以下、本実施形態を図1乃至図5に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るディスクブレーキ1は、通常走行時、電動機である電動モータ40の駆動によって制動力を発生させる電動ブレーキ装置である。なお、以下の説明において、車両内側(インナ側)を一端側(カバー部材39側)と称し、車両外側(アウタ側)を他端側(ディスクロータD側)と称して、適宜説明する。つまり、図1及び図2において、右側を一端側と称し、左側を他端側として称して、適宜説明する。
本実施形態に係るディスクブレーキ1は、図1に示すように、車両の回転部に取り付けられた、ディスクロータDを挟んで軸方向両側に配置された、制動部材としての一対のインナブレーキパッド2、及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4と、を備えている。本ディスクブレーキ1は、キャリパ浮動型として構成されている。なお、一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とは、車両のナックル等の非回転部に固定されたブラケット5にディスクロータDの軸方向へ移動可能に支持されている。
図1に示すように、キャリパ4は、キャリパ4の主体であるキャリパ本体8と、電動モータ40からの回転をキャリパ本体8のシリンダ部13内のピストン18に伝達して、該ピストン18に推力を付与する伝達機構9と、を備えている。キャリパ本体8は、インナブレーキパッド2に対向する基端側に配置され、該インナブレーキパッド2に対向して開口する円筒状のシリンダ部13と、シリンダ部13からディスクロータDを跨いでアウタ側へ延び、アウタブレーキパッド3に対向する、先端側に配置される一対の爪部14、14と、を備えている。
キャリパ本体8のシリンダ部13内、すなわちシリンダ部13のシリンダボア16に、ピストン18がシリンダ部13に対して相対回転不能に、且つ軸方向に移動可能に収容されている。ピストン18は、インナブレーキパッド2を押圧するものであって、有底円筒状に形成される。該ピストン18は、その底部がインナブレーキパッド2に対向するように、シリンダ部13のシリンダボア16内に収容されている。ピストン18は、その底部とインナブレーキパッド2との間の回り止め係合によって、シリンダボア16、ひいてはキャリパ本体8に対して相対回転不能に支持される。
シリンダ部13のシリンダボア16には、その他端側内周面にシール部材(図示略)が配置されている。そして、ピストン18は、このシール部材に接触した状態で軸方向に移動可能にシリンダボア16に収容される。ピストン18の底部側の外周面と、シリンダボア16の他端側内周面との間にはダストブーツ20が介装されている。これらシール部材及びダストブーツ20により、シリンダ部13のシリンダボア16内への異物の侵入を防ぐようにしている。
キャリパ本体8のシリンダ部13の底壁23側(一端側)には、ギヤハウジング25が一体的に連結される。このギヤハウジング25の内部に、後述する、電動モータ40、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42が配置されている。ギヤハウジング25は、主に電動モータ40を収容する第1ギヤハウジング部27と、主に遊星歯車減速機構42を収容する第2ギヤハウジング部28と、を備えている。第1ギヤハウジング部27は、電動モータ40の円柱状本体部40Bが収容されるモータハウジング部27Aと、該モータハウジング部27A内の電動モータ40の円柱状本体部40Bから延びる回転軸40Aが配置されるギヤハウジング部27Bと、から構成されている。図3から解るように、ギヤハウジング部27Bには、後述する平歯多段減速機構41のピニオンギヤ47に近接する位置に、後述する制動力保持機構152の圧縮コイルバネ159を収容するための収容凹部35が形成される。また、ギヤハウジング部27Bには、収容凹部35に近接する位置に、一端側に向かって支持ピン36が突設されている。さらに、ギヤハウジング部27Bには、収容凹部35に近接する位置に、後述する制動力保持機構152のソレノイドアクチュエータ155を収容するための収容部37が形成される。
図1に示すように、第2ギヤハウジング部28には、その他端側からシリンダ部13の底壁23が一体的に連結される。その結果、シリンダ部13と、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A(電動モータ40)とが、略平行に並ぶように配置される。その結果、シリンダ部13のシリンダボア16内を相対回転不能に、且つ軸方向に移動可能に収容されているピストン18の径方向中心と、電動モータ40の回転軸40Aの軸心とは、径方向に沿って不一致となる。第2ギヤハウジング部28には、後述するスピンドル93を含むキャリア72の小径円筒状部86が挿通される挿通孔29が形成される。第2ギヤハウジング部28の底面からは、後述するインターナルギヤ71の径方向の移動を規制する円筒状拘束部32が突設される。該円筒状拘束部32の径方向外側には、該円筒状拘束部32と対向する壁面との間に環状溝部33が形成される。円筒状拘束部32と対向する壁面には、周方向に間隔を置いて複数の係合凹部(図示略)が形成される。該円筒状拘束部32には、後述する第1減速歯車48の大径歯車53との干渉を避けるように切欠き部(図示略)が形成されている。ギヤハウジング25の一端側開口は、カバー部材39により閉塞されている。当該カバー部材39は、気密的にギヤハウジング25に取り付けられている。
電動モータ40からの回転は、伝達機構9を介してピストン18に伝達される。伝達機構9は、電動モータ40の円柱状本体部40Bから延びる回転軸40Aと、該回転軸40Aからの回転トルクを増力する平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42と、当該遊星歯車減速機構42からの回転を直線運動に変換して、ピストン18に推力を付与する回転直動変換機構43と、を備えている。図2も参照して、電動モータ40の円柱状本体部40Bは、上述したように、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A内に配置され、その回転軸40Aがギヤハウジング部27Bの貫通孔38に挿通されて、ギヤハウジング部27B内に延びている。平歯多段減速機構41は、ピニオンギヤ47と、第1減速歯車48と、第2減速歯車49と、を備えている。第1減速歯車48及び第2減速歯車49は、金属、あるいは、繊維強化樹脂等の樹脂にて構成される。
図2に示すように、ピニオンギヤ47は、筒状に形成されて、電動モータ40の回転軸40Aに圧入固定される。第1減速歯車48は、段付歯車で構成されている。該第1減速歯車48は、ピニオンギヤ47に噛合する大径の大径歯車53と、大径歯車53から同心状に一端側に向かって軸方向に延びる小径の小径歯車54と、を備えている。当該第1減速歯車48は、その大径歯車53が、第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32に設けた切欠き部(図示略)、及びインターナルギヤ71の円筒状壁部80に設けた切欠き部(図示略)内に入り込むようにして、第1ギヤハウジング部27及び第2ギヤハウジング部28を跨ぐようにして配置されている。その結果、第1減速歯車48の大径歯車53の外周面は、後述するキャリア72の大径円環板状部85の外周面に対向して近接して配置される。第1減速歯車48は、支持ロッド60により回転自在に支持される。該支持ロッド60は、第1ギヤハウジング部27のギヤハウジング部27Bに圧入固定される。小径歯車54の軸方向長さは、大径歯車53の軸方向長さよりも相当長く形成される。小径歯車54の軸方向長さは、後述する第2減速歯車49の大径歯車57の軸方向長さと略同じである。
第1減速歯車48の小径歯車54は、第2減速歯車49と噛合している。当該第2減速歯車49は、第1減速歯車48の小径歯車54と噛合する大径の大径歯車57と、大径歯車57から同心状に他端側に向かって軸方向に延びる小径のサンギヤ58と、を備えている。第2減速歯車49は、第2ギヤハウジング部28内に収容される。第2減速歯車49の径方向中央部には、軸方向に貫通する貫通孔62が形成される。サンギヤ58は、遊星歯車減速機構42の一部として構成される。大径歯車57とサンギヤ58とは、その軸方向長さが略同じである。大径歯車57の内周面とサンギヤ58の外周面との間には、環状の空間63が形成される。第2減速歯車49の大径歯車57の一端とサンギヤ58の一端とは、環状の円環状壁部65により接続される。この円環状壁部65の他端側の面でその外周端寄りに、遊星歯車減速機構42側(他端側)に突出する環状のストッパ部66が形成されている。
遊星歯車減速機構42は、第2減速歯車49のサンギヤ58と、複数個(本実施形態では5個)のプラネタリギヤ70と、インターナルギヤ71と、を備えている。遊星歯車減速機構42からの回転、すなわち各プラネタリギヤ70からの回転がキャリア72に伝達される。各プラネタリギヤ70は、サンギヤ58及びインターナルギヤ71の内歯78に噛合する歯車75と、キャリア72から立設されるピン90が回転自在に挿通される孔部76と、を有している。各プラネタリギヤ70は、サンギヤ58の周りに周方向に沿って等間隔に配置される。詳しくは、各プラネタリギヤ70は、大径歯車57の内周面とサンギヤ58の外周面との間の環状の空間63に周方向に沿って等間隔で配置され、その歯車75がサンギヤ58及びインターナルギヤ71の内歯78に噛合している。
インターナルギヤ71は、各プラネタリギヤ70の歯車75とそれぞれ噛合する内歯78と、該内歯78の一端から連続して径方向中心に延び、各プラネタリギヤ70の軸方向の移動を規制する環状壁部79と、内歯78から他端側に向かって延びる円筒状壁部80と、を備えている。インターナルギヤ71の内歯78の部位が、第2減速歯車49の大径歯車57の内周面と、各プラネタリギヤ70との間に配置される。その結果、第2減速歯車49は、インターナルギヤ71に対して回転自在に支持される。なお、インターナルギヤ71の内歯78の部位と、各プラネタリギヤ70と、サンギヤ58とは、その他端側の面が略同一平面上に位置する。インターナルギヤ71の円筒状壁部80には、径方向外方に突設する係合凸部(図示略)が周方向に間隔を置いて複数形成される。
インターナルギヤ71の円筒状壁部80には、その周方向の一部に、第1減速歯車48の大径歯車53との干渉を避けるように切欠き部(図示略)が形成される。そして、インターナルギヤ71の円筒状壁部80の一端面を、第2ギヤハウジング部28の底面に当接させつつ、その円筒状壁部80の内周面を第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32の外周面に当接させると共に円筒状壁部80から突設された各係合凸部を第2ギヤハウジング部28の壁面に設けた各係合凹部に係合する。また、インターナルギヤ71の一端側の面には、第2減速歯車49の円環状壁部65に設けた環状のストッパ部66が当接される。その結果、インターナルギヤ71は、その径方向及び軸方向の移動が規制されると共に、ギヤハウジング25に対して相対回転不能に支持される。
キャリア72は、大径円環板状部85と、大径円環板状部85から同心状に他端側に突設される小径円筒状部86と、を備えている。キャリア72は、その径方向略中央にスプライン孔部87が軸方向に貫通するように形成される。大径円環板状部85は、第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32の内側に配置される。キャリア72の大径円環板状部85の外周側には、周方向に沿って間隔を置いて、各プラネタリギヤ70と対応するように複数のピン用孔部89が形成されている。各ピン用孔部89にピン90がそれぞれ圧入固定されている。各ピン90は、各プラネタリギヤ70の孔部76に回転自在にそれぞれ挿通されている。キャリア72の小径円筒状部86は、第2ギヤハウジング部28の挿通孔29に挿通される。
スピンドル93は、キャリア72からの回転が伝達され、その回転トルクを回転直動変換機構43に伝達するものである。スピンドル93は、その一端にキャリア72のスプライン孔部87と係合するスプライン軸部96が一体的に接続されている。スピンドル93は、シリンダボア16内に延び、回転直動変換機構43に連結されている。スピンドル93のスプライン軸部96が、キャリア72のスプライン孔部87に係合することで、キャリア72とスピンドル93との間で互いに回転トルクを伝達することができる。
また、図2及び図4に示すように、第1ギヤハウジング部27のギヤハウジング部27B内にパーキングブレーキ手段150が設けられている。パーキングブレーキ手段150は、伝達機構9である電動モータ40の回転軸40Aの一端に圧入固定されるラチェットギヤ151と、ソレノイドアクチュエータ155の駆動により、ラチェットギヤ151の、制動力を解除する方向への回転を規制して制動力を保持する制動力保持機構152と、を備えている。ラチェットギヤ151は、回転軸40Aの、ピニオンギヤ47から突出した一端に圧入固定されている。制動力保持機構152は、ソレノイドアクチュエータ155と、該ソレノイドアクチュエータ155の駆動により移動して、ラチェットギヤ151の、制動力を解除する方向への回転を規制する保持部材157と、該保持部材157に連結され、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bに設けた支持ピン36に回動自在に支持されて、保持部材157のラチェットギヤ151側への移動を抑制する係止部材158と、保持部材157をラチェットギヤ151から離れる方向に付勢する弾性部材としての圧縮コイルバネ159と、を備える。
図4を参照して、ソレノイドアクチュエータ155は、円柱状本体部155Aと、該円柱状本体部155Aの一端面から出没自在に移動するプランジャ155Bと、を備えている。図5も参照して、円柱状本体部155Aは、その軸方向長さが径方向長さよりも長く構成されている。プランジャ155Bの先端には、環状鍔部156が設けられている。該環状鍔部156の外径は、プランジャ155Bの外径よりも大径である。ソレノイドアクチュエータ155は、通電することで、そのプランジャ155Bが円柱状本体部155A内に没入するように移動する。当該ソレノイドアクチュエータ155は、後述の制御基板116からの指令に基づいて作動する。
図4及び図5を参照して、保持部材157は、複雑な形状を有しており、ラチェットギヤ151の歯車部151Aに係合可能な爪部168と、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bの環状鍔部156の内側に接続されるプランジャ接続部169と、爪部168とプランジャ接続部169との間に設けられ、平面視で湾曲状に延びる湾曲部170と、を一体的に有している。爪部168には、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bの延びる方向と同じ方向に延びる軸部173が一体的に接続されている。軸部173には、爪部168と反対側端部に湾曲部170が一体的に接続されている。湾曲部170は、軸部173から折り返すように平面視U字状に延び、その開放側がラチェットギヤ151側を向くように形成される。湾曲部170の端部にプランジャ接続部169が一体的に接続されている。プランジャ接続部169は、プランジャ155Bの環状鍔部156から内側の外周面をカバー部材39側から取り巻くように支持すべく半円弧状に形成されている。軸部173には、カバー部材39側(一端側)に向かって突設するピン175が一体的に接続されている。また、軸部173には、電動モータ40側(他端側)に向かって突設する板状の押圧部176が一体的に接続されている。
係止部材158は、板状部180と、板状部180の基端部からカバー部材39側(一端側)に向かって延びる錘部181と、からなる略L字状に形成される。板状部180は、略矩形状に形成されており、その長手方向がプランジャ155Bの延びる方向と直交する方向に略一致する。板状部180の先端には、平面視U字状の係合溝部183が形成される。この係合溝部183に、保持部材157のピン175が係合することで、両者158、157が、互いにピン175を中心に回動自在に連結される。板状部180の長手方向略中央部には、支持孔184が形成される。この支持孔184に、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bに設けた支持ピン36が挿通される。その結果、係止部材158は、支持孔184(支持ピン36)を中心に回動自在にギヤハウジング部27Bに支持される。錘部181は、断面D字状に形成される。錘部181の直線部位が板状部180側に指向する。錘部181は、支持孔184に対して係合溝部183の反対側に位置する。そして、係止部材158の重心は、この錘部181の位置となる。
そして、図3〜図5に示すように、ソレノイドアクチュエータ155は、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bの収容部37内に、ブラケット185を介して取付ボルト186により固定される。その結果、図5を参照して、ソレノイドアクチュエータ155は、電動モータ40の円柱状本体部40Bの軸方向一端側の延長線上において、平面視にて電動モータ40の回転軸40Aの側方に配置され、またその円柱状本体部155Aは第1及び2減速歯車48、49側に配置され、そのプランジャ155Bは第1及び2減速歯車48、49から離れた位置に配置される。また、ソレノイドアクチュエータ155は、電動モータ40の円柱状本体部40Bの軸方向一端側の延長線上において、そのプランジャ155Bを含む全体が電動モータ40の円柱状本体部40Bの外周円R1(図5の2点鎖線で示す)の範囲内に配置される。言い換えれば、ソレノイドアクチュエータ155は、そのプランジャ155Bを含む全体が範囲R3(図5の2点鎖線で示す)内に配置される。該範囲R3は、電動モータ40の円柱状本体部40Bの外周円R1と、第2減速歯車49の大径歯車57の外周円R2(図5の2点鎖線で示す)とを、それぞれ円R1、R2の接線で結んだ範囲である。なお、本実施形態では、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bを含む全体が電動モータ40の円柱状本体部40Bの外周円R1の範囲内に配置されているが、ソレノイドアクチュエータ155の一部が電動モータ40の円柱状本体部40Bの外周円R1の範囲内に配置されればよい。
また、ソレノイドアクチュエータ155の円柱状本体部155A及びプランジャ155Bの軸方向は、電動モータ40の回転軸40Aに対して垂直方向で、且つカバー部材39の長手方向(ギヤハウジング25の長手方向)に沿って延びている。さらに、ソレノイドアクチュエータ155の円柱状本体部155A及びプランジャ155Bは、その軸方向が電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向面と略平行になるように配置されている。すなわち、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bの作動方向(出没方向)は、電動モータ40の回転軸40Aに対して垂直方向で、且つカバー部材39の長手方向(ギヤハウジング25の長手方向)に沿う方向であって、電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向面と略平行になる。さらにまた、ソレノイドアクチュエータ155の円柱状本体部155Aは、電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向において、電動モータ40の回転軸40Aと重なるように配置されている。
図2も参照して、ギヤハウジング部27Bの収容凹部35に圧縮コイルバネ159を配置する。このとき、圧縮コイルバネ159の一端部が、ラチェットギヤ151に近接する、収容凹部35の壁面35Aに当接するように配置する。また、圧縮コイルバネ159のカバー部材39側(一端側)に保持部材157を配置する。具体的には、保持部材157を、その爪部168がラチェットギヤ151の外周面と対向すると共に、平面視でその軸部173が圧縮コイルバネ159と重なるようにして、且つその押圧部176が圧縮コイルバネ159の他端部に当接するように配置する。
また、保持部材157の半円弧状のプランジャ接続部169を、プランジャ155Bの環状鍔部156から内側の外周面にカバー部材39側から取り巻くように接続する。その結果、保持部材157の湾曲部170の内側に、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bから突設された支持ピン36が位置する。さらに、係止部材158を保持部材157のカバー部材39側に、その板状部180の長手方向がプランジャ155Bの延びる方向と直交する方向に略一致するように配置する。そして、係止部材158の板状部180の先端に設けた平面視U字状の係合溝部183内に、保持部材157のピン175を係合して、両者158、157を互いにピン175を中心に回動自在に連結する。また、保持部材157の板状部180に設けた支持孔184内に、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bから突設された支持ピン36を挿通して、支持ピン36の先端部に抜け止めリング187を装着する。これにより、係止部材158は、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bから突設された支持ピン36を中心に回動自在に支持される。
このように構成することで、まず、保持部材157は、平常時、圧縮コイルバネ159により、その爪部168がラチェットギヤ151から離れる方向に付勢される。また、この平常時に、保持部材157に外部からの加振力が作用したときには、係止部材158の錘部181により、保持部材157に、外部からの加振力を相殺する力を作用させることができる。すなわち、保持部材157に対して、その爪部168がラチェットギヤ151の外周面に向かう方向に加振力が作用するとき、係止部材158に対して、支持孔184(支持ピン36)を中心に図5において反時計周り方向に回動しようとする力、言い換えれば、係止部材158の錘部181(重心)が、保持部材157に加振力が作用する方向に対して逆方向に移動しようとする力が発生する。その結果、係止部材158の錘部181により、保持部材157に、その爪部168がラチェットギヤ151の外周面から離れる方向への力(爪部168がラチェットギヤ151の外周面に向かって移動するのを抑制する力)を作用させることができ、ひいては、係止部材158の錘部181により、保持部材157に対する外部からの加振力を相殺することができる。
この状況は、保持部材157に付与される加振力が、圧縮コイルバネ159の付勢力を超えたときに発生する。次に、車両の停止状態を維持させるときにパーキングブレーキを作動させる際には、ソレノイドアクチュエータ155に通電することで、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bが没入する。その結果、保持部材157の爪部168が、圧縮コイルバネ159の付勢力に対抗するように、ラチェットギヤ151の外周面に向かって移動して、その歯車部151Aに係合する。その際、係止部材158は、支持ピン36(支持孔184)を中心に図5において反時計周り方向に回動する。言い換えれば、係止部材158は、ソレノイドアクチュエータ155の作動時、ソレノイドアクチュエータ155の作動方向(プランジャ155Bの出没方向)と逆方向に錘部181(重心)が移動することになる。
図1及び図2に示すように、パーキングブレーキ手段150のラチェットギヤ151の一端側に回転角検出手段103が配置されている。回転角検出手段103は、電動モータ40の回転軸40Aの回転角度を検出するものである。該回転角検出手段103は、磁石部材106と、磁気検出ICチップ107と、を備えている。電動モータ40の回転軸40Aの一端面には、圧入用凹部109が形成される。該圧入用凹部109に支持ロッド110が圧入固定される。当該支持ロッド110に、カップ状の支持部材113内に配置されたリング状の磁石部材106が支持される。当該磁石部材106の一端側に対向するように磁気検出ICチップ107が配置されている。磁気検出ICチップ107は、磁石部材106から発生する磁界の変化を検出するものである。当該磁気検出ICチップ107は、制御基板116に取り付けられている。そして、回転軸40Aの回転に伴って回転する磁石部材106からの磁束の変化を磁気検出ICチップ107により検出することで、制御基板116により、電動モータ40の回転軸40Aの回転角度を演算して検出している。
図1に示すように、回転直動変換機構43は、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42からの回転運動、すなわちスピンドル93の回転運動を直線運動(以下、便宜上直動という)に変換し、その直動部材(図示略)の移動によりピストン18に推力を付与するものである。回転直動変換機構43は、シリンダボア16内であって、その底面とピストン18との間に配置される。そして、キャリア72の回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43により、その直動部材が他端側に向かって前進することで、該ピストン18が前進し、該ピストン18によってインナブレーキパッド2をディスクロータDに押し付けることができる。
電動モータ40は、円柱状本体部40Bと、該円柱状本体部40Bの一端面から延びる回転軸40Aとから構成されている。円柱状本体部40Bは、その軸方向がピストン18の移動方向と一致しており、その一端面から回転軸40Aが延びている。上述したように、図1及び図2を参照して、電動モータ40の円柱状本体部40Bは、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A内に配置され、その回転軸40Aがギヤハウジング部27Bの貫通孔38に挿通されて、ギヤハウジング部27B内に延びている。当該電動モータ40は、その駆動が制御基板116からの指令により制御される。通常走行における制動時には、当該制御基板116により、運転者の要求に対応した検出センサやブレーキが必要な様々な状況を検出する種々の検出センサ等からの検出信号、回転角検出手段103からの検出信号及び推力センサ(図示略)等からの検出信号に基づき、電動モータ40の駆動を制御する。また、この制御基板116は、パーキングブレーキスイッチ(図示略)や、パーキングの作動を指示するために操作されるブレーキペダル(図示略)等と電気的に接続されており、制御基板116からの指令によりソレノイドアクチュエータ155の作動が制御される。
次に、本実施形態に係るディスクブレーキ1において、通常走行における制動及び制動解除の作用について説明する。
通常走行における制動時には、制御基板116からの指令により、電動モータ40が駆動されて、その正方向、すなわち制動方向の回転が、平歯多段減速機構41を介して遊星歯車減速機構42のサンギヤ58に伝達される。該遊星歯車減速機構42のサンギヤ58の回転により、各プラネタリギヤ70が自身の回転軸線を中心に自転しながら、サンギヤ58の回転軸線を中心に公転することで、キャリア72が回転する。すなわち、電動モータ40からの回転が、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を経由することで所定の減速比で減速、増力されてキャリア72に伝達される。そして、キャリア72からの回転がスピンドル93に伝達される。
続いて、キャリア72の回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43の作用により、その直動部材が前進してピストン18を前進させる。このピストン18が前進することで、インナブレーキパッド2をディスクロータDに押し付ける。そして、ピストン18によるインナブレーキパッド2への押圧力に対する反力により、キャリパ本体8がブラケット5に対してインナ側に移動して、各爪部14、14によってアウタブレーキパッド3をディスクロータDに押し付ける。この結果、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて摩擦力が発生し、ひいては、車両の制動力が発生することになる。
一方、制動解除時には、制御基板116からの指令により、電動モータ40の回転軸40Aが逆方向、すなわち制動解除方向に回転すると共に、その逆方向の回転が平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を介してスピンドル93に伝達される。その結果、スピンドル93の逆方向への回転に伴って、回転直動変換機構43の作用により、その直動部材が後退して初期状態に戻り、ディスクロータDへの一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3による制動力が解除される。
次に、本実施形態に係るディスクブレーキ1において、パーキングブレーキの作動について説明する。
パーキングブレーキスイッチやブレーキペダルが操作されると、通常の制動時と同様に、制御基板116からの指令により、電動モータ40が駆動されて、その正方向の回転が、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を経由してキャリア72に伝達される。なお、車両側からの信号に基づき、運転者の操作によらず制御基板116からの指令により電動モータ40を駆動させることもできる。続いて、キャリア72からの回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43の作用により、ピストン18が前進して、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて制動力が発生する。
この状態で、制御基板116からの指令により、ソレノイドアクチュエータ155に通電することで、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bが没入する。その結果、保持部材157の爪部168が、圧縮コイルバネ159の付勢力に対抗するように、ラチェットギヤ151の外周面に向かって移動して、その歯車部151Aに係合する。その際、係止部材158は、支持ピン36(支持孔184)を中心に図5において反時計周り方向に回動して、ソレノイドアクチュエータ155の推進方向(プランジャ155Bが没入する方向)と逆方向に係止部材158の錘部181(重心)が移動することになる。
なおこのとき、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168とは、それぞれの頂部が互いに干渉して係合されない場合もあるために、次に、電動モータ40を制動解除方向に回転させて、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168とを確実に係合させる。そして、電動モータ40への通電を停止し、一対のブレーキパッド4、5のディスクロータDへの押圧力を確認した後、ソレノイドアクチュエータ155への通電を停止して、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168との係合状態を保持する。これにより、電動モータ40及びソレノイドアクチュエータ155への通電を停止した状態で制動状態を保持することができる。なお、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168とが確実に係合されているので、ソレノイドアクチュエータ155への通電が停止されても、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168との係合状態を保持することができる。
次に、パーキングブレーキの作動を解除する場合には、ソレノイドアクチュエータ155には通電せずに、制御基板116からの指令により、電動モータ40が制動方向へ僅かに回転されることにより、ラチェットギヤ151の歯車部151Aと保持部材157の爪部168との係合が緩み、圧縮コイルバネ159の付勢力によって、保持部材157がその爪部168がラチェットギヤ151の外周面から離れる方向に移動して、ラチェットギヤ151の回転規制が解除されることで、電動モータ40の制動解除方向への回転により、ピストン18が後退して、一対のインナ及びアウタブレーキパッド4、5による制動力が解除される。
以上説明したように、本実施形態に係るディスクブレーキ1のソレノイドアクチュエータ155は、電動モータ40の円柱状本体部40Bの軸方向一端側の延長線上において、そのプランジャ155Bを含む全体が電動モータ40の円柱状本体部40Bの外周円R1の範囲内に配置されている。また、ソレノイドアクチュエータ155のプランジャ155Bの作動方向(出没方向)は、電動モータ40の回転軸40Aに対して垂直方向で、且つカバー部材39の長手方向(ギヤハウジング25の長手方向)に沿う方向であって、電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向面と略平行になる。これにより、キャリパ4であって、その電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向に沿って小型化することが可能になる。しかも、ソレノイドアクチュエータ155の円柱状本体部155Aは、その軸方向長さが径方向長さよりも長く構成されている。また、ソレノイドアクチュエータ155の円柱状本体部155Aは、電動モータ40の円柱状本体部40Bの径方向において、電動モータ40の回転軸40Aと重なるように配置されている。これにより、キャリパ4であって、その電動モータ40の円柱状本体部40Bの軸方向に於いても小型化することが可能になる。
なお、以上の説明では、本実施形態が、電動ブレーキ装置としてのディスクブレーキ1に採用されているが、本実施形態を、通常走行の制動時には、キャリパ本体8のシリンダボア16内に供給されるブレーキ液圧にて、ピストン18を前進させることで、一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により制動力が発生させ、駐車時等のパーキングブレーキ時にのみ、電動モータ40からの駆動力を平歯多段減速機構41、遊星歯車減速機構42及び回転直動変換機構43を介してピストン18に伝達することで該ピストン18を前進させて、一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により制動力が発生させる、ディスクブレーキに採用してもよい。