JP2021039513A - 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム - Google Patents

車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム Download PDF

Info

Publication number
JP2021039513A
JP2021039513A JP2019159838A JP2019159838A JP2021039513A JP 2021039513 A JP2021039513 A JP 2021039513A JP 2019159838 A JP2019159838 A JP 2019159838A JP 2019159838 A JP2019159838 A JP 2019159838A JP 2021039513 A JP2021039513 A JP 2021039513A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
vibration
vehicle
time
value
objective function
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019159838A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7074113B2 (ja
Inventor
阿部倉 貴憲
Takanori Abekura
貴憲 阿部倉
篤志 河口
Atsushi Kawaguchi
篤志 河口
玄太郎 山中
Gentaro Yamanaka
玄太郎 山中
菜月 森田
Natsuki Morita
菜月 森田
大樹 松畑
Daiki Matsuhata
大樹 松畑
充治 阿部
Mitsuharu Abe
充治 阿部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2019159838A priority Critical patent/JP7074113B2/ja
Publication of JP2021039513A publication Critical patent/JP2021039513A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7074113B2 publication Critical patent/JP7074113B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T90/00Enabling technologies or technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation

Landscapes

  • Measurement Of Mechanical Vibrations Or Ultrasonic Waves (AREA)
  • Complex Calculations (AREA)

Abstract

【課題】個体差がある車両であっても、車両特性を向上することができる。【解決手段】車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得し(71)、複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換し(73)、複数の振動データを集約し、時間、周波数及び振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成し(74)、3次元データに対して因子分解を行い、因子各々に対する複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出し(75)、寄与度に基づいて、車両特性評価に関する目的関数と、設計変数とを設定し、かつ目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め(76)、車両の評価対象位置に関係する振動要素の振動特性を調整する(77)。【選択図】図4

Description

本発明は、車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラムに関する。
車両などの移動体における振動を解析する種々の振動解析法が開発されている。例えば、車両に加速度センサを配置し、計測したデータをウェーブレット(wavelet)変換した3次元データを多変量解析の一例であるPARAFAC(Parallel Factor Analysis)によりデータ解析する技術が知られている(特許文献1)。この技術では、計測データをウェーブレット変換した3次元データをPARAFACによりデータ解析し、所定の部位の振動に対して、他の部位の振動の寄与度を計算し、寄与度の大きい部位を中心に低次元モデルを作成している。また、特許文献2にも、計測対象に位置、速度、及び加速度センサを配置してデータを計測し、それらのデータをウェーブレット変換して、3次元データにし、PARAFACによりデータ解析することが記載されている。また、特許文献3では、テンソル分解を実施し、特許文献1と同様に寄与度分析をすることが記載されている。
特開2016−212016号公報 特開2010−48684号公報 特開2017−142629号公報
ところで、例えば、車両は、様々な振動を抑制する等の車両特性を定常的に発揮することが好ましい。しかしながら、車両には個体差があり、個々の車両で運動性能を含む車両性能も相違する。従って、或る車両の挙動を計測したデータを用いたデータ解析を反映しても、個々の車両に適合しない場合がある。
上記特許文献1では、或る運転条件下におけるデータ解析は可能であるものの、個々に相違する車両特性を考慮する場合には改善の余地がある。また、上記特許文献2では、データ解析に関する手法が提案されたもので、個々の車両特性を考慮するには不充分である。また、上記特許文献3も、データ解析に関する手法が提案されたもので、寄与度分析を用いて振動を解析することが提案されているものの、個々の車両特性を考慮するには不充分である。
本開示は、上記事実を考慮してなされたもので、個体差がある車両であっても、車両特性を向上することができる車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示の第1態様は、
車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得する時系列振動データ取得部と、
前記時系列振動データ取得部で取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換する振動データ変換部と、
前記振動データ変換部で変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成する3次元データ作成部と、
前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出する因子解析部と、
前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める最適化部と、
前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する調整部と、
を備える車両特性最適化装置である。
本開示の第2態様は、第1態様の車両特性最適化装置において、
前記最適化部は、前記設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度に基づいて、設計変数の値を変更すると共に、設計変数を変更させたときの目的関数の値を計測し、前回の計測値と前記設計変数の値を変更させたときの計測値とに基づいて、目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める。
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様の車両特性最適化装置において、
前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における前記車両の評価対象位置の各因子の加速度の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
前記最適化部は、前記目的関数の値が最小値になるように前記設計変数の値を求め、
前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う。
本開示の第4態様は、第1態様又は第2態様の車両特性最適化装置において、
前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における周波数基底の各因子のピーク周波数間の差分の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
前記最適化部は、前記目的関数の値が最大値になるように前記設計変数の値を求め、
前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う。
本開示の第5態様は、第1態様又は第2態様の車両特性最適化装置において、
前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における加速度の時間変動基底の各因子の評価対象時間の変動量の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
前記最適化部は、目的関数の値が最小値になるように前記設計変数の値を求め、
前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う。
本開示の第6態様は、
車両特性を最適化する車両特性最適化方法であって、
車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得し、
取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換し、
変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成し、
前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出し、
前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、
前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する
車両特性最適化方法である。
本開示の第7態様は、
車両特性を最適化するためのプログラムであって、
コンピュータを、
車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得する時系列振動データ取得部、
前記時系列振動データ取得部で取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換する振動データ変換部、
前記振動データ変換部で変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成する3次元データ作成部、
前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出する因子解析部、
前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める最適化部、及び、
前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する調整部
として機能させるためのプログラムである。
なお、本開示のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
本開示によれば、個体差がある車両であっても、車両特性を向上することができる、という効果が得られる。
第1実施形態に係る車両特性設定装置の適用対象となる車両の概略構成を示す図である。 車両のパワートレーンブロックの概略構成を示す図である。 車両のパワートレーンブロックの概略構成を示す図である。 第1実施形態に係る車両特性設定装置の概略構成を示す図である。 第1実施形態に係る車両特性設定装置のハードウェア構成の例を示す図である。 第1実施形態に係る車両特性設定装置における処理の流れを示すフローチャートである。 車両の走行中に計測される時系列振動データの概念を示す図である。 時間及び周波数に対する振動データである2次元データの概念を示す図である。 3次元のテンソルで表される3次元データの概念を示す図である。 基底テンソルの特性の一例を示す図であり、(A)は周波数基底テンソルを示し、(B)は時間基底テンソルを示し、(C)は位置基底テンソルを示す。 因子における位置基底のテンソルの特性を示す図である。 車両の評価対象位置の因子における位置基底の成分を示す図である。 モータ駆動により振動低減を行う処理の流れを示すフローチャートである。 簡易車両モデルの一例を示す図である。 モータ制御量により振動を低減する制御用コントローラの概念を示す図である。 第2実施形態に係る車両特性設定装置における処理の流れを示すフローチャートである。 第2実施形態に係る寄与度の一例を示す図であり、(A)は第1寄与度を示し、(B)は因子の周波数特性を示し、(C)は第2寄与度を示す。 第3実施形態に係る車両特性設定装置における処理の流れを示すフローチャートである。 第3実施形態に係る目的関数における時間変動特性を示す図である。
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、移動体としての車両に搭載されたセンサからの時系列振動データを取得して当該車両の車両特性を設定する車両特性設定装置に、本開示の車両特性最適化装置を適用した場合を一例として説明する。
<本実施形態の概要>
走行時における車両の車両特性を向上しようとする場合、予め車両に発生する振動を解析して解析結果に基づいて、アブゾーバ等のデバイスの設定値を調整して車両に発生する振動を低減するようにしている。ところが、車両には個体差があり、個々の車両で運動性能を含む車両性能も相違する。従って、予め計測したデータを用いたデータ解析を反映しても、個々の車両に適合しない場合がある。本実施形態では、車両に搭載されたセンサからの時系列振動データを用いて振動に関する時間特性、周波数特性、及び位置特性を適切に考慮することで、高精度に、車両特性を向上する。
<第1実施形態>
第1実施形態は、振動要素の位置特性に関する車両特性評価用物理量を表す目的関数を最適化することで、車両における評価対象位置の振動を低減する。
図1乃至図3は第1実施形態に係る車両特性設定装置の適用対象となる車両10の概略構成を示す図であり、図4は第1実施形態に係る車両特性設定装置の概略構成を示す図である。
図1は第1実施形態における車両10全体の概略構成を示し、図2及び図3は車両10のパワートレーンブロック12の概略構成を示す。振動系としての車両10は、複数の振動要素として車体(ばね上要素)11とパワートレーンブロック12とばね下要素15を含む。パワートレーンブロック12はモータ13及び変速機14を含んで構成され、ばね下要素15は駆動輪18及びロワアーム19を含んで構成される。モータ13は変速機14に連結され、変速機14は駆動輪18に連結されている。車両10の実稼働(実走行)時に、モータ13はトルク(回転力)を加振力として発生し、モータ13と変速機14間でトルクが伝達され、変速機14と駆動輪18間でトルクが伝達される。
なお、車両10は、変速機14を介して駆動輪18にトルクを伝達することに限定されるものではなく、モータ13から直接駆動輪18へモータのトルクを伝達するようにしてもよい。第1実施形態では、モータ13と変速機14間でトルクが伝達され、変速機14と駆動輪18間でトルクが伝達される場合を説明する。
パワートレーンブロック12はマウント16を介して車体11に支持されており、マウント16を介してパワートレーンブロック12と車体11間で力が伝達される。ばね下要素15はサスペンションブッシュ17を介して車体11に支持されており、サスペンションブッシュ17を介してばね下要素15と車体11間で力が伝達される。
車両10は、車両10が有する部品の剛性及び減衰特性を調整するデバイス40を備えている(図4)。例えば、マウント16の剛性及び減衰特性を示すマウント特性42を調整するデバイス40を備えている。また、サスペンションブッシュ17の剛性及び減衰特性を示すアブゾーバ特性41を調整する図示しないアブゾーバ等のデバイス40を備えている。デバイス40は、車両10に生じる振動を低減するように作動を規定した標準のパラメータが予め設定されており、車両10は、標準のパラメータにより作動が規定されたデバイス40による車両特性に応じて走行する。詳細は後述するが、第1実施形態では、個体差を有する車両10に対して、デバイス40のパラメータを調整することで、車両10の車両特性を向上する。第1実施形態では、デバイス40の作動を規定するパラメータを標準のパラメータから変更可能になっている。
ここで、車両前後方向(車両進行方向)xを軸、車両左右方向をy軸、車両上下方向をz軸とする、互いに直交するxyz3次元座標系を車両10に規定する。パワートレーンブロック12は、x方向重心軸まわりに回転振動(ロール振動)可能であり、y方向重心軸まわりに回転振動(ピッチ振動)可能であり、z方向重心軸まわりに回転振動(ヨー振動)可能である。さらに、パワートレーンブロック12は、x方向に並進振動可能であり、y方向に並進振動可能であり、z方向に並進振動可能である。同様に、ばね下要素15も、x方向重心軸まわりに回転振動(ロール振動)可能であり、y方向重心軸まわりに回転振動(ピッチ振動)可能であり、z方向重心軸まわりに回転振動(ヨ一振動)可能である。さらに、ばね下要素15も、x方向に並進振動可能であり、y方向に並進振動可能であり、z方向に並進振動可能である。車体11は、x方向に並進振動可能である。ここでは、パワートレーンブロック12及びばね下要素15は、6自由度の剛体運動をする質点であるものとして考える。
図2及び図3に示すように、車両10の実走行時における振動計測対象であるパワートレーンブロック12の並進振動及び回転振動を計測するために、各々がx方向並進加速度とy方向並進加速度とz方向並進加速度を検出する複数(3つ)の3軸加速度センサ22−1、22−2、22−3がパワートレーンブロック12に付設されている。図2及び図3の例では、3軸加速度センサ22−1と3軸加速度センサ22−2はy方向に互いに距離lP1+lP2をおいた状態でパワートレーンブロック12に設置され、3軸加速度センサ22−1と3軸加速度センサ22−3はy方向に互いに距離lp1+lp3をおいた状態でパワートレーンブロック12に設置されている。3軸加速度センサ22−1と3軸加速度センサ22−2とでx方向位置及びz方向位置は互いに等しく、3軸加速度センサ22−1、22−2と3軸加速度センサ22−3は、x方向に互いに距離dp1+dp3をおき、z方向に互いに距離hp1+hp3をおいた状態で、パワートレーンブロック12に設置されている。
パワートレーンブロック12において、x方向重心軸まわりの回転角加速度dθpx/dtは以下の(1)式で表され、y方向重心軸まわりの回転角加速度dθpy/dtは以下の(2)式で表され、z方向重心軸まわりの回転角加速度dθpz/dtは以下の(3)式で表される。そして、重心点でのx方向並進加速度d/dtは以下の(4)式で表され、重心点でのy方向並進加速度d/dtは以下の(5)式で表され、重心点でのz方向並進加速度d/dtは以下の(6)式で表される。(1)〜(6)式において、dP1/dtは3軸加速度センサ22−1の付設箇所でのz方向並進加速度、dP3/dtは3軸加速度センサ22−3の付設箇所でのz方向並進加速度、dP1/dtは3軸加速度センサ22−1の付設箇所でのx方向並進加速度、dP2/dtは3軸加速度センサ22−2の付設箇所でのx方向並進加速度、dp3/dtは3軸加速度センサ22−3の付設箇所でのx方向並進加速度、dp1/dtは3軸加速度センサ22−1の付設箇所でのy方向並進加速度である。そして、hp1はパワートレーンブロック12の重心点と3軸加速度センサ22−1、22−2の付設箇所とのz方向距離、dp1はパワートレーンブロック12の重心点と3軸加速度センサ22−1、22−2の付設箇所とのx方向距離、lP1はパワートレーンブロック12の重心点と3軸加速度センサ22−1の付設箇所とのy方向距離である。
同様に、車両10の実走行時における振動計測対象であるばね下要素15(ロワアーム19)の並進振動及び回転振動を計測するために、各々がx方向並進加速度とy方向並進加速度とz方向並進加速度を検出する複数(3つ)の3軸加速度センサ25−1、25−2、25−3がばね下要素15に付設されている。3軸加速度センサ25−1と3軸加速度センサ25−2はy方向に互いに距離ls1+ls2をおいた状態でばね下要素15に設置され、3軸加速度センサ25−1と3軸加速度センサ25−3はy方向に互いに距離ls1+ls3をおいた状態でばね下要素15に設置されている。3軸加速度センサ25−1と3軸加速度センサ25−2とでx方向位置及びz方向位置は互いに等しく、3軸加速度センサ25−1、25−2と3軸加速度センサ25−3は、x方向に互いに距離ds1+ds3をおき、z方向に互いに距離hs1+hs3をおいた状態で、ばね下要素15に設置されている。
ばね下要素15(ロワアーム19)において、x方向重心軸まわりの回転角加速度dθsx/dtは以下の(7)式で表され、y方向重心軸まわりの回転角加速度dθsy/dtは以下の(8)式で表され、z方向重心軸まわりの回転角加速度dθsz/dtは以下の(9)式で表される。そして、重心点でのx方向並進加速度d/dtは以下の(10)式で表され、重心点でのy方向並進加速度d/dtは以下の(11)式で表され、重心点でのz方向並進加速度d/dtは以下の(12)式で表される。(7)〜(12)式において、ds1/dtは3軸加速度センサ25−1の付設箇所でのz方向並進加速度、ds3/dtは3軸加速度センサ25−3の付設箇所でのz方向並進加速度、d、/dtは3軸加速度センサ25−1の付設箇所でのx方向並進加速度、ds2/dtは3軸加速度センサ25−2の付設箇所でのx方向並進加速度、ds3/dtは3軸加速度センサ25−3の付設箇所でのx方向並進加速度、ds1/dtは3軸加速度センサ25−1の付設箇所でのy方向並進加速度である。そして、hs1はばね下要素15の重心点と3軸加速度センサ25ー1、25−2の付設箇所とのz方向距離、ds1はばね下要素15の重心点と3軸加速度センサ25−1、25−2の付設置所とのx方向距離、ls1はばね下要素15の重心点と3軸加速度センサ25−1の付設箇所とのy方向距離である。
車両10の実走行時における振動計測対象である駆動輪18の回転振動を計測するために、駆動輪18の角速度dθ/dtを検出する角速度センサ28が駆動輪18に付設されている。また、車両10の実走行時における振動評価対象である車体11のフロアの並進振動を計測するために、車体11のフロアのx方向並進加速度d/dtを検出する加速度センサ21が車体11のフロアに付設されている。車両10の実走行時に各センサ21、22−1、22−2、22−3、25−1、25−2、25−3、28で検出された時系列信号は、車両特性設定装置70に入力される。車両特性設定装置70は、車両10の振動解析を行い、当該車両における振動に関する車両特性の最適化を行う。
図4は、車両特性設定装置70の機能ブロック図の一例を示す図である。車両特性設定装置70は、CPUを中心としたコンピュータとして構成可能であり、コンピュータを以下に説明する時系列振動データ取得部71,設定定数記憶部72、振動データ変換部73、テンソルデータ作成部74、因子解析部75、感度解析部76、チューニングパラメータ変更部77、及びコントローラ78として機能させる。
設定定数記憶部72には、前述の距離lp1+lp2、1p+1p3、hp1+hp3、lp1、hp1、dp1、ls1+ls2、ls1+ls3、hs1+hs3、ls1、hs1、ds1が記憶されている。時系列振動データ取得部71は、車両の走行中に計測を行う。そして、車両10(振動系)における振動計測対象とする振動要素の位置(車両上で振動要素が存在する位置)毎の時系列振動データを取得する(1次元データ、図7参照)。この時系列振動データは、振動要素の位置毎に計測された時系列のデータである。なお、振動要素の位置は、ここでは、同一位置であっても互いに異なる方向の振動を計測する場合は、異なる位置とする。この場合、時系列振動データは、振動要素の位置及び振動計測方向の何れか1つ以上が互いに異なる複数の計測条件でのデータとして時系列振動データを捉えることができる。
なお、時系列振動データは、運転条件毎に取得するようにしてもよい。運転条件とは、例えば、チップイン加速、減速、及び突起乗り越しなどの振動計測時における車両走行条件のことをいう。複数の運転条件によるデータを用いることで、複数の運転条件下の車両性能を考慮可能となる。
振動データ変換部73は、時系列振動データ取得部71で取得された時系列振動データについて、予め設定された解析時間に含まれる時系列振動データを抽出し、ノイズ除去などのフィルタ処理を行う。そして、振動データ変換部73は、抽出された時系列振動データを時間周波数解析し、時間(加速度の時刻)及び周波数に対する振動データに変換する(2次元データ、図8参照)。
テンソルデータ作成部74は、振動データ変換部73により変換された振動要素の位置毎の各振動データ(2次元データ)を集約し、時間、周波数、及び振動要素の位置による3次元(3階)のテンソルで表される3次元データを作成する(3次元データ、図9参照)。
因子解析部75は、テンソルデータ作成部74で作成された3次元データに対して因子解析(PARAFAC解析)を行い、解析結果の因子のうち、複数(例えば3つ又は4つ)の主たる因子を抽出することで、時間、周波数及び振動要素の位置に対する振動データについて、低次元化された3次元データを作成する。なお、抽出する因子は、解析結果の各因子が示す物理量(例えば、加速度の大きさ)が予め定めた閾値を超える因子とすればよい。また、因子解析部75は、因子に対する振動要素の位置の寄与度を算出する(図11参照)。すなわち、抽出された各因子は、位置特性である、振動要素の位置毎の物理量(例えば、加速度の大きさ)に対応する成分を含む(図11参照)。従って、因子の位置特性は、振動の評価対象位置における振動評価を行う際に、抽出された主たる因子がどの程度寄与しているかを示す指標である寄与度を表すことになる。
感度解析部76は、因子解析部75で算出された寄与度に基づいて、感度解析を行い、振動に関する車両特性の最適化を行う。第1実施形態では、感度解析部76は、寄与度に基づいて、目的関数及び設計変数を定め、目的関数の最適値を与える設計変数の値を用いて車両特性の最適化を行う。目的関数は振動を抑制する位置等の車両の評価対象位置に関する車両特性評価用物理量を表すためのものである。設計変数は、車両の評価対象位置に関係する振動要素の振動特性を規定する物理量を表すためのものである。具体的には、感度解析の解析結果によってアブゾーバ特性41及びマウント特性42等の剛性及び減衰特性を調整するデバイス40の作動を規定するパラメータを同定する。車両の評価対象位置は、振動を低減する車両における位置、又は、評価対象位置に関係する振動要素の位置が定められる。なお、この評価対象位置は、入力によって定めてもよく、因子が示す物理量が閾値を超えた場合に当該因子が示す物理量に対応する振動要素を定めてもよい。第1実施形態は、車両の評価対象位置の一例として、車体11、すなわち、ばね上とし、振動に関する車両特性の最適化として、ばね上の振動を低減する場合を説明する。
チューニングパラメータ変更部77は、感度解析部76により解析されて同定されたパラメータに基づいて、デバイス40の作動を規定するパラメータ(チューニングパラメータ)を変更する。変更されたチューニングパラメータにより車両特性が最適化される。
コントローラ78は、車両特性が最適化された後に、時系列振動データに基づいて、車両の振動系を伝達関数によりモデル化した車両モデルを用いて、モータ13の駆動により、振動低減する制御を行う。
図5は、車両特性設定装置70のハードウェア構成の例を示す図である。図に示すように、車両特性設定装置70は、制御部31、記憶部32、入力部33、表示部34、周辺機器I/F部35、バス38等から構成される。
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnIy Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成される。CPUは、記憶部32、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス38を介して接続された各装置を駆動制御し、車両特性設定装置70の各部(時系列振動データ取得部71、振動データ変換部73、テンソルデータ作成部74、因子解析部75、感度解析部76、チューニングパラメータ変更部77及びコントローラ78)を機能させる。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部32、R0M、記録媒体等から読み取ったプログラム及びデータ等を一時的に保持すると共に、制御部31が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
記憶部32は、HDD(Hard Disk Drive)等であり、制御部31が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)、前述した設定定数記憶部72の各パラメータ等が格納される。プログラムに関してはOSに相当する制御プログラム、及び後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部31により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各部として実行される。
入力部33は、例えば、キーボーにマウス等のポインティングデバイス、テンキ一等の入力装置である。入力部33を介して、コンピュータに対して、情報の入力、操作指示、動作指示等を行うことができる。表示部34は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
周辺機器I/F(Interface)部35は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部35を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部35は、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394及びRS−232C等によって構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。第1実施形態では、各センサ21、22−1、22−2、22−3、25−1、25−2、25−3、28が周辺機器I/F部35と接続されており、各センサの信号は周辺機器I/F部35を介して、車両特性設定装置70(時系列振動データ取得部71)に入力される。バス38は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
次に、図6のフローチャートを参照して、第1実施形態の処理の流れを説明する。
まず、ステップS102で、車両特性設定装置70の制御部31(時系列振動データ取得部71)は、図7に示すように、振動計測対象とする振動要素毎に計測を行い、複数の振動要素の複数の位置での時系列振動データを取得する。また、ステップS102ではモータ13のトルク及びモータ13の回転数の計測も行い、時系列振動データに対応付けて一時的に記憶する。なお、モータ13のトルク及びモータ13の回転数の計測は必須のものではなく、詳細は後述するモータ13の制御を実行しない場合は不要である。また、ここで必要に応じて、計測点数を限定したり、計測された時系列振動データを重心などの基準位置のデータに変換してもよい。
具体的には、複数の振動要素の位置での時系列振動データとして、第1実施形態では、車体11のフロアのx方向並進加速度d/dtと、駆動輪18の回転角加速度dθ/dtと、パワートレーンブロック12の並進加速度d/dt、d/dt、d/dt及び回転角加速度dθpx/dt、d py/dt、dθ/dtと、ばね下要素15(ロワアーム19)の並進加速度d/dt、d/dt、dzs/dt及び回転角加速度dθsx/dt、dθsy/dt、dθsz/dtが取得される。すなわち、第1実施形態では、14箇所の位置での時系列振動加速度が取得される。
車体11のフロアのx方向並進加速度d/dtは、加速度センサ21の検出信号から取得される。駆動輪18の回転角加速度dθ/dtは、角速度センサ28で検出された角速度dθ/dtを微分することで取得される。パワートレーンブロック12において、x方向重心軸まわりの回転角加速度dθpx/dtは、3軸加速度センサ22−3、22−1で検出されたz方向並進加速度の差dP3/dt−dp1/dtに基づいて前述の(1)式により算出され、y方向重心軸まわりの回転角加速度d2θpy/dtは、3軸加速度センサ22−1、22−3で検出されたx方向並進加速度の差dp1/dt−dp3/dtに基づいて前述の(2)式により算出され、z方向重心軸まわりの回転角加速度dθpz/dtは、3軸加速度センサ22−1、22−2で検出されたx方向並進加速度の差dp1/dt−dp2/dtに基づいて前述の(3)式により算出される。そして、重心点でのx方向並進加速度dx/dtは、回転角加速度dθ/dt、dθz/dtと3軸加速度センサ22−1で検出されたx方向並進加速度dP1/dtとに基づいて前述の(4)式により算出され、重心点でyの方向並進加速度d/dtは、回転角加速度dθ/dt、dθpx/dtと3軸加速度センサ22−1で検出されたy方向並進加速度dp1/dtとに基づいて前述の(5)式により算出され、重心点でのz方向並進加速度d/dtは、回転角加速度dθ/dt、dθpx/dtと3軸加速度センサ22−1で検出されたz方向並進加速度dP1/dtとに基づいて前述の(6)式により算出される。
同様に、ばね下要素15(ロワアーム19)において、x方向重心軸まわりの回転角加速度dθsx/dtは、3軸加速度センサ25−3、25−1で検出されたz方向並進加速度の差ds3/dt−ds1/dtに基づいて前述の(7)式により算出され、y方向重心軸まわりの回転角加速度dθsy/dtは、3軸加速度センサ25−1、25−3で検出されたx方向並進加速度の差ds1/dt−ds3/dtに基づいて前述の(8)式により算出され、z方向重心軸まわりの回転角加速度dθsz/dtは、3軸加速度センサ25−1、25−2で検出されたx方向並進加速度の差ds1/dt−ds2/dtに基づいて前述の(9)式により算出される。そして、重心点でのx方向並進加速度d/dtは、回転角加速度dθsy/dt、dθsz/dtと3軸加速度センサ25−1で検出されたx方向並進加速度ds1/dtとに基づいて前述の(10)式により算出され、重心点でyの方向並進加速度d/dtは、回転角加速度dθsz/dt、dθsx/dtと3軸加速度センサ25−1で検出されたy方向並進加速度ds1/dtとに基づいて前述の(11)式により算出され、重心点でのz方向並進加速度d2x/dtは、回転角加速度dθsy/dt、dθsx/dtと3軸加速度センサ25一1で検出されたz方向並進加速度ds1/dtとに基づいて前述の(12)式により算出される。
なお、x方向重心軸まわりの回転角速度とy方向重心軸まわりの回転角速度とz方向重心軸まわりの回転角速度を検出する3軸角速度センサをパワートレーンブロック12及びばね下要素15に設置し、3軸角速度センサの検出信号を微分することでパワートレーンブロック12及びばね下要素15の重心軸まわりの回転角加速度を取得することも可能である。また、x方向並進加速度とy方向並進加速度とz方向並進加速度を検出する3軸加速度センサをパワートレーンブロック12やばね下要素15の重心点に直接設置可能な場合は、3軸加速度センサの検出信号からパワートレーンブロック12及びばね下要素15の重心点での並進加速度を取得することが可能である。
次に、ステップS104で、車両特性設定装置70の制御部31(振動データ変換部73)は、時系列振動データについて、予め設定された解析時間に含まれる時系列振動データを抽出し、ノイズ除去などのフィルタ処理を行う。そして、振動データ変換部73は、抽出された時系列振動データを時間周波数解析し、各計測条件での時間(加速度の時刻)及び周波数に対する振動データ(2次元データ)に変換する(図8参照)。ここでは、ステップS102で取得された振動要素の位置毎の時系列振動データに対してウェーブレット変換を施すことで、振動要素の位置毎の時系列振動データを、振動要素の位置での時間及び周波数に対する振動データに変換する。このとき必要であれば、ウェーブレット変換を行う際に、計測時間帯、周波数帯を限定してもよい。ウェーブレツ卜変換によって、車体11のフロアのx方向並進加速度d/dtと、駆動輪18の回転角加速度dw/dtと、パワートレーンブロック12の並進加速度d/dt、d/dt、d/dt及び回転角加速度dpx/dt、dθpy/dt、dθpz/dtと、ばね下要素15(ロワアーム19)の並進加速度d/dt、d/dt、d/dt及び回転角加速度dθsx/dt、dθsy/dt、dθsz/dtが、時間及び周波数に対する振動加速度を示す2次元データに変換される。これによって、図8に示すように、振動要素の位置毎に、時間と周波数に対する振動加速度の関係を表す2次元データ(2次元行列)が得られる。なお、ウェーブレット変換自体は公知であるため詳細な説明を省略する。
次に、ステップS106で、車両特性設定装置70の制御部31(テンソルデータ作成部74)は、図9に示すように、振動データ変換部73により変換された振動要素の位置毎の各振動データ(2次元データ)を集約し、時間、周波数、及び振動要素の位置の3次元(3階)のテンソルで表される3次元データ(テンソルデータ)を作成する。具体的には、振動データ変換部73により変換された振動要素の位置毎の各振動データ(2次元データ)を足し合わせ、時間、周波数、及び振動要素の位置の3次元のテンソルで表される3次元データを作成する。
次に、ステップS108で、車両特性設定装置70の制御部31(因子解析部75)は、ステップS106で作成された3次元データに対して所定の因子数で因子解析(PARAFAC解析)を行い、因子を抽出し、各因子の振動要素の位置への寄与度を算出する。PARAFAC解析では、3次元データを、行列A、B、Cに分解(テンソル分解)して、主たる因子項と剰余項とで表した(13)式で表すことができる。この(13)式は主たる因子項が支配的なため、次の(14)式で近似して表すことができる。なお、3次元データをテンソル分解することで、時間的に非定常な現象を扱うことが可能になる。このように、主たる因子を抽出することで、時間、周波数及び振動要素の位置について、低次元化された3次元データを作成し、抽出された各因子の位置特性を特定することで、振動評価を行う際の振動要素の位置への寄与度を算出する。
(13)式において、Tは転置を表す。(13)式の左項である主たる因子項は、時間、周波数、及び位置に対する3次元の基底テンソルにより表した基底行列の演算式である。行列Aは、周波数基底となる周波数と因子に関する基底行列である。行列Bは、時間基底となる時間と因子に関する基底行列である。行列Cは、位置基底となる振動要素の位置(例えば、計測箇所及び方向を含む)と因子に関する基底行列である。行列Eは、主たる因子以外の因子に関わる基底行列である。なお、PARAFAC解析により行列A、B、Cを算出する処理自体は公知であるため詳細な説明を省略する。
従って、例えば、51種類の周波数で、計測時間を2001ステップとし、14の位置で計測された3次元データは1428714自由度を有するデータとなる。この1428714自由度を有するデータに対して、因子解析(PARAFAC解析)によるテンソル分解を行い、主たる因子を抽出することで、3自由度の低次元化された3次元データを作成することが可能となる。そして、低次元化された3次元データは、膨大な自由度の複数の時系列振動データの特徴を示すデータとして扱うことが可能となる。
図10は、3次元のテンソルで表される3次元データから抽出された因子(図10の例では4つ)に関する基底テンソルの特性の一例を示す図である。図10(A)は、周波数(行列A)の基底テンソルの特性を示し、図10(B)は、時間(行列B)の基底テンソルの特性を示し、図10(C)は、位置の基底テンソルの特性を示す。
制御部31(因子解析部75)は、PARAFAC解析により得られた行列Cに基づいて、各因子に対する各計測条件の寄与度を算出する。
図11は、抽出された因子各々における位置基底のテンソルの特性について、車両に存在する振動要素の特性(位置)で示す図である。図11(A)は、因子1に関する特性を示し、図11(B)は、因子2に関する特性を示し、図11(C)は、因子3に関する特性を示す。なお、図11では因子同士の差別化を考慮するために、加速度の振幅比ではなく、振幅の大きさで示している。この振幅の大きさを、抽出された因子各々に対する振動要素の位置各々の寄与度として求める。
次に、ステップS110において、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、ステップ108で算出された寄与度に基づいて、位置特性を考慮した目的関数及び設計変数を設定する。具体的には、図12に示すように、車両の評価対象位置(ここでは、ばね上)の各因子における位置基底の成分を抽出し、目的関数fを設定する。また、車両の評価対象位置(ばね上)に関係する振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータを設計変数xとして設定する。
車体11(ばね上)の振動を低減するための目的関数f及び設計変数xの一例を次に示す。次に示す例では、目的関数fを、各因子から抽出した加速度の総和を車両特性評価用物理量とする(15)式で示し、抽出された加速度の総和の値を目的関数fの初期値とする。設計変数xは、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスの作動を規定するパラメータの各々とし、現在設定済の標準のパラメータを設計変数xの初期値とする。なお、設計変数xは、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスに制限してもよいが、車両10が有する部品の剛性及び減衰特性を調整する他のデバイス40の作動を規定するパラメータを設定してもよい。例えば、車両10が有する調整可能な、アブゾーバの少なくとも一部、各種マウントの少なくとも一部、及びデバイス40の作動を規定するためのアクチュエータ等の作動素子のアクチュエータ特性を設定してもよい。
目的関数
f=|因子1のばね上加速度|+|因子2のばね上加速度|+・・・
(15)
設計変数
:左前アブゾーバのばね定数
:左前アブゾーバの減衰係数
:右前アブゾーバのばね定数
:右前アブゾーバの減衰係数
・・・
次に、ステップS112で、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、ステップ110で設定された目的関数f及び設計変数xを用いて、ばね上(評価対象位置)における振動を低減する感度解析を行う。また、目的関数fを最適(ここでは最小)にする設計変数xの値によってデバイスのパラメータの値を同定する。すなわち、設計変数xの単位変化量に対する目的関数xの変化量の割合である目的関数fの感度に基づいて、目的関数fの最適値を与える設計変数xの変化量を予測すると共に、設計変数xを予測量に相当する量変化させたときの目的関数fの値を計測し、前回の計測値と設計変数xを予測量に相当する量変化させたときの計測値とに基づいて、目的関数fの最適値を与える設計変数xの値を求める。そして、設計変数xの値によってデバイスの40パラメータの値を同定する。
具体的には、次の処理によって、感度解析を行い、目的関数fの最適値を与える設計変数xの値を求める。第1処理では、各設計変数xに対する目的関数fの感度を計測する。すなわち、各設計変数の値を微小量Δxi 変化(例えば増加)させた後の目的関数fの値を計測する。設計変数xが初期値の場合の目的関数をfとし、各設計変数の値を微小量Δxi 変化(例えば増加)させた後の目的関数をf’とすると、各設計変数に対する目的関数の感度は次の(16)式で表すことができる。
∂f/∂Δxi=(1/Δxi)(f’−f) ・・・(16)
この感度によって、設計変数をΔxi 変化させたときに目的関数の値がどの程度変化するか計測することができる。なお、この感度は、目的関数の値について解析的に求められる場合には計測することなく、演算により求めるようにしてもよい。
第2処理では、目的関数fが最小になるように設計変数xを変更する。すなわち、第1処理で計測した目的関数fの感度が正値の場合は、設計変数xを徐々に小さくし、感度が負値の場合は、設計変数xを徐々に大きくする。なお、ここでの目的関数及び設計変数には制約条件を予め設定しておくことが好ましい。制約条件の一例には、各設計変数xの変更可能範囲、すなわちデバイス40の作動可能範囲に対応するパラメータの設定可能範囲が挙げられる。この場合、目的関数fの感度が正値の場合は、設計変数xを設計可能領域の下限値まで徐々に小さくし、感度が負値の場合は、設計変数xを設計可能領域の上限値まで徐々に大きくする。また、制約条件の他例には、感度の絶対値が最大の設計変数xに対して、感度の絶対値が規定値(例えば10分の1)以下の設計変数xは変更しないことが挙げられる。
以上の処理を繰り返し行うことにより、制約条件を考慮しながら目的関数fを最適(ここでは、最小)にする設計変数xの初期値(標準のパラメータ)からの変化量を導出することが可能となる。この導出された設計変数の値を用いて、デバイス40のパラメータが同定される。
目的関数fを最適(ここでは、最小)にする設計変数xであるかの判断は、ステップS114で、目的関数fの値が収束したかを判断することで可能である。具体的には、感度解析が実行された場合、感度解析結果の評価から、車両特性が良好であるか否かを判断することができる。すなわち、目的関数fの値と前回の目的関数fの値との差と、予め定めた閾値とを比較することで目的関数fの値が収束したか否かを判断し、目的関数fの値が収束していない場合には上記の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS114で、目的関数fの値が収束したと判断(肯定判断)されたときには、このときの設計変数xの値をもって車両特性を考慮しつつ制約条件を満たしながら目的関数fを最適(最小)にするデバイス40のパラメータの値を同定する。
なお、上記の第2処理による設計変数xの変更後に目的関数fの値が前回の目的関数fの値より増加する場合、車両特性の向上を目的とするため、設計変数xを初期値に戻すことが好ましい。この場合、感度が大きい設計変数xから1つずつ順番に初期値から変更を行い、目的関数fの値が増加に転じるまで計測を行えばよい。これによって、車両特性の低下を抑制することが可能となる。
また、目的関数fの値が収束しない場合、例えば、予め定めた繰り返し回数の処理が繰り返された場合、この時点で処理を中止し、設計変数の組み合わせを変更(修正)した後に再度処理を開始(これまでの処理をやり直す)してもよいし、処理の結果を記憶しておき、適宜参照しても良い。
そしてステップS116で、車両特性設定装置70の制御部31(チューニングパラメータ変更部77)は、以上の処理により同定された目的関数fを最適(最小)にする設計変数xによるデバイス40のパラメータの値を以てデバイス40のチューニングパラメータを設定する。
このように、第1実施形態では、因子の振動要素の位置特性として、振動に関する各成分の振幅比ではなく、実稼働状態の振幅の大きさを反映させている。このため、実稼働状態の振動データから作成したテンソルデータを分解して抽出した振動要素の位置特性に関して評価対象位置、すなわち振動低減部位(ここでは車体11=ばね上)の絶対値を最小化することによって、車体11の振動も最小化される。
また、第1実施形態では、走行中に計測した時系列データから、目的関数fを最適(最小)にする設計変数xによるデバイス40のパラメータの値を以てデバイス40のチューニングパラメータを設定する。これにより、車両特性に個体差を有する車両であっても、個々の車両における固有の振動モードを反映させた車両特性となり、車両の実稼働状態に応じた制御を行うことなく、車両特性を向上することができる。
さらに、第1実施形態における車両特性最適化装置によれば、車両10の実稼働(実走行)時の振動データのみから車両特性の向上が可能であり、車両10よりパーツを取り外して単体計測する等の処理は不要である。また、他の車両10の車両特性が不明であり、他の車両10がどのような思想で設計している場合であっても、車両特性を向上することができる。
以上のようにして、設定されたデバイス40のチューニングパラメータによって、車両の実稼働状態に応じた制御なしで車両特性の向上が可能であるが、さらにモータ13の簡単な制御を行うことで、さらに車両特性を向上することが可能である。
具体的には、上記のようにして車両特性が最適化された後に、コントローラ78によって、モータ13の駆動により生じる振動要素における振動系を伝達関数によりモデル化した車両モデルを用いて、モータ13の駆動により振動低減する制御を行う。
次に、図13のフローチャートを参照して、モータ13の駆動により評価対象位置(ばね上)に関係する振動要素における振動低減する処理の流れを説明する。図13に示す処理ルーチンは、車両特性設定装置70の制御部31(コントローラ78)において実行される。
まず、デバイス40のチューニングパラメータが設定され、車両特性が最適化された後に、ステップS120で、コントローラ78は、モータ13のトルク及びモータ13の回転数の計測値を取得する。また、コントローラ78は、予め定めた振動計測対象とする振動要素又は位置についての時系列振動データ(加速度)を取得する。
次に、ステップS122で、コントローラ78は、ステップS120で取得したデータを用いて、入力をモータ13のトルクsとし、出力を時系列振動データ(加速度)とする伝達関数Gを作成する。
次に、ステップS124で、コントローラ78は、予め定めた簡易車両モデルのバネ定数及び減衰係数等のパラメータを最適化する。すなわち、簡易車両モデルをバネ定数及び減衰係数等をパラメータとする簡易車両モデルの伝達関数Gpを定め、パラメータを最適化する。ここでのパラメータの最適化は、簡易車両モデルの伝達関数Gpと、ステップS122で作成した伝達関数Gとの誤差が最小になるように簡易車両モデルのパラメータを変更することである。具体的には、感度解析部76における処理と同様にして、感度解析を伝達関数Gpについて行い、簡易車両モデルの伝達関数の値と、作成した伝達関数Gpの値との差分値を目的関数とし、目的関数の最適値を与える簡易車両モデルのパラメータの値を求める。
図14は、簡易車両モデルの一例を示す図である。次の(17)式に、伝達関数Gpの一例を示す。
・・・(17)
次に、ステップS126で、コントローラ78は、パラメータが変更された伝達関数Gpから制御用コントローラを作成する。具体的には、ステップS124で作成された伝達関数Gpにおいて、図15に示すように、入力されたトルクによって生じる、ばね上に関係する振動要素における振動を低減するトルクを出力するためのモータ制御量(例えば、角速度及び周波数等)を出力する制御用コントローラを作成する。
次に、ステップS128で、コントローラ78は、ステップS126で作成した制御用コントローラによって、モータ13の制御を行う。これによって、モータ13の駆動により、ばね上に関係する振動要素における振動をさらに低減することが可能となる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両特性最適化装置によれば、車両における時系列振動データを用いて振動に関する時間特性、周波数特性、及び位置特性を適切に考慮することによって、車両特性に個体差を有する車両であっても、個々の車両における固有の振動モードを反映させた最適な車両特性を設定でき、また、車両の実稼働状態に応じて制御を行うことなく、車両特性を向上することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、振動要素の位置特性及び周波数特性に関する車両特性評価用物理量を表す目的関数を最適化することで、車両における評価対象位置の振動を低減する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と同様の構成のため、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態では、ばね上を評価対象位置として因子から抽出した振動(加速度)による目的関数を最適化することで、車両特性を向上した。ところで、ばね上の振動に対して他の因子より寄与度の大きい因子が、ばね上の振動に対してより寄与すると考えられる。しかし、複数の因子の振動特性におけるピーク周波数が接近している場合、各振動特性が重畳されて、振動が増幅される場合がある。
そこで、第2実施形態は、複数の因子間において周波数特性が重畳しないようにすることで、ばね上の振動に関する車両特性を向上する。第2実施形態は、複数の因子間において周波数特性が重畳しないようにピーク周波数の間隔を最大化して目的関数を最適化する点が、第1実施形態と主に異なっている。
第2実施形態では、複数の因子間において周波数特性が重畳しないようにする目的関数f及び設計変数xを設定し、最適化する。具体的には、他の因子より寄与度が大きい(例えば、最大の)特定の因子(以下、特定因子という。)のピーク周波数と他の因子のピーク周波数との差分の絶対値の総和を目的関数fとする。設計変数xは、第1実施形態と同様に、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスの作動を規定するパラメータの各々とする。
次に、図16のフローチャートを参照して、第2実施形態の処理の流れを説明する。図16に示す第2実施形態の処理は、図6に示すステップS110の処理を図16に示すステップS202の処理に代えて実行する点が、図6に示す第1実施形態の処理と主に異なっている。
まず、上述のように、ステップS102乃至ステップS108において、車両特性設定装置70の制御部31は、時系列振動データから時間、周波数、及び振動要素の位置の3次元データを作成し、因子解析を行って、振動要素の位置への寄与度を算出する(図10、図11参照)。
次に、ステップS202において、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、寄与度に基づいて、振動要素の位置特性及び周波数特性を考慮した目的関数及び設計変数を設定する。
具体的には、まず、ステップS108で算出された振動要素の位置への寄与度を第1寄与度とし、第1寄与度を用いて振動要素の位置及び周波数特性を考慮した寄与度を第2寄与度として導出する。導出された第2寄与度のうち他の因子より寄与度が大きい(ここでは、最大の)特定因子を特定する。
図17は、第2実施形態に係る寄与度に関する一例を示す図である。図17では、因子1を実線で示し、因子2を点線で示し、因子3を一点鎖線で示している。図17(A)は振動要素の位置への寄与度(第1寄与度)を示し、図17(B)は因子各々の周波数特性を示し、図17(C)は振動要素の位置及び周波数特性を考慮した寄与度(第2寄与度)を示す。図17に示すように、第2寄与度は、振動要素の位置及び周波数特性が反映された寄与度となり、図17の例では因子1が特定因子として特定される。
次に、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、上記のようにして導出された第2寄与度、すなわち特定因子に基づいて、目的関数及び設計変数を設定する。具体的には、ばね上(評価対象位置)の各因子における位置基底の成分を抽出し、第1寄与度とする。次に、ばね上(評価対象位置)の周波数基底を因子から抽出し、抽出された周波数特性と第1寄与度とを合成(例えば積算)することで、第2寄与度を導出する。そして、他の因子より第2寄与度が大きい(ここでは、最大の)特定因子を特定する。第2寄与度を導出した後に、特定因子(ここでは、因子1)のピーク周波数と他の因子のピーク周波数との差分の絶対値の総和を目的関数fに設定する。設計変数xは、第1実施形態と同様に、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスの作動を規定するパラメータの各々とする。これらの振動要素の位置及び周波数を考慮した目的関数及び設計変数一例を次に示す。
目的関数
f=|(因子1のピーク周波数)−(因子2のピーク周波数)|
+|(因子1のピーク周波数)−(因子3のピーク周波数)|
+・・・
・・・(18)
設計変数
:左前アブゾーバのばね定数
:左前アブゾーバの減衰係数
:右前アブゾーバのばね定数
:右前アブゾーバの減衰係数
・・・
次に、ステップS204で、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、ステップ202で設定された目的関数f及び設計変数xを用いて、各因子の周波数特性が重畳しないように目的関数fを最適(ここでは、周波数間隔を最大)にして、ばね上における振動を低減する感度解析を行う。また、目的関数fを最適(ここでは最大)にする設計変数xの値によってデバイスのパラメータの値を同定する。
そしてステップS116で、車両特性設定装置70の制御部31(チューニングパラメータ変更部77)は、デバイス40のチューニングパラメータを設定する。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両特性最適化装置によれば、因子の振動要素の周波数特性におけるピーク周波数が離間されるように最適化するので、因子同士で重複して振動が増幅されることを抑制しつつ車両特性を向上することができる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、振動要素の位置特性、周波数特性及び時間特性に関する車両特性評価用物理量を表す目的関数を最適化することで、車両における評価対象位置の振動を低減する。なお、第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成のため、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、複数の因子間において周波数特性が重畳しないように最適化することで、評価対象位置における振動の増幅を抑制した。ところで、ある振動に対して逆相の振動が重畳されると、互いに打ち消しあって振動を抑制可能と考えられる。そこで、第3実施形態は、複数の因子による振動が打ち消しあう(相殺する)ようにすることで、評価対象位置における振動を低減する。第3実施形態は、評価対象位置における振動を低減するために、振動要素の位置特性、周波数特性及び時間特性に基づいて、時間変動特性を適切に考慮して振動が打ち消しあうように目的関数を最適化する点が、第2実施形態と主に異なっている。
第3実施形態では、隣り合う因子間において振動が互いに逆相になるようにする目的関数f及び設計変数xを設定し、最適化する。具体的には、他の因子より寄与度が大きい(例えば、最大の)特定因子と、特定因子に時間的に近い因子(例えば、ピーク周波数が近い因子。以下、指定因子という。)との各々の時間変動特性の差分の絶対値の総和を目的関数fとする。設計変数xは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスの作動を規定するパラメータの各々とする。
次に、図18のフローチャートを参照して、第3実施形態の処理の流れを説明する。図18に示す第3実施形態の処理は、図16に示すステップS202の処理を図18に示すステップS302の処理に代えて実行する点が、図16に示す第2実施形態の処理と主に異なっている。
まず、上述のように、ステップS102乃至ステップS108において、車両特性設定装置70の制御部31は、時系列振動データから時間、周波数、及び振動要素の位置の3次元データを作成し、因子解析を行って、振動要素の位置への寄与度を算出する(図10、図11参照)。
次に、ステップS302において、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、寄与度に基づいて、振動要素の位置特性、周波数特性及び時間変動特性を考慮した目的関数及び設計変数を設定する。具体的には、まず、図16に示すステップ202と同様に、振動要素の位置及び周波数特性を考慮した第2寄与度を導出し、他の因子より第2寄与度が大きい(ここでは、最大の)特定因子を特定する(図17参照)。次に、特定因子に時間的に近い因子(ここでは、ピーク周波数が近い因子。)を指定因子と定める。
図17(C)に示す例では、振動要素の位置特性及び周波数特性が反映された第2寄与度において因子1が特定因子として特定される。また、図17において、因子1のピーク周波数に最も近い因子を因子2とすると、因子2が指定因子として定められる。
次に、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、上記のようにして導出された第2寄与度、すなわち特定因子と、指定因子とに基づいて、目的関数及び設計変数を設定する。具体的には、ばね上(評価対象位置)の各因子における位置基底の成分を抽出し、第1寄与度とする。次に、ばね上(評価対象位置)の周波数基底を因子から抽出し、抽出された周波数特性と第1寄与度とを合成(例えば積算)することで、第2寄与度を導出する。そして、他の因子より第2寄与度が大きい(ここでは、最大の)特定因子を特定する。次に、複数の因子から抽出した周波数基底の各々を用いて、特定因子に近い因子、ここでは、ピーク周波数が近い因子を指定因子に定め、特定因子及び指定因子の各々における時間基底の成分(時間変動特性)を抽出し、第3寄与度とする。抽出された第3寄与度に基づいて、特定因子(ここでは、因子1)の時間変動特性の値と指定因子の時間変動特性の値との差分の絶対値に関する時系列の総和を目的関数fに設定する。設計変数xは、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ばね上の振動特性に関係する予め定めたデバイスの作動を規定するパラメータの各々とする。
ここで、特定因子及び指定因子の各々の時間変動特性は、各々の符号(正値か負値か)により振動が増幅及び相殺の何れかになる。このため、第3実施形態では、振動を低減するために、互いの周波数特性が打ち消しあうように目的関数を設定する。具体的には、次に(19)式及び(20)式で示すように、特定因子及び指定因子の符号の組み合わせに応じて、目的関数を設定する。これらの振動要素の位置特性、周波数特性及び時間変動特性を考慮した目的関数の一例を次に示す。設計変数は第1実施形態及び第2実施形態と同様のため、省略する。
<特定因子及び指定因子が共に同一符号(正負が共通)>
目的関数
f=|(最初の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
−(最初の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
+|(次の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
−(次の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
+・・・
+|(最後の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
−(最後の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
・・・(19)
<特定因子及び指定因子が共に相違する符号(正負が相違)>
目的関数
f=|(最初の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
+(最初の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
+|(次の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
+(次の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
+・・・
+|(最後の時刻の特定因子の時間変動特性の値)
+(最後の時刻の指定因子の時間変動特性の値)|
・・・(20)
図19は、第3実施形態に係る目的関数における時間変動特性を示す図である。図19に示すように、因子1と因子2とより振動特性が打ち消しあうようになる。
次に、ステップS304で、車両特性設定装置70の制御部31(感度解析部76)は、ステップ302で設定された目的関数f及び設計変数xを用いて、時間的に隣り合う因子において振動が打ち消しあうように目的関数fを最適(ここでは、時間変動特性を最小)にして、ばね上における振動を低減する感度解析を行う。また、目的関数fを最適(ここでは最大)にする設計変数xの値によってデバイスのパラメータの値を同定する。
そしてステップS116で、車両特性設定装置70の制御部31(チューニングパラメータ変更部77)は、デバイス40のチューニングパラメータを設定する。
以上説明したように、第3実施形態に係る車両特性最適化装置によれば、振動要素の位置特性、周波数特性及び時間特性に基づいて、時間変動特性を適切に考慮して振動が打ち消しあうように目的関数を最適化するので、因子同士で振動を打ち消しあって振動を抑制しつつ車両特性を向上することができる。
上記の各実施形態では、車両に搭載されたセンサからの時系列振動データを取得して車両特性を設定する車両特性設定装置に、本開示の技術を適用する場合を例に説明したが、本開示の車両特性最適化装置が搭載される移動体は車両に限定されない。例えば、車両特性最適化装置をロボットに搭載してもよい。
以上、各実施の形態を用いて説明したが、開示の技術の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も開示の技術の技術的範囲に含まれる。
また、上記実施形態では、フローチャートを用いた処理によるソフトウエア構成によって実現した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ハードウェア構成により実現する形態としてもよい。
10 車両
11 車体(ばね上要素)
12 パワートレーンブロック
13 モータ
14 変速機
15 ばね下要素
16 マウント
17 サスペンションブッシュ
18 駆動輪
19 ロワアーム
21 加速度センサ
22、25 加速度センサ
28 角速度センサ
31 制御部
32 記憶部
33 入力部
34 表示部
40 デバイス
41 アブゾーバ特性
42 マウント特性
70 車両特性設定装置
71 時系列振動データ取得部
72 設定定数記憶部
73 振動データ変換部
74 テンソルデータ作成部
75 因子解析部
76 感度解析部
77 チューニングパラメータ変更部
78 コントローラ

Claims (7)

  1. 車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得する時系列振動データ取得部と、
    前記時系列振動データ取得部で取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換する振動データ変換部と、
    前記振動データ変換部で変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成する3次元データ作成部と、
    前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出する因子解析部と、
    前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める最適化部と、
    前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する調整部と、
    を備える車両特性最適化装置。
  2. 前記最適化部は、前記設計変数の単位変化量に対する目的関数の変化量の割合である目的関数の感度に基づいて、設計変数の値を変更すると共に、設計変数を変更させたときの目的関数の値を計測し、前回の計測値と前記設計変数の値を変更させたときの計測値とに基づいて、目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める
    請求項1に記載の車両特性最適化装置。
  3. 前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における前記車両の評価対象位置の各因子の加速度の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
    前記最適化部は、前記目的関数の値が最小値になるように前記設計変数の値を求め、
    前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う
    請求項1又は請求項2に記載の車両特性最適化装置。
  4. 前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における周波数基底の各因子のピーク周波数間の差分の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
    前記最適化部は、前記目的関数の値が最大値になるように前記設計変数の値を求め、
    前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う
    請求項1又は請求項2に記載の車両特性最適化装置。
  5. 前記時系列振動データは加速度データであり、前記目的関数は前記因子解析部の解析結果における加速度の時間変動基底の各因子の評価対象時間の変動量の総和であり、前記設計変数は前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を決定するデバイスの作動を規定するパラメータであり、
    前記最適化部は、目的関数の値が最小値になるように前記設計変数の値を求め、
    前記調整部は、前記デバイスに前記パラメータの設定を行う
    請求項1又は請求項2に記載の車両特性最適化装置。
  6. 車両特性を最適化する車両特性最適化方法であって、
    車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得し、
    取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換し、
    変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成し、
    前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出し、
    前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求め、
    前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する
    車両特性最適化方法。
  7. 車両特性を最適化するためのプログラムであって、
    コンピュータを、
    車両に存在する複数の振動要素各々の時系列振動データを取得する時系列振動データ取得部、
    前記時系列振動データ取得部で取得された前記時系列振動データを、前記複数の振動要素毎に時間及び周波数に対する振動データに変換する振動データ変換部、
    前記振動データ変換部で変換された複数の振動データを集約し、時間、周波数、及び前記振動要素が存在する位置の3つの次元で表される3次元データを作成する3次元データ作成部、
    前記3次元データに対して因子分解を行い、因子分解された因子各々に対する前記複数の振動要素が存在する位置各々の寄与度を算出する因子解析部、
    前記寄与度に基づいて、前記車両の評価対象位置における車両特性評価用物理量を表す目的関数と、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を表す設計変数とを設定し、かつ前記目的関数の最適値を与える設計変数の値を求める最適化部、及び、
    前記目的関数の最適値を与える設計変数の値に基づいて、前記車両の評価対象位置に関係する前記振動要素の振動特性を調整する調整部
    として機能させるためのプログラム。
JP2019159838A 2019-09-02 2019-09-02 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム Active JP7074113B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019159838A JP7074113B2 (ja) 2019-09-02 2019-09-02 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019159838A JP7074113B2 (ja) 2019-09-02 2019-09-02 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021039513A true JP2021039513A (ja) 2021-03-11
JP7074113B2 JP7074113B2 (ja) 2022-05-24

Family

ID=74848652

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019159838A Active JP7074113B2 (ja) 2019-09-02 2019-09-02 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7074113B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113627008A (zh) * 2021-08-05 2021-11-09 华中科技大学 一种基于整车部件参数的超参数优化设计方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0538911A (ja) * 1991-08-02 1993-02-19 Sumitomo Metal Ind Ltd 鉄道車両のアクテイブ制御による振動抑制方法
JP2016212016A (ja) * 2015-05-12 2016-12-15 株式会社豊田中央研究所 振動解析モデルの構造同定装置及びその同定方法
JP2018181035A (ja) * 2017-04-17 2018-11-15 株式会社ゼンリン 走行支援装置、走行支援方法およびそのためのデータ構造

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0538911A (ja) * 1991-08-02 1993-02-19 Sumitomo Metal Ind Ltd 鉄道車両のアクテイブ制御による振動抑制方法
JP2016212016A (ja) * 2015-05-12 2016-12-15 株式会社豊田中央研究所 振動解析モデルの構造同定装置及びその同定方法
JP2018181035A (ja) * 2017-04-17 2018-11-15 株式会社ゼンリン 走行支援装置、走行支援方法およびそのためのデータ構造

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
神保智彦ほか: "テンソルベースブラインド信号源分離による車両加速挙動の低次元物理モデリング", 計測自動制御学会論文集, vol. 第53巻 第4号, JPN6022013903, 30 April 2017 (2017-04-30), JP, pages 276 - 285, ISSN: 0004748071 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113627008A (zh) * 2021-08-05 2021-11-09 华中科技大学 一种基于整车部件参数的超参数优化设计方法
CN113627008B (zh) * 2021-08-05 2024-04-19 华中科技大学 一种基于整车部件参数的超参数优化设计方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7074113B2 (ja) 2022-05-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5224048B2 (ja) サスペンション制御装置
US11630437B2 (en) Numerical control system and motor drive controller
CN112673375B (zh) 车身的振动特性的合理化解析方法以及装置
CN106568604A (zh) 一种汽车动力总成悬置系统隔振率的计算方法
JP5652053B2 (ja) 車体振動推定装置およびこれを用いた車体制振制御装置
CN112595528B (zh) 车辆行驶工况下动力总成悬置主动侧激励力的识别方法
JP7074113B2 (ja) 車両特性最適化装置、車両特性最適化方法及びプログラム
CN105651473A (zh) 用于自动确定物体的动态刚度的方法
JP2006194723A (ja) 加振力同定方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
Papadrakakis et al. Tmeasy 6.0-a handling tire model that incorporates the first two belt eigenmodes
Song et al. A methodolgy for evaluating the structure-borne road noise prior to a prototype vehicle using direct force measured on a suspension rig
CN109203904B (zh) 用于车辆的行驶控制系统
JP2019018773A (ja) サスペンションの制御システム
CN111912631A (zh) 轮胎均匀性数据的校正方法及轮胎均匀性试验机
JP2002073703A (ja) 車両の振動解析方法および振動解析プログラムを記録した媒体
JPH08272837A (ja) 車両の車体振動解析方法
JP2006201089A (ja) モデル特性生成方法
JP6535208B2 (ja) 振動解析モデルの構造同定装置及びその同定方法
Minervini et al. FBS Decoupling at Suspension Level for Road Noise Applications
JP6458476B2 (ja) 車両特性試験装置
JP2019027874A (ja) 鉄道車両の異常診断システム
Jurisch et al. Simulation-Based Development for Active Suspension Control for Automated Driving Vehicles—Evaluation of Transferability to Real-World Testing
CN112033699A (zh) 一种驾驶室晃动测量装置及方法
Zeitvogel et al. Holistic vehicle parametrization on a handling roadway
CN113155486A (zh) 动力总成悬置系统的耐久度模拟试验方法和系统

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20211125

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211207

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220204

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220412

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220425

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7074113

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150