量、及び構造タンパク質の溶液に対する溶解性を決定した。評価結果を表1、並びに図2、図3、及び図4に示す。
なお、配列番号2(PRT399_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン、配列番号3(PRT410_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン及び配列番号4(PRT564_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインはいずれも水に不溶であることを以下のように確認した。すなわち、当該改変フィブロインをコードする核酸を合成した。核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。合成された核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。得られた発現ベクターによって、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を培養し、改変フィブロインを発現誘導した後、培養液を遠心分離して菌体を回収した。この菌体中に改変フィブロインが析出されていることが確認された。また回収された改変フィブロインは水に不溶であった。
(実施例5)
配列番号6(PRT798_cf)で示されるアミノ酸配列を有するケラチンに由来する構造タンパク質を設計した。当該ケラチンに由来する構造タンパク質をコードする直鎖状のDNA(核酸)をPCR法によって合成した。当該ケラチンに由来する構造タンパク質が溶媒に不溶であることは、実施例2と同様に、組み換え細胞を用いて産生された同タンパク質に対する評価で確認した。
配列番号1(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸に代えて、上記ケラチンに由来する構造タンパク質をコードする直鎖状のDNA(核酸)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ケラチンに由来する構造タンパク質を含む溶液を調製した。得られたケラチンに由来する構造タンパク質を含む溶液について、実施例1と同様にしてSDS−PAGEによる分析を行い、それぞれ上記「T」における発現量、及び構造タンパク質の溶液に対する溶解性を決定した。評価結果を表1及び図5に示す。
(実施例6及び7)
配列番号7(PRT940_cf1)で示されるアミノ酸配列を有するサッケリンに由来する構造タンパク質、及び配列番号8(PRT940_cf2)で示されるアミノ酸配列を有するサッケリンに由来する構造タンパク質を設計した。当該サッケリンに由来する構造タンパク質をコードする直鎖状のDNA(核酸)をPCR法によって合成した。
配列番号1(PRT372_cf)で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロインをコードする核酸に代えて、上記サッケリンに由来する構造タンパク質をコードする直鎖状のDNA(核酸)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、サッケリンに由来する構造タンパク質を含む溶液を調製した。得られたサッケリンに由来する構造タンパク質を含む溶液について、実施例1と同様にしてSDS−PAGEによる分析を行い、それぞれ上記「T」における発現量、及び構造タンパク質の溶液に対する溶解性を決定した。評価結果を表1、図6及び図7に示す。なお、当該サッケリンに由来する構造タンパク質は、組み換え細胞を用いて産生することができなかった。無細胞タンパク質合成によって得られたサッケリンに由来する構造タンパク質は、水に対して不溶であることを確認した。
Figure 2021052653
本開示は、多種の構造タンパク質を容易に製造することが可能な汎用性に優れる構造タンパク質の製造方法を提供することができる。また、無細胞合成系を利用していることから、組み換え宿主が発現できないような構造タンパク質の合成も可能であり、より汎用的な構造タンパク質の合成方法といえる。さらに当該技術を用いることによって種々の構造タンパク質の細かなアミノ酸配列と諸物性等との関係を検討することを容易なものとすることができ、得られる知見を新規構造タンパク質の設計に応用することを可能とする。

Claims (7)

  1. 酵素、溶媒、及び前記溶媒に不溶な構造タンパク質をコードするDNAを有する核酸を含む溶液中で無細胞合成によって前記構造タンパク質を合成し、前記構造タンパク質を含む沈殿物を得る工程を有する、構造タンパク質の製造方法。
  2. 前記溶液から前記沈殿物を分離する工程を更に有する、請求項1に記載の構造タンパク質の製造方法。
  3. 前記酵素が、大腸菌由来の酵素及び小麦由来の酵素からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の構造タンパク質の製造方法。
  4. 前記酵素が大腸菌由来の酵素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造タンパク質の製造方法。
  5. 前記構造タンパク質が改変構造タンパク質を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造タンパク質の製造方法。
  6. 前記構造タンパク質が、フィブロイン、サッケリン、コラーゲン、レシリン、エラスチン及びケラチンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造タンパク質の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造タンパク質の製造方法によって得られる、構造タンパク質。
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