JP2021052477A - 電力変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
一般的な分解能の電流センサを用いて地絡箇所を判定する電力変換装置を提供することである。
【解決手段】
電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換する順変換部と、外部装置と接続するケーブルに流れる電流を制御するスイッチ素子を備えた逆変換部と、スイッチ素子を駆動するドライバ部と、逆変換部の電流を計測する電流センサと、逆変換部の電圧を計測する電圧センサと、電圧センサおよび電流センサの計測信号を入力し、ドライバ部を制御する制御部とを有し、地絡箇所を調査する際、前記ケーブルに地絡電流を発生させ、
電流センサは、地絡電流の電流値を計測し、
電圧センサは、地絡電流が流れることにより発生する電圧値を計測し、
制御部は、
計測された前記電流値と前記電圧値に基づいて、地絡箇所を判定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電力変換装置に関する。
配線間の地絡によって電力変換装置の動作が停止した場合、その情報を使用者に報知することで地絡が発生したことを知らせることできる。しかしながら、地絡事故発生によって電力変換装置の動作が停止した場合、使用者はケーブル上で地絡事故が発生したのかあるいはモータ内部で発生したのか、またケーブル上のどこで発生したか場所を特定することができない。
地絡箇所の情報を知る方法として、特許文献1に地絡箇所を判定する発明が記載されている。この方法では、特許文献1の図13に示されているように、地絡が発生している相(以下、「地絡相」と略す)の出力電流値と、地絡が発生していない相(以下、「非地絡相」と略す)の出力電流の電流比率に基づいて、ケーブル上の地絡箇所の判定を行っている。
特開2017−229172
特許文献1は、地絡箇所を判定する技術を開示している。しかしながら、一般的に、モータ巻き線のインダクタンス値Lmは、ケーブルのインダクタンスLcよりも2〜3桁大きいことが多く、その場合、モータ巻き線を経由して流れる非地絡相の出力電流は、モータ巻き線を経由しない地絡相の出力電流よりも、2〜3桁小さくなる。
そのため、ケーブル上の地絡箇所の判定箇所の分解能を高くするためには、電流センサに地絡相と非地絡相の両方の電流を十分な精度で計測できる高い分解能を持った電流センサが必要となる。
本発明の目的は、一般的な分解能の電流センサを用いて地絡箇所を判定する電力変換装置を提供することである。
本発明の好ましい一例としては、交流電力を直流電力に変換する順変換部と、外部装置と接続するケーブルに流れる電流を制御するスイッチ素子を備えた逆変換部と、前記スイッチ素子を駆動するドライバ部と、前記逆変換部の電流を計測する電流センサと、前記逆変換部の電圧を計測する電圧センサと、前記電圧センサおよび電流センサの計測信号を入力し、前記ドライバ部を制御する制御部とを有し、
地絡箇所を調査する際、前記ケーブルに地絡電流を発生させ、前記電流センサは、地絡電流の電流値を計測し、前記電圧センサは、地絡電流が流れることにより発生する電圧値を計測し、前記制御部は、計測された前記電流値と前記電圧値に基づいて、地絡箇所を判定する電力変換装置である。
本発明によれば、一般的な分解能の電流センサを用いて地絡箇所を判定する電力変換装置を実現できる。
実施例1における電力変換装置の構成図である。 実施例1における地絡発生箇所判定のフローチャートである。 実施例における地絡相を特定するフローチャートである。 地絡相の特定動作とその前後におけるスイッチの状態と、出力電流波形の例を示した図である。 図4の時刻t1からt2の間における電流経路の例である。 実施例における出力電流および相間電圧計測のフローチャートである。 図6のフローチャートの補足表である。 出力電流および相間電圧計測動作とその前後におけるスイッチの状態、出力電流と相間電圧波形の例を示した図である。 図8の時刻t3からt6の間における電流経路の例である。 3相出力端子のうちS相接地されたトランスの等価回路である。 図10において出力が開放状態におけるトランスの2次側3相出力R、S、T相の対地電圧を表した図である。 電力変換装置の出力端子から地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスを計算するフローチャートである。 地絡箇所の判定方法を示した図である。 表示器108の構成図である。 送信機109の構成図である。 逆変換器回路104の第一の変形例を示した図である。 逆変換器回路104の第二の変形例を示した図である。 産業用インバータに応用した例を表した図である。
以下、図面を用いて、実施例を説明する。
図1は、実施例1の電力変換装置100の構成図を示す。電力変換装置100は、交流電力を入力して直流電力に変換する順変換器回路102、平滑コンデンサ103、外部装置と接続するケーブルに流れる電流を制御するスイッチ素子を備えた逆変換器回路104を備えている。
また、電力変換装置100は、逆変換器回路104を制御するための制御回路105と、制御回路105へ手動で情報入力するための入力器106、外部システムから受信するための受信機107と、制御回路105からの出力情報を表示するための表示器108、外部のシステムへ送信するための送信機109を備えている。制御回路は、CPU、もしくはマイコンを含む構成である。また、FPGA(field-programmable gate array)で構成してもよい。
また、電力変換装置100は、電力変換装置100の内部に流れる電流値を計測するための電流計測回路111と電力変換装置100の内部で発生する電圧値を計測するための電圧計測回路112とを備えている。
順変換器回路102は6つのダイオードで構成され、入力端子R、S、Tから入力される交流電力を直流電力に変換し、平滑コンデンサ103の両電極に出力する。順変換器回路102のダイオードの整流作用によりノードP側の直流電圧配線に正電圧、ノードN側の直流電圧配線に負電圧とした直流電圧Vdcが発生する。
平滑コンデンサ103はノードPとNにおいて直流電圧配線に接続し、配線間の電圧を平滑化する。逆変換器回路104は、直流電力を、モータを駆動するための交流電力に変換し、出力端子U、V、Wへ出力する。
逆変換器回路104はU相、V相、W相の3つのハーフブリッジ回路と、ドライバ部としてのスイッチ駆動回路110から構成されている。U相のハーフブリッジ回路はスイッチSWuとダイオードDIuが逆並列に接続された上アームと、スイッチSWxとダイオードDIxが逆並列に接続された下アームで構成されている。
同様にして、V相のハーフブリッジ回路は、スイッチSWvとダイオードDIv、スイッチSWyとダイオードDIyで、W相のハーフブリッジ回路は、スイッチSWwとダイオードDIw、スイッチSWzとダイオードDIzで構成されている。
図1ではスイッチ素子としてIGBTを用いているが、MOSFETで構成してもよい。また、半導体デバイスはシリコンを使うのが一般的だが、低損失化のためにワイドギャップ半導体であるSiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリウムナイトライド)を用いてもよい。
全てのスイッチSWu、SWv、SWw、SWx、SWy、SWzは、ドライバ部であるスイッチ駆動回路110と接続している。スイッチ駆動回路110は制御回路105からの指令に基づいてスイッチに電気信号を供給し、スイッチのONとOFFの切り替え制御を行うことでスイッチ素子を駆動する。また、スイッチ駆動回路110は各スイッチでの電圧降下を監視して過電流発生を検出する機能を備えている。
また、逆変換器回路104は、各相の出力電流値を測定する3つの電流センサ21u、21v、21wと、出力相間電圧を計測するための電圧センサ22uv、22wvを備えている。電流センサ21u、21v、21wは、出力端子U、V、Wから出力される電流値Iu、Iv、Iwを計測し、アナログ電圧または電流として電流計測回路111に伝える。
電圧センサ22uvと電圧センサ22wvは、出力端子Vを基準とした出力端子Uの電圧を、電圧センサ22wvは出力端子Vを基準とした出力端子Wの電圧を計測し、アナログ電圧または電流として電圧計測回路112に伝える。つまり、電圧センサは逆変換器回路104の出力の3つの相間のうち2つの相間の電圧を計測するように配置されている。
実施例では、電流センサ、電圧センサ、電流計測回路111、および電圧計測回路112は、逆変換器回路104内に配置している。しかし、各相のケーブルを流れる電流値を計測もしくは出力端子U、V、Wのうち2相間の相間電圧を計測できるのであれば、出力端子U、V、Wの付近の逆変換器回路104の外部に、電流センサ、電圧センサ、電流計測回路111、および電圧計測回路112を配置してもよい。
電流計測回路111および電圧計測回路112は、入力されたアナログ情報をサンプリングし、デジタルデータ化してそれぞれ制御回路105へ送信する。制御回路105は、電圧センサおよび電流センサの計測信号を入力し、ドライバ部110を制御する制御部である。
制御回路105は、インダクタンス値計算部121、インダクタンス値記憶部122および地絡箇所判定部123を備えている。インダクタンス値計算部121は、電流計測回路111および電圧計測回路112から送られてきた電流値データと電圧値データを基に、電力変換装置100から地絡箇所までの電流経路のインダクタンス値Lsを計算する。
地絡箇所判定部123は、ケーブル上もしくはモータ巻き線上の地絡が発生している地絡相を特定する。さらに、地絡箇所判定部123は、インダクタンス値計算部121から送られてきたインダクタンス値Lsとインダクタンス値記憶部122が保持しているモータケーブルMCのインダクタンス値Lcを基に、モータケーブルMCとモータMTに発生した地絡箇所を判定し、表示器108および送信機109に判定結果を送信する。
なお、制御回路105は、モータのPWM駆動のための一般的な機能を備えているが、本実施例の動作とは関わらないので、その説明については省略する。また、制御回路105内のインダクタンス値記憶部122、地絡箇所判定部123などの、ロジック回路のみで構成することが可能な要素については、マイコンやプログラマブルロジックでソフトウェア的に実現することも可能である。
電力変換装置100の出力端子U、V、Wには3本のモータケーブルMCが接続され、その先に3相モータMTが接続されている。一方、電力変換装置100の入力端子R、S、Tには3本の電源ケーブルTCが接続され、その先がトランスTRNの2次側に接続されている。トランスTRNの内部あるいはケーブルTCのいずれかにおいて、大地ETあるいは接地されている配線に接続されている。
実施例1の電力変換装置100は、破線で囲われた3本のモータケーブルMCあるいは3相モータMTと、大地ETとの間で地絡が発生した場合、地絡発生箇所を判定することができる。
図2は、実施例1における地絡発生箇所判定のフローチャートである。図2のフローは、地絡発生に伴うスイッチ駆動回路(ドライバ部)110における過電流検知、および、入力器106や受信機107からのトリガによって開始される。開始後、制御回路105はモータ停止措置を実行する制御をする(ステップS101)。
具体的には、制御回路105は逆変換器回路104の全スイッチをOFFにするように制御することで、モータへの電力供給を停止し、電流計測回路111で計測される全ての相の電流値が0になるまで待機する。モータ停止後、制御回路105は地絡電流の調査を実行し、地絡相を特定する(ステップS102)。
その後、地絡相に再度電流を流したときの地絡相の出力電流および地絡相−非地絡相の間の電圧を計測した結果である電流値や電圧値を、制御回路105が取得する(ステップS103)、それらの情報に基づいて電力変換装置100から地絡箇所までのインダクタンスの計算を行う(ステップS104)。ステップS104の計算結果とインダクタンス値記憶部が保持しているモータケーブルMCのインダクタンス値とを比較することで、地絡箇所を判定する(ステップS105)。
判定結果は表示器108に表示され、また送信機109より電力変換装置の外部に送信され(ステップS106)、地絡発生箇所判定のフローは終了する。
なお、ステップS102〜S104においては、後述の地絡相の特定フロー、出力電流および相間電圧計測フロー、インダクタンス計算フローがそれぞれ実行される。
図3は、実施例1における地絡相を特定するフローチャートである。制御回路105は、初めに全相の下アームのスイッチSWx、SWy、SWzをONにする(ステップS111)。続いて、電流値Iu、Iv、Iwの電流計測値を電流計測回路111から制御回路105が取得する(ステップS112)。
そして、電流値Iu、Iv、Iwのいずれかが電流しきい値Ith1より大きいかどうかを、制御回路105が判定する(ステップS113)。
そして、電流値Iu、Iv、Iwのいずれかが電流しきい値Ith1以下の場合(ステップS113のN)には一定時間経過したかどうかを、制御回路105は判定する(ステップS114)。
このようなステップS112〜ステップS114といった電流監視のためのループ処理を行う。ステップS114で一定時間経過しない場合(ステップS114のN)には、複数の電流センサ21と電流計測回路111から電流値Iu、Iv、Iwの電流計測値を取得(ステップS112)することを繰り返す。
電流値Iu、Iv、Iwのいずれかが所定の電流しきい値Ith1を超えた場合(ステップS113でY)、ループ処理を抜けて、制御回路105は、全相の下アームのスイッチSWx、SWy、SwzをOFFにするように制御する(ステップS115)。そして、最初にしきい値を超えた電流が発生した相を、制御回路105は地絡相として判定し(ステップS116)、終了する。
一方、先のループ処理において一定時間経過してもいずれの電流値も、しきい値Ith1を超過しなかった場合(ステップS114のY)は、ループ処理を抜けて、制御回路105は全相の下アームのスイッチSWx、SWy、SwzをOFFにするように制御し(ステップS117)、ステップS111から時間1/(2・f0)経過するまで待機する(ステップS118)。
ここでf0は端子R、S、Tから順変換器回路102に入力される交流電圧の基本周波数である。その後、ステップS118の待機後にステップS111に戻り、制御回路105は地絡相の特定動作をリトライする。
図4は、地絡相の特定動作とその前後におけるスイッチの状態と、出力電流波形の例を示す。時刻t1で下アームスイッチSWx、SWy、SWzをONにすると、各相の出力に吸い込み電流が発生する。
各相の電流は時間と共に増加するが、地絡が発生している相(地絡相)の電流は、発生していない相(非地絡相)の電流より速く増加する。結果として、地絡相の電流が非地絡相の電流より多い状態が、時刻t2において全スイッチをOFFにするまで継続する。
ここで、各電流センサが計測可能な範囲の電流値である電流しきい値Ith1をあらかじめ設定し、電流値Iu、Iv、Iwのいずれかが最初にIth1を超えるかを検出し、この相を地絡相、その他の相を非地絡相として特定することができる。つまり、制御回路105は、電流センサで計測した各相の地絡電流を比較して、電流増加速度が最大である相を地絡相として特定する。
また、電流しきい値Ith1は低くするほど地絡相調査の動作が短時間で終えることができるので、電流しきい値Ith1は電流計測回路111で計測可能な計測範囲のうちなるべく低い値に設定することが好ましい。
図5は、図4の時刻t1からt2の間における電流の電流経路の例を示す。図5では例としてW相のモータケーブル上(地絡点F)に地絡が発生している状況を示している。電流を発生させる起電力はトランスの出力(2次側)の負の対地電圧Vtrnである。
トランスの出力は3相あるが、順変換器回路102のダイオードによって順変換器回路102からトランスTRNの対地電圧が負である相(R相、S相、T相のいずれか)へ電流が流れ込む。
対地電圧が負である相が複数有る場合は、複数の相へ電流が流れ込むが、図5では説明の簡略化のため、トランスTRNと電源ケーブルTCと、順変換器回路102のダイオードを1相分のみ記載している。
トランスTRNから出た電流は大地ETを流れて地絡点Fへ到達し、その後3つに分流して出力端子U、V、Wに流れ込み、電流センサ21u、21v、21wでその電流値は計測される。分流された電流は、ON状態にある逆変換器回路104内の3つの下アームのスイッチSWx、SWy、SWzを流れてノードNで合流し、順変換器回路102に戻る。
なお、図示していないが、時刻t2で全スイッチをOFFにした後は、電流経路は一部変化し、3つに分流された電流が上アームのダイオードDIu、DIv、DIwを通った後に合流し、電流ノードPから平滑コンデンサ103を通りノードNに抜けるルートに変化する。平滑コンデンサには入力端子R、S、Tから入力される交流電圧を整流および平滑化して得られる直流電圧Vdcがあらかじめ充電されているので、その電圧によって電流は減少する。
図6は、出力電流および相間電圧計測のフローチャートである。また、図7は、図6のフローチャートを補足する補足表を示す。制御回路105は、初めに全てのスイッチがOFFの状態を保つように制御しながら、全相の出力電流が0に静定するまで待機(ステップS121)する。
図3のフローにて説明した地絡相の特定をしておくことで、静定後にその特定された地絡相の下アームスイッチをONにする制御をする(ステップS122)。
具体的には地絡相に対応して図7の列(1)に示されたスイッチをONにするように制御回路105は、制御をする。続いて、図7の列(2)に示されたU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのうち地絡相に対応した相の計測した電流値を制御回路105は、電流計測回路111から取得する(ステップS123)。
制御回路105は、計測した電流値がしきい値Ith2を超えたかどうかを判定(ステップS124)し、計測した電流値がしきい値Ith2以下の場合(ステップS124のN)は一定時間経過したかを判定する(ステップS125)。
このようなステップS123〜ステップS125といった電流監視のためのループ処理を行う。そして、一定時間経過していない場合(ステップS125のN)には、図7の表の列(2)に示された計測された電流値を、制御回路105は電流計測回路111から取得する処理(ステップS123)を繰り返す。
計測した電流値Iu、Iv、Iwのいずれかが所定の電流しきい値Ith2を超えた場合(ステップS124のY)、ループ処理を抜けて、図7の表の列(2)および(3)に示された計測電流値と計測電圧値を、電流計測回路111および電圧計測回路112から制御回路105は取得し、電流値Is1および電圧値Vs1として記憶する(ステップS126)。
その後、時間Tだけ待機し(ステップS127)、その後、再度図7の表の列(2)および(3)に示された計測電流値と計測電圧値を、電流計測回路111および電圧計測回路112から制御回路105が取得し、電流値Is2および電圧値Vs2として記憶する(ステップS128)。
その後、制御回路105は全てのスイッチをOFFにするように制御し(ステップS129)、処理を終了する。一方、先のループ処理において一定時間経過してもいずれの電流値も、しきい値Ith2を超過しなかった場合(ステップS125のY)は、ループ処理を抜けて、制御回路105は全てのスイッチをOFFにするように制御する(ステップS130)。
そして、ステップS121から時間1/(2・f0)経過するまで制御回路105は待機する(ステップS131)。ここでf0は端子R、S、Tから順変換器回路102に入力される外部電源の交流電圧の基本周波数である。その後、ステップS131の待機後、ステップS121に戻り、出力電流および相間電圧計測フローを制御回路105がリトライする。
図8は、出力電流および相間電圧計測動作とその前後におけるスイッチの状態、出力電流と相間電圧波形の例を示す図である。図8の例では、地絡がW相に発生している場合である。時刻t3で地絡相の下アームスイッチSWzをONにすると、W相の出力に吸い込み電流が発生し、電流Iwは時間と共に電流が増加する。
あらかじめ設定された、各電流センサが計測可能な範囲の電流値である電流しきい値Ith2を超えた後の時刻t4で、電流値Iwと相間電圧Vwvを計測し、それらの値は、電流値Is1、電圧値Vs1として記憶される。その後、時間Tが経過した時刻t5で再度電流値Iwと相間電圧Vwvを計測し、それらの値は、電流値Is2、電圧値Vs2として記憶される。
ここで、電流値Is1、Is2は後述のインダクタンス計算処理で用いられるため、その分解能を高くするために、電流しきい値Ith2は電流計測回路111で計測可能な計測範囲のうちなるべく高い値に設定することが好ましい。
また、同様の理由により、待機時間Tは長いほうが好ましいが、一方で電圧値の計測精度とのトレードオフとなるので、待機時間TはステップS122からしきい値Ith2を検出するまで時間の10%〜30%程度に設定することが好ましい。
図9は、図8に示した時刻t3からt6の間における電流の電流経路の例を示す図である。図5では例としてW相のモータケーブル上(地絡点F)に地絡が発生している状況を示している。電流を発生させる起電力はトランスの出力(2次側)の負の対地電圧Vtrnである。
トランスの出力は3相あるが、順変換器回路102のダイオードによって順変換器回路102からトランスTRNの対地電圧が負である相(R相、S相、T相のいずれか)へ電流が流れ込む。対地電圧が負である相が複数有る場合は、複数の相へ電流が流れ込むが、図9では説明の簡略化のため、トランスTRNと電源ケーブルTCと、順変換器回路102のダイオードを1相分のみ記載している。トランスTRNから出た電流は大地ETを流れて地絡点Fへ到達し、出力端子WとスイッチSWzを経由して順変換器回路102に戻る。
このとき、電力変換装置100の出力端子Wから地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスLsが存在するので、このケーブル部分に地絡電流Isが流れると(数1)に基づく起電力Vs発生する。
Vs=Ls・(dIs/dt) (数1)
上記ケーブル部分以外のケーブル部分とモータの巻き線には電流が流れていないため、出力端子VおよびUの電圧は、地絡点Fの電圧と等しくなる。そこで、電圧センサ22wvで出力端子W−V間の相間電圧を計測すると、出力端子W−地絡点F間の電圧Vsを計測し、電流センサ21wで地絡電流Isを計測することで、上記(数1)より電力変換装置100の出力端子Wから地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスLsを計算することができる。
ところで、図9および図5に記載の地絡電流を発生させるためには、トランスTRNの3相の出力の対地電圧うち少なくとも1つが負である必要がある。
図10は、3相出力端子のうちS相接地された、相電圧Vacであるトランスの等価回路である。このとき、出力が開放状態におけるトランスTRNの2次側3相出力R、S、T相の対地電圧は図11のようになる。f0は交流電源の基本周波数であって、通常は数10Hz程度である。
交流電源電圧の1周期(=1/f0)の間に、3相の中に対地電圧が負である相が1つも存在しない期間Txが存在する。この場合、対地電圧Vtrnが0Vとなり、下アームスイッチをONにしても地絡電流を発生させることができない。しかしながら期間Txを交流電源電圧の半周期(=1/(2・f0))シフトさせた期間Taでは、必ず3相の中に対地電圧が負である相が1つ以上存在する。
そこで、図3と図6のフローにおいて、計測電流がしきい値まで到達しない場合には、交流電源電圧の半周期の間待機して、再度フローを実行することで、トランスTRNの3相の中に対地電圧が負である相が1つ以上存在し、対地電圧Vtrnが負になり、地絡電流を発生させることができるようになる。
なお、トランスTRNの中性点が設置されている場合は、常に、トランスTRNの3相の出力の対地電圧うち少なくとも1つが負であるため、上記の半周期シフトさせた計測動作は必要としない。
図12は、電力変換装置100の出力端子から地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスLsを計算するフローチャートである。制御回路105におけるインダクタンス値計算部121は、記憶されている電流値Is1とIs2および時刻t4から時刻t5までの待機時間Tから電流変化率dIs/dtを計算する(ステップS141)。
続いて、インダクタンス値計算部121は、記憶されている電圧値Vs1と電圧値Vs2からそれらの平均より電圧値Vsを計算する(ステップS142)。
そして、電力変換装置100の出力端子Wから地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスLsを(数1)を変形した式である(数2)によりインダクタンス値計算部121が計算し(ステップS143)て、終了する。
Ls=Vs/(dIs/dt) (数2)
図13は、図2のステップS105で行われる地絡箇所の判定方法を示す図である。地絡箇所判定部123は、インダクタンス値計算部121からの、インダクタンス値Lsと、インダクタンス値記憶部122からのモータケーブルのインダクタンスLcを入力する。
地絡箇所判定部123は、インダクタンス値LsがLcよりも小さいときはモータケーブルMCでの地絡と判定し、インダクタンス値LsがLcより大きいときはモータMTでの地絡と判定する。さらに、Len_s/Len_c=Ls/Lc・100の値を以って、変換器からモータへ向けて何パーセント進んだ点に地絡箇所があるかを判定する。
ここで、電力変換装置100の出力端子からケーブル上の地絡箇所までのケーブル長をLen_sとし、ケーブル全長をLen_cとし、出力端子から地絡点Fまでのケーブルに存在するインダクタンスをLs、モータケーブルの全長のインダクタンスをLcとした。
インダクタンス値記憶部122が保持しているLcは、入力器106あるいは受信機107より事前に入力されている。モータケーブルのインダクタンス値Lcを入力する代わりに、使用しているモータケーブルのケーブル長Lenとケーブル種類を入力し、ケーブル種類に応じた比例係数を使ってケーブル長Lenからインダクタンス値Lcを計算する手段も可能である。
図14は、表示器108の構成図である。表示器108はデコーダ131、LEDドライバ132、LEDセグメント133で構成される。
制御回路105から送られてきた地絡箇所判定結果と地絡相番号は、デコーダ131でLEDセグメントの数字および文字の表示パターンにデコードされる。LED132ドライバは電流信号によって、デコードされた表示パターンをLEDセグメント133に表示させる。例として、地絡箇所に対応したアルファベット文字・数字や、地絡箇所までの距離を表すメートル数を表示させることができる。
図15は、送信機109の構成図である。送信機109は変調器141、増幅器142、アンテナ143で構成され、制御回路105から送られてきた地絡箇所判定結果と地絡相番号は変調器141で変調され、増幅器142で電力増幅され、アンテナ143より外部へ無線送信される。図示していないが、別の機器やシステムは、無線送信された信号を受信し、復調することで、地絡箇所判定結果と地絡相番号の情報を得ることが可能である。
図16は、逆変換器回路104の第一の変形例を示す図である。図1に示した逆変換器回路104との違いは、各相の出力電流値を測定する3つの電流センサ21u、21v、21wの取り付け位置が、出力端子U、V、Wから、下アームのスイッチSWx、SWy、SWzのエミッタ側のノードに変更になっていること。
および、電圧センサがU−V相、W−V相間の2つが無くなり、U相−ノードN、V相−ノードN、W相−ノードN間の3つの電圧センサ22un、22vn、22wnが代わりに取り付けられていることである。つまり、順変換器回路102(図示省略)と逆変換器回路104を接続する直流電圧配線を基準にとして、逆変換器回路104の出力の3つの相との間に、電圧センサ22un、22vn、22wnが1つずつ配置された構成である。
図16に示す位置に電流センサ21u、21v、21wを取り付けた場合、下アームのスイッチSWx、SWy、SWzをONしている間は、出力端子U、V、Wと同じ電流が流れるため、第一の変形例を用いても、出力端子U、V、Wの出力電流を測定することができる。
また、出力端子間の相間電圧は、電圧センサ22un、22vn、22wnの計測値Vun、Vvn、Vwnのうち2つの組合せで減算を電圧計測回路112が行うことで計算することができる(例えば、Vuv=Vun−Vvn、Vwv=Vwn−vvn)。したがって、第一の変形例を用いても、各相の出力電流と、相間電圧を計測できるので、実施例1と同様な動作を実現することができる。
図17は、逆変換器回路104の第二の変形例を示す図である。図1に示した逆変換器回路104との違いは、出力端子Vに取り付けられた電流センサ21vが無く、代わりにノードNへの接続部(順変換器回路102(図示省略)と逆変換器回路104を接続する直流電圧配線)に電流センサ21nが1つ取り付けられていることである。図17に示した電流センサを取り付けた場合、図3に示した地絡相特定フローにおいて、下アームのスイッチSWx、SWy、SWzをONしている間は、電流センサ21nではU、V、W相の合計出力電流Iu+Iv+Iwが計測される。
そこで、電流センサ21nの計測値から電流センサ21uと電流センサ21wの計測値を電流計測回路111が引き算することで、V相の出力電流Ivを求めることができる。また、図6に示した出力電流および相間電圧計測フローにおいて、下アームのスイッチSWyをONしている間は、電流センサ21nはV相の出力電流Ivを計測する。したがって、第二の変形例を用いても、電流センサが無いV相出力端子の電流を計測できるので、実施例1と同様な動作を実現することができる。
実施例に示した電力変換装置100の地絡相を特定する動作においては、地絡相と非地絡相の両方の電流を測定するが、電流量が相対的に大きい地絡相の電流値を参照する。
また、インダクタンス値計算のための動作においては、本実施例においては電流量が相対的に小さくなる非地絡相の電流を用いないで、地絡相の電流を用いる。したがって、本実施例に示した電力変換装置100は一般的な分解能の電流センサを用いても接続ケーブルやモータでの地絡箇所を判定することができる。
実施例1では、3相のケーブルを用いた場合について説明したが、外部装置が単相モータであってもよい。その場合、電気を送るケーブルと電気を受け取るケーブルの2本のケーブルとなり、電力変換装置内に配置した電圧センサで、片方のケーブルと、もう一方のケーブルの間の電圧を測ることで、地絡電流を流した場合の起電力Vsを求めること、および地絡電流を求めることなどにより、3相の場合と同様に、地絡箇所を判定することができる。
また、単相モータに適用する場合には、図2の地絡相特定のステップS102は不要となる。
また、実施例1では、モータを例にしているが、ケーブルに接続する外部装置は、モータに限られず、電流を流さないときに、入力端子間の電圧が0Vとなる外部装置には適用できる。
[応用例]
図18は、前記した実施例を産業用インバータに応用した例を示す図である。本例における電力変換装置201と駆動用モータMTの間は、モータケーブルMCで接続されている。
電力変換装置201は、交流電源ケーブルTCを通して外部から電力を供給されている。モータMTは空調機、圧縮機、コンベア、エレベータなど様々な産業用機器を駆動することに使用される。
モータMT内部やモータケーブルMC上で地絡が発生した場合、電力変換装置201が備えている表示器202に地絡箇所の情報が表示されるとともに、無線送信によって外部のシステムへ地絡箇所が報知される。
MC…モータケーブル、MT…モータ、21u、21v、21w、21n…電流センサ、22uv、22wv、22un、22vn、22wn…電圧センサ、100…電力変換装置、102…順変換器回路、103…平滑コンデンサ、104…逆変換器回路、105…制御回路、111…電流計測回路、112…電圧計測回路、121…インダクタンス値計算部、122…インダクタンス値記憶部、123…地絡箇所判定部

Claims (15)

  1. 交流電力を直流電力に変換する順変換部と、
    外部装置と接続するケーブルに流れる電流を制御するスイッチ素子を備えた逆変換部と、
    前記スイッチ素子を駆動するドライバ部と、
    前記逆変換部の電流を計測する電流センサと、
    前記逆変換部の電圧を計測する電圧センサと、
    前記電圧センサおよび電流センサの計測信号を入力し、前記ドライバ部を制御する制御部とを有し、
    地絡箇所を調査する際、前記ケーブルに地絡電流を発生させ、
    前記電流センサは、地絡電流の電流値を計測し、
    前記電圧センサは、地絡電流が流れることにより発生する電圧値を計測し、
    前記制御部は、
    計測された前記電流値と前記電圧値に基づいて、地絡箇所を判定することを特徴とする電力変換装置。
  2. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記地絡箇所の判定結果を外部に報知する送信部を有することを特徴とする電力変換装置。
  3. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記逆変換部は、
    3つのハーフブリッジ回路で構成され、
    前記制御部は、
    前記地絡箇所を調査する際、
    地絡が発生している相のハーフブリッジ回路の下アームの前記スイッチ素子をオンにして、前記ケーブルに前記地絡電流を発生させ、
    前記電流センサは、前記地絡電流の前記電流値を計測し、
    前記電圧センサは、地絡が発生している相と地絡が発生していない相の間の相間電圧を計測し、
    前記制御部は、
    計測された前記電流値と前記電圧値に基づいて、前記地絡箇所を判定することを特徴とする電力変換装置。
  4. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    インダクタンス値計算部と地絡箇所判定部を備え、
    前記インダクタンス値計算部は、
    計測された前記電流値と前記電圧値に基づいて、
    交流電力の出力端子からと地絡箇所までの間のインダクタンス値を計算し、
    前記地絡箇所判定部は、
    前記インダクタンス値に基づいて地絡箇所を判定することを特徴とする電力変換装置。
  5. 請求項4に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    前記ケーブルの前記インダクタンス値を記憶した記憶部を備え、
    前記地絡箇所判定部は、
    前記記憶部が記憶している前記インダクタンス値と前記インダクタンス値計算部で計算された前記インダクタンス値とを比較することで、地絡箇所がケーブル上かモータ上かを判定することを特徴とする電力変換装置。
  6. 請求項4に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    前記ケーブルの前記インダクタンス値を記憶した記憶部を備え、
    前記地絡箇所判定部は、
    前記記憶部が記憶している前記インダクタンス値に対する前記インダクタンス値計算部の計算された前記インダクタンス値の割合から、ケーブル上の地絡位置を判定することを特徴とする電力変換装置。
  7. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    前記ケーブルもしくは前記外部装置で発生した前記地絡箇所の調査の前に、
    地絡電流を発生させ、前記地絡電流を調査することで地絡が発生している相を特定することを特徴とする電力変換装置。
  8. 請求項7に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    前記ケーブルで発生した前記地絡箇所の調査の前に、
    前記逆変換部の下アームの3つの前記スイッチ素子をオンにして、前記ケーブルに前記地絡電流を発生させ、
    前記電流センサで計測した前記地絡電流を比較して、電流増加速度が最大である相を地絡相として特定することを特徴とする電力変換装置。
  9. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記制御部は、
    前記地絡電流の電流量が計測に不十分だった場合には、
    外部電源の交流電圧周期の半分の時間待機した後、前記地絡電流の計測を行うようにすることを特徴とする電力変換装置。
  10. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記順変換部はダイオードブリッジ整流回路で構成されていることを特徴とする電力変換装置。
  11. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記電流センサは、
    前記逆変換部の出力の3つの相に1つずつ配置されていることを特徴とする電力変換装置。
  12. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記電流センサは、
    前記逆変換部を構成する3つのハーフブリッジ回路の下アームに各1つずつ配置されていることを特徴とする電力変換装置。
  13. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記電流センサは、
    前記逆変換部の出力の2つの相に1つずつ、前記順変換部と前記逆変換部を接続する直流電圧配線に1つ配置されていることを特徴とする電力変換装置。
  14. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記電圧センサは、
    前記逆変換部の出力の3つの相間のうち2つ相間の電圧を計測するように配置されていることを特徴とする電力変換装置。
  15. 請求項1に記載の電力変換装置において、
    前記電圧センサは、
    前記順変換部と前記逆変換部を接続する直流電圧配線を基準として、前記逆変換部の出力の3つの相との間に1つずつに配置されていることを特徴とする電力変換装置。
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