JP2021044098A - 充電制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】固体電解質を含むリチウムイオン電池を効率良く充電する。【解決手段】ECUは、限界電流の超過を検出したと判定される場合(S100にてYES)、前回の計算時点からの金属リチウムの析出量ΔQnewを算出するステップ(S102)と、不活性量Qaを除いた析出量の総量Qnewを算出するステップ(S104)と、総量Qnewが性能限界を示すしきい値Q(0)を超えると抑制制御を実行するステップ(S110)と、IGオフされると(S108にてYES)、放置時間の計測を開始するステップ(S108にてYES)、IGオンされると(S114にてYES)、放置時間を算出するステップ(S116)と、最低気温情報を取得するステップ(S118)と、不活性量Qaを算出するステップ(S120)と、不活性量Qaを所定の記憶領域に記憶するステップ(S122)とを含む、処理を実行する。【選択図】図2
Description
本開示は、リチウムイオン電池の充電制御に関する。
電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両の電源としてリチウムイオン電池が用いられる場合がある。このリチウムオン電池においては、たとえば、所定の充電電流の大きさを超えたハイレート充電が行なわれる場合に、リチウムイオン電池の負極表面に金属リチウムが析出し、結果として性能低下を引き起こす可能性がある。そのため、負極表面に金属リチウムが析出しないように充電量を制限する技術が公知である。
たとえば、特開2012−244888号公報(特許文献1)には、外部充電時には、走行時に比べ充電電流についての上限電流値を大きくすることにより、走行時において充電量を制限して金属リチウムの析出を抑制しつつ、外部充電時において短時間で充電を完了させる技術が開示されております。
ところで、固体電解質を含むリチウムイオン電池においては、金属リチウムが析出しても一定時間放置されることにより一部が不活性化し、充電量の許容量が増加する場合がある。そのため、不活性化した量を考慮して適切な充電量が設定されないと、充電量が不必要に制限されることになる。その結果、リチウムイオン電池を効率良く充電することができず、たとえば、回生時等に生じるエネルギーを効率良く回収できない場合がある。特許文献1には、このような問題について考慮されておらず解決することができない。
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、固体電解質を含むリチウムイオン電池を効率良く充電する充電制御システムを提供することである。
本開示のある局面に係る充電制御システムは、硫化物を含む固体電解質を用いたリチウムイオン電池を充電可能とする充電装置と、充電装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、リチウムイオン電池が充電される充電期間における、リチウムイオン電池に流れる充電電流の大きさが限界電流を超えることにより生成される金属リチウムの析出量を算出する。制御装置は、リチウムイオン電池の温度と、析出量のうちのリチウムイオン電池の放置によって不活性となる不活性量の所定時間当たりの増加量との予め定められた関係を示す情報を用いてリチウムイオン電池の放置期間における不活性量を算出する。制御装置は、析出量から不活性量を除いた値がしきい値を超える場合、金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流を制御する。
このようにすると、金属リチウムの析出量からリチウムイオン電池の放置によって不活性となる不活性量を除いた値がしきい値を超える場合に金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流が制御されるので、不活性量を考慮した適切な充電量を設定することができる。そのため、硫化物を含む固体電解質を用いたリチウムイオン電池を効率良く充電することができる。
本開示によると、固体電解質を含むリチウムイオン電池を効率良く充電する充電制御システムを提供することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下では、本開示の実施の形態に係る充電制御システムが車両に搭載される場合を一例として説明する。図1は、本実施の形態に係る充電制御システムを搭載した車両1の構成の一例を示す図である。
本実施の形態において、車両1は、たとえば、電気自動車である。車両1は、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)50と、組電池100と、監視ユニット200と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。
MG10は、たとえば三相交流回転電機であって、電動機(モータ)としての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能を有する。MG10の出力トルクは、減速機および差動装置等を含んで構成された動力伝達ギア20を介して駆動輪30に伝達される。
車両1の制動時には、駆動輪30によりMG10が駆動され、MG10が発電機として動作する。これにより、MG10は、車両1の運動エネルギーを電力に変換する回生制動を行なう制動装置としても機能する。MG10における回生制動力により生じた回生電力は、組電池100に蓄えられる。なお、図1ではMGが1つだけ設けられる構成が示されるが、MGの数はこれに限定されず、MGを複数(たとえば2つ)設ける構成としてもよい。
PCU40は、MG10と組電池100との間で双方向に電力を変換する電力変換装置である。すなわち、組電池100を充電可能とする充電装置は、PCU40によって実現される。PCU40は、たとえば、ECU300からの制御信号に基づいて動作するインバータとコンバータ(いずれも図示せず)とを含む。
コンバータは、組電池100の放電時に、組電池100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG10を駆動する。
一方、インバータは、組電池100の充電時に、MG10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を組電池100の充電に適した電圧に降圧して組電池100に供給する。
また、PCU40は、ECU300からの制御信号に基づいてインバータおよびコンバータの動作を停止することによって充放電を休止する。なお、PCU40は、コンバータを省略した構成であってもよい。
SMR50は、組電池100とPCU40とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている(すなわち、導通状態である)場合、組電池100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。一方、SMR50がECU300からの制御信号に応じて開放されている(すなわち、遮断状態である)場合、組電池100とPCU40との間の電気的な接続が遮断される。
組電池100は、再充電が可能に構成された直流電源であって、硫化物系固体電解質を用いたリチウムイオン電池である。組電池100は、たとえば、リチウムイオン電池のセルを蓄電要素として複数個含んで構成される。
監視ユニット200は、電圧検出部210と、電流検出部220と、温度検出部230とを含む。電圧検出部210は、組電池100の端子間の電圧VBを検出する。電流検出部220は、組電池100に入出力される電流IBを検出する。温度検出部230は、組電池100の温度TBを検出する。各検出部は、その検出結果をECU300に出力する。
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む)302とを含む。ECU300は、監視ユニット200から受ける信号、メモリ302に記憶されたマップおよびプログラム等の情報に基づいて、車両1が所望の状態となるように各機器を制御する。ECU300が行なう各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。すなわち、充電装置を制御する制御装置は、ECU300によって実現される。
組電池100の蓄電量は、一般的に、満充電容量に対する、現在の蓄電量を百分率で示した、SOC(State Of Charge)によって管理される。ECU300は、電圧検出部210、電流検出部220、および、温度検出部230による検出値に基づいて、組電池100のSOCを逐次算出する機能を有する。SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
ECU300は、組電池100の充電電力の上限値を示す充電電力制限値Winと、組電池100の放電電力の上限値を示す放電電力制限値Woutとに基づいて、組電池100の充放電電力を制御するように構成される。ECU300は、組電池100への充電電力が充電電力の制限値Winを超えないように、組電池100への充電電力を調整する。また、ECU300は、組電池100からの放電電力が放電電力の制限値Woutを超えないように、組電池100からの放電電力を調整する。これらの調整は、たとえば、PCU40が制御されることにより行なわれる。ECU300は、組電池100の状態に基づいて充電電力の制限値Winおよび放電電力の制限値Woutを設定する。
以上のように構成される車両1に搭載されるリチウムイオン電池においては、所定の充電電流の大きさを超えたハイレート充電が行なわれる場合に、リチウムイオン電池の負極表面に金属リチウムが析出し、結果として性能低下を引き起こす可能性がある。そのため、負極表面に金属リチウムが析出しないように充電量を制限することが求められる。
ところで、固体電解質を含むリチウムイオン電池においては、金属リチウムが析出しても一定時間放置されることにより一部が不活性化し、充電量の許容量が増加する場合がある。そのため、不活性化した量を考慮して適切な充電量が設定されないと、充電量が不必要に制限されることになる。その結果、リチウムイオン電池を効率良く充電することができず、たとえば、回生時等に生じるエネルギーを効率良く回収できない場合がある。
そこで、本実施の形態においては、組電池100が硫化物を含む固体電荷地質を用いたリチウムイオン電池に対してECU300が以下のように動作するものとする。すなわち、ECU300は、組電池100が充電される充電期間における、組電池100に流れる充電電流の大きさが限界電流を超えることにより生成される金属リチウムの析出量を算出する。ECU300は、組電池100の温度と、金属リチウムの析出量のうちのリチウムイオン電池の放置によって不活性となる不活性量の所定時間当たりの増加量との予め定められた関係を示す情報を用いて組電池100の放置期間における不活性量を算出する。ECU300は、析出量から不活性量を除いた値がしきい値を超える場合、金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流を制御する。本実施の形態に係る充電制御システムは、PCU40とECU300とによって実現される。
このようにすると、金属リチウムの析出量から組電池100の放置によって不活性となる不活性量を除いた値がしきい値を超える場合に金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流が制御されるので、不活性量を考慮した適切な充電量を設定することができる。そのため、硫化物を含む固体電解質を用いた組電池100を効率良く充電することができる。
以下、図2を参照して、ECU300で実行される制御処理の一例について説明する。図2は、ECU300で実行される制御処理の一例を示すフローチャートである。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU300は、限界電流Ilimの超過を検出したか否かを判定する。限界電流Ilimは、金属リチウムが析出する充電電流のしきい値を示す。ECU300は、たとえば、組電池100の充電中に(電流IBが充電側の符号であって)、電流IBの大きさが限界電流Ilimよりも大きくなる場合に限界電流Ilimの超過を検出したと判定する。ECU300は、たとえば、組電池100の電流履歴と、温度履歴と、SOCの変化履歴とを用いて限界電流を設定する。限界電流の設定方法については公知の技術を用いればよくその詳細な説明は行なわない。
図3は、組電池100の充電時の電流IBの変化と限界電流Ilimの変化との一例を示す図である。図3の縦軸は、電流を示す。図3の横軸は、時間を示す。図3のLN1は、電流IBの変化を示す。図3のLN2は、限界電流Ilimの変化を示す。
図3のLN1に示すように、たとえば、時間aの時点に組電池100の電流が充電側の値に変化し、時間が経過するともに増減変動しつつその大きさが徐々に増加していくように変化する場合を想定する。
限界電流Ilimは、電流がゼロである場合には、初期値Ilim(0)が維持されるが時間aの時点に組電池100の電流が充電側の値に変化すると、限界電流の大きさは減少する。そして、組電池100の充電が継続する時間が長くなるほど、限界電流の大きさは、減少していく。
時間bから時間cまでの期間において、電流IBが限界電流Ilim(b)よりも下回り、電流IBの大きさが限界電流Ilim(b)の大きさを超過する場合に、ECU300において、限界電流Ilimの超過を検出したと判定される。
そして、時間cにおいて、電流IBが限界電流Ilim(c)よりも上回り、電流IBの大きさが限界電流Ilim(c)の大きさ以下になる場合に、ECU300において、限界電流Ilimの超過が検出されないと判定される。
限界電流の超過を検出したと判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
S102にて、ECU300は、金属リチウムの析出量ΔQnewを算出する。ECU300は、たとえば、電流IBと限界電流Ilimとの差分の大きさとサンプル時間Δtとを乗算することによってサンプル時間Δtが経過するまでの間(すなわち、前回の計算時点から今回の計算時点までの間)の金属リチウムの析出量ΔQnewを算出する。
S104にて、ECU300は、前回の計算における析出量の総量QoldにΔQnewを加算するとともに不活性量Qaを減算して今回の計算における析出量の総量Qnewを算出する。ECU300は、たとえば、メモリ302の所定の領域に記憶される前回の計算における析出量の総量Qoldを示す値を読み出して総量Qoldを取得する。さらに、ECU300は、たとえば、メモリ302の所定の領域に記憶される不活性量Qaを示す値を読出して不活性量Qaを取得する。ECU300は、総量Qnewを算出した後に、総量Qoldの値に代えて総量Qnewの値をメモリ302の所定の領域に記憶させる。
S106にて、ECU300は、総量Qnewが性能限界を示すしきい値Q(0)よりも小さいか否かを判定する。しきい値Q(0)は、たとえば、実験等によって適合される予め定められた値であってもよい。総量Qnewがしきい値Q(0)よりも小さいと判定される場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。
S108にて、ECU300は、IGオフされたか否かを判定する。ECU300は、たとえば、車両1のシステムの起動中に、起動ボタン(図示せず)等の車両1のシステムの起動状態を操作するための操作部材が操作された場合に、IGオフされたと判定してもよいし、あるいは、SMR50がオフ状態になるときにIGオフされたと判定してもよい。IGオフされたと判定される場合(S108にてYES)、処理はS112に移される。一方、総量Qnewがしきい値Q(0)以上であると判定される場合(S106にてNO)、処理はS110に移される。
S110にて、ECU300は、金属リチウムの析出を抑制する制御(以下、抑制制御と記載する)を実行する。
具体的には、ECU300は、たとえば、上述の充電電力制限値Winの大きさを金属リチウムの析出が抑制される値になるまで低下させる。ECU300は、たとえば、電流IBの大きさが限界電流Ilim以下となるまで上述の充電電力制限値Winの大きさを低下させるようにしてもよい。その後処理はS108に移される。
S112にて、ECU300は、IGオフされたと判定された時点からの放置時間の計測を開始する。ECU300は、たとえば、内蔵された図示しないタイマーによってIGオフされたと判定された時点からの放置時間を測定する。
S114にて、ECU300は、IGオンされたか否かを判定する。ECU300は、たとえば、車両1のシステムの停止中に、上述の操作部材が操作された場合にIGオンされたと判定してもよいし、あるいは、SMR50がオン状態になるときにIGオンされたと判定してもよい。IGオンされたと判定される場合(S114にてYES)、処理はS116に移される。
S116にて、ECU300は、放置時間を算出する。ECU300は、たとえば、タイマーによって測定された時間を放置時間として算出してもよいし、あるいは、ECU300は、IGオフの時点における時刻と、その後のIGオンの時点における時刻とから放置時間を算出してもよい。
S118にて、ECU300は、最低気温情報を取得する。最低気温情報は、放置期間において変化する組電池100の温度のうちの最小の温度についての情報を含む。ECU300は、たとえば、放置期間において変化する気温のうちの最小の温度を最低気温情報として取得してもよい。そのため、ECU300は、たとえば、車両1の外部のサーバから最低気温情報を取得してもよいし、放置期間中において図示しない気温センサによって取得された温度履歴のうちの最小の温度を最低気温情報として取得してもよいし、放置期間中において温度検出部230によって取得された温度履歴のうちの最小の温度を最低気温情報として取得してもよい。
S120にて、ECU300は、放置期間における金属リチウムの析出量の不活性量Qaを算出する。ECU300は、たとえば、放置時間と最低気温情報と予め定められたマップとを用いて不活性量Qaを算出する。
予め定められたマップは、たとえば、温度と析出した金属リチウムの不活性化速度との関係を示すマップを含む。不活性化速度とは、不活性量の所定時間当たり(たとえば、単位時間当たり)の増加量を示す。図4は、温度と不活性化速度との関係を示す予め定められたマップの一例を示す。図4の縦軸は、不活性化速度を示す。図4の横軸は、温度を示す。
図4に示すように、温度と不活性化速度との関係は、温度が高くなるほど不活性化速度が増加し、温度が低くなるほど不活性化速度が減少する傾向を示し、2次曲線の単調増加部分に近似した傾向を示している。このような関係は、たとえば、実験等に適合して設定される。予め定められたマップの設定方法については、後述する。
ECU300は、たとえば、予め定められたマップと最低気温情報とを用いて不活性化速度を算出する。ECU300は、算出された不活性化速度と放置時間とを用いて不活性量Qaを算出する。ECU300は、たとえば、最低気温情報から温度T(0)を取得した場合には、図4の予め定められたマップから取得した温度T(0)に対応する不活性化速度V(0)を特定する。ECU300は、たとえば、取得した不活性化速度V(0)と放置時間とを乗算することによって不活性量Qaを算出する。なお、不活性量Qaの初期値はゼロである。また、放置期間が複数回ある場合には、積算値が不活性量Qaとして算出される。
S122にて、ECU300は、算出された不活性量をメモリ302の所定の領域に記憶させる。なお、限界電流の超過が検出されないと判定される場合(S100にてNO)、処理はS108に移される。さらに、IGオフされないと判定される場合(S108にてNO)、処理はS100に戻される。さらに、IGオンされないと判定される場合(S114にてNO)、処理はS114に戻される。
次に、図5を用いて不活性化速度を算出するための予め定められたマップの設定方法について説明する。図5は、予め定められたマップの設定方法の一例を示すフローチャートである。
S200にて、金属リチウムの量とESR(Electron Spin Resonance)強度(吸収強度)との関係を示す検量線が取得される。ESR強度とは、ある磁場を作用させたときのリチウム金属由来のピークの強度幅を示す。
図6は、金属リチウムの量とESR強度との関係を示す検量線の一例を示す図である。図6の縦軸は、ESR強度を示す。図6の横軸は、金属リチウムの量を示す。図6に示すように金属リチウムの量とESR強度との関係は、金属リチウムの量が多くなるほどESR強度が増加し、金属リチウムの量が少なくなるほどESR強度が減少する傾向を示し、金属リチウムの量の増加に対してESR強度が指数関数的に増加する傾向を示している。これらの検量線は、たとえば、実験等によって適合され予め作成される。
S202にて、硫化物を含む固体電解質を用いたリチウムイオン電池のセルにリチウムを析出させる。たとえば、セルの性能限界に相当する析出量の金属リチウムが析出される。
S204にて、析出した金属リチウムのESR強度(第1ESR強度)が測定される。ESR強度は、たとえば、ESR測定装置を用いて測定される。測定方法としては公知の技術が用いられればよくその詳細な説明は行なわない。
S206にて、セルが予め定められた温度で保存される。たとえば、セルは予め定められた放置時間が経過するまで保存される。
S208にて、放置時間が経過した後のセルに析出した金属リチウムのESR強度(第2ESR強度)が測定される。
S210にて、第1ESR強度に対応する金属リチウムの量と第2ESR強度に対応する金属リチウムの量とが検量線から特定される。そして、その差分から予め定められた放置時間における不活性量が算出される。予め定められた放置時間における不活性量から単位時間当たりの不活性量が算出され、予め定められた温度における不活性化速度として設定される。
たとえば、10℃毎に温度を変化させつつ、S200からS210の処理を繰り返すことによって各温度に対応した不活性化速度を算出することによって、図4に示されるような予め定められたマップが設定される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る充電制御システムの制御装置であるECU300の動作について説明する。
たとえば、組電池100の充電中において、充電電流の大きさが限界電流Ilimを超える場合には、限界電流Ilimの超過を検出したと判定され(S100にてYES)、前回の計算時点からの金属リチウムの析出量ΔQnewが算出される(S102)。そして、前回の計算における析出量の総量QoldにΔQnewが加算されるとともに、不活性量Qaが減算されることによって今回の析出量の総量Qnewが算出される(S104)。
算出された総量Qnewが性能限界を示すしきい値Q(0)以上である場合には(S106にてNO)、抑制制御が実行される(S110)。この場合、充電電力制限値Winの大きさが金属リチウムの析出が抑制される値になるまで低下させられる。その結果、金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流が制御される。一方、算出された総量Qnewが性能限界を示すしきい値Q(0)よりも小さい場合には(S106にてYES)、IGオフされたか否かが判定される(S108)。
IGオフされていないと判定される場合には(S108にてNO)、再度、限界電流の超過を検出したか否かが判定される(S100)。一方、IGオフされたと判定される場合には(S108にてYES)、放置時間の計測が開始される(S112)。
放置時間中において、組電池100の各セルの負極においては析出した金属リチウムは、硫黄と反応するなどしてその一部が不活性化することとなる。そして、IGオンされたと判定された場合に(S114にてYES)、放置時間が算出されるとともに(S116)、最低気温情報が取得される(S118)。そして、取得された最低気温情報と予め定められたマップとから不活性化速度が算出され、算出された不活性化速度と放置時間とを用いて放置時間における不活性量Qaが算出される(S120)。算出された不活性量Qaは、所定の記憶領域に記憶される(S122)。
以上のようにして、本実施の形態に係る充電制御システムによると、金属リチウムの析出量から組電池100の放置によって不活性となる不活性量を除いた値がしきい値を超える場合に金属リチウムの析出が抑制されるように充電電流が制御されるので、不活性量を考慮した適切な充電量を設定することができる。そのため、硫化物を含む固体電解質を用いた組電池100を効率良く充電することができる。したがって、固体電解質を含むリチウムイオン電池を効率良く充電する充電制御システムを提供することができる。
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、車両1として電気自動車を一例の構成として説明したが、特に電気自動車に限定されるものではなく、たとえば、MG10に加えてエンジンを駆動源あるいは発電源として搭載されるハイブリッド車両であってもよい。
さらに上述の実施の形態では、車両1は、組電池100とMG10との間で電力の授受が可能な構成を有するものとして説明したが、たとえば、車両1は、上述の構成に加えて、車両1の外部の充電スタンドから供給される電力を用いて組電池100の充電が可能な構成を有していてもよい。
さらに上述の実施の形態では、放置時間の間に最低温度が一定(すなわち、不活性化速度が一定)である場合を想定して不活性量を算出する場合を一例として説明したが、たとえば、所定時間(たとえば、サンプル時間)毎に温度と予め定められたマップとから不活性化速度を算出し、所定時間における不活性量を算出し、積算することによって温度変化に応じた不活性量を算出してもよい。このようにすると、放置期間における不活性量を精度高く算出することができるため、総量に応じた充電電流の制御を精度高く実施することができる。
さらに上述の実施の形態では、IGオフからIGオンまでの時間を放置時間とするものとして説明したが、組電池100の充電が停止される期間であればよく、特にIGオフからIGオンまでの時間に限定されるものではない。たとえば、IGオフからIGオンまでの時間に加えて、IGオン中に電流IBがゼロとなる期間を放置時間としてもよいし、あるいは、車両1がハイブリッド車両であって、エンジンが発電源として搭載される場合には、IGオン中にエンジンがオフされてからオンされるまでの期間を放置時間としてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、20 動力伝達ギア、30 駆動輪、40 PCU、50 SMR、100 組電池、200 監視ユニット、210 電圧検出部、220 電流検出部、230 温度検出部、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。
Claims (1)
- 硫化物を含む固体電解質を用いたリチウムイオン電池を充電可能とする充電装置と、
前記充電装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記リチウムイオン電池が充電される充電期間における、前記リチウムイオン電池に流れる充電電流の大きさが限界電流を超えることにより生成される金属リチウムの析出量を算出し、
前記リチウムイオン電池の温度と、前記析出量のうちの前記リチウムイオン電池の放置によって不活性となる不活性量の所定時間当たりの増加量との予め定められた関係を示す情報を用いて前記リチウムイオン電池の放置期間における前記不活性量を算出し、
前記析出量から前記不活性量を除いた値がしきい値を超える場合、前記金属リチウムの析出が抑制されるように前記充電電流を制御する、充電制御システム。
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