JP2021038421A - カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯およびその製造方法 - Google Patents

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修平 蛭田
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Abstract

【課題】カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)製造基材用ステンレス鋼帯およびその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス冷延鋼帯を素材とし、該素材に800℃以上の温度で10s以上保持する熱処理を施し、表面に厚さ:20nm以上の酸化アルミニウム層を有するステンレス鋼帯とする。なお、熱処理は、900〜1000℃の温度で、30〜600s間保持する処理とすることが好ましい。素材とするステンレス冷延鋼帯は算術平均粗さRaで0.20μm以下の表面粗さを有する冷延鋼帯とすることが好ましい。この程度の層厚を有する酸化アルミニウム層(アルミナ層)であれば、CNT形成時に助触媒層として利用でき、CNT製造基材として有効で、助触媒層の成膜工程を省略でき、また、長尺基材としてCNTの連続製造を可能にするという効果を奏する。【選択図】なし

Description

本発明は、ステンレス鋼帯に係り、とくにカーボンナノチューブ製造基材用として好適な、ステンレス鋼帯およびその製造方法に関する。なお、ここでいう「鋼帯」には、鋼帯、鋼板、鋼箔を含むものとする。
近年、高性能材料として、炭素系素材が注目されている。なかでも、次世代の素材として注目されているカーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)があり、世界各国でその生産技術の研究開発が進められている。CNTは、炭素原子同士が蜂の巣状に結合し、直径が数nmのチューブ状構造を呈しており、単層のものと、複数層のものとがある。単層のものを「単層CNT」、複数層のものを「多層CNT」と称する。単層CNTは、多層CNTに比べて、極めて高い性能を示すとして、注目されている。単層のCNTは、軽量であるが、例えば、強度が鋼の20倍、熱伝導性が銅の10倍、電気伝導性が銅の1000倍と、極めて優れた特性を保持する素材である。
CNTの製造には、例えば、炭素電極によるアーク放電、炭化水素の不完全燃焼、炭化水素や一酸化炭素の熱分解による方法など、各種の科学的手法が用いられている。最近は、特に、触媒の存在下、炭化水素や一酸化炭素等の炭素を含有する化合物の熱分解によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法が、大量生産への有望な技術として注目されている。
CVD法は、さまざまな物質の薄膜を形成する蒸着法のひとつで、石英などでできた反応管内で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により所望の薄膜を堆積する方法であり、CNTの製造においては、アセチレン等のカーボンが含まれるガスを用いる。このCVD法は、単層CNT、多層CNTのいずれをも製造可能でうえ、触媒を担持した基板を用いることで、基板面に垂直に配向した多数のCNTを製造することができる、という利点を備えている。
例えば、特許文献1には、「カーボンナノチューブ集合体の製造方法」が提案されている。特許文献1に記載された技術は、触媒金属元素を含む金属化合物と、助触媒金属元素を含む金属化合物と、合金化補助物質と、を溶解させた溶液を、基板上に塗布して、乾燥させることにより、基板と、基板の上に設けられた触媒前駆体層とを含むカーボンナノチューブ集合体製造用触媒基材を製造し、その触媒前駆体層を加熱することにより、触媒金属元素と助触媒金属元素とを含んだ金属触媒微粒子を基板上に形成し、炭化水素ガスを金属触媒微粒子に接触させて、カーボンナノチューブ集合体を成長させる、カーボンナノチューブ集合体の製造方法である。なお、特許文献1には、基板としてシリコンウェハを使用した実施例が示されている。
また、特許文献2には、「カーボンナノチューブを含む炭素ナノ構造体の製造方法」が提案されている。特許文献2に記載された技術は、触媒層を表面に有する基材に原料ガスを供給し、CVD法によって触媒層上にカーボンナノチューブを含む炭素ナノ構造体を成長させる、CNTを含む炭素ナノ構造体を製造する方法である。特許文献2に記載された技術では、1−ブチン及び/又は2−ブチンを含み、あるいはさらに触媒賦活物質及び/又は水素分子を含む原料ガスを用いるとしている。また、特許文献2に記載された技術では、表面に触媒を担持している基板を使用することが好ましいとしている。また、特許文献2に記載された技術では、基板として、金属および合金などの金属材料や、シリコンやセラミックなどの非金属材料などが挙げられ、加工性、低コストという観点から金属材料が好ましいとしている。特許文献2に記載された技術によれば、カーボンナノチューブを含む炭素ナノ構造体を高品質且つ高効率に製造できるとしている。
特許文献3には、「アルミニウム含有ステンレス鋼材表面のアルミナウイスカー形成方法」が記載されている。特許文献3に記載された技術は、アルミニウム含有フェライト系ステンレス鋼材にサンドブラスト又はショットブラスト処理をした後、高温で酸化させることを特徴とするアルミニウム含有ステンレス鋼材表面のアルミナウイスカー形成方法である。この方法により形成されたアルミナウイスカーを自動車排ガス触媒であるPtなどの触媒担体として利用することができるとしている。
特開2018−83169号公報 特開2016−185892号公報 特公平6−76653号公報
CVD法で用いる基板は、シリコンウェハが一般的であるが、シリコンウェハは高純度な珪素からなり、珪素のインゴットを厚さ1mm程度に切断して製造されるため、長尺化が困難である。そのため、シリコンウェハを基板としてCNTを製造する場合には、基板1枚1枚についてバッチ処理で行う必要があり、工業的量産に対しては問題を残していた。なお、特許文献1に記載された技術では、実施例として、シリコンウェハを基板として使用した例が示されているが、特許文献2に記載された技術では、実施例として、Fe−Cr合金製平板を基材として使用した例が示されており、シリコンウェハに代えて、金属薄板を基板材料として用いることが提案されている。
さらに、CVD法によりCNTを製造する場合においては、CNT成長用の触媒粒子を保護する助触媒として機能する薄膜を成膜する基板前処理を必要とする。特許文献1に記載された技術では、基板の表面にアルミナ、MgOなどの金属酸化物を含む下地層を、触媒層の下地として成膜し、その層の表面に、触媒原料と合金化補助物質を含む触媒前駆体層を成膜するとしている。また、特許文献2に記載された技術では、平板状の基板表面に、例えばアルミナ薄膜を形成したのち鉄薄膜を形成して、触媒層を形成するとしている。このような層の形成には、塗布法や蒸着法などの適用が考えられるが、それらはいずれも複雑な工程を必要とし、経済的に高価となるという問題がある。
また、特許文献3に記載された技術では、バッチ炉による長時間の熱処理を必要とし、製造コストが高騰し経済的に不利となる。
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、長尺で、CNTを製造する場合に連続製造が可能で、かつ助触媒として機能する薄膜の成膜工程を必要としない、安価なCNT製造を可能とする、カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、基材材料について鋭意検討した。その結果、CNTの連続製造が可能なように、長尺基材とすることができる金属材料に着目し、なかでもアルミニウムを含有するステンレス鋼帯が、安価なCNT製造のための基板材料として好適であることに思い至った。
本発明者らは、アルミニウムを含有するステンレス鋼帯の表面に、容易にアルミナ被膜が形成することに着目し、このアルミニウムを含有するステンレス鋼帯を、CNT製造用の基材として利用すれば、通常の基材製造工程において適切な熱処理を付加することにより均一なアルミナ被膜が形成され、助触媒として機能する薄膜(アルミナ膜)として利用でき、成膜のための特別な工程を施す必要がないことを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
[1]質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス鋼帯であって、表層に酸化アルミニウム層を有し、かつその層厚が20〜1000nmであるステンレス鋼帯であることを特徴とするカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯。
[2]前記組成が、質量%で、Al:0.30〜10.00%を含み、さらにCr:10.50〜23.00%と、C:0.015%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする[1]に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯。
[3]前記組成に加えてさらに、質量%で、希土類元素を合計で0.03〜0.20%、Zr:0.01〜1.00%、Mo:0.15%以下のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする[2]に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
[4]前記ステンレス鋼帯の表面粗さが、JIS B 0601-2001に規定される算術平均粗さRaで、0.20μm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のステンレス鋼帯。
[5]質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス冷延鋼帯を素材とし、該素材に800℃以上の温度で10s以上保持する熱処理を施し、表面に層厚:20〜1000nmの酸化アルミニウム層を有するステンレス鋼帯とすることを特徴とするカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
[6]前記組成が、質量%で、Al:0.30〜10.00%を含み、さらにCr:10.50〜23.00%と、C:0.015%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする[5]に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
[7]前記組成に加えてさらに、質量%で、希土類元素を合計で0.03〜0.20%、Zr:0.01〜1.00%、Mo:0.15%以下、Ni:1.00%以下のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする[6]に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
[8]前記ステンレス冷延鋼帯の表面粗さが、JIS B 0601-2001に規定される算術平均粗さRaで、0.20μm以下であることを特徴とする[5]ないし[7]のいずれかに記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
本発明によれば、CNTを製造するに際し、基板を長尺化することができ、CNTの連続製造が可能で、かつ複雑な成膜工程を簡素化でき、安価なCNT製造が可能になるという、産業上格段の効果を奏する。
まず、組成の限定理由について説明する。なお、以下、組成に関する質量%は、単に%で記す。本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯は、質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス鋼帯である。
Al:0.30〜10.00%
Alは、鋼帯表面で酸化アルミニウム(アルミナ)被膜を形成するために不可欠な元素である。このような効果を得るためには、0.30%以上の含有を必要とする。Al含有量が0.30%未満では、助触媒として有効なアルミナ被膜を形成できない。一方、10.00%を超える含有は、鋼帯製造時の熱間圧延性が低下し、熱間圧延中に表面欠陥が多数発生し、欠陥除去に多大の労力を要する。また、鋼帯の靭性、延性の低下を招く。アルミナ膜を形成した際、アルミナが偏析して表面粗さを著しくこのため、Alは0.30〜10.00%の範囲に限定した。なお、好ましくは3.00〜8.00%であり、さらに好ましくは5.00〜6.00%である。
本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯では、上記したAlが主要な成分であるが、Al以外の含有元素としては、通常のステンレス鋼組成の範囲内の含有であればよく、とくに限定する必要はないが、Cr:10.50〜23.00%を含有することが好ましい。
Cr:10.50〜23.00%
Crは、ステンレス鋼帯の耐酸化性を向上させる元素であり、さらにCrは、Alの作用を助長する作用を有する。このような効果を得るためには、10.50%以上含有することが好ましい。より好ましくは16.00%以上、さらに好ましくは17.00%以上である。一方、23.00%を超えて含有すると、鋼帯の靭性、延性が低下する。また、焼鈍、酸洗、冷間圧延などの生産性が低下し、製造コストの高騰を招く。このため、Crは10.50〜23.00%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは19.00〜21.00%である。
上記した成分に加えてさらに、下記の成分を含有することが好ましい。
Si:1.00%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、耐酸化性を向上させる作用を有する元素であり、本発明では0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.00%を超える含有は、鋼帯の加工性を低下させる。このため、Siは1.00%以下に限定した。なお、好ましくは0.10〜1.00%である。
C:0.015%以下
Cは、過剰に含有すると、ステンレス鋼帯の靭性を低下させる作用を有するとともに、冷間圧延性、加工性を低下させ、また、耐酸化性をも低下させる。そのため、Cは0.015%以下に限定した。なお、好ましくは0.008%以下である。
Mn:1.00%以下
Mnは、脱酸剤として作用するため、Al脱酸の予備脱酸剤として添加されることもある。しかも、鋼中に残存した場合には、耐酸化性、耐食性を低下させる。そのため、Mnは1.00%以下に限定した。なお、好ましくは0.20%以下である。
S:0.03%以下
Sは、鋼中では硫化物として存在し、靭性を低下するとともに、冷間圧延性、加工性を低下させる。そのため、できるだけ低減することが好ましいが、0.03%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.005%以下である。
P:0.04%以下
Pは、ステンレス鋼帯の靭性を低下させる作用を有し、できるだけ低減することが好ましいが、0.04%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.035%以下である。
上記した成分が、好ましい組成範囲であるが、これら成分以外にさらに、希土類元素を合計で0.03〜0.20%、Zr:0.01〜1.00%、Mo:0.15%以下、Ni:1.00%以下のうちの1種または2種以上を含有する組成としてもよい。
希土類元素を合計:0.03〜0.20%
ここでいう希土類元素は、Sc、Yを含み、さらにLa、Ce、Ndなどの、原子番号57から71までの元素をいう。希土類元素は、鋼帯表面に高温で生成する酸化被膜の密着性向上を通して耐酸化性向上に寄与する。このような効果は、希土類元素を合計で0.03%以上含有することで顕著となる。一方、0.20%を超える含有は、熱間圧延中に激しい割れを生じ、熱間圧延が困難となる。このようなことから、含有する場合には、希土類元素は合計で0.03〜0.20%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.07〜0.10%である。また、希土類元素は、LaまたはY、またはCeとするのが好ましく、またはそれらの混合としてもよい。
Zr:0.01〜1.00%
Zrは、希土類元素と複合して含有する場合に、耐酸化性を向上させる作用を有する元素であり、また、C、Nと結合してZrC、ZrNを形成し、鋼中固溶C、Nを低減することにより熱延板の靭性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有することが望ましい。一方、1.00%を超える過剰のZr含有は、固溶Zr量の増加、金属間化合物の多量生成をもたらし、靭性の低下を招く。このため、含有する場合には、Zrは0.01〜1.00%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.05%である。
Mo:0.15%以下
Moは、ステンレス鋼帯の耐食性を向上させる元素であるが、0.15%を超える多量の含有は製造コスの高騰を招く。このため、含有する場合には、Moは0.15%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以下である。
Ni:1.00%以下
Niは、靭性、耐食性を向上させる元素であるが、多量の含有は製造コストの高騰を招く。このため、含有する場合には、Niは1.00%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.50%以下である。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、O、N、Cu、Nb、Ta、V、Tiが例示でき、いずれもできるだけ低減することが望ましい。
O(酸素)は、ステンレス鋼帯の靭性を低下させ、また固溶限度以上の含有は、酸化物を析出させるため、できるだけ低減することが好ましい。しかし、0.005%以下であれば許容できる。
Nは、Cと同様に、過剰に含有すると、ステンレス鋼帯の靭性、冷間圧延性、加工性を低下させる。また、NはAlと反応し粗大なAlNとして析出する場合があり、50μm程度の箔に圧延した場合は、孔あきの原因ともなる。そのため、Nはできるだけ低減することが望ましいが、0.02%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.01%以下である。
Cuは、熱間加工性を低下させるため、できるだけ低減することが好ましい。しかし、0.15%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.10%以下である。
Nb、Ta、V、Tiは、いずれも窒化物形成元素であり、AlNを形成しAlを消耗し酸化アルミニウム被膜の形成を阻害するNを無害化する効果を有する。しかし、過剰な含有は、耐酸化性を低下させたり、熱間および冷間での加工性を低下させる。しかし、これらの合計が1.00%以下であれば許容できる。
本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯は、上記した組成を有し、表層に厚さ:20nm以上の酸化アルミニウム層を有する。この程度の層厚を有する酸化アルミニウム層(アルミナ層)であれば、CNT形成時に助触媒として利用でき、CNT製造基材として有効であることを別途確認している。表層に酸化アルミニウム層(アルミナ層)を有するステンレス鋼帯は、助触媒層を成膜する工程を省略でき、また、長尺基材として連続製造が可能となり、CNT製造基材として有効で、CNT製造コストの低減に繋がる。酸化アルミニウム層の層厚が20nm未満では、層厚が薄すぎて、助触媒として所望の特性を保持できない。一方、1000nmを超えると、厚くなりすぎて層の強度が低下するとともに、密着性が低下する。このようなことから、酸化アルミニウム層の層厚は20mm以上1000nm以下の範囲に限定した。なお、好ましくは30〜500nmである。さらに好ましくは、50〜100nmである。
また、本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯は、上記した組成を有し、表面に上記した層厚の酸化アルミニウム層(アルミナ層)を有し、好ましくはさらに、算術平均粗さRaで、0.20μm以下の表面粗さを有する。
表面粗さが、Raで、0.20μmを超えると、表層の凹凸が大きくなりすぎて、CNT製造時に、供給される炭素(原料ガス)の流れが悪くなり、CNTの成長速度が低下したり品質が低下するなどの悪影響がある。このため、ステンレス鋼帯の表面粗さはRaで0.20μm以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.05μm以下である。
次に、本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の好ましい製造方法について、説明する。
上記した組成の溶鋼を、転炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋳片、あるいは造塊法−分塊圧延法により鋼片、としたのち、それらを鋼素材として、加熱炉等で加熱し、熱間圧延等により、所定寸法の熱延鋼帯とする。熱延鋼帯を得るまでの製造方法は、とくに限定されるものではなく、一般的な製造方法がいずれも好適である。
得られた熱延鋼帯に、必要に応じて熱板焼鈍を施したのち、冷間圧延により、所定寸法の冷延鋼帯とする。冷間圧延では、使用するワークロールを、表面粗さの低いものとして、冷間圧延後の鋼帯表面粗さがRaで0.20μm以下となるように調整することが好ましい。
本発明カーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法では、上記した組成を有し、好ましくは、表面粗さがRaで0.20μm以下に調整した冷延鋼帯を素材とする。なお、本発明では、素材とする冷延鋼帯は、コイルからコイルへの連続通板を実施するに当たり、高い巻取張力の発生を回避するという観点から、厚さ:0.2mm以下程度とすることが好ましい。
本発明では、素材(冷延鋼帯)に、加熱温度:800℃以上、好ましくは900〜1000℃の範囲の温度で、10s以上、好ましくは30〜600sの範囲の時間、保持する熱処理を、少なくとも1回施す。
加熱温度が800℃未満では、酸化アルミニウム層の形成速度が遅く、所望の層厚の酸化アルミニウム層を形成しにくい。なお、加熱温度は、900℃以上とすることが、酸化アルミニウム層の形成速度の観点から好ましい。一方、加熱温度が1000℃を超えて高温となると、急激な酸化アルミニウム層の形成により表面粗さが増加する傾向となる、このため、加熱温度は800℃以上、好ましくは900〜1000℃の範囲の温度とした。
また、熱処理の保持時間が10s未満では、所望の層厚の酸化アルミニウム層を形成できない。なお、保持時間は、30s以上とすることが、所望の層厚の酸化アルミニウム層を形成するという観点から好ましく、一方、600sを超える長時間の保持では、酸化アルミニウム層が厚くなりすぎて、強度を低下させる要因となる。このため、保持時間は10s以上、好ましくは30〜600sの範囲とすることが望ましい。
なお、熱処理の雰囲気は、露点、酸素分圧等を調整された酸化性雰囲気中、例えば、露点:-20℃以上、大気雰囲気あるいは窒素、酸素混合の酸化性雰囲気とすることが好ましい。
これにより、鋼帯の表層に、層厚:20〜1000nmの酸化アルミニウム層(アルミナ層)を形成することができる。
なお、表面粗さを、Raで0.20μm以下に調整した冷延鋼帯に、上記した条件で熱処理を施すことにより、鋼帯表面から酸化アルミニウムが成長してゆくが、柱状晶として成長することが多い。このような場合には、酸化アルミニウムの配向性が保たれ、結果として、酸化アルミニウム層が形成された後の表面粗さを、Raで0.20μm以下に調整することができると考えられる。なお、酸化アルミニウム層が形成された後の表面粗さを、Raで0.20μm以下に調整できない場合には、レベラー等により酸化アルミニウム層表面の表面粗さを調整してもよい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明を説明する。
表1に示す組成を有するステンレス冷延鋼帯(板厚:0.2mm)を、素材とした。なお、素材としたステンレス冷延鋼帯では、使用するワークロールの表面粗さを変えて冷間圧延を行い鋼帯の表面粗さを調整した。また、鋼帯No.17は、熱間圧延時に多数の表面欠陥が生成し、欠陥除去に多大の労力を要したが、欠陥のない部分から素材を採取し試験用冷延鋼帯とした。
まず、素材(冷延鋼帯)の表面粗さを、触針式粗さ計を用いて、JIS B 0601-2001に準拠して測定し、冷間圧延後の鋼帯表面粗さとした。得られた結果を表2に示す。
表2に示す表面粗さを有する冷延鋼帯から試験片を採取し、表2に示す熱処理(加熱温度:保持時間)を施した。なお、雰囲気は、酸化性雰囲気である大気雰囲気とした。
熱処理後、各試験片の断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で撮像し、表面に形成された層の厚さを測定した。得られた結果を表2に示す。なお、表面に形成された層が、酸化アルミニウム層であることは、走査型電子顕微鏡に付設された分析装置(EDS)で、確認した。
Figure 2021038421
Figure 2021038421
本発明例はいずれも、CNT形成時に助触媒層として利用可能な、酸化アルミニウム層が形成されており、カーボンナノチューブ製造基材用として十分な特性を有するステンレス鋼帯となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、CNT形成時に利用可能な、酸化アルミニウム層が形成できていない。

Claims (8)

  1. 質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス鋼帯であって、表層に酸化アルミニウム層を有し、かつその層厚が20〜1000nmであるステンレス鋼帯であることを特徴とするカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯。
  2. 前記組成が、質量%で、Al:0.30〜10.00%を含み、さらにCr:10.50〜23.00%と、C:0.015%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、希土類元素を合計で0.03〜0.20%、Zr:0.01〜1.00%、Mo:0.15%以下、Ni:1.00%以下のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
  4. 前記ステンレス鋼帯の表面粗さが、JIS B 0601-2001に規定される算術平均粗さRaで、0.20μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼帯。
  5. 質量%で、Al:0.30〜10.00%を含む組成を有するステンレス冷延鋼帯を素材とし、該素材に800℃以上の温度で10s以上保持する熱処理を施し、表面に層厚:20〜1000nmの酸化アルミニウム層を有するステンレス鋼帯とすることを特徴とするカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
  6. 前記組成が、質量%で、Al:0.30〜10.00%を含み、さらにCr:10.50〜23.00%と、C:0.015%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項5に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、希土類元素を合計で0.03〜0.20%、Zr:0.01〜1.00%、Mo:0.15%以下、Ni:1.00%以下のうちの1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項6に記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
  8. 前記ステンレス冷延鋼帯の表面粗さが、JIS B 0601-2001に規定される算術平均粗さRaで、0.20μm以下であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ製造基材用ステンレス鋼帯の製造方法。
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