実施例1である電池システムについて、図1を用いて説明する。図1は、電池システムの構成を示す図である。
図1に示す電池システムは、車両に搭載される。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させるための動力源として、組電池の他に、燃料電池や内燃機関等を備えた車両である。電気自動車は、車両の動力源として組電池だけを備えた車両である。
組電池10は、電気的に直列に接続された複数の単電池11を有する。組電池10を構成する単電池11の数は、組電池10の要求出力等に基づいて、適宜設定することができる。組電池10は、電気的に並列に接続された複数の単電池11を含んでいてもよい。単電池11としては、リチウムイオン二次電池などの非水二次電池を用いることができる。
単電池11の正極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。正極の材料としては、例えば、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムを用いることができる。単電池11の負極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。負極の材料としては、例えば、カーボンを用いることができる。単電池11を充電するとき、正極は、イオンを電解液中に放出し、負極は、電解液中のイオンを吸蔵する。また、単電池11を放電するとき、正極は、電解液中のイオンを吸蔵し、負極は、イオンを電解液中に放出する。
組電池10は、システムメインリレー21a,21bを介して昇圧回路22に接続されており、昇圧回路22は、組電池10の出力電圧を昇圧する。昇圧回路22は、インバータ23と接続されており、インバータ23は、昇圧回路22からの直流電力を交流電力に変換する。モータ・ジェネレータ24は、インバータ23からの交流電力を受けることにより、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ24によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。モータ・ジェネレータ24としては、三相交流モータを用いることができる。
昇圧回路22は、省略することができる。また、モータ・ジェネレータ24として直流モータを用いるときには、インバータ23を省略することができる。
車両を減速させるときや、車両を停止させるとき、モータ・ジェネレータ24は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータ・ジェネレータ24で生成された交流電力は、インバータ23によって直流電力に変換される。昇圧回路22は、インバータ23の出力電圧を降圧してから組電池10に供給する。これにより、回生電力を組電池10に蓄えることができる。
電流センサ25は、組電池10に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ25によって検出された電流値に関して、放電電流を正の値とし、充電電流を負の値とすることができる。温度センサ26は、組電池10の温度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。温度センサ26の数は、適宜設定することができる。複数の温度センサ26を用いるときには、複数の温度センサ26によって検出された温度の平均値を組電池10の温度として用いたり、特定の温度センサ26によって検出された温度を組電池10の温度として用いたりすることができる。
電圧センサ27は、組電池10の電圧を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。本実施例では、組電池10の電圧を検出しているが、これに限るものではない。例えば、組電池10を構成する単電池11の電圧を検出することができる。また、組電池10を構成する複数の単電池11を複数のブロックに分け、各ブロックの電圧を検出することができる。各ブロックは、少なくとも2つの単電池11を含んでいる。
コントローラ30は、システムメインリレー21a,21b、昇圧回路22およびインバータ23の動作を制御する。コントローラ30は、各種の情報を記憶するメモリ31を有する。メモリ31には、コントローラ30を動作させるためのプログラムも記憶されている。本実施例では、コントローラ30がメモリ31を内蔵しているが、コントローラ30の外部にメモリ31を設けることもできる。
コントローラ30は、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオフからオンに切り替えたり、昇圧回路22およびインバータ23を動作させたりする。また、コントローラ30は、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオンからオフに切り替えたり、昇圧回路22やインバータ23の動作を停止させたりする。
充電器28は、外部電源からの電力を組電池10に供給する。これにより、組電池10を充電することができる。本実施例において、充電器28は、車両に搭載されているが、車両に搭載せずに、車両の外部に充電器(外部充電器という)を設置することもできる。充電器28は、充電リレー29a,29bを介して、組電池10に接続されている。充電リレー29a,29bがオンであるとき、外部電源からの電力を組電池10に供給することができる。
外部電源とは、車両の外部に設けられた電源であり、外部電源としては、例えば、商用電源がある。外部電源が交流電力を供給するとき、充電器28は、交流電力を直流電力に変換して、直流電力を組電池10に供給する。一方、外部電源が直流電力を供給するときには、外部電源からの直流電力を組電池10に供給するだけでよい。この場合には、外部電源の電圧を、他の電圧に変換することができる。
外部電源からの電力を組電池10に供給する手段としては、有線又は無線を用いることができる。例えば、外部電源と接続されたコネクタ(いわゆるプラグ)を、車両に設けられたコネクタ(いわゆるインレット)に接続することにより、外部電源からの電力を組電池10に供給することができる。一方、電磁誘導や共振現象を利用することにより、外部電源からの電力を、非接触方式で組電池10に供給することができる。
次に、組電池10の充放電を制御する処理について、図2および図3に示すフローチャートを用いて説明する。図2および図3に示す処理は、予め設定された時間間隔(サイクルタイム)で繰り返して行われる。図2および図3に示す処理は、コントローラ30に含まれるCPUが、メモリ31に記憶されたプログラムを実行することにより行われる。
ステップS101において、コントローラ30は、電流センサ25の出力信号に基づいて、放電電流値を取得する。組電池10を放電しているときには、放電電流値が正の値になり、組電池10を充電しているときには、放電電流値が負の値になる。
ステップS102において、コントローラ30は、ステップS101で得られた放電電流値に基づいて、組電池10のSOC(State Of Charge)を算出(推定)する。SOCは、組電池10の満充電容量に対する、現在の充電容量の割合である。コントローラ30は、組電池10を充放電したときの電流値を積算することにより、組電池10のSOCを算出することができる。組電池10を充放電したときの電流値は、電流センサ25の出力から取得することができる。
一方、電圧センサ27の検出電圧から、組電池10のSOCを推定することもできる。組電池10のSOCは、組電池10のOCV(Open Circuit Voltage)と対応関係があるため、SOCおよびOCVの対応関係を予め求めておけば、OCVからSOCを特定することができる。OCVは、電圧センサ27の検出電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)と、組電池10の内部抵抗による電圧降下量とから求めることができる。なお、SOCの算出方法は、本実施例で説明する方法に限るものではなく、公知の方法を適宜選択することができる。
ステップS103において、コントローラ30は、温度センサ26の出力信号に基づいて、組電池10の温度を取得する。ステップS104において、コントローラ30は、ステップS102で算出したSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、忘却係数を算出する。忘却係数は、単電池11の電解液中のイオンの拡散速度に対応する係数である。忘却係数は、下記式(1)の条件を満たす範囲で設定される。
0<A×Δt<1 ・・・(1)
式(1)において、Aは、忘却係数を示し、Δtは、図2および図3に示す処理を繰り返して行うときのサイクルタイムを示す。
例えば、コントローラ30は、図4に示すマップを用いて、忘却係数Aを特定することができる。図4において、縦軸は、忘却係数Aであり、横軸は、組電池10の温度である。図4に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。
図4に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、忘却係数Aを特定することができる。イオンの拡散速度が速いほど、忘却係数Aが大きくなる。図4に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、忘却係数Aが大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高くなるほど、忘却係数Aが大きくなる。
ステップS105において、コントローラ30は、評価値の減少量D(−)を算出する。評価値D(N)は、組電池10(単電池11)の劣化状態(後述するハイレート劣化)を評価する値である。
ハイレートで単電池11の充電又は放電が継続的に行われると、単電池11の内部抵抗が増加し、単電池11の入出力性能が急激に低下し始める現象が発生することがある。この現象が継続して発生すると、単電池11が劣化してしまうことがある。ハイレートでの充電又は放電による劣化を、ハイレート劣化とよぶ。ハイレート劣化の要因の1つとしては、ハイレートでの充電又は放電が継続的に行われることにより、単電池11の電解液中のイオン濃度が偏ってしまうことが考えられる。ハイレート充電およびハイレート放電では、イオン濃度の偏り状態が相反する状態となる。本発明における第1劣化成分は、充電によるハイレート劣化に相当する。
図5は、組電池10を充電するときのレート[C]を変化させたときの抵抗増加率の変化を示している。図5において、横軸はサイクル数であり、縦軸は抵抗増加率である。抵抗増加率は、初期状態にある組電池10の抵抗(Rini)に対して、劣化状態にある組電池10の抵抗(Rr)が、どの程度増加したかを表す値である。抵抗増加率は、例えば、2つの抵抗の比(Rr/Rini)で表すことができる。ハイレート劣化が進行すれば、抵抗増加率が上昇する。
1回のサイクルでは、所定レートで放電を行った後に、所定レートで充電を行っている。図5に示す実験結果では、放電レートを一定に維持し、充電レートだけを異ならせている。充電レートA1が最も高く、充電レートA3が最も低くなっている。充電レートA2は、充電レートA1よりも低く、充電レートA3よりも高い。図5に示すように、充電レートが高くなるほど、抵抗増加率が上昇しやすくなっている。言い換えれば、充電レートが高くなるほど、充電によるハイレート劣化が発生しやすくなっている。
ハイレート劣化が発生する前に、ハイレートでの充電又は放電を抑制する必要がある。本実施例では、ハイレート劣化を評価するための値として、評価値D(N)を設定している。評価値D(N)の算出方法については、後述する。
評価値の減少量D(−)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、イオンの拡散に伴うイオン濃度の偏りの減少に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(2)に基づいて、評価値の減少量D(−)を算出することができる。
D(−)=A×Δt×D(N−1) ・・・(2)
式(2)において、AおよびΔtは、式(1)と同様である。D(N−1)は、前回(直前)に算出された評価値を示す。初期値としてのD(0)は、例えば、0とすることができる。
式(1)に示すように、「A×Δt」の値は、0から1までの値である。したがって、「A×Δt」の値が1に近づくほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。言い換えれば、忘却係数Aが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。なお、減少量D(−)の算出方法は、本実施例で説明した方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの減少を特定することができる方法であればよい。
ステップS106において、コントローラ30は、メモリ31に予め記憶された電流係数を読み出す。ステップS107において、コントローラ30は、ステップS102で算出された組電池10のSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、限界値を算出する。
例えば、コントローラ30は、図6に示すマップを用いて、限界値を算出することができる。図6に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。図6において、縦軸は、限界値であり、横軸は、組電池10の温度である。図6に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、限界値を特定することができる。
図6に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、限界値が大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高いほど、限界値が大きくなる。
ステップS108において、コントローラ30は、評価値の増加量D(+)を算出する。評価値の増加量D(+)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、放電に伴うイオン濃度の偏りの増加に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(3)に基づいて、評価値の増加量D(+)を算出することができる。
D(+)=B/C×I×Δt ・・・(3)
式(3)において、Bは、電流係数を示し、ステップS106の処理で取得した値が用いられる。Cは、限界値を示し、ステップS107の処理で取得した値が用いられる。Iは、放電電流値を示し、ステップS101の処理で検出した値が用いられる。Δtは、サイクルタイムである。
式(3)から分かるように、放電電流値Iが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の増加量D(+)は大きくなる。なお、増加量D(+)の算出方法は、本実施例で説明した算出方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの増加を特定することができる方法であればよい。
ステップS109において、コントローラ30は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出する。評価値D(N)は、下記式(4)に基づいて算出することができる。
D(N)=D(N−1)−D(−)+D(+) ・・・(4)
式(4)において、D(N)は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値であり、D(N−1)は、前回(直前)のサイクルタイムΔtにおける評価値である。初期値としてのD(0)は、例えば、0に設定することができる。D(−)およびD(+)は、評価値Dの減少量および増加量をそれぞれ示し、ステップS105,S108で算出された値が用いられる。
本実施例では、式(4)に表すように、イオン濃度の偏りの増加と、イオン濃度の偏りの減少とを考慮して、評価値D(N)を算出することができる。これにより、ハイレート劣化の要因と考えられるイオン濃度の偏りの変化(増減)を、評価値D(N)に適切に反映させることができる。したがって、組電池10の状態がハイレート劣化の生じる状態にどの程度近づいているのかを、評価値D(N)に基づいて把握することができる。
ステップS110において、コントローラ30は、ステップS109で算出した評価値D(N)が予め定められた目標値Dtar(−)よりも小さいか否かを判別する。目標値Dtar(−)は、充電によるハイレート劣化が発生し始める評価値D(N)よりも小さい値に設定され、予め設定しておくことができる。評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さければ、ステップS111に進み、そうでなければ、ステップS117に進む。
本実施例では、図7に示すように、目標値Dtar(−)は、評価値D(N)のマイナス側において設定されている。目標値Dtar(−)は、負の値である。図7は、評価値D(N)の変化(一例)を示す図である。
ステップS111において、コントローラ30は、評価値D(N)の積算を行う。具体的には、図7に示すように、評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さいとき、評価値D(N)のうち、目標値Dtar(−)よりも小さい部分(図7のハッチング領域)について、積算を行う。評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さくなるたびに、積算処理が行われる。評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さいときには、評価値D(N)および目標値Dtar(−)の差分が積算される。積算される評価値D(N)は、負の値であるため、積算値も負の値となる。
本実施例では、下記式(5)に基づいて、積算値ΣDex(N)が算出される。
式(5)において、aは補正係数であり、0よりも大きく、1よりも小さい値である。ΣDex(N−1)は、前回までのサイクルタイムにおいて、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分を累積した値である。Dex(N)は、今回のサイクルタイムで得られた、評価値D(N)および各目標値Dtar(−)の差分である。
補正係数aに関する情報は、メモリ31に記憶させておくことができる。補正係数aは、0よりも大きく、1よりも小さい値であるため、今回のサイクルタイムにおいて積算値ΣDex(N)を算出するときには、前回までのサイクルタイムで得られた積算値ΣDex(N−1)が減少する。本実施例では、補正係数aを用いているが、補正係数aを省略することもできる。すなわち、積算値ΣDex(N)を算出するときに、積算値ΣDex(N−1)に評価値Dex(N)を累積するだけでもよい。
評価値D(N)は、ハイレート劣化を評価する値であるが、ハイレート劣化は、特定の条件において、緩和されることがある。ハイレート劣化は、イオン濃度が極端に偏ることによって発生すると考えられるため、イオン濃度の偏りが緩和すれば、ハイレート劣化も緩和する。
組電池10の充放電を休止したときには、イオンの拡散によって、イオン濃度の偏りが緩和され、ハイレート劣化に伴う抵抗上昇量が減少する。組電池10の充放電を休止する時間が長くなるほど、イオン濃度の偏りが緩和されやすくなる。また、車両の走行パターンによっては、イオン濃度の偏りが緩和されることがある。
上述したように、様々な条件において、ハイレート劣化を緩和することができる。このため、本実施例では、積算値ΣDex(N−1)に補正係数a(0<a<1)を乗算することにより、ハイレート劣化の緩和を考慮して、積算値ΣDex(N−1)を補正している。補正係数aは、ハイレート劣化による抵抗増加率の上昇を考慮して、予め設定しておくことができる。補正係数aを0に近づければ、積算値ΣDex(N)のうち、積算値ΣDex(N−1)が占める割合が減少する。また、補正係数aを1に近づければ、積算値ΣDex(N)のうち、積算値ΣDex(N−1)が占める割合が増加する。
後述するように、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、組電池10の入力(充電)が制限される。ここで、補正係数aを用いて、積算値ΣDex(N−1)を減少させることにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなりやすくなるのを抑制することができる。
補正係数aを用いて積算値ΣDex(N−1)を補正しないときには、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達しやすくなる。上述したように、組電池10の充放電の休止などによって、ハイレート劣化は緩和され、実際の車両においても、組電池10の充放電を休止させる時間が存在する。積算値ΣDex(N−1)を補正しないときには、組電池10の充放電の休止などを考慮しないことになるため、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達しやすくなり、組電池10の入力を必要以上に制限してしまうおそれがある。組電池10の入力を必要以上に制限してしまうと、組電池10に電気エネルギを蓄え難くなってしまう。
本実施例によれば、ハイレート劣化の緩和を考慮して、積算値ΣDex(N−1)を補正することにより、実際の組電池10の劣化状態を反映した積算値ΣDex(N)を得ることができる。この積算値ΣDex(N)に基づいて、組電池10の充電を制御することにより、組電池10の入力が必要以上に制限されてしまうのを抑制することができる。
本実施例において、積算値ΣDex(N)を算出するときに、評価値D(N)および各目標値Dtar(−)の差分を積算しているが、これに限るものではない。具体的には、評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さいときには、この評価値D(N)を積算することができる。この場合には、目標値Dtar(−)を考慮して、後述する閾値Kを変更すればよい。ここで、積算値ΣDex(N−1)は、上述したように、補正係数aによって補正することができる。
ステップS112において、コントローラ30は、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいか否かを判別する。閾値Kは、充電によるハイレート劣化を許容するための値であって、負の値である。ステップS112において、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、ステップS114に進み、そうでなければ、ステップS113に進む。
閾値Kは、固定値ではなく、組電池10(単電池11)の劣化状態、言い換えれば、組電池10の使われ方に応じて、変更される。閾値Kを決定するための方法について、図8を用いて説明する。
ステップS201において、コントローラ30は、充放電を行っていないときの組電池10の温度と、充放電を行っているときの組電池10の温度と、充放電を行っているときの組電池10の通電量とを取得する。組電池10の充放電を行っていない場合としては、例えば、組電池10が搭載された車両を放置している場合がある。組電池10の温度は、温度センサ26の出力に基づいて取得することができる。また、通電量は、電流センサ25の出力に基づいて取得することができる。
ここで、充放電を行っていないときの組電池10の温度を取得するために、例えば、外気温を検出するために車両に予め設けられた温度センサ(温度センサ26とは異なる)を用いることができる。また、充放電を行っていないときの組電池10の温度としては、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わった直後の温度センサ26の検出結果を用いることもできる。一方、車両の停止によって組電池10の充放電を行っていないとき、コントローラ30は、所定の周期で起動し、温度センサ26の出力に基づいて、組電池10の温度を取得することができる。
ステップS202において、コントローラ30は、ステップS201で取得した情報に基づいて、組電池10(単電池11)の材料劣化を特定(推定)する。組電池10(単電池11)の劣化は、ハイレート劣化および材料劣化(第2劣化成分に相当する)に分けられる。材料劣化とは、単電池11を構成する部材の材料に依存した劣化である。また、材料劣化は、組電池10の充放電を行っていないときの劣化成分(保存劣化という)と、組電池10の充放電を行っているときの劣化成分(通電劣化という)とに分けられる。
保存劣化は、充放電を行っていないときの組電池10の温度、言い換えれば、車両を放置しているときの組電池10の温度に基づいて、特定することができる。充放電を行っていないときの組電池10の温度と、保存劣化との対応関係を示すマップを予め用意しておけば、保存劣化を特定することができる。保存劣化を特定するためのマップは、メモリ31に予め記憶しておくことができる。保存劣化が発生すれば、組電池10の抵抗が上昇するため、保存劣化は、例えば、抵抗増加率で規定することができる。
通電劣化は、充放電を行っているときの組電池10の温度および通電量に基づいて、特定することができる。充放電を行っているときの組電池10の温度および通電量と、通電劣化との対応関係を示すマップを予め用意しておけば、通電劣化を特定することができる。通電劣化を特定するためのマップは、メモリ31に予め記憶しておくことができる。通電劣化が発生すれば、組電池10の抵抗が上昇するため、通電劣化は、例えば、抵抗増加率で規定することができる。保存劣化および通電劣化を特定できれば、材料劣化を特定することができる。
ステップS203において、コントローラ30は、ステップS202で特定した材料劣化に基づいて、閾値Kを決定するためのハイレート劣化のマップを特定する。ハイレート劣化のマップは、図9および図10に示すように、閾値Kと、充放電を行っているときの組電池10の温度(ここでは、平均温度)と、組電池10の使用状態(Ah/km)との関係を示すものである。組電池10の使用状態(Ah/km)は、車両の走行距離に対する組電池10の充放電量であり、走行距離センサの出力と電流センサ25の出力とに基づいて、算出することができる。図9および図10に示す閾値Kの軸は、矢印の方向に進むほど、閾値Kが小さくなることを意味する。
図9および図10に示すマップは、材料劣化が互いに異なるときのマップである。図9に示すマップに対応した材料劣化は、図10に示すマップに対応した材料劣化よりも大きくなっている。組電池10(単電池11)の劣化は、材料劣化およびハイレート劣化に分けられるため、材料劣化が大きくなれば、充電によるハイレート劣化を許容する割合が小さくなり、閾値K(<0)も大きくなる。図9に示す閾値Kは、図10に示す閾値Kよりも大きくなっている。
例えば、低温環境では、材料劣化が発生しにくいため、充電によるハイレート劣化を許容する割合を大きくすることができる。図9および図10に示すマップを、材料劣化の程度に応じて複数用意しておけば、ステップS202で特定された材料劣化に対応するマップを特定することができる。図9および図10に示すマップは、メモリ31に予め記憶させておくことができる。
ステップS204において、コントローラ30は、ステップS203で特定したハイレート劣化のマップを用いて、閾値Kを特定する。具体的には、コントローラ30は、組電池10の温度および組電池10の使用状態(Ah/km)を取得し、組電池10の温度および使用状態(Ah/km)に対応した閾値Kを特定する。この閾値Kは、図3のステップS112の処理で用いられる。
図3のステップS113において、コントローラ30は、組電池10の充電制御に用いられる入力制限値を最大値に設定する。入力制限値は、組電池10の充電を許容する上限値(電力[kW])である。コントローラ30は、組電池10の入力電力が入力制限値よりも高くならないように、組電池10の充電を制御する。
図2および図3に示す処理は、車両が走行しているときや、充電器28を用いて組電池10を充電しているときに行われる。充電器28を用いて組電池10を充電するときには、評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さくなりやすくなり、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなりやすくなる。
例えば、充電器28を用いて、組電池10を充電するとき、コントローラ30は、充電器28の動作を制御することにより、組電池10の充電を制御することができる。具体的には、充電器28は、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、組電池10の入力電力を、入力制限値よりも低い範囲内で変化させることができる。
一方、外部充電器を用いて組電池10を充電するとき、コントローラ30は、外部充電器との通信により、組電池10の充電を制御することができる。具体的には、外部充電器は、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、組電池10の入力電力を、入力制限値よりも低い範囲内で変化させることができる。
最大値としての入力制限値は、予め決めておくことができる。組電池10の入力を制限するときには、入力制限値が最大値よりも小さい値に変更される。入力制限値は、最大値および最小値の間で変化させることができる。最小値としての入力制限値は、例えば、0[kW]とすることができる。この場合には、組電池10の充電が行われなくなる。
ステップS114において、コントローラ30は、入力制限値を最大値よりも小さい値に設定する。入力制限値を低下させるほど、組電池10の入力が制限されることになる。コントローラ30は、積算値ΣDex(N)および閾値Kの差分に応じて、最大値に対して入力制限値を減少させる量を設定することができる。例えば、コントローラ30は、下記式(6)に基づいて、入力制限値を算出することができる。
Win=Win(MAX)−L×(ΣDex(N)−K) ・・・(6)
式(6)において、Winは、充電制御に用いられる入力制限値を示し、Win(MAX)は、入力制限値の最大値を示す。Lは、係数を示す。Kは、ステップS112で説明した閾値Kを示す。
「L×(ΣDex(N)−K)」の値は、入力制限値を減少させる量を示しており、係数Lを変化させることにより、減少量を調整することができる。具体的には、車両のドライバビリティを考慮して、減少量を調整することができる。
ステップS115において、コントローラ30は、組電池10の充電制御に関する指令を、充電器28に送信する。外部充電器を用いて、組電池10の充電を行うとき。コントローラ30は、外部充電器との通信によって、組電池10の充電制御に関する指令を外部充電器に送信する。この指令には、ステップS113又はステップS114で設定された入力制限値に関する情報が含まれる。これにより、組電池10の充電電力が、入力制限値よりも高くならないように、組電池10の充電が制御される。
ステップS116において、コントローラ30は、今回の評価値D(N)および積算値ΣDex(N)をメモリ31に記憶する。評価値D(N)をメモリ31に記憶することにより、評価値D(N)の変化を監視することができる。また、積算値ΣDex(N)をメモリ31に記憶することにより、次回の評価値D(N+1)が目標値Dtar(−)よりも小さくなったときに、積算値ΣDex(N)を更新することができる。
ステップS110の処理からステップS117の処理に進んだとき、ステップS117において、コントローラ30は、評価値D(N)をメモリ31に記憶する。これにより、評価値D(N)の変化を監視することができる。
本実施例によれば、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、組電池10の充電を制限することにより、充電によるハイレート劣化を抑制することができる。また、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達するまでは、入力制限値が最大値に設定されたままであるため、組電池10の入力を最大限に確保することができる。
図11は、評価値D(N)の変化に伴う、積算値ΣDex(N)および入力制限値の変化を示す図(一例)である。
評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さくなるたびに、積算値ΣDex(N)が更新される。時刻t11において、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達すると、入力制限値が変更される。これにより、組電池10の充電が更に制限される。また、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなるにつれて、入力制限値が小さくなっていく。一方、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達するまでは、入力制限値が最大値に維持される。
本実施例では、評価値D(N)が各目標値Dtar(−)よりも小さくなっても、このタイミングにおいて入力制限値は変更されず、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなったときに、入力制限値が変更される。このような制御を行うことにより、評価値D(N)が各目標値Dtar(−)よりも小さくなった後でも、入力制限値が最大値に設定された状態において、組電池10の充電を行うことができ、電気エネルギを組電池10に効率良く蓄えることができる。
また、本実施例によれば、単電池11の材料劣化を推定することにより、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲を特定することができる。そして、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲に対応した閾値Kを設定することにより、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲内において、組電池10を充電させることができる。
本実施例では、サイクルタイムΔtごとに評価値D(N)をメモリ31に記憶し、メモリ31に記憶された前回(直前)の評価値D(N−1)を用いて、今回の評価値D(N)を算出しているが、これに限るものではない。具体的には、電流値の履歴に基づいて、評価値D(N)を算出することができる。電流値が変化することに応じて、評価値D(N)が変化するため、電流値の履歴を取得しておけば、評価値D(N)を算出することができる。例えば、電流値の履歴だけをメモリ31に記憶しておき、電流値の履歴を用いて、特定のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出することができる。
本実施例では、図3のステップS110で用いられる目標値Dtar(−)を、予め設定された固定値としているが、これに限るものではない。すなわち、目標値Dtar(−)を変化させることもできる。
具体的には、本実施例と同様に、材料劣化を推定して、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲を特定する。そして、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲が、予め定めた基準範囲よりも小さいときには、基準範囲に対応した目標値Dtar(−)よりも大きい値に、目標値Dtar(−)を変更することができる。一方、充電によるハイレート劣化を許容できる範囲が基準範囲よりも大きいときには、基準範囲に対応した目標値Dtar(−)よりも小さい値に、目標値Dtar(−)を変更することができる。
基準範囲に対応した目標値Dtar(−)としては、例えば、本実施例で説明した目標値Dtar(−)とすることができる。目標値Dtar(−)を変更するときには、閾値Kを固定値とすることができる。
目標値Dtar(−)を大きくするときには、目標値Dtar(−)を0に近づけることになる。このように目標値Dtar(−)を変更することにより、評価値D(N)および各目標値Dtar(−)の差分を増やすことができる。これにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなりやすく、組電池10の充電を制限しやすくなる。
一方、目標値Dtar(−)を小さくするときには、目標値Dtar(−)を0から遠ざけることになる。このように目標値Dtar(−)を変更することにより、評価値D(N)および各目標値Dtar(−)の差分を減らすことができる。これにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなりにくくなり、組電池10の充電を制限しなくてもよい。
本実施例では、図3のステップS110,S111の処理で説明したように、評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さくなったときには、評価値D(N)および目標値Dtar(−)の差分を積算しているが、これに限るものではない。具体的には、充電器28又は外部充電器を用いて、組電池10を充電するときだけ、評価値D(N)および目標値Dtar(−)の差分を積算することができる。
具体的には、ステップS110およびステップS111の処理の間において、コントローラ30は、充電器28又は外部充電器を用いた充電が行われているか否かを判別することができる。例えば、コントローラ30は、充電リレー29a,29bをオフからオンに切り替えるときに、充電器28を用いた充電が行われることを判別することができる。また、コントローラ30は、外部充電器に接続されたコネクタが、車両に設けられたコネクタに接続されたことを検知したときに、外部充電器を用いた充電が行われることを判別することができる。
充電器28又は外部充電器を用いた充電が行われているとき、コントローラ30は、ステップS111の処理を行うことができる。充電器28又は外部充電器を用いて、組電池10の充電を短時間で行わせるときには、充電レートが上昇しやすくなり、ハイレート劣化が発生しやすいことがある。このため、充電器28又は外部充電器を用いて組電池10を充電するときだけ、積算値ΣDex(N)の算出を行うことができる。
充電器28又は外部充電器を用いて組電池10を充電するときだけ、積算値ΣDex(N)を算出するときにおいて、目標値Dtar(−)は、本実施例で説明した目標値Dtar(−)と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。目標値Dtar(−)の値を異ならせるときには、本実施例で説明した目標値Dtar(−)よりも小さい値に設定することが好ましい。
本実施例では、放電によるハイレート劣化が発生するときに、評価値D(N)を増加させ、充電によるハイレート劣化が発生するときに、評価値D(N)を減少させているが、これに限るものではない。例えば、充電によるハイレート劣化が発生するときに、評価値D(N)を増加させ、放電によるハイレート劣化が発生するときに、評価値D(N)を減少させることができる。具体的には、放電電流を負の値とし、充電電流を正の値とすればよい。
本発明の実施例2である電池システムについて説明する。本実施例の電池システムでも、図2および図3に示す処理が行われる。ここで、積算値ΣDex(N)の算出方法(図3のステップS111の処理)について、本実施例は実施例1と異なる。他の処理については、実施例1で説明した処理と同じであるため、詳細な説明は省略する。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
本実施例では、下記式(7)に基づいて、積算値ΣDex(N)を算出している。
式(7)において、Tは予め定められた期間であり、適宜設定することができる。aは、補正係数であり、0よりも大きく、1よりも小さい値である。ΣDex(N−1)は、前回までのサイクルタイム(T−Δt)において、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分を累積した値である。Dex(N)は、今回のサイクルタイム(Δt)で得られた、評価値D(N)および目標値Dtar(−)の差分である。
実施例1で説明した積算値ΣDex(N−1)は、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分を累積し続けた値である。本実施例で用いられる積算値ΣDex(N−1)は、期間Tの間において、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分を累積した値である。本実施例では、今回のサイクルタイムに対して、期間Tよりも前に取得された、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分は、積算値ΣDex(N)の算出には用いられない。
本実施例における積算値ΣDex(N)の算出方法について、図12を用いて具体的に説明する。図12は、評価値D(N)の変化(一例)と、積算値ΣDex(N)を算出する期間Tとの関係を示している。
図12において、まず、時刻t20から時刻t22までの間において、積算値ΣDex(N)が算出される。時刻t20から時刻t22までの期間は、期間Tとなる。時刻t21から時刻t22までの間は、今回のサイクルタイムΔtとなる。時刻t20から時刻t21までは、積算値ΣDex(N−1)が算出される。積算値ΣDex(N−1)の算出方法は、実施例1で説明した方法と同じである。式(7)に示すように、積算値ΣDex(N−1)には、補正係数aが乗算される。
時刻t21から時刻t22までは、差分Dex(N)が算出される。すなわち、まず、評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さいか否かが判別される。評価値D(N)が目標値Dtar(−)よりも小さいときには、評価値D(N)および目標値Dtar(−)の差分Dex(N)が算出される。積算値ΣDex(N−1)および差分Dex(N)が得られれば、式(7)に基づいて、積算値ΣDex(N)が算出される。
式(7)に示すように、本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)としている。そして、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、実施例1と同様に、組電池10の充電を制限することができる。本実施例で用いられる閾値Kは、実施例1で説明した閾値Kとは異なり、期間Tに対応した値となる。
時刻t22において、今回のサイクルタイムが終了すると、時刻t23から時刻t25の間において、積算値ΣDex(N)の算出が行われる。時刻t23は、時刻t20から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t24は、時刻t22と同じ時刻である。時刻t25は、時刻t24から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t24から時刻t25までの間が、今回のサイクルタイムΔtとなる。
時刻t23から時刻t25の間で算出される積算値ΣDex(N)は、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値となる。そして、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、実施例1と同様に、組電池10の充電が制限される。
時刻t25において、今回のサイクルタイムΔtが終了すると、時刻t26から時刻t28の間において、積算値ΣDex(N)の算出が行われる。時刻t26は、時刻t23から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t27は、時刻t25と同じ時刻である。時刻t28は、時刻t27から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t27から時刻t28までの間が、今回のサイクルタイムとなる。
時刻t26から時刻t28の間で算出される積算値ΣDex(N)は、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値となる。そして、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さいときには、実施例1と同様に、組電池10の充電が制限される。
実施例1で説明したように、組電池10の充放電の休止などによって、ハイレート劣化が緩和される。このため、現在のサイクルタイムよりも期間T以上だけ前の時刻においては、評価値Dが目標値Dtar(−)よりも小さくなったとしても、この評価値Dは、ハイレート劣化を評価する上で影響を与えにくい。そこで、本実施例では、直近の期間Tの間に取得された評価値Dだけを用いて、積算値ΣDex(N)を算出している。
これにより、ハイレート劣化の緩和を考慮した積算値ΣDex(N)を得ることができ、緩和されていないハイレート劣化に応じて、組電池10の充電を制限することができる。ハイレート劣化を評価する上で影響を与えにくい過去の評価値Dも用いて積算値ΣDex(N)を算出すると、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなりやすく、組電池10の充電を過度に制限してしまうおそれがある。本実施例において、過去の評価値D(期間T以外に取得された評価値D)は、積算値ΣDex(N)の算出に用いていないため、積算値ΣDex(N)に応じて、組電池10の充電を過度に制限してしまうのを抑制することができる。
図12に示すように、評価値Dは、時間とともに変動するため、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分も、時間とともに変動する。評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分が変動すれば、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値も変動する。このため、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値は、一次的に上昇したり、一次的に低下したりすることがある。「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値と閾値Kとを比較するときには、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に低下して、閾値Kよりも小さくなってしまうことがある。この場合には、組電池10の充電が制限されてしまう。
本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)としている。時間平均値としての積算値ΣDex(N)を用いることにより、期間Tの間において、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を分散させることができる。これにより、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に低下して閾値Kよりも小さくなってしまうのを抑制することができ、組電池10の充電が過度に制限されてしまうのを抑制することができる。
図13には、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を積算値ΣDex(N)とし、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値の変化(一例)を示している。「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値と閾値Kとを比較するときには、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が閾値Kよりも小さくなった時点で、組電池10の充電が制限されてしまう。
一方、本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を積算値ΣDex(N)としており、この時間平均値および閾値Kを比較している。時間平均値を用いることにより、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に閾値Kよりも小さくなっても、時間平均値が閾値Kよりも小さくならないことがある。これにより、時間平均値が閾値Kよりも小さくなってしまうのを抑制でき、組電池10の充電が過度に制限されてしまうのを抑制することができる。
本実施例では、式(7)に示すように、積算値ΣDex(N−1)に補正係数a(0<a<1)を乗算しているが、補正係数aを乗算しなくてもよい。すなわち、直近の期間Tにおいて、評価値Dおよび各目標値Dtar(−)の差分を累積し、累積値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)として用いることができる。
実施例1では、式(5)に基づいて、積算値ΣDex(N)を算出しており、過去のすべての評価値Dを考慮している。ここで、本実施例のように、直近の期間Tにおいて得られた評価値Dだけを考慮して、積算値ΣDex(N)を算出することができる。すなわち、本実施例で説明した「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を、積算値ΣDex(N)とすることができる。