JP2021050772A - 液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに液化天然ガスタンク - Google Patents

液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに液化天然ガスタンク Download PDF

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正明 加藤
久美 後藤
Hisami Goto
久美 後藤
直樹 鎌田
Naoki Kamata
直樹 鎌田
俊之 柏木
Toshiyuki Kashiwagi
俊之 柏木
真二 福迫
Shinji Fukusako
真二 福迫
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Abstract

【課題】液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制でき、製造コストを低減し、環境上面で優れているとともに、施工性にも優れる液化天然ガスタンク用断熱材を提供する。【解決手段】液化天然ガスタンクのタンク鋼板121の外表面に設けられる断熱材20であって、断熱材20は、樹脂発泡体からなる層21、23と真空断熱材からなる層22とを含み、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有する液化天然ガスタンク用断熱材。【選択図】図2

Description

本発明は、液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに液化天然ガスタンクに関し、詳しくは、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制でき、製造コストを低減し、加工残材も削減でき環境面で優れているとともに、施工性にも優れる液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに該断熱材を備えてなる液化天然ガスタンクに関する。
液化天然ガス(以下、LNGと呼ぶことがある)を運搬または燃料とするLNG運搬船は、−163℃ともなる極低温のLNGを貯蔵するLNGタンクを備えている。LNGタンクにおいては、国際海事機関(IMO)によって基準が定められ、その内、自立タンク方式としては完全二次防壁のタイプA、部分二次防壁のタイプB、二次防壁不要の圧力容器であるタイプCの各LNGタンクがある。
前記タイプCのLNGタンクは一般的に、非大型船舶に搭載され、LNGの内部圧力に十分耐え得る鋼製となっている。またLNGは上記のように極低温であるがために、タイプCのLNGタンクの外表面には例えば樹脂発泡体からなる多数の断熱材ボードが設けられている。
しかしながら、従来の前記断熱材ボードは、亀裂や剥離が生じ易いという問題点がある。その理由として、鋼製のLNGタンクが内部に存在する極低温のLNGによって顕著に収縮し、断熱材ボードが収縮した鋼に追随できないことが挙げられる。
一方、LNGタンクの外表面に多数の断熱材パネルを設けると、LNGタンクと断熱材パネルとの間の固定部や断熱材パネルの目地部により断熱効果が低下してしまうという問題点もある。
かかる問題点を解消するために、例えば特許文献1(特開平6−74394号公報)には、タンク鋼鈑の外表面にグラスウールを貼着し、該グラスウール上にグラスクロスを貼着固定し、該グラスクロス上に樹脂発泡材を吹き付け、該吹き付けた樹脂発泡材上に耐食性金属からなる金網を取り付け、該金網上から再度樹脂発泡材を吹き付けてなることを特徴とする低温貯蔵用金属製タンクの保冷構造が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された技術でも、鋼板の収縮による樹脂発泡材の亀裂や剥離の問題点が依然として残り、またその施工にも高いコストがかかるという問題点がある。
また、特許文献2(特開2004−132438号公報)には、曲面形状に加工された真空断熱材の上面と下面の少なくとも一面に曲面形状の硬質発泡性プラスチックを接着した複合真空断熱材が開示されている。曲面形状の硬質発泡性プラスチックは、硬質発泡性プラスチックのブロックをカッター装置に設置し、所望の曲面形状となるようにカッター装置を動作させ、切り出した後、曲げ型を用いて該曲面形状を正確化することにより作製される。
しかし、特許文献2に開示された技術では、鋼板の収縮による樹脂発泡材の亀裂や剥離の問題点を未だ解決できない。さらに、硬質発泡性プラスチックのブロックを用いて曲面形状の硬質発泡性プラスチックを切り出すと、残材が発生して製造コスト上や環境上問題となるとともに、カッター装置や曲げ型の使用が必須であるため作製が煩雑になるという問題点もある。
特開平6−74394号公報 特開2004−132438号公報
したがって本発明の目的は、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制でき、製造コストを低減し、加工残材も削減でき環境面で優れているとともに、施工性にも優れる液化天然ガスタンク用断熱材およびその施工方法並びに該断熱材を備えてなる液化天然ガスタンクを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、樹脂発泡体からなる層および真空断熱材からなる層を有する断熱材を用いるとともに、液化天然ガスタンクのタンク鋼板側から外側に向かって該樹脂発泡体からなる層に密度勾配をもたせることにより、前記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられる断熱材であって、
前記断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、
前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有する
ことを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材。
2.前記断熱材は、前記真空断熱材からなる層を複数層有し、かつ、前記真空断熱材からなる層が前記樹脂発泡体からなる層にサンドイッチされた構造を有することを特徴とする前記1に記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
3.前記樹脂発泡体が、ポリウレタンフォームであることを特徴とする前記1または2に記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
4.前記樹脂発泡体からなる層は、前記タンク鋼板側から外側に向かって、80kg/m〜30kg/mの範囲で密度が減少する密度勾配を有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
5.前記断熱材の厚さが、300mm〜500mmの範囲内であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
6.前記断熱材の厚さ方向と直交する方向に平面を有するように、ガラスメッシュが設けられてなることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
7.液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含む断熱材を設ける断熱材形成工程を有し、
前記断熱材形成工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配を有する
ことを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
8.前記樹脂発泡体からなる層が、ポリウレタンフォームによって形成され、
前記断熱材形成工程は、前記タンク鋼板または前記真空断熱材上に前記ポリウレタンフォームの吹き付ける吹付工程を含み、
前記吹付工程は、前記タンク鋼板または前記真空断熱材上に密度の異なるポリウレタンフォームを複数回にわたり吹き付けて前記タンク鋼板の外表面に断熱材を形成するものであり、
前記吹付工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記ポリウレタンフォームの密度が減少する密度勾配が形成される
ことを特徴とする前記7に記載の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
9.前記断熱材は、前記真空断熱材からなる層を複数層有し、かつ、前記真空断熱材からなる層が前記樹脂発泡体からなる層にサンドイッチされた構造を有することを特徴とする前記8に記載の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
10.前記1〜6のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材が、タンク鋼板の外表面に設けられてなることを特徴とする液化天然ガスタンク。
11.船舶に固定される前記10に記載の液化天然ガスタンク。
12.タイプCである前記11に記載の液化天然ガスタンク。
本発明の液化天然ガスタンク用断熱材は、液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられ、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、該樹脂発泡体からなる層は、前記タンク鋼板側から外側に向かって密度が減少する密度勾配を有することを特徴としているので、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも高密度の樹脂発泡体が前記鋼板の熱収縮に追随し、断熱材の亀裂や剥離等を抑制できる。また、高密度の樹脂発泡体は断熱性を低下させるが、低密度の樹脂発泡体は断熱性に優れているので、高密度の樹脂発泡体の有する前記欠点を補うことができる。なお、樹脂発泡体の密度は発泡剤の量により容易に制御できるため、施工性にも優れる。さらには、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制でき、特許文献2に記載のような硬質発泡性プラスチックのブロックを用いた切り出しを必要としないため、製造コスト上かつ環境上有利となり、施工性にも優れる。なお、BOGとは蒸発したLNGを意味し、BORとはLNGの自然気化率を意味する。
また本発明の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法は、液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含む断熱材を設ける断熱材形成工程を有し、前記断熱材形成工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配を有することを特徴としているので、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制でき、特許文献2に記載のような硬質発泡性プラスチックのブロックを用いた切り出しを必要としないので、製造コスト上かつ環境上有利となり、施工も容易である。
また本発明の液化天然ガスタンクは、前記本発明の断熱材を備えていることを特徴としているので、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制される。また、断熱性に優れ、製造コスト上かつ環境上有利であるとともに、施工性にも優れる。
本発明に適用され得るタイプCの液化天然ガスタンクを説明するための図である。 本発明の液化天然ガスタンク用断熱材を説明するための断面図である。 本発明の液化天然ガスタンク用断熱材の別の形態を説明するための断面図である。 本発明の液化天然ガスタンク用断熱材の別の形態を説明するための断面図である。
上述のように、従来の前記断熱材ボードは、鋼製のLNGタンクが内部に存在する極低温のLNGによって顕著に収縮するとその収縮に追従できず、亀裂や剥離が生じ易いという問題点があった。この問題点を解決するために、例えば特許文献1や特許文献2に開示された技術が提案されているが、それでもなお亀裂や剥離の問題点が依然として残るとともに、断熱効果、製造コスト、施工性等にも改善の余地があった。
そこで本出願人は、液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられ樹脂発泡体を含む断熱材であって、タンク鋼板側から外側に向かって樹脂発泡体の密度を減少させる技術を提案している(特願2019−92827号)。この技術によれば、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、施工も容易な断熱材を提供できるが、十分に抑制されたボイルオフガス(BOG)およびボイルオフレート(BOR)を達成するには、断熱材の厚さを例えば300mm〜500mm程度で設けてもその達成が不可能であることが判明し、その達成には樹脂発泡材をさらに厚く設ける必要があり、当該タンクが巨大化することが懸念された。
本発明では、前記特許文献1や特許文献2に開示された技術における問題点を解決するとともに、十分に抑制されたボイルオフガス(BOG)およびボイルオフレート(BOR)を達成することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながらさらに説明する。
図1は、本発明に適用され得るタイプCの液化天然ガスタンクを説明するための図であり、図1(a)は液化天然ガスタンクの長手方向の側面図であり、(b)は液化天然ガスタンクの直径方向の正面図である。
図1において、タイプCの液化天然ガスタンク(LNGタンク)1は、円筒状の圧力容器12を備え、圧力容器12は架台14によって支持されている。一般的にタイプCのLNGタンクは、30〜10,000mの容量を有し、タンクの数量としては1個または複数個である。圧力容器12は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル鋼等の鋼板から構成される。
圧力容器12における鋼板の熱膨張収縮特性の一例として、ステンレス鋼からなる圧力容器に、−163℃ともなる極低温のLNGを貯蔵すると、ステンレス鋼が1mあたり約3mm熱収縮する。
本発明の断熱材は、圧力容器12の外表面に設けられる。
図2は、本発明の断熱材を説明するための断面図である。
図2において、本発明の断熱材20は、圧力容器の鋼板121上に、鋼板121側から外側(A方向)に向かって樹脂発泡体からなる層21、真空断熱材からなる層22、樹脂発泡体からなる層23がこの順で設けられ、樹脂発泡体からなる層23の密度は、樹脂発泡体からなる層21の密度よりも低く設定されている。すなわち、本発明の断熱材20は、圧力容器の鋼板121側から外側(A方向)に向かって樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有する。また、樹脂発泡体からなる層23の上部、すなわち断熱材の最表面側には、さらに亀裂や剥離を抑制する目的でFRP(繊維強化プラスチック)やポリウレア樹脂からなる補強層26を設けることもできる。
図3は、本発明の断熱材のさらに好適な実施形態を説明するための断面図である。
図3において、本発明の断熱材200は、圧力容器の鋼板121上に、鋼板121側から外側(A方向)に向かって樹脂発泡体からなる層21、真空断熱材からなる層22、樹脂発泡体からなる層23、真空断熱材からなる層24、樹脂発泡体からなる層25がこの順で設けられ、樹脂発泡体からなる層23および/または25の密度は、樹脂発泡体からなる層21の密度よりも低く設定されている。すなわち、本発明の断熱材200は、圧力容器の鋼板121側から外側(A方向)に向かって樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有する。また、樹脂発泡体からなる層23の上部、すなわち断熱材の最表面側には、さらに亀裂や剥離を抑制する目的でFRP(繊維強化プラスチック)やポリウレア樹脂からなる補強層26を設けることもできる。
図3の形態では、真空断熱材からなる層が複数層設けられ、真空断熱材からなる層22が樹脂発泡体からなる層21および23にサイドイッチされた構造を有し、真空断熱材からなる層24が樹脂発泡体からなる層23および25にサイドイッチされた構造を有する。
この図3の形態によれば、液化天然ガスタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が一層抑制され、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制することができる。また、樹脂発泡体からなる層21、23および25が真空断熱材からなる層22、24を保護する役割を果たし、物理的な衝撃等に対する優れた耐衝撃性を提供できる。また、耐突刺性も良好となる。
本発明では、断熱材20(200)が鋼板121側から外側に向かって、80kg/m〜30kg/mの範囲で樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有することが好ましい。このように密度を設定することで、断熱材の亀裂や剥離等をさらに抑制することができる。
なお本発明で言う密度は、JIS K 7222 「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」により一般的に測定される。
例えば図3に示す形態において、樹脂発泡体からなる層21の密度は、例えば、36kg/m〜80kg/mであり、好ましくは50kg/m〜65g/mである。
また、樹脂発泡体からなる層23の密度は、例えば33kg/m〜67kg/mであり、好ましくは42kg/m〜58kg/mである。
また、樹脂発泡体からなる層25の密度は、例えば30kg/m〜55kg/mであり、好ましくは35kg/m〜50kg/mである。
なお、樹脂発泡体からなる層21と23との密度差は、例えば3kg/m〜13kg/mであり、好ましくは5kg/m〜11kg/mである。
樹脂発泡体からなる層23と25との密度差は、例えば3kg/m〜13kg/mであり、好ましくは5kg/m〜11kg/mである。
図3の形態において、本発明の断熱材200の合計の厚さは、300mm〜500mmであることが好ましく、350mm〜450mmであることがさらに好ましい。
図3に示す形態において、樹脂発泡体からなる層21の厚さとしては、例えば20mm〜100mmであり、40mm〜80mmが好ましい。
樹脂発泡体からなる層23の厚さとしては、例えば100mm〜240mmであり、120mm〜220mmが好ましい。
樹脂発泡体からなる層25の厚さとしては、例えば100mm〜240mmであり、120mm〜220mmが好ましい。
なお本発明の断熱材は、図2または図3に示す形態に制限されない。例えば図3の形態では、真空断熱材からなる層が複数層設けられ、真空断熱材からなる層22が樹脂発泡体からなる層21および23にサイドイッチされ、真空断熱材からなる層24が樹脂発泡体からなる層23および25にサイドイッチされ、このように2個のサンドイッチ構造を有しているが、真空断熱材からなる層を例えば3層以上10層以下設け、上記のようなサンドイッチ構造を形成してもよい。この形態では、様々な形状の圧力容器に対応が可能であり、断熱材の亀裂や剥離を抑制できる。
図2および図3の形態の断熱材は、厚さ方向において密度が異なる樹脂発泡体からなる層を複数設けることにより、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体の密度が段階的に減少する密度勾配を有している。このような形態によれば、施工が容易であるとともに、断熱材の亀裂や剥離を良好に抑制できる。
また本発明の別の形態によれば、断熱材の厚さ方向と直交する方向に平面を有するように、ガラスメッシュを設けてもよい。このような形態によれば、断熱材の亀裂や剥離がさらに抑制される。図4は、ガラスメッシュを設けた本発明の断熱材を説明するための断面図である。樹脂発泡体からなる層21の厚さ方向の中間部分にガラスメッシュ42が設けられている。ガラスメッシュ42の目幅は、例えば5mm〜15mmであり、好ましくは7.5mm〜12.5mmである。なお、このようなガラスメッシュ42は、任意の箇所に複数設けることもできる。
なお、樹脂発泡体からなる層は、鋼板121の熱収縮に対する追随性が良好であるという観点から、かつ施工性に優れるという観点から、2液型のポリウレタンフォームであることが好ましい。
ポリウレタンフォームの密度は、発泡剤(例えばハイドロフルオロカーボンHFCや水等)の注入量により制御することが可能である。
また真空断熱材は公知の断熱材であり、例えばコア材をガスバリアー性フィルムからなる袋体に収納し、袋体内部を減圧して密封形成したものであることができる。コア材としては、連続気泡硬質ウレタンフォーム、連続気泡ポリスチレンフォームなどの有機物、また、ガラスウールなどの無機繊維、シリカなどの無機粉体を使用することができる。真空断熱材のサイズは液化天然ガスタンクの容量や形状等を勘案して適宜決定すればよいが、例えば平面面積は900cm〜10,000cm、厚さは10mm〜35mm程度である。
図3の形態において、樹脂発泡体からなる層21の引張強さは、亀裂や剥離をさらに抑制するという観点から、例えば常温(20℃)において20〜55N/cmであることが好ましく、樹脂発泡体からなる層23の前記引張強さは、15〜45N/cmであることが好ましく、樹脂発泡体からなる層25の前記引張強さは、10〜35N/cmであることが好ましい。
引張強さは、JIS A 9511「発泡プラスチック保温材」により一般的に測定される。
本発明の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法は、液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含む断熱材を設ける断熱材形成工程を有し、前記断熱材形成工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配を有することを特徴とする。
とくに好適な前記施工方法は、前記樹脂発泡体からなる層が、ポリウレタンフォームによって形成され、前記断熱材形成工程は、前記タンク鋼板または前記真空断熱材上に前記ポリウレタンフォームの吹き付ける吹付工程を含み、前記吹付工程は、例えば図3で示したようなサンドイッチ構造を有するように、密度の異なるポリウレタンフォームを複数回にわたり吹き付ける工程であるのが好ましい。この吹付工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記ポリウレタンフォームの密度が減少する密度勾配が形成される。
具体的には、圧力容器の鋼板121上に、ポリウレタンフォームを吹き付けて樹脂発泡体からなる層21を形成し、所定の形状の複数枚の真空断熱材を樹脂発泡体からなる層21上に貼り付け、真空断熱材からなる層22を形成する。このとき、個々の真空断熱材間で目地部の間隙が形成されないようにするのが好ましい。続いて、真空断熱材からなる層22上にポリウレタンフォームを吹き付けて樹脂発泡体からなる層23を形成し、上記のようなサンドイッチ構造を形成する。以下、同様に樹脂発泡体からなる層23、真空断熱材からなる層24および樹脂発泡体からなる層25からなるサンドイッチ構造を形成し、必要に応じて補強層26を設ける。
ポリウレタンフォームの吹き付けは公知技術を適用することができる。例えばポリウレタンフォームを2液型とし、圧力および温度を制御しながら2液を撹拌し、スプレーにより吹き付ける方法が挙げられる。
また、図3に示す形態において、例えば樹脂発泡体からなる層21、23、25の形成は、それぞれの発泡体が所定の厚さとなるまで、複数回吹き付けてもよい。例えば樹脂発泡体からなる層21の厚さが厚い場合(例えば100mm程度)、1回の吹き付け厚を40mm以下とし、この吹き付けを複数回繰り返すことにより、所定の厚さに樹脂発泡体からなる層21を形成することができる。その他の樹脂発泡体からなる層についても同様である。
本発明の液化天然ガスタンクは、本発明の断熱材を備えていることを特徴とする。すなわち、本発明の断熱材をタンク鋼板の外表面に設け、断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、断熱材が前記タンク鋼板側から外側に向かって樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有することを特徴とする。本発明のLNGタンクは、船舶に固定された、とくにタイプCのLNGタンクとするのが好適である。上述のように、タイプCのLNGタンクは、船舶の大きさ等によって様々な形状を取り得るが、本発明の断熱材を適用することにより、LNGタンクの鋼板に顕著な熱収縮が生じた場合でも亀裂や剥離等が抑制され、また、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)の十分な抑制が可能となる。
また、LNG輸送時に船舶が波乱等を受けても、真空断熱材が例えばポリウレタンフォーム間に接着固定されていることから、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層との間に隙間が発生しにくく、断熱性能の低下の懸念が払拭される。
なお、本発明者らは、タイプCのLNGタンクにLNGを貯蔵し、圧力容器の鋼板側から外側に向かって樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配を有する本発明の断熱材を用いることにより、鋼板が熱収縮しても断熱材に亀裂や剥離が生じないことを確認している。
具体的には、図3に示す形態において、樹脂発泡体からなる層21、23および25として2液型のポリウレタンフォームを用い、芯材がグラスウールである真空断熱材22、24を用い、樹脂発泡体からなる層21の密度を60kg/m、樹脂発泡体からなる層23の密度を50kg/m、樹脂発泡体からなる層25の密度を40kg/mとし、真空断熱材22、24の平面面積を10,000cm、厚さを10mmとし、断熱材の合計厚さを400mmとしたときに、鋼板が熱収縮しても断熱材に亀裂や剥離が生じず、ボイルオフガス(BOG)の発生およびボイルオフレート(BOR)を十分に抑制できることを確認している。
1 タイプCの液化天然ガスタンク
12 圧力容器
14 架台
20、200 本発明の断熱材
21、23、25 樹脂発泡体からなる層
22、24 真空断熱材からなる層
26 補強層
121 鋼板
42 ガラスメッシュ

Claims (12)

  1. 液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に設けられる断熱材であって、
    前記断熱材は、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含み、
    前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体からなる層の密度が減少する密度勾配を有する
    ことを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材。
  2. 前記断熱材は、前記真空断熱材からなる層を複数層有し、かつ、前記真空断熱材からなる層が前記樹脂発泡体からなる層にサンドイッチされた構造を有することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
  3. 前記樹脂発泡体が、ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1または2に記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
  4. 前記樹脂発泡体からなる層は、前記タンク鋼板側から外側に向かって、80kg/m〜30kg/mの範囲で密度が減少する密度勾配を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
  5. 前記断熱材の厚さが、300mm〜500mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
  6. 前記断熱材の厚さ方向と直交する方向に平面を有するように、ガラスメッシュが設けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材。
  7. 液化天然ガスタンクのタンク鋼板の外表面に、樹脂発泡体からなる層と真空断熱材からなる層とを含む断熱材を設ける断熱材形成工程を有し、
    前記断熱材形成工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記樹脂発泡体の密度が減少する密度勾配を有する
    ことを特徴とする液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
  8. 前記樹脂発泡体からなる層が、ポリウレタンフォームによって形成され、
    前記断熱材形成工程は、前記タンク鋼板または前記真空断熱材上に前記ポリウレタンフォームの吹き付ける吹付工程を含み、
    前記吹付工程は、前記タンク鋼板または前記真空断熱材上に密度の異なるポリウレタンフォームを複数回にわたり吹き付けて前記タンク鋼板の外表面に断熱材を形成するものであり、
    前記吹付工程によって、前記断熱材は、前記タンク鋼板側から外側に向かって前記ポリウレタンフォームの密度が減少する密度勾配が形成される
    ことを特徴とする請求項7に記載の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
  9. 前記断熱材は、前記真空断熱材からなる層を複数層有し、かつ、前記真空断熱材からなる層が前記樹脂発泡体からなる層にサンドイッチされた構造を有することを特徴とする請求項8に記載の液化天然ガスタンク用断熱材の施工方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の液化天然ガスタンク用断熱材が、タンク鋼板の外表面に設けられてなることを特徴とする液化天然ガスタンク。
  11. 船舶に固定される請求項10に記載の液化天然ガスタンク。
  12. タイプCである請求項11に記載の液化天然ガスタンク。
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