JP2021045969A - 造形物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】造形物の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層を形成するためのインク、これを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法を提供する。【解決手段】インクは、赤外線領域の少なくともいずれかの波長域における光の吸収率が、可視光領域域での光の吸収率よりも高い無機赤外線吸収剤を含む。また、インクのベースを白色とする。このインクを用いて、熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を膨張させるために使用される光熱変換層を印刷することで、造形物の色味への影響を低減することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、吸収した熱量に応じて発泡して膨張する熱膨張性シートを部分的又は全体的に膨張させるための光熱変換層を形成するためのインクを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法に関する。
従来、基材シートの一方の面上に、吸収した熱量に応じて発泡し膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を形成した熱膨張性シートが知られている。この熱膨張性シート上に光を熱に変換する光熱変換層を形成し、光熱変換層に光を照射することで、熱膨張層を部分的又は全体的に膨張させることができる。また、光熱変換層の形状を変化させることで、熱膨張性シート上に立体的な造形物(立体画像)を形成する方法も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開昭64−28660号公報 特開2001−150812号公報
従来、光熱変換層は、カーボンを含む黒色インクを用いて形成されていた。しかし、光熱変換層の印刷に用いる黒色インクは、形成される立体画像の色味に影響を与えることがある。例えば、熱膨張性シートの表面に光熱変換層を形成し、更にその上にカラーインクを用いてカラー画像を印刷すると、カラー画像が光熱変換層に含まれる黒色インクによってくすむことがある。また、カラー印刷を行わないが熱膨張性シートの表面に光熱変換層を形成して膨張させたい領域では、光熱変換層の色味がそのまま現れてしまうという問題もある。
このため、立体画像(造形物)の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層が求められていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、造形物の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層を形成するためのインクを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る熱膨張性シートは、
熱により膨張する熱膨張層と、前記熱膨張層を膨張させるための光熱変換層と、を備える熱膨張性シートであって、
前記光熱変換層は、赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクを用いて、前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面に形成され、
前記インクは、前記無機赤外線吸収剤として10重量%のセシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンを含み、
前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下となるように、
且つ、前記インクの少なくとも一部が前記熱膨張性シートに吸収されるように、前記光熱変換層が形成されている、
ことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る造形物の製造方法は、
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を光熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクを用いて、前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面に前記光熱変換層を形成する第1工程を備え、
前記インクは、前記無機赤外線吸収剤として10重量%のセシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンを含み、
前記第1工程は、
前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下となるように、
且つ、前記インクの少なくとも一部が前記熱膨張性シートに吸収されるように、前記光熱変換層を形成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、造形物の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層を形成するためのインクを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法を提供することができる。
各材料の透過率の分布、太陽光のスペクトル及びハロゲンランプの分光分布を示す図である。 各波長におけるハロゲンランプからの放射エネルギー(%)に、セシウム酸化タングステン又はLaBの吸光率を掛けあわせたグラフである。 実施形態に係る熱膨張性シートの概要を示す断面図である。 インク層を備える熱膨張性シートを示す断面図である。 実施形態に係る立体画像形成ユニットの概要を示す図である。 実施形態に係るインクを備える印刷ユニットの概要を示す図である。 実施形態に係る立体画像形成プロセスを示すフローチャートである。 実施形態に係る立体画像形成プロセスを示す図である。 変形例に係る立体画像形成プロセスを示すフローチャートである。 変形例に係る立体画像形成プロセスを示す図である。 実施例に係る熱膨張層の膨張前後の熱膨張性シートと光熱変換層との間の色差を示すグラフである。 実施例に係る熱膨張層を膨張させた熱膨張性シートを示す画像である。 実施例に係る熱膨張層の膨張前後の熱膨張性シートと光熱変換層との間の色差を示すグラフである。 実施例に係る熱膨張層の膨張前後の熱膨張性シートと光熱変換層との間の色差を示すグラフである。 実施例に係る熱膨張層の膨張前後の熱膨張性シートと光熱変換層との間の色差を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態に係るインクと、これを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法について、図を用いて説明する。インク10は後述するように、熱膨張層22を膨張させるためのインク(以下、発泡インクと呼ぶ)である。また、本実施形態では、詳細に後述するように、印刷装置の例として、図5(a)〜図5(c)に概要を示す立体画像形成システム50を例に挙げて説明する。また、印刷方法の例として、この立体画像形成システム50を使用して、凹凸を有する造形物(立体画像)を形成する構成を例に挙げて説明する。また、本実施形態のインク10は、立体画像形成システム50内に設けられた図6に示す印刷ユニット52内に設置され、熱膨張性シート20上に光熱変換層を形成するために使用する。
本実施形態では、熱膨張性シート20の表面に、熱膨張層22の隆起により凸若しくは凹凸を形成し、造形物を表現する。また、本明細書において、「造形物」は、単純な形状、幾何学形状、文字、装飾等、形状を広く含む。ここで、装飾とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。また、「造形(又は造型)」は、単に造形物を形成することに限らず、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。更に装飾性のある造形物とは、加飾又は造飾の結果として形成される造形物を示す。また、本実施形態では、造形物を立体画像とも呼ぶ。
本実施形態に係るインク10は、白色のインク中に無機赤外線吸収剤を含む。換言すると、インク10は、無機赤外線吸収剤を混合させていない状態で白色である。また、インク10のベースが白色であるとも言える。なお、インク10に着色剤が添加される場合は、無機赤外線吸収剤と着色剤とを含まない状態で白色である。
また、本実施形態に係るインク10としては、紫外線(UV)硬化型のインクを例に挙げる。この場合、インク10は、無機赤外線吸収剤を含み、更に紫外線硬化樹脂(紫外線硬化性モノマー、紫外線硬化性オリゴマー)と重合開始剤とを含む。また、本実施形態のインク10は、白色であるため、インク10は、更に白色を呈する材料を含む。白色を呈する材料としては、これに限るものではないが、白色顔料(酸化亜鉛、酸化チタン等)が挙げられる。
インク10に含まれる紫外線硬化性モノマーとしては、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクレート等の単官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。また、紫外線硬化性オリゴマーとして、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。なお、ウレタンアクリレートのオリゴマーを用いることが好ましい。重合開始剤としては、光開裂型開始剤、水素引き抜き型開始剤のいずれをも使用でき、複数種の光重合開始剤を組み合わせることができる。光開裂型開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド化合物、アセトフェノン化合物等、水素引き抜き型開始剤としてベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物が挙げられる。いずれについても例示以外の公知の材料を使用することが可能である。また、インク10は、その他の溶剤、添加剤を含んでよい。
インク10によって形成される光熱変換層は、熱膨張層22の変形に追従して変形することが好ましい。従って、インク10に含まれる紫外線硬化樹脂はゴム弾性を有することが好ましい。このような、ゴム弾性を有する紫外線硬化樹脂(紫外線硬化性モノマー、紫外線硬化性オリゴマー)としては、これに限るものではないが、ウレタンアクリレートが好適である。
また、本実施形態のインク10は、例えば図6に示すインクジェット方式の印刷ユニット52で使用される。具体的に、インク10は、インクカートリッジ73内に充填されて、図6に示すように印刷ユニット52内に設置される。
インク10は、白色以外の着色剤を含んでもよい。例えば、熱膨張性シート20の表面の色味に近づけるためにインク10の色味を調整する等の目的に応じ、インク10は着色剤を含んでもよい。着色剤の色は、特に限定されるものではない。着色剤は、イエローの他、シアン、マゼンタ等から適宜選択されてもよく、これら以外の任意の色であってもよい。また、インク10中の着色剤の濃度も、任意である。
また、インク10に含有される無機赤外線吸収剤としては、赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い光の吸収率(吸光率)を有する無機材料を用いる。無機赤外線吸収剤は、特に近赤外領域で、可視光領域と比較して高い光の吸収率を有することが好ましい。可視光領域において光の透過率が高い(吸収率が低い)材料を選択することにより、インク10の可視光透過性を向上させ、インク10の色味を抑えることができる。特に従来使用されてきたカーボンを使用するインクと比較し、インク10を用いて印刷された光熱変換層によってカラーインク層の色味がくすむことを防ぐことができる。従って、白色又はほぼ白色の光熱変換層を形成することができる。
本実施形態では無機赤外線吸収剤としては、例えば、金属酸化物、金属ホウ化物、金属窒化物等を用いる。
具体的に、金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化セシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。
また、金属ホウ化物としては、多ホウ化金属化合物が好ましく、六ホウ化金属化合物が特に好ましく、六ホウ化ランタン(LaB)、六ホウ化セリウム(CeB)、六ホウ化プラセオジム(PrB)、六ホウ化ネオジム(NdB)、六ホウ化ガドリニウム(GdB)、六ホウ化テルビウム(TbB)、六ホウ化ディスプロシウム(DyB)、六ホウ化ホルミウム(HoB)、六ホウ化イットリウム(YB)、六ホウ化サマリウム(SmB)、六ホウ化ユーロピウム(EuB)、六ホウ化エルビウム(ErB)、六ホウ化ツリウム(TmB)、六ホウ化イッテルビウム(YbB)、六ホウ化ルテチウム(LuB)、六ホウ化ランタンセリウム((La,Ce)B)、六ホウ化ストロンチウム(SrB)、六ホウ化カルシウム(CaB)等からなる群から選択される1つ又は複数の材料を用いる。
また金属窒化物としては、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化バナジウムなどが挙げられる。
酸化タングステン系化合物は、以下の一般式によって示される。
MxWyOz ・・・(I)
ここで、元素MはCs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素である。
また、x/yの値は、0.001≦x/y≦1.1の関係を満足することが好ましく、特にx/yが0.33付近であることが好適である。加えて、z/yの値は、2.2≦z/y≦3.0の関係を満足することが好ましい。具体的には、Cs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Tl0.33WOなどである。
上記の中では、六ホウ化金属化合物又は酸化タングステン系化合物が好ましく、特に近赤外領域で吸収率が高く(透過率が低く)、かつ可視光領域の透過率が高いことから六ホウ化ランタン(LaB)又はセシウム酸化タングステンが好ましい。なお、上記無機赤外線吸収剤はいずれかを単独で用いてもよく、又は2つ以上の異なる材料を併用してもよい。
また、本実施形態のインク10は、これに限られるものではないが、無機赤外線吸収剤を、20重量%〜0.10重量%の割合で含む。
次に、カーボン、ITO、ATO、セシウム酸化タングステン及びLaBの透過率の分布と、太陽光のスペクトルと、ハロゲンランプの分光分布とを図1に示す。図1では、太陽光のスペクトル及びハロゲンランプの分光分布は、いずれもピークを100とした強度である。図1に示すように、従来、光熱変換層を形成するために使用されていたカーボンは、各波長域でほぼ一定の低い透過率を示す。また、カーボンは、可視光領域でも透過率が低く(吸光率が高く)、黒色を呈する。これに対し、金属酸化物の一例であるITO、ATOは、特に可視光領域での透過率が高い。また、ITO、ATOは、可視光領域と比較して近赤外領域での透過率が低く、更に中赤外領域で低い透過率(高い吸光率)を示す。更に、タングステン系酸化物の一例として、セシウム酸化タングステンでは、可視光領域と比較して近赤外領域での透過率が低い。加えて、六ホウ化金属化合物の一例である六ホウ化ランタンは、赤外領域内の近赤外領域において可視光領域と比較して低い透過率を示す。
また、図1では照射部で用いられるハロゲンランプの分光分布を示す。ハロゲンランプから照射される光は、特に近赤外領域において高い強度を示す。図1に示すセシウム酸化タングステンと六ホウ化ランタンとは、このハロゲンランプから照射される光が強い強度を示す近赤外領域において透過率が低く、高い吸光率を示す。このため、ハロゲンランプを照射部として使用する場合、セシウム酸化タングステン又はLaBは、ハロゲンランプから照射される光が強い強度を示す近赤外領域において、特に効率良く光を吸収できるため、好ましい。また、近赤外領域に高い吸光率を示す材料であれば、セシウム酸化タングステンと六ホウ化ランタン以外も、使用可能である。
また、図2は、各波長におけるハロゲンランプからの放射エネルギー(%)にセシウム酸化タングステン又はLaBの吸光率を掛けあわせたグラフである。なお、放射エネルギー(%)は、基準温度(2000K)での黒体放射エネルギー(ピークを100%とする)に対する、温度(2900K)における放射エネルギーの比(%)を使用する。セシウム酸化タングステンは、特に近赤外領域、中赤外領域で良好にエネルギーを吸収可能であることがわかる。
また、このグラフを波長で積分した値が、セシウム酸化タングステン又はLaBが吸収可能なエネルギー量に相当する。従って、熱膨張性材料の発泡高さが飽和しない限り、この積分値の比は発泡高さに比例する。
具体的に積分値の比は、
セシウム酸化タングステン:LaB=1:0.58
である。従って、LaBを用いた光熱変換層では、セシウム酸化タングステンを用いた光熱変換層と比べても、約0.58倍の高さが得られる。
次に、本実施形態のインク10によって光熱変換層を形成する熱膨張性シート20について図を用いて説明する。熱膨張性シート20は、図3に示すように、基材21と、熱膨張層22とを備える。また、詳細に後述するように、熱膨張性シート20は、図5(a)〜図5(c)に概要を示す立体画像形成システム50で、印刷が施され、凹凸を有する造形物(立体画像)が形成される。
基材21は、熱膨張層22等を支持するシート状の部材(フィルムを含む)である。基材21としては、上質紙等の紙、又はポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の通常使用されるプラスチックフィルムを用いることができる。また、基材21としては布地などを用いることも可能である。基材21は、熱膨張層22が全体的又は部分的に発泡により膨張した時に、基材21の反対側(図3に示す下側)に隆起せず、また、しわを生じたり、大きく波打ったりしない程度の強度を備える。加えて、熱膨張層22を発泡させる際の加熱に耐える程度の耐熱性を有する。
熱膨張層22は、基材21の一方の面(図3に示す上面)上に形成される。熱膨張層22は、加熱温度、加熱時間に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に複数の熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロカプセル)が分散配置されている。また、詳細に後述するように、本実施形態では、基材21の上面(表面)に設けられた熱膨張層22上、及び/又は基材21の下面(裏面)に光熱変換層を形成し、光を照射することで、光熱変換層が設けられた領域を発熱させる。熱膨張層22は、熱膨張性シート20の表面及び/又は裏面の光熱変換層で生じた熱を吸収して発泡し、膨張するため、熱膨張性シート20の特定の領域のみを選択的に膨張させることができる。
バインダとしては、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等から選択される熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質を、熱可塑性樹脂の殻内に封入したものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等から選択される熱可塑性樹脂から形成される。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる高分子の殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によってカプセルが膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルは膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。
本実施形態では、インク10が白色である、又はほぼ白色である。従って、本実施形態のインク10から形成される光熱変換層も白色又はほぼ白色を呈する。
熱膨張性シート20の表面(熱膨張層22が形成される面)が、白色ではない場合であっても、光熱変換層が白色又はほぼ白色であるため、光熱変換層上に設けられるカラーインク層の色味を鮮やかに発色させることができる。従って、造形物の色味への影響を低減することができる。
加えて、特に熱膨張性シート20のうち光熱変換層が形成される面が白色の場合、熱膨張性シート20上に設けられた光熱変換層は、視認されない、又はわずかに視認できる程度の色しか有さない。従って、造形物の色味への影響を低減することができる。また、この場合はカラーインク層42が形成されない領域でも、光熱変換層を視認できない、又は視認しにくくなる。
また、本実施形態では、熱膨張性シート20が白色(ほぼ白色も含む)の場合に、光熱変換層と、光熱変換層が形成されていない熱膨張性シートの表面とを比較した場合に色差がない又は色差が極めて小さいとも表現できる。具体的には、色差は以下のように比較する。図4に示すように、本実施形態のインク10を熱膨張性シート20上に設け、インク層25(光熱変換層に相当する)を形成する。なお、インク10は熱膨張性シート20表面に一部が吸収されるなどして、図示するような明確な境界を有する層とならないこともあるが、説明の便宜のため、熱膨張性シート20上に設けられたインクを層の形に図示し、インク層25と呼ぶ。次に、インク層25の色(図4に示す領域Aの色)、とインク層25が設けられていない熱膨張性シート20表面との色(図4に示す領域Bの色)を、図4に示す上方向から比較する。なお、比較は、熱膨張性シート20の熱膨張層22を膨張させる前又は熱膨張層22を膨張させた後の少なくともいずれか一方において行い、少なくともいずれか一方で色差がない、又は色差が極めて小さければよい。
また、本実施形態の色差は、L*a*b*表色系(以下、Lab表色系)を用いて表してもよい。この場合、インク層25の色(図4に示す領域Aの色)と、インク層25が設けられていない熱膨張性シート20表面との色(図4に示す領域Bの色)とを色彩計を用いて測定し、L*、a*及びb*の数値を求める。次に、測定された領域Aと領域BのL*、a*及びb*の値から、下記の式を使用し、ΔE*ab(以下、ΔEと表記する)を算出する。
ΔE*ab=[(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2・・・(式1)
ΔL*は、領域AのL*値と領域BのΔL*との差である。Δa*、Δb*も同様に、領域Aでの値と領域Bでの値の差である。また、以下、L*a*b*につき、「*」を省略して表記する。
ここで、本実施形態において色差がないとは、Lab表色系における色差ΔEが、1.6〜3.2の範囲に含まれる、又はこれらの範囲を下回ることを示す(ΔEが3.2以下である)。ここで、ΔEの範囲1.6〜3.2は、A級許容差と呼ばれ、色の離間比較ではほとんど気付かれないレベルの色差であり、一般的には同じ色と思われているレベルである。色差ΔEは、0.8〜1.6の範囲に含まれるか、これらの範囲を下回ると更に好適である。ΔEの範囲0.8〜1.6は、AA級許容差と呼ばれ、色の隣接比較でわずかに色差が感じられるレベルである。
(立体画像形成システム)
次に、本実施形態の熱膨張性シート20に印刷を施し、立体画像を形成する立体画像形成システム50について説明する。図5(a)〜図5(c)に示すように、立体画像形成システム50は、制御ユニット51と、印刷ユニット52と、膨張ユニット53と、表示ユニット54と、天板55と、フレーム60と、を備える。図5(a)は、立体画像形成システム50の正面図であり、図5(b)は、天板55を閉じた状態における立体画像形成システム50の平面図であり、図5(c)は、天板55を開いた状態における立体画像形成システム50の平面図である。なお、図5(a)〜図5(c)において、X方向は水平方向と同一であり、Y方向はシートが搬送される搬送方向Dと同一であり、更にZ方向は鉛直方向と同一である。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する。
制御ユニット51、印刷ユニット52、膨張ユニット53は、それぞれ図5(a)に示すようにフレーム60内に載置される。具体的に、フレーム60は、一対の略矩形状の側面板61と、側面板61の間に設けられた連結ビーム62とを備え、側面板61の上方に天板55が渡されている。また、側面板61の間に渡された連結ビーム62の上に印刷ユニット52及び膨張ユニット53がX方向に並んで設置され、連結ビーム62の下に制御ユニット51が固定されている。表示ユニット54は天板55内に、天板55の上面と高さが一致するように埋設されている。
制御ユニット51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、印刷ユニット52、膨張ユニット53及び表示ユニット54を制御する。
印刷ユニット52は、インクジェット方式の印刷装置である。図5(c)に示すように、印刷ユニット52は、熱膨張性シート20を吸入するための搬入部52aと、熱膨張性シート20を搬出するための搬出部52bと、を備える。印刷ユニット52は、搬入部52aから吸入された熱膨張性シート20の表面又は裏面に指示された画像を印刷し、画像が印刷された熱膨張性シート20を搬出部52bから排出する。また、印刷ユニット52には、後述するカラーインク層42を形成するためのカラーインク(シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y))、と、表側光熱変換層41と裏側光熱変換層43とを形成するためのインク10とが備えられている。なお、カラーインク層42において黒又はグレーの色を形成するため、カラーインクとして、カーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に備えてもよい。また、カラーインクとして、UV硬化型のインクを用いてもよい。
印刷ユニット52は、熱膨張性シート20の表面に印刷するカラー画像(カラーインク層42)を示すカラー画像データを制御ユニット51から取得し、カラー画像データに基づいて、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いてカラー画像(カラーインク層42)を印刷する。カラーインク層42の黒又はグレーの色は、CMYの3色を混色して、もしくはカーボンブラックを含まない黒のカラーインクを更に使用して形成する。
また、印刷ユニット52は、熱膨張性シート20の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである表面発泡データに基づき、インク10を用いて表側光熱変換層41を印刷する。同様に、熱膨張性シート20の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである裏面発泡データに基づき、インク10を用いて裏側光熱変換層43を印刷する。インク10の濃度がより濃く形成された部分ほど、熱膨張層22の膨張高さは高くなる。このため、インク10の濃度は、目標高さに対応するように、面積階調方式等によって濃淡が決定される。
図6に、印刷ユニット52の詳細な構成を示す。図6に示すように、印刷ユニット52は、熱膨張性シート20が搬送される方向である副走査方向D1(Y方向)に直交する主走査方向D2(X方向)に往復移動可能なキャリッジ71を備える。
キャリッジ71には、印刷を実行する印刷ヘッド72と、インクを収容したインクカートリッジ73(73e,73c,73m,73y)が取り付けられている。インクカートリッジ73e,73c,73m,73yには、それぞれ、本実施形態のインク10、シアンC、マゼンタM、及びイエローYの色インクが収容されている。各インクは、印刷ヘッド72の対応するノズルから吐出される。また、印刷ヘッド72は図示しないUV照射部を備え、インクは吐出された後に硬化される。
キャリッジ71は、ガイドレール74に滑動自在に支持されており、駆動ベルト75に狭持されている。キャリッジ71は、モータ75mの回転により駆動ベルト75が駆動することで、印刷ヘッド72及びインクカートリッジ73と共に、主走査方向D2に移動する。
フレーム77の下部には、印刷ヘッド72と対向する位置に、プラテン78が設けられている。プラテン78は、主走査方向D2に延在しており、熱膨張性シート20の搬送路の一部を構成している。熱膨張性シート20の搬送路には、給紙ローラ対79a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対79b(下のローラは不図示)とが設けられている。給紙ローラ対79aと排紙ローラ対79bとは、プラテン78に支持された熱膨張性シート20を副走査方向D1に搬送する。
印刷ユニット52は、フレキシブル通信ケーブル76を介して制御ユニット51と接続されている。制御ユニット51は、フレキシブル通信ケーブル76を介して、印刷ヘッド72、モータ75m、給紙ローラ対79a及び排紙ローラ対79bを制御する。具体的に説明すると、制御ユニット51は、給紙ローラ対79a及び排紙ローラ対79bを制御して、熱膨張性シート20を搬送させる。また、制御ユニット51は、モータ75mを回転させてキャリッジ71を移動させ、印刷ヘッド72を主走査方向D2の適切な位置に搬送させる。
膨張ユニット53は、熱膨張性シート20に熱を加えて膨張させる膨張装置である。図5(c)に示すように、膨張ユニット53は、熱膨張性シート20を搬入するための搬入部53aと、熱膨張性シート20を搬出するための搬出部53bと、を備える。膨張ユニット53は、搬入部53aから搬入された熱膨張性シート20を搬送しながら熱を加えて膨張させ、膨張した熱膨張性シート20を搬出部53bから排出する。膨張ユニット53は内部に照射部(図示せず)を備える。照射部は膨張ユニット53内で固定されており、照射部の近傍を熱膨張性シート20を一定の速度で移動させることにより、熱膨張性シート20全体を加熱する。なお、光熱変換層を視認しにくいよう、インク10の濃度を低く印刷した場合は、この搬送速度を遅くし、光を照射する時間を長くすることで、目標とする膨張高さを得ることも可能である。
照射部は、例えば、ハロゲンランプであり、熱膨張性シート20に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)又は中赤外領域(波長1400〜4000nm)の光を照射する。ハロゲンランプから照射される光の波長は、図2に示す特徴を有しており、特に近赤外領域において光を強く照射する。本実施形態のインク10中に含まれる無機赤外線吸収剤として、特に、可視光領域と比較して近赤外領域において高い吸収率を有する材料を用いると、ハロゲンランプが強い強度を持つ波長域と、無機赤外線吸収剤が効率よく吸収する波長域が一致するため好ましい。なお、照射部としては、ハロゲンランプ以外に、キセノンランプ等を使用することもできる。この場合、使用するランプに応じて、ランプの照射強度の高い波長域において高い吸収率を有する材料を、無機赤外線吸収剤として選択することが好ましい。また、光熱変換層が印刷された領域では、光熱変換層が印刷されていない領域に比べて、より効率よく光が熱に変換される。そのため、熱膨張層22のうち、光熱変換層が印刷された領域が主に加熱されて、その結果、熱膨張層22は、光熱変換層が印刷された領域が膨張する。
表示ユニット54は、タッチパネル等から構成される。表示ユニット54は、例えば図5(b)に示すように、印刷ユニット52によって熱膨張性シート20に印刷される画像(図5(b)に示す星)を表示する。また、表示ユニット54は、操作ガイド等を表示し、ユーザは、表示ユニット54に触れることで、立体画像形成システム50を操作することが可能である。
(立体画像形成処理)
次に、図7に示すフローチャート及び図8(a)〜図8(e)に示す熱膨張性シート20の断面図を参照して、立体画像形成システム50によって熱膨張性シート20に立体画像を形成する処理の流れを説明する。立体画像形成処理によって造形物が製造されるため、立体画像形成処理は造形物の製造方法でもある。
第1に、ユーザは、立体画像が形成される前の熱膨張性シート20を準備し、表示ユニット54を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート20を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート20の表面に光熱変換層(表側光熱変換層41)を印刷する(ステップS1)。表側光熱変換層41は、上述したインク10によって形成される層である。印刷ユニット52は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート20の表面に、本実施形態のインク10を吐出する。その結果、図8(a)に示すように、基材21の表面に表側光熱変換層41が形成される。
第2に、ユーザは、表側光熱変換層41が印刷された熱膨張性シート20を、その表面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート20を表面から加熱する(ステップS2)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部によって熱膨張性シート20の表面に光を照射させる。熱膨張性シート20の表面に印刷された表側光熱変換層41は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図8(b)に示すように、熱膨張性シート20のうちの光熱変換層41が印刷された領域が盛り上がって膨張する。また、図8(b)において、右に示す表側光熱変換層41のインク10の濃度を、左に示す表側光熱変換層41と比較して濃くすると、図示するように、濃く印刷された領域をより高く膨張させることが可能となる。
第3に、ユーザは、表面が加熱されて膨張した熱膨張性シート20を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート20の表面にカラー画像(カラーインク層42)を印刷する(ステップS3)。具体的には、印刷ユニット52は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート20の表面に、シアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図8(c)に示すように、熱膨張層22及び光熱変換層41の上にカラーインク層42が形成される。
第4に、ユーザは、カラーインク層42が印刷された熱膨張性シート20を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート20の裏面に光熱変換層(裏側光熱変換層43)を印刷する(ステップS4)。裏側の光熱変換層43は、熱膨張性シート20の表面に印刷された表側光熱変換層41と同様に、本実施形態のインク10によって形成される層である。印刷ユニット52は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート20の裏面に、インク10を吐出する。その結果、図8(d)に示すように、基材21の裏面に裏側光熱変換層43が形成される。裏側光熱変換層43についても、左に示す裏側光熱変換層43のインク10の濃度を、右に示す裏側光熱変換層43と比較して濃くすると、図示するように濃く印刷された領域をより高く膨張させることが可能となる。
第5に、ユーザは、裏側光熱変換層43が印刷された熱膨張性シート20を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート20を裏面から加熱する(ステップS5)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部(図示せず)によって熱膨張性シート20の裏面に光を照射させる。熱膨張性シート20の裏面に印刷された裏側光熱変換層43は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図8(e)に示すように、熱膨張性シート20のうちの裏側光熱変換層43が印刷された領域が盛り上がって膨張する。
以上のような手順によって、熱膨張性シート20に立体画像が形成される。
本実施形態のインク10は、赤外領域の少なくともいずれかの波長域において、可視光領域と比較して強い吸光率を示す無機赤外吸収剤を含むことにより、形成される光熱変換層を白色又はほぼ白色とすることができる。これにより、白色の光熱変換層を有する熱膨張層を提供することができる。従って、光熱変換層の上に設けられるカラーインク層の色味に影響を与えることを抑制することができる。また、熱膨張性シートの表面が白色である場合は、視認されない、又はほぼ視認されない光熱変換層を形成することができる。このように、本実施形態のインク10を用いることにより、立体画像の色味への影響を大きく低減する光熱変換層を印刷することが可能なインク、これを用いた熱膨張性シート及び造形物の製造方法を提供することができる。
(立体画像形成処理の変形例)
立体画像形成処理は、図7に示すプロセスの順番に限られず、以下に詳細に記述するように各ステップの順番は入れ替えることが可能である。
また説明の便宜のため、図7に示す各ステップを以下に示すように称する。熱膨張性シートの表側(図4に示す上面)に表側光熱変換層(以下、表側変換層)を形成する工程(図7におけるステップS1)は、表側変換層形成工程と呼ぶ。熱膨張性シートの表側から、電磁波(光)を照射し、熱膨張層を膨張させる工程(図7におけるステップS2)は、表側膨張工程と呼ぶ。熱膨張性シートの表側にカラー画像を印刷する工程(図7におけるステップS3)は、カラー印刷工程と呼ぶ。熱膨張性シートの裏側(図4に示す下面)に裏側光熱変換層(以下、裏側変換層)を形成する工程(図7におけるステップS5)は、裏側変換層形成工程と呼ぶ。熱膨張性シートの裏側から、電磁波を照射し、熱膨張層を膨張させる工程(図7におけるステップS6)は、裏側膨張工程と呼ぶ。
例えば、立体画像形成処理は、図7に示すプロセスの順番に限られず、裏側変換層を先に形成することもできる。具体的には、裏側変換層形成工程を最初に行い、続いて裏側膨張工程を行った上で、表側変換層形成工程等を行う。この場合、図7に示すフローチャートを用いて説明すると、ステップS4、ステップS5を行い、続いて、ステップS1〜S3をこの順に行う。また、熱膨張層を膨張させる工程を全て終えた後に、カラー画像を印刷することも可能である。この場合、表側変換層形成工程、表側膨張工程、裏側変換層形成工程、裏側膨張工程をこの順に行った後、カラー印刷工程を行う。図7に示すステップS1、ステップS2を行った後、ステップS4、ステップS5を実行し、その後、ステップS3を実行する。また、先に裏側変換層形成工程、裏側膨張工程を行うことも可能である。
また、カラー印刷工程と表側変換層形成工程とを組み合わせ、1つの工程でカラーインク層と表側変換層とを印刷することも可能である。この例では、カラーインク層42と表側変換層41とが同時に印刷される。
以下、図9に示すフローチャート及び図10(a)〜図10(d)に示す熱膨張性シート20の断面図を参照して、立体画像形成システム50によって熱膨張性シート20に立体画像を形成する処理の流れを説明する。本変形例でも、図6に示すように、カラー画像を印刷するためのカラーインクと、光熱変換層を形成するためのインク10とは印刷ユニット52にセットされている。印刷ユニット52は、熱膨張性シート20の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである表面発泡データに基づき、インク10を用いて表側光熱変換層41を印刷する。同様に、熱膨張性シート20の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである裏面発泡データに基づき、インク10を用いて裏側光熱変換層43を印刷する。
第1に、ユーザは、立体画像が形成される前の熱膨張性シート20を準備し、表示ユニット54を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート20を、その表面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。次に、印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート20の表面に表側変換層(表側光熱変換層)41及びカラー画像(カラーインク層42)を印刷する(ステップS21)。具体的に印刷ユニット52は、熱膨張性シート20の表面に、指定された表面発泡データに従って本実施形態のインク10を吐出するとともに、指定されたカラー画像データに従ってシアンC、マゼンタM及びイエローYの各インクを吐出する。その結果、図10(a)に示すように、熱膨張層22上に表側変換層41とカラーインク層42とが形成される。また、表側変換層41とカラーインク層42とは、同時に形成されているため、図10(a)等では、表側変換層41は、破線を用いて図示している。
第2に、ユーザは、表側変換層41及びカラーインク層42が印刷された熱膨張性シート20を、その表面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート20を表面から加熱する(ステップS22)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部によって熱膨張性シート20の表面に光を照射させる。熱膨張性シート20の表面に印刷された表側光熱変換層41は、照射された光を吸収することによって発熱する。その結果、図10(b)に示すように、熱膨張性シート20のうちの光熱変換層41が印刷された領域が盛り上がって膨張する。
第3に、ユーザは、熱膨張性シート20を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット52に挿入する。印刷ユニット52は、挿入された熱膨張性シート20の裏面に光熱変換層(裏側光熱変換層43)を印刷する(ステップS23)。印刷ユニット52は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート20の裏面に、インク10を吐出する。その結果、図10(c)に示すように、基材21の裏面に裏側光熱変換層43が形成される。
第4に、ユーザは、裏側光熱変換層43が印刷された熱膨張性シート20を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット53に挿入する。膨張ユニット53は、挿入された熱膨張性シート20を裏面から加熱する(ステップS24)。具体的に説明すると、膨張ユニット53は、照射部(図示せず)によって熱膨張性シート20の裏面に光を照射させる。その結果、図10(d)に示すように、熱膨張性シート20のうちの裏側光熱変換層43が印刷された領域が盛り上がって膨張する。
以上のような手順によって、熱膨張性シート20に立体画像が形成される。
特に本実施形態のインク10は色味が抑制されているため、表側変換層41を構成するインク10がカラーインク層42の色味へ影響を与えることを抑制することができる。従って、本変形例のステップS21に示すように、表側変換層41とカラーインク層42とを1つの工程で形成し、表側変換層41とカラーインク層42とを同時に形成することが可能となる。
また、図9に示すプロセスの順番に限られず、裏側変換層を先に形成することもできる。具体的には、図9に示すフローチャートを用いて説明すると、ステップS23、ステップS24を行った上で、ステップS21、ステップS22を行う。
また、表側変換層を形成した後、直後に表側膨張工程を行わず、表側変換層形成工程と表側膨張工程との間に他の工程、例えばカラー印刷工程を設けることも可能である。この場合、図7に示すステップS1及びS3を行い、熱膨張性シートの表側への印刷工程を全て終えた後に、表側膨張工程を行うことも可能である。この場合は、図7に示すフローチャートのステップS1を実行し、表側変換層を形成し、続いてステップS3を実行し、カラー画像を印刷する。その後、ステップS2を実行し、熱膨張層を膨張させる。続いて、図7に示すステップS4及びステップS5を実行し、裏側光熱変換層の形成及び熱膨張層の膨張を行う。この例において、裏側変換層形成工程を先に行うこともできる。この場合は、ステップS4及びS5を実行した後にステップS1、S3、S2の順に各工程を実行する。また、カラー印刷工程は、裏側変換層形成工程と裏側膨張工程との間に行うことも可能である。この場合は、ステップS5、S3及びS5をこの順に実行した後にステップS1、S2を実行する、又はステップS1、S2を実行した後にステップS4、S3及びS5をこの順に実行する。
また、表側変換層形成工程、カラー印刷工程、裏側変換層形成工程を先に行った後に、表側膨張工程、裏側膨張工程を行うことも可能である。この場合、図7に示すフローチャートのステップS1、ステップS3、ステップS4を先に実行し、その後、ステップS2及びS5を実行する。なお、ステップS1、ステップS3、ステップS4を実行する順番は、この順に限られず任意に入れ替えることができる。また、ステップS2及びS5についても、この順で実行してもよく、逆の順番に実行してもよい。
また、表側変換層形成工程、裏側変換層形成工程を先に行い、表側膨張工程、裏側膨張工程を行った上で、カラー印刷工程を行うことも可能である。この場合は、例えば、図7に示すフローチャートのステップS1、ステップS4の順、又はステップS4、ステップS1の順で行う。続いて、ステップS2、ステップS5の順、又はステップS5、ステップS2の順で行い、熱膨張層を膨張させる。その後、ステップS3を実行し、カラー画像を印刷する。また、カラー印刷工程を、表側膨張工程、裏側膨張工程の間に実行することも可能である。この場合、ステップS1、S4を実行した後、ステップS2又はステップS5のいずれか一方を実行し、続いてステップS3を実行した後、ステップS2又はステップS5の他方を実行する。
(変形例)
上述した実施形態では、インク10としてUV硬化型のインクを例に挙げて説明したが、インク10は、非水性(油性型、溶剤型)のインクであってもよい。この場合、無機赤外線吸収剤の他、有機溶剤、樹脂等を含む。有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、エチレングルコールモノメチルエーテル、グリコールエーテル類、グリコールアセテート類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類、等が挙げられる。また、樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。いずれも例示した以外の公知の材料を用いることができ、インク10はその他の添加剤を含んでもよい。
上述した実施形態では、インクジェット式のプリンタ内に設置されるカートリッジにインクが充填される場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。本実施形態のインクを、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷など、その他の印刷方式(印刷装置)で使用することも可能である。また、図7に示す印刷工程(ステップS1、S3及びS5)は、全て同じ方式で印刷される必要はなく、上記の印刷方式を任意に組み合わせることが可能である。
また、インク10は、印刷方式に応じ、水性インク、油性インク、紫外線硬化インクのいずれであってもよい。この場合、インク10は、各印刷方式に応じた材料、例えば、溶剤、造膜のための樹脂、補助剤などを含む。これらの材料は、上述した材料若しくは、その他の公知の材料を使用する。
インク10が水性インクである場合、無機赤外線吸収剤と、水と、水性有機溶剤と、樹脂と、を含む。水性有機溶剤としては、これに限るものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール類、グリセリン、グリセロール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールメチル(エチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(エチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、エタノール又はイソプロパノールが挙げられる。また、樹脂としては、樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。インク10は、添加剤を更に含んでもよい。いずれについても例示以外の公知の材料を使用することが可能である。
インク10が紫外線硬化インクである場合、インク10は、無機赤外線吸収剤を含み、更に紫外線硬化樹脂(紫外線硬化性モノマー、紫外線硬化性オリゴマー)と重合開始剤とを含む。紫外線硬化性モノマーとしては、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクレート等の単官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。また、紫外線硬化性オリゴマーとして、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。なお、ウレタンアクリレートのオリゴマーを用いることが好ましい。重合開始剤としては、光開裂型開始剤、水素引き抜き型開始剤のいずれをも使用でき、複数種の光重合開始剤を組み合わせることができる。光開裂型開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド化合物、アセトフェノン化合物等、水素引き抜き型開始剤としてベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物が挙げられる。いずれについても例示以外の公知の材料を使用することが可能である。また、インク10は、その他の溶剤、添加剤を含んでよい。
インク10は、非水性(油性型、溶剤型)のインクであってもよい。この場合、無機赤外線吸収剤の他、有機溶剤、樹脂等を含む。有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、エチレングルコールモノメチルエーテル、グリコールエーテル類、グリコールアセテート類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類、等が挙げられる。また、樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。いずれも例示した以外の公知の材料を用いることができ、インク10はその他の添加剤を含んでもよい。
インク10がオフセット印刷装置等で用いられる場合も、インク10中に含有される樹脂はゴム弾性を有していることが好ましい。このような樹脂としては、これに限るものではないが、紫外線硬化型インクでは、ウレタンアクリレートが挙げられる。
加えて、例えばオフセット印刷装置を利用し、図9及び図10に示すように、カラー印刷工程と表側変換層形成工程とを組み合わせ、1つの工程でカラーインク層と表側変換層とを印刷する場合、オフセット印刷装置は、CMYKのようなカラー画像を印刷するためのインクと、本実施形態のインク10とを備え、これらのインクを用いて、カラーインク層と表側変換層と順番に印刷する。この場合、インク10を用いた印刷を先に行う。CMYKのカラーインクによる印刷の順番は任意である。オフセット印刷装置以外の印刷装置でも同様である。
(実施例1)
無機赤外線吸収剤を含まない状態で白色であるインク(インク10のベース)が下地となるシートの色味を遮蔽することを示すため、インクのベースの一例として、着色剤等を含まない紫外線硬化型の白色のインクジェットプリンタ用インクを使用し、黒色のシート上に印刷を行った。印刷は、同じ濃度で複数回行った。また、複数回の印刷は、前に印刷された場所に重なるように行った。この場合のインク層のLab値及び黒濃度を表1に示す。Lab値及び黒濃度はイグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。印刷回数0に示すLab値及び黒濃度が、シートの色に相当する。表1に示すように、白インクを用いた場合は、2回印刷することで、黒濃度は0.04まで低下し、4回印刷で黒濃度は0に至った。このように、印刷回数を重ねる毎に、白インクによって下地の色は遮蔽され、下地となるシートの色を視認できなくなる。
Figure 2021045969
(実施例2)
次に、実施例2では、UV硬化樹脂としてウレタンアクリレートを含む白色のUV硬化オフセットインク中にセシウム酸化タングステンを混合し、実施例2に係るインクを調製した。セシウム酸化タングステンは、インク中に10重量%で含有させた。このインクを用いてオフセット印刷機で、光熱変換層を熱膨張性シート(500μm厚)上に印刷した。光熱変換層を印刷する濃度は、10%刻みで、0%〜100%の範囲とした。また、インクは2回又は3回重ねて印刷した。熱膨張層を膨張させる前に、それぞれの光熱変換層の色(Lab値)を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。また、ハロゲンランプ(1000W、2500K)を20mm/秒の速度で熱膨張性シート上を移動させた。これにより、熱膨張性シート上の光熱変換層に電磁波を照射し、熱膨張層を膨張させた。続いて、熱膨張層を膨張させた後の光熱変換層の色(Lab値)を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。
熱膨張層の膨張前における2回の印刷によって形成した光熱変換層のLab値を、表2に示す。また、表2に示すΔEは、濃度0%の領域のLab値から、上述した式1を用いて算出した。濃度0%の領域ではインクが存在しないため、濃度0%の領域のLab値が熱膨張性シートの表面のLab値に相当する。また、黒濃度と、以下に示す式2を用いてLab値から算出したハンター白色度とを表2に示す。
白色度=100−[(100−L)+a+b1/2・・・(式2)
Figure 2021045969
次に、熱膨張層の膨張後における2回の印刷によって形成した光熱変換層のLab値を、表3に示す。また、表3に示すΔEも、濃度0%の領域のLab値から、式1の数式を用いて算出した。また、黒濃度と、上記式2を用いてLab値から算出したハンター白色度とを表3に示す。
Figure 2021045969
また、図11は、表2及び表3に示すΔE値を示すグラフである。図11では、熱膨張層の膨張の前と後における各印刷濃度でのΔE値を示す。また、図12は、熱膨張層を膨張させた後の熱膨張性シートの画像である。図12に示すように、濃度40%〜濃度100%の範囲で発泡が見られた。なお、濃度30%以下では、図12に示す破線で囲んだ領域にインクが塗布されているが、発泡が見られなかった。また、発泡が見られた濃度である40%〜100%のΔEは、発泡前が1.4〜4.1、発泡後が1.7〜4.2であった。従って、濃度40%〜80%の範囲で、ΔEが3.2以下の光熱変換層を形成することができ、更にΔEが3.2以下の光熱変換層によって熱膨張層を膨張させることができた。また、この範囲では黒濃度も0.02以下であり、ハンター白色度からも白色度が高いことが分かる。
次に、熱膨張層の膨張前における3回の印刷によって形成した光熱変換層のLab値を、表4に示す。また、表4に示すΔEも、濃度0%の領域のLab値から、上記の数式を用いて算出した。また、黒濃度と、上記式2を用いてLab値から算出したハンター白色度とを表4に示す。
Figure 2021045969
熱膨張層の膨張後における3回の印刷によって形成した光熱変換層のLab値を、表5に示す。また、表5に示すΔEも、濃度0%の領域のLab値から、式1の数式を用いて算出した。また、黒濃度と、上記式2を用いてLab値から算出したハンター白色度とを表5に示す。
Figure 2021045969
また、図13は、表4及び表5に示すΔE値を示すグラフである。図13では、熱膨張層の膨張の前と後における各印刷濃度でのΔE値を示す。3回の印刷によって形成した光熱変換層では、濃度40%〜濃度100%の範囲で良好に発泡が見られた。特に、2回の印刷では発泡の程度が低い濃度40%で良好に発泡が得られた。また、実験の条件では30%はわずかな発泡が見られた。また、良好に発泡が得られた濃度である、40%〜100%のΔEは、発泡前が2.0〜6.1、発泡後が2.2〜5.9であった。ΔEが3.2以下となるのは60%以下であった。従って、40%〜60%の範囲で、ΔEが3.2以下の光熱変換層を形成することができ、更にΔEが3.2以下の光熱変換層によって熱膨張層を膨張させることができた。また、黒濃度も0.04以下であり、ハンター白色度も、白色度が高いことが分かる。
(実施例3)
次に、実施例2に係るインクを用い、実施例2で用いた熱膨張性シートと比較して熱膨張層が薄く形成された熱膨張性シート(400μm厚)上に光熱変換層を形成した例を示す。光熱変換層を印刷する濃度は、10%刻みで、0%〜100%の範囲とした。また、インクはオフセット印刷機を用いて1回印刷した。熱膨張層を膨張させる前に、それぞれの光熱変換層の色(Lab値)を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。また、ハロゲンランプ(1000W、2500K)を18mm/秒の速度で熱膨張性シート上を移動させた。これにより、熱膨張性シート上の光熱変換層に電磁波を照射し、熱膨張層を膨張させた。続いて、熱膨張層を膨張させた後の光熱変換層の色(Lab値)を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。
熱膨張層の膨張前における光熱変換層のLab値を表6に示す。また、熱膨張層の膨張後における光熱変換層のLab値を、表7に示す。表6及び表7に示すΔEは、濃度0%の領域のLab値から、上記の数式1を用いて算出した。また、上記式2を用いてLab値から算出したハンター白色度も表6及び表7に示す。
Figure 2021045969
Figure 2021045969
また、図14は、表6及び表7に示すΔE値を示すグラフである。図14では、熱膨張層の膨張の前と後における各印刷濃度でのΔE値を示す。実施例3では、熱膨張層が薄く形成されているため、印刷回数は1回であるが、実施例2及び3と比較して低い濃度でも発泡させることができた。良好に発泡が見られたのは、濃度30%〜濃度100%であった。濃度20%では、わずかな発泡がみられた。良好に発泡が見られた濃度である、30%〜100%のΔEは、発泡前が0.6〜2.2、発泡後が0.3〜2.6であった。実施例3では、良好に発泡した濃度30%〜100%の全てでΔEを3.2以下とすることができた。従って、30%〜100%の範囲で、ΔEが3.2以下の光熱変換層を形成することができ、更にΔEが3.2以下の光熱変換層によって熱膨張層を膨張させることができた。
(実施例4)
次に、実施例2に係るインクを用い、実施例2で用いた熱膨張性シートとは熱膨張性材料及びバインダの材料が異なる熱膨張性シート(500μm厚)上に光熱変換層を形成した例を示す。光熱変換層を印刷する濃度は、10%刻みで、0%〜100%の範囲とした。また、インクはオフセット印刷機を用いて1回印刷した。また、ハロゲンランプ(1000W、2500K)を18mm/秒の速度で熱膨張性シート上を移動させた。これにより、熱膨張性シート上の光熱変換層に電磁波を照射し、熱膨張層を膨張させた。上記実施例2と同様に熱膨張層の膨張前と膨張後の両方で、光熱変換層の色(Lab値)を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定した。
熱膨張層の膨張前における光熱変換層のLab値を表8に示す。また、熱膨張層の膨張後における光熱変換層のLab値を、表9に示す。表8及び表9に示すΔEは、濃度0%の領域のLab値から、上記の数式1を用いて算出した。また、上記式2を用いてLab値から算出したハンター白色度を表8及び表9に示す。
Figure 2021045969
Figure 2021045969
また、図15は、表8及び表9に示すΔE値を示すグラフである。また、図15は、熱膨張層の膨張の前と後における各印刷濃度でのΔE値を示す。実施例4では、濃度50%〜濃度100%の範囲で発泡が見られた。また、発泡が見られた濃度である、50%〜100%のΔEは、発泡前が0.7〜2.7で、発泡後がそれぞれ、0.7〜1.9であった。従って、ΔEが3.2以下の光熱変換層を形成することができ、更にΔEが3.2以下の光熱変換層によって熱膨張層を膨張させることができた。実施例4で用いたシートは、黄色みを帯びているが、このような色味のシートでも、ΔEを3.2以下とし、光熱変換層形成することができた。従って、50%〜100%の範囲で、ΔEが3.2以下の光熱変換層を形成することができ、更にΔEが3.2以下の光熱変換層によって熱膨張層を膨張させることができた。
以上より、本実施形態のインク10によれば、色味が抑制された白色の光熱変換層を形成することが可能である。
本発明は上述した実施の形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。
本実施形態の光熱変換層は、熱膨張性シートの裏面に形成されてもよい。この場合、光熱変換層と熱膨張性シートとの色差は、図1と同様にして、光熱変換層と熱膨張性シートの裏面との間で算出される。この場合、色差が極めて少なく、ΔEが3.2以下であることが好適である。なお、熱膨張性シートの裏面が視認されにくい等、裏側光熱変換層が色味を有していて問題がない場合は、裏側光熱変換層は、ΔEが3.2より大きくともよい。また、本実施形態の光熱変換層は、熱膨張性シートの表面及び/又は裏面に形成される。
また、本実施形態では、印刷装置として、制御ユニット51、膨張ユニット53等を備える立体画像形成システム50を例に挙げているが、これに限られず、印刷装置は、図5に示すようなインクジェット式の印刷ユニット52のみから構成されてもよい。
また、上述した実施の形態では、熱膨張性シートの特定の領域を加熱する光熱変換層を印刷する構成を例に挙げて説明したが、特定の領域を加熱するためのインクとして使用するものであれば、熱膨張性シート以外に使用することも可能である。
上述した実施形態では、熱膨張性シートの表面及び裏面に光熱変換層を形成する構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。いずれの実施形態でも光熱変換層は、表面のみ又は裏面のみに形成することも可能である。
また、図では、熱膨張性シートの各層、光熱変換層(表側及び裏側)、及びカラーインク層は、いずれも説明のため、必要に応じて誇張して図示されている。従って、これらの形状、厚み、色味等が図示したものに限定されることを意図するものではない。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を膨張させるために使用される光熱変換層を形成するインクであって、
前記インクは、赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、
前記インクのベースが白色である、
ことを特徴とするインク。
[付記2]
前記インクを用いて前記光熱変換層が形成される前記熱膨張性シートの一方の面又は他方の面が白色であり、
前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下である、
ことを特徴とする付記1に記載のインク。
[付記3]
前記無機赤外線吸収剤は、セシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンである、
ことを特徴とする付記1又は2に記載のインク。
[付記4]
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を光熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクを用いて、前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面上に前記光熱変換層を形成する工程を備える、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
[付記5]
前記インクを用いて前記光熱変換層が形成される前記熱膨張性シートの一方の面又は他方の面が白色であり、
前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下である、
ことを特徴とする付記4に記載の造形物の製造方法。
[付記6]
前記無機赤外線吸収剤は、セシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンである、
ことを特徴とする付記4又は5に記載の造形物の製造方法。
[付記7]
熱により膨張する熱膨張層と、前記熱膨張層を膨張させるための光熱変換層と、を備える熱膨張性シートであって、
前記光熱変換層は、赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクにより形成される、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記8]
前記インクを用いて前記光熱変換層が形成される前記熱膨張性シートの一方の面又は他方の面が白色であり、
前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下である、
ことを特徴とする付記7に記載の熱膨張性シート。
[付記9]
前記無機赤外線吸収剤は、セシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンである、
ことを特徴とする付記7又は8に記載の熱膨張性シート。
10・・・インク、20・・・熱膨張性シート、21・・・基材、22・・・熱膨張層、25・・・インク層、41・・・表側光熱変換層、42・・・カラーインク層、43・・・裏側光熱変換層、50・・・立体画像形成システム、51・・・制御ユニット、52・・・印刷ユニット、52a,53a・・・搬入部、52b,53b・・・搬出部、53・・・膨張ユニット、54・・・表示ユニット、55・・・天板、60・・・フレーム、61・・・側面板、62・・・連結ビーム、71・・・キャリッジ、72・・・印刷ヘッド、73,73e,73c,73m,73y・・・インクカートリッジ、74・・・ガイドレール、75・・・駆動ベルト、75m・・・モータ、76・・・フレキシブル通信ケーブル、77・・・フレーム、78・・・プラテン、79a・・・給紙ローラ対、79b・・・排紙ローラ対
本発明は、吸収した熱量に応じて膨張する熱膨張性シートを部分的又は全体的に膨張させるための光熱変換層を形成するためのインクを用いた造形物の製造方法に関する。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、造形物の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層を形成するためのインクを用いた造形物の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る造形物の製造方法は、熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を光熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、赤外領域の少なくともいずれかの波長領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤ベースに含有されたインクを用いて、白色に形成された前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面に前記光熱変換層を形成する第1工程と、前記第1工程で形成された前記光熱変換層に向けて、照射量が所定の光量となるように赤外光を含む光を照射することにより前記光熱変換層に対応する領域の前記熱膨脹層を膨張させる第2工程と、を有し、前記インクは、白色顔料が含有されており、前記第1工程は、前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下となるように、前記光熱変換層を形成する、ことを特徴とする。
本発明によれば、造形物の色味への影響を低減させることが可能な光熱変換層を形成するためのインクを用いた造形物の製造方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を光熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
    赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクを用いて、前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面に前記光熱変換層を形成する第1工程を備え、
    前記インクは、前記無機赤外線吸収剤として10重量%のセシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンを含み、
    前記第1工程は、
    前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下となるように、
    且つ、前記インクの少なくとも一部が前記熱膨張性シートに吸収されるように、前記光熱変換層を形成する、
    ことを特徴とする造形物の製造方法。
  2. 前記光熱変換層に重なる箇所の前記熱膨張層を、前記光熱変換層を用いて膨張させる第2工程を備え、
    前記第1工程は、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、前記第2工程の実施後における前記光熱変換層と、の間における前記色差ΔE*abが、3.2以下となるように、前記光熱変換層を形成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の造形物の製造方法。
  3. 前記光熱変換層に重なる箇所の前記熱膨張層を、前記光熱変換層を用いて膨張させる第2工程を備え、
    前記第1工程は、前記第2工程の実施前における前記光熱変換層と、前記第2工程の実施後における前記光熱変換層と、の間における前記色差ΔE*abが、3.2以下となるように、前記光熱変換層を形成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の造形物の製造方法。
  4. 前記熱膨張性シートの一方及び他方の面のうち、少なくとも前記光熱変換層が形成される方の面が予め白色に形成されている、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の造形物の製造方法。
  5. 熱により膨張する熱膨張層と、前記熱膨張層を膨張させるための光熱変換層と、を備える熱膨張性シートであって、
    前記光熱変換層は、赤外領域の少なくともいずれかの領域で、可視光領域と比較して高い吸光率を有する無機赤外線吸収剤を含み、ベースが白色であるインクを用いて、前記熱膨張性シートの一方及び/又は他方の面に形成され、
    前記インクは、前記無機赤外線吸収剤として10重量%のセシウム酸化タングステン又は六ホウ化ランタンを含み、
    前記光熱変換層と、前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、の間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔE*abが、3.2以下となるように、
    且つ、前記インクの少なくとも一部が前記熱膨張性シートに吸収されるように、前記光熱変換層が形成されている、
    ことを特徴とする熱膨張性シート。
  6. 前記熱膨張性シートの前記光熱変換層が形成される面と、前記光熱変換層に重なる箇所の前記熱膨張層を前記光熱変換層を用いて膨張させた後における前記光熱変換層と、の間における前記色差ΔE*abが、3.2以下となるように、前記光熱変換層が形成されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の熱膨張性シート。
  7. 前記光熱変換層に重なる箇所の前記熱膨張層を前記光熱変換層を用いて膨張させる前における前記光熱変換層と、前記光熱変換層に重なる箇所の前記熱膨張層を前記光熱変換層を用いて膨張させた後における前記光熱変換層と、の間における前記色差ΔE*abが、3.2以下となるように、前記光熱変換層が形成されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の熱膨張性シート。
  8. 前記熱膨張性シートの一方及び他方の面のうち、少なくとも前記光熱変換層が形成される方の面が予め白色に形成されている、
    ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の熱膨張性シート。
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