JP2021041916A - 機械式転がり軸受から分離ケージが放出されるおそれのない自動車のパワーステアリングシステム用のアシストモジュール - Google Patents

Abstract

【課題】環状転がり軸受空間に機械式転がり軸受の分離ケージを保持する。【解決手段】減速機の出力軸２は、減速機ケーシングにタンジェントホイール２３とピニオン２４の間で設けられた軸受に支持された機械式転がり軸受６によって減速機ケーシングの内部で長手方向軸２２の周りで回転可能に取り付けられる。機械式転がり軸受は、複数の転動体が分離ケージ６５によって互いに距離をあけて保持され、転動体と分離ケージは、同心の内輪６１と外輪６２との間に形成された環状転がり軸受空間６３内に配置され、分離ケージは、環状転がり軸受空間から一つの放出方向６５４に放出可能である。アシストモジュールは、環状転がり軸受空間に面する停止面３３を有するブロック要素３２を含み、停止面の１つが環状転がり軸受空間から分離ケージが放出されるのを阻止するような距離に位置する。【選択図】図３

Description

本発明は、自動車のパワーステアリングシステム用のアシストモジュールに関する。

従来、自動車には、その運転者が進行方向を決めるための力を抑えるようにするためのパワーステアリングシステムが設けられることがある。

このようなパワーステアリングシステムは、一般に、端部がステアリングタイロッドによって自動車の操舵輪と結合されるステアリングラックを含むステアリングモジュールと、ステアリングモジュールのステアリングラックと係合するピニオンが設けられた出力軸を回転駆動するアシストモータを含むアシストモジュールと備え、これにより、ステアリングラックに、自動車の運転者から与えられるトルクにアシストトルクを加えて伝達することが可能となり、その運転を容易にすることができる。

具体的には、アシストモータは、減速機ケーシングの内部で、出力軸に回転可能に連結されるタンジェントホイールに噛み合うウォームスクリューを駆動し、出力軸は、減速機ケーシングにタンジェントホイールとピニオンの間に設けられた軸受によって支持される少なくとも１つの機械式転がり軸受によって、減速機ケーシングの内部に回転可能に取り付けられる。

この機械式転がり軸受は、通常、プラスチック材料で形成された分離ケージに挟み込まれることで互いに距離をあけて保持された複数の転動体を有し、これらの転動体とこの分離ケージは、内輪とそれに同軸の外輪との間に形成された環状転がり軸受空間に配置される。

しかしながら、例えば減速機ケーシングに対して出力軸の位置が大きくずれて、機械式転がり軸受に大きな機械応力が作用した場合、分離ケージが、少なくとも部分的に環状転がり軸受空間から放出されることがあり得る。

分離ケージのこのような放出が起こると、環状転がり軸受空間空間内で機械式転がり軸受の転動体の再グループ化が生じ、出力軸の回転中に減速機ケーシングに対するガイド機能が激しく低下したり、完全に失われたりすることがある。

この問題を改善するため、機械式転がり軸受に、内輪と外輪との間に配置されたフランジを追加することが知られており、これにより、分離ケージの放出を物理的に阻止することができる。

例えば、このフランジは、機械式転がり軸受の外輪または内輪に挟み込むことにより固定できるが、この解決策では、その一方にクリッピング溝を形成することが必要になる。

このようなフランジを機械式転がり軸受に追加することにより、その構造が変更されてより複雑になり、それに伴って経済費用が増大する。

別の解決策として、より大きな機械式転がり軸受を使用して、より大きな負荷と出力軸の位置ずれを許容できるようにすることがあるが、この場合も、追加の経済費用が発生する。

本発明は、前記の問題の全てまたは一部を解決するために、機械式転がり軸受の構造を変更することなく、環状転がり軸受空間に機械式転がり軸受の分離ケージを保持することを可能にする解決策を提案するものである。

本発明の他の目的は、安価な解決策を提案することである。

この目的のため、本発明は、自動車のパワーステアリングシステム用のアシストモジュールを提供し、このアシストモジュールは、ピニオンが設けられた出力軸に回転可能に連結された減速機に取り付けられる減速機、例えばアシストモータにより駆動され且つ出力軸に回転可能に連結されるタンジェントホイールと噛み合うウォームスクリューを有するギヤ減速機に取り付けられる減速機ケーシングを備え、前記出力軸は、減速機ケーシングにタンジェントホイールとピニオンの間で設けられた軸受に支持された少なくとも一つの機械式転がり軸受によって減速機ケーシングの内部で長手方向軸の周りで回転可能に取り付けられ、
前記機械式転がり軸受は、複数の転動体が分離ケージによって互いに距離をあけて保持され、前記転動体と前記分離ケージは、内輪と同心の外輪との間に形成された環状転がり軸受空間内に配置され、
前記分離ケージは、前記環状転がり軸受空間から一つの放出方向に放出可能であり、
前記アシストモジュールは、前記環状転がり軸受空間に面する少なくとも１つの停止面を有する少なくとも１つのブロック要素を含み、前記停止面の少なくとも１つが前記環状転がり軸受空間から前記分離ケージが放出されるのを阻止するような放出方向と距離に位置することを特徴とする。

したがって、機械式転がり軸受に大きな機械応力が作用した場合、分離ケージは、可能な変形をするが、分離ケージの（長手方向軸に平行な）放出方向への移動が、環状転がり軸受空間に面して配置された少なくとも１つの停止面によって制限されるため、環状転がり軸受空間から外へ放出されることはない。

減速機ケーシング内に、機械式転がり軸受の分離ケージの動作を制限する停止面を有するブロックエレメントの形の特定形状の物が存在することにより、分離ケージが環状転がり軸受空間から放出されるのを（完全にまたは部分的に）防止できる。

したがって、分離ケージは、機械式転がり軸受に強い機械応力が作用する場合であっても、機械式転がり軸受の転動体を互いに離れた位置に保持する機能を果たし続けることが可能である。

したがって、本発明に係るアシストモジュールは、様々な方向への分離ケージの放出を阻止する１つ以上の停止面をそれぞれが有する、１つ以上のブロック要素を有することが可能である。

可能な一つの例によれば、転動体は球状のボールであり、距離はこれらのボールの直径の半分以下である。

可能な他の例によれば、距離は２ミリメートル以下である。

したがって、停止面は、分離ケージがその間の環状転がり軸受空間から放出されないように、機械式転がり軸受の内輪と外輪の十分近くに配置される。

一つの実施形態では、少なくとも１つの停止面が、機械式転がり軸受とタンジェントホイールとの間に、長手方向軸に沿って配置される。
したがって、停止面のこのような配置により、タンジェントホイールの方向への分離ケージの放出を阻止できる。

可能な一つの例によれば、少なくとも１つの停止面が、機械式転がり軸受とピニオンとの間に、長手方向軸に沿って配置される。

停止面をこのような配置することにより、ピニオンの方向（すなわち、タンジェントホイールと反対の方向）への分離ケージの放出を阻止することが可能になる。

実施は、機械式転がり軸受の「一つの面」の少なくとも１つの停止面を長手方向軸に沿って配置するだけでよく、言い換えると、機械式転がり軸受とピニオンとの間、または機械式転がり軸受とタンジェントホイールとの間のいずれかに停止面を配置するだけでよい。

実際、機械式転がり軸受の取り付け中に、分離ケージは、一般に転動体にクリップされて、環状転がり軸受空間内で転動体とピニオンの間、または転動体とタンジェントホイールの間に配置される。したがって、分離ケージは、タンジェントホイールに向かって、またはピニオンに向かって方向付けられた１つの放出方向へだけ、環状転がり軸受空間から放出可能となる。

したがって、分離ケージの放出方向は、ステアリングケーシングへの機械式転がり軸受の取り付け方向に応じて、タンジェントホイールに向かう方向、またはピニオンに向かう方向のいずれかに設定される。

したがって、環状転がり軸受空間に面して配置され、機械式転がり軸受の「正しい」側（すなわち、機械式転がり軸受とピニオンとの間、または機械式転がり軸受とタンジェントホイールとの間のいずれかで、放出方向の向きに応じたもの）に位置する一つの停止面により、分離ケージの放出を十分に防止できることがある。

また、機械式転がり軸受の「両側に」、言い換えると、機械式転がり軸受とピニオンとの間、及び機械式転がり軸受とタンジェントホイールとの間に、少なくとも１つの停止面を長手方向軸に沿って設けることも可能である。

このようにすると、転がり軸受ケージの放出方向の向きを識別することが不要になる。

可能な一つの例によれば、ブロック要素は、減速機ケーシングと一体である。

したがって、出力軸と機械式転がり軸受が減速機ケーシングに一旦取り付けられると、停止面が環状転がり軸受空間に面して位置するように、ブロック要素を配置することが必要である。

可能な一つの例によれば、ブロック要素は、減速機ケーシングと一部品に形成される。

可能な他の例によれば、ブロック要素は、鋳造で減速機ケーシングと一緒に製造される。

したがって、ブロック要素を鋳造で製造することにより、ブロック要素を安価な方法で減速機ケーシングに組み込むことが可能になる。

さらに他の可能な例によれば、ブロック要素は、ネジ止め、溶接、または圧力ばめによって減速機ケーシングに固定される。

一つの実施形態では、少なくとも１つのブロック要素は、減速機ケーシングの肩部と機械式転がり軸受の外輪との間に挿入される。

例えば、ブロック要素は、外輪と隣接し、環状転がり軸受空間に部分的に面して延びるワッシャの形態にすることができる。

一つの変形例では、少なくとも１つのブロック要素は出力軸に固定される。

可能な一つの例によれば、ブロック要素は出力軸と一体に形成される。

可能な一つの例によれば、ブロック要素は、出力軸と一部品に形成される。

一つの特徴によれば、ブロック要素は、ネジ止め、溶接、または圧力ばめによって出力軸に固定される。

可能な他の例によれば、少なくとも１つのブロック要素は、出力軸の肩部と内輪との間に挿入される。

例えば、ブロック要素は、内輪に隣接し、環状転がり軸受空間に部分的に面して延びるワッシャの形態にすることができる。

一つの実施形態では、ブロック要素は、締め付けナットに固定され、前記締め付けナットは、機械式転がり軸受とピニオンとの間の軸受の内部にねじ込まれ、外輪に隣接する。

この締め付けナットの主な機能は、減速機ケーシングの軸受内の機械式転がり軸受をブロックすることであり、この締め付けナットに、環状転がり軸受空間に面する停止面を追加するために、構造を変更することができる。

一つの特徴によれば、ブロック要素は締め付けナットと一部品に形成される。

他の特徴によれば、ブロック要素は、ねじ止め、溶接、または圧力ばめによって締め付けナットに固定される。

可能な一つの例によれば、少なくとも１つのブロック要素は、締め付けナットと外輪との間に挿入される。

一つの変形例では、ブロック要素は、圧着リングに固定され、前記圧着リングは、機械式転がり軸受とピニオンとの間で軸受の内部に圧着され、内輪に隣接する。

締め付けナットと同様に、この圧着リングは、減速機ケーシングの軸受の内部で機械式転がり軸受をブロックする機能を有し、この圧着リングに環状転がり軸受空間に面する停止面を追加するために構造を変更することも可能である。

一つの特徴によれば、ブロック要素は、圧着リングと一部品に形成される。

他の特徴によれば、ブロック要素は、ねじ止め、溶接、または圧力ばめによって圧着リングに固定される。

可能な一つの例によれば、少なくとも１つのブロック要素は、圧着リングと内輪との間に挿入される。

したがって、ブロック要素は、例えば、圧着リングまたは締め付けナットに隣接し、環状転がり軸受空間に部分的に面して延びるワッシャの形態にすることができる。

一つの実施形態では、少なくとも１つのブロック要素は、長手方向軸を中心とする環状の停止面を有する。

可能な一つの例によれば、少なくとも１つのブロック要素は、複数の異なる停止面を有し、前記停止面は、長手方向軸の周りに配置される。

したがって、本発明によれば、少なくとも１つのブロック要素の性質と、機械式転がり軸受に対するブロック要素の配置に関して、多種多様な実施形態が可能になる。

特に、ブロック要素は、
機械式転がり軸受とピニオンとの間、または機械式転がり軸受とタンジェントホイールとの間に配置でき、
ステアリングケーシング、出力軸、締め付けナット、または圧着リングに固定でき、または、
機械式転がり軸受と、ステアリングケーシング、出力軸、締め付けナットまたは圧着リングの間に挿入された追加要素（例えば、ワッシャのタイプ）から構成され、
一つの環状停止面、または長手方向軸の周りに配置される複数の異なる停止面を有する。

これらの実施形態は、また、分離ケージから放出できないことをさらに保証するために、特定の用途によって互いに組み合わせることができる。

本発明の他の特徴及び利点は、添付図面図を参照してなされる非限定的な実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。

図１は、従来のパワーステアリングシステムの断面図である。 図２は、分離ケージを有する機械式転がり軸受の分解図である。 図３は、本発明に係るアシストモジュールの第１実施形態の断面図である。 図４は、本発明に係るアシストモジュールの第２実施形態の断面図である。 図５は、本発明に係るアシストモジュールの第３の実施形態の断面図である。 図６は、本発明に係るアシストモジュールの第４実施形態の断面図である。 図７は、本発明に係るアシストモジュールの第５実施形態の断面図である。 図８は、本発明に係るアシストモジュールの第６実施形態の断面図である。 図９は、本発明に係るアシストモジュールの第７実施形態の断面図である。 図１０は、本発明に係るアシストモジュールの第８実施形態の断面図である。 図１１は、本発明に係るアシストモジュールの第９の実施形態の断面図である。 図１２は、本発明に係るアシストモジュールの第１０実施形態の断面図である。 図１３は、本発明に係るアシストモジュールの第１１実施形態の断面図である。 図１４（ａ）は本発明に係るアシストモジュールの第１実施形態の斜視図、図１４（ｂ）は正面図である。 図１５（ａ）は本発明に係るアシストモジュールの第１実施形態の斜視図、図１５（ｂ）は正面図である。

図１は、従来の自動車用パワーステアリングシステム１を示す。

このパワーステアリングシステム１は、特に、減速機ケーシング３内に長手方向軸２２の周りで回転可能に取り付けられた出力軸２を有する。

この出力軸２は、ウォームねじ４と噛み合うタンジェントホイール２３に固定され、このウォームねじ４自体がアシストモータ（図示せず）によって回転駆動される。

また、出力軸２は、ステアリングケーシング５１内に配置されたラック５と噛み合うピニオン２４を有する。出力軸２が長手方向軸２２の周りで回転することにより、ラック５が長手方向軸２２と直交する方向に並進移動する。

したがって、このパワーステアリング装置１によれば、運転者による電気自動車の操舵を容易にするために、アシストモータ（図示せず）によってウォームねじ４に伝達されるモータトルクをラック５に伝達できる。

詳しくは、出力軸２は、減速機ケーシング３の軸受３１に配置された機械式転がり軸受６を介して減速機ケーシング３に取り付けられる。

この機械式転がり軸受６は、本実施形態では、長手方向軸２２を中心として同軸に配置された内輪６１と外輪６２から形成されている。

この内輪６１と外輪６２との間の空間は、転動ボール６４が配置される環状移動空間６３を構成する。

これらの転動ボール６４は、機械式転がり軸受６の環状転がり軸受空間６３に配置された分離ケージ６５によって互いに距離をあけて保持される。

したがって、機械式転がり軸受６により、出力軸２が減速機ケーシング３に対して長手方向軸２２の周りで回転動作することが可能になる。

従来技術のパワーステアリング装置１では、機械式転がり軸受６に大きな機械応力が作用するのに続いて（例えば、長手方向軸２２に対する出力軸２の位置がずれるのに続いて）、分離ケージ６５が、大きく変形し、長手方向軸２２と同一線上の放出方向に環状転がり軸受空間６３から放出されことがある。

図２は、内輪６１と外輪６２との間に配置された転動ボール６４を有する機械式転がり軸受６を示す分解斜視図である。

また、この機械式転がり軸受６は保護部６８を有する。

転動ボール６４は、分離ケージ６５によって互いに離れた位置に保持されている。

分離ケージ６５は、前面６５１及び対向する後面６５２を有し、且つ前面６５１に形成されたハウジング６５３を備え、これらのハウジング６５３は、それぞれ、ボール６４を受け入れるのに適した形状を有する。したがって、分離ケージは、その前面でボール６４に「クリップ」される（すなわち、圧力によって固定される）。

その特定の構造により、ハウジング６５３が前面６５１上にのみ開口部を有し、分離ケージ６５を放出方向６５４の動作によってのみボール６４から外すことができる。

したがって、この放出方向６５４の向きは、分離ケージ６５を機械式転がり軸受６に取り付ける方向によって決まる。

機械式転がり軸受６がステアリングケーシング５１の軸受３１内に一旦配置されると、この放出方向６５４は長手方向軸２２と平行になり、環状転がり軸受空間６３の外への分離ケージ６５の放出軌道が定められ、機械式転がり軸受６への分離ケージの取り付け方向に応じて、タンジェントホイール２３の方向とピニオン２４の方向のいずれかに放出可能となる。

したがって、この放出方向６５４の向きを認識して、ブロック要素を長手方向軸２２に沿って機械式転がり軸受６の一方側のみに、すなわち機械式転がり軸受６とピニオン２４との間、または機械式転がり軸受６とタンジェントホイール２３との間のいずれかに、配置する必要がある。

機械式転がり軸受６とピニオン２４との間、及び機械式転がり軸受６とタンジェントホイール２３との間の両方に配置された複数のブロック要素を有する実施形態も可能である。

図３（ａ）は、本発明に係るパワーステアリングシステム１を示し、図３（ｂ）は、軸受３１の詳細図である。

この図３に示された実施形態では、タンジェントホイール２３の方向の放出方向６５４に分離ケージ６５が放出可能である。

減速機ケーシング３は、タンジェントホイール２３と軸受３１との間に配置されたブロック要素３２を有し、このブロック要素３２は、機械式転がり軸受６の環状転がり軸受空間６３に面して延びる停止面３３を有する。

詳細には、この停止面３３は、放出方向６５４における分離ケージ６５の軌道を具体化する放出軸６６に対して直角に配置される。

停止面３３は、ボール転がり軸受６の近傍でこの放出軸６６と交差する。このように、停止面３３は、分離ケージ６５が放出軸６６に沿ってタンジェントホイール２３の方向へ移動するのを物理的に阻止する。

したがって、このブロック要素３２により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からタンジェントホイール２３の方向に放出されることを（少なくとも部分的に）防止できる。

本実施形態において、ブロック要素は、減速機ケーシング３と一部品に形成され、この減速機ケーシング３とともに鋳造で製造されている。

特にブロック要素３２及びその停止面３３の形状、及び機械式転がり軸受６及び環状転がり軸受空間６３に対するこれらの配置に関し、本発明の他の多くの実施形態を考えられることが明らかである。

図４は、本発明の他の実施形態を示し、この場合、減速機ケーシング３の外部のブロック要素７が、ねじ止めもしくは溶接によって、または圧力ばめによって、減速機ケーシング３に固定されている。

このブロック要素７は、放出軸６６に対して直角に配置され且つ機械式転がり軸受６の環状転がり軸受空間６３に面する停止面７１を有する。

このようにして、このブロック要素７により、離ケージ６５が、環状転がり軸受空間６３から、突出軸６６に沿って、且つタンジェントホイール２３の方向へ放出されるのを阻止できる。

図５は、本発明の第３の実施形態を示し、ロック要素は、機械式転がり軸受６の外輪６２と減速機ケーシング３の肩部３４との間に挿入されたワッシャ８によって形成されている。

したがって、このワッシャ８は、機械式転がり軸受６とタンジェントホイール２３との間で、外輪６２に隣接して位置し、環状転がり軸受空間６３に面して放出軸６６と垂直に延びる停止面８１を有する。

したがって、前述したように、このワッシャ８が存在することにより、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からタンジェントホイール２３の方向に放出されることを物理的に防止できる。

例えば、このワッシャ８は、金属材料またはプラスチック材料で形成することが可能である。

前述した種々の実施形態を組み合わせることが可能であり、例えば、図５に表された（減速機ケーシング３の外の）ワッシャ８を、図３に表された（減速機ケーシング３に固定された）ブロック要素３２とともに用いることによって、このブロック要素３２は肩部３４と一部品で形成できる。

以下の図６から図８は、それぞれ、本発明の第４、第５及び第６の実施形態を示し、ブロック要素は、出力軸２に固定されて、前述したように、タンジェントホイール２３の方向への分離ケージ６５の突出を防止するように構成されている。

特に、図６に示された本発明の第４の実施形態において、パワーステアリングシステム１は、出力軸２と一部品に形成されたブロック要素９を有する。

このブロック要素９は、環状転がり軸受空間６３に面して延び且つ放出軸６６と直角に交差交差する停止面９１を有する。したがって、このブロック要素９により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から放出軸６６に沿ってタンジェントホイール２３の方向に放出される放出動作を防止できる。

このブロック要素９は、出力軸２に固定され、また、長手方向軸２２の周りでの出力軸２の回転動作において駆動される。
同様に、図７に記載された第５の実施形態において、出力軸２と一部品で形成されたブロック要素９は、出力軸２の外のブロック要素１８に置き換えられ、ねじ止め、溶接、または圧力ばめによって出力軸２に固定される。

このブロック要素１８は、放出軸６６と交差する停止面１８１を有し、これにより、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からタンジェントホイール２３の方向に放出されるのを防止できる。

図８は、本発明の第６実施形態を示し、ブロック要素は、出力軸２の肩部２５と機械式転がり軸受６の内輪６１との間に配置されたワッシャ１１の形態であり、環状転がり軸受空間６３に対向して突出軸６６と直角に延びる停止面１１１を有する。

したがって、このワッシャ１１により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から放出軸６６に沿ってタンジェントホイール２３の方向へ放出される動作を防止できる。

以下の図９〜図１３は本発明の実施形態を示し、ピニオン２４の方向に、すなわち、図１〜図７で前述した実施形態の放出方向とは反対の放出方向に、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から放出されるのを適切なブロック要素により防止できる。

特に、以下の図９、図１０及び図１１は、それぞれ、ブロック要素が締め付けナット１０に固定された本発明の第７、第８及び第９の実施形態を示し、
以下の図１２及び図１３は、それぞれ、ブロック要素が圧着リング１３に固定された本発明の第１０及び第１１の実施形態を示す。

図９関し、ステアリングシステム１は、機械式転がり軸受６とピニオン２４との間で減速機ケーシング３の軸受３１の内部にねじ込まれ、同一の同じ機械式転がり軸受６に隣接する締め付けナット１０と一部品に形成されたブロック要素１２を有する。

この締め付けナット１０の機能は、減速機ケーシング３の軸受３１内での機械式転がり軸受６の位置を保持することである。

図９に示された実施形態において、締め付けナット１０と一部品に形成されたブロック要素１２は、放出軸６６と直角の環状転がり軸受空間６３に面して延びる停止面１２１を有する。

したがって、停止面１２１により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からピニオン２４の方向へ放出される動作を物理的に防止できる。

同様に、図１０に示された実施形態において、締め付けナット１０と一部品に形成されるブロック要素１２は、ネジ止め、溶接、または圧力ばめによって締め付けナット１０に固定される、締め付けナット１０の外部のブロック要素１４に置き換えられる。
このブロック要素１４は、放出軸６６と交差する停止面１４１を有し、それにより、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からピニオン２４の方向に放出されるのを防止できる。

図１１に示された実施形態において、ブロック要素は、締め付けナット１０と機械式転がり軸受６の外輪６２との間に配置されたワッシャ１５の形態であり、環状転がり軸受空間６３に面して延びる、放出軸６６と直角の停止面１５１を有している。

したがって、このワッシャ１５により、このようにして、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から放出軸６６に沿ってピニオン２４の方向に放出される動作を防止できる。

また、これらの図９から図１１において、減速機ケーシング３に固定されたブロック要素３２が存在することにより、（前述したように）その停止面３３で、分離ケージ６５が反対方向へ、すなわちタンジェントホイール２３の方向へ放出される動作を防止できる。
図１２は、本発明の第１０の実施形態を示し、ブロック要素１６は圧着リング１３と一部品に形成される。

この圧着リング１３は、締め付けナット１０と同様に、減速機ケーシング３の軸受３１の内部で機械式転がり軸受６の位置を保持する機能を有し、通常は、機械式転がり軸受６とピニオン２４との間で内輪６１に隣接して位置する。

このブロック要素１６は、放出軸６６と交差する停止面１６１を有し、それにより、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３からピニオン２４の方向に放出されるのを防止できる。

その代わりに、図１３に示された実施形態では、ブロック要素は、圧着リング１３と機械式転がり軸受６の内輪６１との間に配置されたワッシャ１７の形態であり、環状転がり軸受空間６３に対向し且つ突出軸６６と直角な方向に延びる停止面１７１を有する。

このように、このワッシャ１７により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から突出軸６６に沿ってピニオン２４の方向に放出される動作を防止できる。

前に説明され、先の図２から図１３に横断面で示された前述の各実施形態に関し、考慮された各ブロック要素の停止面は、長手方向軸２２を中心とする環状の形状を有していてもよい。

例えば、図１４（ａ）及び図１４（ｂ）は、それぞれ、先の図３で説明した実施形態を斜視図図及び（長手方向軸２２に沿った）正面図で示す。

これらの図において、減速機ケーシング３と一部品に形成されたブロック要素３２の停止面３３は、長手方向軸２２を中心として出力軸２２を「取り囲む」環状の形状を有する。したがって、この停止面３２は、外輪６２の全周にわたって広がり、それによって、分離ケージ６５が機械式転がり軸受６の環状転がり軸受空間６３から長手方向軸２２と平行にタンジェントホイール２３の方向へ、環状転がり軸受空間６３に面する任意の放出軸に沿って任意に動作するのが防止される。

逆に、先の図２から図１３の各実施形態におけるブロック要素が、複数の異なる停止面を有し、これらの異なる停止面が長手方向軸２２の周りに配置されるようにすることもできる。

例えば、図１５（ａ）及び図１５（ｂ）は、それぞれ、先の図３で説明した実施形態を斜視図及び（長手方向軸２２に沿った）正面図で示す。

この図１５において、（減速機ケーシング３に固定された）ブロック要素３２は、出力軸２の周りに長手方向軸２２から等距離に配置された４つの停止面３３を有する。
この構成では、ブロック要素３２の停止面３３により、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から、停止面３３が配置される面と対向する複数の放出軸６６に沿って放出される動作を防止できる。

しかしながら、これらの停止面３３の間に配置された（それらのいずれにも面していない）放出軸６７に沿って分離ケージ６５が放出される動作は制限されないままである。
しかしながら、分離ケージ６５の剛性と大きさにより、分離ケージ６５が、２つの停止面３３を分離する間隔で機械式転がり軸受６の環状転がり軸受空間６３から完全に放出されることは、とても起こり得ない。分離ケージ６５の一部が（停止面３３に面していない）放出軸６７に沿って排出される場合、この同じ分離ケージ６５の他の隣接する部分は、（少なくとも１つの停止面３３に面する）放出軸６６に従って放出され、その後に１つまたは複数の停止面３３に接触する。

したがって、分離ケージ６５が環状転がり軸受空間６３から全て放出されることは、停止面３３が機械式転がり軸受６の全周にわたって広がっていない場合であっても、停止面３３によって防止される。

この解決策は、より少ない面積でより安価な停止面を有するブロック要素が存在することにより、減速機ケーシング３内での出力軸の良好なガイドを保証する利点を有する。

以上説明したように、本発明は、パワーステアリングシステム用のアシストモジュールについて有用である。

１ パワーステアリングシステム
２ 出力軸
３ 減速機ケーシング
６ 機械式転がり軸受
２２ 長手方向軸
２３ タンジェントホイール
２４ ピニオン
３１ 軸受
３２ ブロック要素
３３ 停止面
６１ 内輪
６２ 外輪
６３ 環状転がり軸受空間
６４ 転動体
６５ 分離ケージ

Claims (23)

1. 自動車のパワーステアリングシステム（1）用のアシストモジュールであって、
   ピニオン（24）が設けられた出力軸（2）を有する減速機に取り付けられる減速機ケーシング（3）を備え、前記出力軸（2）は、減速機ケーシング（3）にタンジェントホイール（23）とピニオン（24）の間で設けられた軸受（31）に支持された少なくとも一つの機械式転がり軸受（6）によって減速機ケーシング（3）の内部で長手方向軸（22）の周りで回転可能に取り付けられ、
   前記機械式転がり軸受（6）は、複数の転動体（64）が分離ケージ（65）によって互いに距離をあけて保持され、前記転動体と前記分離ケージ（65）は、同心の内輪（61）と外輪（62）との間に形成された環状転がり軸受空間（63）内に配置され、
   前記分離ケージは、前記環状転がり軸受空間（63）から一つの放出方向（654）に放出可能であり、
   前記アシストモジュールは、前記環状転がり軸受空間（63）に面する少なくとも１つの停止面（33,71,81,91,111,121,141,151,161,171,181）を有する少なくとも１つのブロック要素（32,7,8,9,11,12,14,15,16,17,18）を含み、前記停止面（33,71,81,91,111,121,141,151,161,171,181）の少なくとも１つが前記環状転がり軸受空間（63）から前記分離ケージ（65）が放出されるのを阻止するような放出方向（654）と距離に位置することを特徴とする
   アシストモジュール。
2. 請求項１のアシストモジュールにおいて、
   転動体が球形のボール（64）であり、前記距離が前記ボールの直径の半分以下である
   アシストモジュール。
3. 請求項１または２のアシストモジュールにおいて、
   前記距離は２ミリメートル以下である
   アシストモジュール。
4. 請求項１から３のアシストモジュールにおいて、
   少なくとも１つの停止面（33,71,81,91,111,181）が、機械式転がり軸受（6）とタンジェントホイール（23）との間に、長手方向軸（22）に沿って配置される
   アシストモジュール。
5. 請求項１から４のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
   少なくとも１つの停止面（121,141,151,161,171）が、機械式転がり軸受（6）とピニオン（24）との間に、長手方向軸（22）に沿って配置される
   アシストモジュール。
6. 請求項１から５のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
   少なくとも一つのブロック要素（32,7）が減速機ケーシング（3）に固定される
   アシストモジュール。
7. 請求項１から６のアシストモジュールにおいて、
   ブロック要素（32）が減速機ケーシング（3）と一部品に形成される
   アシストモジュール。
8. 請求項１から７のアシストモジュールにおいて、
   ブロック要素（32）は、鋳造で減速機ケーシング（3）と一緒に製造される
   アシストモジュール。
9. 請求項４のアシストモジュールにおいて、
   ブロック要素（7）が、ネジ止め、溶接、または圧力ばめによって減速機ケーシング（3）に固定される
   アシストモジュール。
10. 請求項１から９のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（8）が、減速機ケーシング（3）の肩部（34）と機械式転がり軸受（6）の外輪（62）との間に挿入される
    アシストモジュール。
11. 請求項１から１０のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（9,18）が出力軸（2）に固定される
    アシストモジュール。
12. 請求項１から１１のアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（9）が出力軸（2）と一部品に形成される
    アシストモジュール。
13. 請求項１１のアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（18）が、ネジ止め、溶接、または圧力ばめによって出力軸（2）に固定される
    アシストモジュール。
14. 請求項１から１３のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（11）が、出力軸（2）の肩部（25）と内輪（61）との間に挿入される
    アシストモジュール。
15. 請求項１から１４のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（12,14）が締め付けナット（10）に固定され、前記締め付けナット（10）は、機械式転がり軸受（6）とピニオン（24）との間の軸受（31）の内部にねじ込まれ、外輪（62）に隣接する
    アシストモジュール。
16. 請求項１から１５のアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（12）が締め付けナット（10）と一部品に形成される
    アシストモジュール。
17. 請求項１５のアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素が、ねじ止め、溶接、または圧力ばめによって締め付けナット（10）に固定される
    アシストモジュール。
18. 請求項１から１７のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（15）が、締め付けナット（10）と外輪（62）との間に挿入される
    アシストモジュール。
19. 請求項１から１８のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（16）が圧着リング（13）に固定され、前記圧着リング（13）は、機械式転がり軸受（6）とピニオン（24）との間で軸受（31）の内部に圧着され、内輪（61）に隣接する
    アシストモジュール。
20. 請求項１から１９のアシストモジュールにおいて、
    ブロック要素（16）が圧着リング（13）と一部品に形成される
    アシストモジュール。
21. 請求項１から２０のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（17）が、圧着リング（13）と内輪（61）との間に挿入される
    アシストモジュール。
22. 請求項１から２１のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（32,7,8,9,11,12,14,15,16,17,18）が、長手方向軸（22）を中心とする環状の停止面（33,71,81,91,111,121,141,151,161,171,181）を有する
    アシストモジュール。
23. 請求項１から１２のいずれか１つのアシストモジュールにおいて、
    少なくとも１つのブロック要素（32,7,8,9,11,12,14,15,16,17,18）が複数の異なる停止面（33,71,81,91,111,121,141,151,161,171,181）を有し、前記停止面（33,71,81,91,111,121,141,151,161,171,181）は、長手方向軸（22）の周りに配置される
    アシストモジュール。

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