JP5842607B2 - 非水二次電池の制御装置および制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、非水二次電池の劣化状態を評価して、非水二次電池の放電を制御する制御装置および制御方法に関する。
特許文献1に記載の技術では、電池を充放電したときの電流値の履歴に基づいて、ハイレート放電による劣化を評価するための評価値を算出している。評価値が目標値を超えていないときには、電池の放電を許容する上限値を最大値に設定している。一方、評価値が目標値を超えたときには、上限値を最大値よりも小さい値に設定している。
特許文献1によれば、評価値が目標値を超えていないときには、上限値を最大値に設定しておくことにより、運転者の要求に応じた車両の動力性能を発揮させるようにしている。また、評価値が目標値を超えたときには、上限値を最大値よりも小さい値に設定することにより、ハイレート放電による劣化が発生するのを抑制するようにしている。
特開2009−123435号公報(図4,図7等)
特許文献1に記載の技術において、評価値および目標値の大小関係だけで、電池の放電を許容する上限値を変更すると、電池の放電が過度に制限されてしまうことがある。電池の放電が過度に制限されると、電池の十分な出力性能を確保しにくくなってしまう。
本願第1の発明は、非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように非水二次電池の放電を制御する制御装置であり、電流センサおよびコントローラを有する。電流センサは、非水二次電池の充放電時における電流値を検出する。コントローラは、第1劣化成分を評価するための評価値を、電流センサによって検出された電流値から算出する。第1劣化成分は、非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って非水二次電池の出力性能を低下させる成分である。
コントローラは、評価値が目標値を超えたとき、上限値を低下させる一方で、放電電流値が許容電流値よりも低いとき、上限値を低下させないようにする。ここで、許容電流値として、第1劣化成分に対応する非水二次電池の抵抗増加率が、抵抗増加率に基づいて予め定められた非水二次電池の寿命目標値に応じた閾値以下となる出力制限で充放電した際の充放電電流値を用いることができる。
本願第1の発明によれば、評価値が目標値よりも大きい場合であっても、例えば、放電電流値が、予め定められた非水二次電池の寿命目標に対しイオン濃度の偏りが発生し難い電流値の範囲内であれば、非水二次電池の放電を制限せずに、ハイレート放電による非水二次電池の劣化を抑制しながら非水二次電池の放電が過度に制限されてしまうのを抑制でき、非水二次電池に要求される出力を確保することができる。
コントローラは、評価値が目標値を超えた際、放電電流値が許容電流値よりも低いときは、上限値を最大値に設定することができ、ハイレート放電による非水二次電池の劣化を抑制しながら非水二次電池に要求される出力を最大限に確保することができる。
コントローラは、評価値が目標値を超えた際、放電電流値が許容電流値よりも高いときは、上限値を最大値よりも小さい値に設定することができる。
コントローラは、評価値が目標値を超えた際、放電電流値が許容電流値よりも高いとき、評価値及び目標値の差分に応じた第1出力制限値を算出し、許容電流値に対応する第2出力制限値(放電電流値が許容電流値以下となる第2出力制限値)が第1出力制限値よりも大きい場合、上限値を第2出力制限値に設定することができる。非水二次電池の放電を制限する場合であっても、許容電流値以上の放電電流値とならないように出力制限を行うことで、必要以上に出力制限を行わずに、ハイレート放電による非水二次電池の劣化を抑制しながら非水二次電池に要求される出力を最大限に確保することができる。
本願第2の発明は、非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように非水二次電池の放電を制御する制御方法であって、電流センサを用いて、非水二次電池の充放電時における電流値を検出し、第1劣化成分を評価するための評価値を、電流センサによって検出された電流値から算出する。第1劣化成分は、非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って非水二次電池の出力性能を低下させる成分である。
本願第2の発明においても、評価値が目標値を超えたとき、放電電流値が許容電流値よりも高い場合に上限値を低下させ、放電電流値が許容電流値よりも低い場合には上限値を低下させないようにする。ここで、許容電流値として、第1劣化成分に対応する非水二次電池の抵抗増加率が、抵抗増加率に基づいて予め定められた非水二次電池の寿命目標値に応じた閾値以下となる出力制限で充放電した際の充放電電流値を用いることができる。本願第1の発明と同様に、ハイレート放電による非水二次電池の劣化を抑制しながら非水二次電池の放電が過度に制限されてしまうのを抑制でき、非水二次電池に要求される出力を確保することができる
実施例1における電池システムの構成を示す図である。 実施例1の組電池の充放電を制御する処理を示すフローチャートである。 図2に続く実施例1の組電池の充放電を制御する処理を示すフローチャートである。 図3に示した実施例1の組電池の充放電を制御する処理において、出力制限値の設定処理を示すフローチャートである。 組電池の温度および忘却係数の関係を示す図である。 組電池の温度および限界値の関係を示す図である。 組電池の抵抗増加率と電流制限値の関係を示す図である。 実施例1における出力制限値、評価値及び放電電流値の変化を示す図である。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1である電池システムについて、図1を用いて説明する。図1は、電池システムの構成を示す図である。
図1に示す電池システムは、車両に搭載される。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させるための動力源として、組電池の他に、燃料電池や内燃機関等を備えた車両である。電気自動車は、車両の動力源として組電池だけを備えた車両である。
組電池10は、電気的に直列に接続された複数の単電池11を有する。組電池10を構成する単電池11の数は、組電池10の要求出力等に基づいて、適宜設定することができる。組電池10は、電気的に並列に接続された複数の単電池11を含んでいてもよい。単電池11としては、リチウムイオン二次電池などの非水二次電池を用いることができる。
単電池11の正極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。正極の材料としては、例えば、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムを用いることができる。単電池11の負極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。負極の材料としては、例えば、カーボンを用いることができる。単電池11を充電するとき、正極は、イオンを電解液中に放出し、負極は、電解液中のイオンを吸蔵する。また、単電池11を放電するとき、正極は、電解液中のイオンを吸蔵し、負極は、イオンを電解液中に放出する。
組電池10は、システムメインリレー21a,21bを介して昇圧回路22に接続されており、昇圧回路22は、組電池10の出力電圧を昇圧する。昇圧回路22は、インバータ23と接続されており、インバータ23は、昇圧回路22からの直流電力を交流電力に変換する。モータ・ジェネレータ(三相交流モータ)24は、インバータ23からの交流電力を受けることにより、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ24によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
昇圧回路22は、省略することができる。また、モータ・ジェネレータ24として直流モータを用いるときには、インバータ23を省略することができる。
車両を減速させるときや、車両を停止させるとき、モータ・ジェネレータ24は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータ・ジェネレータ24で生成された交流電力は、インバータ23によって直流電力に変換される。昇圧回路22は、インバータ23の出力電圧を降圧してから組電池10に供給する。これにより、回生電力を組電池10に蓄えることができる。
電流センサ25は、組電池10に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ25によって検出された電流値に関して、放電電流を正の値とし、充電電流を負の値とすることができる。温度センサ26は、組電池10の温度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。温度センサ26の数は、適宜設定することができる。複数の温度センサ26を用いるときには、複数の温度センサ26によって検出された温度の平均値を組電池10の温度として用いたり、特定の温度センサ26によって検出された温度を組電池10の温度として用いたりすることができる。
電圧センサ27は、組電池10の電圧を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。本実施例では、組電池10の電圧を検出しているが、これに限るものではない。例えば、組電池10を構成する単電池11の電圧を検出することができる。また、組電池10を構成する複数の単電池11を複数のブロックに分け、各ブロックの電圧を検出することができる。各ブロックは、少なくとも2つの単電池11を含んでいる。
コントローラ30は、システムメインリレー21a,21b、昇圧回路22およびインバータ23の動作を制御する。コントローラ30は、各種の情報を記憶するメモリ31を有する。メモリ31には、コントローラ30を動作させるためのプログラムも記憶されている。本実施例では、コントローラ30がメモリ31を内蔵しているが、コントローラ30の外部にメモリ31を設けることができる。
コントローラ30は、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオフからオンに切り替えたり、昇圧回路22およびインバータ23を動作させたりする。また、コントローラ30は、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオンからオフに切り替えたり、昇圧回路22やインバータ23の動作を停止させたりする。
充電器28は、外部電源からの電力を組電池10に供給する。これにより、組電池10を充電することができる。充電器28は、充電リレー29a,29bを介して、組電池10に接続されている。充電リレー29a,29bがオンであるとき、外部電源からの電力を組電池10に供給することができる。
外部電源とは、車両の外部に設けられた電源であり、外部電源としては、例えば、商用電源がある。外部電源が交流電力を供給するとき、充電器28は、交流電力を直流電力に変換して、直流電力を組電池10に供給する。一方、外部電源が直流電力を供給するときには、外部電源からの直流電力を組電池10に供給するだけでよい。本実施例では、外部電源の電力を組電池10に供給できるようにしているが、外部電源の電力を組電池10に供給できなくてもよい。
次に、組電池10の充放電を制御する処理について、図2から図4に示すフローチャートを用いて説明する。図2から図4に示す処理は、予め設定された時間間隔(サイクルタイム)で繰り返して行われる。図2から図4に示す処理は、コントローラ30に含まれるCPUが、メモリ31に記憶されたプログラムを実行することにより行われる。
ステップS101において、コントローラ30は、電流センサ25の出力信号に基づいて、放電電流値Iを取得する。組電池10を放電しているときには、放電電流値Iが正の値になり、組電池10を充電しているときには、放電電流値Iが負の値(充電電流値)になる。
ステップS102において、コントローラ30は、ステップS101で得られた放電電流値Iに基づいて、組電池10のSOC(State Of Charge)を算出(推定)する。SOCは、組電池10の満充電容量に対する現在の充電容量の割合である。コントローラ30は、組電池10を充放電したときの電流値を積算することにより、組電池10のSOCを算出することができる。組電池10を充放電したときの電流値は、電流センサ25の出力から取得することができる。
一方、電圧センサ27の検出電圧から、組電池10のSOCを推定することもできる。組電池10のSOCは、組電池10のOCV(Open Circuit Voltage)と対応関係があるため、SOCおよびOCVの対応関係を予め求めておけば、OCVからSOCを特定することができる。OCVは、電圧センサ27の検出電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)と、組電池10の内部抵抗による電圧降下量とから求めることができる。なお、SOCの算出方法は、本実施例で説明する方法に限るものではなく、公知の方法を適宜選択することができる。
ステップS103において、コントローラ30は、温度センサ26の出力信号に基づいて、組電池10の温度を取得する。ステップS104において、コントローラ30は、ステップS102で算出したSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、忘却係数を算出する。忘却係数は、単電池11の電解液中のイオンの拡散速度に対応する係数である。忘却係数は、下記式(1)の条件を満たす範囲で設定される。
0<A×Δt<1 ・・・(1)
ここで、Aは、忘却係数を示し、Δtは、図2から図4に示す処理を繰り返して行うときのサイクルタイムを示す。
例えば、コントローラ30は、図5に示すマップを用いて、忘却係数Aを特定することができる。図5において、縦軸は、忘却係数Aであり、横軸は、組電池10の温度である。図5に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。
図5に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、忘却係数Aを特定することができる。イオンの拡散速度が速いほど、忘却係数Aが大きくなる。図5に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、忘却係数Aが大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高くなるほど、忘却係数Aが大きくなる。
ステップS105において、コントローラ30は、評価値の減少量D(−)を算出する。評価値D(N)は、組電池10(単電池11)の劣化状態(後述するハイレート劣化)を評価する値である。
単電池11のハイレート放電が継続的に行われると、単電池11の内部抵抗が増加し、単電池11の出力電圧が急激に低下し始める現象が発生することがある。この現象が継続して発生すると、単電池11が劣化してしまうことがある。ハイレート放電による劣化を、ハイレート劣化(第1劣化成分)とよぶ。ハイレート劣化の要因の1つとしては、ハイレート放電が継続的に行われることにより、単電池11の電解液中のイオン濃度が偏ってしまうことが考えられる。
ハイレート劣化が発生する前に、ハイレート放電を抑制する必要がある。本実施例では、ハイレート劣化を評価するための値として、評価値D(N)を設定している。評価値D(N)の算出方法については、後述する。
評価値の減少量D(−)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、イオンの拡散に伴うイオン濃度の偏りの減少に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(2)に基づいて、評価値の減少量D(−)を算出することができる。
D(−)=A×Δt×D(N−1) ・・・(2)
ここで、AおよびΔtは、式(1)と同様である。D(N−1)は、前回(直前)に算出された評価値を示す。初期値としてのD(0)は、例えば、0とすることができる。
式(1)に示すように、「A×Δt」の値は、0から1までの値である。したがって、「A×Δt」の値が1に近づくほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。言い換えれば、忘却係数Aが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。なお、減少量D(−)の算出方法は、本実施例で説明した方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの減少を特定することができる方法であればよい。
ステップS106において、コントローラ30は、メモリ31に予め記憶された電流係数を読み出す。ステップS107において、コントローラ30は、ステップS102で算出された組電池10のSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、限界値を算出する。
例えば、コントローラ30は、図6に示すマップを用いて、限界値を算出することができる。図6に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。図6において、縦軸は、限界値であり、横軸は、組電池10の温度である。図6に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、限界値を特定することができる。
図6に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、限界値が大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高いほど、限界値が大きくなる。
ステップS108において、コントローラ30は、評価値の増加量D(+)を算出する。評価値の増加量D(+)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、放電に伴うイオン濃度の偏りの増加に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(3)に基づいて、評価値の増加量D(+)を算出することができる。
D(+)=B/C×I×Δt ・・・(3)
ここで、Bは、電流係数を示し、ステップS106の処理で取得した値が用いられる。Cは、限界値を示し、ステップS107の処理で取得した値が用いられる。Iは、放電電流値を示し、ステップS101の処理で検出した値が用いられる。Δtは、サイクルタイムである。
式(3)から分かるように、放電電流値Iが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の増加量D(+)は大きくなる。なお、増加量D(+)の算出方法は、本実施例で説明した算出方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの増加を特定することができる方法であればよい。
ステップS109において、コントローラ30は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出する。評価値D(N)は、下記式(4)に基づいて算出することができる。
D(N)=D(N−1)−D(−)+D(+) ・・・(4)
ここで、D(N)は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値であり、D(N−1)は、前回(直前)のサイクルタイムΔtにおける評価値である。初期値としてのD(0)は、例えば、0に設定することができる。D(−)およびD(+)は、評価値Dの減少量および増加量をそれぞれ示し、ステップS105,S108で算出された値が用いられる。
本実施例では、式(4)に表すように、イオン濃度の偏りの増加と、イオン濃度の偏りの減少とを考慮(推定)して、評価値D(N)を算出する。これにより、ハイレート劣化の要因と考えられるイオン濃度の偏りの変化(増減)を、評価値D(N)に適切に反映させることができる。したがって、組電池10の状態がハイレート劣化の生じる状態にどの程度近づいているのかを、評価値D(N)に基づいて把握することができる。
そして、評価値D(N)が、組電池10の状態がハイレート劣化の生じる状態に対する閾値を超える場合、組電池10の出力制限値を低く設定して組電池10の放電を制御し、ハイレート放電による劣化が発生するのを抑制することができる。
ここで、式(3)によれば、評価値の増加量D(+)は、放電電流値Iの大きさに応じて一律に算出される。つまり、放電しているときの電流値(放電電流値)Iがどのような値でも0でなければ放電に伴うイオン濃度の偏りの増加分の評価値として評価値D(N)に必ず加算されてしまい、例えば、放電に伴うイオン濃度の偏りが生じにくい低電流領域の放電電流値であっても、放電に伴うイオン濃度の偏りが増加したものとして評価値D(N)に反映される(評価値D(N)が増える)。
このため、評価値D(N)が閾値を超えてしまうと、放電に伴うイオン濃度の偏りが生じ難いハイレート放電による劣化の増加が少ない又はハイレート放電による劣化が増加していない状態でも、放電電流値Iが出力制限を低く設定した組電池10の放電制御によってさらに制限されてしまい、組電池10の出力を十分に確保できない場合がある。
本実施例では、評価値D(N)を用いたハイレート劣化の生じる状態の評価値D(N)に対し、放電電流値Iが放電に伴うイオン濃度の偏りが生じ難い電流値であるかを個別に評価し、組電池10の放電電流値Iが放電に伴うイオン濃度の偏りが生じにくい所定値以下の電流値である場合、評価値D(N)が閾値を超える場合であっても、出力制限を行わずに出力を確保する組電池10の放電制御を実施することで、ハイレート放電による劣化の増加を抑制しつつ、組電池10の出力を十分に確保できるようにする。
放電に伴うイオン濃度の偏りが生じにくい組電池10の放電電流値Iの基準値(許容電流値F)は、組電池10の電池寿命に基づいて決定することができる。
図7は、所定の電流値以下では出力制限を行わない場合の組電池10の抵抗増加率の変化を示している。図7において、横軸は組電池の使用状態(Ah/Km)であり、縦軸は組電池10の抵抗増加率である。抵抗増加率は、初期状態にある組電池10の抵抗(Rini)に対して、劣化状態にある組電池10の抵抗(Rr)が、どの程度増加したかを表す値である。抵抗増加率は、例えば、2つの抵抗の比(Rr/Rini)で表すことができる。ハイレート劣化が進行すれば、抵抗増加率が上昇する。組電池10の使用状態(Ah/km)は、車両の走行距離に対する組電池10の充放電量であり、走行距離センサの出力と電流センサ25の出力とに基づいて、算出することができる。
ハイレート劣化が進むと組電池10の抵抗増加率は増加する。組電池10は、抵抗増加率が所定の閾値を超えない範囲で使用される状態での電池寿命(例えば、使用時間)が予め決められており、抵抗増加率が所定の閾値を超えると、予め定められた電池寿命が短くなる。つまり、所定の閾値を超える抵抗増加率を示す使用状態は、所定の閾値以下の抵抗増加率を示す使用状態のときよりも劣化が進むので、図7に示すように、所定の電流値以下では組電池10の出力制限を行わない充放電制御を実施した際の、ハイレート劣化に伴う抵抗増加率を測定することで、予め定められる電池寿命を低下させない基準として所定の閾値以下の抵抗増加率を維持できる電流値を、決定することができる。
言い換えれば、所定の閾値以下の抵抗増加率を示す使用状態は、予め定められた電池寿命に対しイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなるので、所定の閾値以下の抵抗増加率を維持できる上限の電流値、すなわち、電池の寿命目標を達成可能な所定の閾値以下での抵抗増加率を維持できる出力制限に対する電流値の上限値を、組電池10の許容電流値として予め求めることができる。
図7において、例えば、出力制限電流値を120Aとした充放電制御では、一点鎖線で示すように組電池10の抵抗増加率が、予め定められた組電池10の寿命目標を達成可能な抵抗増加率の上限値(閾値)を超えてしまう。一方、実線及び2点鎖線で示す出力制限電流値での充放電制御では、組電池10の抵抗増加率は予め定められた組電池10の寿命目標を達成可能な抵抗増加率の閾値を超えないので、予め定められた組電池10の寿命目標を低下させない範囲で許容できる出力電流制限値となる。
そして、図7に示した所定の閾値以下の抵抗増加率で推移する実線及び2点鎖線で示す出力電流制限値での充放電制御のうち、実線で示す出力電流制限値での充放電制御が、予め定められた組電池10の寿命目標を低下させない範囲で許容できる最大の出力電流制限値とすることができるので、予め定められた組電池10の寿命目標に対しイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる実線で示した出力電流制限値を、組電池10の許容電流値として用いることができる。組電池10に対する許容電流値は、予めメモリ31に保持することができる。
本実施例では、評価値D(N)が予め定められた目標値を越えて組電池10の状態がハイレート劣化の生じる状態であると判別されても、組電池10の放電電流値Iが、予め定められた組電池10の寿命目標に対しイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる許容電流値Fよりも低い場合、放電電流値Iが組電池10の電池寿命の観点からイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる電流値の範囲内なので、組電池10の出力制限を行わずに組電池10の出力を確保した組電池10の放電制御を実施する。
一方、評価値D(N)が予め定められた目標値を越えた場合において、組電池10の放電電流値Iが、許容電流値Fよりも高い場合は、組電池10の出力制限を行う。
このとき、組電池10の出力制限値は、評価値D(N)に基づいて決定される第1出力制限値と、許容電流値Fに基づいて決定される第2出力制限値とが用いられる。つまり、許容電流値F以上の放電電流値Iとならないように出力制限を行えば、放電電流値Iが組電池10の電池寿命の観点からイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる電流値の範囲内となるので、第2出力制限値が第1出力制限値よりも大きい場合、許容電流値Fに基づく第2出力制限値を出力制限値として設定する。一方、第2出力制限値が第1出力制限値よりも小さい場合、評価値D(N)に基づく第1出力制限値を出力制限値として設定する。
すなわち、本実施例では、評価値D(N)に基づく第1出力制限値が、許容電流値Fに基づいて決定される第2出力制限値よりも小さい場合、放電電流値Iが組電池10の電池寿命の観点からイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる電流値の範囲内となる第2出力制限値を、組電池10の出力制限値として設定することで、ハイレート放電による劣化が発生するのを抑制可能な最大の出力制限値での充放電制御を行い、組電池10の出力を最大限に確保できるようにする。
ステップS110において、コントローラ30は、ステップS109で算出した評価値D(N)が予め定められた目標値を越えたか否かを判別する。目標値は、ハイレート劣化が発生し始める評価値D(N)よりも小さい値に設定され、予め設定しておくことができる。評価値D(N)が目標値を超えていれば、ステップS111に進み、そうでなければ、ステップS116に進む。
ステップS111において、コントローラ30は、メモリ31に記憶されている組電池10の許容電流値Fを取得する。許容電流値Fは、予め定められた組電池10の寿命目標に対しイオン濃度の偏りが発生し難く、ハイレート劣化の進行が遅くなる電流値の上限値を用いることができる。許容電流値Fは、図7に示したハイレート劣化に対応する組電池10の抵抗増加率が、抵抗増加率に基づいて予め定められた組電池10の寿命目標値に応じた閾値以下となる出力制限で充放電した際の出力電流制限値(複数ある場合は、最も高い最大の出力電流制限値)を用いることができる。
ステップS112において、コントローラ30は、ステップS111で取得した許容電流値FとステップS101で取得した放電電流値Iを比較し、放電電流値Iが許容電流値Fよりも大きいか否かを判別する。放電電流値Iが許容電流値Fよりも大きい場合、ステップS113に進み、そうでなければ、ステップS116に進む。
ステップS116において、コントローラ30は、組電池10の充放電制御に用いられる出力制限値を最大値に設定する。出力制限値は、組電池10の放電を許容する上限値(電力[kW])である。コントローラ30は、組電池10の出力電力が出力制限値を超えないように、組電池10の放電を制御する。最大値としての出力制限値は、予め決めておくことができる。
一方、コントローラ30は、ステップS113において、ステップS109で算出した評価値D(N)が予め定められた目標値を越えており、かつ放電電流値Iが許容電流値Fよりも大きいので、組電池10の出力を制限する。例えば、出力制限値が最大値よりも小さい値に変更される。出力制限値は、最大値および最小値の間で変化させることができる。最小値としての出力制限値は、例えば、0[kW]とすることができる。この場合には、組電池10の放電が禁止されることになる。出力制限値を低下させるほど、組電池10の出力が制限されることになる。
図4は、ステップS113の出力制限値を最大値よりも低く設定する処理を示したフローチャートである。
図4のステップS1131において、コントローラ30は、評価値D(N)と目標値との差分に応じて、最大値に対して出力制限値を減少させる量を設定することができる。例えば、コントローラ30は、下記式(6)に基づいて出力制限値を算出することができる。
Wout=Wout(MAX)−K×(D(N)−E) ・・・(6)
ここで、Woutは、放電制御に用いられる出力制限値を示し、Wout(MAX)は、出力制限値の最大値を示す。Kは係数を示す。
「K×(D(N)−E)」の値は、評価値D(N)に基づいて出力制限値を減少させる量を示しており、係数Kを変化させることにより、減少量を調整することができる。具体的には、車両のドライバビリティを考慮して、減少量を調整することができる。
ステップS1132において、コントローラ30は、放電電流値IがステップS111で取得した許容電流値F以下となる出力制限値W(F)と、式(6)に基づいて算出される評価値D(N)に応じたWout(D(N))とを比較し、W(F)がWout(D(N))よりも大きい場合、ステップS1133に進み、コントローラ30は、放電制御に用いられる出力制限値をW(F)に設定する。W(F)がWout(D(N))よりも小さい場合、ステップS1134に進み、コントローラ30は、放電制御に用いられる出力制限値をWout(D(N))に設定する。許容電流値Fに対応する出力制限値W(F)は、許容電流値Fを出力制限電流値として予め決めておくことができる。
図3に戻り、ステップS114においてコントローラ30は、組電池10の放電制御に関する指令を、インバータ23に送信する。この指令には、ステップS113又はステップS116で設定された出力制限値に関する情報が含まれる。これにより、組電池10の放電電力が、出力制限値を超えないように、組電池10の放電が制御される。
ステップS115において、コントローラ30は、今回の評価値D(N)をメモリ31に記憶する。評価値D(N)をメモリ31に記憶することにより、評価値D(N)の変化を監視することができる。
図8は、本実施例の出力制限値Wout、評価値D(N)及び放電電流値Iの変化を示す図である。
時刻t1において、評価値D(N)は目標値Eを超えていないので、出力制限値Woutは、最大値(Wmax)に設定されたままで、充放電制御が行われる。次に時刻t2において評価値D(N)が目標値Eに到達するが、放電電流値Iが許容電流値Fを超えていないので、出力制限値Woutは、最大値(Wmax)から変更されることなく、最大値(Wmax)に維持されて、充放電制御が行われる。
時刻t3では、評価値D(N)が目標値Eに到達しており、放電電流値Iが許容電流値Fを超えているので、出力制限値が変更される。出力制限値Woutは、最大値Wmaxよりも小さいWout(D(N))に設定され、組電池10の放電が制限される。このとき、時刻t3では、W(F)がWout(D(N))よりも小さいので、充放電制御に用いられる出力制限値にWout(D(N))が設定されている。
続いて、時刻t4では、時刻t3と同様に、評価値D(N)が目標値Eに到達しており、放電電流値Iが許容電流値Fを超えているので、出力制限値が変更される。出力制限値Woutは、最大値Wmaxよりも小さくWout(D(N))よりも大きいW(F)に設定され、組電池10の放電が制限される。このとき、時刻t4では、時刻t3とは異なり、W(F)がWout(D(N))よりも大きいので、充放電制御に用いられる出力制限値をW(F)が設定される。図8の時刻t4において点線で示すように出力制限値Woutは、W(F)がWout(D(N))よりも小さくならないように、出力制限値をW(F)として組電池10の放電を制限する。
本実施例によれば、評価値D(N)が目標値よりも大きい場合であっても、組電池10の放電を制限せずに、ハイレート放電による組電池10(単電池11)の劣化を抑制しつつ、組電池10の出力を確保して、組電池10の出力を用いて運転者が要求する車両の動力性能を発揮させることができる。
また、組電池10の放電を制限する場合であっても、組電池10の許容電流値F以上の放電電流値Iとならないように出力制限を行うことで、必要以上に出力制限を行わずに、ハイレート放電による組電池10(単電池11)の劣化を抑制しながら、組電池10の出力を確保することができる。
なお、本実施例では、サイクルタイムΔtごとに評価値D(N)をメモリ31に記憶し、メモリ31に記憶された前回(直前)の評価値D(N−1)を用いて、今回の評価値D(N)を算出しているが、これに限るものではない。具体的には、放電電流値の履歴に基づいて、評価値D(N)を算出することができる。放電電流値が変化することに応じて、評価値D(N)が変化するため、放電電流値の履歴を取得しておけば、評価値D(N)を算出することができる。例えば、放電電流値の履歴だけをメモリ31に記憶しておき、放電電流値の履歴を用いて、特定のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出することができる。
10:組電池 11:単電池
21a,21b:システムメインリレー 22:昇圧回路
23:インバータ 24:モータ・ジェネレータ
25:電流センサ 26:温度センサ
27:電圧センサ 28:充電器
29a,29b:充電リレー 30:コントローラ
31:メモリ

Claims (6)

  1. 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御装置であって、
    前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出する電流センサと、
    前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサによって検出された電流値から算出し、前記評価値が目標値を超えたとき、前記上限値を低下させるコントローラと、を有し、
    前記コントローラは、放電電流値が許容電流値よりも低いとき、前記上限値を低下させないように制御するとともに、
    前記許容電流値は、前記第1劣化成分に対応する前記非水二次電池の抵抗増加率が、前記抵抗増加率に基づいて予め定められた前記非水二次電池の寿命目標値に応じた閾値以下となる出力制限で充放電した際の充放電電流値であることを特徴とする制御装置。
  2. 前記コントローラは、
    前記評価値が目標値を超えた際、前記放電電流値が前記許容電流値よりも低いときは、前記上限値を最大値に設定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記コントローラは、
    前記評価値が目標値を超えた際、前記放電電流値が前記許容電流値よりも高いときは、前記上限値を最大値よりも小さい値に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
  4. 前記コントローラは、前記評価値が目標値を超えた際、前記放電電流値が前記許容電流値よりも高いとき、前記評価値及び目標値の差分に応じた第1出力制限値を算出し、前記許容電流値に対応する第2出力制限値が第1出力制限値よりも大きい場合、前記上限値を第2出力制限値に設定することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
  5. 前記非水二次電池は、車両の走行に用いられるエネルギを出力することを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の制御装置。
  6. 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御方法であって、
    電流センサを用いて、前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出し、
    前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサによって検出された電流値から算出し、
    前記評価値が目標値を超えたとき、放電電流値が許容電流値よりも高い場合に前記上限値を低下させ、前記放電電流値が前記許容電流値よりも低い場合には前記上限値を低下させないように制御するとともに
    前記許容電流値は、前記第1劣化成分に対応する前記非水二次電池の抵抗増加率が、前記抵抗増加率に基づいて予め定められた前記非水二次電池の寿命目標値に応じた閾値以下となる出力制限で充放電した際の充放電電流値であることを特徴とする制御方法。
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